説明

気相グラフティングによってヒドロキシル化された表面のコーティング

気相グラフティングによってヒドロキシル化された表面をコーティングする方法を記載する。特に、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を、気相グラフティングによって物質の表面上に配置する。このグラフティング方法は乾式プロセスである。コーティングする物質は、有機または無機物質であることができる。生じる表面コーティングした物質は強力かつ耐久性があり、通常は防水でない物質を、表面処理により防水とすることができる。表面処理した物質から生産した物品の例は、防水板紙箱、他の容器、家具、自動車および船のインテリアであり得る。植物部分などの有機物質から生産した物品は生分解性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願中に引用するすべての特許および非特許参考文献は、その全体で本明細書中に参考として組み込まれている。
【0002】
本発明は、気相グラフティングによってヒドロキシル化された表面をコーティングする分野に関する。コーティングする物質は、有機または無機物質であることができる。表面コーティングに特に適した物質は有機または無機のポリマー物質であり、特に、本方法は、好ましくは天然繊維、たとえばセルロース含有繊維(fibre)から調製した生分解性ポリマーをコーティングするために適している。本発明は、気相グラフティングによって物質をアシル基、シリル基および/またはアルキル基の化合物で表面コーティングするプロセスを記載する。
【背景技術】
【0003】
紙製品に基づく梱包材は世界中で幅広く使用されている。撥水でも防水でもない紙製品の強度は、環境の湿度に依存する。50%から80%への相対湿度の増加により、非撥水性の紙製品から作製された紙箱の負荷容量として測定した強度が約90%減少する。
【0004】
防水の梱包材または包装材が、世界中で多数販売されている液体および非液体の梱包材に一般に使用されているが、梱包材料は多くの場合、環境を破壊せず持続可能に処分することが困難である。
【0005】
セルロース系の梱包材料が液体、特に非炭酸の液体を保管するために使用されている。したがって、液体を保管するためにセルロース系のカートンを使用するためには、TetraPakの使用が実用的な手法である。これらの材料では、紙パルプの繊維を耐水性物質でコーティングするが、グラフティングは典型的には有機溶媒中で行い、本発明の非存在下では高価なプロセスであるため、紙パルプの繊維は共有的に固着および化学的に架橋結合していない。
【0006】
セルロース系の梱包材料および防水梱包材として使用する紙製品は、液体溶媒が含まれるプロセスにおいて化合物で表面処理した製品から生産することができる。現在の材料は、慣用の板紙シートに様々なワックス製品および接着コーティングフィルムを含浸させることによって生産されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、気相グラフティングによってヒドロキシル化された表面をコーティングする分野に関する。本発明は、気相グラフティングによって物質をアシル基、シリル基および/またはアルキル基の化合物で表面コーティングするプロセスを記載する。コーティングする物質は、有機または無機物質であることができる。特に、本発明は、気相グラフティングによる表面コーティングしたポリマー物質の生産に関する。この方法は、ポリマー物質を生産する際に、特に、少なくとも部分的に天然繊維から調製した生分解性ポリマーの生産に方法が適している場合に、使用することができる。単量体は、これらの単量体をポリマー内に接続する前に気相グラフティングを使用することによって、グラフティングすることができる。また、ポリマーは、本明細書中に記載のように気相グラフティングによって表面コーティングに供する物質であることもできる。また、この方法は、シリカゲル、ガラス繊維または粒子などの無機繊維または顆粒の他のヒドロキシル化された表面、およびビスコースまたはリグニンなどの他のヒドロキシル化された繊維の誘導体化にも使用することができる。気相グラフティング技法によってコーティングするポリマー物質は、農業からの麦わらの粉砕によって生じた繊維などのセルロース繊維を含有する、精製した繊維または原材料のどちらかである場合があるセルロース繊維であることができる。
【0008】
本発明は、試薬および溶媒の最小限の消費を有する溶液で得られるものと比較して、気相での低濃度で反応性試薬間の接触の向上および高い度合の変換を伴った迅速な反応を確立することができるという発見に基づいている。気相反応により、プロセスが例外的に単純および低価格となり、廃棄物が本質的になくなる。さらに、気相技法では、気体の圧縮性を活用して、表面張力が主要な役割を果たす溶液では容易に達しない、植物繊維物質中の隠れた空洞に達することができる。
【0009】
セルロース繊維を気相の誘導体化に用いる場合、本発明の生成物を重合反応で使用することによって得られたポリマー物質は、多くの用途用の多くの慣用のプラスチック材料の代用品として有用である。これらには、液体用の容器または防水梱包材を必要とする他の製品用の梱包材が含まれる。また、気相グラフティング技法によって生産した繊維から得られた繊維強化材料は例外的に強力であるため、これらにはクレートなどの二次梱包材も含まれる。また、ポリマー物質も紙、板紙およびミルボードなどの木材パルプに基づいた製品の生産に有用であり、特に、防水紙製品を、表面処理したポリマー物質から生産することができる。
【0010】
さらに、建築材、家具および自動車産業のインテリアなどの一般成型プラスチック物品を本発明の生成物から生産することができる。
【0011】
本明細書中に記載のように表面コーティングした生成物から生産したポリマー物質は例外的に強力であり、液体およびさらには炭酸入りの液体用の容器を含めた、いくつかの目的に有用である。また、ポリマー物質は、紙、板紙およびミルボードの生産にも有用であり、特に、防水紙製品を、気相グラフティングによって表面コーティングしたポリマー物質から生産することができる。
【0012】
環境を破壊せず持続可能に処分することができる、新規かつ向上したセルロース系のポリマー物質、特に耐久性のある物質の必要性が存在する。天然繊維系の物質のセルロース性の性質が原因で、重合の産物は、18カ月〜2年間にわたって土壌と接触させることによって分解することができる。
【0013】
一態様では、本発明は、物質のヒドロキシル化された表面を、アシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬の群からの少なくとも1つの化合物でコーティングして、表面でエステル、シリルまたはアルキルエーテルを提供する方法に関し、前記方法は、
a)ヒドロキシル化された表面を有する物質を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、
アシル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0014】
【化1】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・OTf、
・OMs、
・混合炭酸無水物、
・混合酸無水物、
・イミダゾリウム
1(acy)、R2(acy)およびR3(acy)は、H、150未満の分子量を有するアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択され、
アルキル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0015】
【化2】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・Tf(トリフルオロメチルスルホニル)
・およびMs(メチルスルホニル)を含めたスルホネート、ならびに
・OCOR
は、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり
1(alk)、R2(alk)およびR3(alk)は、H、150未満の分子量を有するアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択され、
シリル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0016】
【化3】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン
・OSO
・NR、および
・OR
は、Hまたは低級アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、
1(sil)、R2(sil)およびR3(sil)は、H、150未満の分子量を有するフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択されるステップと、
c)ヒドロキシル化された表面を有する前記物質を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)表面に、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を含む−O−共有結合した残基を含む物質を得るステップと
を含む。
【0017】
本文中、R、RおよびR基は、R1(acy)、R2(acy)およびR3(acy)、R1(alk)、R2(alk)およびR3(alk)、ならびにR1(sil)、R2(sil)およびR3(sil)として記載する。これは、R、RおよびR基がアシル化試薬(acy)、アルキル化試薬(alk)またはシリル化試薬(sil)のどの一部であるかを記載するためである。
【0018】
1(acy)、R2(acy)およびR3(acy)は、低級のH、アリール、アルキルおよびアルケニル基から選択される。好ましくは、これらの基はC1〜6基であり、より好ましくは、基はC1〜3基である。
【0019】
1(alk)、R2(alk)およびR3(alk)は、H、アルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択される。好ましくは、これらの基はC1〜6基であり、より好ましくは、基はC1〜3基である。
【0020】
1(sil)、R2(sil)およびR3(sil)は、H、フェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択される。好ましくは、これらの基はC1〜6基であり、より好ましくは、基はC1〜3基である。
【0021】
一般に、アシル化試薬(acy)、アルキル化試薬(alk)またはシリル化試薬(sil)のR、RおよびR基に関して、アリール基は、フェニル、ベンジル、トリル、o−キシリルの群から選択され得る。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルの群から選択され得る。アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、および4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルの群から選択され得る。フルオロアルキルは、1つまたは複数の水素がフッ素で置換されている、上述のアルキル基のうちの任意のものであり得る。
【0022】
好ましい実施形態では、アシル化試薬のハロゲンは、F、Cl、Brの群から選択される。
【0023】
OTfはトリフレートであり、より正式にはトリフルオロメタンスルホネート((トリフルオロメチルスルホニル)として知られており、式CFSO−を有する官能基である。トリフレートはOtfとしても知られる。
【0024】
OMsはメチルスルホニルであり、式CHSO−を有する官能基である。これはメシルとしても知られる。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、アルキル化試薬のハロゲンは、Cl、Br、Iの群から選択される。
【0026】
別の好ましい実施形態では、シリル化試薬のハロゲンは、Cl、Br、Iの群から選択される。
【0027】
の低級アルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基は、好ましくはC1〜6基であり、より好ましくはC1〜3基である。
【0028】
物質は、本明細書中の他の箇所にさらに記載するように、無機または有機であり得る。
【0029】
また、本発明は、好ましくはヒドロキシル化された表面を有し、少なくとも1つのアシル基、少なくとも1つのシリル基および/または少なくとも1つのアルキル基で覆われている、すなわち表面コーティングされており、試薬が気相であるプロセスによってアシル基、シリル基および/またはアルキル基を物質の表面上にグラフティングする、物質にも関する。
【0030】
興味深いことに、本発明は、特に、本明細書中の他の箇所に記載されている多くの目的に有用な耐久性のある物質を提供する、ラジカル重合または陰イオンもしくは陽イオンに触媒される開環重合によって形成されたポリマーネットワーク内に固着するための、繊維、たとえばセルロース繊維を表面コーティングする方法を提供する。この方法は、試薬が気相であり、温かい担体ガスによって流動されるプロセスにおいて、アシル化剤、シリル化剤および/またはアルキル化剤を、ヒドロキシル化された粒子または繊維、たとえば、セルロース繊維、ガラス繊維またはリグニンの表面上にグラフティングすることに基づく。
【0031】
本発明の好ましい実施形態は、表面ヒドロキシルがアシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬の群からの少なくとも1つの化合物で共有的に修飾されて、繊維表面でエステル、シリルまたはアルキルエーテルを提供する、セルロース繊維を含む繊維物質を調製する方法に関し、前記方法は、
a)セルロースを含む/含有する化合物を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、
アシル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0032】
【化4】

X=F、Cl、Br、OTf(トリフルオロメチルスルホニル)、OMs(メチルスルホニル)、OCOR、OCORまたはイミダゾリウムであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択され、
アルキル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0033】
【化5】

X=Cl、Br、I、OSOR、OCORであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択され、
シリル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0034】
【化6】

X=Cl、Br、I、OSOR、NRR、ORであり、Rは、Hまたは小アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択されるステップと、
c)セルロースを含む前記化合物を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)アシル基、シリル基および/またはアルキル基を含む少なくとも1つの残基と−O−共有結合した、セルロースを含む物質を得るステップと
を含む。
【0035】
さらに、本発明は、容器、食品貯蔵材料または紙製品などの、前記表面コーティングした繊維物質から調製したポリマー製品に関する。また、本発明は、現在多くの消費者物品で使用されている化石系ポリマー物質を置き換えることができる繊維強化ポリマーを生産するための、天然繊維の調製にも関する。これらには、台所用品、自動車、家具および建築材の生産に使用されるポリマーが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、液相または気相で行うメタクリロイル化反応を示す模式図である。
【図2】図2は、様々な大きさの表面処理した物質を含むポリマー物質をもたらす、表面処理した物質の重合を示す模式図である。
【図3】図3は、チオール基を含むフルオロフォアとメタクリロイルセルロース/繊維との間の反応を示す模式図である。
【図4】図4は、RMA−1118−69と反応させた大麦わらの写真(左)およびRMA−1118−69と反応させたメタクリレート化した(methacryolated)大麦わらの写真の例を示す図である。
【図5】図5は、気相グラフティング機器を示す図である。
【図6】図6は、連続的気相グラフティング設備を示す図である。
【図7】図7は、マイクロ波支援グラフティングシステムを示す図である。
【図8】図8は、繊維の連続的マイクロ波支援グラフティングのための機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
表面コーティング
本発明は、本明細書中の他の箇所に記載のように、ヒドロキシル化された表面を有する物質を、アシル基、シリル基およびまたはアルキル基で表面処理または表面コーティングする方法に関する。共有結合した表面コーティングをもたらすプロセスは、気相のアシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬を用いて行う。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書中の他の箇所に記載のように、セルロースを含むポリマー物質を、アシル基、シリル基およびまたはアルキル基で表面処理または表面コーティングする方法に関する。また、表面処理/コーティングは、アシル基、シリル基およびまたはアルキル基を、好ましくはセルロースを含む物質である物質に連結させるまたはグラフティングすると説明することもできる。共有結合した表面コーティングをもたらすプロセスは、気相のアシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬を用いて行う。
【0039】
本発明の一態様は、表面ヒドロキシルがアシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬の群からの少なくとも1つの化合物で共有的に修飾されて、繊維表面でエステル、シリルまたはアルキルエーテルを提供する、セルロース繊維を含む繊維物質を調製する方法に関し、前記方法は、
a)セルロースを含む/含有する化合物を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップと、
c)セルロースを含む前記化合物を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)アシル基、シリル基および/またはアルキル基の少なくとも1つの化合物と−O−共有結合した、セルロースを含む物質を得るステップと
を含む。
【0040】
気相グラフティング方法は、物質、たとえばセルロースを含む物質を適切な温度まで加熱することによって行うことができる。アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬を気化させ、担体ガスと混合する。物質を表面コーティングするために十分な時間の間、ガス混合物を物質に運ぶ。セルロースを含む物質などの物質は、本明細書中の他の箇所に記載されているように、気相グラフティングに供する際は異なる大きさを有し得る。物質、たとえばセルロースを含む物質が、小さい大きさ、たとえば麦わらのチップもしくは粉末である、または非有機起源のものである場合は、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬の気相を、物質の表面の先に導くか、または、そのそれぞれを対応するアシル基、シリル基および/もしくはアルキル基で表面コーティングする一定量のチップもしくは粉末粒子にガスを通すことによって、チップまたは粉末を通って運ばせることができる。
【0041】
好ましいアシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬、またはアシル化剤、シリル化剤および/もしくはアルキル化剤は、本明細書中の他の箇所に言及されている。用語「アシル化試薬」および「アシル化剤」は、本明細書中で相互変換可能に使用される。また、「シリル化試薬」および「シリル化剤」も相互変換可能に使用され、「アシル化試薬」および「アシル化剤」もそうである。
【0042】
気相グラフティング技法のさらなるパラメータは、以下に、特に「気相グラフティング」のセクションに記載する。
【0043】
一態様では、本発明は、物質のヒドロキシル化された表面を、アシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬の群からの少なくとも1つの化合物でコーティングして、表面でエステル、シリルまたはアルキルエーテルを提供する方法に関し、前記方法は、
a)ヒドロキシル化された表面を有する物質を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、
アシル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0044】
【化7】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・OTf、
・OMs、
・混合炭酸無水物、
・混合酸無水物、
・イミダゾリウム
1(acy)、R2(acy)およびR3(acy)は、H、150未満の分子量を有するアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択され、
アルキル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0045】
【化8】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・TfおよびMsを含めたスルホネート、ならびに
・OCOR
は、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり
1(alk)、R2(alk)およびR3(alk)は、H、150未満の分子量を有するアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択され、
シリル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0046】
【化9】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン
・OSO
・NR、および
・OR
は、Hまたは低級アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、
1(sil)、R2(sil)およびR3(sil)は、H、150未満の分子量を有するフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択されるステップと、
c)ヒドロキシル化された表面を有する前記物質を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)表面に、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を含む−O−共有結合した残基を含む物質を得るステップと
を含む。
【0047】
混合炭酸無水物はOCOであってよく、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される。好ましくは、R=アルキルまたはアリールである。混合酸無水物はOCORであってよく、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される。好ましくは、R=アルキルまたはアリールである。TfおよびMsを含めたスルホネートはOSOであってよく、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される。好ましくは、R=アルキルまたはアリールである。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明は、アシル基、シリル基および/またはアルキル基の少なくとも1つの化合物と−O−共有結合した、物質、たとえばセルロースを含む物質を調製する方法に関し、前記方法は、
a)物質、たとえばセルロースを含む物質または化合物を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、
アシル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0049】
【化10】

