説明

気液分配装置

【課題】
2相並流下降流容器において使用するための気液分配装置を提供する。
【解決手段】
下記:
支持ビームおよびトレイパネルとして作用しおよび設置した際に、構造の接合部および容器の形成されたトレイと内壁との間で本質的に漏れの無いトレイを形成する複数個の水平の自立構造を含み;
該水平の自立構造の各々は、少なくとも一列の等しいサイズの開口で穿孔された底板からなり、各々の開口に細長い下降流流路が取り付けられ、該流路は、該底板における開口と同じ幾何学的横断面形状を有する管または任意の他の幾何学的形状の形態でありそして下降流流路の各々は、並流2相流用の入口を備え、および該下降流流路の内の少なくとも2つに共通のライザーキャップが取り付けられ、共通のライザーキャップは、下降流流路の各々の少なくとも一つの壁部分に取り付けられおよびそれに沿いならびに下降流流路の各々の入口の上に装着されそして入口から離して間隔があけられる、下降流容器において並流2相流を分配するための気液分配装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2相並流下降流容器において使用するための気液分配装置に関する。特に、本発明は、蒸気上昇管(BOXVLTと呼ぶ)を複数組み合わせた共通ヘッダーの形態の液体分配装置に関し、触媒反応において熱的および組成的平衡を達成するために、複数個のこれらのBOXVLTを容器の断面積一面に組み立てる場合に、液相および気相の分配を改良する。その装置は、水素化処理反応装置において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
液体分配装置の既知のデザインは、5つの範疇の内の一つに入る。第一は、一連のトラフおよび溢流ぜきであり、これらは液体を系統的に細分化して複数の流れにした後に、液体は触媒床と接触する。このタイプは、液体コントラクターまたは向流吸着装置においてしばしば使用される。このタイプの例は、記載されている(特許文献1)。
【0003】
第二のタイプの液体分配装置は、多孔の水平トレイである。これは、穿孔の周りにノッチ付きせきを有してもまたは有しないでもよい。トレイは、また蒸気流用のチムニーも有してよい。このタイプの分配装置は、粗い液体分配用に使用され、一層精巧な最終の液体分配トレイと併用されることができる。このタイプの例は、開示されている(特許文献2)。
【0004】
第三の共通のタイプの液体分配装置は、チムニートレイである。この装置は、水平トレイ上に典型的には正四角形または三角ピッチパターンで配置した多数のスタンドパイプを使用する。スタンドパイプは、側面に、液体を通すための孔を有するのが典型的である。スタンドパイプの先端部は、開放して蒸気流がチムニーの中央部を通って下降するのを可能とする。大量の蒸気流を処理するために、特殊な蒸気ダウンカマーチムニーを使用するデザインがいくつかある。このタイプは、知られている(特許文献3および4)。
【0005】
第四のタイプの液体分配装置は、泡鐘トレイである。この装置は、水平トレイ上に規則的なピッチのパターンで配置された多数の泡鐘を使用する。泡鐘は、スタンドパイプの上にキャップを同心円に中央に置いて形成される。キャップの側面に、蒸気が流れるための小さな穴を作る。液体は、キャップの下に流れそして、蒸気と一緒に、環状区域内を上方へ流れそして次いで、スタンドパイプの中央部を通って下に流れる(特許文献5)。
【0006】
既知のトラフタイプ分配装置は、機械的に複雑でありそして水平度に非常に敏感である。トラフの間の移行のデザインに応じて、分配の質もまたファウリングの影響を受けやすくなり得る。
【0007】
既知の多孔板のデザインは、チムニーデザインと同様である。チムニーデザインは、より広範囲の気液負荷についてデザインすることができそしてファウリングの影響をより受け難いので、好適である。
【0008】
更なる既知のタイプの液体分配装置は、管内に上向流領域および下降流領域を作り出す、1つ以上の足の短いアップカマーを取り付けた足の長いダウンカマーの形態の蒸気上昇管を備えた多孔トレイである。足の短いアップカマーの側面に小さな穴を作りそして蒸気と並流に流れる液体を上向流領域内を上方へ流れる蒸気によって持ち上げそして蒸気と一緒に下降流領域を通して下にある触媒床に均一に分配する(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,192,465号
