説明

気液搬送装置

【課題】決めた方向に適量の気体や極細径の液体を搬送することが出来る気液搬送装置を提供する。
【解決手段】気体や極細径の液体を収納する加圧室31と、加圧室31に開孔された排出口33と、排出口と対向する位置に設けられ、加圧室31内の体積を変動させる駆動装置100と、駆動装置100を制御する制御回路43を備え、駆動装置100によって加圧室31内の気体や極細径の液体を排出口33から塊の状態で加圧室31外へ放出して任意エリアに搬送する気液搬送装置において、駆動装置100は、制御回路43からの入力電力を受けるコイル15と、コイル15が巻設されたボビン14と、コイル15の周囲に磁力場を発生させる磁力発生部と、ボビン14の一端側に設けられた振動板17と、振動板17と接着され振動板17を保持してなる大径略異形エッジ20と、大径略異形エッジ20の一端及び磁力発生部とを保持するフレーム19で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内及び室外の任意エリアに対して、気体や極細径の液体を気相中に搬送する気液搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ある一面に開口を備えた箱内に気体や極細径の液体を充満させ、該箱を人間が叩いて箱内の体積を瞬間的に小さくすることによって箱内の気体や極細径の液体を開口から放出し、室内及び室外の任意空間上に放射させるものがあった。そして、上記「叩く」という作業を箱外に設けられたソレノイドによって行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。
また、箱内に設置した作動部をアクチュエータで可動させることにより直接箱を叩かないでも箱内の気体や極細径の液体を搬送する技術が知られている。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3675203号(第24図)
【特許文献2】特開2007−237803号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、ソレノイドやアクチュエータによって箱内の体積を小さくしている為、ソレノイドやアクチュエータを駆動した後に箱や作動部に不要な振動が発生することがあり、これによって一度の駆動によって搬送する気体や極細径の液体の量が安定しないという問題が生じていた。また、該不要な振動によって、気体や極細径の液体の放出される方向がずれてしまうという問題も生じていた。
【0005】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、決めた方向に適量の気体や極細径の液体を搬送することが出来る気液搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の気液搬送装置は、気体や極細径の液体を収納するキャビネットと、該キャビネットに開孔された排出口と、該排出口と対向する位置に設けられ、前記キャビネット内の体積を変動させる駆動手段と、該駆動手段を制御する信号発信手段を備え、前記駆動手段によって前記キャビネット内の気体や極細径の液体を前記排出口から塊の状態で放出して任意エリアに搬送する気液搬送装置において、前記駆動手段は、前記発信信号手段からの入力電力を受けるコイルと、該コイルが巻設されたボビンと、前記コイルの周囲に磁力場を発生させる磁力発生部と、前記ボビンの一端側に設けられた振動板と、該振動板に接着され前記振動板を保持してなるエッジ部と、該エッジ部の一端及び前記磁力発生部とを保持するフレームで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
これにより、本発明は、振動板を変動させた後の不要な振動を抑制することができ、これにより、室内及び室外の任意空間に対して、気体や極細径の液体を安定的に搬送する事が可能となる。また、不要な振動を抑制することにより、異音の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置が一方向に駆動したときの概略図である。
【図4】本発明の実施の形態1の気液搬送装置の概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の気液搬送装置における制御回路から発信される信号の時間波形図である。
【図6】本発明の実施の形態1の気液搬送装置における駆動装置の駆動量と空気の搬送距離との距離特性図である。
