説明

気相反応器におけるシーティングを制御するための方法

本発明の実施形態は、気相反応器重合における静電気を測定及び制御することに関する。特に、実施形態は、チャンキング及びシーティング等の反応器不連続イベントの始まりを特定するため、気相重合中、同伴域におけるキャリーオーバー静電気を監視することに関する。実施形態はまた、反応器の静電気活動を最小にし、これにより不連続イベントを防止する連続添加剤の有効添加の必要性を決定するためにキャリーオーバー静電気を監視することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の具現は、気相重合反応器における静電気を測定及び制御することに関する。特に、本発明の具現は、例えばチャンキング((塊化)chunking)及びシーティング((シート化もしくはシート形成)sheeting)等の反応器の不連続イベントの始まりを求めるため、一般にメタロセン触媒を利用する重合において、気相重合反応器全体における新規な位置のキャリーオーバー静電気を監視することに関する。本発明の具現はまた、反応器静電気活動、特にキャリーオーバー静電気を最小にする連続(導通)添加剤の有効量の添加の必要性を決定するため、それらの新規な位置におけるキャリーオーバー静電気を監視すること、及び、これにより、そのような不連続イベントを防ぐか、もしくは最小にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
シーティング及びチャンキングは、長年、商業的気相ポリオレフィン生産反応における問題であった。該問題は、反応器の壁上における重合体の固体塊の形成によって特徴付けられる。これらの固体塊すなわち固体重合体(当該(複数)シート)は、結局、該壁から取り去られるようになり、反応区域へと落下し、ここで、これらは、流動化に干渉し、製品放出口を塞ぎ、かつ、通常、反応器を洗浄のために運転停止に追いやる。これらのいずれもが、「不連続イベント(discontinuity event)」と称され得、これは、一般に、重合反応器の連続的運転の中断である。用語「シーティング、チャンキング、及び/又はファウリング(汚染)(fouling)」は、本明細書中で同意語として用いられるが、同様の問題の異なる現れを記述し得、各ケースにおいて、それらは反応器不連続イベントに至り得る。
【0003】
気相反応器に生じるシーティングの少なくとも二つの別個の形態が存在する。該二つの形態(もしくは種類)は、それらが反応器のどこに形成されるかにより、壁シートもしくはドームシートと称される。壁シートは、反応器の壁(一般に垂直区域)上に形成される。ドームシートは、ドームの円錐区域において、すなわち反応器の上部における半球形頭部において(図1)、反応器内の非常に高位に形成される。
【0004】
チーグラー−ナッタ触媒によりシーティングが生じる場合、これは、一般に、反応器の下方区域に発生し、壁シーティングと称される。チーグラー−ナッタ触媒は、ドームシートを形成することができるが、その発生は希である。しかし、メタロセン触媒では、シーティングは、いずれかの位置もしくは両方の位置に生じ得る。すなわち、壁シーティング及びドームシーティングの両方が発生する。
【0005】
ドームシーティングは、メタロセン触媒系について特にやっかいとなっている。典型的なメタロセン化合物は、元素周期表の4族、5族もしくは6族から選択された遷移金属又はランタニド及びアクチニド系列との組合せにおいて、遷移金属原子結合することができる一つもしくは複数の配位子、通常、シクロペンタジエニル誘導配位子もしくは部分を含むものとして一般に記述される。
【0006】
メタロセン触媒によるシーティングを制御することを困難にする一つの特性は、それらの予測できない静電気(を帯びる)傾向である。例えば、EP 0 811 638 A2号は、長期間の安定した挙動後に現れ得る突然の突飛な静電荷挙動を示すものとしてメタロセン触媒を記述している。
【0007】
メタロセン触媒の使用に関連する反応器不連続問題の結果として、改善した操作性をもたらと言われる種々の技術が開発されている。例えば、ファウリングの傾向が低減しかつより優れた操作性を有するメタロセン触媒系を製造するための種々の支援手順もしくは支援方法が、米国特許第5,283,218号で論じられている。該特許は、メタロセン触媒のプレ重合を開示する。米国特許第5,332,706号及び同第5,473,028号は、「初期含浸(incipient impregnation)」によって触媒を形成するための特定の技術を開示する。米国特許第5,427,991号及び同第5,643,847号は、担体に対する非配位アニオン活性剤の化学結合を開示する。米国特許第5,492,975号は、高分子結合メタロセン触媒系を開示する。米国特許第5,661,095号は、オレフィン及び不飽和シランの共重合体においてメタロセン触媒を担持することを開示する。PCT公開WO97/06186号は、メタロセン触媒自体の形成後に無機及び有機不純物を除去することを開示する。WO97/15602号は、容易に担持できる金属錯体を開示する。WO97/27224号は、少なくとも一つの末端二重結合を有する不飽和有機化合物の存在下で担持遷移金属化合物を形成することを開示する。
【0008】
他のものは、メタロセン触媒及び慣用のチーグラー−ナッタ触媒を伴う反応器の連続性を改善するための異なる工程変更を論じている。例えば、WO97/14721号は、不活性炭化水素を反応器に加えることにより、シーティングを引き起こし得る微粉の抑圧を開示する。米国特許第5,627,243号は、流動床気相反応器で使用するための分配板を開示する。WO96/08520号は、反応器への捕捉剤の導入を回避することを開示する。米国特許第5,461,123号は、シーティングを減らすために音波を使用することを開示する。米国特許第5,066,736号及びEP−Al 0 549 252号は、凝集塊を低減するための反応器への活性抑制剤の導入を開示する。米国特許第5,610,244号は、ファウリングを回避し、重合体品質を改善するため、床上方の反応器内へと補給モノマー(補給単量体)を直接供給することを開示する。米国特許第5,126,414号は、分配板ファウリングを減らし、ゲルの無い重合体を提供するため、オリゴマー除去システムを含むことを開示している。重合設備のコーティング、特に始動時における重合速度の制御、反応器設計の再構成、及び反応器への種々の作用剤の注入を含む、操作性を改善するための他の種々の既知の方法が存在する。
【0009】
種々の作用剤を反応器内に注入することに関して、プロセス「連続(性)(もしくは導通)添加剤」としての静電(帯電)防止剤の使用は期待できると思われ、種々の刊行物の主題であった。例えば、EP 0 453 116 Al号は、シート及び凝集塊の量を低減するための、反応器への静電防止剤の導入を開示する。米国特許第4,012,574号は、ファウリングを低減するため、ペルフルオロカーボン基を有する表面活性化合物を反応器に添加することを開示する。WO96/11961号は、担持触媒系の構成要素としての、気体、スラリー又は液体プール重合プロセスにおいてファウリング及びシーティングを減らすための静電防止剤を開示する。米国特許第5,034,480号及び同第5,034,481号は、超高分子量エチレン重合体を生産する、静電防止剤と慣用のチーグラー−ナッタチタン触媒との反応生成物を開示する。例えば、WO97/46599号は、立体規則性重合体をするための、重合反応器内の希薄域へと供給される可溶性メタロセン触媒を利用する、気相プロセスにおける可溶性メタロセン触媒の使用を開示する。WO97/46599号はまた、触媒供給流れ(feedstream)が、ATMER(登録商標)163(メリーランド州ボルチモア所在のICI Specialty Chemicalsから市販される)等の防汚剤もしくは静電防止剤を含み得る点を開示する。
