説明

気水分離器

【課題】気液二相流の蒸気のクオリティが低くてもスワラーでの圧力損失の増大が抑制できる気水分離器を提供する。
【解決手段】シュラウド103内に収納された原子炉炉心104の発生熱により冷却水110を沸騰させて生成された気液二相流の蒸気を、シュラウドヘッド105外にスタンドパイプ3を介して導出し、スワラー111で旋回力を与えて遠心分離して湿分を除去した蒸気と湿分の水に気液分離し、湿分を除去した蒸気をドライヤ108へと放出するものであって、スワラー111を円筒状のバレル5内に設け、かつバレル5をスタンドパイプ3の上方に筒軸方向を鉛直方向にして離間設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉等で発生した蒸気と水の気液二相流から蒸気を分離するのに好適する気水分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉による原子力発電プラントでは、原子炉炉心で発生した熱により原子炉圧力容器内で発生させた蒸気を導き出してタービンを回転させると共に、発電機を回転させて発電している。一方、加圧水型原子炉による原子力発電プラントでは、原子炉炉心で発生した熱で作り出した一次冷却系の高温水により蒸気発生器内の熱交換器において二次冷却系の水を加熱し、発生させた蒸気を導き出してタービンを回転させると共に、発電機を回転させて発電している。いずれの原子力発電プラントもタービンに供給し回転させる蒸気中から湿分を除去する必要があり、原子炉圧力容器内や蒸気発生器内で発生させた蒸気と水の気液二相流から水を除去するため、気水分離器やドライヤなどを備えている。
【0003】
例えば図9に縦断面図を示すように、原子力発電プラントに用いる発電用原子炉の沸騰水型原子炉100は、上蓋101で上端開口を気密に閉塞した原子炉圧力容器102の円筒状内空間に、同じく円筒状のシュラウド103を設置し、シュラウド103内に核燃料を装荷した炉心104を収納して構成されている。そして、シュラウド103の上部に設置されたシュラウドヘッド105には、気水分離器106の複数本のスタンドパイプ107が立設されており、スタンドパイプ107の上方には、ドライヤ108が原子炉圧力容器102の内壁に支持部材を設けて支持されている。なお、ドライヤ108には、下方側に円筒状のスカート109が気水分離器106の周囲を囲うように装備されている。
【0004】
また、原子炉圧力容器102内には、冷却水110が、スカート109の下端が水没するよう所定の水位まで満たされている。そして、冷却水110はシュラウド103下部から炉心104に入ることにより、装荷されている核燃料の反応熱で加熱され、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、気水分離器106で気液分離され、湿分を除去した蒸気と湿分の水とになる。
【0005】
こうした気液二相流の蒸気の気液分離を行う気水分離器106は、シュラウド103内から気液二相流の蒸気を導き出すスタンドパイプ107と、スタンドパイプ107内に設置され気液二相流の蒸気に旋回力を与えるスワラー111と、図示しないデッキプレートに支持されスタンドパイプ107の上部に間隙を設けて被せられたバレル112で構成されており、スワラー111とバレル112で気液二相流の蒸気を、湿分を除去した蒸気と湿分の水とに遠心分離する。
【0006】
また、気液分離後の水は、原子炉圧力容器102とスカート109の間やスカート109内側面、バレル112内面を伝い下方の冷却水110に戻される。一方、気液分離後の湿分が除去された蒸気は、原子炉圧力容器102の冷却水110水位よりも上側の上部側壁に連通するよう設けられた主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機を回転させて電力を生成する。電力を生成した後の蒸気は、図示しない復水器で凝縮される等して、原子炉圧力容器102の冷却水110水位より下側の下部側壁に連通するよう設けられた給水管114を介して冷却水110に戻される。なお、図中の実線矢印は水の流れを示し、破線矢印は蒸気の流れを示す。
【0007】
さらに、気水分離器106で気液分離され戻された水と、電力を生成後に復水器で凝縮され戻された水は、冷却水110と共に原子炉圧力容器102に設置された図示しないインターナルポンプまたはジェットポンプ、再循環ポンプを用いた強制循環によって、あるいは自然循環によって炉心104に戻され、再び加熱される。