X=F、Cl、Br、OTf(トリフルオロメチルスルホニル)、OMs(メチルスルホニル)、OCOR、OCORまたはイミダゾリウムであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択され、
アルキル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0050】
【化11】

X=Cl、Br、I、OSOR、OCORであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択され、
あるいは、
シリル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【0051】
【化12】

X=Cl、Br、I、OSOR、NRR、ORであり、Rは、Hまたは小アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択されるステップと、
c)前記物質、たとえばセルロースを含む物質または化合物を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)アシル基、シリル基および/またはアルキル基の少なくとも1つの化合物と−O−共有結合した、物質、たとえばセルロースを含む物質を得るステップと
を含む。
【0052】
反応は、気相のアシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬を用いて行う。気相グラフティングは溶液中で行わないため、乾式プロセスである。
【0053】
アシル化剤
本明細書中に記載するグラフティングプロセスで使用するアシル化試薬またはアシル化剤は、任意の適切な化合物であり得る。好ましいアシル化試薬は、以下の式の化合物の群:
【0054】
【化13】

[式中、X=F、Cl、Br、OTf(トリフルオロメチルスルホニル)、OMs(メチルスルホニル)、OCOR、OCORまたはイミダゾリウムであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択される]から選択される。
【0055】
アシル化試薬に関して、
・アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルの群から選択され得る。
【0056】
・アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、および4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルの群から選択され得る。
【0057】
・フルオロアルキルは、1つまたは複数のフッ素が水素を置き換えている、上述のアルキル基のうちの任意のものであり得る。
【0058】
より好ましくは、アシル化試薬は、
【0059】
【化14】

[式中、X=F、Cl、またはBrであり、R=H、CHである]の群から選択される。
【0060】
好ましくは、X=FまたはClであり、R=HまたはCHである。より好ましくは、X=Clであり、R=Hである。また、以下の式を有する試薬:
【0061】
【化15】

も好ましく、式中、RおよびRは、独立して、−H、低級アルキル、低級アルコール、低級アルコキシ、低級エーテル、低級アルケニル、ハロゲンおよびハロゲンで置換された低級アルキルからなる群から選択される。好ましくは、低級アルキルはC1〜6アルキル、より好ましくはC1〜3アルキル、さらにより好ましくはC1〜2アルキルである。低級アルキルは直鎖状または分枝状であってよいが、好ましくは、前記低級アルキルは直鎖状である。好ましくは、低級アルコールはC1〜6アルコール、より好ましくはC1〜3アルコール、さらにより好ましくはC1〜2アルコールである。好ましくは、低級アルコキシはC1〜6アルコキシ、より好ましくはC1〜3アルコキシ、さらにより好ましくはC1〜2アルコキシである。好ましくは、低級エーテルはC1〜6エーテル、より好ましくはC1〜3エーテル、さらにより好ましくはC1〜2エーテルである。低級エーテルは、1つまたは複数の−O−、好ましくは1つまたは2つの−O−、さらにより好ましくは1つの−O−を含んでいてよく、−O−はエーテル内の任意の位置に配置されていてよい。好ましくは、RおよびRは、独立して、−Hおよび低級アルキルからなる群、より好ましくは−HおよびC1〜6アルキルからなる群、さらにより好ましくは−H、メチルおよびエチルからなる群から選択される。非常に好ましい実施形態では、Rはメチルであり、Rは−Hである。Rは、直鎖状および分枝状のアルキル、アルケニル、アルコキシ、エーテル、ヘテロ原子を任意選択で含む脂肪族環、アルコール、ハロゲン化物、ハロゲンで置換されたアルキルおよび−Hからなる群から選択され得る。好ましくは、Rは、ハロゲン化物またはハロゲン化アルキル、より好ましくはハロゲン化物、さらにより好ましくは塩化物である。
【0062】
アルキル化剤
本明細書中に記載するグラフティングプロセスで使用するアルキル化試薬またはアルキル化剤は、任意の適切な化合物であり得る。好ましいアルキル化試薬は、以下の式の化合物の群:
【0063】
【化16】

[式中、X=Cl、Br、I、OSOR、OCORであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択される]から選択される。
【0064】
アルキル化試薬に関して、
・アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルの群から選択され得る。
【0065】
・アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、および4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルの群から選択され得る。
【0066】
・フルオロアルキル基は、1つまたは複数のフッ素が水素を置き換えている、上述のアルキル基のうちの任意のものであり得る。
【0067】
・アリール基は、フェニル、ベンジル、トリル、およびo−キシリルの群から選択され得る。
【0068】
より好ましくは、アルキル化試薬は、
【0069】
【化17】

[式中、X=F、Cl、またはBrであり、R=H、CHである]の群から選択される。
【0070】
好ましくは、X=ClまたはBrであり、R=HまたはCHである。より好ましくは、X=Clであり、R=Hである。
【0071】
シリル化剤
本明細書中に記載するグラフティングプロセスで使用するシリル化試薬またはシリル化剤は、任意の適切な化合物であり得る。好ましいシリル化試薬は、以下の式の化合物の群:
【0072】
【化18】

[式中、X=Cl、Br、I、OSOR、NRR、ORであり、Rは、Hまたは小アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択される]から選択される。
【0073】
シリル化試薬に関して、
・アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルの群から選択され得る。
【0074】
・アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、および4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルの群から選択され得る。
【0075】
・フルオロアルキル基は、1つまたは複数のフッ素が水素を置き換えている、上述のアルキル基のうちの任意のものであり得る。
【0076】
最も好ましい試薬
本明細書中に記載の表面コーティングプロセスで使用するさらに好ましい試薬は、以下の群から選択される。
【0077】
【化19】

しかし、本明細書中に記載するグラフティングプロセスで使用する最も好ましい試薬は塩化メタクリロイル(CClO)および塩化アクリロイル(CClO)である。どちらの化合物もアシル化試薬である。
【0078】
好ましい試薬は低い沸点を有し、反応性が高く、購入が容易であり、他の言及した試薬の多くよりも安価である。
【0079】
表面処理する物質
本発明は、物質を表面処理する方法に関する。物質は任意の物質であり、好ましくは、物質はヒドロキシル化された表面を有する。物質は無機または有機起源のものであり得る。物質は、任意の形態の無機または有機のポリマー物質であり得る。好ましくは、ポリマー物質はセルロースを含む。そのような物質は、好ましくは有機起源のものである。本明細書中に記載の方法に従って表面処理することに適した無機物質の例は、ガラス繊維またはシリカである。植物起源のポリマー物質が好ましい。そのような物質は、植物の任意の部分、たとえば、根、茎、葉、花、果実、種子に由来し得る。
【0080】
好ましくは、表面処理する物質の表面はヒドロキシル化された表面を有する。ヒドロキシル化された表面はヒドロキシル基(−OH)を含有する。好ましくは、物質は、少なくとも1個のヒドロキシル基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも10個のヒドロキシル基/平方マイクロメートルなど、たとえば少なくとも100個のヒドロキシル基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも1,000個のヒドロキシル基/平方マイクロメートルなど、たとえば少なくとも10,000個のヒドロキシル基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも100,000個のヒドロキシル基/平方マイクロメートルなど、たとえば少なくとも1,000,000個のヒドロキシル基/平方マイクロメートルを有する。
【0081】
表面コーティングする物質の表面は、表面ヒドロキシル密度測定によって分析することができる。これにより、ヒドロキシル/面積単位は測定しない。表面ヒドロキシル密度測定を表面/重量測定と組み合わせて、特定の物質のヒドロキシル/重量を計算することができる。
【0082】
表面処理する、繊維を含む物質では、これらの単位の直鎖を構成する単位がヒドロキシル基を含んでいてよく、たとえば、セルロースは数百本から1万本を超えるβ(1→4)連結のD−グルコース単位の直鎖からなる多糖である。単位の鎖中では、単位の少なくとも10%、たとえば少なくとも30%など、たとえば少なくとも50%、たとえば少なくとも70%など、たとえば少なくとも90%が、少なくとも1個のヒドロキシル基を含有し得る。好ましくは、単位の少なくとも75%が少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する。より好ましくは、単位の少なくとも85%が少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する。さらに好ましくは、単位の少なくとも95%が少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する。少なくとも1個のヒドロキシル基を含むそれぞれの単位は、少なくとも2個のヒドロキシル基、たとえば少なくとも3個のヒドロキシル基など、たとえば少なくとも4個のヒドロキシル基を含み得る。
【0083】
好ましい実施形態では、表面コーティングに供する物質は、それぞれのグルコース単位上に3個のヒドロキシル基を有するセルロースを含む。
【0084】
表面コーティングする物質はヘミセルロースも含み得る。ヘミセルロース中の糖単量体には、キシロース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、およびアラビノースが含まれることができる。ヘミセルロースはD−五炭糖のほとんどを含有し、時折少量のL−糖も含有する。表面コーティングする物質がヘミセルロースを含む場合、ヘミセルロース鎖中の糖のそれぞれの単位は、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を含む。
【0085】
また、シリカおよびガラスも本明細書中に記載の気相グラフティングプロセスに供し得る。ガラスは、ガラスビーズ、制御された孔のガラス(glas)、スライドガラスであり得る。これにより、シリカおよびガラス上のヒドロキシル基は、アルキル化、アシル化および/またはシリル化されていてよい。好ましくは、シリカおよびガラス上のヒドロキシル基は、上述のシリル化試薬を用いて気相反応においてシリル化し得る。シリカは、無形質シリカ粒子または球などの定形シリカの形態であることができる。ガラスは、ビーズ、繊維(ガラス繊維)または制御された孔のガラスの形態であることができる。また、たとえば顕微鏡観察または走査目的のための、スライドガラスなどのガラスのより大きなチップも使用し得る。
【0086】
本明細書中に記載の表面プロセスに供し得る他の物質の例は、酢酸セルロース、たとえば二酢酸セルロース、セロファン、ビスコースである。酢酸セルロースから作製されたセロファンは、セロファンシートとして、またはたとえば巻いたセロファンとして、表面グラフティング技法に供し得る。巻いたセロファンは、リールによってグラフティングしてリールグラフティングすることができる。反応器(気体形態の本明細書中に記載の試薬(複数可)、たとえばアシル化剤(複数可)で満たす)中に2つの巻き戻しスタンドを入れ、セロファンを一方のリールから他方のリールまで巻きつけることができ、セロファンを表面グラフティングプロセスに供する。加熱および冷却は、いくつかの温度制御されたローラーと接触させることによって達成し得る。グラフティングしたセロファンは、好ましくは溶接可能である。
【0087】
好ましいセルロースを含むポリマー物質は、綿、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、コメ、ソルガム、トウモロコシ、ヤナギ、ナタネ、マニラ麻、バガス、タケ、バナナ、エニシダの根、カンタラ(bantala)、カロア(baroa)、中国ジュート(bhina jute)、コイア(boir)、クラワ(buraua)、ナツメヤシ(bate palm)、亜麻(blax)、麻(bemp)、ヘケネ麻(benequen)、イソラ(isora)、イストレ、ジュート、アマニ、カポック、ケナフ、葛、モーリシャス麻(kauritius hemp)、イラクサ、アブラヤシ、ピアサバ、パイナップル、ニュウサイラン、ローゼル、カラムシ、チトセラン、サイザル麻、ヘチマ、麦わら、サンヘンプ、カジロ(cadillo)/ボンテンカ、木材、藻類、海藻の群から得ることができる。
【0088】
好ましくは、本明細書中に記載の方法に従って表面処理し、紙製品、包装材、ボトル詰め、建築などの目的に使用する有機物質は、ヒトの食料として適切でない植物物質である。そのような物質の例は、麦わら/茎、葉、小葉、種皮、苗条、樹幹、根、樹皮、菌糸体などであり得る。
【0089】
物質、たとえばポリマー物質の任意の形態または寸法を、本発明に従って表面処理し得る。全体的な長さ、幅および全幅の合計が15cm未満、たとえば10cm未満など、たとえば5cm未満、より好ましくは1cm未満であるような寸法を有するポリマー物質などの物質の処理が好ましい。より好ましくは、物質は、大きさの範囲が0.1マイクロメートル〜5000マイクロメートルであり、平均粒子径の範囲が5〜3000マイクロメートル、より好ましくは10〜1000マイクロメートルである、粉砕した形態の物質、たとえば粉砕した形態の繊維(繊維の粉末)である。また、物質の平均粒子径は、1〜1000マイクロメートル、たとえば1000〜2000マイクロメートルなど、たとえば2000〜3000マイクロメートル、たとえば3000〜4000マイクロメートルなど、たとえば4000〜5000マイクロメートルであることもできる。好ましくは、平均粒子径は、1〜4000マイクロメートル、より好ましくは2〜3000マイクロメートル、さらに好ましくは5〜2000マイクロメートルである。物質の粉砕は任意の種類の粉砕を用いて行うことができるが、PulseWave(登録商標)粉砕機が、セルロース繊維の完全性を保護するため好ましい。
【0090】
空洞のない密なポリマー繊維物質が表面処理する物質として好ましいが、実際には、植物細胞壁物質はしばしば中空の空洞を有する。本発明は、そのような物質の表面修飾を、これらの空洞の内部でさえも容易にする。したがって、中空繊維物質さえも、たとえばラジカルまたは開環重合反応によって複合ポリマー中に十分に固着させることができる。
【0091】
小片、たとえば約300マイクロメートルのチップへと細断されたポリマー物質が好ましい。
【0092】
本発明に従って表面コーティングすることに適した物質の例は、約0.1〜0.9cmの長さのチップへと細断する、穀類からの麦わらである。繊維物質の大きさの分布は、繊維源と用いる粉砕技法の組合せによって決定される。好ましい粉砕はPulseWave(登録商標)によるものである。PulseWave(登録商標)粉砕機に通す大麦わらは、400マイクロメートルの大きさの平均を提示し、分布の範囲が0.1マイクロメートル〜2000マイクロメートルであり、物質の95%が50〜800マイクロメートルの範囲にある。
【0093】
また、植物繊維に関して本明細書中の他の箇所で言及した任意の植物からの植物部分を本発明に従って表面コーティングし得る。これらの植物の一部は、マニラ麻、バガス、タケ、バナナ、エニシダの根、カンタラ、カロア、中国ジュート、コイア、綿、クラワ、ナツメヤシ、アマ、麻、ヘケネ麻、イソラ(Isora)、イストレ、ジュート、カポック、ケナフ、葛、モーリシャス麻、イラクサ、アブラヤシ、ピアサバ、パイナップル、ニュウサイラン、ローゼル、カラムシ、チトセラン、サイザル麻、ヘチマ、穀類、サンヘンプ、カジロ(Cadillo)/ボンテンカおよび木材である。本明細書中に記載のように本発明に従って表面処理したポリマー繊維物質は、1つまたは複数の植物繊維物質、たとえば1種類の植物繊維物質など、たとえば2種の異なる種類の植物繊維物質など、たとえば3種の異なる種類の植物繊維物質、たとえば4種の異なる種類の植物繊維物質、たとえば5種の異なる種類の植物繊維物質など、たとえば5種より多くの異なる種類の植物繊維物質、たとえば5〜10種の異なる種類の植物繊維物質の範囲など、たとえば10〜20種の異なる種類の植物繊維物質の範囲、たとえば20種より多くの異なる種類の植物繊維物質などの組合せであり得る。しかし、表面コーティングするポリマー物質は、1〜5種の異なる植物繊維物質の範囲のみ、より好ましくは1〜2種の異なる植物繊維物質の範囲のみ、より好ましくは1種の植物繊維物質のみを含む混合物であることが好ましい。
【0094】
また、本明細書中に記載の方法に従って繊維を表面コーティングすることも好ましい。繊維は、好ましくは植物から得る。繊維を生産する任意の植物を使用することができる。強力な植物繊維を生産する植物は、非常に高い強度を有する表面コーティングした製品を生じ得る。強力な繊維を生産する一部の植物を以下に言及する。植物の性質に応じて、植物の様々な部分を植物繊維源として使用してよく、たとえば、植物繊維源は麦わら/茎、葉、小葉、種皮、苗条、樹幹、根、樹皮、菌糸体または果実であり得る。
【0095】
好ましくは、強力な植物繊維が要求される場合は、植物繊維は、綿、アマニ、海藻、マニラ麻、バガス、タケ、バナナ、エニシダの根、カンタラ(bantala)、カロア(baroa)、中国ジュート(bhina jute)、コイア(boir)、クラワ(buraua)、ナツメヤシ(bate palm)、亜麻(blax)、麻(bemp)、ヘケネ麻(benequen)、イソラ(isora)、イストレ、ジュート、カポック、ケナフ、葛、モーリシャス麻(kauritius hemp)、イラクサ、アブラヤシ、ピアサバ、パイナップル、ニュウサイラン、ローゼル、カラムシ、チトセラン、サイザル麻、ヘチマ、麦わら、サンヘンプ、カジロ(cadillo)/ボンテンカ、木材からなる群から選択される植物から得ることができる。
【0096】
好ましい実施形態では、強力な植物繊維が要求される場合は、植物繊維物質は、バナナ、コイア、麻、パイナップル、マニラおよびサイザル麻、より好ましくはサイザル麻からなる群から選択される1つまたは複数の植物からの繊維を含み得る。
【0097】
非常に好ましくは、植物繊維が前述の植物のうちの任意のものに由来する場合は、これらは、以下の表1に示す植物の部分に由来することが好ましい。
【0098】
【表1】