【0010】
米国特許第5,410,002号は、慣用のチーグラー−ナッタチタン/マグネシウム担持触媒系の使用を開示し、該システムにおいて、選択された静電防止剤が、ファウリングを減らすために反応器に直接加えられる。静電防止剤の量は、重合体もしくは形成されている重合体の粒度分析の分布に応じるものとして記述され、また、静電防止剤の一例は、ATMER163であるが、静電防止剤の量を動的に調整もしくは最適化するための方法は全く開示されていない。
【0011】
米国特許第4,978,722号は、プロピレン−アルファオレフィンブロック共重合体を製造するための方法を開示し、該共重合体において、芳香族カルボン酸エステル、リン酸エステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、第3アミン、及びアミドからなる群から選択された一成分が重合反応器の気相に加えられ、これにより、低分子量重合体の形成は抑制され、反応器の壁への重合体の付着が防止される。しかし、米国特許第4,978,722号には、静電気活動を測定する点の言及はなく、付着を防止するために加えられる化合物のレベルを最適化する方法のいかなる言及もない。
【0012】
米国特許第5,026,795号は、気相重合反応器における重合域へ、液体担体と共に静電防止剤を添加することを開示する。好ましくは、静電防止剤は、希釈剤と混合され、コモノマーからなる担体によって反応器内に導入される。開示される好ましい静電防止剤は、Octel Starreonによって商標STADIS(登録商標)450の下で市販される混合物であり、また、該混合物は、ポリスルホン、高分子ポリアミン、スルホン酸、及びトルエンを含む。静電防止剤の量は、非常に重要であると開示されている。特に、反応器壁への重合体の付着を避けるために十分な静電防止剤が存在しなければならないが、触媒の作用が損なわれる程ではない。米国特許第5,026,795号はまた、好ましい静電防止剤の量が、生成した重合体の約0.2〜5重量ppm(ppmw)の範囲である点を開示する。しかしながら、測定可能な反応器状態に基づく、静電防止剤のレベルを最適化するための方法は全く開示されない。
【0013】
上述したEP 0 811 638 A2号は、静電防止剤の存在下での重合プロセスにおけるメタロセン触媒及び活性化共触媒の使用を開示し、また、ATMER163の使用をも開示する。EP 0 811 638 A2号はまた、静電防止剤を導入するための種々の方法を開示し、最も好ましくは、静電防止剤は、反応器の流動床内へとスプレーされる。一般的に開示される別の方法は、担持触媒流れもしくは液体触媒流れと共に静電防止剤を、該触媒が静電防止剤によってひどく悪影響を受けるかもしくは触媒作用が損なわれない限り、添加することである。EP 0 811 638 A2号は、次の実施例を含む。すなわち、該実施例では、担持触媒が反応器に導入される前に鉱油に懸濁され(スラリーにされ)、また、非担持触媒を使用する場合、静電防止剤が反応器に直接導入される。静電気は、分配板の上方数(2、3)フィートの流動床自体において測定される。好ましくは、静電防止剤は、静電気の上昇レベル等の変化に応じて間欠的に加えられる。
【0014】
メタロセン触媒についてのシーティング問題を処理する種々の方法が開発され、また、連続添加剤の使用が研究されてきたが、該問題は存続している。該問題が続いている一つの理由は、連続添加剤の使用が、触媒効率及び触媒生産性の低下を伴い得る点である。触媒効率及び触媒生産性の低下は、添加剤注入が、反応器静電気の一時的な実例を阻止する頻度及び/又は量に対して正確に合致しない場合に生じ、これは、望ましくない「反応器不連続イベント」の前兆となり得る。
【0015】
メタロセン触媒についてシーティン問題が持続する別の理由(及び、おそらく該問題の根本的原因)は、そのようなイベントの高度な警告の欠如にある(注意:上記[0006]欄のEP 0 811 638 A2号)。メタロセン触媒によるほとんどのシーティング事象(シーティングインシデント)は、従前使用されている慣用の静電プローブを含む、以前より知られているか及び/又は使用されているプロセス器具のいずれかによる高度な表示をほとんどもしくは全く伴わずに起こっていた。(慣用の静電プローブは、本明細書中及び米国特許第4,855,370号に記述されるように、分配板の上面から反応器直径の1/4〜3/4上方に配置される。)事前に利用でき測定できる指標による慣用器具についてのこの表示の欠如は、メタロセン触媒反応についてのシーティング問題(及び、その結果生じる反応器不連続性)を解決して正すため、著しい挑戦を示してきた。
【0016】
反応器シーティングの最初の記述の一つは、米国特許第4,532,311号に与えらている。この特許は、チーグラー−ナッタ触媒によるシーティングは、流動床の静電帯電の結果であるという重要な発見をいち早く記述した。(明確でない限り、該教示を特徴付けることが良い考えであるかどうかは不明である。)その後の米国特許第4,855,370号は、上記第4,532,311号文献の静電プローブと、反応器における静電気のレベルを制御する方法とを組み合わせた。米国特許第4,855,370号の場合、静電気を制御する方法は、反応器への水添加であった(エチレン供給の1〜10ppmの量で)。このプロセスは、チーグラー−ナッタ触媒には有効であることが判明したが、メタロセン触媒反応もしくは反応器には有効ではなかった。
【0017】
メタロセン触媒によるシーティングの原因を理解することは、長年、適切な器具類の欠如によって妨げられてきた。特に、チーグラー−ナッタ触媒に使用される静電プローブ(上述したような、反応器壁に配置されるいわゆる慣用静電プローブ)は、メタロセン触媒反応及びそのような反応を利用する反応器におけるシーティングもしくはチャンキングの警告もしくは通知を準備するには有効ではなかった。メタロセン触媒による壁及びドームシーティングは、通常、慣用反応器静電プローブにおける事前の(又は同時に起こる)兆候を全く伴わずに生じる。これは、図7に見ることができ、該図は、反応を示す(すなわち、ゼロを上回る静電気)他の静電プローブ位置と比較して、メタロセン触媒による壁シーティング事象の前にパイロットプラントにおける(慣用)反応器静電プローブにおいて実質上反応が無いことを示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、高い反応器操作性(反応器不連続イベントに至り得るシーティングもしくは塊が全体的に無いことによって定義される)で連続的に操作可能な、メタロセン触媒を利用する重合方法を得ることが有利であろう。反応器システム(反応器系)の(複数)地点での静電気活動等の容易に測定可能な反応器状態に基づく、より安定した触媒生産性及び低減したファウリング/シーティング傾向を有する連続操作重合法を得ることがまた非常に有利であろう。この必要性は、本発明の実施形態が対応する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