【0008】
しかし、上述の気水分離器106においては、スタンドパイプ107とスワラー111及びバレル112が連結された構成であるので、スワラー111による気液二相流の蒸気の気液分離は、ほとんどが遠心分離によるものとなっている。このため、シュラウド103内からスタンドパイプ107に流入する気液二相流の蒸気のクオリティが低い場合、スワラー111での圧力損失が大きくなってしまう問題があり、またスタンドパイプ107に流入する気液二相流の蒸気のクオリティのばらつきが大きい場合は、スワラー111の分離性能もばらついてしまう可能性があった。また、スワラー111の圧力損失、すなわち気水分離器106の圧力損失の増大は、原子力発電プラントの沸騰水型原子炉100の出力が低減し、所定の発電が行えなくなる可能性が生じてくる。
【0009】
なお、気水分離器の構造に関しては、スワラーのハブ径とバレルの径の比やスワラー出口角度を変更して圧力損失を低減するとしたもの(例えば、特許文献1参照)、バレルを側壁に複数の流路孔を貫通、形成した内、外筒で構成し、内、外筒間の間隙に充填したデミスターで蒸気に同伴する冷却水の液滴を捕獲し、重力落下させることで分離能力を確保するとしたもの(例えば、特許文献2参照)があり、またスタンドパイプの入口部に絞り部を設けて旋回力を強め、気水分離性能を向上させるとしたもの(例えば、特許文献3参照)がある。さらに、多段構成でハブなしのスワラーを設けて逆流を防ぎ、液滴のキャリオーバを低減すとしたもの(例えば、特許文献4参照)や、スワラー上方のバレルの側壁に周方向のスリットを多段に設けて気水分離を行わせ、気水分離性能の向上を図るとしたもの(例えば、特許文献5参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−114293号公報
【特許文献2】特開2004−245656号公報
【特許文献3】特開2003−307584号公報
【特許文献4】特開2002−326002号公報
【特許文献5】特開2001−079323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような発電用原子炉等に用いられる気水分離器では、シュラウド内からスタンドパイプに流入する気液二相流の蒸気のクオリティが低いとスワラーでの圧力損失が大きくなり、また気液二相流の蒸気のクオリティがばらついているとスワラーの分離性能がばらついてしまうことになり、それにより原子炉の出力低下等を来たす虞がある。
【0012】
こうした状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、スタンドパイプに流入する気液二相流の蒸気のクオリティが低い場合であっても、スワラーでの圧力損失の増大が抑制でき、またスタンドパイプに流入する気液二相流の蒸気のクオリティがばらついていてもスワラーの分離性能のばらつきを低減することができる気水分離器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は上記目的を達成するものであって、シュラウド内に収納された原子炉炉心の発生熱により冷却水を沸騰させて生成された気液二相流の蒸気を、シュラウドヘッド外にスタンドパイプを介して導出し、スワラーで旋回力を与えて遠心分離して湿分を除去した蒸気と湿分の水に気液分離し、湿分を除去した蒸気をドライヤへと放出する気水分離器であって、前記スワラーを円筒状のバレル内に設け、かつ前記バレルを前記スタンドパイプの上方に筒軸方向を鉛直方向にして離間設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スタンドパイプに流入する気液二相流の蒸気のクオリティが低い場合であっても、スワラーに流入する蒸気のクオリティが高く、圧力損失が増大することがなく、またスタンドパイプに流入する気液二相流の蒸気のクオリティがばらついてもスワラーに流入する蒸気のクオリティのばらつきを少なくし、分離性能のばらつきを低減することができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図2】図1における遠心分離部を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の変形形態におけるスタンドパイプの斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図8】図7における湿分捕捉部材を示す部分断面図である。
