説明

気相中での液滴重合によって、吸水性ポリマー粒子を製造する方法

本発明は、気相中での液滴重合によって、吸水性ポリマー粒子を製造する方法に関し、この場合、この方法は、重合工程後に、前記粒子を流動床中で乾燥させることから成る。さらに本発明は、吸水性ポリマー粒子、前記吸水性ポリマー粒子を含有する製品および衛生製品ならびに本発明を実施するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相中で液滴重合することにより、吸水性ポリマー粒子を製造する方法に関し、その際、ポリマー粒子を、重合後に、流動床乾燥器中で乾燥させる。さらに、本発明は、吸水性ポリマー粒子自体、この吸水性ポリマー粒子を含有する衛生製品ならびに前記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
本発明のさらなる実施態様は、特許請求の範囲、明細書及び実施例から援用されるべきものである。前記し、かつ以下にさらに説明されるべき本発明の対象の特徴は、そのつど挙げた組み合わせにおいてのみでなく、本発明の枠内を離れることなくその他の組み合わせにおいても使用可能であることが理解される。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、特定主題論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F. L. Buchholz und AT. Graham, Wiley VCH, 1998、第71頁〜第103頁中に記載されている。
【0004】
吸水性ポリマーは、水性溶液を吸収する製品として、おむつ、タンポン、生理帯及びその他の衛生用品を製造するために使用されているが、しかし、農業における保水剤としても使用されている。
【0005】
吸水性ポリマーの性質は、架橋度合いによって調整することができる。架橋度合いが高くなればなるほど、ゲル強度が増加し、かつ吸水能力は減少する。これは、荷重下吸収量(AUL)が増加するにつれて、遠心保持許容量(CRC)が減少することを意味する(架橋度合いが高くなればなるほど、荷重下吸収量がさらに減少する)。
【0006】
適用特性、例えばおむつ中での液体移送性(SFC)及び荷重下吸収量(AUL)を改善するために、吸水性ポリマー粒子は一般に後架橋される。粒子表面の架橋度合いが増加することによって、荷重下吸収量(AUL)および遠心分離許容量(CRC)は部分的に一緒に減少しうる。この後架橋は、気相中で実施することができる。しかし、好ましくは微粉砕及び篩別されたポリマー粒子(ベースポリマー)の表面を後架橋剤で被覆し、乾燥させ、そして加熱により後架橋する。このために適切な架橋剤は、親水性ポリマーのカルボキシラト基と共有結合を形成することができる少なくとも2の基を有する化合物である。
【0007】
噴霧重合によって、段階的な重合および乾燥を一緒におこなうことができる。付加的に、粒子の大きさは、適した工程によって、望ましい範囲に調整することができる。
【0008】
噴霧重合による吸水性ポリマー粒子の製造は、たとえばEP−A−0348180、WO−A−96/40427、DE−A−10314466、DE−A−10340253およびDE−A−102004024437に記載されている。
【0009】
US−5269980は、噴霧重合および液滴重合を記載している。
【0010】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子を製造するための改善された方法を提供することである。
【0011】
この課題は、気相中での液滴重合によって、吸水性ポリマー粒子を製造する方法により解決され、この場合、この方法は、ポリマー粒子を、重合後に乾燥させ、かつ選択的に凝集および/または後架橋させ、その際、乾燥を、流動床中で実施する。
【0012】
液滴重合の際に、モノマー溶液を、気相中での液滴の形成下に計量供給する。モノマー溶液の液滴は、たとえば、液滴形成プレートを用いて実施することができる。
【0013】
液滴形成プレートは、少なくとも1個の孔を有するプレートであり、その際、液体は、下方に、この孔を介して漏出する。この液滴形成プレートまたは液体は、振動を与えられ、これによって、液滴形成プレートの下部において、それぞれの孔が、理想的に単一に分散した液滴の列を生じさせる。
【0014】
孔の数および大きさは、好ましい容量および液滴の大きさによって選択される。これに関して、液滴の直径は、通常、孔の直径の1.9倍である。その際、重要であるのは、液滴形成すべき液体が、迅速に孔から生じない、いいかえれば、孔を介しての圧力損失がさほど大きくないことである。さもなければ、液体が液滴形成しないばかりか、むしろ、液体ジェットが、その高い動的エネルギーに基づいて、引きちぎられる(噴霧形成)ためである。モノマー溶液が孔を介して生じる速度は、好ましくは0.2m/sを下回り、さらに好ましくは0.1m/sを下回り、特に好ましくは0.05m/sを下回る。孔を介しての圧力損失は、好ましくは1バールを下回り、さらに好ましくは0.5バールを下回り、特に好ましくは0.3バールを下回る。
【0015】
液滴形成プレートは、通常は少なくとも1個、好ましくは少なくとも10個、特に好ましくは少なくとも50個であり、かつ通常は10000個まで、好ましくは5000まで、特に好ましくは1000個までの孔を有し、その際、孔は、通常は、液滴形成プレートに亘って、均一に分配され、好ましくは、いわゆる三角形のピッチで、すなわち、一度に3個の孔が正三角形の角を形成する。
【0016】
孔の直径は、望ましい液滴の大きさに適合させる。孔の直径は、通常は少なくとも50μm、好ましくは少なくとも75μm、特に好ましくは少なくとも100μmであり、かつ通常は1000μmまで、好ましくは600μmまで、特に好ましくは300μmまでである。
【0017】
担持プレート上に、液滴形成プレートを配置させ、その際、担持プレートも同様に孔を有することは有利である。これに関して、担持プレートの孔は、液滴形成プレートの孔よりも大きい直径を有し、かつ、液滴形成プレートのそれぞれの孔の下に、担持プレートのその集中した孔が存在する程度に配置する。この配置は、液滴形成プレートを、たとえば、他の大きさの液滴が得られる程度に簡単に変更することが可能である。液滴形成プレートおよび担持プレートからなるこのような系は、本発明の目的のための液滴形成プレートとして考慮されるべきであり、すなわち、液滴形成プレート/担持プレート系の下面が、液滴形成プレートの下面である。
【0018】
しかしながらさらに、液滴形成は、気体引き込みノズル、回転、ジェットの切断または高速作動マイクロ弁ノズルを用いて実施することができる。
【0019】
気体引き込みノズルにおいて、液体ジェットはガス流と一緒に、孔のダイアフラムを介して促進される。ガス量によって、液体ジェットの直径およびそれにより液滴直径を制御することができる。
【0020】
回転による液滴形成において、液体を回転盤の開口部を介して生じさせる。液体上に作用する遠心力によって、液滴は定められた大きさに引きちぎられる。
【0021】
しかしながらさらに、漏出する液体ジェットを、回転ナイフによって、定められたセグメントに剪断することができる。それぞれのセグメントは、引き続いて液滴を形成する。