我々の発明の企図される実施形態において、反応器不連続イベントを回避しもしくは最小にするため、重合中に発生する静電気を監視するための方法は、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブもしくは少なくとも一つの環状ディスクプローブのうちの一つもしくは複数を用いてキャリーオーバー静電気を測定する工程を含む。
【0020】
更なる実施形態は、少なくとも一つの連続添加剤を、少なくとも一つのオレフィンの重合反応によって生成されるポリマーのシーティングを防止もしくは後退される量で反応器システム内に導入する方法を含む。ここで、重合反応は、反応器システム内で行われ、反応器システムは、流動床反応器と、同伴域と、前記ポリマーを生産可能な触媒系を導入するための触媒供給物と、該触媒混合物とは無関係に(独立に)前記少なくとも一つの連続添加剤を導入するための連続添加剤供給物と、同伴域における静電気活動のレベルを監視するための手段とを備えている。当該方法は、前記少なくとも一つのオレフィンを、流動床反応器内において重合条件(重合状態)下で触媒系に接触させる工程と、重合反応の前、その間もしくはその後の何時でも反応器システム内に連続添加剤を導入する工程と、同伴域における静電気活動のレベルを監視する工程と、同伴域における静電気活動のレベルをゼロもしくはゼロ付近に維持するため、反応器システムに導入される連続添加剤の量を調整する工程とを含む。そのような方法において、触媒系は、メタロセン触媒もしくは慣用の遷移金属触媒からなる。該方法は、気相プロセス(気相法)であり得る。また、前記ポリマーは連続的に導入され得る。モノマーは、エチレン、又は、エチレン及び一つもしくは複数のアルファ−オレフィンからなる。該方法において、触媒系はメタロセン触媒系からなり、同伴域における静電気活動のレベルを監視するための手段は、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスクプローブ、少なくとも一つの分配板静電プローブ、もしくは少なくとも一つの上方反応器静電プローブのうちの一つもしくは複数を含む。前記少なくとも一つの連続添加剤は、アルコキシル化アミン、カルボン酸塩、ポリスルホン、高分子ポリアミン、スルホン酸、もしくはこれらの組合せからなる群から選択される一つもしくは複数の化合物からなる。又は、前記少なくとも一つの連続添加剤はエトキシル化ステアリルアミンからなる。又は、前記少なくとも一つの連続添加剤はステアリン酸アルミニウムからなる。又は、前記少なくとも一つの連続添加剤はオレイン酸アルミニウムからなる。又は、前記少なくとも一つの連続添加剤は混合物からなり、該混合物は、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する1デセン−ポリスルホンと、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する、N−牛脂−1,3−ジアミノプロパンとエピクロロヒドリンの反応生成物と、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在するドデシルベンゼンスルホン酸と、該混合物の60〜88重量%の濃度で存在する炭化水素溶剤とからなる。前記少なくとも一つの連続添加剤は間欠的に導入され、及び/又は、前記少なくとも一つの連続添加剤は、炭化水素液中のスラリーとして、もしくは炭化水素液中の溶剤として導入される。前記少なくとも一つの連続添加剤は、触媒供給物によって反応器システムに導入される触媒混合物中にも存在し得る。流動床反応器内の前記少なくとも一つの連続添加剤の量は、流動床反応器内に生産されるポリマーの重量ベースの1〜50重量百万分率(1〜50ppmw)の濃度に維持される。
【0021】
更なる実施形態は、重合プロセスを含み、該重合プロセスは、気相反応器内において、エチレン及び一つもしくは複数のアルファオレフィンを、一つもしくは複数のメタロセン触媒の存在下で重合させる工程と、監視手段により気相反応器内の静電気活動を監視する工程と、ゼロもしくはゼロ付近からそれた(逸脱したもしくは偏位した)静電気活動を測定している監視手段に応答して、有静電気活動をゼロもしくはゼロ付近に戻すため、有効量の一つもしくは複数の連続添加剤を当該重合プロセスに適用する工程とを含む。
【0022】
企図される別の実施形態は、気相反応器の同伴域において発生した静電気活動が低減もしくは除去される気相重合プロセスである。該気相重合プロセスは、メタロセン触媒系の存在下でエチレン及び一つもしくは複数のα−オレフィを重合させる工程と、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの上方床静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスク静電プローブ、もしくは少なくとも一つの分配板静電プローブのうちの一つもしくは複数を用いて、同伴域静電気活動を測定する工程とを含む。ただし、任意の一つもしくは複数のプローブによって測定された静電気活動がゼロから偏位(逸脱)した場合、一つもしくは複数の連続添加剤が、該ゼロからの偏位を低減もしくは除去するのに有効な量で気相反応器に加えられる。
【0023】
企図される別の実施形態は、気相重合プロセスであり、該プロセスは、メタロセン触媒系の存在下で気相反応器内においてエチレン及び一つもしくは複数のα−オレフィンを重合させる工程と、反応器内における静電気活動を監視する工程とを含む。該監視には、少なくとも一つの慣用静電プローブ、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの上方床静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスク静電プローブ、少なくとも一つの分配板静電プローブ、もしくはこれらの組合せのうちの一つもしくは複数が含まれる。ここで、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの上方床静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスク静電プローブ、もしくは少なくとも一つの分配板静電プローブのうちの少なくとも一つによって測定される静電気活動は、慣用の(従来の)静電プローブによって測定される静電気活動とは異なり、±0.5ナノアンプ/cm2よりも大きい。
【0024】