【図9】従来の気水分離器を備える沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、従来と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、従来と異なる本発明の実施の形態の構成について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず本発明の第1の実施形態を図1及び図2により説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態の気水分離器1は、発電用原子炉の沸騰水型原子炉2の冷却水110が所定の水位まで満たされている原子炉圧力容器102内に設置されたシュラウド103とドライヤ108の間に設けられており、気水分離器1を構成する複数本の直円筒状のスタンドパイプ3は、冷却水110の水面上に上端を露出させるようにしてシュラウドヘッド105上に立設されている。
【0019】
さらに、気水分離器1の遠心分離部4を構成する複数のバレル5は、シュラウドヘッド105上に設置された支持構造体6の上端に固定され、外周縁をスカート109に固定した支持板7に取り付けられるようにして、スタンドパイプ3の上方に筒軸方向を鉛直方向にして離間設置されている。バレル5は、内筒8と外筒9でなる二重円筒状のもので、内筒8は、下端開口を支持板7に形成された蒸気導入孔10に連通するようにして図示しない支持具で外筒9内に支持されており、内筒8内には、複数枚の旋回羽根11をハブ12の周囲に植設し、羽根端を筒内壁に固定したスワラー111が備えられている。
【0020】
また外筒9は、下端開口を支持板7の蒸気導入孔10に連通するようにして支持板7上に立設されており、さらに内筒8よりも上方側に位置する外筒9の上端部には、外筒9の上端縁にフランジ13を固着するようにして、両端が開口した切頭錐体状の円筒であるピックオフリング14が、下方に向けて漸次径小となるようにして設けられている。なお、バレル5を支持する支持板7には、板上面に排水溝15が蒸気導入孔10に連通するように刻設されており、排水溝15は支持板7の外周縁部分に貫通するよう形成された図示しない排水孔に接続されている。
【0021】
そして、上述のように構成されたものでは、沸騰水型原子炉2の運転を開始することにより装荷されている核燃料の反応熱でシュラウド103下部から炉心104に入った冷却水110が加熱され、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、気水分離器1のスタンドパイプ3内に流れ込み、スタンドパイプ3内を上昇して上端からスタンドパイプ3の上方に離間設置されたている遠心分離部4との間の空間に放出される。空間に放出されることで、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aは、遠心分離部4に到達する前に、重力により原子炉圧力容器102内に所定水位まで満たされている冷却水110内に落下する。
【0022】
さらに、粗大水滴110aが重力分離された気液二相流の蒸気は、遠心分離部4のバレル5に蒸気導入孔10を介して到達し、内筒8内に備えられたスワラー111を通過する間に旋回羽根11により旋回力が与えられ、質量の大きい湿分の水が遠心分離される。遠心分離により気液分離された水は、遠心力によりピックオフリング14の外面に沿って上昇し、内筒8の上端とピックオフリング14のフランジ13との間の間隙から内筒8と外筒9の間に入り、外筒9の内面に水膜110bを形成して流れ落ち、排水溝15を流れて支持板7の外周縁部分の排水孔から冷却水110内に落下する。
【0023】
一方、遠心分離により気液分離され湿分が除去された蒸気は、密度が小さいために遠心力が小さくピックオフリング14の内側部分を上昇する。そして、湿分が除去された蒸気は、遠心分離部4の上方のドライヤ108を通り、主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機を回転させて電力を生成する。電力を生成した後の蒸気は、図示しない復水器で凝縮される等して、給水管114を介して原子炉圧力容器102内の冷却水110に戻される。
【0024】