植物繊維は多くの供給源から市販されている。たとえば、多くの植物繊維は、Randers REB international A/S、デンマークから得ることができる(たとえば、サイザル麻(白色)、コード番号:N26−0040−001N、麻(灰色)、コード番号:N04−0060−000Nおよびマニラ麻(暗褐色)コード番号:N18−0060−001N)。
【0099】
続くポリマー混合物の生産において繊維を均質に分配できる一方で強力な物質を生産するためには、繊維は、繊維の長さと幅との間で最適化された比(縦横比)を有することが好ましい。好ましい縦横比は10〜50の範囲にあり、より好ましくは30である。したがって、繊維粒子の長さは幅によって制御される。好ましい実施形態では、繊維の化学的、物理的および酵素的処理によって繊維の幅も制御することができる。小さな繊維は繊維の絡み合いおよび最終産物の均質性を支持する一方で、大きな繊維は生産されるポリマーに強剛性および強度を付加する。本発明の好ましい実施形態では、平均長さが2mmの強力なサイザル麻繊維、平均長さが1mmの木材−紙パルプ繊維および平均長さが0.5mmの綿繊維を、乾燥窒素または乾燥空気を担体ガスとして使用して、気相の塩化メタクリロイルで誘導体化する。
【0100】
また、表面処理する天然繊維の化学処理も、しばしば植物物質中の様々な蝋状物質でコーティングされている、ヒドロキシル化された繊維表面を放出させるために好都合な場合がある。したがって、0.32%、80℃の熱い希水酸化ナトリウムを用いた処理、次いで繊維の洗浄および乾燥は、本発明によって得られる表面修飾の度合に有利な影響を与える。他の繊維の前処理の手段は、希鉱酸、たとえばHSOまたはHClを用いた高温での処理である。酸の濃度は、0.5〜5%、好ましくは1〜4%、より好ましくは1.5〜3、最も好ましくは約2%であり得る。温度は、65〜95℃、好ましくは70〜90℃、より好ましくは75〜85℃、最も好ましくは約80℃であることができる。処理時間は、5〜25分間、好ましくは7〜20分間、より好ましくは8〜15分間、最も好ましくは約10分間であることができる。また、繊維物質の表面をほぐすまたは粗くするために、繊維を酵素、たとえばリパーゼまたはセルラーゼで処理することもできる。繊維上の蝋状物質を除去するために、繊維を、Achromobacter、Alcaligenes、Arthrobacter、Bacillus、Burkholderia、Chromobacterium、特にPseudomonasから産生されたリパーゼで処理することができる。繊維は、Pseudomonasが産生したリパーゼとセルロース培地上で成長させたTrichoderma virideによって産生されたセルラーゼ複合体との混合物で処理し得る。リパーゼとTrichoderma virideの粗抽出物との混合物を用いた1〜5時間の処理、次いで、繊維の洗浄および熱処理(繊維の広範囲の分解の前)により、より接近可能な表面ヒドロキシル基を有する繊維が生じる。
【0101】
植物繊維はより長い植物繊維から調製してもよく、これらは、任意の有用な手段によって、たとえば切断手段を使用することによって、所望の大きさの繊維にする。切断粉砕機が繊維の大きさ合わせの手段として好ましいが、大きさ合わせは研磨またはPulseWave(登録商標)粉砕機を含めた他の種類の粉砕によっても得ることができる。ナイフ、ブレンダー、ハサミまたは任意の他の有用な切断手段を用いた手動切断も可能である。
【0102】
一般に、植物繊維はポリマーを含み、本発明で使用する植物繊維は少なくともセルロースを含むことが好ましく、より好ましくは、植物繊維はセルロースおよびヘミセルロースを含む。
【0103】
セルロースを含む物質は、たとえば微粉植物繊維などの植物に由来するものであってよく、たとえば、これはセルロース複合材料であり得る。しかし、結晶性セルロースなどの精製したセルロースであってもよい。
【0104】
セルロースは、重合したグルコース単量体単位から本質的になる多糖であり、一般に、セルロースは、β−(1→4)結合によって連結されたD−グルコース単量体単位の直鎖である。セルロース多糖は、好ましくは、300〜15,000個の範囲、たとえば500〜10,000個の範囲のグルコース単量体単位からなる。
【0105】
気相グラフティング
上述のように、本発明は、アシル基、シリル基および/またはアルキル基の少なくとも1つの化合物と−O−共有結合した、セルロース繊維を含む物質を調製する方法に関し、前記方法は、
a)化合物または物質、たとえばセルロースを含む物質または化合物を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップと、
c)前記化合物または物質、たとえばセルロースを含む物質または化合物を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される前記試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、前記試薬を気相に保つステップと、
d)アシル基、シリル基および/またはアルキル基の少なくとも1つの化合物と−O−共有結合した、セルロースを含む物質を得るステップと
を含む。
【0106】
物質、たとえばセルロースを含む物質ならびにアシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬は、本明細書中の他の箇所に記載されているとおりであることができる。
【0107】
比較可能な反応性および沸点を有する試薬を協調的に使用して、複合表面修飾を有する繊維を調製することができる。たとえば、ペンタン酸クロライドを塩化メタクリロイルと混合した場合、これらの試薬は同時に蒸発し、混合されているが均質な表面の誘導体化を与え、密度が低下したまたは重合活性のあるメタクリレートを提示する。分解せずに共存することができ、類似の揮発性およびヒドロキシルに対する反応性というこの要件を満たす、アシル化、アルキル化およびシリル化試薬の任意の他の組合せを、協調的に使用し得る。
【0108】
セルロース繊維の気相誘導体化に有用な試薬の組合せの例:
3−ブロモメチル−3−メチル−オキセタンと臭化ベンジル
塩化アクリロイルと塩化プロピオニル
エピクロロヒドリンと臭化シクロヘキシル
塩化メタクリロイルとクロロギ酸エチル
塩化メタクリロイルと臭化アリル
ガラス繊維気相誘導体化に有用な試薬の組合せの例:
4−ビニルベンジルジメチルクロロシランとトリ−ブチルクロロシラン
Tert−ブチル−ジフェニルクロロシランとトリス−(3メチルオキセタニルメチル)クロロシラン(clorosilane)
好ましくは、表面コーティングするべき物質、たとえばセルロースを含む物質は、表面コーティングプロセスの全体にわたって固体状態である。
【0109】
試薬を物質、たとえばセルロースを含む物質の上部またはそれを通るように導く際に、試薬を気相に保つために、グラフティングプロセスを開始する前に物質を好ましくは予熱する。また、プロセスの容器(流動床)の温度も、グラフティングプロセス全体にわたって制御および維持し得る。好ましくは、グラフティングプロセスは、200℃未満、たとえば175℃未満など、たとえば150℃未満、たとえば125℃未満などの温度で起こる。好ましい間隔は、110〜130℃、130〜150℃、150〜170℃および170〜190℃である。反応は、50〜110℃の範囲、好ましくは60〜100℃の範囲、より好ましくは70〜90℃の範囲、さらにより好ましくは75〜85℃の範囲、さらにより好ましくは78〜82℃の範囲、たとえば約80℃、たとえば80℃など、たとえば50〜100℃の範囲、たとえば60〜100℃の範囲など、たとえば70〜100℃の範囲、たとえば75〜100℃の範囲など、たとえば50〜90℃の範囲、たとえば60〜90℃の範囲など、たとえば75〜90℃の範囲の温度で起こることがさらに好ましい。反応が前述の好ましい温度で起こるためには、セルロースを任意選択で含む化合物/物質を前記温度に保つことが好ましい。これは、当業者に知られている任意の適切な方法によって、たとえば、セルロースを任意選択で含む化合物/物質(たとえば植物繊維、植物チップもしくは植物粉末)を所望の温度の水、油もしくは砂浴中に入れることによって、物質を含有する容器を蒸気で加熱することによって、またはマイクロ波で加熱することによって、達成し得る。
【0110】
グラフティングプロセスは、より低い圧力で試薬の揮発性を増加させるため、またはより高い圧力で反応部位での揮発性試薬の濃度を増加させるために、0.001バール〜200バールの範囲の様々な圧力で行うことができる。好ましい実施形態では、プロセスの圧力は0.5〜2バールである。プロセスのより好ましい実施形態では、圧力は1バールである。
【0111】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載のアシル化試薬、シリル化試薬およびアルキル化試薬のR、RおよびR基の組合せは、合計で25個より多くの炭素原子を含有せず、より好ましくは10個未満、たとえば5個の炭素原子を含有する。大気圧での目的の試薬の好ましい沸点は200℃未満である。低い揮発性を有する脂肪酸塩化物などの誘導体化試薬は、反応機器の圧力を下げることによって気相にすることができる。たとえば、ドデカン酸塩化物は、150℃の温度および5mBarを用いて、気相に移行させて繊維と反応させ得る。再循環担体ガスの使用により、前記試薬の沸点未満でさえも試薬の蒸発が促進される。
【0112】
好ましくは、グラフティングプロセスを行う場合は反応器(流動床)全体にわたって均質温度を維持する。
【0113】
グラフティングプロセスを真空中で行う場合、物質、たとえばセルロースを含む物質を好ましくは前処理する、すなわち、グラフティングプロセスを行う温度かつ真空中で事前に乾燥させる。グラフティングプロセスを真空中で行うことは、粉塵の爆発の危険性が存在する場合はそれを低下させるまたは排除するため、好ましい場合がある。粉塵は、グラフティングを行う前にセルロースを含む物質をより小さな小片、たとえば植物チップへと細断または切断する場合に存在し得る。
【0114】
表面コーティングするべき物質の大きさが小さい場合、物質を、好ましくは、グラフティングプロセスを行う際に撹拌または揺動する。物質の床を通る試薬のガスの流れは、好ましくは層状であるべきでない。乱流のガスの流れが好ましい。
【0115】
正反応の速度は、反応性ガスおよび乾燥空気を時々通して、HClが生じる場合はHClガス副産物を追い出すことによって、増加させることができる。反応性ガスを、表面コーティングする物質にたとえば3分間通し、次いで2分間の乾燥空気または窒素を流してHClガスを除去して、反応を前に押し進めることができる。3分間の反応性ガスおよび2分間の非反応性ガスの間隔を、反応時間全体にわたって繰り返すことができる。使用する時間は、2分間の反応性ガスおよび1分間の非反応性ガス、2分間の反応性ガスおよび2分間の非反応性ガス、3分間の反応性ガスおよび1分間の非反応性ガス、3分間の反応性ガスおよび3分間の非反応性ガスであることもできる。
【0116】
好ましい実施形態では、担体ガスを用いて、気相の、表面処理する物質と接触させる、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬を循環させる。好ましい担体ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、水素、酸素、空気、塩素、トリメチルアミン(trimethylamin)、ジメチルアミン、メチルアミン、ジメチルエーテル、一酸化炭素、二酸化炭素、二硫化炭素、二酸化硫黄、硫化水素、塩化水素、一酸化窒素、二酸化窒素、アルカン(C2x+2)、フルオロアルカン、イソブタン、エテン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、シクロプロパン、シクロブタン、エチレンオキシド、イソブチレン、アセトン、アセチレン、プロピン、塩化メチルの群から選択される。
【0117】
水、トリエチルアミン、ピリジン、四塩化炭素などの液体を気化して、その沸点を超える温度で担体ガスとして使用し得る。好ましいガスは、希ガス(nobel gas)、窒素、空気、二酸化炭素、二硫化炭素およびアルカンである。低価格および不活性であるために、窒素または二酸化炭素が最も好ましい。
【0118】
ヒドロキシル化された表面と気相の試薬(複数可)との反応は、本明細書中の他の箇所に示した式中の構成成分Xの放出をもたらし得る。XがClなどのハロゲンである場合、HX、たとえばHClは、物質を表面コーティングした際に生産される生成物であり得る。望ましくない生成物(複数可)が生じる場合は、プロセスは、生じた生成物を除去するステップを含み得る。
【0119】
試薬が物質の表面と反応した際にHClが生じる場合は、このHClをたとえばゼオライトによって捕捉することができる。ゼオライトは再生することができる。他の脱離基も気相から除去し得る。形成される場合は、HBrは4Åのモレキュラーシーブで除去することができる。有機酸およびスルホン酸は、プロトンスポンジまたはトリアルキルアミノ樹脂で捕捉し得る。
【0120】
好ましい実施形態では、すべての試薬、担体ガスおよび出発物質(表面コーティングする物質)ならびに生じた生成物(表面コーティングした物質)で温度制御を行う。好ましくは、気相の試薬(複数可)、担体ガスおよび出発物質の温度は均一である。同様の温度を表面コーティングプロセスの全体にわたって維持する。したがって、温度制御手段は、出発物質用の容器、反応器(出発物質用の容器と同じであり得る)、表面処理した物質用の容器(存在する場合)、試薬(複数可)を加熱するための器および担体ガス用の器、ならびに記載したユニット(容器および器)を接続するチューブと接続させることができる。好ましい温度は本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0121】
別の好ましい実施形態では、圧力制御をすべての試薬、担体ガスおよび出発物質(表面コーティングする物質)で行い、生じた生成物(表面コーティングした物質)にはあまり好ましくない。好ましくは、気相の試薬(複数可)、担体ガスおよび出発物質の圧力は均一である。同様の圧力を表面コーティングプロセスの全体にわたって維持し得る。また、圧力を変動させて、たとえば、高圧力および低圧力の間で振動させて、試薬と不規則な表面との接触を増加させてもよい。したがって、圧力制御手段は、出発物質用の容器、反応器(出発物質用の容器と同じであり得る)、表面処理した物質用の容器(存在する場合)、試薬(複数可)を加熱するための器および担体ガス用の器、ならびに記載したユニット(容器および器)を接続するチューブと接続させることができる。圧力は、試薬(複数可)の望ましい温度および濃度に関連して制御される。好ましい圧力は本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0122】
さらに好ましい実施形態では、気相の試薬を、任意選択で担体ガスと一緒に、表面コーティングすべき物質を含有する反応器を通るように導く場合に、ガス流速制御を行う。したがって、ガス流速制御手段は、出発物質用の容器、反応器(出発物質用の容器と同じであり得る)、表面処理した物質用の容器(存在する場合)、試薬(複数可)を加熱するための器および担体ガス用の器、ならびに記載したユニット(容器および器)を接続するチューブと接続させることができる。ガス流速は、好ましくは、表面反応速度の拡散の影響を最小限にするため、すなわち、リアクターの全体にわたって表面に常時過剰の試薬があることを確実にするために、調整する。また、好ましいガス流は、反応熱が原因のホットスポットの発生を制御するためにも、より低い場合がある。流動床リアクターの場合、好ましいガス速度は、物質が衝突せずに最適な流動をもたらす流れに等しい。したがって、好ましい流速は、誘導体化する物質の物理的性質に依存する。典型的な線形の流速の範囲は、10cm/分〜50,000cm/分、たとえば30cm/分〜10,000cm/分など、たとえば100〜2,000cm/分、たとえば300cm/分〜1,000cm/分など、たとえば約600cm/分である。
【0123】
さらに好ましい実施形態では、試薬の供給速度の制御を行い、表面コーティングする物質のそれも任意選択で行う。処理する物質の供給速度は、リアクター(反応器)中の物質の量の1/10〜1/50/分であることができる。好ましくは、処理する物質の供給速度は、リアクター(反応器)中の物質の量の1/20〜1/40/分であることができる。より好ましくは、処理する物質の供給速度は、30分間の平均滞留時間を生じるために、リアクター中の物質の量の約1/30/分である。生成物は同じ速度で取り出す。
【0124】
好ましくは、試薬(複数可)の供給速度は(1〜1000mmol/1リットルの反応体積)/分であり、平均粒子径は100〜800マイクロメートルである。より好ましくは、試薬(複数可)の供給速度は(1〜100mmol/1リットルの反応体積)/分であり、平均粒子径は300マイクロメートルである。
【0125】
したがって、試薬(複数可)の供給速度を制御する手段は、反応器および試薬(複数可)を加熱するための器と接続する。任意選択で、処理する物質の供給速度を制御する手段は、出発物質用の容器、反応器(出発物質用の容器と同じであり得る)、および表面処理した物質用の容器(存在する場合)と接続している。
【0126】
処理時間、すなわち、気相の反応物質(複数可)を物質の表面の上部に導く時間は、たとえば0.1〜50時間の範囲、好ましくは0.3〜25時間の範囲、より好ましくは0.5〜15時間の範囲、さらにより好ましくは1〜10時間の範囲、さらにより好ましくは1〜4時間の範囲、さらにより好ましくは約1〜2時間、たとえば1時間などであることができる。
【0127】
しかし、反応時間は、1分間〜50時間、好ましくは2分間〜25時間の範囲、より好ましくは3分間〜15時間の範囲、さらにより好ましくは4分間〜10時間の範囲、さらにより好ましくは5分間〜7時間の範囲、さらにより好ましくは約6時間、たとえば6時間などであってもよい。
【0128】
別の好ましい実施形態では、気相の試薬(複数可)が表面コーティングする物質の表面の上部に導かれている際、過剰の試薬が常に必要である。「過剰の試薬」とは、ガスが反応器中で物質を通過した際、または気相が反応器を出る際に、少なくとも一部の試薬(複数可)が反応器を出るガス中にあるような、気相の試薬(複数可)の量をいう。したがって、気相の試薬(複数可)の濃度を測定するための測定手段を、反応器のガスの入口およびガスの出口、試薬(複数可)を加熱するための器ならびに/または加熱した試薬(複数可)を担体ガスと合わせる集合体と接続させることができる。
【0129】
好ましい実施形態では、表面コーティングは気相反応として行われ、セルロースを含む物質および/または植物繊維は固体状態で提供され、式:
【0130】
【化20】