企図される別の実施形態は、気相反応器において、メタロセン触媒、活性剤及び担体を用いてエチレン及び一つもしくは複数のα−オレフィンを共重合させるためのプロセスである。該プロセスは、メタロセン触媒、活性剤及び担体の存在下でエチレン及び一つもしくは複数の1−ブテン、1−ヘキセン、もしくは1−オクテンを組み合わせる工程と、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの上方床静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスク静電プローブ、もしくは少なくとも一つの分配板静電プローブのうちの一つもしくは複数により、反応器内のキャリーオーバー静電気を監視する工程と、少なくとも一つの連続添加剤によってキャリーオーバー静電気をゼロもしくはゼロ付近に維持する工程とを含む。該連続添加剤は、アルコキシル化アミン、カルボン酸塩、ポリスルホン、高分子ポリアミン、スルホン酸、もしくはこれらの組合せのうちの一つもしくは複数から選択される。該少なくとも一つの連続添加剤は、重合によって生産されるポリマーの10〜40ppmwで反応器内に存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
驚くべきことに、我々は、重合反応器において実際に測定される静電気活動(電流/単位面積が実際に測定される)の位置を変えることにより、反応器不連続イベント、例えば、特にメタロセン触媒による(該触媒を用いる)重合では、シーティングもしくはチャンキング等の始まりを検出でき、従って、これを防ぐことができることを発見をした。あるいは、我々は、本明細書中でシーティング、チャンキングもしくはファウリングと定義される反応器不連続イベントを安定させるか又は取り除くことができる。特に、我々は、気相重合の場合、壁及び反応器リサイクルシステムにおける他の構成要素に対する同伴触媒粒子及び/又は同伴樹脂粒子(従来から理解されているように、同伴粒子により、我々は、反応器の高濃度(相)域に含まれていない粒子、従って流動床の外部にある粒子を意図する。)の摩擦接触から著しい静電気帯電がもたらされることを発見した。我々は、この静電気を「キャリーオーバー静電気(キャリーオーバー static)」と名付けた。メタロセン触媒の場合に知られている根強い問題(ここで、シーティング及びチャンキングが、慣用反応器静電プローブによって予言されることは知られていなかった。)は、本発明の実施形態におけるキャリーオーバー静電気の発見及び測定により今解決される。このキャリーオーバー静電気は、本明細書中に述べる(複数)位置において監視され得、また、慣用の手段もしくは技術を用いて制御され得る。これは、次いで、シーティング、チャンキングもしくはファウリングを低減し、防止し、もしくは除去する。
【0026】
固体粒子の摩擦帯電(もしくはトライボ帯電)は、文献において良く知られている。一般に、静電気帯電は、二つの異なる物質が密接状態にされる時にはいつでも生じる。該異なる物質は、二つの異なる金属(導体)、二つの異なる絶縁体(典型例は、琥珀棒に対するウールである)、又は、導体と絶縁体であり得る。気相重合反応器の場合、静電気帯電は、反応器壁の炭素鋼(導体)に対するポリエチレン樹脂及び触媒粒子(両方とも絶縁体)の摩擦接触から生じる。
【0027】
摩擦帯電に対する基本的な推進力は、二つの物質の、電子に対する親和力の違いである。より大きい親和力を有する物質が電子を獲得して負に帯電する。また、他方の物質は、電子を失い、正に帯電する。重合反応器の壁、管もしくは他の金属部分との固体粒子の衝突において、移動する電荷量は、当該金属及び粒子の電気的性質、接触の程度、表面粗さ及び他の要因に依存する。空気輸送の分野の研究は、固体粒子の摩擦帯電はまた、輸送ガスの速度に影響されやすいことを示している。
【0028】
生じた電荷量はまた、固体粒子と接触する反応器の壁もしくは他の金属部分の表面に存在し得るいかなる汚れにも影響されやすい。帯電は、反応器の内側面に存在し得るどのような樹脂コーティングの特性にも非常に左右される。一般に、静電気帯電は、壁が高電気抵抗のポリエチレンで(望ましくは)被覆される場合、低減する。
【0029】
重合反応器システムにおける静電気活動は、ポリマーによる反応器のポリマーシートの形成及び/又はファウリング、及び結果として生じる重合体生産の低減もしくは中断に対して(不連続イベント)相互に関連付けられ得る。この静電気活動の検出及び議論は、一般に、反応器の流動床部分、すなわち床の高濃度部分、一般に、分配板上方で反応器直径のほぼ3/4までの分配板上間隔、あるいは分配板上方で反応器直径のほぼ1/4〜3/4に制限されてきた。しかしながら、気相反応におけるメタロセン触媒では、既知の静電プローブは、反応器不連続イベントの予測にとってしばしば有益ではない。往々にして、メタロセン触媒反応において、慣用の静電プローブは、シーティングイベント中(シート形成が生じている場合)でさえ、静電気活動をほとんどもしくは全く示さない。特に、反応器の同伴域内の一つもしくは複数の静電プローブが、反応器不連続イベントの予測であると我々が今知っている静電気活動を示すのに対し、慣用の静電プローブは、しばしば静電気活動をほとんどもしくは全く示さない。これらの問題はまた、重合体生産プロセス過程中おいて時間と共に変化することが知られている。本発明の実施形態において、静電気帯電を監視する機能(能力)、及び、静電荷を検出するのに従来使用されていなかった、反応器の同伴域において静電気帯電を監視する機能は、使用される連続添加剤の量を劇的に調整することを可能にする。すなわち、連続添加剤の量は、一つもしくは複数の従来なかった同伴域静電プローブによって検出される、反応器システムにおける静電気活動のレベルに基づいて調整される。用語「静電気活動」、「静電気帯電」及び「静電気」は、本明細書中で同義的に使用される。同伴域における静電気活動が記述される場合、これはまた「キャリーオーバー静電気」によっても表される。
【0030】
同伴域は、反応器システムの高濃度(相)(濃密相(dense phase))域の上方又は下方の、反応器システムにおけるどのよう領域としても定義される。気泡床(bubbling bed)を有する流動化容器は、二つの域、すなわち高濃度気泡相とリーン(希薄)相もしくは分散相とを含み、高濃度気泡相は、リーン/分散相から該高濃度気泡相を分離する上面を有する。高濃度床の上記上面と(リサイクルシステムへと)出ていくガス流との間の上記容器の部分は、「フリーボード(freeboard)」と呼ばれる。従って、同伴域は、フリーボードと、サイクル(リサイクル)ガスシステム(管及び圧縮機/冷却器を含む)と、分配板の上面までの反応器の底部とを備える。同伴域のどこででも測定される静電気活動は、本明細書中において「キャリーオーバー静電気」と呼ばれ、そういうものだから、流動床における慣用の(一つもしくは複数の)静電プローブによって測定される静電気活動とは異なる。
【0031】
驚いたことに、我々は、次の点を発見した。すなわち、同伴域のキャリーオーバー粒子における(本明細書中で定義される)「ゼロもしくはゼロ付近」レベルより上方で測定される静電気活動(キャリーオーバー静電気)が、重合反応システムにおけるシーティング、チャンキング、もしくはそれらの始まりと相互に関係があり、また、一つもしくは複数の「慣用(の)」静電プローブによって測定される静電気活動よりも、シーティングもしくは不連続イベントとの相互関係が深い指標である点である。加えて、同伴域におけるキャリーオーバー粒子の静電気活動を監視することは、反応器パラメータであって、該パレメータによって連続添加剤の量が動的に調整され得、かつ不連続イベントを低減もしくは除去するために最適なレベルが得られ得る当該パラメータを与えることが分かった。