以上の通り、本実施形態によれば、上述の構成とすることで、シュラウド103からの気液二相流の蒸気に含まれる粗大水滴110a等は、自重による重力分離効果により遠心分離部4に至らずに分離できることになる。これにより、遠心分離部4のスワラー111に流入する気液二相流の蒸気のクオリティが高くなり、スワラー111での圧力損失の増加が抑制され、気水分離器1での圧力損失を低減することができる。
【0025】
また、シュラウドヘッド105上に複数本立設されたスタンドパイプ3毎の気液二相流の蒸気のクオリティに大きなばらつきがあっても、クオリティの低い場所では重力により多くの粗大水滴110a等の落下がおき、除去されるので、スワラー111に流入する気液二相流の蒸気のクオリティのばらつきを少なくすることができ、分離性能のばらつきを低減することができる。そして、スワラー111での圧力損失が低下して気水分離器1の圧力損失が低減するので、沸騰水型原子炉2の出力が低減せず、原子力発電プラントとして所定の発電を維持することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を図3により説明する。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0027】
図3に示すように、第2の実施形態の気水分離器21は、遠心分離部4を設置した位置が、主として第1の実施形態で気水分離器1を設置した位置とは異なっており、本実施形態では、気水分離器21は遠心分離部4がドライヤ108の直下部に隣接して設けられている。
【0028】
すなわち、気水分離器21は、第1の実施形態におけると同様に、発電用原子炉の沸騰水型原子炉22の原子炉圧力容器102内に設置されたシュラウド103とドライヤ108の間に設けられており、その複数本のスタンドパイプ3は、シュラウドヘッド105上に立設されている。さらに、気水分離器21の遠心分離部4を構成するスワラー111を備えた複数のバレル5は、外周縁がスカート109の内側上部に固定された支持板7上に取り付けられると共に、ドライヤ108の直下部に隣接して位置するよう取り付けられることによって、スタンドパイプ3の上方に離間設置されている。
【0029】
そして、上述のように構成されたものでは、第1の実施形態と同様に、沸騰水型原子炉22の運転を開始することで、核燃料の反応熱により冷却水110がシュラウド103内で加熱、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、シュラウド103内からスタンドパイプ3内を上昇してパイプ上端から、上方に離間設置されている遠心分離部4との間の空間に放出される。空間に放出されることで、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aは、遠心分離部4に到達する前に、重力により冷却水110内に落下する。
【0030】
さらに、粗大水滴110aが重力分離された気液二相流の蒸気は、遠心分離部4のバレル5の内筒8内に備えられたスワラー111を通過する間に旋回羽根11により旋回力が与えられ、湿分の水が遠心分離される。遠心分離された水は、ピックオフリング14の外面から内筒8と外筒9の間に入り、外筒9の内面に水膜110bを形成して流れ落ち、排水溝15を流れて排水孔から冷却水110内に落下する。
【0031】
一方、遠心分離により気液分離され湿分が除去された蒸気は、ピックオフリング14の内側部分を上昇し、遠心分離部4の上方のドライヤ108を通り、主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機を回転させて電力を生成する。電力を生成した後の蒸気は、復水器で凝縮される等して給水管114を介し原子炉圧力容器102内の冷却水110に戻される。
【0032】
以上の通り、本実施形態によれば、上述の構成とすることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態を図4により、また本実施形態の変形形態を図5により説明する。なお、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第2の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0034】
図4に示すように、第3の実施形態の気水分離器31は、第2の実施形態とはスタンドパイプ3に水膜形成部材32を設けた構成としている点で異なっているのみで、他は同じ構成となっている。
【0035】
