気泡シート体
【課題】気泡シート体の巾方向への引き裂き作業を、刃物等の専用の道具を用いることなく、手で簡単且つ的確に行うことができる気泡シート体を提供する。
【解決手段】ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティX21を多数個凹設した真空成形ロールX2を利用して突状のキャップCSaを複数成形したキャップシートCSと、キャップシートCSのうちキャップCSaの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートBSとを少なくとも具備してなり、各キャップCSaが、気泡シート体Sの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dを、気泡シート体Sの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dよりも大きく設定した略楕円形をなすものであり、これら複数のキャップCSaを、気泡シート体Sの巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップCSaの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた横裂き誘発部SYを形成した。
【解決手段】ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティX21を多数個凹設した真空成形ロールX2を利用して突状のキャップCSaを複数成形したキャップシートCSと、キャップシートCSのうちキャップCSaの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートBSとを少なくとも具備してなり、各キャップCSaが、気泡シート体Sの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dを、気泡シート体Sの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dよりも大きく設定した略楕円形をなすものであり、これら複数のキャップCSaを、気泡シート体Sの巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップCSaの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた横裂き誘発部SYを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡シート体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、突状のキャップを多数設けたキャップフィルムと、平坦なバックフィルムとを貼り合わせてなる気泡シート体が、その優れた緩衝性能を活用すべく包装用の資材等として広く使用されている。
【0003】
通常、長尺に製造した気泡シート体はロール状に巻いた状態で提供されており、このような気泡シート体を利用して包装する際、被包装物のサイズに合わせて気泡シート体を所定寸法分だけ繰り出し、カッターナイフや鋏等の刃物で裁断するのが一般的な使用形態である。しかしながら、刃物を扱うため安全性に劣るため、近時では刃物を用いずに手で任意のサイズに切り裂き可能な気泡シート体の開発が進められている。
【0004】
その一例としては、気泡シート体の巾方向に沿って切断用のミシン目を所定ピッチで設ける態様(例えば下記特許文献1参照)や、キャップシート又はバックシートに、巾方向に裂け易い特性を有するフィルムを使用した態様(例えば下記特許文献2参照)が挙げられる。
【特許文献1】特開平10―72063号公報
【特許文献2】特開2004―74725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡シート体の巾方向に沿って切断用のミシン目を所定ピッチで設けた態様であれば、この気泡シート体に無理な引張力が作用した場合に、切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという問題があった。
【0006】
また、キャップシート又はバックシートとして、巾方向に裂け易い特性を有するフィルムを適用する場合には、従来から用いられていたフィルムとは異なる専用の樹脂材料を用意しなければならず、製造コストの増加を招来し得る可能性があった。
【0007】
一方、例示したこれら2つの態様を採用していない従来から周知のオーソドックスな気泡シート体は、上述した問題は生じないものの、キャップシート及びバックシートが、それぞれダイスから熱可塑化状態で真空成形ロールに押し出されるフィルムから成形され、押出工程において押出方向(換言すればシート体の長手寸法)に延伸されるものであるため、延伸時に分子構造が変化し、押出方向(シート体の長手方向)には裂き易いという性質を有する。このような性質と、千鳥状に配した各キャップが略円形又は略正方形であり、これらキャップによってシートに方向性を持たせていないという要件とが相俟って、気泡シート体を所定の部位でその巾方向に手で引き裂こうと試みた場合に、引き裂き方向がシート体の巾方向から逸れて、気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生し、巾方向に沿って直線上に引き裂くことが困難であった。このように、従来の気泡シート体は、気泡シート体を所定の部位でその巾方向に手で引き裂こうと試みた場合に、引き裂き方向が縦横ばらばらになるいわゆる稲妻切りが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業を、刃物等の専用の道具を用いることなく、手で簡単且つ的確に行うことができる気泡シート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の気泡シート体は、ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備したものであって、前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略楕円形状又は略長方形状をなすものであり、これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させた横裂き誘発部を形成してなることを特徴とする。
【0010】
ここで、キャップシートの巾方向、長手方向は、それぞれ気泡シート体の巾方向、長手方向と同一である。また、「横裂き誘発部」は、キャップシートの巾方向に沿って連続して延びる単一のものからなる態様であってもよく、又はキャップシートの巾方向に沿って所定ピッチで設けた複数のものからなる態様であっても構わない。さらに、「巾方向に沿ったキャップの列同士の間に横裂き誘発部を形成」するとは、「キャップの列毎に横裂き誘発部を形成」する、又は「キャップの複数列毎に横裂き誘発部を形成」する、これら何れの態様をも包含するものである。
【0011】
このようなものであれば、横裂き誘発部が、気泡シート体の巾方向に沿ったキャップの列同士の間に略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させたものであるため、ミシン目を設けた態様の場合に生じる不具合、すなわち、無理な引張力が作用した際に切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという不具合が生じることなく、しかも、各キャップが気泡シート体の巾方向に延びる細長い形状のものであるため、これら各キャップによって気泡シート体に巾方向への方向性を持たせることができるとともに、これら各キャップを、気泡シート体の巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配しているため、横裂き誘発部に沿って引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体の巾方向から逸れることを長手方向に沿って非直線上に並配したキャップによって防止することができ、不意に気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、横裂き誘発部を利用して、手で簡単且つ的確に気泡シート体の巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0012】
特に、長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、前記横裂き誘発部の外側端部に連続し得る切込部を備えたものであれば、この切込部を利用してさらに切り裂き易くなり、巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。
【0013】
加えて、各キャップが、略楕円形状をなし、前記最長横寸法Dと前記最長縦寸法dとの相対比率を、D/d=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定していれば、D/dが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップの形状が円形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を解消するとともに、D/dが1.75より大きい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を解消することができる。
