説明

気液反応を行うための撹拌装置及び方法

【課題】反応混合物内への液体、及び選択的に気体反応物質の均一な分配を提供する撹拌装置を提供する。
【解決手段】供給部と少なくとも1つの出口開口とを有するシャフト11上に配置された、ガス撹拌機12及び液体ミキサ又は2つの液体ミキサ13を含む撹拌装置10において、撹拌機の出口開口及び1つ又は複数のミキサの出口開口が、互いに離れており、撹拌機及び1つ又は複数のミキサの直径dに対する出口開口の間の距離aの比a/dが約0.02〜約0.5であり、撹拌機又はミキサの直径dに対する外縁部の間の距離bの比b/dが約0.01〜0.4である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス撹拌機と液体ミキサとから形成された又は2つの液体ミキサとから形成された撹拌装置、及び本発明による撹拌装置を用いて気液反応を行うための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気液反応はしばしば化学処理技術において行われる。その例は、酸化、水素化、塩素化、又は酸素の消費を伴う生化学反応である。これらの反応は多くの場合、固体成分、例えば触媒を加えることによっても行われる。
【0003】
このような反応を行うための反応装置の多数の提案があり、これらの提案は、気体反応物質を混合するためのガス撹拌機を想定している。したがって、例えば、M.Zlokarnik, Ruehrtechnik, 第174頁以下参照、Springer Verlag、1999年、又はEKATO Handbook of Mixing Technology、HY.1以下参照、Ekato Ruehr- und Mischtechnik GmbH、Schopfheim、ドイツ、には、ガス撹拌機が記載されている。
【0004】
欧州特許出願公開第784505号明細書には、発熱反応、特に芳香族ニトロ化合物を水素化するためのスラリ相反応装置が記載されており、この反応装置は、反応混合物を循環させるための撹拌機と、付加的なガス撹拌機とを有している。反応体は、撹拌機は反応混合物を循環させるために使用される撹拌機の直ぐ近くの計量供給チューブを介して反応装置に導入される。搬送方向及び搬送特性に応じて、反応物質は半径方向又は軸方向に逸らされ、これにより、撹拌機に吸い込まれた容積流に混合される。
【0005】
米国特許第3761521号明細書は、連続的な反応、例えば芳香族ニトロ化合物の水素化を行うための方法及び装置を開示している。この場合、反応混合物は、液体媒体における気相及び第2の固相又は液相を混合することによって形成される。混合の間、気体は液相において迅速に分散される。液相の一部は撹拌された反応空間から、触媒のための分離装置内へ連続的に溢れる。気相及び液相は上部からチューブを介して撹拌機へ供給され、撹拌機は中空のシャフトを介して別のガスを吸い込む。
【0006】
M.Assirelli, W.Bujalski, A.W.Nienow, A.Eaglesham著のIntensifying Micromixing with a Rushton Turbine, 5 th International Symposium on Mixing in Industrial Processes, Sevilla, Spain, 2004、には、撹拌された反応装置における反応が記載されており、この反応において、反応混合物の反応物質のうちの1つが撹拌機の近くに供給される。この1つの反応物質の供給はこの場合中空のシャフトを介して行われ、この中空のシャフトから3つの湾曲したチューブが分岐ししている。これらのチューブは、撹拌機ブレードの縁部から垂直方向及び水平方向に所定の距離のところで終わっている。記載された半径方向に搬送するディスク状撹拌機は、6つのブレードを有している。さらに、ガス撹拌機の使用はここには記載されていない。
【0007】
気液反応において、中空シャフトを介して液体レベルの上方のガス空間に接続されたガス撹拌機は、ガシングを強化するためにも使用される。ガス撹拌機は特に、未だ完全に反応されていない気体反応体を再分散させるのに適している。M.Zlokarnik, H.Judat, “Rohr- und Scheibenruehrer - Zwei Leistungsfaehige Ruehrer zur Fluessigkeitsbegasung”, Chemie-Ingenieur-Technik 39, 第20巻、第1163頁〜第1168頁、1967年、には、4つのアームを有する環状の撹拌機として形成された撹拌機が記載されている。2つの向き合ったアームがガスを吸い込み、他の2つのアームが液体を吸い込む。ガス・トレイルが隣のアームに到達して包囲すると、液体撹拌機の搬送能力が急激に降下する。
