説明

気流発生装置

【課題】誘電体の表面に汚れなどが付着した場合においても汚れを容易に除去することができる気流発生装置を提供する。
【解決手段】実施形態の気流発生装置10は、固体からなる誘電体20と、誘電体20の表面に設けられた第1の電極30と、第1の電極30と誘電体20を介して離間して設けられた第2の電極40とを備え、第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を印加して気流を発生させる。第1の電極30側の誘電体20の表面20aにおける水に対する接触角が80度以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機器や流体機器システムの高効率化は、省エネルギの観点から重要な課題である。また、流体機器や流体機器システムにおける振動や騒音の抑制は、プラントの安全性の確保、作業環境の向上の観点から重要な課題である。
【0003】
このような課題に対応して、物体表面に放電プラズマを生成して気流を発生させ、流体機器における空気力学的特性を制御する気流発生装置が提案されている。この気流発生装置は、一対の電極が誘電体を介して配置されて構成されている。そして、これらの電極間に電圧を印加することで、一方の電極近傍の気体がイオン化されて気流が発生する。
【0004】
この気流発生装置によれば、物体表面に薄い層状の気流を適宜発生させることが可能である。この発生した気流により、流れの境界層の速度分布を変化させたり、層流から乱流への遷移を強制的に引き起こしたり、渦を発生または消滅させたりするなどの流れの制御を実現することができる。そのため、種々の産業機器の革新的要素技術として、この気流発生装置を利用できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−317656号公報
【特許文献2】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、屋外などで、上記した気流発生装置を長期間使用した場合、プラズマ発生部に汚れなどが付着し、プラズマの発生を妨げ、適正に気流を発生させることができないことがあった。このようにプラズマ発生部が汚れた場合には、気流発生装置自体を取り替えるか、誘電体の表面をクリーニングする必要があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、誘電体の表面に汚れなどが付着した場合においても汚れを容易に除去することができる気流発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の気流発生装置は、固体からなる誘電体と、前記誘電体の表面に設けられ、または前記誘電体の表面の近傍に埋設された第1の電極と、前記第1の電極と前記誘電体を介して離間して設けられた第2の電極とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して気流を発生させる。また、前記第1の電極側の前記誘電体の表面のうち、少なくとも、気流を発生させる領域の表面における水に対する接触角が80度以上である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態の気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】実施の形態の気流発生装置が示された図1のA−A断面を模式的に示した図である。
【図3】接触角と気流の速度比との関係を示す図である。
【図4】突起の長さと気流の速度比との関係を示す図である。
【図5】表面粗さRaと気流の速度比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施の形態の気流発生装置10を模式的に示した斜視図である。図2は、実施の形態の気流発生装置10が示された図1のA−A断面を模式的に示した図である。
【0012】
図1および図2に示すように、気流発生装置10は、誘電体20と、この誘電体20の一方の表面20aと同一面に露出された第1の電極30と、この第1の電極30と誘電体20の表面からの距離を異にし、かつ誘電体20の表面と水平な方向(気流を発生させる方向)にずらして離間され、誘電体20内に埋設された第2の電極40とを備えている。また、第1の電極30および第2の電極40は、それぞれケーブル50、51を介して放電用電源60に電気的に接続されている。
【0013】
第1の電極30は、例えば、板状の平板電極で構成される。なお、第1の電極30の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、断面が円、矩形などの棒状や、導電性の金属を薄く延ばした箔などであってもよい。
【0014】
