説明

気水分離装置

【課題】装置の小型化を図りながらも消音効果に優れた気水分離装置を提供する。
【解決手段】真空ポンプの吐出配管に接続され、前記真空ポンプから吐き出される気水混合物を分離する気水分離部6と、前記気水分離部の上部に隣接設置され、吐出音を減衰する消音部7を備えている気水分離装置であって、前記消音部7がガスの流れ方向に沿った第一消音室7aと第二消音室7bに区画され、前記第一消音室7aの壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されるとともに、前記第二消音室7bの壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/8に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封式真空ポンプの吐出配管に接続され、前記液封式真空ポンプから吐き出される気水混合物を分離する気水分離部と、前記気水分離部の上部に隣接設置され、吐出音を減衰する消音部を備えている気水分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の気水分離装置は、図5に示すように、内周面のほぼ全域にグラスウールのような吸音材14を貼着した円筒状ケーシング3の内部下段に気水分離部6を形成するとともに、その上部に空気の流出方向に沿って上下壁面距離の異なる三つの消音室7を形成し、各消音室を連通管19で接続して、気水分離部6から導入管4を介して流入した空気が矢示のように蛇行しながら排気管17から排気されるように構成されていた。尚、図中、符合9は気水分離された水の排水管である。
【0003】
【特許文献1】特開平04−47183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した気水分離装置は、ケーシング内で区画された上下壁面距離が異なる三つの消音室で空気を蛇行させつつ吸音材で減音させることにより、音響エネルギーを減衰させるための実効消音距離を確保していたために、十分な消音効果を得るためには円筒の径や高さを十分に確保する必要があり、装置が大型になり広い設置空間が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、装置の小型化を図りながらも消音効果に優れた気水分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明による気水分離装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、液封式真空ポンプの吐出配管に接続され、前記液封式真空ポンプから吐き出される気水混合物を分離する気水分離部と、前記気水分離部の上部に隣接設置され、吐出音を減衰する消音部を備えている気水分離装置であって、前記消音部がガスの流れ方向に沿った複数の消音室に区画され、各消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n),(nは正整数)に設定されるとともに、夫々の消音室の壁面距離が異なるように設定されている点にある。
【0007】
液封式真空ポンプから吐き出される空気による騒音の周波数は、液封式真空ポンプの回転数と回転羽根の枚数で決まる脈動周波数に依存し、このような騒音を減衰させるために消音室で音波の干渉を利用して消音することが効果的である。しかし、脈動周波数に依存する基準吐出音の周波数成分のみを減衰しても十分な消音効果が得られず、基準吐出音の周波数成分の高調波成分の影響も大きいことが確認された。そこで、各消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n),(nは正整数)に設定されるとともに、夫々の消音室の壁面距離が異なるように構成することにより、脈動周波数に依存する騒音を効果的に減衰することができるようになり、実効消音距離を従来よりも大幅に短くすることができるようになった。
【0008】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記消音部がガスの流れ方向に沿った第一消音室と第二消音室に区画され、前記第一消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されるとともに、前記第二消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/8に設定されている点にある。
【0009】
上述の構成によれば、壁面距離が基準吐出音の基本波長の1/4に設定された第一消音室で、騒音エネルギーが一番強い基準吐出音を干渉による減衰作用で効果的に減衰し、壁面距離が基準吐出音の基本波長の1/8に設定された第二消音室で基準吐出音の二次高調波成分を干渉による減衰作用で効果的に減衰することができるようになった。
【0010】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記気水分離部の滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長の1/(4n),(nは正整数)に設定されている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、気水分離部から排出される滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n)に設定されるので、気水分離部でも基準吐出音またはその高調波成分を干渉による減衰作用で効果的に減衰することができるようになり、気水分離装置の高さを制限しながらも消音効果をより向上させることができるようになった。