【0032】
もし、反応の過程中に、同伴域の静電気活動のレベルの大きさが増長すれば、反応器システム内の連続添加剤量は、後述するようにそれに応じて調整され得る。
【0033】
静電プローブ
同伴域に存在するものとして本明細書中に記述される静電プローブは、少なくとも一つのリサイクルラインプローブ;少なくとも一つの管状ディスクプローブ;少なくとも一つの分配板静電プローブ;又は少なくとも一つの上方反応器静電プローブのうちの一つもしくは複数を含む。上方反応器静電プローブは、慣用の(一つもしくは複数の)プローブの分配板上方の1/4〜3/4反応器直径高さの外側もしくは上方に来る。これらのプローブは、個別に、又は上記各群(グループ)からの一つもしくは複数の追加のプローブと共に、同伴静電気を測定するために使用され得る。図1は、本発明の実施形態で使用される器具のいくつかの一般的な位置を示す。該器具は、本明細書中に記述するような、流動床における慣用の(一つもしくは複数の)静電気検出器(「慣用反応器静電プローブ」)を含む。
【0034】
図2は、慣用反応器静電プローブの一例を示す。この(一つもしくは複数の)プローブは、(触媒及び/又は樹脂による)粒子衝突の結果としてプローブ先端部(チップ)から流れる電流を測定する。プローブ先端部から測定した電流(単位面積当たり)は、全体として反応器壁上に生じている電荷移動の推定値を与える。該プローブ先端部は、荷流を測定するために器具が取り付けられた反応器壁部分を効果的に表す。これらの検出器のためのプローブ先端部、並びに本明細書中に記述した他のすべてのプローブは、炭素鋼、鉄、ステンレス鋼、チタン、プラチナ、ニッケル、モネル(Monel)(登録商標)合金、銅、アルミニウムを含むどのような導体からでも作製され得、又は、一方の金属がコアを形成し他方の金属が外皮もしくはベニヤを形成するバイメタルからなり得る。静電プローブの更なる記載は、米国特許第6,008,662号において提供される。
【0035】
慣用の反応器プローブで測定される典型的な電流レベルは、±0.1〜10、もしくは±0.1〜8、もしくは±0.1〜6、もしくは±0.1〜4、もしくは±0.1〜2ナノアンプ/cm2である。本明細書中に記述するすべての電流測定値と同様に、これらの値は、一般に、これも本明細書中に述べる期間にわたる平均である。また、これらは、二乗平均平方根値(RMS)を表し得、その場合、これらはすべて正の値となる。しかしながら、ほとんどの場合、メタロセン触媒を利用する反応器において、慣用反応器プローブは、シーティング事象の始まりの間もしくは中間時において、ゼロもしくはゼロ付近を記録する。ゼロもしくはゼロ付近により、我々は、慣用静電気反応器プローブ並びに同伴域におけるプローブのいずれかが、≦±0.5、もしくは≦±0.3、もしくは≦±0.1、もしくは≦±0.05、もしくは≦±0.03、もしくは≦±0.01、もしくは≦±0.001、もしくは0ナノアンプ/cm2の値となることを企図する。例えば、測定値−0.4は、測定値+0.4と同様に「±0.5」「未満」となるであろう。
【0036】
本明細書中のどこかに記述したように、慣用静電プローブは、(本明細書中で定義した)ゼロもしくはゼロ付近の静電気もしくは電流を記録し得るが、同伴域における少なくとも一つの位置における少なくとも一つの他の静電プローブは、慣用静電プローブ(この慣用静電プローブは、ほとんどの場合、メタロセン触媒ではゼロもしくはゼロ付近であり得る。)によって測定される静電気活動もしくは電流よりも高い静電気活動もしくは電流を記録し得る。慣用静電プローブによって測定される電流と一つもしくは複数の他の(非慣用静電プローブ)によって測定される電流との間の差が、≧±0.1、もしくは≧±0.3、もしくは≧±0.5ナノアンプ/cm2、又はそれ以上の場合、一つもしくは複数の同伴域プローブで検出されている正電荷を低減もしくは除去するための行動が採られる。そのような行動は、少なくとも一つの連続添加剤の添加(すなわち、反応器における少なくとも一つの連続添加剤の存在の純増加)であり得、又は、触媒供給速度の低下であり得、又は、ガス流量(ガススループット速度)の低下であり得、又は、これらの組合せであり得る。これらの行動は、ゼロもしくはゼロ付近のキャリーオーバー静電気及び反応器静電気を維持、低減もしくは除去するための手段を構成する。
【0037】
リサイクルライン静電プローブ
上記少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブは、反応器の上部におけるリサイクルラインの入口から反応器の底部へ至るリサイクルラインの出口まで、リサイクルラインのどの部分にも位置付けられ得る。これは、反応器の上部のリサイクルライン入口から冷却器又は圧縮機(これらは、互いに空間的に置き換え得る)まで、冷却器及び圧縮機の間、冷却器又は圧縮機後の冷却器又は圧縮機と反応器の底部のリサイクルライン出口との間を含む。少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブと共に、我々は、一つもしくは複数の位置において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれを上回るリサイクルライン静電プローブを企図する。
【0038】
図3は、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブの実施形態を示す。この実施形態におけるプローブ先端部は、炭素鋼ロッド(もしくは本明細書中に述べた他の材料)であり得、また、リサイクルラインのほぼ中心へと延び得る。更に、少なくとも一つのリサイクルラインプローブは、リサイクルライン壁に対してどのような角度でももしくは垂直に配置され得る。更に、少なくとも一つのリサイクルラインプローブは、0.1〜0.9D、もしくは0.2〜0.8D、もしくは0.3〜0.7D、もしくは0.4〜0.6D、もしくは0.5D(Dはリサイクルラインの内径)だけリサイクルライン内へと突出し得る。リサイクルガス及び同伴固体粒子(樹脂及び/又は触媒/担体粒子)がプローブを流れ過ぎる際、固体粒子のいくつかがロッドに衝突し、電荷を移動させる。少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブからの電流は、±0〜50ナノアンプ/cm2であり得、又は、±0.01〜25、もしくは±0.01〜20、もしくは±0.1〜15、もしくは±0.1〜10、もしくは±0.1〜7.5、もしくは±0.1〜5.0、もしくは±0.1〜2.5、もしくは±0.1〜1.5、もしくは±0.1−1.0ナノアンプ/cm2であり得る。
【0039】
管状ディスク静電プローブ