すなわち、気水分離器31は、上述の第1及び第2の実施形態におけると同様に、発電用原子炉の沸騰水型原子炉33の原子炉圧力容器102内に設置されたシュラウド103とドライヤ108の間に設けられた構成となっており、気水分離器31の複数本のスタンドパイプ3は、シュラウドヘッド105上に立設されている。また、気水分離器31の遠心分離部4のスワラー111を備えた複数のバレル5は、ドライヤ108の直下部に隣接するよう支持板7上に取り付けられて、スタンドパイプ3の上方に離間設置されている。
【0036】
そして、シュラウドヘッド105上に立設されたスタンドパイプ3は、その上端34に図示しない支持具に支持されて倒立円錐体状の水膜形成部材32が、所定の流通間隙35を設けて上端開口を塞ぐよう下端である錐体頂部を挿入するようにして設けられている。なお、水膜形成部材32の径大となっている上端部分の外径は、スタンドパイプ3の内径より大きく形成されている。
【0037】
このように構成されたものでは、第2の実施形態と同様に、沸騰水型原子炉33の運転を開始することで、核燃料の反応熱により冷却水110がシュラウド103内で加熱、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、シュラウド103内からスタンドパイプ3内に流入する。スタンドパイプ3を上端方向に流れた気液二相流の蒸気は、上端34に上端開口を塞ぐよう設けられた水膜形成部材32に当たり、その錐体面に沿って流れる。
【0038】
気液二相流の蒸気は、水膜形成部材32に当たって錐体面に沿って流れる際に、含まれている湿分による水膜110bを錐体面に形成して水が分離される。その後、気液二相流の蒸気は上端開口の流通間隙35から、上方に離間設置されている遠心分離部4との間の空間に放出され、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aも放出される。また水膜形成部材32の錐体面に形成された水膜110bは、スタンドパイプ3内の気液二相流の蒸気の流れにより水膜形成部材32上端縁部分で剥がされて水滴となる。こうして形成された水滴も、同時に空間に放出され、粗大水滴110aと共に遠心分離部4に到達する前に重力により冷却水110内に落下する。
【0039】
さらに、粗大水滴110a等が重力分離された気液二相流の蒸気は、遠心分離部4のバレル5のスワラー111を通過し、湿分の水が遠心分離される。遠心分離された水は、水膜110bを形成してバレル5から流れ落ち、排水溝15を流れて排水孔から冷却水110内に落下する。一方、湿分が除去された蒸気は、遠心分離部4からドライヤ108を通り、主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機で電力を生成する。その後、蒸気は復水器で凝縮される等して給水管114を介し原子炉圧力容器102内の冷却水110に戻される。
【0040】
以上の通り、本実施形態によれば、上述の構成とすることで、スタンドパイプ3部分でより多くの湿分の水の除去が可能となると共に、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、上記の第3の実施形態では、スタンドパイプ3の上端に倒立円錐体状の水膜形成部材32を設けるようにしたが、それに限るものでなく、以下に説明する変形形態のように構成してもよい。
【0042】
すなわち、変形形態は、図5に示すようにスタンドパイプ3部分の構成が、第3の実施形態と異なったものとなっている。シュラウドヘッド105上に立設されるスタンドパイプ3の上端34には、同じく所定の流通間隙35を設けて上端開口を塞ぐように、図示しない支持具に支持されて倒立円錐体状で椀形状をなす水膜形成部材32aが、錐体頂部を挿入するようにして設けられている。なお、水膜形成部材32aの径大となっている上端部分の外径Dは、スタンドパイプ3の内径Dより大きく形成されている。
【0043】
さらに、椀形状をなす水膜形成部材32aには、椀側壁に内外を貫通する複数条のスリット36が、周方向に、あるいは上下方向に形成されており、また椀側壁には椀内外を連通する排水管37の上端が接続されている。
【0044】
