説明

気流式粉砕機

【課題】粉砕能力を一定に保ったままで、簡単かつ迅速に分級性能を調節することができ、調節作業中に異物が混入するおそれもない気流式粉砕機を提供する。
【解決手段】円筒状本体11とテーパ状前蓋12とを備えたケーシング10の内部に、入口側回転翼5と吐出側回転翼6とを一定間隔で片持ち支持させ、これらの回転翼とケーシング10の内周壁面とによって一定容積の粉砕エリア15を構成する。ケーシング10の円筒状本体11に対してテーパ状前蓋12を位置調節可能とし、テーパ状前蓋12と吐出側回転翼6のテーパ部9との間に形成される分級エリア21の分級性能を変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物をはじめとする食品等の微粉砕に用いられる気流式粉砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豆類や穀類のような食品等の粉砕には、従来からハンマーミルやピンミル等の被砕物に叩き割るような衝撃を加えて粉砕する衝撃式粉砕機が広く用いられてきた。しかし衝撃式粉砕機は微粉末化しようとすると衝撃による発熱が大きくなり、微粉砕された製品の品質悪化を招いたり、被砕物が大豆等の脂質含有量が多いものである場合には、油で練られたような状態となって粉砕が不可能となることがあった。
【0003】
また、被砕物を液体窒素等の冷媒によって脆化させて粉砕する凍結粉砕法は、様々なものを微粉砕できる優れた粉砕方法であるが、高価な液体窒素等を大量に必要とするためにランニングコストが高くなり、また粉砕機自体も保冷が必要なために大きな設備投資が必要であるという問題があった。
【0004】
これらに対し、激しい気流の中で被砕物どうしを衝突させて粉砕する気流粉砕は、衝撃が小さいために発熱も抑えることができ、大豆のような脂質含有量の多いものでも効率よく微粉砕することが可能であるとともに、設備投資やランニングコストも抑えることができる優れた粉砕方法である。
【0005】
この気流式粉砕機についても従来から様々な技術開発がなされており、例えば特許文献1には、軸受から片持ち状態で突出させた回転軸上に、入口側回転翼と吐出側回転翼とを相互に近接離隔可能に支持させ、分級性能に影響を与える吐出側回転翼と前蓋とのクリアランスを変更可能とした気流式粉砕機が開示されている。
【0006】
しかし、分級性能を調節するために入口側回転翼と吐出側回転翼との間隔を変えると、これらの回転翼とケーシングの壁面とによって構成される粉砕エリアの容積が変わることとなり、気流粉砕の場合は粉砕エリアでの粉砕物の衝突により粉砕されるため、粉砕物の密度がかわり粉砕に要する時間が変動し、対象物によっては熱変性など品質のブレが生じたり粉砕能力の変動という問題があった。
【0007】
また、分級性能を調節するために入口側回転翼と吐出側回転翼との間隔を変える作業は、必然的に粉砕室内部での作業となる。このため粉砕作業を中断して分級性能を変えようとする場合には、粉砕室内に残存する被砕物をいったん除去しなければならず、多くの手数と時間とを要するという問題があった。また調節作業中に異物が混入する危険性もあった。また、洗浄やメンテナンスのため、粉砕機本体と前蓋は片持ちのヒンジ等で接合されており開閉を可能とする方法になっているが、本体と前蓋との位置のずれが生じやすく結果的に吐出側回転翼とのクリアランスにばらつきが生じ粒度の安定性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3725330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、粒度や品質、粉砕能力を一定に保ったままで、簡単かつ迅速に分級性能を調節することができ、調節作業中に異物が混入するおそれもない気流式粉砕機を提供することである。また本発明の他の目的は、前蓋を開閉した場合にも本体との位置ずれが生じにくく、粒度の安定性に優れた気流式粉砕機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明の気流式粉砕機は、円筒状本体とテーパ状前蓋とを備えたケーシングの内部に、入口側回転翼と吐出側回転翼とを一定間隔で片持ち支持させ、これらの回転翼とケーシングの壁面とによって一定の粉砕エリアを構成するとともに、ケーシングの円筒状本体に対してテーパ状前蓋を位置調節可能とし、テーパ状前蓋と吐出側回転翼のテーパ部との間に形成される分級エリアの分級性能を変更可能としたことを特徴とするものである。
【0011】
なお請求項2のように、円筒状本体とテーパ状前蓋とを、軸線方向に延びるピン及び水平移動できるヒンジによって開閉及び間隔調節可能に結合するとともに、スペーサーを介在させて相互の間隔を固定可能とした構造とすることが好ましい。また、前蓋の開閉時に本体との位置がずれないように、テーパ状前蓋の下部に、水平板上を転動するローラを設けた構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の気流式粉砕機は、ケーシングの円筒状本体に対してテーパ状前蓋の位置を調節することにより、テーパ状前蓋と吐出側回転翼のテーパ部分との間に形成される分級エリアの分級性能を変更できる構造としたので、粉砕室内部の回転翼の部分には手を触れることなく外部から分級性能の変更を行うことができる。このため重量のある回転翼を取り外す労力が不要となり、作業中の異物混入の危険性も回避することができる。
【0013】