【0014】
さらに、各キャップが略楕円形状をなすものであり、巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P1、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ式〔3〕及び式〔4〕を満たす値に設定している。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔3〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔4〕
各離間寸法P1、P2がそれぞれ1.1D、1.1dよりも小さい場合には、キャップが詰め過ぎた状態となり、このようなキャップを真空成形するための吸引キャビティを成形ロールの外周面に穿孔加工することは極めて困難であり、また各キャップの肉厚分布が不均一になり易いという不具合が生じ、一方、各離間寸法P1、P2がそれぞれ1.3D、1.3dよりも大きい場合には、キャップ間の隙間が大きくなり、緩衝機能を損なうおそれがある。
【0015】
また、キャップの形状が略長方形状であるものを採用する場合には、キャップが楕円形状である場合と略同様に、その最長横寸法Cと最長縦寸法cとの相対比率を、C/c=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定すればよい。これにより、C/cが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップの形状が正方形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を解消するとともに、C/cが1.75より大きい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を解消することができる。
【0016】
さらに、キャップの形状が略長方形状であるものを採用する場合には、巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P3、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P4をそれぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定していることが望ましい。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
このような式を満たす値に設定することにより、キャップが略楕円形状の場合と略同様の効果を得ることができる。すなわち、各離間寸法P3、P4がそれぞれ1.1C、1.1cよりも小さい場合には、キャップが詰め過ぎた状態となり、このようなキャップを真空成形するための吸引キャビティを成形ロールの外周面に穿孔加工することは極めて困難であり、また各キャップの肉厚分布が不均一になり易いという不具合が生じ、一方、各離間寸法P3、P4がそれぞれ1.3C、1.3cよりも大きい場合には、キャップ間の隙間が大きくなり、緩衝機能を損なうおそれがある。
【0017】
また、前記各キャップが、略長方形状をなすものである場合、各キャップの最長縦寸法cを、略楕円形状をなすキャップの最長縦寸法dに対して、0.3d≦c≦1.3d、という式を満たす値に設定していることが好ましい。
【0018】
また、本発明の気泡シート体は、ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなるものであって、前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略ハート形又は略多角形状、或いは中央部が括れた略瓢箪形状をなすものであり、これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配してなることを特徴とする。
【0019】
ここで、キャップシートの巾方向、長手方向は、それぞれ気泡シート体の巾方向、長手方向と同一である。
【0020】
このようなものであれば、各キャップが気泡シート体の巾方向に延びる横長のものであるため、これら各キャップによって気泡シート体に巾方向への方向性を持たせることができるとともに、これら各キャップを、気泡シート体の巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配しているため、気泡シート体を巾方向に沿って引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体の巾方向から逸れることを長手方向に沿って非直線上に並配したキャップによって防止することができ、不意に気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、手で簡単且つ的確に気泡シート体の巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0021】
殊に、長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込む切込部を所定ピッチで形成していれば、この切込部を利用してさらに切り裂き易くなり、やはり巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業中に、引き裂き方向が縦横ばらばらになるいわゆる稲妻切りが発生することを防止し、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業を手で簡単且つ的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る気泡シート体Sは、図1に示す気泡シート体製造機Xによって製造され、突状のキャップCSaを複数成形したキャップシートCSと、キャップシートCSのうちキャップCSaの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートBSとを備えたものである。
【0025】
気泡シート体製造機Xは、キャップシートCSを供給するキャップシート供給装置X1と、真空吸引源X2vに接続され且つキャップシート供給装置X1から供給されたキャップシートCSに多数の突状のキャップCSaを成形する真空成形ロールX2と、バックシートBSを供給するバックシート供給装置X3と、真空成形ロールX2により多数のキャップCSaを成形したキャップシートCSの裏面側にバックシート供給装置X3から供給されたバックシートBSを押し付けて融着する加圧ロールX4と、キャップシートCS及びバックシートBSを相互に融着してなる気泡シート体Sを真空成形ロールX2から剥離する剥離ロールX5とを少なくとも備えたものである。
【0026】
キャップシート供給装置X1は、例えば、キャップシート押出機X11と、キャップシート用フラットダイスX12とから構成したものである。
【0027】
真空成形ロールX2は、図2に示すように、ロール本体の外周面に多数個凹設されたキャップ成形用の吸引キャビティX21と、吸引キャビティX21の底壁部に嵌合可能なプラグX22と、ロール本体の一端から他端に亘って形成され両端を開口した吸引用横孔X23と、各吸引キャビティX21の底壁部に設けられそれらの吸引キャビティX21をそれぞれ対応する吸引用横孔X23に連通させる円筒状の真空通路X24とを具備してなり、吸引用横孔X23の両端を真空吸引源X2vに接続し得るように構成したものである。
【0028】
各吸引キャビティX21は、ロール本体の巾方向(軸方向)に伸びる横長の楕円形状をなすものであり、本実施形態ではこのような吸引キャビティX21をロール本体の外周面に千鳥状に設けている。具体的には、吸引キャビティX21を、ロール本体の巾方向(軸方向)に沿って略直線上に並配し、且つ円周方向に沿って非直線上に並配している。
【0029】
プラグX22は、例えばリン青銅やジェラルミン等の金属素材から形成した薄板状のものであり、外縁部に複数の平面視略部分円弧状の切除部X22aを形成したものである。
【0030】
各吸引用横孔X23は、ロール本体の軸心方向に沿って延伸する略直線状のものであり、これら複数の吸引用横孔X23を、ロール本体の周方向に沿って所定ピッチ離間させて設けている。
【0031】
真空通路X24は、プラグX22を吸引キャビティX21の底壁部に嵌合した状態において、プラグX22の切除部X22aを介して吸引キャビティX21の内部空間に連通するものである。
【0032】
このような構造であるため、真空吸引時において、吸引キャビティX21内の空気は切除部X22aを通過し、真空通路X24を経て吸引用横孔X23へと至る。すなわち、プラグX22の切除部X22aが、吸引キャビティX21をそれぞれ対応する真空通路X24及び吸引用横孔X23に連通させる吸引孔として機能する。
【0033】