【0022】
マイクロ弁ノズルを使用する場合には、定められた液体容量を有する液滴を直接的に生じさせる。
【0023】
ポリマー粒子は、流動床乾燥器中に移行させる際に、すなわち重合後において、20質量%を下回る、好ましくは15質量%を下回る、さらに好ましくは10質量%を下回り、特に好ましくは5質量%を下回る、残モノマー含量を示し、かつ、1〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%、特に好ましくは15〜20質量%の含水量を示す。この含水量は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨された試験方法番号430.2−02「含水率(Moisture content)」により測定する。
【0024】
本発明による方法によれば、高い荷重下吸水量および低い抽出率を有する、吸水性ポリマー粒子が得られる。特に、本発明による方法にしたがって製造された吸水性ポリマー粒子は、流動床中での乾燥後すでに、通常は後架橋によって初めて達成される、荷重吸水量を示す。
【0025】
可能である場合には、気相中での、相対的に大きい液滴の重合によって、顕著なシェルを備えた構造化されたポリマー粒子が達成される。これに関して、高いゲル強度のために考慮されたこのシェルは、コア中での低い架橋密度に基づいて、その吸収性はなおも高いままである。したがって、本発明による方法にしたがって製造された吸水性ポリマー粒子は、高い荷重吸水量を示す。機械的負荷によって、このシェルは破壊され、かつ抽出率が顕著に増加する。急速に乾燥させる場合、たとえば、反応器中の高い温度によって乾燥させる場合には、このシェルは、急速に生じる水蒸気によって引きちぎられ、かつ重合は、溶剤の欠失によりすぐに終了する。したがって、液滴重合によって得られるポリマー粒子は、注意深く後乾燥させることが重要である。
【0026】
ポリマー粒子は、好ましくは、重合からの流動体化状態で、乾燥、凝集または後架橋のうちの少なくとも1つの工程を実施する。
【0027】
特に好ましくは、吸水性ポリマー粒子は、運搬の際に、常に流動体化状態で維持される。
【0028】
凝集および後架橋は、順番にまたは同時に実施することができる。凝集および後架橋は、1つの工程において実施することが好ましい。
【0029】
重合から、乾燥、凝集または後架橋の少なくとも1つの工程への移行は、流動化状態で、何ら制限することなく実施する。
【0030】
流動化状態において、ポリマー粒子の動的エネルギーは、ポリマー粒子間の凝集または粘着ポテンシャルよりも大きい。
【0031】
流動化状態は、流動床によって達成することができる。これに関して、吸水性のポリマー粒子は、適したキャリヤーガスを用いて、上方にフローさせ、その結果、粒子が、流動床を形成する。流動床の高さは、ガス量および速度によって、すなわち、流動床の圧力損失(ガスの動的エネルギー)によって調節される。
【0032】
しかしながら、さらに流動化状態は、空気輸送によって達成することができる。これに関して、吸水性のポリマー粒子は、空気コンベヤー中で、適したキャリヤーガスによってフローする。流動化状態での輸送は、同様に、ガス量および質量によって、すなわち、ガスの動的エネルギーによって調節することができる。
【0033】
簡単かつ好ましい変法は、吸水性ポリマー粒子を、すぐ前の工程から乾燥、凝集または後架橋の少なくとも1つの工程への直接の適した接続によって、落下させることである。これに関して、流動化状態は、さらに広範囲に亘って、流量およびキャリヤーガス量によって調節することができる。通常は、自由落下する粒子が、互いに十分な間隔および十分な動的エネルギーを示し、その結果、流動化状態を生じる。
【0034】
適した接続部は、たとえば管であり、その際、管の直径および傾斜を、管の末端部の開口部が、少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも50%まで、さらに好ましくは少なくとも70%まで、特に好ましくは少なくとも90%まで、垂直に重なる程度に選択する。特に好ましくは、この接続部は、重合反応器を直接的に流動床装置と接続すること、すなわち、形式的には、長さ0の管を使用することによって製造される。
【0035】
液滴重合は、好ましくは、積層されたガス流中で実施する。積層されたガス流とは、流のそれぞれの層を混合することなく、平行に移動させるガス流である。フロー状態に関する尺度は、レイノルズ数(Re)である。臨界レイノルズ数(Reknit)が2300を下回る場合には、ガス流は積層する。積層されたガス流のレイノルズ数は、好ましくは2000を下回り、さらに好ましくは1500を下回り、特に好ましくは1000を下回る。積層不活性ガス流の下限は、静止不活性ガス雰囲気(Re=0)、すなわち、これは連続的に不活性ガスが供給されていないことである。
【0036】
好ましくは、凝集および/または後架橋を、流動化された状態中で実施する。
【0037】
凝集および/または後架橋のために、凝集助剤および/または後架橋剤を含む溶液を、吸水性ポリマー粒子上に噴霧し、かつ熱的に乾燥する。
【0038】
溶液の噴霧は、好ましくは可動混合器具を有するミキサ中で、例えばスクリューミキサ、パドルミキサ、ディスクミキサ、プローシェアミキサ及びブレードミキサ中で実施する。適したミキサは、例えばLoedige(R)ミキサ、Bepex(R)ミキサ、Nauta(R)ミキサ、Processall(R)ミキサ及びSchugi(R)ミキサである。好ましくはバーチカルミキサで実施することができる。特に好ましくは、流層装置である。
【0039】
熱的乾燥は、好ましくは接触乾燥器、特に好ましくはパドル型乾燥器、殊に好ましくはディスク型乾燥器中で実施する。好適な乾燥器は、例えばBepex(R)乾燥器及びNara(R)乾燥器である。さらに、流動床乾燥器も使用することができる。
【0040】
乾燥は、混合器自体中で、ジャケットの加熱または熱風の吹き込みによって行なうことができる。特に好ましい実施態様において、溶液を、流動床反応器中で、吸水性のポリマー粒子上に塗布し、かつ流動床反応器中で凝集および/または後架橋する。
【0041】
本発明による方法において、好ましくは使用可能なモノマー溶液は、
a)少なくとも1種のエチレン系不飽和の、酸基含有モノマー、
b)少なくとも1種の架橋剤、
c)選択的に、1種またはそれ以上のモノマーa)と共重合可能な、エチレン性および/またはアリル性の不飽和モノマーおよび
d)選択的に、1種またはそれ以上の水溶性ポリマー、この場合、これらはモノマーa)、b)および場合によってはc)に対して少なくとも部分的にグラフトされていてもよい、を含有する。
【0042】
適したモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸、又はこれらの誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルである。
【0043】
特に好ましいモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。殊に好ましくは、アクリル酸である。
【0044】