また、入口側回転翼と吐出側回転翼とは一定間隔で支持されており、これらの回転翼とケーシングの壁面とによって一定容積の粉砕エリアが形成されているので、前蓋の位置を変えても粉砕エリアに影響はなく、品質や粉砕能力を一定に保ったままで分級性能を調節することができる。また請求項2,3の構造とすれば、本体と前蓋とのずれが防止できるので、粒度を決める吐出側回転翼と前蓋とのクリアランスが一定になり、粒度を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す水平断面図である。
【図4】吐出側回転翼の斜視図である。
【図5】吐出側回転翼の正面図である。
【図6】前蓋の位置調節作業の説明図である。
【図7】前蓋を開いた状態を示す説明図である。
【図8】スペーサーを外した状態の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3において、1はベース、2はベース1上にフレーム3により水平に支持された軸受、4はこの軸受2に支持された回転軸である。図示のようにこの回転軸4は軸受2から片持ち状に突出したもので、入口側回転翼5と吐出側回転翼6とがスペーサー等によって常に一定間隔で固定され、モータ50により高速回転できるようになっている。入口側回転翼5と吐出側回転翼6はほぼ同一形状であり、図3、図4に示されるように中心側の円板状部7の外周に、複数枚の翼板8を突設したものである。翼板8の先端部はテーパ部9となっている。なお図1に示されるように、入口側回転翼5は入口側にテーパ部9が形成され、吐出側回転翼にはその反対側である吐出側にテーパ部9が形成されている。
【0016】
10はフレーム3の端部に設けられたケーシングであり、入口側回転翼5と吐出側回転翼6とがその内部に収納される構造である。ケーシング10は円筒状本体11とテーパ状前蓋12とを備えたもので、それらの外周壁の内部には冷却水流路13,14が形成されている。円筒状本体11も入口側はテーパ状となっており、入口側回転翼5のテーパ部9が近接配置されている。また円筒状本体11の軸方向先端は吐出側回転翼6の近傍まで達しており、一定間隔の入口側回転翼5と吐出側回転翼6と、ケーシング10の円筒状本体11の内周面とによって、一定容積の粉砕エリア15が形成されている。
【0017】
本発明では、ケーシング10の円筒状本体11に対してテーパ状前蓋12を位置調節可能な構造としてある。この実施形態では図6、7に示されているように、円筒状本体11とテーパ状前蓋12とは軸線方向に延びるピン17及び水平移動できるヒンジ30によって開閉及び間隔調節可能に結合されている。ピン17は円筒状本体11の端面にテーパ状前蓋12に向けて複数本が突設されており、テーパ状前蓋12には対応する位置にピン挿通孔18が形成されている。これらのピン17に同様のピン挿通孔を備えたスペーサー20を介在させることにより、テーパ状前蓋12の軸線方向の位置を変更可能としている。なお、吐出側回転翼6のテーパ部9とテーパ状前蓋12のテーパ状内周面とは平行に形成されており、テーパ状前蓋12と吐出側回転翼6のテーパ部9との間に分級エリア21が形成されている。
【0018】
ヒンジ30はテーパ状前蓋12の一端に設けられたもので、軸31により連結された一方のリンク片32はテーパ状前蓋12の外側面の固定されており、他方のリンク片33は直線ガイド34にピン17と平行方向な水平方向にスライド可能に支持されている。なお図2に示されるように、この直線ガイド34はベース1の上面に立設された支柱35に保持されている。この構造により、テーパ状前蓋12を図6のように軸線方向に引き出してピン17との係合を解除したうえ、さらに図7のように軸31を中心として回転させて開き、内部を清掃したりスペーサー20を着脱したりすることが可能である。
【0019】
テーパ状前蓋12はかなりの重量物であるので、その下部には重量を支えるローラ40が2個設けられている。これらのローラ40はベース1の側方に形成された水平板41上を転動するもので、テーパ状前蓋12の重量を支えるとともに、その開閉位置を一定に維持する役割を果たしている。
【0020】
円筒状本体11とテーパ状前蓋12とを確実に締結するために、円筒状本体11の外側4箇所にはクランプ機構45が配置されている。これはブラケット46の先端に軸47を中心として回動できるネジ棒48を設けるとともに、テーパ状前蓋12の対応位置にネジ棒48を受けるU字溝部材49を設けたものである。ネジ棒48をこのU字溝部材49に嵌合させたうえでハンドル付ナット60を螺合させることにより、円筒状本体11とテーパ状前蓋12とを強固に締結することができる。またハンドル付ナット60を緩めたうえでネジ棒48をU字溝部材49から解除すれば、図6、図7のようにテーパ状前蓋12を移動させたり開いたりすることが可能となる。
【0021】
22はフレーム3上に設けられた投入用ホッパーであり、その下端はケーシング10内の入口側回転翼5の入口側に開口し、この位置から被砕物が投入される。またテーパ状前蓋12の外側端部には中央に排出口23が形成されている。この排出口23は吸引装置に連結されており、粉砕物を吸引して製品回収装置に回収するものである。
【0022】
次に上記の構成を備えた本発明の気流式粉砕機の作用を説明する。
モータ50により入口側回転翼5と吐出側回転翼6とを高速回転させた状態で投入用ホッパー22から大豆その他の被砕物を定量的に投入すると、被砕物は回転翼の発生させた気流に乗って、入口側回転翼5と吐出側回転翼6とケーシング10の円筒状本体11の内周面とによって形成される粉砕エリア15に入り、被砕物どうしが衝突することによって微粉砕される。