ここでは、第1の電極30を誘電体20の一方の表面20aと同一面に露出するように配置した一例を示しているが、この配置構成に限られるものではない。例えば、第1の電極30は、誘電体20の一方の表面20aの近傍に埋設されてもよい。また、第1の電極30は、誘電体20の一方の表面20aに固着されてもよい。なお、第1の電極30を誘電体20の一方の表面20aに設ける場合、誘電体20の一方の表面20aにおける流体の流れを乱さないように、第1の電極30を例えば箔状に構成することが好ましい。
【0015】
第2の電極40は、例えば、板状の平板電極で構成される。なお、第2の電極40の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、断面が円、矩形などの棒状や、導電性の金属を薄く延ばした箔などであってもよい。
【0016】
なお、第1の電極30の長手方向の長さ(気流の流れ方向に垂直な方向の長さ)と第2の電極40の長手方向の長さは、等しいか、ほぼ等しく構成されている。また、第2の電極40は、第1の電極30と同じ形状であってもよい。
【0017】
第2の電極40は、図2に示すように、第1の電極30と誘電体20の一方の表面20aからの距離を異にし、かつ第1の電極30から、誘電体20の一方の表面20aの水平な方向(気流を発生させる方向)にずらして配置されている。
【0018】
なお、第1の電極30と第2の電極40とは、両電極間に印加される電圧の範囲で、絶縁破壊を生じない程度に離隔されている。また、第1の電極30および第2の電極40は、公知な導電性の材料で構成され、気流発生装置10が使用される環境に応じて、公知な導電性の材料から適宜に選択された材料で構成される。
【0019】
誘電体20は、例えば、図1に示すように、固体からなり、直方体または立方体の形状に構成される。誘電体20の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、表面が曲率を有する形状であってもよい。誘電体20の一方の表面20aは、水に対する接触角が80度以上なるように構成されている。
【0020】
ここでは、誘電体20の一方の表面20aの全面における水に対する接触角を80度以上とした一例を示すが、この構成に限られるものではない。第1の電極30が配置される側の誘電体20の一方の表面20aのうち、少なくとも、気流を発生させる領域の表面における水に対する接触角が80度以上であればよい。
【0021】
ここで、気流を発生させる領域としては、例えば、第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を印加することで、バリア放電が誘起される領域、すなわち、低温プラズマが生成される領域が挙げられる。換言すると、気流を発生させる領域としては、第1の電極30の第2の電極40側の端縁から、第2の電極40上に亘る領域が挙げられる。
【0022】
また、誘電体20は、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成される。ここでは、誘電体20全体をこれらの樹脂で構成した一例を示すが、この構成に限られるものではない。誘電体20のうち、少なくとも気流を発生させる領域を構成する部分が、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成されていればよい。
【0023】
例えば、複数種の誘電層を積層して誘電体20を構成してもよく、この場合、例えば、少なくとも、誘電体20の一方の表面20aを構成する誘電体を、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成してもよい。また、誘電体20の一方の表面20aのうち、第1の電極30の第2の電極40側の端縁から、第2の電極40上に亘る部分を構成する誘電体を、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成してもよい。
【0024】
このように、誘電体20のうち、少なくとも気流を発生させる領域を構成する部分をシリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成することで、上記した接触角を得ることができる。ここで、接触角を80度以上とすることで、撥水性に優れ、例えば、雨水などにより表面の汚れを洗い流すことができる。そのため、例えば、屋外などに気流発生装置10を設置した場合においても、適正な気流を発生させることができる。
【0025】
なお、接触角は、誘電体20の上に0.1mlの水滴を落とし、水滴を光学顕微鏡で横から観察し、誘電体20と水滴とのなす角度(いわゆる接触角として一般に定義されている誘電体20の表面と液滴の接線とのなす角度)を測定することで得られる。
【0026】
また、誘電体20は、表面に長さが100nm以下の複数の突起を有するアルミナまたは窒化ケイ素で構成されてもよい。突起は、例えば、針状、円錐状などの形状を有し、均等に分散して形成されている。この場合、複数の突起を有する側が一方の表面20aとなる。