の化合物は気相で提供される。RおよびRは、独立して、C1〜6アルキルおよび−Hからなる群、好ましくは、−H、低級アルキル、低級アルコール、低級アルコキシ、低級エーテル、低級アルケニル、ハロゲンおよびハロゲンで置換された低級アルキルの群から選択され、Rは、直鎖状および分枝状のアルキル、アルケニル、アルコキシ、エーテル、ヘテロ原子を任意選択で含む脂肪族環、アルコール、ハロゲン化物、ハロゲンで置換されたアルキルおよび−Hからなる群から選択され得る。好ましくは、Rは、ハロゲン化物またはハロゲン化アルキル、より好ましくはハロゲン化物、さらにより好ましくは塩化物である。
【0131】
より好ましくは、Rは、脱離基を構成または含有する基、すなわち、ハロゲン化物、スルホン酸アルキル、ハロアルキルスルホネート、アジド、混合酸無水物、アルケニルハロゲン化物、アルキルハロゲン化物、アリールハロゲン化物、N−メチルイミダゾールから選択される。好ましくは、Rは、ハロゲン化物、より好ましくは塩化物である。
【0132】
したがって、この方法は、好ましくは、
a)セルロースを含む化合物を提供するステップと、
b)式:
【0133】
【化21】

[式中、R、RおよびRは、本明細書中の本セクションの直前で定義したとおりである]の化合物を提供するステップと、
c)セルロースを含む前記化合物を以下の式の前記化合物と接触させるステップと
【0134】
【化22】

を含み、前記化合物は気相に保つ。
【0135】
セルロースを含む化合物は、本明細書中で言及した任意の物質であり得る。セルロースを含む化合物は植物繊維であってもよく、その場合、この方法は植物繊維物質をもたらす。
【0136】
好ましくは、セルロースを含む化合物(たとえば植物繊維および/または植物物質チップ)を固体状態に保つ。
【0137】
【化23】

を、セルロースを含む化合物/物質にグラフティングする、直前に記載した反応では、反応は、50〜110℃の範囲、好ましくは60〜100℃の範囲、より好ましくは70〜90℃の範囲、さらにより好ましくは75〜85℃の範囲、さらにより好ましくは78〜82℃の範囲、たとえば約80℃、たとえば80℃、たとえば50〜100℃の範囲など、たとえば60〜100℃の範囲など、たとえば70〜100℃の範囲、たとえば75〜100℃の範囲など、たとえば50〜90℃の範囲、たとえば60〜90℃の範囲など、たとえば75〜90℃の範囲の温度で起こることが好ましい。反応が前述の好ましい温度で起こるためには、セルロース繊維を含む化合物/物質を前記温度に保つことが好ましい。これは、当業者に知られている任意の適切な方法によって、たとえば、セルロースを含む化合物/物質(たとえば植物物質のチップもしくは粉末および/または植物繊維)を所望の温度の砂浴中に入れることによって達成し得る。
【0138】
アシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬または式:
【0139】
【化24】

の化合物は、当業者に知られている任意の適切な方法によって気相に保ち得る。たとえば、化合物を加熱に供し得る、たとえば、アシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬または式:
【0140】
【化25】

の化合物は、40〜100℃の範囲、たとえば50〜100℃の範囲など、たとえば55〜100℃の範囲、たとえば40〜90℃の範囲など、たとえば50〜90℃の範囲、たとえば55〜90℃の範囲など、たとえば40〜80℃の範囲、たとえば50〜80℃の範囲など、たとえば55〜80℃の範囲、たとえば40〜70℃の範囲など、好ましくは50〜70℃の範囲、より好ましくは55〜70℃の範囲、たとえば40〜65℃の範囲、たとえば50〜65℃の範囲など、さらにより好ましくは55〜65℃の範囲、さらにより好ましくは58〜62℃の範囲、さらにより好ましくは約60℃、たとえば60℃などの温度に保ち得る。
【0141】
セルロースを含む化合物/物質は、アシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬または式:
【0142】
【化26】

の化合物と、反応が起こるために十分な時間の間、接触させるべきであり、好ましくは、セルロースを含む化合物/物質を、アシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬または式:
【0143】
【化27】

の化合物と、0.1〜50時間の範囲、好ましくは0.3〜25時間の範囲、より好ましくは0.5〜15時間の範囲、さらにより好ましくは1〜10時間の範囲、さらにより好ましくは1〜4時間の範囲、さらにより好ましくは約1〜2時間、たとえば1時間の間、接触させる。
【0144】
しかし、直前に記載した反応は、1〜50時間の範囲、好ましくは2〜25時間の範囲、より好ましくは3〜15時間の範囲、さらにより好ましくは4〜10時間の範囲、さらにより好ましくは5〜7時間の範囲、さらにより好ましくは約6時間、たとえば6時間の間行ってもよい。
【0145】
さらに、セルロースを含む化合物/物質を、気相のアシル化試薬、シリル化試薬および/もしくはアルキル化試薬または式:
【0146】
【化28】

の化合物と接触させるためには、好ましくは不活性ガス、より好ましくは希ガス、たとえばアルゴンである担体ガスを用いることが有用であり得る。
【0147】
セルロースを含む化合物を気相の式:
【0148】
【化29】

の化合物と共有結合させるための、有用な方法の非限定的な例は、本明細書中以下の実施例3に記載されている。当業者には、実施例中、セルロースを含む化合物は微結晶セルロースであるが、この方法は、本明細書中、「植物物質のチップまたは粉末」のセクションで上述した植物物質のチップまたは粉末のうちの任意の他のもの、あるいは本明細書中、「植物繊維」のセクションで上述した植物繊維のうちの任意のものを用いても、同等に良好に行い得ることが理解されよう。同様に、当業者には、実施例中、式:
【0149】
【化30】

の化合物は塩化メタクリロイルであるが、この方法は、本明細書中、本セクション中に上述した式:
【0150】
【化31】

の化合物のうちの任意の他のものを用いても、同等に良好に行い得ることが理解されよう。
【0151】
式:
【0152】
【化32】

の部分を植物物質のチップもしくは粉末および/または植物繊維と連結させる方法の好ましい非限定的な例を実施例1に示す。
【0153】
本明細書中で使用する−O−連結の度合とは、どの程度まで、本明細書中の他の箇所に記載されているセルロースを含む化合物がアシル、シリルおよび/またはアルキル部分と共有結合しているかを示す。好ましくは、−O−連結の度合は、二重結合を蛍光色素上の遊離チオール基と反応させる、蛍光に基づいた方法によって決定する。その後、気相の試薬(複数可)と反応させる前の物質と、−O−共有結合したアシル、シリルおよび/またはアルキル部分を含む物質の蛍光との間の蛍光の差異を、−O−連結の度合の測度として使用する。
【0154】
好ましくは、前記蛍光チオールと反応させた際の、アシル、シリルおよび/またはアルキル基と−O−共有結合した物質の蛍光は、本明細書中に上述した、試薬(複数可)と反応させる前であるが、やはり前記蛍光チオールに曝露した物質の蛍光(ブランク)よりも、1〜5倍高い、たとえば少なくとも1.2倍高いなど、たとえば少なくとも1.3倍高い、たとえば少なくとも1.4倍高いなど、たとえば少なくとも1.5倍高い、より好ましくは少なくとも1.8倍高い、さらにより好ましくは少なくとも2.5倍高い、さらにより好ましくは少なくとも3.5倍高い、たとえば1〜5倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜3倍の範囲で高い。
【0155】
好ましくは、本明細書中で使用する−O−連結の度合とは、どの程度まで、セルロースを含む化合物が式:
【0156】
【化33】

の部分と共有結合しているかを示す。好ましくは、−O−連結の度合は、二重結合を蛍光色素上の遊離チオール基と反応させる、蛍光に基づいた方法によって決定する。その後、式:
【0157】
【化34】

の化合物と反応させる前のセルロースを含む化合物(たとえば植物物質のチップもしくは粉末および/または植物繊維)と、
【0158】
【化35】

と−O−共有結合した、セルロースを含む化合物(たとえば植物物質のチップもしくは粉末物質または植物繊維物質)の蛍光との間の蛍光の差異を、−O−連結の度合の測度として使用する。
【0159】
好ましくは、前記蛍光チオールと反応させた際の、
【0160】
【化36】