【図7】本発明の実施の形態2の気液搬送装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置の概略図であり、図2は本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置の概略図であり、図3は本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載される駆動装置が一方向に駆動したときの概略図であり、図3は本発明の実施の形態1の気液搬送装置の概略断面図であり、図4は本発明の実施の形態1の気液搬送装置における制御回路から発信される信号の時間波形図であり、図5は本発明の実施の形態1の気液搬送装置における駆動装置の駆動量と空気の搬送距離との距離特性図であります。なお、図1〜4における各構成部材の大きさの関係は一例であり、これに限ったものではない。
【0010】
本発明の気液搬送装置における駆動装置100について、図1〜3を用いて説明する。図1及び図2において、10は駆動装置100の最底面となるヨーク、11はヨーク10の中心部に円柱状に成型されたセンターポール、12はセンターポール11の周囲にある程度の隙間をあけて設けてヨーク10に固定された磁性を有するマグネット、13はマグネット12の上面に固着して成るプレートである。ここで、マグネット12は、ネオジウム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコなど強力な磁性を継続的に有することができる素材を用いて構成され、図2に示すように上方にS極、下方にN極を有している。また、ヨーク10、センターポール11、プレート13は金属材料で構成されており、マグネット12のN極と接続しているヨーク10、センターポール11はN極、マグネット12のS極と接続しているプレート13はS極となっている。
14は非金属の管状で構成されセンターポール11に遊嵌されたボビン、15は銅線をボビン14周囲に巻きつけて形成されたコイル、16はコイル15に電力を供給するための導線であり、コイル15はボビン14の略周面全面を覆うように巻かれて形成されている。
上記のように構成された駆動装置100は、センターポール11とフレーム13間に発生する磁力場とコイル15を流れる電流によって電磁力を発生させて、ボビン14を図3のように動かしている(フレミングの左手の法則の原理)。
【0011】
17はボビン14の一端に粘性を有する接着層18を介して接着された振動板であり、振動板17はボビン14の外寸径とほぼ同等径もしくはボビン14の外寸径より小さいものを用いており、気体や極細径の液体がボビン14に浸入するのを防ぐ役目を成している。
19は駆動装置100を適切な位置に固定する機能を有するフレームであり、20は振動板17とフレーム19に接続され振動板17及び振動板17に接続されているボビン14等を保持する大径略異形エッジである。大径略異形エッジ20は、振動板17の直径(A)よりも大きい半径(R1)を有する半円を形成し、振動板17の変動によって大径略異形エッジ20全面が振動板17と同方向に変動するように構成されている。21は大径略異形エッジ20を振動板17に固定している振動板固定部であり、22は大径略異形エッジ20をフレーム19に固定しているフレーム固定部である。ここで、振動板17は、フレーム固定部22よりも低い位置になるよう構成されており、振動板17が変動できる距離を大きくしている。なお、101は振動板17と大径略異形エッジ20によって構成された振動体であり、振動体101はボビン14の変動に伴って変動し、その周囲にある気体や極細径の液体を押し出す作用を有するものである。
ここで、振動板17は、一般的なスピーカ装置で用いられている振動板と比べて小面積で且つ大径略異形エッジ20を半円状に構成することによって、駆動装置100を駆動したとき、振動板17を及び大径略異形エッジ20を大きく変動させることが出来る。
【0012】
次に、本発明の気液搬送装置について、図4を用いて説明する。
30は箱状に形成されたキャビネットであり、その内部に駆動装置100を装着している。なお、キャビネット30の外観形状は立方体に限らず、製品形態に併せて自由に形状を選ぶことができ、例えば、キャビネット30を球形状にすることも可能である。31はキャビネット30と駆動装置100の前面側にある振動体101によって囲まれた空間のうち、振動体101より前方に出来る空間である加圧室、32は加圧室31内に気体や極細径の液体を投入するためのチューブやダクトなどの構造体を入れるための投入孔であり、キャビネット30の任意の位置に投入方法に合わせた開孔径や形状で構成する。33は加圧室31の駆動装置100に対向する面に設けた開孔である排出口であり、排出口33は加圧室31内に入れた気体や極細径の液体をキャビネット30の外に放射させるためのものである。なお、排出口33は駆動装置100の中心軸と略一致する軸上の位置に構成しており、これによって排出口33から気体や極細径の液体を安定的に放射することができる。また、排出口33の端部33aはキャビネット30板厚を半径としたRを有する面取りを行っており、これにより、気体や極細径の液体が排出口33を通過する際の乱流を防ぐことができ、気体や極細径の液体の搬送距離を長くしたり安定的に搬送することが出来る。更に、排出口33の孔形状は、円形に拘らず、楕円、四角、三角、更には多角形でもよい。
