説明

気水分離器

【課題】胴内における蒸気の旋回により分離された水が、胴の内周面を下方へ垂れる際、仕切板やその取付材で跳ね返って再び蒸気の旋回流に巻き込まれるのを防止する。
【解決手段】縦向き円筒状の胴2と、この胴2内へ蒸気を導入する蒸気入口管3と、胴2内における蒸気の旋回により分離された水を導出する分離水出口管5と、胴2内における蒸気の旋回により乾き度を向上された蒸気を導出する蒸気出口管4と、胴2内の上下方向中途部に設けられる円板状の仕切板6とを備える。仕切板6を胴2に保持する取付材20は、仕切板6の下部に設けられると共に、胴2の周側壁に保持される。仕切板6の外周面と胴2の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられる。仕切板6と取付材20との接続部は、仕切板6の外周縁よりも内側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気水分離器に関し、特に遠心式の気水分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心式の気水分離器は、縦向き円筒状の胴内に蒸気を導入して旋回させ、その旋回による遠心力で、水分を胴の周側壁へ飛ばして脱落させることで、蒸気の乾き度を向上する。乾き度を向上された蒸気は、胴上部の蒸気出口管から導出される一方、分離された水は、胴下部の分離水出口管から導出される。
【0003】
この種の気水分離器では、下記特許文献1の従来の技術の欄に詳述されるとおり、旋回により分離された水を円滑に分離水出口管(降水管)から導出するために、胴内に仕切板を設けることが行われる。特許文献1に記載の発明では、さらに、仕切板(17)の上に、円錐状の巻込み防止体(20)を設けて、蒸気の乾き度の向上を図っている。
【0004】
しかしながら、仕切板(17)として、胴(分離筒11)の内径に適合した円板を用い、この円板の外周部を周方向等間隔に円弧状に切り欠いて、間隙(18)を形成している。言い換えれば、仕切板は、円板の周方向複数箇所に、径方向外側へ延出する舌片を設けて、舌片間に円弧状の間隙(18)を形成している。そして、仕切板は、その舌片の延出先端部を胴の内周面に当てて、胴に対し位置決めされる。ところが、このような構成では、胴の内周面を下方へ垂れる水滴が、前記舌片で跳ね返るおそれがある。特許文献1に記載の発明では、巻込み防止体(20)により、このような水滴の跳ね返りを防止している。
【0005】
ところで、胴内への蒸気中には、配管内の錆などの固形物が含まれるおそれがあるが、この固形物も、旋回により水滴と共に下方へ脱落する。そこで、胴内下部において、さらに「液体(水)」と「固体(錆)」とに分けることができれば好適であり、出願人は、先に、胴内の下部にストレーナを設けた気水分離器を提案し、既に特許出願を済ませている(特願2009−18570)。ところが、気水分離器の下部にストレーナを設けようとする場合、特許文献1に記載の発明のように、仕切板を旋回防止体(19)で胴の底壁に支持する構成では、ストレーナの設置に不都合である。
【0006】
一方、特許文献2には、垂直板状の回水防止板(11)で、仕切板(10)を保持することが提案されている。しかしながら、仕切板の下面と回水防止板の上面とが一致した高さであるので、胴の内周面を下方へ垂れる水滴は、回水防止板の上面に当たって跳ね返り、再び旋回流に巻き込まれるおそれがある。また、そもそも特許文献2に記載の発明では、気水分離器の胴には、仕切板よりも下部に給水口(8)を設ける一方、仕切板より上部に濃縮水ブロー口(9)を設けて、「気水分離器内上部の濃縮水と給水との混合を防止」(公報第2頁左上欄第6−7行)するものである。従って、胴内には仕切板より上部にも水が溜まることが前提であり、このような構成では蒸気の乾き度を向上することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−7801号公報
【特許文献2】特開昭62−162805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、胴内における蒸気の旋回により分離された水が、胴の内周面を下方へ垂れる際、仕切板やその取付材などで跳ね返って再び蒸気の旋回流に巻き込まれるのを、簡易な構成で防止することにある。これにより、蒸気の乾き度を向上することにある。