と−O−共有結合した、セルロースを含む化合物(たとえば植物物質のチップもしくは粉末物質または植物繊維物質)の蛍光は、式:
【0161】
【化37】

の化合物と反応させる前であるが、やはり前記蛍光チオールに曝露した、セルロースを含む化合物(たとえば植物物質のチップもしくは粉末および/または植物繊維)の蛍光(ブランク)よりも、1〜5倍高い、たとえば少なくとも1.2倍高いなど、たとえば少なくとも1.3倍高い、たとえば少なくとも1.4倍高いなど、たとえば少なくとも1.5倍高い、より好ましくは少なくとも1.8倍高い、さらにより好ましくは少なくとも2.5倍高い、さらにより好ましくは少なくとも3.5倍高い、たとえば1〜5倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜3倍の範囲で高い。
【0162】
好ましくは、蛍光色素はチオール基を含む任意の蛍光色素であってよいが、好ましい方法では、蛍光色素はcys−反応性ローダミン、好ましくはRMA1118−69である。
【0163】
本発明で使用する物質、たとえば植物繊維物質は、好ましくは最小限の度合の−O−連結を有する。したがって、本明細書中に記載の気相グラフティング技法に従って表面コーティングした物質、たとえば植物繊維物質などの繊維物質は、蛍光標識分析によって決定した場合に、アシル、シリルおよび/またはアルキル部分と連結していない物質、たとえば植物繊維などの繊維物質の蛍光よりも、少なくとも1.2倍高い、より好ましくは少なくとも1.3倍高い、さらにより好ましくは少なくとも1.4倍高い、さらにより好ましくは少なくとも1.5倍高い、たとえば1.2〜10倍の範囲で高い、たとえば1.3〜10倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜10倍の範囲で高い、たとえば1.5〜10倍の範囲で高いなど、たとえば1.2〜5倍の範囲で高い、たとえば1.3〜5倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜5倍の範囲で高い、たとえば1.5〜5倍の範囲で高いなど、たとえば1.2〜3倍の範囲で高い、たとえば1.3〜3倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜3倍の範囲で高い、たとえば1.5〜3倍の範囲で高いなど、たとえば1.2〜2倍の範囲で高い、たとえば1.3〜2倍の範囲で高いなど、たとえば1.4〜2倍の範囲で高い、たとえば1.5〜2倍の範囲で高いなど、最も好ましくは1.5〜1.75倍の範囲で高い蛍光を有することが好ましい。また、本明細書中の他の箇所に記載されている試薬(複数可)と反応させていない物質、たとえば植物繊維などの繊維物質は、本コンテキストにおいて物質標準、たとえば植物繊維標準などの繊維物質標準とも呼び得る。物質標準、たとえば植物繊維標準などの繊維物質標準は、物質、たとえば植物繊維標準などの繊維物質が本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって施用する表面コーティングを欠くこと以外は、物質、たとえば植物繊維物質などの繊維物質と同じ構造であることが好ましい。
【0164】
表面コーティングした物質の特性
セルロース表面上のヒドロキシルの密度は210^16個のヒドロキシル基/cmであると推定されている。したがって、誘導体化の度合はそれ未満の任意の値に対応すると予測され、パーセンテージに変換する。
【0165】
好ましくは、表面処理する物質の表面はヒドロキシル化された表面を有する。気相グラフティングを行う前に物質に存在するヒドロキシル基(−OH)の一部または全部をグラフティングプロセスに供してよく、試薬の基(グラフティングされた基)が物質の表面上に接続される。好ましくは、表面コーティングした物質は、少なくとも1個のグラフティングされた基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも100個のグラフティングされた基など、たとえば1000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも10,000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも100,000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートルなど、たとえば少なくとも1,000,000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートル、たとえば少なくとも10,000,000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートルなど、たとえば少なくとも100,000,000個のグラフティングされた基/平方マイクロメートルを有する。
【0166】
繊維を含む表面コーティングした物質では、これらの単位の直鎖を構成する単位がグラフティングされた基を含み得る。単位の鎖中、単位の少なくとも10%、たとえば少なくとも30%など、たとえば少なくとも50%、たとえば少なくとも70%など、たとえば少なくとも90%が、少なくとも1個のグラフティングされた基を含有し得る。好ましくは、単位の少なくとも75%が少なくとも1個のグラフティングされた基を含有する。より好ましくは、単位の少なくとも85%が少なくとも1個のグラフティングされた基を含有する。さらに好ましくは、単位の少なくとも95%が少なくとも1個のグラフティングされた基を含有する。少なくとも1個のグラフティングされた基を含むそれぞれの単位は、少なくとも2個のグラフティングされた基、たとえば少なくとも3個のグラフティングされた基、たとえば少なくとも4個のグラフティングされた基を含み得る。
【0167】
好ましい実施形態では、表面コーティング物質は、それぞれのグルコース単位上に3個のグラフティングされた基を有するセルロースを含む。
【0168】
また、表面コーティング物質はヘミセルロースも含み得る。そのような物質では、ヘミセルロース鎖中の糖のそれぞれの単位が、好ましくは2〜4個の表面グラフティングされた基を含む。
【0169】
本発明に従って表面コーティングする物質を有機起源から得る場合、本発明に従って表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質は一般に生分解性である。したがって、一実施形態では、本発明によるポリマー物質などの物質は、本明細書中以下に記載の方法のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上によって決定して、生分解性であることが好ましい。しかし、本明細書中に記載の気相グラフティング技法によってコーティングした、表面コーティングした物質は、非有機起源のものであってもよい。そのような場合、物質は生分解性ではない。
【0170】
生分解性を決定する1つの有用な方法は、物質、たとえばポリマー物質を、新鮮な下水汚泥の試料と共に、事前に決定した期間の間インキュベーションすることである。COの回収率を決定し、理論的に可能なCOと比較する。そのような方法の一例を本明細書中以下の実施例5aに記載する。本発明に従って表面コーティングした有機起源の物質、たとえばポリマー物質は、実施例5aに記載の生分解性の試験によって決定して、生分解性であることが好ましく、したがって、本発明のポリマー物質を実施例5aの試験に供した場合、理論的に可能なCOの好ましくは少なくとも少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%が、30日間のインキュベーション後に回収される。
【0171】
生分解性を決定する別の有用な方法は、物質、たとえばポリマー物質を、砂、土壌および堆肥マトリックスの混合物と共に、事前に決定した期間の間インキュベーションすることである。COの回収率を決定し、理論的に可能なCOと比較する。そのような方法の一例を本明細書中以下の実施例5bに記載する。本発明に従って表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質は、実施例5bに記載の生分解性の試験によって決定して、生分解性であることが好ましく、したがって、本発明のポリマー物質を実施例5bの試験に供した場合、理論的に可能なCOの好ましくは少なくとも少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%が、60日間のインキュベーション後に回収される。
【0172】
生分解性を決定する好ましい試験方法は、物質、たとえばポリマー物質を、都市固形廃棄物からの堆肥に由来する接種材料と共にインキュベーションすることである。接種材料は、好ましくは、都市固形廃棄物からの堆肥の試料である。好ましくは、ポリマー物質などの物質を、事前に決定した期間、好ましくは45日間の間、接種材料と共にインキュベーションする。COの回収率を決定し、理論的に可能なCOと比較する。そのような方法の一例を本明細書中以下の実施例5cに記載する。本発明に従って表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質は、実施例5cに記載の生分解性の試験によって決定して、生分解性であることが好ましい。したがって、本発明のポリマー物質などの物質を実施例5cの試験に供した場合、COの回収率(すなわち、可能な全体のうちの、回収されたCOの%)は、陽性対照のCOの回収率の好ましくは少なくとも少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%であり、陽性対照は、セルロース、デンプン、オーク、カエデ、トウモロコシの葉およびクラフト紙からなる群から選択される。
【0173】
表面コーティングした物質、たとえば表面コーティングしたポリマー物質から調製した容器を液体の貯蔵に使用する場合、または表面コーティングした物質を食品の梱包材として使用する場合、表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質は、水に浸漬した際に限定された吸水しか有さないことが好ましい。好ましくは、吸水(本明細書中では水膨潤とも呼ぶ)は、最大で30%、さらにより好ましくは最大で20%、さらにより好ましくは最大で10%、さらにより好ましくは最大で5%である。
【0174】
表面コーティングした物質の使用次第では、ポリマー物質の引張力が高いことが好ましい場合がある。上述の表面コーティングした物質、たとえば表面コーティングした植物繊維を用いて、物質および植物物質は、有用な引張力を有する物質、たとえばポリマー物質をもたらし得る。したがって、好ましくは、物質、たとえばポリマー物質の引張力は、ハウンスフィールド試験機器を用いて決定した場合に、少なくとも10MPa、より好ましくは少なくとも20MPa、さらにより好ましくは少なくとも25MPa、たとえば少なくとも27MPa、たとえば少なくとも29MPaなど、たとえば10〜200MPaの範囲、より好ましくは20〜200MPaの範囲、さらにより好ましくは25〜100MPaの範囲、たとえば28〜100MPaの範囲、たとえば29〜100MPaの範囲などである。
【0175】
さらに、表面コーティングした物質の貯蔵弾性率E’が十分に高いことが好ましい。好ましくは、貯蔵弾性率E’は、−40℃〜−30℃の範囲、好ましくは−37℃〜−32℃の範囲の温度で少なくとも2500、より好ましくは少なくとも3000、たとえば少なくとも3200、たとえば少なくとも3300など、たとえば少なくとも3400である。
【0176】
表面コーティングした物質の使用
本発明による表面コーティングした物質、たとえば表面コーティングしたポリマー物質は、いくつかの異なる用途に有用である。ポリマー物質の1つの好ましい使用は液体用の容器である。別の好ましい使用は、特に防水梱包材を必要とする食品のための食品梱包材用である。さらに好ましい使用は、紙製品、特に紙製品が撥水または防水である必要がある製品用である。
【0177】
本明細書中に記載の気相グラフティング技法に従って表面コーティングした物質から生産した好ましい製品は、自動車の部品およびインテリア、クレートおよび箱詰め材料、梁、板、タイル、表面コーティングなどの建築材、キャビネットなどの消費者物品、電子機器用の部品、家具、ランプ部品、コンピュータのケーシング、船の建造物、舗装、配管、航空機の部品、台所用品である。
【0178】
上記物品は、表面修飾した粒子から、高圧下、型中、20〜50%の同様の条件下で重合する単量体の存在下で、ラジカルまたは開環重合によって構築する。ラジカル重合は、無酸素条件下で、AIBN/ビスアンモニウムペルスルフェートなどのラジカル開始剤を用いて、またはUV光の突発によって開始させ得る。開環は、酸(オキセタン)またはアルコキシド(オキシラン)によって開始させることができる。
【0179】
本明細書中に記載の表面コーティングした物質は、型での成形、熱成形、注入成型、圧縮成型、押し出し成型、吹き出し成型などの様々な成形技法によって、製品を形成することができる。表面処理した物質の平均粒子径が300マイクロメートルでは、圧縮成型が好ましい。
【0180】
2つ以上の本明細書中に記載のように表面コーティングした物質を混合し、製品を形成し得る。これらは、上述の繊維源のうちの任意のものに由来する小粒子の画分および強力な繊維の画分を含むことができ、これが好ましい混合物である。また、これはセルロース材料およびガラス繊維の混合物であることもでき、実際、類似の重合可能な官能基を保有する物質の任意の組合せを等量の単量体と混合し、重合を開始させて、加圧下でポリマーを形成させ得る。
【0181】
1つまたは複数の本明細書中に記載のように表面コーティングした物質を、コーティングしていない物質、たとえばプラスチックと混合し、製品を形成し得る。ポリマー中に混合することができる物質の例は、誘導体化前の上述の繊維のうちの任意のもの、または製品の可塑性を改変し得るエラストマー顆粒である。
【0182】
一実施形態では、本明細書中に記載の気相グラフティングに従って表面コーティングする物質をポリスチレンと混合し、物品へと注入成型する。この物品は、自動車の部品およびインテリア、クレートおよび箱詰め材料、梁、板、タイル、表面コーティングなどの建築材、キャビネットなどの消費者物品、電子機器用の部品、家具、ランプ部品、コンピュータのケーシング、船の建造物、舗装、配管、航空機の部品、台所用品であり得る。
【0183】
ポリマー物質をたとえば液体用の容器として使用すべき場合は、物質、たとえばポリマー物質は、好ましくは、そのような容器に適切な形状の型を用いて調製する。容器、たとえば液体用の容器の適切な形状には、たとえば、様々なボトル形状、立方体形状、円柱形状および箱が含まれ、好ましくは、液体用の容器はボトルである。容器全体、たとえばボトル自体が、完全に本発明の表面コーティングした物質、たとえば表面コーティングしたポリマー物質から調製されることが好ましいが、任意の栓をする手段(たとえば蓋またはキャップなど、たとえば王冠)を別の物質、たとえば金属(アルミニウムもしくは鉄など)および/またはプラスチックから調製してもよい。
【0184】
本明細書中に記載の表面コーティングした物質から生産した容器中に保管することができる液体または柔らかい製品は、任意の液体または柔らかい製品であり得る。液体および柔らかい製品の例は、食品に関連する液体および柔らかい製品、たとえば、ソフトドリンク、牛乳、ビールなどの飲料、チーズ、ヨーグルトなどの細菌に基づく製品である。しかし、本発明の好ましい一実施形態では、表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質は飲料の容器に使用し、特に、ポリマー物質などの表面コーティングした物質は、炭酸ソフトドリンクまたはビールなどの炭酸飲料の容器として使用し得る。この実施形態では、ポリマー物質が本明細書中に上述した好ましい強度を有することが特に重要である。
【0185】
本発明の一実施形態では、表面コーティングした物質は、食品貯蔵材料の調製に使用し得る。好ましくは、食品貯蔵材料は、有機起源の表面コーティングした物質、たとえば植物ポリマー物質から生産する。好ましくは、食品貯蔵材料は、クレート、缶、箱、グラス代用品および食卓器具からなる群から選択され得る。好ましくは、前記グラス代用品は使い捨てのグラス代用品である。したがって、本発明は、一実施形態では、本発明による表面コーティングした物質、たとえばポリマー物質を含む、または好ましくはそれからなる食卓器具に関する。好ましくは、前記食卓器具は使い捨ての食卓器具であり、ポリマー物質の生分解性性質に起因して、これもやはり好ましくは生分解性となる。食卓器具は、たとえば、スプーン、フォークもしくはナイフなどのカトラリーであってよく、または、これは皿もしくはカップもしくはポリマー製グラスであり得る。
【0186】
一実施形態では、表面コーティングした物質を用いて撥水または防水の紙製品を生産する。これらの紙製品は筆記用の紙、新聞紙、雑誌、本などであり得る。しかし、紙製品は、同質板紙、裏白チップボード、段ボール、および筆記用の普通紙よりも厚い他の種類の紙製品であってもよい。本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質(複数可)を含む紙製品は、表面コーティングした繊維、たとえば表面コーティングしたパルプ(乾燥繊維性物質)から生産し得る。繊維およびパルプは未使用または再生紙由来であり得る。
【0187】
本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質(複数可)から生産した物品は、伝統的な紙製貯蔵容器、たとえば板紙箱の代わりに使用することができるが、本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質(複数可)から生産した箱は撥水または防水であり、木製箱の代わりに使用することができる。特に、伝統的な板紙箱が、これらの箱の水吸収特長が原因で不適切である領域(業界の分野および種類)では、本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質(複数可)から生産した箱が、撥水または防水の特長により適切であり得る。
【0188】
紙製品は、麦わら、たとえば穀類のものから生産することができる。麦わらは、より小さな小片へと切断する、たとえば粉末へと研磨する前に、任意選択で溶液に浸漬することができる。麦わらの小片(たとえば粉末)は、リグニン、残留土壌粒子、昆虫の残留部分などを含有し得る。研磨した麦わら物質は、本明細書中に記載のように表面コーティングすることができる。表面コーティングプロセスは、研磨した麦わら物質を無菌的にする条件下で行う。表面コーティングした麦わら物質は、耐水または防水の紙の生産に使用することができる。この紙は強度が高く、生分解性である。紙生産の伝統的なプロセスと比較した場合、本明細書中に記載の方法は、はるかに少ない水およびはるかに少ないエネルギーを使用する。さらに、紙生産の伝統的なプロセスでは、煮沸によって可能な限りのセルロースを分解し、パルプを乾燥させる前にリグニンを除去する。
【0189】
本明細書中に記載の気相グラフティング技法によってコーティングした表面物質から生産した物品は、多くの物品においてプラスチックを置き換えることができるほどの強度を有する場合がある。その例は、自動車の部品およびインテリア、クレートおよび箱詰め材料、梁、板、タイル、表面コーティングなどの建築材、キャビネットなどの消費者物品、電子機器用の部品、家具、ランプ部品、コンピュータのケーシング、船の建造物、舗装、配管、航空機の部品、台所用品である。
【0190】
システム
一態様では、本発明は、本明細書中に記載の物質を表面コーティングするためのシステムに関し、システムは、
・反応器、
・試薬(複数可)用の器、
・担体ガス用の器、
・反応器、試薬(複数可)を加熱するための器、および担体ガス用の器を接続するためのチューブおよびパイプ、
・温度制御手段、
・圧力制御手段、ならびに
・ガス流速制御手段
を含む。
【0191】
反応器は、物質を記載した気相グラフティングプロセスによって表面コーティングする場合に、この物質を含有する。物質は、グラフティングプロセスを開始する前にバッチ(非連続的)として、または気相グラフティングプロセスが起こっている間に連続的な補給として、反応器に入れることができる。気相グラフティングプロセスは、本明細書中に記載の気体状試薬(複数可)を物質の表面の上部に導いた際に起こる。反応器は、反応器内の温度(反応器の温度制御手段)に関して制御することができる。反応器内の温度は、物質を反応器に入れる前、および物質が反応器の内部に位置する期間に制御し得る。温度制御手段は、物質を反応器に入れる間、および物質が反応器内にあるが、気相グラフティングプロセスが開始される前、すなわち、気体状試薬(複数可)を反応器に導く前に、物質が加熱されるように稼動し得る。これは物質の予熱である。試薬(複数可)を反応器内に導く前に物質を予熱することが、気相の試薬(複数可)を保つために好ましい。反応器の温度制御手段は、反応器の内部を加熱および冷却することができる。反応器の温度は、0〜350℃の範囲、好ましくは10〜300℃、より好ましくは20〜250℃、さらに好ましくは30〜200℃で制御することができる。表面コーティングを行う際の好ましい温度は、気相グラフティングプロセスの温度に関して本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0192】
一実施形態では、圧力制御手段を反応器と接続させる。反応器の圧力は、物質を反応器に入れる前、および物質が反応器の内部に位置する期間に制御することができる。圧力制御手段は、物質が反応器中にあるが(バッチまたは連続的に補給)、気相グラフティングプロセスを開始する前、すなわち、気体状試薬(複数可)を反応器に導く前に稼動し得る。これは、物質の圧力(陰圧(真空)または陽圧)の前処理であり、他の箇所に記載した予熱と一緒に行うことができる。試薬(複数可)を反応器内に導く前の圧力の前処理および物質の予熱は、後の時点で気相の試薬(複数可)を物質の表面の上部に導く際に、コーティングプロセスを向上させ得る。反応器の圧力制御手段は反応器の内部で陰圧(真空)および陽圧を生じることができる。
【0193】
反応器の圧力制御手段は、反応器の圧力を1〜100,000mbarの範囲で制御することができる。100〜10,000mbar、たとえば300〜3,000mbarなど、たとえば800〜1,500mbar、たとえば1,013mbarなどの圧力が好ましい。
【0194】
グラフティングプロセス(porcess)の一例は、誘導体化する固体/物質を含有する加熱したリアクター(反応器)を排気し、その後、物質中のすべての空洞を試薬で満たすためにリアクターに試薬および担体ガスの混合物を入れることであり得る。その後、表面での試薬の濃度を増加させ、したがって反応速度を増加させるために、圧力をたとえば5,000mbarまで増加させ得る。
【0195】
表面コーティングを行う際の好ましい陰圧は本明細書中の他の箇所に記載されており、好ましくは1〜200mbarである。陰圧は標準の排気ポンプを用いて確立する。
【0196】
さらなる実施形態では、ガス流速制御手段を反応器に接続する。ガス流速制御は、試薬(複数可)および/または担体ガス(複数可)のガス流速を、反応器を通るようにこれらを導いた場合に制御する。ガス流速は、試薬(複数可)のガスおよび担体ガス(複数可)が反応器の内部に位置する時間を増加または減少させるために制御することができる。ガス流速は、表面コーティングプロセスに供する物質の量に依存し得る。また、ガス流速は、表面コーティング処理に供する物質上に位置する表面コーティングの量に関連して調節してもよい。
【0197】
システムは、試薬(複数可)用の器をさらに含む。試薬は、器中に位置する場合、最初は固体、液体または気体であってよく、たとえば、大気圧および室温下の試薬を、試薬(複数可)用の器に固体、液体または気体として補給することができる。試薬(複数可)用の器は、合計で1個のチャンバ、または試薬(複数可)を試薬(複数可)用の器に供給するためのチャンバおよび試薬(複数可)を気体として反応器に導く前に試薬(複数可)を前処理するためのチャンバを含み得る。試薬(複数可)を前処理するためのチャンバ(試薬(複数可)を器に供給するためのものと同じチャンバであり得る)では、試薬を加熱および/または陰圧もしくは陽圧に供してもよい。また、試薬(複数可)の前処理、すなわち、室温で固体または液体の場合は試薬(複数可)を気相にすることは、試薬(複数可)用の器と反応器とを接続するチューブおよびパイプ中で行ってもよい。さらに、担体ガスは、試薬(複数可)用の器内に入れるか、または混合物が反応器内に入る前にチューブおよびパイプ中で前処理した試薬(複数可)と混合することができる。
【0198】
別の実施形態では、システムは担体ガス用の器を含む。担体ガスは不活性ガス、好ましくは窒素および/またはアルゴンであり得る。また、担体ガスは酸素であることもできる。担体ガスは、蒸発を促進し、反応物質を蒸気相に維持する担体として作用し、液相反応において溶媒について知られているものに匹敵する効果、すなわち、錯化および起こっている置換反応を補助する効果をさらに有し得る。
【0199】
担体ガス用の器は、試薬(複数可)の器および/または気相の試薬(複数可)を試薬(複数可)用の器から反応器へと導くチューブ/パイプと接続することができる。担体ガス用の器には、担体ガスの量を制御する手段を接続する。この担体ガスの量を制御する手段は、一定量の担体ガスを、担体ガス用の器からシステムを通って試薬(複数可)用の器および/または反応器に向かって導く。担体ガスの量は、気相グラフティング反応を行う際に調節し得る。
【0200】
チューブおよびパイプを、少なくとも反応器、試薬(複数可)を加熱するための器、および担体ガス用の器を接続するために使用する。また、チューブおよびパイプは、システムの他のユニットを接続するための、システムの一部であり得る。これらの接続を図に示し、かつ/または以下に記載する。説明は、チューブおよびパイプを明確に記載せずに、物質またはガスが1つのユニットから別のユニットまで導かれるというだけのものであり得る。
【0201】
温度制御手段は、反応器、試薬(複数可)用の器、担体ガス用の器、および/またはチューブ/パイプと、これらのユニットの温度を独立して制御し、必要な場合は調節し得るように接続し得る。
【0202】
システムを通してガスを導く手段は、気相の試薬(複数可)および担体ガスの最適な組合せが、物質が表面コーティングされる反応器を通るように導くことができるように、反応器、試薬(複数可)用の器、担体ガス用の器、および/またはチューブ/パイプと接続し得る。