【0012】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、気水分離部から排出される滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されるので、気水分離部でもエネルギーが一番強い基準吐出音を干渉による減衰作用で効果的に減衰することができるようになった。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明によれば、装置の小型化を図りながらも消音効果に優れた気水分離装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による気水分離装置を説明する。図1から図3に示すように、気水分離装置は、周部に複数の脚部12を備え、天板及び底板に用いられる鏡板1,2が溶着された円筒状の金属ケーシング3内部を仕切り壁5により仕切り、下方に気水分離部6を備えるとともに、上方に吐出音を減衰する消音部7を備えて構成されている。
【0016】
気水分離部6には、液封式真空ポンプ(図示せず)の吐出配管に接続される導入管4が設けられ、液封式真空ポンプから吐き出される気水混合物が内周面に沿って旋回するように導かれ、水分が内壁に衝突して滴下して空気と分離されるとともに、分離された空気が仕切り壁5の中央部に設けられた第一連通管8を通過して消音部7に導かれるように構成されている。
【0017】
気水分離部6の内壁に沿って滴下した水分は気水分離部6の底面に溜まり、排水管9から排水される。ケーシング3のうち導入管4に対向する位置にはメンテナンス用の点検口10が設けられ、開閉可能な蓋で閉塞されている。仕切り壁5の隅に消音部7で滞留した水分を気水分離部6に導く排水口11が設けられている。
【0018】
液封式真空ポンプから吐き出される空気は液封式真空ポンプの回転数Nと羽根車の枚数Zの積であるNZで表される低周波の脈動周波数で振動しており、消音部7ではこのような吐出音を音波の干渉を利用して消音するべく、ガスの流れ方向に沿った第一消音室7aと第二消音室7bに仕切り壁13で区画し、第一消音室7aの上下の壁面距離を基準吐出音の基本波長λの1/4に設定するとともに、第二消音室7bの上下壁面間の平均距離を基準吐出音の基本波長λの1/8に設定している。
【0019】
例えば、液封式真空ポンプの回転数Nが460rpm、羽根車の枚数Zが20枚の場合を例示すると脈動周波数fが153Hzとなり、音速を340m/sのときに発生する吐出音の波長λは2.22mとなる。吐出音の音響エネルギーは波長λの基準吐出音、波長λの整数倍の高調波成分に夫々ピークを有する。
【0020】
そこで、第一消音室7aの上下の壁面距離を基準吐出音の基本波長λの1/4である555mmに設定するとともに、第二消音室7bの上下壁面間の平均距離を基準吐出音の基本波長λの1/8である277mmに設定することにより、第一消音室7aで騒音エネルギーが一番強い基準吐出音が干渉による減衰作用で減衰され、第二消音室7bで基準吐出音の二次高調波成分が減衰される。
【0021】
尚、図1に示すように、天板1として鉄板を用いた場合は最大高さを1/8λとしてもよいが、鏡板部の曲面と仕切り壁13とで形成される空間の平均高さを1/8λとするのが望ましい。
【0022】
消音部7の内周部にはパンチングメタル15で固定された吸音材としてのグラスウール14が配され、消音部7に導かれた空気の音響エネルギーの一部はグラスウール14によって減衰されるように構成されている。
【0023】
図3(a)に示すように、仕切り壁13の中心から径方向に離隔した位置であって、第一連通管8の開口部とずらせた位置に四つの第二連通管16が設けられ、第一消音室7aの上下壁面で反射しながら音響エネルギーが減衰された空気が第二消音室7bに導かれるように構成されている。
【0024】
第二消音室7bの上下壁面で反射しながら音響エネルギーが減衰された空気は、鏡板1に取り付けられた排気管17から排気される。
【0025】
第一連通管8の上端より第二連通管16の下端が下方に位置するように、及び、第二連通管16の上端より排気管17の下端が下方に位置するように長さが設定され、第一連通管8の上端から直ちに第二連通管16に空気が流出したり、第二連通管16の上端から直ちに排気管17に空気が流出することの無いように構成されている。
【0026】
従って、図2中、一点鎖線で示すように、導入管4から気水分離部6に流入した空気は第一連通管8を通過して第一消音室7aに導かれて、主に基準吐出音が消音された後に、さらに第二連通管16を通過して第二消音室7bに導かれて、主に第二高調波成分が消音された後に排気管17から排気される。
【0027】
図4(a)に示すように、金属ケーシング3b(3)の上端と天板である鏡板1とが溶着されるとともに、金属ケーシング3b(3)に溶着された断面が「L」の字の環部材18でグラスウール14の上端側が保持され、ケーシング3bの内側からパンチングメタル15によってグラスウール14が支持されている。
【0028】
また、図4(b)に示すように、第一消音室7aと第二消音室7bを仕切る仕切り壁13の周部は、金属ケーシング3b(3)に溶着された断面が「L」の字の環部材18と溶着されている。
【0029】
さらに、図4(c)に示すように、消音部7と気水分離部6を仕切る仕切り壁5の周部は、金属ケーシング3a(3)に溶着された断面が「L」の字の環部材18と溶着されている。金属ケーシング3のうち、気水分離部6のケーシング3aは、グラスウールを設けなくとも、外部に漏れる吐出音を軽減させるように消音部7のケーシング3bより厚肉に構成され、ケーシング3a,3b間は溶着されている。