【0008】
ベルギー特許第869961号明細書にはディスク状の撹拌機が記載されており、この場合、撹拌機には、気体及び液体のための様々なノズルが装備されている。気体及び液体は圧力下でノズルを介して導入され、これにより、撹拌機モータの故障時にはサスペンションのセッティングをある時間だけ回避することができる。この装置は、通常の撹拌機動作の間の独立した搬送又は計量供給には適していない。
【0009】
気相の良好な分配に加えて、気液反応のための反応装置における問題は、液体反応物質を反応混合物内にできるだけ均一に混合することである。なぜならば、あらゆる局所的な過剰濃度は副産物の形成につながるおそれがあり、固体による触媒の場合には、局所的な過負荷により触媒の不活性化にもつながるおそれがある。気体と液体とが互いに干渉することなく気体と液体の混合を最適化することは別の課題である。例えば、M.Zlokarnik, H.Judat, “Rohr- und Scheibenruehrer - Zwei Leistungsfaehige Ruehrer zur Fluessigkeitsbegasung”, Chemie-Ingenieur-Technik 39, 第20巻、第1163頁〜第1168頁、1967年、から知られた4つのアームを有する環状の撹拌機の場合、液体撹拌機の搬送能力の降下は、ガス・トレイルの形成により生じる。能力のこの降下は、混合に対する不都合な効果も有する。
【非特許文献1】M.Zlokarnik, Ruehrtechnik, 第174頁以下参照、Springer Verlag、1999年
【非特許文献2】EKATO Handbook of Mixing Technology、HY.1以下参照、Ekato Ruehr- und Mischtechnik GmbH、Schopfheim、ドイツ
【特許文献1】欧州特許出願公開第784505号明細書
【特許文献2】米国特許第3761521号明細書
【非特許文献3】M.Assirelli, W.Bujalski, A.W.Nienow, A.Eaglesham著のIntensifying Micromixing with a Rushton Turbine, 5 th International Symposium on Mixing in Industrial Processes, Sevilla, Spain, 2004
【非特許文献4】M.Zlokarnik, H.Judat, “Rohr- und Scheibenruehrer - Zwei Leistungsfaehige Ruehrer zur Fluessigkeitsbegasung”, Chemie-Ingenieur-Technik 39, 第20巻、第1163頁〜第1168頁、1967年
【特許文献3】ベルギー特許第869961号明細書
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の概要
したがって、本発明は、反応混合物内への液体、及び選択的に気体反応物質の均一な分配を提供し、従来技術における固有の欠点を回避する撹拌装置を提供する。
【0011】
ここで図面を参照して限定のためではなく例示のために本発明を説明する。
【0012】
ここで限定のためではなく例示のために本発明を説明する。操作例の場合と、その他に示された場合とを除き、明細書における、量、パーセンテージ等を表す全ての数字は、「約」という用語によって全ての例において修正されると理解されるべきである。
【0013】
本発明は、ガス撹拌機と液体ミキサとから、又は2つの液体ミキサとから形成された撹拌装置を提供し、ガス撹拌機及び液体ミキサは、シャフト上に配置されておりかつそれぞれが供給部と少なくとも1つの出口開口とを有しており、ガス撹拌機及び液体ミキサの出口開口は、互いに距離を置いて配置されており、ガス撹拌機又は液体ミキサの直径dに対する、出口開口の間の距離aの比a/dは好適には0.02〜0.5、より好適には0.005〜0.3であり、ガス撹拌機又は液体ミキサの直径dに対する、外縁部の間の距離bの比b/dは好適には0.01〜0.4、より好適には0.02〜0.2である。
【0014】