モノマーa)の酸基は、通常は部分的に中和されていてもよく、好ましくは25〜85モル%、有利には27〜80モル%、特に好ましくは27〜30モル%又は40〜75モル%中和されており、その際、慣用の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩か又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにこれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用してもよい。ナトリウム及びカリウムはアルカリ金属として特に好ましく、しかしながら殊に好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにこれらの混合物である。通常、中和は、中和剤を水溶液として、溶融物としてか又は好ましくは固体として混合導入することによって達成される。例えば、50質量%を顕著に下回る含水率を有する水酸化ナトリウムが、23℃を上回る融点を有する蝋状の塊として存在していてよい。この場合、温度を高めて個々の物質又は溶融物として計量供給することが可能である。
【0045】
このモノマーa)、特にアクリル酸は、好ましくは0.025質量%までのヒドロキノン半エーテルを含有する。好ましいヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はトコフェロールである。
【0046】
トコフェロールとしては、以下の式
【化1】

[式中、Rは水素またはメチル、Rは水素またはメチル、Rは水素またはメチルおよびRは水素または1〜20個の炭素原子を有する酸基を意味する]の化合物である。
【0047】
好ましいRの基は、アセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニル及び生理学的に許容される他のカルボン酸である。カルボン酸は、モノ−、ジ−またはトリカルボン酸であってもよい。
【0048】
好ましくは、R=R=R=メチルで示されるアルファトコフェロール、特にラセミ体アルファ−トコフェロールである。Rは、特に好ましくは水素又はアセチルである。特に好ましくは、RRR−アルファトコフェロールである。
【0049】
このモノマー溶液は、アクリル酸に対して好ましくは多くとも130質量ppm、さらに好ましくは多くとも70質量ppm、特に少なくとも10質量ppm、特に好ましくは少なくとも30質量ppm、とりわけ好ましくは約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有し、その際、アクリル酸塩はアクリル酸として考慮し算出した。例えば、このモノマー溶液の製造のために、相応のヒドロキノン半エーテル含有率を有するアクリル酸を使用することができる。
【0050】
架橋剤b)は、少なくとも2個のラジカル重合可能な基を有する化合物であり、この場合、これらは、ポリマー架橋中でラジカル共重合可能である。好適な架橋剤b)は、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、例えばEP−A−0530438に記載されているもの、ジ−及びトリアクリレート、例えばEP−A−0547847、EP−A−0559476、EP−A−0632068、WO−A−93/21237、WO−A−03/104299、WO−A−03/104300、WO−A−03/104301及びDE−A−10331450に記載されているもの、アクリレート基の他に更なるエチレン性不飽和基を含有する混合アクリレート、例えばDE−A−10331456及び10355401.7(先行するドイツ特許出願)に記載されているもの、又は架橋剤混合物、例えばDE−A−19543368、DE−A−19646484、WO−A−90/15830及びWO−A−02/32962に記載されているものである。
【0051】
適切な架橋剤b)は、特にN,N′−メチレンビスアクリルアミド及びN,N′−メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノカルボン酸又はポリカルボン酸とポリオールとのエステル、たとえばジアクリラート又はトリアクリラート、たとえばブタンジオールジアクリラート又はエチレングリコールジアクリラート、又はブタンジオールジメタクリラート又はエチレングリコールジメタクリラートならびにトリメチロールプロパントリアクリラート及びアリル化合物、たとえばアリル(メタ)アクリラート、トリアリルシアヌラート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステルならびにたとえば、EP−A−0343427中に記載されているようなビニルホスホン酸誘導体である。さらに好適な架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジ−、ペンタエリトリトールトリ−及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル及びグリセロールトリアリルエーテル、ソルビトール系のポリアリルエーテル並びにそのエトキシル化されたその誘導体である。本発明による方法の場合に、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートが使用可能であり、その際、使用されたポリエチレングリコールは300〜1000の分子量を有する。
【0052】
しかしながら、特に有利な架橋剤b)は、3〜15箇所エトキシ化されたグリセリン、3〜15箇所エトキシ化されたトリメチロールプロパン、3〜15箇所エトキシ化されたトリメチロールエタンのジ−およびトリアクリレート、特に2〜6箇所エトキシ化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、3箇所プロポキシ化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、ならびに3箇所に亘って混合してエトキシ化またはプロポキシ化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、15箇所エトキシ化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、ならびに、40箇所エトキシ化されたグリセリン、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンである。
【0053】
殊に好ましい架橋剤b)は、例えばWO−A−03/104301に記載されているような、アクリル酸又はメタクリル酸でジアクリレート又はトリアクリレートにエステル化された、複数箇所エトキシル化された及び/又はプロポキシル化されたグリセリンである。3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジ−及び/又はトリアクリラートが特に有利である。1〜5箇所エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのジアクリラート又はトリアクリラートがさらに特に有利である。3〜5箇所エトキシル化又はプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリラートが最も有利である。これは、吸水性ポリマー中の特に小さい残留物含有率(一般的には10ppm未満)を特徴とし、かつこれを用いて製造された吸水性ポリマーの水性抽出物は、同じ温度の水と比べてほとんど変わらない表面張力(一般的には少なくとも0.068N/m)を有する。