上記少なくとも一つの環状ディスク静電プローブは、環状ディスク上のどの位置にも又は環状ディスクに対し水平に配置され得る。該環状ディスクは、環状開口を(比較的高速度で)通過する気体及び/又は液体及び/又は同伴固体粒子の流れストリームに対するアクセスを提供する。プローブの先端部は、0.1〜0.9D、もしくは0.2〜0.8D、もしくは0.3〜0.7D、もしくは0.4〜0.6D、もしくは0.5D(Dは環状ディスクの内径)の距離、環状開口内へと突出し得る。我々は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のこれら環状ディスク静電プローブを企図する。プローブ先端部は、該プローブ先端部と該環の金属面(及び反応器壁)との間の電気接触を防ぐため、絶縁材料によって取り付けられなければならない。少なくとも一つの環状ディスク静電プローブからの電流は、±0〜50ナノアンプ/cm2、又は、±0.01〜25、もしくは±0.01〜20、もしくは±0.1〜15、もしくは±0.1〜10、もしくは±0.1〜7.5、もしくは±0.1〜5.0、もしくは±0.1〜2.5、もしくは±0.1〜1.5、もしくは±0.1〜1.0ナノアンプ/cm2であり得る。
【0040】
上方床静電プローブ
上記少なくとも一つの上方床静電プローブは、反応器内において、慣用静電プローブの上限(分配板上方の、反応器直径の3/4倍に等しい距離)よりも高く、すなわち、一般に、反応器直径の0.8倍、もしくは0.9倍、もしくは1.0倍に少なくとも等しいか、もしくはそれを上回る距離だけ高く、反応器の垂直壁が該反応器の円錐区域に出会う地点までに配置され得る。我々は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のこれら上方床静電プローブを企図する。少なくとも一つの上方床静電プローブからの電流は、±0〜50ナノアンプ/cm2、又は、±0.01〜25、もしくは±0.01〜20、もしくは±0.1〜15、もしくは±0.1〜10、もしくは±0.1〜7.5、もしくは±0.1〜5.0、もしくは±0.1〜2.5、もしくは±0.1〜1.5、もしくは±0.1〜1.0ナノアンプ/cm2であり得る。
【0041】
分配板静電プローブ
分配板キャップとも呼ばれる上記少なくとも一つの分配板静電プローブは、キャリーオーバー静電気を測定する別の手段を表す。該少なくとも一つの分配板プローブは、分配板の一つもしくは複数の孔の上に置かれる金属キャップを備えている。該(複数の)キャップは、板から絶縁され、電気導管を用いて電流計に接続される。該少なくとも一つのプローブは、(一つもしくは複数の)金属キャップ上における触媒及び/又は樹脂の微粉(fines)の衝突による電流移動(電流伝達)を測定する。分配板静電プローブ(キャップ)は、上述したように炭素鋼もしくは他の導体から構成され得、分配板上の他の(取り付けられていない)全キャップにより生じる電荷移動をシミュレートする。理想的には、これらの分配板プローブ(キャップ)は、分配板及びキャップと同じ材料から構成される。キャリーオーバー静電気の測定に有益な分配板静電プローブの更なる詳細は、タイトル「気相ポリエチレン反応器における静電気測定及び検出(Static Measurement and Detection in a Gas Phase Polyethylene Reactor)」で、2002年12月26日付け出願、2004年7月8日付け公開の米国公開第20040132931号に記載される。我々は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のこれら分配板静電プローブを企図する。少なくとも一つの該分配板プローブからの電流は、±0〜50ナノアンプ/cm2、又は、±0.01〜25、もしくは±0.01〜20、もしくは±0.1〜15、もしくは±0.1〜10、もしくは±0.1〜7.5、もしくは±0.1〜5.0、もしくは±0.1〜2.5、もしくは±0.1〜1.5、もしくは±0.1〜1.0ナノアンプ/cm2であり得る。
【0042】
同伴域内のいずれかの位置におけるこれら静電プローブのいずれか一つは、反応器不連続イベントの始まりもしくは存在を決定する静電プローブとして機能し得、又は、各位置における一つもしくは複数(リサイクルライン静電プローブ、環状ディスク静電プローブ、上方床静電プローブ、及び/又は分配板静電プローブ)は、上記のように決定する別の位置の一つもしくは複数と共に使用され得る。静電プローブはまた、別々に機能し得、すなわち、一の位置における一つのプローブが静電気活動を記録し始めたら、連続添加剤の導入によって電荷を低減もしくは除去するために(本明細書中で後述する)アクションが起こされ得る。又は、例えば触媒が供給されていることにより、一つもしくは複数の連続添加剤が既に反応器内にある場合は、一般に触媒供給とは別の供給により、追加の連続添加剤が添加され得る。
【0043】
反応器システムにおける静電気活動を監視するための手段は、当業界において知られているかもしくは本明細書に記述される静電プローブによって提供される。そのような静電プローブは、金属製プローブ先端部と、一つもしくは複数の信号線と、電気貫通接続と、測定器具とを含む。該プローブ先端部は、円筒(円柱)ロッドを備え得るが、正方形、長方形、三角形もしくは長円形等、どのような断面形状でもあってもよい。材質に関して、プローブ先端部は、本明細書に記載したどのような導体でもあり得る。信号線に関して、どのような慣用の絶縁線も使用され得る。電気貫通接続に関して、それが、グラウンド(及び反応器壁)からの必要な電気的絶縁を提供し、かつ高圧反応器ガスの反応器からの漏出を防止するのに必要な圧力シールを提供する限り、どのような適切な貫通接続も使用され得る。適切な貫通接続は、コナックスバッファロー社(Conax Buffalo Corp.)及び他の供給業者から市販入手できる。
【0044】
静電プローブから読み取り値を監視することに関して、プローブ先端部からグラウンドへの電流の流れを測定可能などのような器具もしくは装置も使用され得る。適切な器具は、電流計、ピコアンメーター(高感度電流計)、マルチメーター、もしくは電位計を含む。電流の流れはまた、直列抵抗を通過する該電流によって引き起こされる電圧を間接的に測定することにより、監視され測定され得る。この場合の電流は、オームの法則I=V/R(Iは電流(アンペア)、Vは測定電圧(ボルト)及びRは抵抗(オーム))により、該測定電圧から求められるであろう。米国特許第6,008,662号に示されるように、直列抵抗の値は、取得した電流読み取り値に実質上影響を及ぼすことなく、1オームから4×1011オームであり得る。
【0045】
処理電流レベルの方法
当業者は、静電プローブからの電流信号を処理する多くの方法が存在し得ることを認識する。これらの方法は、10ミリ秒〜10時間、もしくは10秒〜10時間、もしくは30秒〜5時間、もしくは1分〜1時間、もしくは1分〜1/2時間、もしくは1分〜10分の平均時間による単純な加重平均を含む。それに加えてもしくは代えて、上記信号は、基本電流信号の根平均2乗(RMS)微分(導関数/偏差)、基本電流信号の標準偏差、基本電流信号の絶対値、もしくは基本電流信号の絶対値の平均(上記平均時間を用いる)を供給するために処理され得る。
【0046】
連続添加剤