また、胴内下部にストレーナを設置する際にも、仕切板の取付材が邪魔になるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、縦向き円筒状の胴と、この胴内へ蒸気を導入する蒸気入口管と、前記胴内における蒸気の旋回により分離された水を、前記胴の下部から前記胴外へ導出する分離水出口管と、前記胴内における蒸気の旋回により乾き度を向上された蒸気を、前記胴の上部から前記胴外へ導出する蒸気出口管と、前記胴内の上下方向中途部に設けられる円板状の仕切板とを備え、前記仕切板を前記胴に保持する取付材は、前記仕切板の下部に設けられると共に、前記胴の周側壁に保持され、前記仕切板の外周面と前記胴の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられ、前記仕切板と前記取付材との接続部は、前記仕切板の外周縁よりも内側に配置されることを特徴とする気水分離器である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、仕切板の外周面と胴の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられる。また、取付材は、仕切板の外周縁よりも内側に離隔した位置で、仕切板に接続されると共に、胴の周側壁への保持部から仕切板との接続部までの領域において、仕切板の下面よりも下方に離隔して配置される。これにより、胴の内周面を下方へ垂れる水滴が、仕切板やその取付材で跳ね返ることが確実に防止される。このようにして、簡易な構成で、蒸気の乾き度を向上することができる。また、仕切板の取付材は、胴の底壁ではなく周側壁に保持されるので、胴内下部にストレーナなどを設置する際にも、邪魔になりにくい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記取付材は、板材から形成されると共に、その板面を垂直に配置され、前記取付材は、前記仕切板の外周縁よりも外方へ延出して、その延出先端部が前記胴の周側壁に保持され、前記取付材は、前記仕切板の外周縁よりも内側において、上方への突出部を有し、この突出部の上端面に前記仕切板の下面を載せて保持することを特徴とする請求項1に記載の気水分離器である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、仕切板の取付材として、垂直板を用いると共に、仕切板の外周部の手前から延出先端部までの領域において、取付材の上端面を仕切板の下面よりも下方に配置した。これにより、胴の内周面を下方へ垂れる水滴が、仕切板やその取付材で跳ね返ることが、確実に防止される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記取付材は、板材または棒材から形成され、前記仕切板の外周縁よりも内側の下面から径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜するよう設けられることを特徴とする請求項1に記載の気水分離器である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、仕切板の取付材は、仕切板の下面から径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜するよう設けられるので、胴の内周面を下方へ垂れる水滴が、仕切板やその取付材で跳ね返ることが、確実に防止される。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記仕切板の下部に、網状または多孔板状のストレーナが設けられ、このストレーナを介した水が、前記分離水出口管へ導出されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気水分離器である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、胴内での蒸気の旋回により、「気体(蒸気)」と「液体(水)および固体(錆)」とに分けた後、後者をさらにストレーナにより、「液体(水)」と「固体(錆)」とに分けることができる。このようにして、「気体(蒸気)」、「液体(水)」および「固体(錆)」の三種に分離することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の気水分離器によれば、胴内における蒸気の旋回により分離された水が、胴の内周面を下方へ垂れる際、仕切板やその取付材などで跳ね返って再び蒸気の旋回流に巻き込まれるのを、簡易な構成で防止することができる。これにより、蒸気の乾き度を向上することができる。また、胴内下部にストレーナを設置する際にも、仕切板の取付材が邪魔になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の気水分離器の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の気水分離器の概略横断面図であり、図1におけるII−II断面図である。
【図3】図1の気水分離器の仕切板を下方から見た概略斜視図であり、胴への仕切板の取付構造を示している。
【図4】胴への仕切板の取付構造の変形例1を示す概略図である。