【0013】
また、排出口33の開孔面積は、駆動装置100の振動体101の表面積の1/3から1/4の範囲とするものであり、上記面積寸法にすることによって、加圧室31内の空気圧及びキャビネット30外の空気の流れなどの影響を受けにくくなり、搬送能力を向上させることが出来る。
【0014】
40は駆動装置100をキャビネット30の所定位置に固定するための設置部、41はキャビネット30と駆動装置100の前面側にある振動体101によって囲まれた空間のうち、振動体101より後方に出来る空間である駆動装置用空気室、42は駆動装置用空気室41を形成しているキャビネット30の所定位置に設けられた開孔である息抜き孔である。息抜き孔43は、駆動装置用空気室41の圧力を常に外気の圧力と一緒にする為のものであり、これによって振動体101が変動する際に駆動装置用空気室41の圧力によって振動体101の動きが阻害されることを防止することが出来る。
また、43は信号発信手段となる制御回路であり、導線16を介してコイル15に電力を供給し、駆動装置100の動作を制御している。なお、実施の形態1では駆動装置100と制御回路43をつなぐ導線16を、息抜き孔42を通して制御回路43に接続されているが、これに限った物でなく別途キャビネット30に開孔された孔を通して接続させても良い。
また、本発明の実施の形態1では、駆動装置100をキャビネット30内に収納して構成し、周囲に放射される駆動装置100の駆動音を減少させているが、例えば、キャビネット30の排出口33と対向する面に大きな開孔を設け、その開孔を塞ぐように駆動装置100を設けても良い。その際は、駆動装置用空気室41が形成されないので息抜き孔43は不要となる。
【0015】
次に、本発明の実施の形態1における気液搬送装置の動作について図1〜5を用いて説明する。図5は本発明の実施の形態1の気液搬送装置における制御回路から発信される信号の時間波形図である。図5において、横軸は時間、縦軸はコイル15に入力される入力電圧を示す。なお、駆動装置100は振動体101を前面方向だけに駆動させれば良い構造であるので、信号は一方向(図では+電圧方向)だけの波形となる。
気液搬送装置の運転が開始されると、最初に極細径の液体を発生させる水蒸気発生装置(図示無し)によって生成された極細径の液体を投入孔32から加圧室31内に投入し、加圧室31内を気体と極細径の液体で充満させる。その後、図5に示すような急峻に立ち上がるような電圧を制御回路43から導線16を介してコイル15に入力され(立上り工程)、コイル15に流れる電流と周囲の磁力場によって振動体101等のコイル15に接続された部材を前方に押す電磁力を発生させ、急激に移動させる。この振動体101の移動によって加圧室31内の気体及び極細径の液体は急激に圧縮され、振動体101と対向する位置に設けられた排出口33付近の気体及び極細径の液体が排出口33からキャビネット30外へ気体の塊となって放出される。塊となって放出された気体及び極細径の液体は塊が発散するまで間、極細径の液体を多く含んだ塊のまま搬送される。これによって、任意の空間を加湿することが可能となる。
【0016】
その後、制御回路43は徐々に入力電圧を減少させていき、所定時間後に入力電圧0Vとなるような制御をおこなっている(立下り工程)。これにより、コイル15に電流が流れることによって発生する力は徐々に小さくなっていくので、それに伴い前方に移動した振動体101等のコイル15に接続された部材は、ゆっくりと図1に示すような安定する初期位置に戻る。上記のような一連の動作を所定の間隔をおいて繰り返すことにより、任意の空間を安定的に加湿することが出来る。
【0017】
ここで、駆動装置100の立上り工程において、コイル15への入力電圧の印加を急峻に行うことによって振動体101を前方に強力に動かすことができ、これにより、気体や極細径の液体を必要なエリアに常に均一条件で搬送させることができる。