【0203】
反応器中で表面反応の適切な条件を得るために、気相の試薬(複数可)の温度、圧力、量ならびに担体ガスの量を本明細書中に記載の手段によって独立して調節することができる。
【0204】
一実施形態では、上述のシステムは、
・加熱手段、
・出発物質用の容器、
・表面処理した物質用の容器、
・HClを捕捉するための容器、
・試薬および担体ガスの気相をポンピングするためのポンプ、ならびに/または
・表面処理した物質を冷却するおよび/または反応器を出て行くガスを冷却するための冷却器
をさらに含む。
【0205】
加熱手段および冷却手段を、上述の温度を制御する手段の一部として組み込み得る。加熱手段は、温度を制御する手段に関して上述のように使用することができる。加熱手段は、表面コーティングプロセスに供するべき物質が反応器に連続的に通るように導くシステムにおいて、反応器を加熱するために使用することができる。表面コーティングするべき物質は、反応器の一方の端中に供給し、反応器の他の端から出て行く。気相の試薬(複数可)は、表面処理プロセスに供する物質の流れと同様の方向で、反応器内または外に導くことができる。また、試薬(複数可)は、反応器中の物質の流れ方向と逆の流れ方向を有することもできる。物質とガスが反応器を通る同様の流れ方向を有する場合、加熱手段は、反応器の、物質が反応器に入る端を加熱することができる。冷却手段は、反応器の、物質が反応器を出ている端を冷却することができる。物質のさらなる表面コーティングを行うために、物質は反応器内に数回、再度導き得る。好ましくは、物質は反応器の底から入り、器の上部から出て行く。好ましくは、物質およびガスは反応器を通る同様の流れ方向を有する。
【0206】
一実施形態では、システムは出発物質用の容器を含む。この容器は、好ましくは、本明細書中に記載の方法に従ってまだ表面コーティングしていない物質用である。出発物質用の容器は、好ましくは、処理する物質を出発物質用の容器から反応器へと導くことができるように、反応器と接続させる。物質が反応器に入る前にそれを前処理することを可能にするために、温度制御手段および圧力制御手段を出発物質用の容器と接続させ得る。反応器中で使用する温度および圧力と同様の温度および圧力で、出発物質用の容器中の物質を前処理することは、物質の表面コーティングに有益であり得る。
【0207】
また、システムは表面処理した物質用の容器も含み得る。反応器中の気相グラフティングプロセスに供した物質は、表面処理した物質用の容器に導かれる。この容器から、物質を反応器に再度導き得るか、または、物質は表面コーティングした物質としてシステムを出て行き得る。物質が必要な表面コーティングを有しておりシステムを出ることができるか、または物質を反応器に再度導く必要があるかを決定するために、表面制御手段を表面処理した物質用の容器に接続し得る。表面コーティングした物質はコーティングしていない物質とは異なる蛍光発光を有し得るため、表面制御手段は物質の自動蛍光測定に基づき得る。
【0208】
反応器を出て行く物質およびガス(試薬(複数可)、担体ガスおよび生じる場合は反応器中で生じるガス)は、固体物質と気体を分離する手段によって分離することができる。そのような固体物質と気体を分離する手段はサイクロンであり得る。ガスは、反応器中で生じたすべてのガスについて浄化し得る。また、気体状試薬(複数可)および担体ガスの含量も制御および調節し得る。これにより、担体ガスおよび気体状試薬(複数可)の組合せを反応器中に再度導く準備ができる。
【0209】
気相グラフティングで使用する試薬(複数可)は−Cl基を含有し得る。それにより、−Cl基を有する試薬(複数可)が物質のヒドロキシル化された表面と反応した際に、反応器中でHCl(塩化水素)が生じる場合がある。HClは、残りの気体状試薬(複数可)(物質表面のヒドロキシル化された部分と反応しなかった試薬)および担体ガスと一緒に反応器から出るように導かれる。反応器内で生じたHClまたは他のガスを捕捉するための容器は、反応器および/または固体物質と気体を分離する手段に接続させることができる。HClを捕捉するための容器(HCl捕捉カラムまたはHCl用のゼオライトトラップ)は、HClを捕捉するためにゼオライトを含有し得る。
【0210】
一実施形態では、システムは、試薬および担体ガスの気相を、システムを通してポンピングするためのポンプを含む。そのようなポンプはシステムの様々な位置に配置し得る。位置の例は、気相が反応器に入る前に配置するおよび/または気相が反応器を出て行った後に配置するチューブまたはパイプの位置である。
【0211】
また、弁も物質を気相グラフティングするシステム中に存在し得る。弁は、本明細書中に記載のシステムの任意のユニットの入口および/または出口に配置し得る。好ましくは、弁は、システムに入るおよび出る物質を制御するために、システム中の気体状試薬(複数可)の量、システム中の担体ガスの量を制御する手段と接続して使用する。
【0212】
また、システムは、表面処理した物質を冷却するおよび/または反応器を出て行くガスを冷却するための冷却器も含み得る。冷却器は熱交換体であり得る。表面処理した物質および/または反応器を出て行くガスを冷却した際に得られる熱は、物質および/またはガスが反応器に入る前および/または反応器中にある間にそれを加熱するために、使用することができる。
【0213】
さらなる実施形態では、システムは、
・コーティングプロセスを行う際に物質を撹拌するための撹拌手段、
・物質を表面コーティングに再循環させるための再循環手段、
・反応器に未処理の(コーティングされていない)物質を供給するための供給手段
をさらに含む。
【0214】
コーティングプロセスを行う際に物質を撹拌するための撹拌手段を反応器の内部に配置し得る。物質を撹拌することで、反応器中の温度が異なる危険性が低下し、反応器を通るガス流の乱流が確実となる。さらなる反応、たとえば本明細書中の他の箇所に記載されているマイクロ波処理を反応中で行う場合は、撹拌手段により、反応器中の物質のより均一な処理が確実となり得る。撹拌手段は、任意の撹拌機器、たとえば循環ショベルによるものであり得る。また、撹拌手段は、反応器を通って物質を輸送するスネイル(snail)であることもできる。スネイルが物質を輸送する方向は、水平または垂直であり得る。垂直の場合、物質は下方向または上方向に輸送し得る。たとえばショベルを通る撹拌手段中の開口または穴により、気体状反応物質(複数可)と反応器中の物質の表面との間の接触が確実となり得る。また、気体状反応物質(複数可)および担体ガスは、撹拌手段の内部を通って、撹拌手段の穴または開口部を通って、たとえばスネイルの穴または開口部を通って反応器内に入るように導き得る。
【0215】
上述のように、物質を再循環させるための再循環手段は、物質を反応器から反応器に戻して、表面または物質の別のラウンドの気相グラフティングを得るために導かれるように配置し得る。システム中の物質の再循環は、再循環を行わなかった場合よりも均一にコーティングされた表面を有する物質をもたらし得る。
【0216】
一実施形態では、システムは、反応器に未処理の(コーティングされていない)物質を供給するための供給手段を含む。供給手段は、反応器中の物質の量が経時的に同じであるように、物質を再循環させるための再循環手段と通信し得る。これにより、再循環手段によって再循環されない物質の量(すなわち、システムを出て行く量)を供給手段によって反応器内に供給して、反応器に供給する。
【0217】
さらなる実施形態では、システムは、反応器中でマイクロ波を放射する手段を含む。マイクロ波を放射する手段は1つまたは複数のマグネトロンであり得る。
【0218】
好ましい実施形態では、反応器は流動床である。好ましくは、物質は器の底から反応器に入り、物質は器の上部から反応器を出て行く。さらに好ましくは、ガス流の方向も反応器の底から上部である。
【0219】
別の好ましい実施形態では、物質は器の上部から反応器に入り、物質は器の底から反応器を出て行く。また、物質は器の上部の入口を通って反応器に入ることもでき、物質は入口の下の任意の位置に配置されている出口を通って反応器を出て行くことができる。それにより、入口および出口はどちらも器の上部に配置することができる。好ましくは、これらの種類のシステム中のガス流は、反応器中の物質の全体的な方向と逆である、すなわち、ガス流の方向は反応器の底から上部に向かう。
【0220】
図面の詳細な説明
図1は、液相または気相で行うメタクリロイル化反応の模式図を示す。溶液中で行う反応の模式図を図1aに示す。気相中で行う対応する反応の模式図を図1bに示す。例ではセルロースと塩化メタクリロイルとの間の反応を示すが、セルロースを含む植物繊維を用いて同様の反応を行い得る。本明細書中に記載の化合物などの、塩化メタクリロイルに類似の他の化合物を用いて、同様の反応を行うことができる。
【0221】
図2は、様々な大きさの表面処理した物質を含むポリマー物質をもたらす、表面処理した物質の重合の模式図を示す。この例では、植物繊維(これも他の種類の物質であることができる)を長円形で表し、これはメタクリロイル化されており、植物物質のチップまたは粉末物質はメタクリロイル化したセルロースである。3つの異なる単量体を使用し、この例では、それらはエチルメタクリレート、エチルアクリレートおよびアクリル酸である。この例では、架橋結合剤、すなわち架橋結合剤Aldrich 24,684−0を加える。フリーラジカル開始剤として、TEMED、過硫酸アンモニウム、過酸化ラウロイルおよび2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を使用する。植物繊維(長円形)およびセルロース繊維は、本明細書中の他の箇所に記載されている気相グラフティング技法によって表面処理することができる。
【0222】
図3は、チオール基を含むフルオロフォアとメタクリロイルセルロース/植物繊維/植物物質のチップまたは粉末との間の反応の模式図を示し、セルロース/植物繊維/植物物質のチップまたは粉末を長円形として示す。この反応は、チオールと表面上のメタクリレートとのマイケル反応による、セルロース/植物繊維/植物物質のチップまたは粉末とフルオロフォアとの間の共有結合をもたらす。
【0223】
図4は、RMA−1118−69と反応させた大麦わらの写真(左)およびRMA−1118−69と反応させたメタクリレート化した(methacryolated)大麦わらの写真の例を示す。A)メタクリロイル化の前、すなわちそれを有さない大麦わらの強度は193であった。B)メタクリロイル化後の大麦わらの強度は364であった。したがって、蛍光を使用して、物質が表面処理に供されたかどうかを試験することができる。この例では、メタクリロイル化(methacryolylation)を液体反応によって行った。
【0224】
図5は、実験室の気相グラフティング機器を示す。システムの原理は、任意の大きさの生産システムにも適用される。表面コーティングプロセスに供する物質は流動床中に位置する一方で、気相の試薬は下から流動床を通るように導く。試薬および流動床の温度は制御されている。化合物が物質の表面と連結することが原因でHClが発生する場合、このHClはゼオライトによって捕捉することができる。ガス/試薬は、流動床を連続的に通るように導くことができる。垂直ガラスリアクターは上部および底にquickfit接合部を備えており、これにガラスフリット接続部を取り付ける。カラムの上部は冷却器を通って小さな再循環送風機に接続されている。HCl用の3Åのモレキュラーシーブトラップを介して未使用の試薬を加熱した担体ガスと共に再循環し、穏やかに加熱した試薬のストック溶液に気泡を通す。
【0225】
図6は、連続的気相グラフティング設備を示す。表面コーティングする物質は流動床中に位置する一方で、気相の試薬は下から流動床を通るように導く。試薬および流動床の温度は制御されている。化合物が物質の表面と連結することでHClが発生する場合、このHClはゼオライトによって捕捉することができる。ガス/試薬は、流動床を連続的に通るように導くことができる。表面コーティングする物質は「固体供給」を介して設備に供給することができ、上部で流動床から除去することができ、ここで、これはサイクロンに入り、流動床に再循環させることができるか、または固体抽出物として除去することができる。流体中の物質は揺動し得る。垂直ステンレス鋼製リアクターは、十分に証明された単位操作を用いた標準の化学工学によって構成されている。これは、底供給および繊維の再循環を有する、少なくとも2mの高さの流動床リアクターを含む。サイクロンを用いて固体を再循環担体ガスおよび試薬から分離し、必要に応じて生成物を除去するか、または繊維を再循環させ得るスネイルに送る。サイクロンからHClがゼオライトHCl捕捉カラムへと運ばれ、未使用の試薬を再循環させる。
【0226】
図7は、マイクロ波支援グラフティングシステムを示す。表面コーティングする物質は流動床中に位置する一方で、気相の試薬は下から流動床を通るように導く。試薬および流動床の温度は制御されている。反応中にHClが生じる場合は、これをゼオライトによって捕捉することができる。ガス/試薬は、流動床を連続的に通るように導くことができる。表面コーティングする物質は「供給」の補給を介して設備に供給することができ、底で流動床から除去することができる。流体中の物質は揺動し得る。マグネトロンを使用して容器(流動床)の内部にマイクロ波を補給する。リアクターは繊維を導入および除去するための2組の二重弁を備えており(マイクロ波の安全な取扱い)、楕円形の中心に配置したホーンから外に照射されるマイクロ波の分散を増強するために、楕円形の断面を有する。他の中心は、マイクロ波を透過する物質、たとえばポリマーまたはセラミックプラグが占有している。中心はマイクロ波の複数波長によって隔離されている。このようにして、激しい熱の節点のない均等な加熱を維持することができ、したがって繊維の局所的な過熱が回避される。撹拌ブレードが物質を持ち上げ、熱およびガス流の均等な分布を確実にする。担体の窒素または空気は、送風機を用いて再循環させ、反応中に形成されたHClガスを、HClと結合し、未反応の試薬をリアクターに戻すことを可能にする3Åのゼオライト床へと運ぶ。ゼオライトは、外部ループでのストリッピングによって連続的に再生することができる(示さず)。
【0227】
図8は、繊維の連続的マイクロ波支援グラフティングのための機器を示す。表面コーティングする物質は、「供給」の補給から入り、システムを通る導波管によって導かれ、試薬は、気相を移動させるための小さな穴を有する中空の軸を介して物質を通るように導かれる。マグネトロンがシステムにマイクロ波を補給する。グラフティングまたは表面処理した生成物は、図中に示すようにシステムから得ることができる。示してはいないが、試薬および気相の試薬に供する物質の温度は制御されている。化合物が物質の表面と連結することでHClが発生する場合、このHClはたとえばゼオライトによって捕捉することができる。ガス/試薬は、流動床を連続的に通るように導くことができる。水平スネイルでは、マイクロ波は波の節点でスリットを有するシリンダーの周りのらせん状導波管中で輸送し、このスリットからエネルギーがスネイル中の物質に普及する。スネイル自体は、アシル化試薬または別の試薬を含有する不活性ガスの流れに逆流して、繊維物質を輸送する。反応中に形成されるHClはゼオライト床に運ばれて吸収され、送風機を介して未使用の試薬をリアクターに戻すことが可能となる。物質は常にリアクターを通って移動しており、加熱区域中の滞留時間は5分間である。
【0228】
ディクスクレーマー
好ましい実施形態では、本明細書中で上述したグラフティングプロセスは、グラフティングプロセスを行う間に表面コーティングする物質を溶液に供さずに行う。
【0229】
好ましい実施形態では、表面処理する物質は、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を表面にグラフティングする以外のさらなる化学変化に供さない。
【実施例】
【0230】
以下の実施例は本発明の実施形態を例示するために提供し、本発明を限定するものとみなされるべきでない。
【0231】
略記:
PEGA=ポリエチレングリコールポリアクリルアミド樹脂
HMBA=ヒドロキシメチル安息香酸
TBTU=O(1H−ベンゾトリアゾール(benzotrizol)−1−イル)1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウムテトラフルオロボレート、CAS番号125700−67−6
DIEA=ジ−イソプロピルエチルアミン。
DCM=ジクロロメタン
DMF=NN’ジメチルホルムアミド(dimethylforamide)。
TIPS=トリイソプロピルシラン
LCMS=液体クロマトグラフィー、質量分析
HPLC=高圧液体クロマトグラフィー。
TFA=トリフルオロ酢酸
実施例1
溶液中のアクリロイル化:参照物質の調製
Edgar K.J.,Arnold K.M.,Blount W.W.,Lawniczak,J.E.,Lowman D.W.Macromolecules 1995,28,4122−4128に記載の可溶性セルロースアセトアセテートを合成する手順に類似の手順を用いて、溶液中のアクリロイル化を行った。
【0232】
大麦わらを実験室ブレンダーで研磨し、FOSS CYCLOTEC 1093試料粉砕機でさらに3回粉末化した。粉末の平均粒子径は36〜360〜590μmであった。3回粉末化した大麦わら(5g)を、滴下漏斗を取り付けた500mlのRBフラスコ中に入れた。30mlの乾燥ジクロロメタン(dichloromethan)(DCM)を加え、次いでトリエタノールアミン(TEA)(13.02ml、93.75mmol)を加えた。反応混合物をアルゴン下で維持し、氷浴中で冷却した。塩化メタクリロイル(9.027ml、93.75mmol)を30分以内に滴下した。1時間0℃で撹拌した後、氷浴を取り外し、反応混合物を(22℃で)終夜撹拌した。終夜の反応後、反応混合物を氷浴中で冷却し、メタノールを15分間で滴下した(30mL)。反応混合物を濾過し、生成物をメタノール、水、エタノールおよびDCMで洗浄した。生成物を高真空下で乾燥させた(4.3g)。
【0233】
結晶性セルロースをオオムギ粉末の代わりに使用し、必要な場合は塩化アクリロイルを使用したこと以外は、類似の手順を用いてセルロースアクリレート/メタクリレートを調製した。
【0234】
類似の手順を用いてセルロースアクリレート/メタクリレートおよびココナツ繊維メタクリレートを作製した。
【0235】
研磨した大麦わら(stray)の代わりに、結晶性セルロース(Sigma−Aldrich)またはココナツ繊維のどちらかを使用した。ココナツ繊維は、メタクリロイル化反応の前にハサミを用いて3〜5mmの小片に切断した。溶液中で行う反応の模式図を図1aに示す。
【0236】
気相中で行う対応する反応の模式図を図1bに示す。
【0237】
実施例2
本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質を用いて生産した物質のシート、たとえばポリマーシートを、以下に記載のレオロジー試験に使用し得る。
【0238】
レオロジー試験
本明細書中に記載の気相グラフティング技法によって表面コーティングした物質から調製した物質のシート、たとえばポリマーシートを、のこぎり機を使用することによって、試験のために円板の形状に切断する。これらの円板を、平行板型レオメーター、Nippon Rheology Ki−Ki Co.Ltd.からのNRM−2000上で試験する。板の半径はR=2×1cmである。試験は、0×031〜37×7rad/秒と変動する様々な角周波数で実施する。すべての測定値は185℃で採る。ひずみ振幅は10%で一定に保つ。試料の振動する流れに適用する安定した剪断速度は、0×01、0×05、0×1、0×5および1×0秒−1として5つのステップで変動させる。
【0239】
実施例3
実施例3a
蒸気相メタクリロイル化
実施例1に記載の方法を使用する代わりに、物質、たとえば植物繊維物質および植物物質のチップまたは粉末物質は、蒸気相反応によっても調製し得る。
【0240】
蒸気相メタクリロイル化は1gのスケールで実施したが、反応はより大きなスケールでも行い得る。微結晶セルロースをポリプロピレン製シリンジに入れ、別のフリットシリンジを使用してキャップした。設定を砂浴中、80℃に維持し、塩化メタクリロイルの蒸気を通した。塩化メタクリロイルを、バブラーを取り付けた500mlのRB中に入れた。乾燥アルゴンのゆっくりとした流れを60℃に維持したフラスコに通した。出口は、ドライアイスとアセトンの混合物で冷却した凍結トラップに通した。6時間後、反応を停止させ、生成物を焼結漏斗に移し、メタノール、水、エタノールおよびDCMで洗浄した。生成物を高真空下で乾燥させた。(収量1.15g)。
【0241】
この方法を用いて、セルロースの代わりに研磨した大麦わら(stray)および/またはココナツ繊維をメタクリレート化し得る。
【0242】
実施例3b
蒸気相メタクリロイル化:時間経過。
【0243】
蒸気相メタクリロイル化を2gのスケールで実施する。バブラーを取り付けた500mlのRBフラスコ中の塩化メタクリロイルおよび酢酸エチルの混合物(1:1)を、乾燥空気のゆっくりとした流れで蒸発させ、60℃に維持したフラスコに通した。両末端にフリットを取り付けたポリプロピレン製シリンジ中の微結晶セルロースを砂浴中で80℃に維持しながら、塩化メタクリロイルの蒸気を通した。未使用の試薬はコールドフィンガー上で捕捉した。反応を6時間進行させた。1時間ごとに100mgの試料を取り出した。すべての試料を上記実施例の蛍光アッセイによって分析した。反応は1時間後に定量的であり、蛍光強度は熱への曝露の延長に伴ってゆっくりと減少した。
【0244】
反応のより正確な時間経過を得るために、上記と同様に85℃で第2の実験を実施し、5、20、35、50および65分に試料を採取した。繊維の分析用試料をメタノール、水、エタノールおよびDCMで洗浄する。上記実施例の蛍光アッセイによる蛍光の決定によれば、反応はこの温度で20分以内に完了していた。
【0245】
別の実験で、紙−パルプ−セルロース繊維を脱凝集させ、高真空下で1日間乾燥させた。上述のようにこれらの繊維(1g)上で蒸気相メタクリロイル化を20分間〜6時間実施した。蛍光推定は、20分後にブランク試料と比較した蛍光レベルの最大の増加を示している。
【0246】
実施例3c
実験室スケールのリアクターでのメタクリロイル化。
【0247】
ミクロサイズの大麦わら繊維(50g、0.32%のNaOHで80℃にて処理、洗浄および乾燥)を実験室スケールの気相グラフティング機器のアセンブルしたカラム中に秤量し、窒素をパージして通す。カラムおよびガスを80℃まで温め、送風機を稼動させる。塩化メタクリロイルを酢酸エチル中に注入した。試験の実行では、生成物のアリコートを5、15、30分、1、2、3、4および5時間に取り出した。15分後、上述のテトラメチルローダミンアッセイを用いた蛍光の決定によって、反応は完了している。したがって、予熱を行い、反応時間は20分に維持する。過剰の試薬は、任意で冷却しながら、窒素で10分間パージすることによって除去する。繊維の分析用試料をメタノール、水、エタノール、およびDCMで注意深く洗浄し、乾燥させた。生成物を誘導体化の度合について分析し、メタクリレート基の組み込みは最適化した溶液反応で得られるものに等価である。
【0248】
実施例3d
流動床リアクターでの大スケールのメタクリロイル化。
【0249】
リアクターに窒素を満たす。ミクロサイズの大麦わら繊維(3m)を、底スネイルを通して流動床リアクター内に供給しながら、再循環を用いて流動床を維持する。ガスを加熱し、塩化メタクリロイルを加えて飽和雰囲気を維持する。20分後、反応の平衡状態に達し、繊維を底スネイルで固体抽出物のために除去しながら、新しい繊維を入口で9m/時の速度で加えた。繊維を冷却し、過剰の試薬を取り出した繊維から窒素または空気の逆流によって除去する。繊維の分析用試料をメタノール、水、エタノールおよびDCMで注意深く洗浄し、乾燥させた。上述のテトラメチルローダミン試験を用いて生成物を分析し、誘導体化は実験室スケールの機器で得られたものに匹敵している。
【0250】
実施例3e
マイクロ波条件下での繊維の気相メタクリロイル化。
【0251】
A)実験室スケールの実験を、5mLの反応バイアル中、Libertyマイクロ波装置上で、塩化メタクリロイル蒸気を含むNをセルロース粉末(2g)に通すことによって実施した。蒸気の平衡に達した際、バイアルを90℃まで5分間加熱した。物質をメタノール、水、エタノールおよびDCMで注意深く洗浄した。これを乾燥させ、上記蛍光に基づいた技法によって反応の度合はほぼ定量的であることが推定された。
【0252】
B)上記図中に表した垂直マイクロ波リアクターを、最初に窒素ガスでパージし、300マイクロメートルの平均粒子径を有する乾燥した粉砕大麦わら粉末で満たす。塩化メタクリロイル試薬(酢酸エチル中に10%)を試薬チューブから加えながら、マイクロ波を用いてリアクターを80℃まで加熱し、リアクターの底の穿孔したチューブの入口からの担体ガスによって分配する。リアクター中に10分間の平均滞留時間を確保する速度で繊維を導入および除去する間、加熱区域の温度を最大90℃に維持する。繊維を冷却し、過剰の試薬を取り出した繊維から窒素または空気の逆流によって除去する。繊維の分析用試料を取り出し、メタノール、水、エタノールおよびDCMで注意深く洗浄する。試料を乾燥させ、上記蛍光に基づいたテトラメチルローダミン試験を用いて反応の度合はほぼ定量的であることが推定された。
【0253】
C)上記図中に提示する水平マイクロ波リアクターを最初に窒素ガスでパージする。塩化メタクリロイル試薬(酢酸エチル中に10%)試薬チューブから加えながら、マイクロ波を用いてリアクターを80℃まで加熱し、リアクターのスネイル中の穿孔した軸からの担体ガスによって分配する。スネイルが満たされるまで300マイクロメートルの平均粒子径の粉砕した乾燥大麦わら粉末を入口から加えた。マグネトロン付近のリアクタースネイルの最も熱い区域の温度は最大で90℃に維持する。リアクター中に10分間の平均滞留時間を確保する速度で繊維を導入および除去する。繊維を冷却し、過剰の試薬を誘導体化した繊維生成物から窒素または空気の逆流によって除去する。繊維の分析用試料を取り出し、メタノール、水、エタノールおよびDCMで注意深く洗浄する。試料を乾燥させ、上記蛍光に基づいたテトラメチルローダミン試験を用いて反応の度合はほぼ定量的であることが推定された。
【0254】
実施例4
セルロース繊維の表面上の二重結合の推定:メタクリロイル化の度合。
【0255】
【化38】