【0027】
ここでは、誘電体20全体を上記したアルミナまたは窒化ケイ素で構成した一例を示すが、この構成に限られるものではない。誘電体20のうち、少なくとも気流を発生させる領域を構成する部分を、上記したアルミナまたは窒化ケイ素で構成してもよい。
【0028】
例えば、複数種の誘電層を積層して誘電体20を構成する場合、少なくとも、誘電体20の一方の表面20aを構成する誘電体を、上記したアルミナまたは窒化ケイ素で構成してもよい。また、誘電体20の一方の表面20aのうち、第1の電極30の第2の電極40側の端縁から、第2の電極40上に亘る部分を構成する誘電体を、上記したアルミナまたは窒化ケイ素で構成してもよい。
【0029】
長さが100nm以下の複数の突起の根元の太さは、例えば、30〜70nm程度である。また、突起が形成されている部分の面積の割合は、単位面積当たり10〜30%程度である。突起が形成されている部分の面積とは、各突起の根元における突起の底面積を合計した面積である。
【0030】
突起の長さを100nm以下とし、突起が形成されている部分の面積の割合を上記した範囲とすることで、水滴が付着しても濡れることなく、水滴が表面を転がる、いわゆるロータス効果が得られる。これによって、例えば、雨水などにより表面の汚れを洗い流すことができる。そのため、例えば、屋外などに気流発生装置10を設置した場合においても、適正な気流を発生させることができる。なお、突起の長さや太さ、突起が形成されている部分の面積は、電子顕微鏡などを用いて測定される。
【0031】
また、誘電体20をアルミナまたは窒化ケイ素で構成する場合においても、誘電体20をシリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成する場合と同様に、少なくとも、気流を発生させる領域の表面における水に対する接触角を80度以上とすることが好ましい。なお、この場合においても、接触角は、上記した方法と同様の方法で測定することができる。
【0032】
ここで、上記した突起は次のように形成することができる。
【0033】
アルミナまたは窒化ケイ素からなる基材の一方の面をSi(OH)溶液に浸漬して、溶液を攪拌することで、一方の面に、SiOからなる針状の突起を形成することができる。この際、浸漬時間を調整することで、長さが100nm以下の突起を形成することができる。
【0034】
また、窒化ケイ素を使用する場合、焼結時に、窒化ケイ素の圧粉体(粉末を押し固めたもの)をセラミックス材からなる容器(さや材)に収容し、容器の大きさや焼結時間などを制御することで針状の突起を形成することができる。
【0035】
誘電体20の絶縁耐力は、10kV/mm以上となるように設定されることが好ましい。絶縁耐力が10kV/mmよりも小さい場合には、電極間に電圧を印加した際に絶縁破壊を生じ、気流の流速が低下する。なお、絶縁耐力は、JIS C2110に準拠して測定される。
【0036】
誘電体20の一方の表面20aの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、5μm以下となるように設定されることが好ましい。表面粗さRaが5μmを超える場合には、プラズマの発生状態が変わり、誘電体20の一方の表面20aで気流が乱れ、発生する気流の流速が低下する。
【0037】
なお、誘電体20を突起を有するアルミナまたは窒化ケイ素で構成する場合における、一方の表面20aの表面粗さRaとは、突起を除いた状態、すなわち突起を形成していない状態における誘電体20の一方の表面20aの表面粗さである。また、表面粗さは、JIS B0633に準拠して測定される。
【0038】
放電用電源60は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧を出力する。放電用電源60は、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを変化させて、第1の電極30と第2の電極40との間に電圧を印加することができる。
【0039】
次に、気流発生装置10の作用について説明する。
【0040】
放電用電源60から第1の電極30と第2の電極40との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極30と第2の電極40との間に放電が誘起される。この放電は、バリア放電とよばれ、第1の電極30と第2の電極40との間の誘電体20の表面20a上や、第2の電極40上の誘電体20の表面20aの上に、低温プラズマが生成される。
【0041】
この放電においては、気体中の電子のみにエネルギを与えることができるため、気体をほとんど加熱せずに気体を電離して電子およびイオンを生成することができる。生成された電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。すなわち、放電を印加することで、図1および図2に示すように、例えば、第1の電極30の第2の電極40側の端縁付近から、誘電体20の表面20aに沿う気流70が発生する。