すぐ上で述べた一つもしくは複数の静電プローブが、ゼロより上もしくは下の静電気活動を記録し始めた際(「ゼロもしくはゼロ付近」の上もしくは下としてそれぞれ定義される)、静電気活動のレベルを低く保つため、もしくは、該レベルをゼロもしくはゼロ付近に戻すために対策が採られるべきであり、これが、反応器(不)連続イベントを防止、低減もしくは除去し、この点を我々は示した。企図される対策は、一つもしくは複数の連続添加剤の添加を含む。このような添加は、反応器内にあるレベルの連続添加剤が既に存在するなら、反応器内の該レベルを高める効果をもたらし得る。反応器内に存在することとなる(一つもしくは複数)連続添加剤の総量は、250もしくは200、又は150、又は125もしくは100もしくは90、又は80、又は70、又は60、又は50、又は40、又は30、又は20もしくは10ppm(生産されているポリマーの重量百万分率)を一般に超えず、及び/又は、連続添加剤の量は、生産されているポリマーの重量ベースで、ゼロ、又は1もしくは3もしくは5もしくは7もしくは10もしくは12もしくは14もしくは15もしくは17もしくは20ppmより大きくなる(通常、単位時間当たりのポンドもしくはキログラムとして表される)。これらの下限のいずれも、どの上限とも組み合わすことができる。これらの連続添加剤量は、一つ、二つ、三つ、四つもしくはそれを超える連続添加剤を企図し、反応器中の一つもしくは二つもしくはそれを超える連続添加剤の総量は、どのような源からのすぐ上に開示した総量の添加剤となると理解される。連続添加剤は、専用供給ラインを通じて反応器に直接加えられ得、及び/又は、エチレン供給ストリーム、コモノマー供給ストリーム、触媒供給ラインもしくはリサイクルラインを含むどのような慣用供給ストリームへも加えられ得る。二以上の連続添加剤が使用されるなら、各連続添加剤は、別個の供給ストリームとして、又は、別個の供給ストリームの任意の組合せ、もしくは混合物として反応器に加えられ得る。連続添加剤が反応器に加えられる態様は、該(一つもしくは複数の)添加剤が流動床内で十分に分散され、また、それらの供給速度(もしくは濃度)が上記したキャリーオーバー静電気の最小レベルを与える態様に調節される限り、重要ではない。
【0047】
我々は、すぐ上で述べた連続添加剤の総量が、触媒に加えられた連続添加剤、専用連続添加剤ラインに加えられた連続添加剤、いずれかのリサイクル材料に含まれる連続添加剤、もしくはこれらの組合せ等の、どの源からの連続添加剤をも含み得ることを企図する。一実施形態において、(一つもしくは複数の)連続添加剤の一部は、何らかの静電気活動が測定可能となる前の予防手段として反応器に加えられるであろう。このような場合、一つもしくは複数の静電プローブが「ゼロもしくはゼロ付近」を上回るレベルの静電気活動を記録すると、静電気活動を記録している一つもしくは複数のプローブをゼロもしくはゼロ付近に戻すために連続添加剤が増やされる。
【0048】
反応器不連続イベントを防止もしくは除去するために反応器内に少なくとも一つの十分な濃度の連続添加剤が導入されるように、触媒混合物に少なくとも一つの連続添加剤を導入すること、該触媒混合物(少なくとも一つの連続添加剤を含む)を反応器システム内に注入すること、及び、それに加えてもしくは代えて、触媒混合物から独立した専用連続添加剤供給ラインを通じて少なくとも一つの連続添加剤を反応器システム内に導入することも、本発明の実施形態の範囲内である。これらの供給スキームのいずれかが、もしくは両方共に使用され得る。触媒中の連続添加剤/連続添加剤混合物及び別個の連続添加剤供給ラインを通じて加えられた連続添加剤は、同一のものであっても別のものであってもよい。
【0049】
反応器システムに対する最適な連続添加剤供給速度の認定は、本明細書中に定義したゼロもしくはゼロ付近のキャリーオーバー静電気の値によって分かる。例えば、反応器内のキャリーオーバー静電気読取り値を安定させた後に、追加の(すなわちより高い)レベルの連続添加剤が加えられ、かつ該反応器の同伴域における一つもしくは複数の静電プローブが静電気読取り値の大きさの増長を示すなら、これは、最適連続性レベルを超えたことを定性的に表している。この場合、連続添加剤のレベルは、静電気活動の安定性(一つもしくは複数の静電プローブにおける静電気活動の比較的一定の読取り値によって示される)が再度達成されるまで、すなわち、該静電気活動がゼロ付近に下がるかもしくは再度ゼロとなるまで、下げられるべきである。従って、最適濃度範囲に達するように連続添加剤量を動的に調整することが望ましく、これは、本発明の実施形態の範囲内にある。最適な濃度により、我々は、本明細書において有効(実効)量を企図する。そのため、少なくとも一つの連続添加剤の有効量は、一つもしくは複数の静電プローブによって測定される静電荷の安定性を低減するか、除去するか、又は達成する有効量である。従って、本明細書中に言及されるように、多すぎる連続添加剤が加えられると、静電荷は再び現れ、そのような量の連続添加剤は有効量外として定義される。
【0050】
本発明での使用に適当な連続添加剤は、アルコキシル化アミン、カルボン酸塩、ポリスルホン、高分子(ポリマー状)ポリアミン、及びスルホン酸から選択される一つもしくは複数の化合物からなる。
【0051】
連続添加剤は、エトキシル化ステアリルアミンからなり得る。ICI及びその関連会社から市販されているエトキシル化ステアリルアミンは、商標ATMER163下で提供され、また、Witco Chemical Companyから市販されている別のものは、商標AS990下で提供される。
【0052】
他の適当な連続添加剤は、ステアリン酸アルミニウ及びオレイン酸アルミニウムを含む。更に別の適当な連続添加剤は、商標OCTASTAT及びSTADIS(これらは、同一もしくは類似の化学物質であると考えられる)下で商業的に供給されており、及び/又は、米国特許第5,026,795号に開示され、Octel Starreonから入手できる。
【0053】
別の実施形態において、連続添加剤は、上述した連続添加剤の二つ以上の混合物であり得る。このような混合物は、次のものを含み得る。すなわち、アルコキシル化アミンとカルボン酸塩;もしくはアルコキシル化アミンとポリスルホン;もしくは;もしくはアルコキシル化アミンと高分子ポリアミン;もしくはアルコキシル化アミンとスルホン酸;もしくはカルボン酸塩とポリスルホン;もしくはカルボン酸塩と高分子ポリアミン;もしくはカルボン酸塩とスルホン酸;もしくはポリスルホンと高分子ポリアミン;もしくはポリスルホンとスルホン酸;もしくは高分子ポリアミンとスルホン酸である。加えて、我々は次のものを企図する。すなわち、アルコキシル化アミンとカルボン酸塩とポリスルホン;もしくはアルコキシル化アミンと高分子ポリアミンとスルホン酸;もしくはカルボン酸塩とポリスルホンと高分子ポリアミン;もしくはカルボン酸塩とスルホン酸とポリスルホン;もしくはアルコキシル化アミンとカルボン酸塩と高分子ポリアミン;もしくはアルコキシル化アミンとカルボン酸塩とスルホン酸;もしくはアルコキシル化アミンとポリスルホンとスルホン酸;もしくはアルコキシル化アミンと高分子ポリアミンとポリスルホン;もしくはポリスルホンと高分子ポリアミンとスルホン酸;もしくはカルボン酸塩と高分子ポリアミンとスルホン酸である。これら連続添加剤の四つ以上の組合せも企図される。これらの組合せは、10:90〜90:10、もしくは25:75〜75:25、もしくは40:60〜60:40、もしくは50:50の比率で組み合わされ得、又は、三つの連続添加剤の場合は、10:10:80〜80:10:10、もしくは10:80:10の比率で組み合わされ得る。これらの連続添加剤の絶対量は既述したとおりである。