また、制御回路43からの信号は、立下り工程の後すぐに立上り工程に移行しているので鋸波形となっている。これにより、例えば立上り工程の後に振動体101が振動してしまい、その振動によって加圧室31内にまだ残っている気体及び極細径の液体が排出口33からキャビネット30外に排出してしまうのを防ぐことができる。加えて、制御回路43からの信号は、立下り工程が立上り工程の10倍以上の時間を持つように制御されているので、立下り工程の後に振動体101が振動してしまい、その振動によって加圧室31内にある気体及び極細径の液体が排出口33からキャビネット30外に排出してしまうのを防ぐことができる。上記のような制御を行うことによって、一回で放出される極細径の液体量にバラツキがでるなどの不具合を解消することができる。また、よりより早く加圧室31内に気体及び極細径の液体を充満させることが出来るようになり、これにより加圧室31内に気体及び極細径の液体を充満させるのに必要となる所定の間隔を短くすることができるので、結果として任意の空間への加湿速度を速めることができる。加えて、不要な振動が抑制されることによって異音の発生も防止できる。
【0018】
次に、本発明の実施の形態1の気液搬送装置に搭載されている駆動装置の動作について図1〜6を用いて説明する。図6は本発明の実施の形態1の気液搬送装置における駆動装置の駆動量と空気の搬送距離との距離特性図である。
駆動装置100は、キャビネット30に設けられた設置部40とフレーム19の一部が接続されて固定しており、制御回路43から導線16を介してコイル15に供給される電力に応じて発生する力を利用して、コイル15に接続されているボビン14及びボビン14と接着層18を介して接続されている振動板17、振動板17と接続されている大径略異形エッジ20を移動するものである。制御回路43からは、図5に示すように片側一方の信号を所定の間隔を置いて入力され、それに伴ってコイル15並びにそれに接続されている振動体101等が前後へ繰り返し移動するものである。
【0019】
図6は、振動板17の移動距離に対する、気体や極細径の液体の搬送距離を示した図である。図6に示すように、振動板17の移動距離が1mmの場合、気体や極細径の液体の搬送距離は0.5m程度となり、振動板17の移動距離が6mmの場合、気体や極細径の液体の搬送距離は1m程度となり、振動板17の移動距離12mmの場合、気体や極細径の液体の搬送距離は3m程度となり、気体や極細径の液体の搬送距離は振動板17の移動距離に略比例する事が分かる。また、振動板17の移動速度が速いほど、気体や極細径の液体の搬送距離が増加することが分かっている。つまり、振動板17の移動は、コイル15に流れる電流とその周囲にある磁力場とによって発生する電磁力を用いているものであり、したがって、磁力場内を通過する電力量を増やしたりコイル15周囲の磁力場を強めたり、コイル15が磁力場を受ける範囲を大きくしたりすることによって、気体や極細径の液体の搬送距離が増加という関係を有している。
【0020】
磁力場を通過する電力量は、例えばコイル15への入力電力を大きくしたり、コイル15の巻数を増やしたりすることで大きくすることが出来る。また、コイル15周囲の磁力場は、コイル15とセンターポール11及びコイル15とプレート13との距離を近づけたり、マグネット12の磁力を高めたりすることによって強くすることができる。また、磁力場はプレート13及びセンターポール11間にて発生するため、力はコイル15の下端部15aがプレート13とセンターポール11間にいるあいだ発生するので、例えばマグネット12の高さを高くしたり、コイル15の下端部15aをボビン14の下端いっぱいまで巻いたりすることによってコイル15が磁力場を受ける範囲を大きくすることが出来る。上記のような構成にすることにより、気体や極細径の液体の搬送距離を伸ばすことが出来る。
なお、通常の音響装置に用いるスピーカの場合、コイル15がセンターポール11とプレート13間で発生する磁力場から外れるとスピーカで発生させた音信号が「歪む」などの問題を有しているため、ボビン14に必要以上のコイル15を巻くことは無かった。しかし、気液搬送装置の駆動装置100として用いる場合は、「歪む」ことによる問題は発生しないので、ボビン14の略全体にコイル15を巻いて巻数を増やしてコイル15が磁力場を受ける範囲を大きくし、気体や極細径の液体の搬送距離を伸ばすことが出来る。
【0021】
次に、大径略異形エッジ20について説明する。