【0054】
モノマーa)と共重合可能なエチレン系不飽和モノマーc)は、たとえばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレートおよびジメチルアミノネオペンチルメタクリレートである。
【0055】
水溶性ポリマーd)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコール又はポリアクリル酸、好ましくはポリビニルアルコール及びデンプンを使用することができる。
【0056】
この反応を、不活性なキャリヤーガスの存在下で実施してよく、その際、不活性とは、このキャリヤーガスが前記モノマー溶液の成分と反応しないことを意味する。前記の不活性なキャリヤーガスは有利には窒素である。前記の不活性なキャリヤーガスの酸素含量は有利には、1容積%未満、更に有利には0.5容積%未満、特に有利には0.1容積%未満である。キャリヤーガスは、好ましくは、流動装置のために、かつ場合によっては空気輸送のために使用される。
【0057】
前記の不活性なキャリヤーガスは、自由落下する前記モノマー溶液の液滴に対して並流又は向流で反応室を通じて供給されてよく、有利には並流である。有利には、前記キャリヤーガスは導通後に少なくとも部分的に、有利には少なくとも50%まで、特に有利には75%まで、循環ガスとして前記反応室中に返送される。通常は、キャリヤーガスの部分量を、それぞれ、好ましくは10%まで、さらに好ましくは3%まで、特に好ましくは1%まで通過させる。
【0058】
このガス速度は有利には、反応器中のこの流が以下のように準備されるように調整され、例えばこの一般的な流の方向に対して対置する対流渦(Konvektionswirbel)が存在せず、かつ例えば0.02〜1.5m/s、有利には0.05〜0.4m/sを有する。
【0059】
反応室の温度は、熱誘導重合の場合には、好ましくは70〜250℃、さらに好ましくは80〜190℃、特に好ましくは90〜140℃である。
【0060】
前記モノマーa)の前記モノマー溶液中での濃度は、通常は2〜80質量%、有利には5〜70質量%、特に有利には10〜60質量%である。
【0061】
前記モノマーa)の水中での溶解性は、典型的には少なくとも1g/100g水、有利には少なくとも5g/100g水、特に有利には少なくとも25g/100g水、とりわけ有利には少なくとも50g/100g水である。
【0062】
有利な重合阻害剤は、最適な作用のために溶解した酸素を必要とする。従って、前記重合阻害剤からは重合前に、不活性化、即ち不活性ガス、有利には窒素を用いた貫流により溶解した酸素が取り除かれてよい。有利には、前記モノマー溶液の酸素含量を重合前に、1質量ppmより少なく、特に有利には0.5質量ppmより少なく低下させる。
【0063】
重合阻害剤は、さらに、たとえば活性炭上での吸着により除去することができる。
【0064】
モノマー溶液は、開始剤の存在下で重合する。
【0065】
前記開始剤を通常の量で使用し、重合すべきモノマーに対して、例えば0.001〜5質量%、有利には0.01〜1質量%の量で使用する。
【0066】
開始剤として、重合条件下でラジカルへと分解する全ての化合物が使用されてよく、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物及びいわゆるレドックス開始剤が使用されてよい。有利には、水溶性開始剤の使用である。
【0067】
適した有機過酸化物は、例えば過酸化アセチルアセトン、過酸化メチルエチルケトン、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、tert−アミルペルピバラート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルネオヘキサノアート、tert−ブチルペルイソブチラート、tert−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルイソノナノアート、tert−ブチルペルマレアート、tert−ブチルペルベンゾアート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジミリスチルペルオキシジカルボナート、ジアセチルペルオキシジカルボナート、アリルペルエステル、クミルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペル−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、過酸化アセチルシクロヘキシルスルホニル、過酸化ジラウリル、過酸化ジベンゾイル、及びtert−アミルペルネオデカノアートである。
【0068】
有利な開始剤は、アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、特に水溶性のアゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド及び2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドである。特にとりわけ有利には、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド及び2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドである。
【0069】
さらに好ましい開始剤は、他のレドックス開始剤である。レドックス開始剤は、酸化性成分として少なくとも1つの前記したペルオキソ化合物を、かつ還元性成分として例えばアスコルビン酸、グルコース、ソルボース、アンモニウム−又はアルカリ金属ヒドロゲンスルフィット、−スルフィット、−チオスルファート、−ハイポスルフィット(hyposulfit)、−ピロスルフィット、−スルフィド又はナトリウムヒドロキシメチルスルホキシラートを含有する。有利には、レドックス触媒の還元性成分としてアスコルビン酸又はピロ亜硫酸ナトリウムを使用する。重合の際に使用されるモノマーの量に対して、例えばレドックス触媒の還元性成分1×10-5〜1Mol−%を使用する。
【0070】