【0030】
このように、通常運転時において、水が流入する気水分離部6にはグラスウールを設けていないので、ブラスウール部分に水が入らないように二重壁の水密構造を形成する必要がなくなる。
【0031】
第一連通管8は、気水分離部6への突出長さが短くなるように、本実施形態では気水分離部6の上下壁面距離の1/10以下となるように構成され、万が一排水管9が閉塞して液封式真空ポンプの背圧が異常に上昇したときであっても、空気が容易に消音部7に流出可能なように構成されている。尚、同時に気水分離装置の天板及び底板に鏡板を用いることにより耐圧性を向上させている。
【0032】
以下に別実施形態を説明する。上述した実施形態では、第一消音室7aの壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されるとともに、第二消音室7bの壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/8に設定されているものを説明したが、本発明による気水分離装置は、このような構成に限るものではなく、消音部7がガスの流れ方向に沿った複数の消音室に区画され、各消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n)、(nは正整数)に設定されるとともに、夫々の消音室の壁面距離が異なるように構成されているものであればよい。
【0033】
例えば、第一消音室7aの上下壁面距離を基本波長λの1/4に設定し、第二消音室7bの上下壁面距離を基本波長λの1/12に設定することにより、第二消音室7bで第三高調波成分を効率的に消音することも可能である。さらに、消音室を空気の流れ方向に沿って三室設けて、第一消音室の上下壁面距離を基本波長λの1/4に設定し、第二消音室の上下壁面距離を基本波長λの1/8に設定し、第三消音室の上下壁面距離を基本波長λの1/12に設定する等、適宜構成することが可能である。
【0034】
このような構成を採用することにより、ケーシング3を従来よりも小径に構成しながら、消音効果を高めることができるようになる。
【0035】
さらに、気水分離部6の滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n),(nは正整数)に設定することにより、気水分離部でも消音効果を奏するように構成することができる。この場合には、滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定することにより、最も騒音レベルの高い成分を消音できるとともに、排水管9が閉塞して液封式真空ポンプの背圧が異常に上昇したときであっても、空気が容易に消音部7に流出可能なように容積を確保することができるようになる。
【0036】
上述の各種の実施形態は、本発明の一実施例であり、本発明による作用効果を奏する範囲で各部の具体的構成や寸法等は適宜変更設計できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による気水分離装置の説明図
【図2】本発明による気水分離装置の消音作用の説明図
【図3】(a)は気水分離装置の平面図、(b)は図1のAA線断面図
【図4】気水分離装置の要部の断面図
【図5】従来の気水分離装置の説明図
【符号の説明】
【0038】
1:天板(鏡板)
2:底板(鏡板)
3:金属ケーシング
4:導入管
5:仕切り壁
6:気水分離部
7:消音部
7a:第一消音室
7b:第二消音室
8:第一連通管
9:排水管
10:点検口
11:排水口
12:脚部
13:仕切り壁
14:グラスウール
15:パンチングメタル
16:第二連通管
17:排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液封式真空ポンプの吐出配管に接続され、前記液封式真空ポンプから吐き出される気水混合物を分離する気水分離部と、前記気水分離部の上部に隣接設置され、吐出音を減衰する消音部を備えている気水分離装置であって、
前記消音部がガスの流れ方向に沿った複数の消音室に区画され、各消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n),(nは正整数)に設定されるとともに、夫々の消音室の壁面距離が異なるように設定されている気水分離装置。
【請求項2】
前記消音部がガスの流れ方向に沿った第一消音室と第二消音室に区画され、前記第一消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されるとともに、前記第二消音室の壁面距離が基準吐出音の基本波長λの1/8に設定されている請求項1記載の気水分離装置。
【請求項3】
前記気水分離部の滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/(4n),(nは正整数)に設定されている請求項1または2記載の気水分離装置。
【請求項4】
前記滞留水の水面と上壁面との距離が基準吐出音の基本波長λの1/4に設定されている請求項3記載の気水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−240689(P2008−240689A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84624(P2007−84624)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】