また、本実施形態の真空成形ロールX2は、ロール本体の外周面に、巾方向(軸方向)に沿って延伸する凹溝X25を形成している。凹溝X25は、図3に示すように、例えば断面視V字状をなし、その窪み寸法を吸引キャビティX21の窪み寸法よりも小さく設定している。本実施形態では、凹溝X25を、ロール本体の巾方向(軸方向)に沿って略直線上に並配した吸引キャビティX21の複数列(例えば3列)毎に形成している。
【0034】
一方、バックシート供給装置X3は、例えば、バックシート押出機X31と、バックシート用フラットダイスX32とから構成したものである。
【0035】
次に、このような気泡シート体製造機Xを用いて気泡シート体Sを製造する方法及び作用について説明する。
【0036】
先ず、キャップシート供給装置X1から熱可塑化状態にある膜状のキャップシート用フィルムCSFが回転する真空成形ロールX2に逐次供給され、真空排気装置X2vに接続された真空成形ロールX2の真空吸引作用により、吸引キャビティX21の形状に対応した多数のキャップCSaを有したキャップシートCSが連続的に形成される。多数のキャップCSaは、キャップシートCSの巾方向に沿って略直線状に形成され、且つキャップシートCSの長手方向(押出方向)に沿って非直線上に形成される。さらに、真空吸引時に、凹溝X25の形状に対応した窪み部がキャップシートCSの巾方向に沿って形成される。本実施形態では、キャップシートCSの巾方向に沿って略直線上に列をなすキャップCSaの複数列(図示例では3列)毎に窪み部が形成される。
【0037】
一方、バックシート供給装置X3から熱可塑化状態にある膜状のバックシート用フィルムBSFが真空成形ロールX2に逐次供給され、加圧ロールX4により当該バックシート用フィルムBSFからなるバックシートBSを前記キャップシートCSの底面側に押し付けて貼り合わせる。これにより、十分な真空状態で密閉された多数のキャップCSaを有し、且つ窪み部に倣って窪んだ横裂き誘発部SYを有する二層構造の気泡シート体Sが成形される(図4参照)。その後、剥離ロールX5により真空成形ロールX2から剥離され、図示しないバックシート用ラミネートフィルム供給装置によりバックシートBSの底面側にラミネートフィルムを押し付けて貼り合せる。このラミネートフィルムは、ポリエチレン等と比較して巾方向に裂け易い特性を有する素材(例えば、高密度ポリエチレン;HDPE)からなるものである。さらに、その後、図示しない耳部切断装置により、気泡シート体Sの耳部(両側縁部)を略ジグザグ状に切断する。耳部切断装置によって切断された領域のうち、巾方向中央部に向かって窪んだ切込部SKが、前記横裂き誘発部SYの外側端部に連続し得るように設定している(図4参照)。このようにして成形された気泡シート体Sは、最終的に図示しない巻取ロールに巻き取られる。すなわち、気泡シート体Sの長手方向は、巻取ロールに巻き取られる巻取方向と同一方向であるということが言える。
【0038】
このような工程を経て製造される本実施形態に係る気泡シート体Sは、図4及び図5に示すように、各キャップCSaが、吸引キャビティX21の形状に対応した略楕円形をなし、且つキャップシートCSの巾方向、すなわち気泡シート体Sの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dと、キャップシートCSの長手方向、すなわち気泡シート体Sの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dとの相対比率を式〔1〕を満たす値に設定している。
D/d=1.25〜1.75・・・式〔1〕
このような寸法に設定することにより、各キャップCSaによって、気泡シート体Sに巾方向に沿った方向性を持たせることができ、気泡シート体Sの長手方向への引き裂きを抑制することができるとともに、気泡シート体S全体の緩衝機能も有効に発揮し得るものとなる。
【0039】
また、図5に示すように、気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、及び気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2を、それぞれ式〔2〕及び式〔3〕を満たす値に設定している。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔2〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔3〕
気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ「1.3D」、「1.3d」より大きい値に設定した場合には、単位面積あたりのキャップCSaの数が減少し過ぎて気泡シート体S全体の強度低下を招来し得る。
【0040】
一方、前記各離間寸法P1、P2を「1.1D」、「1.1d」より小さい値に設定した場合には、単位面積あたりのキャップCSaの数は増大するものの、隣接するキャップCSaに樹脂が均等に分配されず、各キャップCSaの肉厚分布が不均一になるという問題が生じ、さらには、このような極めて高い密度でキャップCSaを成形するためには、当然のことながらロール本体の外周面に吸引キャビティX21を超高密度で設ける必要があり、この場合、高度な切削加工技術を要し、吸引孔のディストリビューションにばらつきが生じ得るおそれがある。
【0041】
このように、本実施形態に係る気泡シート体Sは、各キャップCSaが、巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dを、長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dよりも大きく設定した略楕円形をなすものであり、これら複数のキャップCSaを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップCSaの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた横裂き誘発部SYを形成したものであるため、巾方向に沿った引き裂きを容易にすべくミシン目を設けた従来の態様と比較して、無理な引張力が作用した際に切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという不具合が生じることがなく、しかも、各キャップCSaが気泡シート体Sの巾方向に延びる横長の形状のものであるため、これら各キャップCSaによって気泡シート体Sに巾方向への方向性を持たせることができ、横裂き誘発部SYに沿って手で引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体Sの巾方向から逸れるという事態を長手方向に沿って非直線上に並配したキャップCSaによって防止することができ、不意に気泡シート体Sの長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、横裂き誘発部SYを利用して、手で簡単且つ的確に気泡シート体Sの巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0042】
特に、気泡シート体Sの長手方向に沿った両側縁部(耳部)に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、横裂き誘発部SYの外側端部に連続し得る切込部SKを形成しているため、切込部SKを利用することによってさらに切り裂き易くなり、巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。本実施形態では、気泡シート体Sの長手方向に沿った両側縁部に、それぞれ切込部SKを形成しているため、気泡シート体Sの何れの側縁部からも横裂き作業をスムーズに行うことができ、好適である。
【0043】
各キャップCSaが、
略楕円形をなし、最長横寸法Dと最長縦寸法dとの相対比率を、D/d=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定しているため、D/dが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSaの形状が円形に近付き、気泡シート体Sに方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を防止することができるとともに、D/dが1.75より高い場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSaが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を防止することが可能である。
【0044】
さらに、気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、及び気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ前記式〔2〕及び前記式〔3〕を満たす値に設定しているため、適切な緩衝機能を発揮するとともに、隣接するキャップCSaに樹脂が均等に分配され、各キャップCSaの肉厚分布を均一にすることが可能である。さらに、ロール本体に対する吸引キャビティX21の切削加工も無理なく行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、バックシートBSの底面側に、巾方向に裂け易い特性を有する素材からなるラミネートフィルムを貼り合せているため、気泡シート体Sを巾方向に引き裂く作業をより簡単且つスムーズに行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、前記実施形態では、横裂き誘発部を、気泡シート体の巾方向に沿って連続して延伸するものを例示したが、これに代えて、気泡シート体の巾方向に沿って間欠的に形成した横裂き誘発部を適用しても構わない。また、横裂き誘発部が、キャップの頂部とは反対方向に突出させた段部からなるものであってもよい。さらに、横裂き誘発部を、気泡シート体の長手方向に沿って隣接するキャップの列毎に形成しても構わない。