特に有利には、重合を高エネルギー線の作用により引き起こし、その際、通常はいわゆる光開始剤を開始剤として使用する。これに関して、前記開始剤は、例えばいわゆるα−開裂剤、H−引き抜き系(H-abstrahierende Systeme)又はアジドでもあってよい。係る開始剤のための例は、ベンゾフェノン誘導体、例えばミヒラーケトン、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、アントラキノン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベンゾインエーテル及びこれらの誘導体、アゾ化合物、例えば前記したラジカル形成剤、置換したヘキサアリールビスイミダゾール又はアシルホスフィンオキシド、特に2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(Darocure(R)1173)である。アジドのための例は、2−(N,N−ジメチルアミノ)−エチル−4−アジドシンナマート、2−(N,N−ジメチルアミノ)−エチル−4−アジドナフチルケトン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−エチル−4−アジドベンゾアート、5−アジド−1−ナフチル−2′−(N,N−ジメチルアミノ)エチルスルホン、N−(4−スルホニルアジドフェニル)マレインイミド、N−アセチル−4−スルホニルアジドアニリン、4−スルホニルアジドアニリン、4−アジドアニリン、4−アジドフェンアシルブロミド、p−アジド安息香酸、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン及び2,6−ビス−(p−アジド−ベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノンである。
【0071】
特に有利な開始剤は、アゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド及び2,2′−アゾビス[2−(5−メチル2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、及び光開始剤、例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、レドックス開始剤、例えば過硫酸ナトリウム/ヒドロキシメチルスルフィン酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム/ヒドロキシメチルスルフィン酸、過酸化水素/ヒドロキシメチルスルフィン酸、過硫酸ナトリム/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム/アスコルビン酸及び過酸化水素/アスコルビン酸、光開始剤、例えば1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、並びにこれらの混合物である。
【0072】
前記モノマー溶液のpH値は決定的ではない。しかしながら本発明によるポリマーのpH値は、この生成物の要求に相応して、前記モノマー溶液のpH値を介して所望の範囲に調整されてよい。例えば、化粧品適用のためのポリマーはpH値7を有することが望ましい。
【0073】
重合反応器の反応室は、加圧又は減圧で実施されてよく、雰囲気圧力に対して100mbarまでの減圧が有利である。
【0074】
重合速度及び乾燥速度は通常、相違する温度依存性を示す。これは例えば、この噴霧した液滴が所望の反応が達成される前に乾燥することを意味してよい。従って、反応速度及び乾燥速度に別個に影響を与えることが有利である。
【0075】
乾燥速度は、不活性ガスの水蒸気含量を介して影響を与えてよい。不活性ガスの相対的湿分は、一般には90%未満、好ましくは60%未満、特に好ましくは30%未満である。これに関して、水蒸気部分圧からの商の相対的湿分および最大水蒸気部分圧(飽和)は、与えられた温度において、100%で重複する。
【0076】
重合速度は、使用される開始剤系の種類及び量により調整されてよい。
【0077】
重合速度の制御のために有利であるのは、開始剤としてのアゾ化合物又レドックス開始剤の使用である。重合の開始挙動は、アゾ化合物又はレドックス開始剤でもって、この開始剤の選択、開始剤濃度、及び反応温度を介して、例えば純粋な過酸化物開始剤を用いるよりもより良好に制御される。
【0078】
キャリヤーガスは、目的に応じて、反応器前方で、反応温度に予め加熱する。
【0079】
特に有利には光開始剤である。光開始剤の使用の際に、乾燥速度が温度を介して所望の値に調整されてよく、その際これにより同時にラジカル形成が実質的に影響を及ぼされることはない。
【0080】
この反応排出ガス、即ち反応室から搬出されるキャリヤーガスは、例えば熱交換器中で冷却されてよい。適した熱交換器は、直接的な熱交換器、たとえばスクレーバーであり、かつ間接的な熱交換器、たとえばコンデンサーである。これに関して、水及び未反応モノマーを凝縮する。この後で、反応排出ガスを少なくとも部分的に再度加熱し直し、かつ循環ガスとして反応器中に返送してよい。有利には前記循環ガスを、この冷却した循環ガスが、反応のために所望される水蒸気の割合を有するように冷却する。反応排出ガスの一部を搬出かつ新鮮なキャリヤーガスにより置換してよく、その際、反応排出ガス中に含有される未反応モノマーを分離かつ再送してよい。
【0081】
特に有利には、一体化されたエネルギー系(Waermeverbund)であり、すなわち、排出ガスの冷却の際の排熱の一部を、循環ガスの再加熱のために使用する。
【0082】
この反応は随伴加熱(begleitbeheizen)されてよい。前記随伴加熱はこの際、この壁温度が反応器内側温度の少なくとも5℃上方にあり、かつこの反応壁での凝縮が確実に減少できるように調整される。
【0083】
反応生成物は、好ましくは流動化状態で、乾燥、凝集および/または後架橋の少なくとも1つの工程に移行させる。
【0084】
ポリマー粒子は、引き続いて乾燥させ、ならびに選択的に凝集および/または後架橋する。
【0085】
適した凝集助剤は、水および水と混合可能な有機溶剤、たとえばアルコール、テトラヒドロフランおよびアセトンであり、その際、付加的に水溶性ポリマーを使用することができる。
【0086】
このために好適な架橋剤は、ヒドロゲルのカルボキシレート基と共有結合を形成できる少なくとも2個の基を含有する化合物である。好適な化合物は、例えばアルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジ−又はポリグリシジル化合物、例えばEP−A−083022、EP−A−543303及びEP−A−937736に記載されているもの、又は二官能性又は多官能性アルコール、例えばDE−C−3314019、DE−C−3523617及びEP−A−450922中に記載されているもの、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド、例えばDE−A−10204938及びUS−A−6239230中に記載されているものである。
【0087】
更にDE−A4020780では環状炭酸塩が、DE−A19807502中では2−オキサゾリドン及びその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドンが、DE−A19807992中ではビス−及びポリ−2−オキサゾリジノンが、DE−A198545732中では2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体が、DE−A19854574中ではN−アシル−2−オキサゾリドンが、DE−A10204937中では環状尿素が、DE−A−10334584中では二環状アミドアセテートが、EP−A1199327中ではオキセタン及び環式尿素が、及びWO03/031482中ではモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が好適な後架橋剤として記載されている。