【0042】
この気流の大きさや向きは、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。
【0043】
また、屋外に設置された気流発生装置10が雨水に曝された場合、誘電体20の表面20aは、水に対する接触角が80度以上であり、撥水性に優れるため、雨水は水滴となり、表面20a上を転がり、外部に流れ落ちる。この際、表面20aに付着した汚れは、洗い流される。このように、気流発生装置10は、自浄機構を備えている。また、例えば、気流発生装置10を洗浄する場合でも、水洗いなどによって、表面20aに付着した汚れを容易に洗い流すことができる。
【0044】
上記した実施の形態の気流発生装置10によれば、誘電体20の一方の表面20aにおける水に対する接触角を80度以上とすることで、撥水性に優れた表面20aを構成することができる。そのため、雨水に曝された場合、水滴が表面20a上を転がり、表面20aに付着した汚れを洗い流すことができる。これによって、気流の発生の妨げとなる汚れを除去できるため、例えば、屋外に気流発生装置10を設置した場合においても、適正な気流を発生させることができる。
【0045】
(接触角の影響)
ここでは、誘電体20の表面20aにおける水に対する接触角の影響について説明する。
【0046】
まず、接触角の影響を調べる際に使用した気流発生装置について説明する。誘電体として、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ステアタイト(メタ珪酸マグネシウム:MgO・SiO)を使用し、長さが200mm、幅が20mm、厚さが0.5mmの3種類の誘電体を形成した。
【0047】
続いて、各誘電体の表面に、第1の電極30として機能する、長さが100mm、幅が5mm、厚さが0.1mmの銅リボンを両面テープで固着した。また、各誘電体の裏面に、第2の電極40として機能する、長さが100mm、幅が5mm、厚さが0.1mmの銅リボンを両面テープで固着した。この際、第1の電極30から、誘電体の表面と水平な方向(気流を発生させる方向)にずらして第2の電極40を配置した。
【0048】
このようにして、誘電体の材料の異なる3種類の気流発生装置を作製した。なお、ステアタイトからなる誘電体を備えた気流発生装置は比較のため作製した。
【0049】
ここで、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ステアタイトの水に対する接触角は、それぞれ、100度、80度、70度であった。なお、これらの接触角は、誘電体の上に0.1mlの水滴を落とし、水滴を光学顕微鏡で横から観察し、誘電体と水滴とのなす角度を測定することで得られた。
【0050】
また、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ステアタイトからなる誘電体の絶縁耐力は、それぞれ、20kV/mm、22kV/mm、8kV/mmであった。なお、これらの絶縁耐力は、JIS C2110に準拠して測定した。
【0051】
作製した3種類の気流発生装置を、一ヶ月間同じ環境の屋外に設置した。一ヶ月後、発生する気流の流速を測定した。
【0052】
気流の流速の測定は、第1の電極30と第2の電極40との間に5kVの交流電圧を印加して気流を発生させた。気流の流速は、第1の電極30から下流10mmの位置において、熱線風速計を用いて測定した。
【0053】
図3は、接触角と気流の速度比との関係を示す図である。なお、図3の縦軸には、屋外放置後の各気流発生装置における気流の流速を、屋外放置する前の、シリコーン樹脂からなる誘電体を備えた気流発生装置における気流の流速で除した気流の速度比を示している。
【0054】
図3に示すように、接触角が70度の場合に比べて、接触角が80度以上の場合には、屋外に設置する前に近い状態で気流を発生することができていることがわかった。これらの結果から、接触角が80度以上の場合には、誘電体の表面に付着した気流の発生の妨げとなる汚れが除去され、適正な気流が発生されているものと考えられる。
【0055】
(突起の長さの影響)
ここでは、表面に複数の突起を有するアルミナまたは窒化ケイ素によって誘電体20を構成した場合における突起の長さの影響について説明する。
【0056】
アルミナ、窒化ケイ素からなる基材を用意して、それぞれの基材の一方の面をSi(OH)溶液に浸漬して、溶液を攪拌することで、一方の面に、SiOからなる針状の突起を形成した。この際、浸漬時間を調整することで、突起の長さを調整した。そして、一方の面に突起が形成された基材を誘電体20として使用した。
【0057】