【0048】
また、切込部は、他の領域よりも気泡シート体の巾方向中央部に向かって入り込み、横裂き誘発部の外側端部に連続し得るものであればよく、気泡シート体の耳部全体をギザギザ状に形成した態様に代えて、図6に示すように、気泡シート体の耳部全体は略直線上をなし、切込部SK1の形成箇所のみを他の領域よりも気泡シート体の巾方向中央部に向かって入り込ませた態様や、図7に示すように、気泡シート体の耳部全体は略直線上をなし、単純な直線上のスリットのみによって切込部SK2を構成する態様を採用しても構わない。また、切込部を、気泡シート体の長手方向に沿った両側縁部のうち何れか一方の側縁部にのみ形成した態様であってもよい。
【0049】
また、図8に示すように、各キャップCSa1が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Cを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法cよりも大きく設定した略長方形状をなすものであっても構わない。この場合、最長横寸法Cと、最長縦寸法cとの相対比率を式〔4〕を満たす値に設定していることが好ましい。
C/c=1.25〜1.75・・・式〔4〕
長方形状のキャップCSa1の最長横寸法Cと最長縦寸法cとの相対比率をこのような式〔4〕を満たす値に設定することにより、C/cが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSa1の形状が正方形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を防止することができるとともに、C/cが1.75より高い場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSa1が細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を防止することが可能である。さらに、図8に示すように、気泡シート体の巾方向に沿って隣接するキャップCSa1の中心同士の離間寸法P3、及び気泡シート体の長手方向に沿って隣接するキャップCSa1の中心同士の離間寸法P4を、それぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定している。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
このような値に設定することにより、適切な緩衝機能を発揮するとともに、隣接するキャップCSa1に樹脂が均等に分配され、各キャップCSa1の肉厚分布を均一にすることが可能である。さらに、ロール本体に対する吸引キャビティの切削加工も無理なく行うことができる。
【0050】
また、各キャップCSa1の最長縦寸法cを、前記略楕円形状をなすキャップCSaの最長縦寸法dを基準とした場合、以下の式〔7〕を満たす値に設定していることが好ましい。
0.3d≦c≦1.3d・・・式〔7〕
また、図9に示すように、各キャップCSa2が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法Hを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法hよりも大きく設定した略ハート形をなし、これら複数のキャップCSa2を、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配した気泡シート体であっても構わない。
【0051】
さらには、図10及び図11に示すように、各キャップCSa3、CSa4が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法HI、HYを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法hi、hyよりも大きく設定した略多角形状(一例として図10に示す菱形形状のキャップCSa3)、或いは中央部が括れた略瓢箪形状(図11参照)をなすものであってもよい。
【0052】
また、バックシートの底面側にラミネートフィルムを貼り合せない、単純な二層状の気泡シート体や、キャップシートの表面側(各キャップの頂部側)にさらにライナーシートを貼着した三層状の気泡シート体であっても構わない。
【0053】
キャップシート用フィルム及びバックシート用フィルムの材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体が挙げられる。
【0054】
前記実施形態では、吸引キャビティとして、段付の吸引キャビティにプラグを嵌合させる態様を例示したが、これに限らず、吸引キャビティとして有底のものを適用してもよい。この場合、吸引孔は、各吸引キャビティの底壁からロール本体の軸心に向かって延伸し且つ吸引用横孔に連通する小貫通孔により構成される。
【0055】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態における気泡シート体製造機の概略図。
【図2】同実施形態における真空成形ロールの正面概略図。
【図3】同実施形態における真空成形ロールの要部側断面を模式的に示す図。
【図4】同実施形態に係る気泡シート体の展開図。
【図5】図4の要部拡大図。
【図6】同実施形態における切込部の一変形例を示す図。
【図7】同実施形態における切込部の他の変形例を示す図。
【図8】同実施形態におけるキャップの他の変形例を図5に対応して示す図。
【図9】同実施形態に係る気泡シート体の一変形例を図4に対応して示す図。
【図10】同実施形態におけるキャップの他の変形例を示す図。
【図11】同実施形態におけるキャップのさらに異なる他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0057】
X21…吸引キャビティ
X2…真空成形ロール
CSa、CSa1、CSa2、CSa3、CSa4…キャップ
CS…キャップシート
BS…バックシート
S…気泡シート体
SY…横裂き誘発部
SK、SK1、SK2…切込部
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡シート体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、突状のキャップを多数設けたキャップフィルムと、平坦なバックフィルムとを貼り合わせてなる気泡シート体が、その優れた緩衝性能を活用すべく包装用の資材等として広く使用されている。
【0003】
通常、長尺に製造した気泡シート体はロール状に巻いた状態で提供されており、このような気泡シート体を利用して包装する際、被包装物のサイズに合わせて気泡シート体を所定寸法分だけ繰り出し、カッターナイフや鋏等の刃物で裁断するのが一般的な使用形態である。しかしながら、刃物を扱うため安全性に劣るため、近時では刃物を用いずに手で任意のサイズに切り裂き可能な気泡シート体の開発が進められている。
【0004】
その一例としては、気泡シート体の巾方向に沿って切断用のミシン目を所定ピッチで設ける態様(例えば下記特許文献1参照)や、キャップシート又はバックシートに、巾方向に裂け易い特性を有するフィルムを使用した態様(例えば下記特許文献2参照)が挙げられる。
【特許文献1】特開平10―72063号公報
【特許文献2】特開2004―74725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡シート体の巾方向に沿って切断用のミシン目を所定ピッチで設けた態様であれば、この気泡シート体に無理な引張力が作用した場合に、切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという問題があった。
【0006】
また、キャップシート又はバックシートとして、巾方向に裂け易い特性を有するフィルムを適用する場合には、従来から用いられていたフィルムとは異なる専用の樹脂材料を用意しなければならず、製造コストの増加を招来し得る可能性があった。
【0007】