【特許文献2】米国特許第4,836,989号
【特許文献3】米国特許第4,126,540号
【特許文献4】米国特許第3,353,924号
【特許文献5】米国特許第3,353,924号
【特許文献6】米国特許第5,942,162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
チムニータイプデザインに勝る蒸気上昇管装置の利点は、蒸気上昇管により、相当に広いターンダウン範囲が可能である。液体流量が減少するにつれて、適切にデザインされたチムニーは、一層高くならなければならないかまたは側面に開ける孔を一層小さくしなければならないかのいずれかである。製造許容差、設置に気を付けるおよび運転荷重による撓みにより、分配装置のすべてが容器内で同じレベルになるわけではない。あるレベルのターンダウンでは、いくつかの孔が液体で覆われおよび他の孔は液体で覆われないことになる。このことは、トレイの下の表面にわたって不均等な液体分配を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記:
支持ビームおよびトレイパネルとして作用しおよび設置した際に、構造の接合部および容器の形成されたトレイと内壁との間で本質的に漏れの無いトレイを形成する複数個の水平の自立構造を含み;
該水平の自立構造の各々は、少なくとも一列の等しいサイズの開口で穿孔された底板からなり、各々の開口に細長い下降流流路が取り付けられ、該流路は、該底板における開口と同じ幾何学的横断面形状を有する管または任意の他の幾何学的形状の形態でありそして下降流流路の各々は、並流2相流用の入口を備え、および該下降流流路の内の少なくとも2つに共通のライザーキャップが取り付けられ、共通のライザーキャップは、下降流流路の各々の少なくとも一つの壁部分に取り付けられおよびそれに沿いならびに下降流流路の各々の入口の上に装着されそして入口から離して間隔があけられる、下降流容器において並流2相流を分配するための気液分配装置である。
【0012】
下降流流路と共通のライザーキャップとの組合せをBOXVLTと呼ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】最低1つのビームからなる自立構造の透視図を示し、自立構造はライザーキャップ、ダウンカマーおよび底板を含み、それらの組合せを下記の説明においてボックス蒸気上昇管またはBOXVLTと識別する。
【図2】BOXVLT3つを有する自立構造の透視図を示す。
【図3A】種々の形状および種々のパターンを有するダウンカマーの異なる配置の例により、BOXVLT(下から示す)の横断面図を示す。
【図3B】種々の形状および種々のパターンを有するダウンカマーの異なる配置の例により、BOXVLT(下から示す)の横断面図を示す。
【図3C】種々の形状および種々のパターンを有するダウンカマーの異なる配置の例により、BOXVLT(下から示す)の横断面図を示す。
【図3D】種々の形状および種々のパターンを有するダウンカマーの異なる配置の例により、BOXVLT(下から示す)の横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従う自立の構造を容器内で水平に支持しそしてそれの縁を、隣接した自立構造またはトレイパネルの縁に対してガスケットを用いて固く締めるかまたは他の方法でシールして容器の横断面積を覆う本質的に漏れの無い表面をもたらす。
【0015】
自立構造/トレイパネルの底板をそれの表面を横切る均一に間隔をあけた開口によって穿孔し、該開口を底板上に少なくとも一列に分配する。開口は、円形でも、四角形でも、長方形でもまたは任意の他の幾何学的形状でもよい。
【0016】
全ての場合において、全ての穿孔の間にほぼ均一な間隔をもたらしおよび開口面積対複数の列のBOXVLTによって形成されるトレイ全体を横切る水平トレイ面積のほぼ均一な比をもたらすために、最適化されたパターンを使用する。
【0017】
共通のライザーキャップで覆われた2つの下降流流路からなる少なくとも一つのBOXVLTは、各々の自立構造/トレイパネル上に少なくとも2つの滴下点を有する蒸気上昇管装置を生じる。
【0018】