【図5】胴への仕切板の取付構造の変形例2を示す概略図である。
【図6】胴への仕切板の取付構造の変形例3を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の気水分離器について、実施例に基づきさらに詳細に説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明の気水分離器1の一実施例を示す概略図であり、図1は縦断面図、図2は横断面図(図1におけるII−II断面図)である。
【0021】
本実施例の気水分離器1は、縦向き円筒状の胴2と、この胴2の周側部に設けられる蒸気入口管3と、前記胴2の上部に設けられる蒸気出口管4と、前記胴2の下部に設けられる分離水出口管5と、前記胴2の上下方向中途部に設けられる仕切板6とを備える。
【0022】
胴2は、円筒状でその軸線を上下方向へ沿って配置される。図示例では、胴2の下部は、下方へ行くに従って小径となる円錐台状部7に形成されているが、これとは逆に、下方へ行くに従って大径となる円錐台状部に形成されてもよい。あるいは、胴2は、全体が単なる真っ直ぐな円筒状に形成されてもよい。
【0023】
胴2には、上部開口を閉塞するよう上端部に天板8が設けられる一方、下部開口を閉塞するよう下端部に底板9が設けられる。天板8および底板9は、平板状に形成されていてもよいし、胴2の上下方向外側へ膨出するよう形成されていてもよい。
【0024】
天板8および底板9は、胴2に溶接などで一体化されるか、胴2に対し着脱可能に設けられる。本実施例では、天板8は、胴2の上端部に溶接されるが、底板9は、胴2の下端部に着脱可能に設けられる。具体的には、胴2の円錐台状部7の下端部には、フランジ10が設けられ、このフランジ10の下面に底板9が重ね合わされて、ボルトナット11により着脱可能に保持される。フランジ10に底板9を取り付けた状態では、フランジ10と底板9との隙間は、その間に設けられたガスケット(図示省略)により封止される。
【0025】
底板9を胴2に着脱可能に設ける場合、底板9には水抜き穴12を開閉可能に設けておくのが好ましい。その理由は、胴2から底板9を取り外す前に、予め水抜き穴12を開けることで、胴2内に溜まった水を排出しておくことができるからである。本実施例では、底板9に形成された水抜き穴12は、プラグ13が着脱可能にねじ込まれることで、開閉可能とされる。
【0026】
蒸気入口管3は、胴2より小径の円筒状で、通常、胴2の半径かそれよりも小径の円筒状に形成される。そして、蒸気入口管3は、その中空穴が胴2内と連通するように、胴2の周側壁に接続される。この際、蒸気入口管3は、胴2の上下方向中央部よりも上方位置において、胴2の周側壁に接続される。また、後述するように、蒸気入口管3を介して胴2内へは蒸気が導入されるが、胴2内へ導入された蒸気が胴2内で旋回するように、胴2に対する蒸気入口管3の配置が決定される。
【0027】
典型的には、蒸気入口管3は、胴2の上端部において、胴2の周側壁に対し接線方向に接続される。具体的には、図示の状態では、蒸気入口管3は、その軸線を左右方向へ沿って配置されており、軸方向一端部が胴2の周側壁に接続される。この際、図2に示すように、蒸気入口管3は、その軸方向一端部において、周側壁後端部が胴2の周側壁後端部に配置される。
【0028】
蒸気入口管3は、その軸方向他端部にフランジ14を備える。このフランジ14を用いて、蒸気入口管3には、蒸気の配管を接続することができる。これにより、蒸気入口管3を介して、蒸気を胴2内に接線方向で導入することができる。
【0029】
蒸気出口管4は、胴2より小径の円筒状で、その軸線を上下方向へ沿って配置される。蒸気出口管4は、その中空穴が胴2内と連通するように、胴2の天板8の中央部に設けられる。この際、蒸気出口管4は、胴2の天板8から上方へ延出するよう設けられる。そして、蒸気出口管4の上端部には、フランジ15が設けられる。このフランジ15を用いて、蒸気出口管4には、蒸気使用設備(図示省略)への配管を接続することができる。
【0030】
一方、蒸気出口管4の下端部は、胴2内へ突入して設けるのが好ましい。本実施例では、蒸気出口管4は、胴2と同一軸線上に配置され、胴2の天板8を上下に貫通して設けられる。蒸気出口管4の下端部を胴2内へ突入して設ける場合、蒸気出口管4は、胴2と蒸気入口管3との接続部よりも下方まで突入して設けるのが好ましい。この突入部の外周面には、下方へ行くに従って拡がる水切り部16を、所望により設けてもよい。
【0031】
本実施例では、蒸気出口管4には、水切り部16を一つだけ設けているが、所望により上下に複数設けてもよい。水切り部16は、蒸気出口管4と同軸で且つ頂角が鋭角(つまり90°未満)な円錐台状の筒状に形成される。そして、水切り部16は、胴2と蒸気入口管3との接続部よりも下方に設けるのが好ましい。また、水切り部16は、蒸気出口管4の下端部から上方へ離隔した位置に設けるのが好ましい。