大径略異形エッジ20は、振動板17の直径(A)よりも大きい半径(R1)を有する半円を形成し、振動板17とフレーム19の間を覆うように設けられており、振動板17及び振動板に接続されているボビン14等を保持する役目を有するものである。大径略異形エッジ20は、水分を通過せず且つ弾力性のある材料(例えばゴム、エラストマ、表面処理を施した布など)で構成されており、搬送を行う気体や極細径の液体が駆動装置100の内部に侵入するのを防ぐ役目を有している。ここで、図1はコイル15に入力電力が無い初期状態、図3はコイル15に電力が入力された状態を示しており、コイル15に電力が入力されることによりコイル15に流れる電流と周囲の磁力場によって発生する電磁力によって振動板17が移動し、それに伴い大径略異形エッジ20も変形している。
【0022】
なお、一般の音響信号を再生するスピーカは、聴感的な品質を保持するために、振動板の径が振動板を保持するエッジよりも大きくなるよう構成されている。したがって、駆動信号を受けて振幅した時点で、構造体のいずれかで共振に伴う音が発生することとなる。また、構造体をソレノイド等で加振するものにおいても同様に構造体で共振に伴う音が発生する。特に、一般的なスピーカは振動板で音を発生させるものであるが、本発明による駆動装置100では振動板17は音を発生させるものでは無く、発生する音は「異音」であり必要としない。したがって、この異音をなくすために、振動板17の径(面積)をボビン14の径と同等もしくはボビン14の径よりも小型とすることで振動板15からの音発生を防いでいる。
更に、ボビン14と振動板17の接合部分に、乾燥後も粘性を有することが出来る、例えばエポキシやシリコン更にはゴム系の材料が混煉した接着剤による接着層18を形成する。この接着層18を形成することにより、振動板17の振動を吸収すると共に、ボビン14での振動を振動板17に伝播させない役目をなす事が出来るので、振動板17での不要な音(異音)発生を防ぐことが出来る。
【0023】
また、振動板17に、ゴム、シリコンなどの粘性を有する材料を用いる事により、振動板17での不要な音(異音)発生を防ぐという同様の効果を得ることが出来る。
更に、振動板17を保持している大径略異形エッジ20を、ゴム、エラストマ、表面処理を施した布など粘性を有する材料で成型することにより、大径略異形エッジ20そのものでの不要な音(異音)の発生が抑えられる。なお、表面処理を施した布の場合の表面剤としては、ゴムやシリコン系の材料での表面処理を施し、水分の浸透防止機能も備えるよう構成している。また、上記のような材料で形成した大径略異形エッジ20は弾力性を有しているので、ボビン14及び振動板17の振動への阻害影響が少なくなり、結果的に気体や極細径の液体の搬送距離を伸ばすことが出来る。
【0024】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2の気液搬送装置の概略断面図である。なお、図中において実施の形態1と同じ機能を有する部分には同一の符号を付している。以下に、実施の形態2が、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態1では、図4に示すように加圧室31が略立方体となるよう構成されているが、実施の形態2では加圧室31の形状を排出口33に向けて所定の半径を複数有するカーブを組み合わせて形成するロート状に構成している。図7において、70がロート状風路である。このような構成にすることにより、駆動装置100を駆動させた際に、加圧室31に充満された気体や極細径の液体が、ロート状風路70の滑らかな曲線に沿って層流状態で流れ、排出口33から放射される。したがって、加圧室31が立方体では角に気体や極細径の液体が停滞することがあったが、加圧室31にロート状風路70を設けることにより気体や極細径の液体をコーナ部分に残留させること無く、キャビネット30外に放射する事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、気体や極細径の液体を塊の状態で放出して任意エリアに搬送する気液搬送装置において、気体や極細径の液体を安定的に搬送したり搬送距離を伸ばしたりするものであり、例えば、霧化したアロマオイルや特定の臭気や水蒸気等を塊の状態で放出して任意エリアに搬送するものに用いても良いし、空気を塊の状態で放出してマッサージ器として使用するものでも良い。
【符号の説明】
【0026】