本発明に従う蒸気上昇管装置は、泡鐘装置と概念において同様であるが、いくつもの利点を有する。蒸気上昇管装置は一層小さくなるので、反応装置内部に多数のビームを並べて配置することによって作製される分配トレイ上に一層多くを置いて一層良好な液体の分配を達成することができる。間隔を一層小さくすることによって、これらの間隙のサイズは一層小さくなる。ピッチが大きい場合に比べてピッチを一層小さくすることによって、トレイの下の総括湿潤効率は、一層良好になる。
【0019】
本発明に従う分配装置の特別の利点は、それが簡単であることであり、そのことは、作業条件によって排斥される最適なサイズで作りおよび設置するのを一層容易におよびより安価にする。
【0020】
本発明が使用されることになる多くのプロセス、例えば水素化処理反応装置では、蒸気相および液相レートおよび物理的性質の経時的およびターンダウン運転の間の広い変化が存在することができる。製造許容差および設置に気を付けることにより、分配トレイ水平度の避けられない変化が存在することになる。入口分配装置または急冷領域ミキサーから分配トレイに降下する液体は、不均一に分配され得そしてはね散らし、波立ちまたは水頭によりトレイを横切る液体高さ勾配を生じ得る。蒸気上昇管概念を用いた最適化された液体分配装置デザインは、トラフ分配装置、簡単な多孔板分配トレイ、チムニータイプ分配トレイまたは同心泡鐘分配トレイの最適化されたデザインから得られることができるトレイの下の液体分配に比べて、一層良好なトレイの下の液体分配をもたらすことになることが可能である。
【0021】
本発明の分配装置は、水素化処理反応装置において使用されることになるのが典型的である。反応装置横断面全体にわたる液体反応体の均一な分配を得ることによって、所定のレベルにある触媒全てが均一に湿潤される。これより、所定のレベルにある触媒全てが、同じ効率で作動し、このことは反応装置の総括効率を増大させる。加えて、均一な液体分配は、反応装置を横切る均一な放射状温度プロフィールを維持する。
【0022】
本発明の一実施態様では、少なくとも2つの下降流流路を共通のライザーキャップで覆い、共通のライザーキャップは、下降流流路の2つの対壁にくっ付きおよび該壁に沿って蒸気上昇管にT-様形の横断面を備える。
【0023】
更なる実施態様では、少なくとも2つの下降流流路に共通のライザーキャップを取り付けることによって逆Uの様な横断面を有する蒸気上昇管を形成し、該蒸気上昇管は、各々の下降流流路の一壁部分にくっ付きおよび該壁部分に沿う。
【0024】
なおその上の実施態様では、ビームの底部側面上の滴下縁を、各々の穿孔について、ビームを通って延在する下降流流路を用いてまたはビームにくっ付いた別個の流路片によって作り出す。滴下縁は、更に、押し出すことによって形成してもまたは同等の手段によって形成してもよい。
【0025】
下降流流路は、水平自立構造上の全ての点で同じ高さを有するのが好適である。
【0026】
また、ライザーキャップは、それの側面中に切り込まれた垂直なスロットを1つ以上有し、スロット高さは、下降流流路の入口の高度でまたはそれより下で終わるのが好適である。
【0027】
別の好適な実施態様では、2相流中の液体をライザーキャップの一層低い部分に流れ込ませないように、ライザーキャップの入口端部は、水平ビームのレベルより上で終了する。
【0028】
気液−分配デザイン概念(自立構造と呼ぶ)を図1および図2に示す。装置は、反応装置内壁の一方の側面から他方の側面に延在する1つまたはいくつかのBOXVLT1、ガスの漏れない設置を可能とするために反応装置内壁(図示せず)の曲率に相当する曲率で曲げたスカート2からなる。自立構造の縦方向の縁7は線状であり、別の自立構造(図示せず)かまたは非自立のトレイパネルのいずれかで、また1つ以上のBOXVLT(図示せず)を装備したものと組み合わせるように適応させる。全ての接合部は、本質的に漏れの無いものになる。各々のBOXVLTは、共通のライザーキャップからなり、該ライザーキャップは2つ以上のダウンカマー4を覆う。ダウンカマー4は、形状、サイズおよびパターンの配置(例、図3を参照)を変更することができる。各々のダウンカマーは、底板3に造られる開口に適合する。各々のダウンカマー4の間に、1つ以上の垂直なスロット6をライザーキャップ5の側壁の中に切り込む。スロットの頂部は、ダウンカマー4の入口端部(図示せず)にまたはその下にある。
【0029】