【0032】
分離水出口管5は、胴2より小径の円管状で、その中空穴が胴2内と連通するように、胴2の底板9の中央部に設けられる。図示例では、分離水出口管5は、上下方向へ沿って配置される垂直管部17と、その下端部から左右方向へ沿って配置される水平管部18とで、略L字形状に形成されている。そして、垂直管部17の上端部が、底板9に接続される一方、水平管部18の先端部が、たとえばスチームトラップ(図示省略)、またはボイラの下部管寄せ(図示省略)に接続される。
【0033】
胴2内への分離水出口管5の開口部には、ストレーナ19を設けてもよい。図示例では、分離水出口管5の垂直管部17と連続するように、筒状のストレーナ19が底板9から胴2内へ突入して設けられる。このストレーナ19は、上下へ開口した筒状に形成されると共に、周側壁が網状または多孔板状に形成されている。より具体的には、ストレーナ19は、メッシュまたはパンチングメタルのパイプから構成され、このパイプは、その軸線を上下方向へ沿って配置され、分離水出口管5の垂直管部17と連続的に設けられる。
【0034】
仕切板6は、胴2の内径よりも小径の円板状であり、胴2内の上下方向中途部に水平に設けられる。具体的には、仕切板6は、胴2の下端部よりやや上方位置に設けられ、図示例では円錐台状部7の上端部と対応した高さに設けられる。この際、仕切板6は、その中心が胴2の軸心と一致するよう配置される。これにより、仕切板6の外周面と胴2の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられる。また、仕切板6は、蒸気出口管4の下端部よりも下方へ離隔すると共に、分離水出口管5やその上部に設けられる筒状のストレーナ19の上端部よりも上方へ離隔して設けられる。胴2への仕切板6の取付構造については、後に詳述する。
【0035】
本実施例の気水分離器1は、以上のような構成であるから、蒸気入口管3からの蒸気は、胴2内に接線方向で導入される。これにより、胴2内において蒸気の旋回流が生じ、気水分離が図られる。具体的には、蒸気入口管3からの蒸気は、気水混合体としての湿り飽和蒸気とされるが、胴2内で旋回されることで、遠心力により気水分離が図られる。すなわち、遠心力により水分は外方へ飛ばされて下方へ脱落する一方、そのような遠心分離により乾き度を向上された蒸気は、上方の蒸気出口管4から導出される。なお、蒸気出口管4に水切り部16を設けた場合、蒸気出口管4の外周面を垂れる水滴は、下方へ行くに従って拡がる水切り部16により胴2の周側壁へ飛ばされ、蒸気出口管4内へ吸い込まれるのが防止される。
【0036】
また、蒸気入口管3を介して胴2内へ導入される蒸気には、配管内の錆などの固形物が含まれるおそれがあるが、そのような固形物も、胴2内での蒸気の旋回により下方へ脱落する。このようにして、分離水と錆とが、仕切板6の下部領域へ導かれる。さらに、本実施例のように、胴2内の下部にストレーナ19を設けておけば、ストレーナ19を介して水分だけを分離水出口管5へ排出することができる。つまり、本実施例の気水分離器1によれば、「気体(蒸気)」、「液体(水)」および「固体(錆)」の三種に分離することができる。そして、胴2内の下部には、錆が堆積することになるが、仕切板6を設置することにより、胴2内の気流により、錆が再飛散するのが防止される。捕捉した錆は、適宜、胴2の底板9を取り外すことで、胴2から排出することができる。この際、まず、底板9からプラグ13を取り外すことで、胴2内に溜まった水を予め抜いておき、その後、胴2から底板9を取り外して作業することができる。
【0037】
次に、胴2への仕切板6の取付構造について説明する。図3は、本実施例の気水分離器1の仕切板6を下方から見た概略斜視図であり、胴2への仕切板6の取付構造を示している。
【0038】
図1から図3に示すように、本実施例では、仕切板6は、周方向等間隔の複数箇所(図示例では三箇所)において、板状の取付材20によって胴2の周側壁に保持される。各取付材20は、細長い長方形の板材から形成され、その板面を垂直にして用いられる。各取付材20は、仕切板6の中央部を残して、仕切板6の下部に放射状に配置され、仕切板6の外周縁よりも外方へ延出する。そして、その延出先端部21が、胴2の周側壁に保持される。
【0039】
各取付材20は、仕切板6の外周縁の手前から前記延出先端部21までの領域において、上部に長方形状の切欠き22が形成されている。これにより、各取付材20には、切欠き22が形成されない箇所に、上方への突出部23が残ることになる。この突出部23は、仕切板6の外周縁と離隔して、仕切板6の外周縁よりも内側に配置される。そして、突出部23の上端面に、仕切板6の下面が載せられて保持される。
【0040】