このように構成されたものでは、第3の実施形態と同様に、シュラウド103内からスタンドパイプ3内に流入し、上端方向に流れた気液二相流の蒸気は、上端34に上端開口を塞ぐよう設けられた水膜形成部材32aに当たり、その錐体面に沿って流れる間に含まれている湿分による水膜110bが錐体面に形成される。気液二相流の蒸気の湿分によって形成された水膜110は、スタンドパイプ3内の気液二相流の蒸気の流れにより水膜形成部材32aの上端縁方向に流れ、その間に椀側壁のスリット36を通って水膜形成部材32aの貯水空間である椀内に流れ込む。そして、所定水位を超えるまで流れ込んだ水は、椀側壁に接続されている排水管37から水膜形成部材32aの外に流れ出し、冷却水110内に落下する。
【0045】
また、椀内に流れ込まなかった水膜110bは、水膜形成部材32a上端縁部分で剥がされて水滴となり、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aと共に遠心分離部4との間の空間に放出され、遠心分離部4に到達する前に重力により冷却水110内に落下する。
【0046】
これにより、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態を図6により説明する。なお、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第2の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0048】
図5に示すように、第4の実施形態の気水分離器41は、第2の実施形態とはスタンドパイプ3に初段スワラー42を設けた構成としている点で異なっているのみで、他は同じ構成となっている。
【0049】
すなわち、気水分離器41は、上述の第1及び第2の実施形態におけると同様に、発電用原子炉の沸騰水型原子炉43の原子炉圧力容器102内に設置されたシュラウド103とドライヤ108の間に設けられた構成となっており、気水分離器41の複数本のスタンドパイプ3は、シュラウドヘッド105上に立設されている。また、気水分離器41の遠心分離部4のスワラー111を備えた複数のバレル5は、ドライヤ108の直下部に隣接するよう支持板7上に取り付けられてスタンドパイプ3の上方に離間設置されている。
【0050】
そして、シュラウドヘッド105上に立設されたスタンドパイプ3は、その上端34に初段スワラー42が設けられている。初段スワラー42は、倒立円錐体状の初段ハブ44の円錐面に複数枚の初段旋回羽根45を周方向に植設し、上端開口を塞ぐようハブ44の下端である錐体頂部を挿入するようにし、羽根端をスタンドパイプ3の上端縁に固定するようにして取り付けられている。なお、初段スワラー42の初段旋回羽根45は、遠心分離部4のスワラー111の旋回羽根11よりも羽根の旋回が小さく形成されている。
【0051】
このように構成されたものでは、第3の実施形態と同様に、沸騰水型原子炉43の運転を開始することで、核燃料の反応熱により冷却水110がシュラウド103内で加熱、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、シュラウド103内からスタンドパイプ3内に流入する。スタンドパイプ3を上端方向に流れた気液二相流の蒸気は、上端34に上端開口を塞ぐよう設けられた初段スワラー42に流入し、初段旋回羽根45の羽根面に沿って流れる。
【0052】
気液二相流の蒸気は、初段スワラー42に流入し、初段旋回羽根45の形成する湾曲した流路に沿って流れる際に、含まれている湿分による水膜110bを羽根面に形成して水が分離され、同時に旋回力が与えられる。その後、気液二相流の蒸気は上端開口から上方に離間設置されている遠心分離部4との間の空間に旋回しながら放出され、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aも放出される。また初段旋回羽根45の羽根面に形成された水膜110bは、スタンドパイプ3内の気液二相流の蒸気の流れにより初段スワラー42の上端縁部分で剥がされて水滴となる。こうして形成された水滴も、同時に気液二相流の蒸気と共に空間に放出され、粗大水滴110aと共に遠心分離部4に到達する前に重力により冷却水110内に落下する。
【0053】
さらに、粗大水滴110a等が重力分離された気液二相流の蒸気は、遠心分離部4のバレル5のスワラー111を通過し、湿分の水が遠心分離される。遠心分離された水は、水膜110bを形成してバレル5から流れ落ち、排水溝15を流れて排水孔から冷却水110内に落下する。一方、湿分が除去された蒸気は、遠心分離部4からドライヤ108を通り、主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機で電力を生成する。その後、蒸気は復水器で凝縮される等して給水管114を介し原子炉圧力容器102内の冷却水110に戻される。