図3は、BOXVLTを通して上方へライザーキャップの中を見る横断面(セクションB-B)である。図3Aは、ストレートパターンで1列に並べそしてライザーキャップの両方の壁に固定した四角形をしたダウンカマーを有するBOXVLTである。図 3Bは、また直線パターンで1列に並べおよびライザーの1つだけの壁に固定した長方形のダウンカマーを有する。図3Cは、図3Aと同様であるが、円形のダウンカマーを有する。図3Dは、三角形のパターンの円形のダウンカマーを示す。
【0030】
図3A-Cに示す通りに下降流流路の間に分割板8を装着することによって、更なる改良された分配効率、すなわち、2相流雄型(male)-分配に対する感度の低下を得ることができる。
【0031】
本発明の運転において、液体レベルは、自己支持構造の形態のおよびトレイパネルとしてのBOXVLTに各々装備される多数のビームによって作られるトレイ上に確立されることになる。部品を、それらの縁に沿っておよび反応装置壁に沿って気/液漏れしない様式で組み立てる。このようにして形成されたトレイ上の液体レベルは、共通のライザーキャップ5の底部より上になるが、ライザーキャップ内のスロット6の頂部より下になる。蒸気は、スロットを通過して、共通のライザーキャップおよび複数の下降流流路によって構成されるBOXVLTの内部と外部との間の圧力降下を作り出すことになる。BOXVLT内部の圧力が一層低いことにより、液体レベルは、BOXVLTの外部に比べて内部で一層高くなる。蒸気および液体は、ライザーキャップ内部で蒸気と混合して液体を持ち上げて上方向に流れさせそして下降流流路4の入口の壁を越えて流れさせることになる。液体は、入口の壁を越えて流れそして下降流流路4において下に流れながら、部分的に離れることになる。底板3より下の開口において、液体および蒸気は、ダウンカマー4の滴下縁から排水する液体と更に離れることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記:
支持ビームおよびトレイパネルとして作用しおよび設置した際に、構造の接合部および容器の形成されたトレイと内壁との間で本質的に漏れの無いトレイを形成する複数個の水平の自立構造を含み;
該水平の自立構造の各々は、少なくとも一列の等しいサイズの開口で穿孔された底板からなり、各々の開口に細長い下降流流路が取り付けられ、該流路は、該底板における開口と同じ幾何学的横断面形状を有する管または任意の他の幾何学的形状の形態でありそして下降流流路の各々は、並流2相流用の入口を備え、および該下降流流路の内の少なくとも2つに共通のライザーキャップが取り付けられ、共通のライザーキャップは、下降流流路の各々の少なくとも一つの壁部分に取り付けられおよびそれに沿いならびに下降流流路の各々の入口の上に装着されそして入口から離して間隔があけられる、下降流容器において並流2相流を分配するための気液分配装置。
【請求項2】
下降流流路が水平自立構造上の全ての点で同じ高さを有する、請求項1記載の気液分配装置。
【請求項3】
ライザーキャップが、それの側面中に切り込まれた垂直なスロットを1つ以上有し、スロット高さは、下降流流路の入口のレベルでまたはそれより下で終わる、請求項1記載の気液分配装置。
【請求項4】
ライザーキャップの入口端部が自立構造の底板のレベルより上で終了する、請求項1記載の気液分配装置。
【請求項5】
共通のライザーキャップが、各々の下降流流路の2つの対壁に取り付けられる、請求項1記載の気液分配装置。
【請求項6】
分割板が前記下降流流路の1つ以上の間に配置される、請求項1〜5のいずれか一に記載の気液分配装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の気液分配装置を含む2相流並流下降流容器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一に記載の気液分配装置を1つ以上備えた反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2009−160577(P2009−160577A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2264(P2009−2264)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(590000282)ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット (50)
【Fターム(参考)】