一方、例示したこれら2つの態様を採用していない従来から周知のオーソドックスな気泡シート体は、上述した問題は生じないものの、キャップシート及びバックシートが、それぞれダイスから熱可塑化状態で真空成形ロールに押し出されるフィルムから成形され、押出工程において押出方向(換言すればシート体の長手寸法)に延伸されるものであるため、延伸時に分子構造が変化し、押出方向(シート体の長手方向)には裂き易いという性質を有する。このような性質と、千鳥状に配した各キャップが略円形又は略正方形であり、これらキャップによってシートに方向性を持たせていないという要件とが相俟って、気泡シート体を所定の部位でその巾方向に手で引き裂こうと試みた場合に、引き裂き方向がシート体の巾方向から逸れて、気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生し、巾方向に沿って直線上に引き裂くことが困難であった。このように、従来の気泡シート体は、気泡シート体を所定の部位でその巾方向に手で引き裂こうと試みた場合に、引き裂き方向が縦横ばらばらになるいわゆる稲妻切りが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業を、刃物等の専用の道具を用いることなく、手で簡単且つ的確に行うことができる気泡シート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の気泡シート体は、ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備したものであって、前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略楕円形状又は略長方形状をなすものであり、これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させた横裂き誘発部を形成してなることを特徴とする。
【0010】
ここで、キャップシートの巾方向、長手方向は、それぞれ気泡シート体の巾方向、長手方向と同一である。また、「横裂き誘発部」は、キャップシートの巾方向に沿って連続して延びる単一のものからなる態様であってもよく、又はキャップシートの巾方向に沿って所定ピッチで設けた複数のものからなる態様であっても構わない。さらに、「巾方向に沿ったキャップの列同士の間に横裂き誘発部を形成」するとは、「キャップの列毎に横裂き誘発部を形成」する、又は「キャップの複数列毎に横裂き誘発部を形成」する、これら何れの態様をも包含するものである。
【0011】
このようなものであれば、横裂き誘発部が、気泡シート体の巾方向に沿ったキャップの列同士の間に略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させたものであるため、ミシン目を設けた態様の場合に生じる不具合、すなわち、無理な引張力が作用した際に切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという不具合が生じることなく、しかも、各キャップが気泡シート体の巾方向に延びる細長い形状のものであるため、これら各キャップによって気泡シート体に巾方向への方向性を持たせることができるとともに、これら各キャップを、気泡シート体の巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配しているため、横裂き誘発部に沿って引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体の巾方向から逸れることを長手方向に沿って非直線上に並配したキャップによって防止することができ、不意に気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、横裂き誘発部を利用して、手で簡単且つ的確に気泡シート体の巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0012】
特に、長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、前記横裂き誘発部の外側端部に連続し得る切込部を備えたものであれば、この切込部を利用してさらに切り裂き易くなり、巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。
【0013】
加えて、各キャップが、略楕円形状をなし、前記最長横寸法Dと前記最長縦寸法dとの相対比率を、D/d=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定していれば、D/dが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップの形状が円形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を解消するとともに、D/dが1.75より大きい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を解消することができる。
【0014】
さらに、各キャップが略楕円形状をなすものであり、巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P1、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ式〔3〕及び式〔4〕を満たす値に設定している。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔3〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔4〕
各離間寸法P1、P2がそれぞれ1.1D、1.1dよりも小さい場合には、キャップが詰め過ぎた状態となり、このようなキャップを真空成形するための吸引キャビティを成形ロールの外周面に穿孔加工することは極めて困難であり、また各キャップの肉厚分布が不均一になり易いという不具合が生じ、一方、各離間寸法P1、P2がそれぞれ1.3D、1.3dよりも大きい場合には、キャップ間の隙間が大きくなり、緩衝機能を損なうおそれがある。
【0015】
また、キャップの形状が略長方形状であるものを採用する場合には、キャップが楕円形状である場合と略同様に、その最長横寸法Cと最長縦寸法cとの相対比率を、C/c=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定すればよい。これにより、C/cが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップの形状が正方形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を解消するとともに、C/cが1.75より大きい場合に生じ得る不具合、すなわち、キャップが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を解消することができる。
【0016】
さらに、キャップの形状が略長方形状であるものを採用する場合には、巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P3、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P4をそれぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定していることが望ましい。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
このような式を満たす値に設定することにより、キャップが略楕円形状の場合と略同様の効果を得ることができる。すなわち、各離間寸法P3、P4がそれぞれ1.1C、1.1cよりも小さい場合には、キャップが詰め過ぎた状態となり、このようなキャップを真空成形するための吸引キャビティを成形ロールの外周面に穿孔加工することは極めて困難であり、また各キャップの肉厚分布が不均一になり易いという不具合が生じ、一方、各離間寸法P3、P4がそれぞれ1.3C、1.3cよりも大きい場合には、キャップ間の隙間が大きくなり、緩衝機能を損なうおそれがある。
【0017】
また、前記各キャップが、略長方形状をなすものである場合、各キャップの最長縦寸法cを、略楕円形状をなすキャップの最長縦寸法dに対して、0.3d≦c≦1.3d、という式を満たす値に設定していることが好ましい。
【0018】
また、本発明の気泡シート体は、ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなるものであって、前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略ハート形又は略多角形状、或いは中央部が括れた略瓢箪形状をなすものであり、これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配してなることを特徴とする。
【0019】
ここで、キャップシートの巾方向、長手方向は、それぞれ気泡シート体の巾方向、長手方向と同一である。
【0020】
このようなものであれば、各キャップが気泡シート体の巾方向に延びる横長のものであるため、これら各キャップによって気泡シート体に巾方向への方向性を持たせることができるとともに、これら各キャップを、気泡シート体の巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配しているため、気泡シート体を巾方向に沿って引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体の巾方向から逸れることを長手方向に沿って非直線上に並配したキャップによって防止することができ、不意に気泡シート体の長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、手で簡単且つ的確に気泡シート体の巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0021】