【0054】
以上の通り、本実施形態によれば、上述の構成とすることで、スタンドパイプ3部分での湿分の水の除去が、遠心力が作用して重力分離が促進されることから、より多いものとすることができると共に、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第5の実施形態)
次に本発明の第5の実施形態を図7及び図8により説明する。なお、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第2の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0056】
図7及び図8に示すように、第5の実施形態の気水分離器51は、第2の実施形態とはスタンドパイプ3と遠心分離部4との間に湿分捕捉部材52を設けた構成としている点で異なっているのみで、他は同じ構成となっている。
【0057】
すなわち、気水分離器51は、上述の第1及び第2の実施形態におけると同様に、発電用原子炉の沸騰水型原子炉53の原子炉圧力容器102内に設置されたシュラウド103とドライヤ108の間に設けられた構成となっており、気水分離器51の複数本のスタンドパイプ3は、シュラウドヘッド105上に立設されている。また、気水分離器51の遠心分離部4のスワラー111を備えた複数のバレル5は、ドライヤ108の直下部に隣接するよう支持板7上に取り付けられて、スタンドパイプ3の上方に離間設置され、さらに、スタンドパイプ3と遠心分離部4との間に湿分捕捉部材52が設けられている。
【0058】
湿分捕捉部材52は、長さの異なる断面がL形状の複数本の湿分捕捉体54を備えて構成されている。そして、複数の湿分捕捉体54は、スカート109に取着された支持部材55に平行、かつ左右対称となるように固定されることで、スカート109内を横断する構成となっていて、左右の最長の湿分捕捉体54同士は、それぞれの広幅側部分54aが対向する形となっている。
【0059】
また、各湿分捕捉体54は、広幅側部分54aと狭幅側部分54bとによって上面側にV形流路56が形成された断面がL形状のもので、最長の湿分捕捉体54同士を除く隣接するもの同士は、狭幅側部分54bの上方に広幅側部分54aが離間配置され、垂直方向に見た場合に両部分が重なり合う関係にあり、その重なり合う関係の部分に蒸気流通路57が形成されている。さらに、各湿分捕捉体54は、広幅側部分54aに上面側と下面側とを連通する長さ方向のスリット58が、長さ方向、幅方向に複数条形成されている。
【0060】
そして、上述のように構成されたものでは、第2の実施形態と同様に、沸騰水型原子炉53の運転を開始することで、核燃料の反応熱により冷却水110がシュラウド103内で加熱、沸騰して気液二相流の蒸気が発生する。発生した気液二相流の蒸気は、シュラウド103内からスタンドパイプ3内を上昇してパイプ上端から、上方に離間設置されている遠心分離部4との間の空間に放出される。空間に放出されることで、気液二相流の蒸気に含まれている比較的大きい粗大水滴110aは、遠心分離部4に到達する前に、重力により冷却水110内に落下する。
【0061】
また、粗大水滴110aが除去された気液二相流の蒸気は、上方に配置された湿分捕捉部材52へと流れ、湿分捕捉部材52の複数の湿分捕捉体54の間の蒸気流通路57を流れ、湿分捕捉部材52の湿分捕捉体54に当たって下面に沿って流れる際に、含まれている湿分による水膜110bを下面に形成して水が分離される。湿分捕捉体54の下面に形成された水膜110bの水は、スリット58を介して上面側に、さらにV形流路56に集められる。V形流路56に集められた水は、V形流路56を流れ、スカート109内面まで延びた湿分捕捉体54の端部に形成された図示しない排水孔から冷却水110内に落下する。
【0062】
さらに、粗大水滴110aが重力分離され、湿分捕捉部材52に一部湿分が捕捉され除去された気液二相流の蒸気は、遠心分離部4のバレル5のスワラー111を通過する間に旋回力が与えられ、湿分の水が遠心分離される。遠心分離された水は、ピックオフリング14、内筒8、外筒9の表面に水膜110bを形成して流れ落ち、排水溝15を流れて排水孔から冷却水110内に落下する。一方、湿分が除去された蒸気は、遠心分離部4からドライヤ108を通り、主蒸気管113から図示しないタービンに供給され、発電機で電力を生成する。その後、蒸気は復水器で凝縮される等して給水管114を介し原子炉圧力容器102内の冷却水110に戻される。