【0088】
本発明の好ましい実施態様において、積層された並流中で重合し、かつ乱流ガス流中で乾燥させる。好ましくは、重合は、光開始剤によって開始させる。液滴は、好ましくは積層の不活性ガス流中で、照射源において、重合を開始させるために通過させる。照射源は、当然のことながら、反応帯域の外側に配置する。積層の流は、モノマー液滴間の接触を回避させ、かつそれによって、制御されていない互いの付着を回避する。不活性ガス温度は、好ましくは80℃を下回り、さらに好ましくは60℃を下回り、特に好ましくは40℃を下回り、かつ通常、20℃を下回ることはない。
【0089】
通常は少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%のモノマー変換率にしたがって、水吸収性ポリマー粒子は十分に機械的に安定であり、かつ乱流のガス流中で乾燥させる。これに関して、反応器に、予加熱した不活性ガス流を添加し、その際、不活性ガス量は、乱流の不活性ガス流が生じる程度に選択する。乱流のガス流は、2300を上回る、好ましくは3000を上回る、さらに好ましくは4000を上回る、特に好ましくは5000を上回るレイノルズ数(Re)を示す。乱流の不活性ガス流は、熱輸送を改善させ、かつ乾燥を促進する。乾燥のために使用された不活性ガスは、目的に応じて、反応器前方で、70〜250℃、好ましくは90〜190℃、特に好ましくは110〜160℃の温度に予め加熱する。
【0090】
これに関して、重合の乾燥への移行は、吸水性のポリマー粒子を、上から、反応器の下部に自由落下させることにより実施する。反応器の下部において、吸水性のポリマー粒子は乾燥され、かつモノマー変換率が増加する。
【0091】
積層の不活性ガス流中の光重合と、乱流の不活性ガス流中の乾燥の組合せによって、重合および乾燥は、1個の装置中で実施することができると同時に、重合および乾燥とを引き離し、かつ個々に最適化することも可能である。
【0092】
更なる本発明の対象は、本発明にかかる方法により得られる吸水性ポリマーである。
【0093】
本発明の対象は、さらに、後架橋された吸水性液滴重合体である。気相中での液滴重合によって、特に、熱誘導重合によって、製造可能なポリマー粒子は、本質的に連続表面を有し、これは、くぼみを有していてもよい。本質的な連続表面は、液滴形成されたモノマー溶液の液滴形状によって生じる。モノマーは液滴中で、液滴表面から重合を開始し、その際、なおも軟質であり変形可能なポリマー皮膜を形成する。同時に、液滴からの水は、ここで蒸発を開始し、これによってポリマー皮膜は膨張する。これに関して、ポリマー皮膜は時に分断されてもよく、これは、連続表面における不連続性を導きうる。この膨張によって、ポリマー粒子の孔度およびこれによる最初の膨張割合が増加する。重合を継続するにつれてポリマー粒子は、ポリマーがなおも可塑性である限りにおいて、蒸発による質量損失に基づいてつぶれうる。したがって、つぶれたポリマー粒子表面は、しわになると同時に本質的に連続的である。
【0094】
液滴形成の際の相対的に大きい液滴の大きさに基づいて、この液滴は重合中に専らゆっくりと乾燥する。そのために、ポリマー粒子は、高い含水量で、かつ高いモノマー変換率で得られる。ポリマー粒子は、高い荷重吸水率および専ら少ない抽出率を示す。しかしながら、この有利な性質は、機械的負荷、たとえば、パドル型乾燥器またはプラウシェアミキサ中での後架橋によって再度破壊される。したがって、後架橋は、注意深く、たとえば流動乾燥器中で実施することが重要である。
【0095】
本発明による吸水性ポリマー粒子は、典型的には20〜80g/g、好ましくは少なくとも30g/g、特に好ましくは少なくとも40g/gの遠心保持許容量(CRC)を示す。この遠心保持許容量(CRC)は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨される試験方法番号441.2−02「遠心保持許容量(Centrifuge retention capacity)」により測定する。
【0096】
本発明による吸水性ポリマー粒子は、一般的に、少なくとも15g/g、好ましくは少なくとも20g/g、特に好ましくは少なくとも25g/gの荷重下吸収量0.7psi(4.83kPa)を有する。荷重下吸収量(AUL)は、EDANA(欧州不織布協会)により推奨される試験方法番号442.2−02「荷重下吸収量(Absorption under pressure)」により測定する。
【0097】
本発明による吸水性ポリマー粒子は、典型的には15質量%を下回り、好ましくは10質量%を下回り、特に好ましくは5質量%を下回る抽出率を示す。この抽出率は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨された試験方法番号470.2−02「抽出率(Extractables)」により測定する。
【0098】
本発明による吸水性ポリマー粒子は、典型的には15質量%を下回り、好ましくは10質量%を下回り、特に好ましくは5質量%を下回る含水率を示す。この含水率は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨された試験方法番号430.2−02「含水率(Moisture content)」により測定する。
【0099】
本発明のさらなる対象は、前記方法により製造された吸水性ポリマー粒子の使用を含む、衛生用品、特におむつの製造方法である。
【0100】
本発明の他の対象は、本発明による吸水性ポリマー粒子を、衛生製品中で、廃棄物、特に医療用廃棄物の濃縮のため、あるいは、農業における保水剤としての使用である。
【0101】
本発明のさらなる対象は、30〜100質量%、有利には60〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%、殊に好ましくは90〜100質量%の本発明にかかる吸水性ポリマー粒子からなる吸収層を含む衛生用品であり、その際、吸収層の包装は当然のことながら考慮されない。
【0102】
本発明の他の態様は、気相中の液滴重合によって、ポリマーを製造するための装置であり、この場合、この装置は、
i)1個の加熱可能な反応室、
ii)液滴形成させるための少なくとも1つの装置、この場合、この装置は、反応室i)の上部領域に存在し、
iii)選択可能な、少なくとも1つのキャリヤーガス供給装置、この場合、この装置は、好ましくは、反応室i)の上部に存在し、
iv)選択可能な、少なくとも1つのキャリヤーガス予加熱装置、
v)選択可能な、少なくとも1つのキャリヤーガス排出口、この場合、これは、好ましくは、反応室i)の下部に存在し、
vi)キャリヤーガス排出口v)からキャリヤーガス供給装置iii)に、排出したキャリヤーガスの少なくとも一部分を返送するための、選択可能な、少なくとも1つの装置、
vii)選択可能な、少なくとも1つの照射源、この場合、これは、好ましくは、反応室i)の上部に存在し、
viii)反応室i)外部の流動床装置、
ix)反応室i)から流動化状態で、流動床装置viii)に吸水性ポリマー粒子を輸送するための、選択可能な装置、
x)凝集または後架橋のための、選択可能な、少なくとも1つの装置、および