TBTU活性方法を用いて、テトラメチルローダミンを6−アミノヘキサノイル−L−Cys(Trt)−L−Phe−HMBA−PEGA、(HMBA=ヒドロキシメチルベンズアミド)にカップリングさせた。TFA、HO、トリイソプロピルシランおよびエタンジチオール、98.5、0.5、0.5および0.5%を用いて保護を除去した。樹脂を十分に洗浄し、DIEA/DMF(5%)で処理し、洗浄した。樹脂を乾燥させ、ペプチドを0.1%のNaOHを用いて2時間切断し、生成物を濾取し、樹脂を0.1MのNaOHで洗浄した。濾液および洗浄液をHCl(1M)で中和し、凍結乾燥した。生成物のHPLCではフルオロフォアから2つの異性体(5および6カルボキシレート)しか示されず、さらに精製せずにマイケル付加による標識二重結合に使用した。表面修飾した繊維上の二重結合を薄い溶液(であるが過剰)のフルオロフォアと反応させた。ブランクおよびメタクリロイル化したセルロース試料(25mg)をフリットシリンジ内に秤量し、接近可能なジスルフィド結合を還元するためにPBSおよびTCEP(0.1M)で洗浄した。PBS(250mL)中の繊維を15mLのDMF中の150マイクログラムの色素と反応させた。時折振盪しながら、反応を3時間放置した。試薬を洗浄で除去し、ブランクおよびメタクリロイル化した試料を蛍光顕微鏡で比較し、蛍光を定量的に決定した。メタクリロイル化した試料の蛍光(3300の読取値)はメタクリロイル化(methacroylation)を欠くバックグラウンド試料の11倍であり、同じ様式で処理した。
【0256】
メタクリロイル化の度合の決定
上記実施例で調製した色素中の遊離チオール基は表面修飾した大麦わらまたはセルロース上の二重結合と反応する。これは、非修飾の繊維/セルロースと比較して増加した蛍光を与える。蛍光強度は、蛍光顕微鏡下で画像からの相対蛍光値を記録することによって画像ソフトウェアMetamorphを用いて測定する。
【0257】
典型的な実験では、メタクリロイル化したセルロースおよびブランクセルロースの試料を、フリットを取り付けた別々の5mLのシリンジ内に秤量する(25mg)。試料を、TCEP(0.1M)を含有するPBS緩衝液(250μl、0.1M)で2回洗浄する。PBS反応緩衝液(250μl)を試料に加え、次いで、DMF(15μl)中の色素ストック溶液(10μg/μl)を加える。反応混合物を十分に混合し、時折振盪しながら3時間、室温に保つ。試料を水およびDMFで洗浄し、DMF中に終夜保ち、水でさらに洗浄し、水中に終夜放置し、水で最終洗浄する。試料を8ウェルの力価プレート(500μlの水)に移し、蛍光顕微鏡(ZEISS倒立顕微鏡AXiOVERT 200M)下で見る。ブランクおよび試料の画像を同一条件下で記録し、MetaMorph Meta Imagingシリーズ環境(Molecular Devices)を用いて分析した。
【0258】
実施例5
生分解性の研究
プラスチック製品中のポリマー材料および他の有機構成成分の生分解が起こることができるかどうかを決定するため、ならびに任意選択で分解機構の理解を向上するために、試験を行う。
【0259】
試験方法は、環境的に分解可能なプラスチックの堆肥可能性を評価するための標準方法であり、Standard Guide for Assessing the Compostability of Environmentally Degradable Plastics;American Society for Testing and Materials(ASTM)D 6002−96(2002年に再承認)にさらに記載されている。
【0260】
また、試験方法の番号は上述の標準を参照する。
【0261】
さらに、「Test methods and standards for biodegradable plastics:K.J.Seal、chemistry and technology of biodegradable polymers:G.J.L.Griffin.編、Blackie Academic&Professional出版、英国、1995」を参照されたい。
【0262】
生分解は二酸化炭素の生成に基づく。以下の試験方法を用いて、ポリマー物質、ポリマーの単量体サブユニット、および他の有機構成成分の生分解性を決定し得る。
【0263】
実施例5a
試験方法D5209(Sturm試験)。この水性試験方法では、通気し、ホモジナイズし、静置した、活性下水汚泥の新鮮な試料を使用する。上清を接種材料として使用する。これは、主に中温条件下で迅速な生分解を促進する混合細菌集団を含有する。試験物質の代謝によりCOが生じ、これをアルカリ溶液で捕捉し、滴定によって定量する。別段に示さない限りは、試験の長さは30日間である。しかし、培地に再度接種した場合は、延長した試験の長さで試験を行うことが可能である。肯定的な結果(30日後に理論的なCOの少なくとも60%の回収)により、物質が堆肥化環境中でも生分解されることが示される。
【0264】
試験方法D5338などの実験室の好熱性堆肥化試験では陰性の結果が確認されている。非微生物分解の寄与は、無菌的または毒物対照を含めて、分子量または質量の変化を比較することによって定量する。
【0265】
実施例5b
土壌接触試験(試験方法D5988)。この静的試験では、定義された砂/土壌/成熟堆肥マトリックスを用いて中温性および好熱性の細菌および真菌の共同体を提供する。生分解はSturm試験に類似の様式で測定し、気体状炭素(CO)に変換された物質炭素の量に基づく。容易に生分解される物質は30〜60日間でスクリーニングすることができる。60日後に理論的なCOの60%+が回収されることが、肯定的な結果とみなされる。陰性の結果が好熱性の堆肥化条件下で確認されるはずである(試験方法D5338)。
【0266】
実施例5c
以下の試験方法を使用して、堆肥化環境でのポリマー物質の生分解速度を確立する。
【0267】
試験方法D5338は、堆肥化環境でのポリマー物質の生分解性を確立するためのものである。物質の生分解性は、最初に堆肥に加えた物質炭素の量と比較した、気体状炭素(CO)として回収される物質炭素の量に基づく。生分解の速度または終点を、以下に記載する参照物質と比較するべきである。
【0268】
陰性の結果が得られた場合は、記載した対照を試験方法で試験するか、または、現場で使用するレベルにより近い、より低い用量で試験方法を繰り返す。
【0269】
生成物またはポリマー物質は、堆肥化環境中で生分解性であることが知られている天然の参照物質、たとえばセルロースまたはデンプンと同一の条件下で比較し得る。このコンテキストで生分解性であるとみなされる他の物質は、オーク、カエデ、およびトウモロコシの葉ならびにクラフト紙である。このコンテキストでは、典型的には庭ごみを回収するために使用する非修飾のポリエチレンフィルムが陰性の参照物質とみなされる。
【0270】
物質炭素が微生物バイオマスまたは安定した腐植物質内に組み込まれるため、すべての物質炭素を気体状炭素(CO)として回収することは実用的でない場合がある。したがって、回収されたCOを陽性および陰性対照の回収されたCOと比較するべきである。陽性対照のCOの回収率の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%である、COの回収率(すなわち、可能な全体のうちの、回収されたCOの%)が肯定的な結果とみなされ、そのような物質は本発明によって生分解性であるとみなされる。
【0271】
別段に示さない限りは、試験期間は45日間であるが、現場での条件を模倣するために延長し得る。
【0272】
実施例5d
土壌埋没試験
試験するポリマー物質を、標準の篩にかけた土壌を用いて実験室で調製した土壌床に埋める。土壌床は、通常、使用前に4週間まで調整し、活性微生物叢を促進するために有機肥料を補給し得る。試料を含有する土壌床を一定温度で28日間〜6カ月間インキュベーションする。水分含量は30〜40%に設定する。重量損失、機械的強度の変化または表面損傷を評価するための微視的検査などのその特性の変化を評価するため、および微生物成長の存在および性質を探すために、試料を取り出す。
【0273】
実施例9
メタクリロイル化
図1bは、本発明によるメタクリロイル化の好ましい方法の反応スキームを示す。
【0274】
この方法は、本明細書中に記載のグラフティングするアシル基、シリル基および/またはアルキル(slkyl)基を、物質、たとえば植物繊維物質上に調製するために有用である。植物繊維物質を調製するために、植物繊維、たとえば、本明細書中で言及した植物のうちの任意のもののチップを提供する。
【0275】
物質、たとえばセルロース/植物物質/植物繊維を、最初に乾燥空気流の下で乾燥させ、その後、気相のアシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬ならびに担体ガス、たとえば窒素を用いて、約80℃の温度で処理する。生成物は蛍光色素アッセイによって特徴づける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質のヒドロキシル化された表面を、アシル化、シリル化および/またはアルキル化試薬の群からの少なくとも1つの化合物でコーティングして、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を該物質の表面に提供する方法であって、
a)ヒドロキシル化された表面を有する物質を提供するステップと、
b)アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、
該アシル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【化39】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・OTf、
・OMs、
・混合炭酸無水物、
・混合酸無水物、
・イミダゾリウム
1(acy)、R2(acy)およびR3(acy)は、H、150未満の分子量を有するアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択され、
該アルキル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【化40】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン、
・TfおよびMsを含めたスルホネート、ならびに
・OCOR
は、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり
1(alk)、R2(alk)およびR3(alk)は、H、150未満の分子量を有するアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択され、
該シリル化試薬は、以下の式の化合物の群から選択され:
【化41】