殊に、長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込む切込部を所定ピッチで形成していれば、この切込部を利用してさらに切り裂き易くなり、やはり巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業中に、引き裂き方向が縦横ばらばらになるいわゆる稲妻切りが発生することを防止し、気泡シート体の巾方向への引き裂き作業を手で簡単且つ的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る気泡シート体Sは、図1に示す気泡シート体製造機Xによって製造され、突状のキャップCSaを複数成形したキャップシートCSと、キャップシートCSのうちキャップCSaの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートBSとを備えたものである。
【0025】
気泡シート体製造機Xは、キャップシートCSを供給するキャップシート供給装置X1と、真空吸引源X2vに接続され且つキャップシート供給装置X1から供給されたキャップシートCSに多数の突状のキャップCSaを成形する真空成形ロールX2と、バックシートBSを供給するバックシート供給装置X3と、真空成形ロールX2により多数のキャップCSaを成形したキャップシートCSの裏面側にバックシート供給装置X3から供給されたバックシートBSを押し付けて融着する加圧ロールX4と、キャップシートCS及びバックシートBSを相互に融着してなる気泡シート体Sを真空成形ロールX2から剥離する剥離ロールX5とを少なくとも備えたものである。
【0026】
キャップシート供給装置X1は、例えば、キャップシート押出機X11と、キャップシート用フラットダイスX12とから構成したものである。
【0027】
真空成形ロールX2は、図2に示すように、ロール本体の外周面に多数個凹設されたキャップ成形用の吸引キャビティX21と、吸引キャビティX21の底壁部に嵌合可能なプラグX22と、ロール本体の一端から他端に亘って形成され両端を開口した吸引用横孔X23と、各吸引キャビティX21の底壁部に設けられそれらの吸引キャビティX21をそれぞれ対応する吸引用横孔X23に連通させる円筒状の真空通路X24とを具備してなり、吸引用横孔X23の両端を真空吸引源X2vに接続し得るように構成したものである。
【0028】
各吸引キャビティX21は、ロール本体の巾方向(軸方向)に伸びる横長の楕円形状をなすものであり、本実施形態ではこのような吸引キャビティX21をロール本体の外周面に千鳥状に設けている。具体的には、吸引キャビティX21を、ロール本体の巾方向(軸方向)に沿って略直線上に並配し、且つ円周方向に沿って非直線上に並配している。
【0029】
プラグX22は、例えばリン青銅やジェラルミン等の金属素材から形成した薄板状のものであり、外縁部に複数の平面視略部分円弧状の切除部X22aを形成したものである。
【0030】
各吸引用横孔X23は、ロール本体の軸心方向に沿って延伸する略直線状のものであり、これら複数の吸引用横孔X23を、ロール本体の周方向に沿って所定ピッチ離間させて設けている。
【0031】
真空通路X24は、プラグX22を吸引キャビティX21の底壁部に嵌合した状態において、プラグX22の切除部X22aを介して吸引キャビティX21の内部空間に連通するものである。
【0032】
このような構造であるため、真空吸引時において、吸引キャビティX21内の空気は切除部X22aを通過し、真空通路X24を経て吸引用横孔X23へと至る。すなわち、プラグX22の切除部X22aが、吸引キャビティX21をそれぞれ対応する真空通路X24及び吸引用横孔X23に連通させる吸引孔として機能する。
【0033】
また、本実施形態の真空成形ロールX2は、ロール本体の外周面に、巾方向(軸方向)に沿って延伸する凹溝X25を形成している。凹溝X25は、図3に示すように、例えば断面視V字状をなし、その窪み寸法を吸引キャビティX21の窪み寸法よりも小さく設定している。本実施形態では、凹溝X25を、ロール本体の巾方向(軸方向)に沿って略直線上に並配した吸引キャビティX21の複数列(例えば3列)毎に形成している。
【0034】
一方、バックシート供給装置X3は、例えば、バックシート押出機X31と、バックシート用フラットダイスX32とから構成したものである。
【0035】
次に、このような気泡シート体製造機Xを用いて気泡シート体Sを製造する方法及び作用について説明する。
【0036】
先ず、キャップシート供給装置X1から熱可塑化状態にある膜状のキャップシート用フィルムCSFが回転する真空成形ロールX2に逐次供給され、真空排気装置X2vに接続された真空成形ロールX2の真空吸引作用により、吸引キャビティX21の形状に対応した多数のキャップCSaを有したキャップシートCSが連続的に形成される。多数のキャップCSaは、キャップシートCSの巾方向に沿って略直線状に形成され、且つキャップシートCSの長手方向(押出方向)に沿って非直線上に形成される。さらに、真空吸引時に、凹溝X25の形状に対応した窪み部がキャップシートCSの巾方向に沿って形成される。本実施形態では、キャップシートCSの巾方向に沿って略直線上に列をなすキャップCSaの複数列(図示例では3列)毎に窪み部が形成される。
【0037】
一方、バックシート供給装置X3から熱可塑化状態にある膜状のバックシート用フィルムBSFが真空成形ロールX2に逐次供給され、加圧ロールX4により当該バックシート用フィルムBSFからなるバックシートBSを前記キャップシートCSの底面側に押し付けて貼り合わせる。これにより、十分な真空状態で密閉された多数のキャップCSaを有し、且つ窪み部に倣って窪んだ横裂き誘発部SYを有する二層構造の気泡シート体Sが成形される(図4参照)。その後、剥離ロールX5により真空成形ロールX2から剥離され、図示しないバックシート用ラミネートフィルム供給装置によりバックシートBSの底面側にラミネートフィルムを押し付けて貼り合せる。このラミネートフィルムは、ポリエチレン等と比較して巾方向に裂け易い特性を有する素材(例えば、高密度ポリエチレン;HDPE)からなるものである。さらに、その後、図示しない耳部切断装置により、気泡シート体Sの耳部(両側縁部)を略ジグザグ状に切断する。耳部切断装置によって切断された領域のうち、巾方向中央部に向かって窪んだ切込部SKが、前記横裂き誘発部SYの外側端部に連続し得るように設定している(図4参照)。このようにして成形された気泡シート体Sは、最終的に図示しない巻取ロールに巻き取られる。すなわち、気泡シート体Sの長手方向は、巻取ロールに巻き取られる巻取方向と同一方向であるということが言える。
【0038】
このような工程を経て製造される本実施形態に係る気泡シート体Sは、図4及び図5に示すように、各キャップCSaが、吸引キャビティX21の形状に対応した略楕円形をなし、且つキャップシートCSの巾方向、すなわち気泡シート体Sの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dと、キャップシートCSの長手方向、すなわち気泡シート体Sの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dとの相対比率を式〔1〕を満たす値に設定している。
D/d=1.25〜1.75・・・式〔1〕
このような寸法に設定することにより、各キャップCSaによって、気泡シート体Sに巾方向に沿った方向性を持たせることができ、気泡シート体Sの長手方向への引き裂きを抑制することができるとともに、気泡シート体S全体の緩衝機能も有効に発揮し得るものとなる。
【0039】
また、図5に示すように、気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、及び気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2を、それぞれ式〔2〕及び式〔3〕を満たす値に設定している。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔2〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔3〕
気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ「1.3D」、「1.3d」より大きい値に設定した場合には、単位面積あたりのキャップCSaの数が減少し過ぎて気泡シート体S全体の強度低下を招来し得る。
【0040】
一方、前記各離間寸法P1、P2を「1.1D」、「1.1d」より小さい値に設定した場合には、単位面積あたりのキャップCSaの数は増大するものの、隣接するキャップCSaに樹脂が均等に分配されず、各キャップCSaの肉厚分布が不均一になるという問題が生じ、さらには、このような極めて高い密度でキャップCSaを成形するためには、当然のことながらロール本体の外周面に吸引キャビティX21を超高密度で設ける必要があり、この場合、高度な切削加工技術を要し、吸引孔のディストリビューションにばらつきが生じ得るおそれがある。