このようにして、仕切板6を胴2に保持する取付材20は、仕切板6の下部に設けられると共に、胴2の周側壁に保持される。また、仕切板6の外周面と胴2の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられる。また、仕切板6と取付材20との接続部(本実施例では突出部23)は、仕切板6の外周縁よりも内側に離隔して、つまり仕切板6の外周縁よりも設定以上内側に配置される。さらに、取付材20は、胴2の周側壁への保持部(本実施例では延出先端部21)から仕切板6との接続部までの領域において、仕切板6の下面よりも下方に離隔して、つまり仕切板6の下面よりも設定以上下方に配置される。
【0041】
このような構成で仕切板6を胴2に保持するので、胴2の内周面に沿って下方へ落ちる水滴や錆は、仕切板6やその取付材20に当たって跳ね返って再び旋回流に巻き込まれるのが防止され、確実に仕切板6より下方へ脱落する。しかも、取付材20は、胴2の底板9ではなく周側壁に保持されるので、胴2内下部にストレーナ19を設ける際にも邪魔にならない。
【0042】
ところで、実験によれば、胴2の内周面に沿って下方へ垂れる水滴が仕切板6に当たらないようにするには、仕切板6の外周面と胴2の内周面との間の隙間Aは、5mmを超える必要があり、10mm以上が好ましかった。本実施例では、胴2の内径を200mm、仕切板6の外径を170mm、仕切板6の外周面と胴2の内周面との間の隙間Aを15mmとしている。なお、蒸気入口管3の内径は100mm、蒸気出口管4の内径は100mmとしている。
【0043】
また、胴2の内周面に沿って下方へ垂れる水滴が取付材20の上端面で跳ね返って再び旋回流に巻き込まれるのを防止するために、取付材20の切欠き22は、上下方向高さBを5mm以上に設定するのが好ましい。つまり、仕切板6の下面と切欠き22の底面との上下方向離隔距離Bは、5mm以上に設定される。本実施例では、たとえば8mmに設定される。
【0044】
さらに、同様の理由で、切欠き22は、仕切板6の外周縁から設定長さ以上、仕切板6の径方向内側まで入り込む必要があるが、その入り込み長さCは、数mm以上が好ましい。本実施例では、たとえば10mmに設定される。
【0045】
以下、胴2への仕切板6の取付構造の変形例について説明する。胴2への仕切板6の取付構造は、(a)取付材20を仕切板6の下部に設ける点、(b)取付材20を胴2の底板9ではなく周側壁に保持する点、(c)仕切板6の外周面と胴2の内周面との間に、連続する円環状の隙間を開ける点、(d)仕切板6と取付材20との接続部は、仕切板6の外周縁よりも内側に離隔して配置する点が満たされれば、適宜に変更可能であり、以下の変形例はその一例である。
【0046】
図4は、胴2への仕切板6の取付構造の変形例1を示す概略図である。本変形例1では、取付材20は、胴2の直径方向に架け渡される第一材24と、その第一材24の長手方向中央部に設けられる第二材25とからなる。いずれも、長方形の板材から形成され、その板面を垂直にして用いられる。そして、第二材25は、第一材24の長手方向中央部(胴2の中央部)に重ね合わされて固定される。この際、第二材25は、第一材24よりも一部を上方へ突出して配置され、その突出部23で仕切板6を保持する。
【0047】
本変形例1では、取付材20を複数の部材(24,25)から構成したが、前記実施例のように、一枚の板材の長手方向両端部の上部に切欠きを形成して構成してよい。あるいは、逆に、前記実施例において、各取付材20を複数の部材から構成してもよい。つまり、図3の構成を実現するために、第一材24の長手方向一部に、第二材25を上方へ突出するよう設け、その突出部23で仕切板6を保持してもよい。
【0048】
また、取付材20は、必ずしも、仕切板6および胴2の直径方向に配置する必要はない。そのため、たとえば、図4において、取付材20を前後に複数本平行に配置し、各取付材20の長手方向中央部に設けた上方への突出部23により、仕切板6を複数箇所で保持してもよい。
【0049】
図5は、胴2への仕切板6の取付構造の変形例2を示す概略図である。本変形例2では、取付材20は、板材または棒材から形成され、仕切板6の外周縁よりも設定以上内側の下面から径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜するよう設けられる。
【0050】
図6は、胴2への仕切板6の取付構造の変形例3を示す概略図である。前記変形例2では、仕切板6の周方向等間隔に配置した取付材20によって、仕切板6を保持したが、本変形例3では、一枚の板材の長手方向両端部26,26を、下方へ行くに従って仕切板6の径方向外側へ傾斜するよう屈曲して形成される。そして、その取付材20の中央の水平部27の上面に仕切板6を載せて保持している。この場合も、取付材20を平行に複数個設け、その各中央の水平部27で仕切板6を保持してもよい。いずれにしても、水平部27の長手方向両端部と、仕切板6の外周縁とは、設定以上離隔して配置される。