Xは、以下からなる群から選択され:
・ハロゲン
・OSO
・NR、および
・OR
は、Hまたは低級アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、
1(sil)、R2(sil)およびR3(sil)は、H、150未満の分子量を有するフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択されるステップと、
c)ヒドロキシル化された表面を有する該物質を、アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬から選択される該試薬のうちの少なくとも1つと接触させ、該試薬を気相に保つステップと、
d)その表面に、アシル基、シリル基および/またはアルキル基を含む−O−共有結合した残基を含む物質を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記混合炭酸無水物が、式OCOを有する化合物の群から選択され、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合酸無水物が、式OCORを有する化合物の群から選択され、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記TfおよびMsを含めたスルホネートが、式OSOを有する化合物の群から選択され、Rは、低級アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記アシル化試薬が、式:
【化42】

[式中、X=F、Cl、Br、OTf(トリフルオロメチルスルホニル)、OMs(メチルスルホニル)、OCOR、OCORまたはイミダゾリウムであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアリール、アルキルおよびアルケニル基から選択される]の群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記アシル化試薬が、式:
【化43】

[式中、X=F、Cl、またはBrであり、R=H、CHである]の群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シリル化試薬が、
【化44】

[式中、X=Cl、Br、I、OSOR、NRR、ORであり、Rは、Hまたは小アルキル、フルオロアルキルもしくはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のフェニル、アルキル、およびアルケニル基から選択される]の群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アルキル化試薬が、以下の式の化合物の群:
【化45】

[式中、X=Cl、Br、I、OSOR、OCORであり、Rは、小アルキル、フルオロアルキルまたはアルケニル基であり、R、RおよびRは、H、150Mw未満のアルキル、アリール、フルオロアルキル、およびアルケニル基から選択される]から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アルキル化試薬が、
【化46】

[式中、X=F、Cl、またはBrであり、R=H、CHである]の群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記試薬が、
【化47】

の群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記試薬が塩化メタクリロイル(CClO)および/または塩化アクリロイル(CClO)である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップc)で前記試薬(複数可)を前記物質と接触させることが乾式プロセスである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記物質が無機起源のものである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記物質が有機起源のものである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記有機起源の物質が前記少なくとも1つの植物に由来する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記物質が、根、茎、葉、花、果実、種子の植物部分から選択される植物部分である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記物質が1〜25mmの大きさのものである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記物質が粉末の形態である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記物質が、シートの形態またはシート様の全体的な構造である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記アシル化試薬、シリル化試薬および/またはアルキル化試薬または複数の試薬を気体に変換し、これを、担体ガス中で、前記物質を表面コーティングするために十分な時間の間、前記物質を通るように導く、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記担体ガスが、窒素、酸素、アルゴンの群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記コーティングプロセスを200℃未満の温度で行う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記コーティングプロセスを加圧下で行う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記圧力が0.1〜20バールである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記コーティングプロセスを0.2〜50時間の間行う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
気相の前記反応物質(複数可)を、25mm未満の大きさの物質の体積を通るように導く、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
気相の前記反応物質(複数可)を、前記ガスの全体的な流れが乱流であるように物質の表面の上部に導く、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
気相の前記反応物質(複数可)を再循環させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記プロセスにおいて前記アシル基、前記シリル基および/または前記アルキル基が前記物質の前記ヒドロキシル化された表面と接続した際に生じるHClを除去する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記HClをゼオライトによって捕捉する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングした物質が、5〜10バールの範囲、好ましくは10バールの圧力を、少なくとも60秒間、20℃で耐えることができる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
【化48】

[式中、RおよびRは、独立して、−H、低級アルキル、低級アルコール、低級アルコキシ、低級エーテル、低級アルケニル、ハロゲンおよびハロゲンで置換された低級アルキルからなる群から選択される]と−O−共有結合した、セルロースを含む物質を調製するための、請求項1に記載の方法であって、
a)セルロースを含む化合物を提供するステップと、
b)式:
【化49】

[式中、RおよびRは、独立して、−H、低級アルキル、低級アルコール、低級アルコキシ、低級エーテル、低級アルケニル、ハロゲンおよびハロゲンで置換された低級アルキルからなる群から選択され、Rは、直鎖状および分枝状のアルキル、アルケニル、アルコキシ、エーテル、ヘテロ原子を任意選択で含む脂肪族環、アルコール、ハロゲン化物、ハロゲンで置換されたアルキルおよび−Hからなる群から選択される]の化合物を提供するステップと、
c)セルロースを含む前記化合物を以下の式の化合物と接触させるステップと
【化50】

を含み、前記化合物を気相に保つ方法。
【請求項33】
前記物質が植物繊維物質であり、前記セルロースを含む化合物が植物繊維である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップb)の前記化合物のRおよびRが、独立して、C1〜6アルキルおよび−Hからなる群から選択される、請求項32から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ステップb)の前記化合物のRがハロゲン化物である、請求項32から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ステップb)の前記化合物のRが塩化物である、請求項32から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ステップc)を、1〜50時間の範囲、たとえば2〜25時間の範囲など、たとえば3〜15時間の範囲、たとえば4〜10時間の範囲など、たとえば5〜7時間の範囲などの間行う、請求項32から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ステップc)を、50〜110℃の範囲、たとえば60〜100℃の範囲など、たとえば70〜90℃の範囲、たとえば75〜85℃の範囲などの温度で行う、請求項32から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から38のいずれかに記載の方法に従って表面コーティングする、表面コーティングした物質。
【請求項40】
無機起源のものである、請求項39に記載の表面コーティングした物質。
【請求項41】
ガラス繊維、シリカゲル、ガラスビーズ、制御された孔のガラス(glas)、スライドガラスの群から選択される、請求項39に記載の表面コーティングした物質。
【請求項42】
有機起源のものである、請求項39に記載の表面コーティングした物質。
【請求項43】
植物起源のものである、請求項42に記載の表面コーティングした物質。
【請求項44】
根、茎、葉、花、果実、種子の植物部分の群から選択される、請求項43に記載の表面コーティングした物質。
【請求項45】
1〜200,000,000個/平方マイクロメートルに対応するO−連結の度合を有する、請求項43に記載の表面コーティングした物質。
【請求項46】
請求項39から43のいずれかに記載の表面コーティングした物質から生産した物品。
【請求項47】
防水である、請求項46に記載の物品。
【請求項48】
容器、建築材、家具、自動車産業のインテリア、食品貯蔵材料の群から選択される、請求項46から47のいずれかに記載の物品。
【請求項49】
紙製品である、請求項46から47のいずれかに記載の物品。
【請求項50】
自動車の部品およびインテリア、クレートおよび箱詰め材料、梁、板、タイル、表面コーティングなどの建築材、キャビネットなどの消費者物品、電子機器用の部品、家具、ランプ部品、コンピュータのケーシング、船の建造物、舗装、配管、航空機の部品、台所用品、ボトルおよび液体容器、食品の容器または器具である、請求項46から47のいずれかに記載の物品。
【請求項51】
請求項39から45のいずれかに記載の表面コーティングした物質を生産するための、請求項1から38のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項52】
請求項46から51のいずれかに記載の物品を生産するための、請求項38から45のいずれかに記載の表面コーティングした物質の使用。
【請求項53】
・反応器、
・試薬(複数可)用の器、
・担体ガス用の器、
・反応器、試薬(複数可)を加熱するための器、および担体ガス用の器を接続するためのチューブおよびパイプ、
・温度制御手段、
・圧力制御手段、ならびに
・ガス流速制御手段
を含む、請求項1から38のいずれかに記載の物質を表面コーティングするためのシステム。
【請求項54】
・加熱手段、
・出発物質用の容器、
・表面処理した物質用の容器、
・HClを捕捉するための容器、
・試薬および担体ガスの気相をポンピングするためのポンプ、ならびに/または
・表面処理した物質を冷却するおよび/または反応器を出て行くガスを冷却するための冷却器
をさらに含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
・前記コーティングプロセスを行う際に前記物質を撹拌するための撹拌手段、
・該物質を表面コーティングに再循環させるための再循環手段、
・反応器に未処理の(コーティングされていない)物質を供給するための供給手段
をさらに含む、請求項53から54のいずれかに記載のシステム。
【請求項56】
・1つまたは複数のマグネトロン
をさらに含む、請求項53から55のいずれかに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−512014(P2012−512014A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541091(P2011−541091)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050340
【国際公開番号】WO2010/069330
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511146082)
【Fターム(参考)】