10 ヨーク、11 センターポール、12 マグネット、13 プレート、14 ボビン、15 コイル、15a 下端部、16 導線、17 振動板、18 接着層、19 フレーム、20 大径略異形エッジ、21 振動板固定部、22 フレーム固定部、30 キャビネット、31 加圧室、32 投入孔、33 排出口、33a 端部、40 設置部、41駆動装置用空気室、42 息抜き孔、43 制御回路、100 駆動装置、101 振動体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体や極細径の液体を収納する加圧室と、該加圧室に開孔された排出口と、該排出口と対向する位置に設けられ、前記加圧室内の体積を変動させる駆動手段と、該駆動手段を制御する信号発信手段を備え、前記駆動手段によって前記加圧室内の気体や極細径の液体を前記排出口から塊の状態で該加圧室外へ放出して任意エリアに搬送する気液搬送装置において、
前記駆動手段は、前記発信信号手段からの入力電力を受けるコイルと、該コイルが巻設されたボビンと、前記コイルの周囲に磁力場を発生させる磁力発生部と、前記ボビンの一端側に設けられた振動板と、該振動板に接着され前記振動板を保持してなるエッジ部と、該エッジ部の一端及び前記磁力発生部とを保持するフレームで構成したことを特徴とする気液搬送装置。
【請求項2】
前記コイルは、前記ボビンの略全長に亘り巻設することを特徴とする請求項1記載の気液搬送装置。
【請求項3】
前記振動板は、前記ボビンの径と同一径若しくは前記ボビンの径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気液搬送装置。
【請求項4】
前記振動板は、ゴム、シリコンなどの粘性を有する材料で形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項5】
前記ボビンと前記振動板は、乾燥後も粘性を有するエポキシ、或いはシリコン、又はゴム系の材料を含んだ接着剤によって接合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項6】
前記エッジ部は、前記振動板の直径以上の半径又は10mm以上の半径を有する略半円構造を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項7】
前記エッジ部は、前記振動板への固定部と、前記フレームへの固定部を有し、前記振動板への固定部は前記フレームへの固定部よりも低い位置関係となるように、前記ボビンを保持することを特徴とする請求項6記載の気液搬送装置。
【請求項8】
前記エッジ部は、ゴム、エラストマ、表面処理を施した布などで成型したことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の気液搬送装置。
【請求項9】
前記排出口の開孔面積は、前記エッジ部と前記振動板の表面積の和に対し、1/3から1/4の範囲の表面積としたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項10】
前記排出口は、前記駆動手段の中心軸と略一致する軸上に構成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項11】
前記排出口の端部に、面取り処理を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項12】
前記面取り処理は、板厚を半径としたRで処理されていることを特徴とする請求項11記載の気液搬送装置。
【請求項13】
前記信号発信手段から前記コイルへの入力信号は、1Hz以下の片波形入力信号であり、該片波形入力信号は印加初めに急峻に入力電圧が立上る立上り工程と、その後、所定時間のうちに入力電圧を徐々に減衰させる立下り工程を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項14】
前記加圧室内の前記駆動手段の前面側の形状を、前記排出口に向けて所定の半径を複数有するカーブを有するロート状にしたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の気液搬送装置。
【請求項15】
前記加圧室は、前記駆動手段と該駆動手段を収納するキャビネットの一部によって構成され、該キャビネットの前記加圧室を構成する以外の壁面に、該キャビネット内外を連通する息抜き孔を備えたことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の気液搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−240616(P2010−240616A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94945(P2009−94945)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】