本発明による撹拌装置は少なくとも2つの撹拌機を有している。第1の実施形態において、これらの撹拌機はガス撹拌機及び液体ミキサであり、第2の実施形態においては2つの液体ミキサである。液体ミキサ及び/又はガス撹拌機のあらゆる所望の組合せを備えた、3つ以上の撹拌機を有する撹拌装置も可能である。ガス撹拌機は当業者に知られている。原理的には、あらゆる所望のガス撹拌機が、本発明による撹拌装置のために使用されることができる。好適には、チューブ状撹拌機又はタービン撹拌機が使用される。本発明に関連した液体ミキサは、ガス撹拌機と同様に、液体反応物質を混合するために働くミキサ又は撹拌機を意味すると理解される。液体ミキサは少なくとも1つの入口を有しており、この入口を介して液体反応物質が供給される。液体ミキサの撹拌機は出口を有しており、この出口から液体反応物質が排出される。したがって、液体ミキサは、例えば中空の撹拌機、特にチューブ状撹拌機、又はポンプインペラであることができる。ガス撹拌機及び液体ミキサのタイプは、所望のように組み合わされることができる。例えば、ガス撹拌機及び液体ミキサとしてのチューブ状撹拌機、ガス撹拌機としてのタービン撹拌機、及び液体ミキサ又は管状撹拌機及びタービン撹拌機又はインペラとしてのポンプインペラである。軸方向に搬送する撹拌機関、例えば傾斜ブレード撹拌機、は特に好適である。
【0015】
ガス撹拌機及び液体ミキサ、又は2つの液体ミキサは、シャフト上に配置されている。したがって、2つの撹拌機又はミキサは互いに上下に配置されており、ガス撹拌機及び液体ミキサはあらゆる所望の順序で互いに上下に取り付けられることができる。
【0016】
ガス撹拌機及び液体ミキサ、又は2つの液体ミキサのそれぞれは、撹拌機又はミキサへの反応物質のための供給部を有している。例えば、シャフトが供給部として働くことができ、この場合、シャフトは中空のシャフトとして形成されている。中空のシャフトは、気体又は液体反応物質のための供給部として働くことができる。本発明による撹拌装置が2つの液体ミキサを有しているならば、中空のシャフトは2つの液体反応物のための供給部として使用されることもでき、この場合、中空のシャフトは例えば2つの同心的に配置されたチューブから形成されている。択一的に、シャフトを介して上部から第1の反応物質を、シャフトを介して底部から第2の反応物質を供給することが可能である。例えば、反応物質の1つのみが中空のシャフトを介して供給されるならば、第2の液体又は気体反応物質は、付加的なチューブラインを介してガス撹拌機又は液体ミキサへ供給されることもできる。これは、例えば、吸込み開口と、反応物質のための供給部としての吸込み開口の領域に配置されたチューブラインとが装備されたガス撹拌機又は液体ミキサによって行われることができる。チューブラインは、吸込み開口に接続されているか又は、吸込み開口から離間していることができる。
【0017】
本発明による撹拌装置の第1の実施形態において、ガス撹拌機は液体ミキサの上方においてシャフト上に配置されている。シャフトは中空のシャフトとして形成されており、ガス撹拌機のための供給部として考えられている。液体ミキサは吸込み開口を有しており、この吸込み開口は好適には、下側、すなわちガス撹拌機とは反対側において中央に配置されている。チューブラインは液体ミキサのための供給部として設けられており、チューブラインの1つの開口、例えば開放端部は、吸込み開口の領域に配置されている。この関連における吸込み開口の領域においてとは、吸込み開口の直径dに対する、吸込み開口とチューブラインの開口との間の距離aの比が、比a/dにおいて、3以下、より好適には1〜2であることを意味する。チューブラインは原理的には、あらゆる所望の方向から、例えば底部又は側部から吸込み開口へ導かれることができる。
【0018】
本発明によれば、ガス撹拌機の出口開口と、1つ又は複数の液体ミキサの出口開口とは互いに距離aだけ離れており、ガス撹拌機又は液体ミキサの直径dに対する距離aの比a/dは、0.02〜0.5、より好適には0.05〜0.3である。さらに、本発明によれば、ガス撹拌機又は液体ミキサの直径dに対する、外縁部の間の距離bの比b/dは、0.01〜0.4、より好適には0.02〜0.2である。ガス撹拌機及び1つの液体ミキサを有する撹拌装置の場合、ガス撹拌機の直径dが直径dとみなされる。撹拌装置が2つの液体ミキサを有しているならば、直径dは、より大きな直径を有する液体ミキサの直径dと見なされることになる。
【0019】
本発明による距離を備えている場合、2つの撹拌機の出口開口は比較的近い距離で並んでいる。2つの隣接する出口開口の間の本発明による距離が存在する限り、出口開口は原理的に相対的に所望のように配置されることができる。出口開口は、例えば垂直方向に互いに上下に位置することができる。しかしながら、1つの撹拌機、ガス撹拌機又は液体ミキサの出口開口は、撹拌装置の回転方向で、第2の撹拌機、液体ミキサの出口開口の前又は後に位置するように、出口開口は互いにずらされて配置されることもできる。さらに、2つの撹拌機の直径が異なるならば、出口開口は半径方向に互いにずらされることができる。好適には、2つの撹拌機の出口開口は互いに垂直方向に配置されている。