【0041】
このように、本実施形態に係る気泡シート体Sは、各キャップCSaが、巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Dを、長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法dよりも大きく設定した略楕円形をなすものであり、これら複数のキャップCSaを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップCSaの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた横裂き誘発部SYを形成したものであるため、巾方向に沿った引き裂きを容易にすべくミシン目を設けた従来の態様と比較して、無理な引張力が作用した際に切断を意図しない部位においてミシン目の裂け目が広がり、破れ易いという不具合が生じることがなく、しかも、各キャップCSaが気泡シート体Sの巾方向に延びる横長の形状のものであるため、これら各キャップCSaによって気泡シート体Sに巾方向への方向性を持たせることができ、横裂き誘発部SYに沿って手で引き裂く作業中に、引き裂き方向が気泡シート体Sの巾方向から逸れるという事態を長手方向に沿って非直線上に並配したキャップCSaによって防止することができ、不意に気泡シート体Sの長手方向への引き裂きが発生することを抑制することができる。その結果、刃物等の専用の道具を用いることなく、横裂き誘発部SYを利用して、手で簡単且つ的確に気泡シート体Sの巾方向に沿って直線上に引き裂くことができ、実用性に富むものとなる。
【0042】
特に、気泡シート体Sの長手方向に沿った両側縁部(耳部)に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、横裂き誘発部SYの外側端部に連続し得る切込部SKを形成しているため、切込部SKを利用することによってさらに切り裂き易くなり、巾方向へストレスなく簡単に引き裂くことができる。本実施形態では、気泡シート体Sの長手方向に沿った両側縁部に、それぞれ切込部SKを形成しているため、気泡シート体Sの何れの側縁部からも横裂き作業をスムーズに行うことができ、好適である。
【0043】
各キャップCSaが、
略楕円形をなし、最長横寸法Dと最長縦寸法dとの相対比率を、D/d=1.25〜1.75、という式を満たす値に設定しているため、D/dが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSaの形状が円形に近付き、気泡シート体Sに方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を防止することができるとともに、D/dが1.75より高い場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSaが細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を防止することが可能である。
【0044】
さらに、気泡シート体Sの巾方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P1、及び気泡シート体Sの長手方向に沿って隣接するキャップCSaの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ前記式〔2〕及び前記式〔3〕を満たす値に設定しているため、適切な緩衝機能を発揮するとともに、隣接するキャップCSaに樹脂が均等に分配され、各キャップCSaの肉厚分布を均一にすることが可能である。さらに、ロール本体に対する吸引キャビティX21の切削加工も無理なく行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、バックシートBSの底面側に、巾方向に裂け易い特性を有する素材からなるラミネートフィルムを貼り合せているため、気泡シート体Sを巾方向に引き裂く作業をより簡単且つスムーズに行うことができる。
【0046】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、前記実施形態では、横裂き誘発部を、気泡シート体の巾方向に沿って連続して延伸するものを例示したが、これに代えて、気泡シート体の巾方向に沿って間欠的に形成した横裂き誘発部を適用しても構わない。また、横裂き誘発部が、キャップの頂部とは反対方向に突出させた段部からなるものであってもよい。さらに、横裂き誘発部を、気泡シート体の長手方向に沿って隣接するキャップの列毎に形成しても構わない。
【0048】
また、切込部は、他の領域よりも気泡シート体の巾方向中央部に向かって入り込み、横裂き誘発部の外側端部に連続し得るものであればよく、気泡シート体の耳部全体をギザギザ状に形成した態様に代えて、図6に示すように、気泡シート体の耳部全体は略直線上をなし、切込部SK1の形成箇所のみを他の領域よりも気泡シート体の巾方向中央部に向かって入り込ませた態様や、図7に示すように、気泡シート体の耳部全体は略直線上をなし、単純な直線上のスリットのみによって切込部SK2を構成する態様を採用しても構わない。また、切込部を、気泡シート体の長手方向に沿った両側縁部のうち何れか一方の側縁部にのみ形成した態様であってもよい。
【0049】
また、図8に示すように、各キャップCSa1が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法Cを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法cよりも大きく設定した略長方形状をなすものであっても構わない。この場合、最長横寸法Cと、最長縦寸法cとの相対比率を式〔4〕を満たす値に設定していることが好ましい。
C/c=1.25〜1.75・・・式〔4〕
長方形状のキャップCSa1の最長横寸法Cと最長縦寸法cとの相対比率をこのような式〔4〕を満たす値に設定することにより、C/cが1.25より小さい場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSa1の形状が正方形に近付き、気泡シート体に方向性を持たせることができず、長手方向への引き裂き防止機能が低下するという不具合を防止することができるとともに、C/cが1.75より高い場合に生じ得る不具合、つまり、キャップCSa1が細長くなり過ぎることによる緩衝機能の低下という不具合を防止することが可能である。さらに、図8に示すように、気泡シート体の巾方向に沿って隣接するキャップCSa1の中心同士の離間寸法P3、及び気泡シート体の長手方向に沿って隣接するキャップCSa1の中心同士の離間寸法P4を、それぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定している。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
このような値に設定することにより、適切な緩衝機能を発揮するとともに、隣接するキャップCSa1に樹脂が均等に分配され、各キャップCSa1の肉厚分布を均一にすることが可能である。さらに、ロール本体に対する吸引キャビティの切削加工も無理なく行うことができる。
【0050】
また、各キャップCSa1の最長縦寸法cを、前記略楕円形状をなすキャップCSaの最長縦寸法dを基準とした場合、以下の式〔7〕を満たす値に設定していることが好ましい。
0.3d≦c≦1.3d・・・式〔7〕
また、図9に示すように、各キャップCSa2が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法Hを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法hよりも大きく設定した略ハート形をなし、これら複数のキャップCSa2を、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配した気泡シート体であっても構わない。
【0051】
さらには、図10及び図11に示すように、各キャップCSa3、CSa4が、キャップシートの巾方向(気泡シート体の巾方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法HI、HYを、キャップシートの長手方向(気泡シート体の長手方向)に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法hi、hyよりも大きく設定した略多角形状(一例として図10に示す菱形形状のキャップCSa3)、或いは中央部が括れた略瓢箪形状(図11参照)をなすものであってもよい。
【0052】
また、バックシートの底面側にラミネートフィルムを貼り合せない、単純な二層状の気泡シート体や、キャップシートの表面側(各キャップの頂部側)にさらにライナーシートを貼着した三層状の気泡シート体であっても構わない。
【0053】
キャップシート用フィルム及びバックシート用フィルムの材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体が挙げられる。