xi)前記工程から流動化状態で、凝集および/または後架橋x)に運搬するための、選択的な、少なくとも1つの装置、
を含み、その際、反応室の上部領域が、反応器室の容積の上部50%、好ましくは上部30%、特に上部10%であり、かつ反応室の下部領域が、反応器室の容積の下部50%、好ましくは下部30%、特に下部10%である。
【0103】
装置vi)は、例えば、コンプレッサー、ベンチレーター、流量測定器及び制御可能である弁を含む。コンプレッサーは、前記キャリヤーガスの圧力を高め、従ってキャリヤーガス供給装置iii)への返送を可能にする。流量測定器および弁を介して、返送されるキャリヤーガス量を調整することができる。
【0104】
この装置ix)およびxi)は、たとえば1個の流動床装置または1個の空気コンベヤーであってもよい。同様に、連続的工程を、上下に配置することも可能であり、その結果、吸水性のポリマー粒子を、すぐ前の工程から後続の工程に落下させることができる。この場合には、装置ix)またはxi)は、工程間の接続部である。
【0105】
凝集および/または後架橋のための装置は、好ましくは流動床装置である。
【0106】
好ましい実施態様は、図1に表されている。図中、以下の意味を示す:
A:液滴形成反応器
B:一体化された流層床装置
C:サイクロン
1:装入口
2:キャリヤーガス(反応のための)
3:キャリヤーガス(流動床のための)
4:凝集助剤/後架橋剤
5:排出ガスおよび粉塵
6:粉塵返送
7:排出ガス
8:生成物搬出口
【0107】
図1は、反応室i)および流動床viii)を上下に配置する。流動床装置中で、付加的に凝集および/または後架橋することができる。キャリヤーガスと一緒に連行された粉塵部分を、サイクロン中に回収し、かつ返送する。
【0108】
好ましい実施態様は、図2に表されている。図中、番号は、上記意味を示し、その際、Bは、流動床カスケードである。
【0109】
図2において、運搬装置xi)は、流動床装置である。越流ぜき(Ueberlaufwehre)を介して、吸水性ポリマー粒子は、第2および第3の流動床装置に達する。第2および第3の流動床装置は、凝集および/または後架橋x)のための装置である。せき(wehre)の高さによって滞留時間を調整することができる。好ましくは、順に接続された流動床装置を、異なる温度に調整し、その際、温度は、別個に、流動床中で達成すべき課題に適合させる。
【0110】
図2では、吸水性ポリマー粒子と凝集助剤および/または後架橋剤との混合と、熱的後処理とを、別個にしている。当然のことながら、さらに双方の工程を、1つの流層床装置中で実施することもできる。
【0111】
図1および図2に例証するように、本発明による方法は、簡単な方法で、粉塵部分を返送することが可能である。
【0112】
本発明の他の態様は、液滴重合によってポリマーを製造するための装置であり、この場合、この装置は、
i)反応室、
ii)液滴形成のための少なくとも1つの装置、この場合、この装置は、反応室i)の上部領域に存在し、
iii)選択的に、少なくとも1つのキャリヤーガス供給装置、この場合、この装置は、反応室i)の上部に存在し、
iv)選択的に、少なくとも1つのキャリヤーガス供給装置、この場合、この装置は、反応室i)の上部と下部との間に存在し、
v)キャリヤーガス供給装置iv)のための、選択的に、少なくとも1つのキャリヤーガス加熱装置、
vi)選択的に、少なくとも1つのキャリヤーガス排出口、この場合、これは、好ましくは反応室i)の下部に存在し、
vii)キャリヤーガス排出口vi)から排出されたキャリヤーガスの少なくとも1部分を、キャリヤーガス供給装置iii)および/またはキャリヤーガス供給装置iv)に返送するための、選択的に、少なくとも1つの装置、
viii)反応室i)の上部の少なくとも1つの照射源、
ix)選択的に、少なくとも1つの凝集および/または後架橋のための装置、および
x)選択的に、反応室i)から、凝集および/または後架橋iv)に、流動化状態で、吸水性ポリマー粒子を運搬するための、少なくとも1つの装置、
を含み、その際、反応室の上部領域が、反応室容積の上部50%、好ましくは上部30%、特に上部10%であり、かつ反応室の下部領域が、反応室容積の下部50%、好ましくは下部30%、特に好ましくは下部10%である。
【0113】
好ましい実施態様は、図3に表されている。図中、数は、以下の意味を示す:
A:上部反応室
B:下部反応室
1:照射源
2:液滴生成器
【0114】
図3では、モノマー溶液から、好ましくは、反応室の上部末端において液滴形成によって液滴を生じさせる。この液滴は、上部反応室を介して自由に落下し、その際、重合は、適した照射源によって開始する。適した照射源は、たとえばUV線、IR線、レントゲン線、電子線である。上部において、重合の主要部が実施される。ガス流は、積層であり、すなわち、液滴は流動しない。下部反応室において、予加熱されたキャリヤーガスを通過させ、この場合、このガス流は、下部反応室中で乱流である。下部反応室において、後反応および乾燥を実施する。
【0115】
図1〜3において示された実施態様は、液滴重合のための本発明による装置の例であるに過ぎず、本発明による技術的教示を、いくつかの方法に限定するものではない。
【0116】
後架橋の質を測定するために、乾燥させた吸水性ポリマーを、以下に記載する試験法で試験した。
【0117】
方法:
この測定は、別に記載がない限り、23±2℃の周囲温度及び50±10%の相対空気湿分率で実施する。吸水性ポリマーを測定前に十分に混合する。
【0118】
含水量(Moisture content)
この吸水性ポリマーの含水率は、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号430.2−02「含水率(Moisture content)」により測定する。
【0119】
遠心保持許容量(CRC Centrifuge Retention Capacity)
この吸水性ポリマー粒子の遠心保持許容量は、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号441.2−02「遠心保持許容量(Centrifuge retention capasity)」により測定する。
【0120】
荷重下吸収量(AUL Absorbency Under Load)
荷重下吸収量(AUL)は、EDANA(欧州不織布協会)により推奨される試験方法番号442.2−02「荷重下吸収量(Absorption under pressure)」により測定する。
【0121】
抽出率(Extractables)
この吸水性ポリマー粒子の抽出率は、EDANA(欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association))により推奨された試験方法番号470.2−02「抽出率(Extractables)」により測定する。
【0122】
これらのEDANA−試験法は、例えば、欧州不織布協会、ユージーンプラスキー通り157、B1030、ブリュッセル、ベルギー(European Disposables and Nonwovens Association, Avenue Eugene Plasky 157, B-1030 Bruessel, Belgien)により得られる。
【0123】
実施例
例1