【0020】
2つの撹拌機の直径は、同じであっても異なっていてもよい。液体ミキサの直径dは、好適にはガス撹拌機の50〜150%、より好適には80〜120%である。
【0021】
好適には、本発明による撹拌装置において、液体ミキサの高さは、好適にはガス撹拌機の高さの2〜25%、より好適には5〜20%である。
【0022】
チューブ状撹拌機の形式の構成において、液体ミキサの端部は、流れに面した側において、チューブ軸線に対して角度を成して終わっており、この角度は、好適には30〜90゜、より好適には40〜60゜である。
【0023】
ガス撹拌機及び液体ミキサのブレードの数は、好適には2〜10、より好適には4〜8である。ガス撹拌機及び液体ミキサ、又は2つの液体ミキサのブレードの数は同じであっても異なっていてもよい。ガス撹拌機におけるブレードの与えられた数nの場合、液体ミキサは好適には、ブレードの数n=1からn=2・nを有している。特に好適には、ブレードの数nは、ブレードの数nと同じであり、2つの液体ミキサの場合好適には両者はブレードの同じ数nを有している。
【0024】
発明は、本発明による撹拌装置を使用して気液反応を行うための方法をも提供する。このような気液反応の例は、酸化、水素化、塩素化、又は酸素消費を伴う生化学反応である。
【0025】
ここで本発明による撹拌装置への電力入力は、好適には0.5〜15kW/m、より好適には1〜10kW/mである。ガス撹拌機の周速は、好適には1〜25m/s、より好適には5〜20m/sである。
【0026】
液体ミキサの搬送能力は、好適には供給される反応物質の容積流の1〜50倍、より好適には2〜20倍に調整させられている。
【0027】
1つの実施形態において、発明による撹拌装置は、芳香族ニトロ化合物、特にニトロベンゼン及びジニトロトルエンの水素化のために使用される。
【0028】
発明による撹拌装置の利点は、2つの液体又は、1つの液体及び1つの気体反応物質の混合がそれぞれ、特定の仕事に最適化されるべき自己のミキサ又は撹拌機によって行われるということであり、2つのミキサ又は撹拌機はシャフト上に配置されている。反応物質の混合は、混合プロセスの最小限の相互の影響又は干渉を伴いながら、発明による撹拌装置によって達成される。発明による撹拌装置は、より良好なマイクロミキシングを提供し、ひいては副産物の形成を著しく低減する。
【0029】
図1は、撹拌装置10の第1実施形態の図を示しており、この撹拌装置は、タービン撹拌機の形式のガス撹拌機(gassing stirrer)12と、ポンプインペラの形式の液体ミキサ13とを含んでいる。ガス撹拌機12と液体ミキサ13とは中空のシャフト11に配置されており、ガス撹拌機12が液体ミキサ13の上方に配置されている。中空のシャフト11は気体反応物質1のための供給部17として働く。気体反応物質1は出口開口14を介してガス撹拌機12から排出される。液体反応物質2は、チューブラインの形式の供給部16を介して液体ミキサ13に供給される。供給部16は液体ミキサ13の吸込み開口(図示せず)の領域に位置している。液体反応物質2は出口開口15を介して液体ミキサ13から排出される。
【0030】
図1において、aは、ガス撹拌機12の出口開口14と、液体ミキサ13の出口開口15との間の距離を表している。これは、出口開口14,15の中心点の互いからの距離である。dはガス撹拌機12の直径を表しており、dは液体ミキサの直径を表している。さらに、bはガス撹拌機12と液体ミキサ13との外縁の間の距離を表している。
【0031】
図1aは、図1に示した撹拌装置10のガス撹拌機12をA−B線に沿って見た断面図を示している。図示された実施形態は、気体反応物質のための4つの出口開口14を有している。図1に示した液体ミキサ13をC−D線に沿って見た断面図が同様に図1bに示されている。液体ミキサ13も、液体反応物質のための4つの出口開口を有している。2つの撹拌機12,13の出口開口14,15は互いに上下に配置されている。
【0032】