【0051】
本発明の気水分離器1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、水蒸気の乾き度を向上する場合について説明したが、本発明の気水分離器1は、その他の気液分離にも同様に適用可能である。つまり、蒸気として水蒸気以外の気液混合体を蒸気入口管3から胴2内へ導入し、胴2内での旋回により液滴や固形物を分離除去した後、乾き度を向上した気体を蒸気出口管4から導出する一方、分離された液体を分離水出口管5から導出してもよい。
【0052】
また、前記実施例では、底板9に水抜き穴12を設けたが、場合により水抜き穴12を設けなくてもよい。また、前記実施例では、底板9の水抜き穴12は、プラグ13により開閉可能とされたが、バルブにより開閉可能とされてもよい。また、水抜き穴12は、底板9を取り外す際の水抜き用であってもよいし、比較的大径に形成しておくことで、プラグ13またはバルブを開けることで錆などの固形物を胴2外へ自然落下させる構成としてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、胴2内の下部にストレーナ19を設けたが、ストレーナ19は必ずしも必要ではない。また、ストレーナ19を設ける場合でも、その形状や大きさは適宜に変更可能である。
【0054】
さらに、前記実施例では、胴2の底板9に分離水出口管5を接続したが、分離水出口管5は、胴2の下部の周側壁に接続してもよい。たとえば、円錐台状部7の上部で、且つ仕切板6より下方位置に、分離水出口管5を接続してもよい。この場合、胴2内の下部には水と錆とが溜まることになり、錆が含まれにくいオーバーフロー水が分離水出口管5へ導出される。これと同様の作用効果を得るために、分離水出口管5を胴2の底板9から胴2内へ突入させてもよい。つまり、図1において、ストレーナ19の部分が、垂直管部17と同じパイプとされてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 気水分離器
2 胴
3 蒸気入口管
4 蒸気出口管
5 分離水出口管
6 仕切板
19 ストレーナ
20 取付材
21 延出先端部
22 切欠き
23 突出部(仕切板と取付材との接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向き円筒状の胴と、
この胴内へ蒸気を導入する蒸気入口管と、
前記胴内における蒸気の旋回により分離された水を、前記胴の下部から前記胴外へ導出する分離水出口管と、
前記胴内における蒸気の旋回により乾き度を向上された蒸気を、前記胴の上部から前記胴外へ導出する蒸気出口管と、
前記胴内の上下方向中途部に設けられる円板状の仕切板とを備え、
前記仕切板を前記胴に保持する取付材は、前記仕切板の下部に設けられると共に、前記胴の周側壁に保持され、
前記仕切板の外周面と前記胴の内周面との間に、連続する円環状の隙間が開けられ、
前記仕切板と前記取付材との接続部は、前記仕切板の外周縁よりも内側に配置される
ことを特徴とする気水分離器。
【請求項2】
前記取付材は、板材から形成されると共に、その板面を垂直に配置され、
前記取付材は、前記仕切板の外周縁よりも外方へ延出して、その延出先端部が前記胴の周側壁に保持され、
前記取付材は、前記仕切板の外周縁よりも内側において、上方への突出部を有し、この突出部の上端面に前記仕切板の下面を載せて保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の気水分離器。
【請求項3】
前記取付材は、板材または棒材から形成され、前記仕切板の外周縁よりも内側の下面から径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜するよう設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の気水分離器。
【請求項4】
前記仕切板の下部に、網状または多孔板状のストレーナが設けられ、
このストレーナを介した水が、前記分離水出口管へ導出される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気水分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112318(P2011−112318A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271095(P2009−271095)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】