12kgのナトリウムアクリレート(水中、37.5質量%濃度の溶液)および1.1kgのアクリル酸を、3kgの水および9gの15箇所エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレートと一緒に混合した。この溶液を、開始剤の添加後に、加熱された、窒素雰囲気で充填された液滴生成塔中に滴加した(170℃、12m高さ、2m幅、ガス速度0.1m/s、並流で)中で滴下した。供給速度は、16kg/hであった。液滴形成プレートは、37個の孔を、孔径170μmで有していた。液滴形成プレートの直径は65mmであった。開始剤として、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドおよび2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドを使用した。開始剤の濃度は、モノマーに対してそれぞれ0.2質量%であった。開始剤のモノマー溶液への混合は、液滴生成器のすぐ上流のスタティックミキサを介して、2%水溶液の形で、開始剤を用いておこなった。
【0124】
液滴生成塔の底部において回収された吸水性ポリマー粒子は、16.5質量%の含水量を有していた。
【0125】
ポリマー粒子は、2時間に亘って、80℃で、流動床乾燥器中で乾燥させた。
【0126】
乾燥した吸水性ポリマー粒子は、以下の性質を有する:
CRC: 56.5g/g
AUL0.3psi 20.5g/g
抽出率 10.6質量%
含水率 3.5質量%
【0127】
例2(比較)
例1を反復した。液滴生成塔の底部において回収する吸水性ポリマー粒子を、プラウシェアミキサー中で乾燥させた。
【0128】
乾燥した、吸水性ポリマー粒子は、以下の性質を有する:
CRC: 52.7g/g
AUL0.3psi 14.4g/g
抽出率 14.6質量%
含水率 3.7質量%
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明による好ましい実施態様を示す図
【図2】本発明による好ましい実施態様を示す図
【図3】本発明による好ましい実施態様を示す図
【符号の説明】
【0130】
1 装入口、 2 キャリヤーガス(反応のための)、 3 キャリヤーガス(流動床のための)、 4 凝集助剤/後架橋剤、 5 排出ガスおよび粉塵、 6 粉塵返送、 7 排出ガス、 8 生成物搬出口、 A 液滴形成反応器、 B 一体化された流層床装置、 C サイクロン、 B 流動床カスケード(図2のみ)、 1 照射源(図3のみ)、 2 液滴生成器(図3のみ)、 A 上部反応室(図3のみ)、 B 下部反応室(図3のみ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相中での液滴重合によって、吸水性ポリマー粒子を製造する方法において、重合後にポリマー粒子を乾燥させ、かつ選択的に凝集および/または後架橋させ、その際、乾燥を、流動床中で実施することを特徴とする、気相中での液滴重合によって、吸水性ポリマー粒子を製造する方法。
【請求項2】
ポリマー粒子を、流動化状態で、重合から、乾燥、凝集および後架橋の工程のうちの少なくとも1つに移行させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動化状態を、流動床によって生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
流動化状態を、空気輸送によって生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
流動化状態を、自由落下によって生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー粒子が、凝集および/または後架橋中で、流動化状態で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
流動床中で、凝集および/または後架橋を実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
重合を、光開始剤によって生じさせる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
重合を、80℃を下回るガス温度で、少なくとも50%のモノマー変換率になるまで実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか1項に記載の方法により得られる、吸水性ポリマー粒子。
【請求項11】
吸水性液滴重合体。
【請求項12】
請求項10または11に記載の吸水性ポリマー粒子を含有する、衛生用品。
【請求項13】
ポリマー粒子を、重合後に乾燥させ、かつ選択的に凝集および/または後架橋する、液滴重合によって吸水性ポリマー粒子を製造する装置において、乾燥のための装置が、流動床装置であることを特徴とする、液滴重合によって吸水性ポリマー粒子を製造する装置。
【請求項14】
装置が、重合と、乾燥、凝集または後架橋の工程のうちの少なくとも1つとの接続部を有し、その接続部中で、ポリマー粒子を流動化状態で運搬することができる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
接続部が、流動床装置である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
接続部が、空気コンベヤーである、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
接続部が、管であり、その際、管の直径および傾斜を、開口部が、管の末端部で、少なくとも部分的に垂直に重なるよう選択する、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
凝集および/または後架橋を、流動床装置中で実施する、請求項13から17までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
反応室の上部領域において、少なくとも1つの照射源を含む、乾燥した吸水性ポリマー粒子を製造する装置において、装置が、反応室の上部と下部との間に、少なくとも1つのキャリヤーガス供給口を有することを特徴とする、乾燥した吸水性ポリマー粒子を製造する装置。
【請求項20】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法によって製造された、後架橋された吸水性ポリマー粒子の、衛生製品中で、廃棄物の濃縮のため、あるいは、農業における水保持剤としての使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−528748(P2008−528748A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552637(P2007−552637)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050419
【国際公開番号】WO2006/079631
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】