図2は、撹拌装置20の第2の実施形態の図を示しており、この撹拌装置はガス撹拌機22と液体ミキサ23とを含んでいる。ガス撹拌機22及び液体ミキサ23はチューブ状撹拌機として形成されている。ガス撹拌機22及び液体ミキサ23は中空のシャフト21に配置されており、ガス撹拌機22は液体ミキサ23の上方に配置されている。中空シャフト21は気体反応物質1のための供給部27として働く。気体反応物質1は出口開口24を介してガス撹拌機22から排出される。液体反応物質2は、チューブラインの形式の供給部26を介して液体ミキサ23に供給される。供給部26は、液体ミキサ23の吸込み開口(図示せず)の領域に位置している。液体反応物質2は出口開口25を介して液体ミキサ23から排出される。
【0033】
図2aは、図2に示した撹拌装置20のガス撹拌機22をA−B線に沿って見た断面図を示している。図示された実施形態は、気体反応物質のための4つの出口開口24を有している。図2に示された液体ミキサ23をC−D線に沿って見た断面図が同様に図2bに示されている。液体ミキサ23も、液体反応物質のための4つの出口開口25を有している。2つの撹拌機22,23の出口開口24,25は互いに上下に配置されている。
【0034】
図3は、本発明による方法に対応する、気液反応のための反応装置30の図を示している。反応装置30は、気体反応物質のための入口31,32と、残留ガスのための出口33とを有している。反応生成物は、生成物出口34を介して反応装置30から排出される。熱除去装置35がさらに反応装置30に設けられることができる。ガス撹拌機12の上方に、反応装置の内容の十分な混合のために付加的な撹拌ブレード18が設けられている。撹拌シャフト11は、生成物出口34の上方のガス空間36においてガス吸込み開口17を有しており、このガス吸込み開口を介して、ガスがガス空間36から吸い出され、ガス撹拌機12を介して循環させられる。
【0035】
図3に示された反応装置30は例えば、芳香族ニトロ化合物、特にニトロベンゼン及びジニトロトルエンの水素化に適している。この反応において、10〜40バールの圧力下の水素が反応装置30において使用される。新鮮な水素の供給は、供給ライン若しくは入口31,32を介して行われる。水素はガス撹拌機12によって循環させられる。芳香族ニトロ化合物は、供給ライン16を介して液体ミキサ13に供給され、出口開口15を介して液体ミキサ13から排出される。適切な水素化触媒、例えば支持粒子における貴金属又はニッケル、例えば木炭、SiO又はAl、又はラネーニッケル触媒が、固体触媒として反応質量に分散させられる。形成された生原料生成物は、オーバーフロー若しくは生成物出口34において連続的に抜き出され、液体の一定レベルが維持される。反応熱は熱交換器35を介して除去される。反応温度は、熱除去の性質及び触媒の性質に応じて、80〜250℃、より好適には120〜180℃である。
【実施例】
【0036】
モデル物質システムを用いた2つの実験が、390mmの内径を有するモデル反応装置において行われた。モデル物質系は、3つの出発物質、すなわちNaOH、ジメトキシプロパン及びHClを含んでいた。第1の実験(比較例)において、欧州特許出願第784505号明細書(スラリー相反応装置)に記載されたように、HClが、定置に装着されたランスを介して供給された。第2の実験(実施形態例)において、HClは本発明による液体ミキサを介して供給された。
【0037】
計量供給された成分HCLは第1の出発物質NaOHと極めて迅速に反応したのに対し(イオン反応)、第2の出発物質、ジメトキシプロパンとの反応は、不十分な混合のために、第1の出発物質NaOHが既に欠乏したゾーンにおいてのみ生じた。第2の反応において形成された生成物の量は、混合の質の測定であった。モデル物質系は、副産物又は二次生成物の形成を伴う多くの化学反応を表す。
【0038】
ガス撹拌機は2つの実験において同じであった。ガス撹拌機は中空シャフトを介して充填レベルの上方のガス空間に接続された。ガス撹拌機の直径(6×60゜傾斜したブレード撹拌機)は100mmであり、高さは25mmであった。
【0039】
比較例において、定置に装着されたランスとして、6×1mmのチューブが選択された。ランスの開口は、ガス撹拌機の外側縁部の上方5mmの位置に装着された。
【0040】
本発明により行われた実験(実施形態例)において使用された、チューブ状撹拌機として構成された液体ミキサも100mmの直径を有しており、高さは、ガス撹拌機の下側縁部から5mmの内部距離において3.2mmであった(3.2mm×0.6mmのチューブ)。ガス撹拌機のブレードの数と、液体ミキサのチューブの数とは6であり、縁部の間に0゜の接線角が形成された。液体ミキサの出口開口は、流れの方向(撹拌機の回転方向)に対して、チューブ軸線に対して45゜傾斜させられた。
【0041】