【0054】
前記実施形態では、吸引キャビティとして、段付の吸引キャビティにプラグを嵌合させる態様を例示したが、これに限らず、吸引キャビティとして有底のものを適用してもよい。この場合、吸引孔は、各吸引キャビティの底壁からロール本体の軸心に向かって延伸し且つ吸引用横孔に連通する小貫通孔により構成される。
【0055】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態における気泡シート体製造機の概略図。
【図2】同実施形態における真空成形ロールの正面概略図。
【図3】同実施形態における真空成形ロールの要部側断面を模式的に示す図。
【図4】同実施形態に係る気泡シート体の展開図。
【図5】図4の要部拡大図。
【図6】同実施形態における切込部の一変形例を示す図。
【図7】同実施形態における切込部の他の変形例を示す図。
【図8】同実施形態におけるキャップの他の変形例を図5に対応して示す図。
【図9】同実施形態に係る気泡シート体の一変形例を図4に対応して示す図。
【図10】同実施形態におけるキャップの他の変形例を示す図。
【図11】同実施形態におけるキャップのさらに異なる他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0057】
X21…吸引キャビティ
X2…真空成形ロール
CSa、CSa1、CSa2、CSa3、CSa4…キャップ
CS…キャップシート
BS…バックシート
S…気泡シート体
SY…横裂き誘発部
SK、SK1、SK2…切込部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなる気泡シート体であって、
前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略楕円形状又は略長方形状をなすものであり、
これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させた横裂き誘発部を形成してなることを特徴とする気泡シート体。
【請求項2】
長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、前記横裂き誘発部の外側端部に連続し得る切込部を備えてなる請求項1記載の気泡シート体。
【請求項3】
各キャップが、略楕円形状をなし、前記最長横寸法Dと前記最長縦寸法dとの相対比率を式〔1〕を満たす値に設定している請求項1又は2記載の気泡シート体。
D/d=1.25〜1.75・・・式〔1〕
【請求項4】
前記各キャップが略楕円形状をなすものであり、
巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P1、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ式〔2〕及び式〔3〕を満たす値に設定している請求項3記載の気泡シート体。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔2〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔3〕
【請求項5】
前記各キャップが、略長方形状をなし、前記最長横寸法Cと前記最長縦寸法cとの相対比率を式〔4〕を満たす値に設定している請求項1又は2記載の気泡シート体。
C/c=1.25〜1.75・・・式〔4〕
【請求項6】
前記各キャップが略長方形状をなすものであり、
巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P3、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P4をそれぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定している請求項5記載の気泡シート体。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
【請求項7】
前記各キャップが、略長方形状をなし、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法cを、略楕円形状をなすキャップの最長縦寸法dに対して式〔7〕を満たす値に設定している請求項1、2、5又は6記載の気泡シート体。
0.3d≦c≦1.3d・・・式〔7〕
【請求項8】
ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなる気泡シート体であって、
前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略ハート形又は略多角形状、或いは中央部が括れた略瓢箪形状をなすものであり、
これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配してなることを特徴とする気泡シート体。
【請求項9】
長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込む切込部を所定ピッチで形成してなる請求項8記載の気泡シート体。
【請求項1】
ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなる気泡シート体であって、
前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略楕円形状又は略長方形状をなすものであり、
これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配し、巾方向に沿ったキャップの列同士の間に、略直線上に延び且つ他の領域よりも窪ませた又は突出させた横裂き誘発部を形成してなることを特徴とする気泡シート体。
【請求項2】
長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込み、前記横裂き誘発部の外側端部に連続し得る切込部を備えてなる請求項1記載の気泡シート体。
【請求項3】
各キャップが、略楕円形状をなし、前記最長横寸法Dと前記最長縦寸法dとの相対比率を式〔1〕を満たす値に設定している請求項1又は2記載の気泡シート体。
D/d=1.25〜1.75・・・式〔1〕
【請求項4】
前記各キャップが略楕円形状をなすものであり、
巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P1、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P2をそれぞれ式〔2〕及び式〔3〕を満たす値に設定している請求項3記載の気泡シート体。
1.1D≦P1≦1.3D・・・式〔2〕
1.1d≦P2≦1.3d・・・式〔3〕
【請求項5】
前記各キャップが、略長方形状をなし、前記最長横寸法Cと前記最長縦寸法cとの相対比率を式〔4〕を満たす値に設定している請求項1又は2記載の気泡シート体。
C/c=1.25〜1.75・・・式〔4〕
【請求項6】
前記各キャップが略長方形状をなすものであり、
巾方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P3、及び長手方向に沿って隣接する前記キャップの中心同士の離間寸法P4をそれぞれ式〔5〕及び式〔6〕を満たす値に設定している請求項5記載の気泡シート体。
1.1C≦P3≦1.3C・・・式〔5〕
1.1c≦P4≦1.3c・・・式〔6〕
【請求項7】
前記各キャップが、略長方形状をなし、前記キャップシートの巾方向に沿った寸法のうち最長となる最長縦寸法cを、略楕円形状をなすキャップの最長縦寸法dに対して式〔7〕を満たす値に設定している請求項1、2、5又は6記載の気泡シート体。
0.3d≦c≦1.3d・・・式〔7〕
【請求項8】
ロール本体の外周面にキャップ成形用の吸引キャビティを多数個凹設した真空成形ロールを利用して突状のキャップを複数成形したキャップシートと、当該キャップシートのうち前記キャップの底部側に貼り合わされる平坦なバックシートとを少なくとも具備してなる気泡シート体であって、
前記各キャップが、前記キャップシートの巾方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長横寸法を、前記キャップシートの長手方向に沿って占有する領域のうち最長となる最長縦寸法よりも大きく設定した略ハート形又は略多角形状、或いは中央部が括れた略瓢箪形状をなすものであり、
これら複数のキャップを、巾方向に沿って略直線上に並配し且つ長手方向に沿って非直線上に並配してなることを特徴とする気泡シート体。
【請求項9】
長手方向に沿った両側縁部のうち少なくとも何れか一方の側縁部に、他の領域よりも巾方向中央部に向かって入り込む切込部を所定ピッチで形成してなる請求項8記載の気泡シート体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−290279(P2008−290279A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136115(P2007−136115)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]