続いて、この誘電体20の表面および裏面に、それぞれ第1の電極30、第2の電極40を両面テープによって固着した。第1の電極30を固着する際、第1の電極30を設置する部分に形成された突起は除去して固着した。
【0058】
また、突起が形成されている部分の面積の割合は、いずれの場合も、単位面積当たり20%であった。
【0059】
なお、誘電体、第1の電極30、第2の電極40の寸法などは、前述した場合のそれらと同じである。また、ここでは、屋外放置していない状態の気流発生装置について、上記した方法で気流の流速を測定した。また、突起の長さ、突起が形成されている部分の面積は、電子顕微鏡によって測定した。
【0060】
図4は、突起の長さと気流の速度比との関係を示す図である。図4においても、縦軸には、気流の速度比を示している。なお、ここでも、測定された気流の流速を、前述した、屋外放置する前の、シリコーン樹脂からなる誘電体を備えた気流発生装置における気流の流速で除して気流の速度比を得ている。
【0061】
図4に示すように、突起の長さが100μm以下では、流速の低下はほとんどないが、突起の長さが100μmを超えると流速が大きく低下することがわかった。
【0062】
(表面粗さの影響)
ここでは、誘電体20の表面20aの表面粗さRa(算術平均粗さ)の影響の影響について説明する。
【0063】
誘電体として、表面粗さの異なる5種類のシリコーン樹脂を用意して、前述した場合と同様に、気流発生装置を作製した。
【0064】
なお、誘電体、第1の電極30、第2の電極40の寸法などは、前述した場合のそれらと同じである。また、ここでは、屋外放置していない状態の気流発生装置について、上記した方法で気流の流速を測定した。また、表面粗さRa(算術平均粗さ)は、JIS B0633に準拠して測定した。
【0065】
図5は、表面粗さRaと気流の速度比との関係を示す図である。図5においても、縦軸には、気流の速度比を示している。なお、ここでも、測定された気流の流速を、前述した、屋外放置する前の、シリコーン樹脂からなる誘電体を備えた気流発生装置における気流の流速で除して気流の速度比を得ている。また、この屋外放置する前の気流発生装置における、シリコーン樹脂からなる誘電体の表面20aの表面粗さRaは、0.5μmであった。
【0066】
図5に示すように、表面粗さRaが5μm以下では、流速の大きな低下はないが、表面粗さRaが5μmを超えると流速が大きく低下することがわかった。
【0067】
以上説明した実施形態によれば、誘電体の表面に汚れなどが付着した場合においても汚れを容易に除去することが可能となる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10…気流発生装置、20…誘電体、20a…表面、30…第1の電極、40…第2の電極、50,51…ケーブル、60…放電用電源、70…気流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体からなる誘電体と、
前記誘電体の表面に設けられ、または前記誘電体の表面の近傍に埋設された第1の電極と、
前記第1の電極と前記誘電体を介して離間して設けられた第2の電極と
を備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して気流を発生させる気流発生装置であって、
前記第1の電極側の前記誘電体の表面のうち、少なくとも、気流を発生させる領域の表面における水に対する接触角が80度以上であることを特徴とする気流発生装置。
【請求項2】
少なくとも気流を発生させる領域を構成する前記誘電体が、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の気流発生装置。
【請求項3】
固体からなる誘電体と、
前記誘電体の表面に設けられ、または前記誘電体の表面の近傍に埋設された第1の電極と、
前記第1の電極と前記誘電体を介して離間して設けられた第2の電極と
を備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して気流を発生させる気流発生装置であって、
前記第1の電極側の前記誘電体のうち、少なくとも気流を発生させる領域を構成する前記誘電体が、表面に長さが100nm以下の複数の突起を有するアルミナまたは窒化ケイ素で構成されていることを特徴とする気流発生装置。
【請求項4】
前記突起が形成されている部分の面積の割合が、単位面積当たり10〜30%であることを特徴とする請求項3記載の気流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77376(P2013−77376A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214881(P2011−214881)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】