出口開口の間の距離aは5mmであり、ガス撹拌機の直径dは100mmであった。
【0042】
撹拌装置の回転速度は600〜1400rpmであった。ガス撹拌機を介する空気の搬送は約800rpmで開始した。電力供給は0.5〜4kW/mであった。周速は3〜8m/sであった。
【0043】
NaOHは、最初、0.105モルの水溶液として実験容器(直径390mm)に導入され、ジメトキシプロパンは0.1モルの水溶液として導入された。NaOHの超過が5モル%のみであるまで、HClが8モル溶液として加えられた。両方の実験において、約6分の計量供給時間が生じるように計量供給速度が選択された。なぜならば、2〜10分の計量供給時間において、その他は同じ条件において、全ての混合結果に対する影響が観察されなかったからである。
【0044】
欧州特許出願第784505号明細書による定置に装着されたランスを用いる比較例において、ランスは、ガス撹拌機の外側縁部において外側縁部の上方5mmのところに装着された、比較例において、回転速度に拘わらず、約2.2g/kgのアセトン重量含量が測定された。
【0045】
本発明による例において、HClは、その他の点については同じ条件において、共に回転する液体ミキサを介して加えられた。800rpmまでの回転速度において、1.9g/kgのアセトン重量含量が検出されたのに対し、より高い回転速度においてこの値は著しく低下し、1200rpmにおいて僅か1.43g/kgであった。
【0046】
調査されたモデルシステムにおいて、その他の点については同じ条件において、ガス撹拌機の上縁部の上方5mmの外形における定置の供給チューブ(ランスを備えた従来技術による計量供給と比較して、本発明の関連において酸の計量供給を変更することによって、第2の反応において形成される反応生成物の濃度を65%低下させることが驚くべきことに可能であった。
【0047】
以上のように発明は例示の目的で詳細に説明されたが、このような詳細はそのためだけのものであり、発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって詳細における変更が行うことができることが理解されるべきである。なぜならば、発明の精神及び範囲は請求項によって限定されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による撹拌装置の第1の実施形態を示している。
【図1a】A−B線に沿った図1による撹拌装置の断面図を示している。
【図1b】C−D線に沿った図1による撹拌装置の断面図を示している。
【図2】本発明による撹拌装置の第2の実施形態を示している。
【図2a】A−B線に沿った図2による撹拌装置の断面図を示している。
【図2b】C−D線に沿った図2による撹拌装置の断面図を示している。
【図3】図1による撹拌装置を使用して本発明による方法を実施するための反応装置の図を示している。
【符号の説明】
【0049】
1 気体反応物質、 2 液体反応物質、 10 撹拌装置、 11シャフト、 12 ガス撹拌機、 13 液体ミキサ、 14,15 出口開口、 16 供給部、 18 撹拌ブレード、 20 撹拌装置、 22 ガス撹拌機、 23 液体ミキサ、 24,25 出口開口、 26,27 供給部、 30 反応装置、 31,32 入口、 33 出口、 34 生成物出口、 35 熱除去装置、 36 ガス空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部と少なくとも1つの出口開口とを有するシャフト上に配置された、ガス撹拌機及び液体ミキサ又は2つの液体ミキサを含む撹拌装置において、
撹拌機の出口開口及び1つ又は複数のミキサの出口開口が、互いに離れており、撹拌機及び1つ又は複数のミキサの直径dに対する出口開口の間の距離aの比a/dが約0.02〜約0.5であり、撹拌機又はミキサの直径dに対する外縁部の間の距離bの比b/dが約0.01〜0.4であることを特徴とする、撹拌装置。
【請求項2】
気液反応を行うための方法において、請求項1記載の撹拌装置を含むことを特徴とする、方法。

【図1】
image rotate

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−55847(P2006−55847A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236936(P2005−236936)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【Fターム(参考)】