【0063】
以上の通り、本実施形態によれば、上述の構成とすることで、湿分捕捉部材52でより多くの湿分の水の除去が可能となると共に、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、湿分捕捉部材52を長さの異なる断面がL形状の複数本の湿分捕捉体54で構成して、スカート109内を横断するよう設けたが、例えば、湿分捕捉部材を直径の異なるリング状の断面がL形状でV形流路を有する湿分捕捉体で構成し、各湿分捕捉体を同中心となるように放射状の排水路を有する支持部材に固定してスカート109内に設け、捕捉した湿分の水をV形流路に集め排水路を介して冷却水110に戻すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,21,31,41,51…気水分離器、2,22,33,43,53…沸騰水型原子炉、3…スタンドパイプ、4…遠心分離部、5…バレル、6…支持構造体、7…支持板、8…内筒、9…外筒、10…蒸気導入孔、11…旋回羽根、12…ハブ、13…フランジ、14…ピックオフリング、15…排水溝、32…水膜形成部材、34…上端、35…流通間隙、36…スリット、37…排水管、42…初段スワラー、44…初段ハブ、45…初段旋回羽根、52…湿分捕捉部材、54…湿分捕捉体、54a…広幅側部分、54b…狭幅側部分、55…支持部材、56…V形流路、57…蒸気流通路、58…スリット、101…上蓋、102…原子炉圧力容器、110…気体冷却流路、112…下降流通路、113…上昇流通路、101…上蓋、102…原子炉圧力容器、103…シュラウド、104…炉心、105…シュラウドヘッド、108…ドライヤ、109…スカート、110…冷却水、110a…粗大水滴、110b…水膜、111…スワラー、113…主蒸気管、114…主蒸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュラウド内に収納された原子炉炉心の発生熱により冷却水を沸騰させて生成された気液二相流の蒸気を、シュラウドヘッド外にスタンドパイプを介して導出し、スワラーで旋回力を与えて遠心分離して湿分を除去した蒸気と湿分の水に気液分離し、湿分を除去した蒸気をドライヤへと放出する気水分離器であって、
前記スワラーを円筒状のバレル内に設け、かつ前記バレルを前記スタンドパイプの上方に筒軸方向を鉛直方向にして離間設置したことを特徴とする気水分離器。
【請求項2】
前記バレルは、前記ドライヤの下部に設置されていることを特徴とする請求項1記載の気水分離器。
【請求項3】
前記バレルは、その下端が上面に排水溝が刻設され、蒸気導入孔が形成された支持板に取着されていると共に、該支持板が前記ドライヤの下方に延在して前記スタンドパイプを囲うスカートに固着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気水分離器。
【請求項4】
前記スタンドパイプは、上部に湿分を水膜にして捕捉する水膜形成部材が備えられていることを特徴とする請求項1記載の気水分離器。
【請求項5】
前記水膜形成部材は、表面に水膜を形成させて湿分を捕捉する椀形状の部材であると共に、椀側壁に内外を貫通するスリットを有し、かつ椀内外を連通する排水管が接続されていることを特徴とする請求項4記載の気水分離器。
【請求項6】
前記スタンドパイプは、該スタンドパイプ内から放出する気液二相流の蒸気に旋回力を与える旋回羽根を持った初段スワラーが備えられていることを特徴とする請求項1記載の気水分離器。
【請求項7】
前記スタンドパイプと前記スワラーを内部に設けた前記バレルの間に備えられ、前記スタンドパイプから放出された気液二相流の蒸気の湿分を付着させて捕捉する湿分捕捉部材が備えられていることを特徴とする請求項1記載の気水分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−99748(P2011−99748A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254167(P2009−254167)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】