【0023】
粉砕エリア15の内部では、被砕物は細かくなるに従って外縁部から中心部に向かって移動し、テーパ状前蓋12に接続した吸引装置の吸引力により、吐出側回転翼6を通過してテーパ状前蓋12の方向に移動する。
【0024】
テーパ状前蓋12の内部では遠心力によって外縁部から中心部に向かって粒径が小さくなる粉砕物の粒度勾配が形成され、中心部の粒径の小さい画分の粉砕物から優先して、吸引装置の吸引力により排出口23から製品回収装置に取り出される。このとき、テーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間の分級エリア21には、粉砕エリア15に向かう気流が発生しているため、外縁部の比較的粒径の大きい画分の粉砕物は、この気流の力によって粉砕エリア15に引き戻され、再度気流粉砕されて粒径が小さくなる。
【0025】
分級エリア21に発生する気流は、テーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間隔が小さくなるほど強くなるため、テーパ状前蓋12の外縁部に存在する粒径の大きい画分の粉砕物の引き戻し量が多くなり、その結果として製品回収装置に回収された粉砕物中の粒径の大きい画分の粉砕物の存在比は小さくなる。逆に分級エリア21に発生する気流は、テーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間隔が大きくなるほど弱くなるため、粉砕エリア15への引き戻し量が減少し、製品回収装置に回収された粉砕物中の粒径の大きい画分の粉砕物の存在比は大きくなる。
【0026】
前記したように本発明の気流式粉砕機は、テーパ状前蓋12を軸線方向に位置調節可能としたので、テーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間隔を変化させることができ、分級エリア21に発生する気流の強さを変化させて分級性能を調節することができる。図8はスペーサーを外してテーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間隔を縮小した様子を示している。例えば、回転速度を3000rpm、テーパ状前蓋12の内周面と吐出側回転翼6のテーパ部9との間隔を2mmとして大豆を粉砕したときには、製品回収装置に回収された粉砕物の粒度分布は、平均粒径21.81μm、95.96μm以上の画分の割合は0.17%となり、この間隔を5mmに拡大すると、製品回収装置に回収された粉砕物の粒度分布は、平均粒径24.81μm、95.96μm以上の画分の割合が5.12%となり、本発明の効果が確認できた。
【0027】
本発明の気流式粉砕機においては、ケーシング10の内部の入口側回転翼5と吐出側回転翼6とには手を触れることなく、外部から図6、図7に示すようにテーパ状前蓋12を開いてスペーサー20の脱着を行うだけで分級性能の調節が可能である。このために分級性能の調節のために回転翼の取外しは不要であり、粉砕エリア15の容積は常に一定であるから破砕性能が変動することもなく、異物混入の危険も低減できるなどの多くの利点がある。
【符号の説明】
【0028】
1 ベース
2 軸受
3 フレーム
4 回転軸
5 入口側回転翼
6 吐出側回転翼
7 円板状部
8 翼板
9 テーパ部
10 ケーシング
11 円筒状本体
12 テーパ状前蓋
13 冷却水流路
14 冷却水流路
15 粉砕エリア
17 ピン
18 ピン挿通孔
20 スペーサー
21 分級エリア
22 投入用ホッパー
23 排出孔
30 ヒンジ
31 軸
32 リンク片
33 リンク片
34 直線ガイド
35 支柱
40 ローラ
41 水平板
45 クランプ機構
46 ブラケット
47 軸
48 ネジ棒
49 U字溝部材
50 モータ
60 ハンドル付ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状本体とテーパ状前蓋とを備えたケーシングの内部に、入口側回転翼と吐出側回転翼とを一定間隔で片持ち支持させ、これらの回転翼とケーシングの壁面とによって一定の粉砕エリアを構成するとともに、ケーシングの円筒状本体に対してテーパ状前蓋を位置調節可能とし、テーパ状前蓋と吐出側回転翼のテーパ部との間に形成される分級エリアの分級性能を変更可能としたことを特徴とする気流式粉砕機。
【請求項2】
円筒状本体とテーパ状前蓋とを、軸線方向に延びるピン及び水平移動できるヒンジによって開閉及び間隔調節可能に結合するとともに、スペーサーを介在させて相互の間隔を固定可能としたことを特徴とする請求項1記載の気流式粉砕機。
【請求項3】
テーパ状前蓋の下部に、水平板上を転動するローラを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の気流式粉砕機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−206621(P2011−206621A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74042(P2010−74042)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(391060421)ミナミ産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】