【0054】
本発明の実施形態に使用するための別の連続添加剤は、次の混合物からなる。すなわち、該混合物は、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する1デセン−ポリスルホンと、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する、N−牛脂(tallow)−1,3−ジアミノプロパンとエピクロロヒドリンの反応生成物と、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在するドデシルベンゼンスルホン酸と、該混合物の60〜88重量%の濃度で存在する炭化水素溶剤とからなる。この混合物は、Octel Starreon及びその関連会社から、商標OCTASTAT3000(これはSTADIS450としても利用され得る)もしくはOCTASTAT2000(これはSTADIS425としても利用され得る)下で販売されている。これらそれぞれは、すぐ上で述べたものとは異なる割合の構成を有し得る。
【0055】
連続添加剤の組合せが使用されるなら、反応器内に存在する総計は、上述したようになる。
【0056】
触媒
慣用の遷移金属触媒及びメタロセン触媒、もしくはこれらの組合せを含むすべての重合触媒は、本発明のプロセスの実施形態の使用に適している。また、例えば、AlCl3、コバルト、鉄、パラジウム、クロム/酸化クロム、もしくは「フィリップス」触媒等が企図される。以下に、本発明に有用な非限定的な種々の重合触媒が記述される。
【0057】
一般的な定義
本明細書中、用語「触媒系(触媒システム)」は、少なくとも一つの「触媒成分(触媒要素)」及び少なくとも一つの「活性剤」を含み、あるいは少なくとも一つの共触媒を含む。触媒系はまた、担体等の他の成分を含み得る。また、単独のもしくは組み合わせた触媒成分及び/又は活性剤に限定されない。触媒系は、本明細書中に記述したいずれかの組合せにおいていかなる数の触媒成分並び活性剤をも含み得る。
【0058】
本明細書中、用語「触媒化合物」は、一旦適切に活性化されると、オレフィンの重合もしくはオリゴマー化に触媒作用を及ぼすことができるどのような化合物をも含む。触媒化合物は、少なくとも一つの3族〜12族の原子を含み、随意的に、それに結合された少なくとも一つの離脱基を含む。
【0059】
本明細書中、用語「離脱基」は、活性剤によって触媒成分から抽出され得、従ってオレフィン重合もしくはオリゴマー化に向けて活性の種を作り出す、触媒成分の金属中心に結合された一つもしくは複数の化学部分を意味する。該活性剤は、後述される。
【0060】
本明細書中、周期表の元素の「族」に関連して、CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS(David R. Lide ed., CRC Press 81St ed. 2000)におけるように、該周期表の族に対して「新規な」番号付けスキームが用いられる。
【0061】
本明細書中、「ヒドロカルビル」は、一つの水素だけ欠けた、水素と炭素からなる、脂肪族基、環状基、オレフィン基、アセチレン基、芳香族基(すなわち炭化水素基)を含む。「ヒドロカルビレン」は、二つの水素だけ欠けている。
【0062】
本明細書中、用語「ヘテロ原子」は、炭素及び炭素に結合され得る水素以外のどのような原子をも含む。「ヘテロ原子含有基」は、ヘテロ原子を含む炭化水素基であり、一つもしくは複数の同じもしくは異なるヘテロ原子を含み得る。一実施形態において、ヘテロ原子含有基は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選択される1〜3の原子を含むヒドロカルビル基である。ヘテロ原子含有基の非限定的な例は、イミン基、アミン基、酸化物基、ホスフィン基、エーテル基、ケトン基、オキサゾリン複素環基、オキサゾリン基、及びチオエーテル基を含む。
【0063】
本明細書中、「複素環」は、ヘテロ原子(非炭素原子)が記述される場合を除き、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選択される1〜3の原子を含む炭素主鎖を有する環構造(環系)を意味する。
【0064】
本明細書中、「アルキルカルボン酸塩」、「アリールカルボン酸塩」及び「アルキルアリールカルボン酸塩」は、いずれかの位置においてカルボキシル基を有する、アルキル(基)、アリール(基)及びアルキルアリール(基)それぞれである。例として、C65CH2C(O)O-、CH3C(O)O-等を含む。
【0065】
本明細書中、用語「置換(した/された)」は、該用語に続く基が、いずれかの位置において一つもしくは複数の水素の代わりに少なくとも一つの部分を有することを意味する。該部分は、例えば、ハロゲン基(例えばCl、F、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基、及びこれらの組合せ等から選択される。置換されたアルキル及びアリールの例は、アシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定はされない。
【0066】
別途記述される場合を除き、本明細書中、本発明の実施形態は、下記の個々の記述及び実施例において後に定義される金属原子「M」の金属原子の酸化状態に限定されることはない。
【0067】
メタロセン触媒成分
本発明の実施形態に有益な触媒系は、本明細書中に記載した少なくとも一つのメタロセン触媒成分を含む。メタロセン触媒化合物は、例えば、1&2 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS(John Scheirs & W. Kaminsky eds., John Wiley & Sons, Ltd. 2000)、及びG.G. Hlatky in 181 COORDINATION CHEM. REV. 243−296(1999)の全体にわたって一般的に記載され、特に、1 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 261−377(2000)におけるポリエチレンの合成での使用のために記載される。本明細書中に記述したメタロセン触媒化合物は、少なくとも一つの3族〜12族の金属原子に結合された一つもしくは複数のCp配位子(シクロペンタジエニル、及びシクロペンタジエニルに対して等電子的(アイソローバル)な配位子)と、少なくとも一つの金属原子に結合された一つもしくは複数の離脱基とを有する「ハーフサンドイッチ」化合物及び「フルサンドイッチ」化合物を含む。以下、これらの化合物は、「メタロセン」もしくは「メタロセン触媒成分」と称される。メタロセン触媒成分は、実施形態において担体材料に支持され、また、別の触媒成分と共にもしくは別の触媒成分を伴わずに支持され得る。
【0068】
Cp配位子は、一つもしくは複数の環もしくは環構造であり、その少なくとも一部は、シクロアルカジエニル配位子及び複素環類似体等のπ結合系を含む。(一つもしくは複数の)環もしくは環構造は、一般に、13族〜16族の原子からなる群から選択される原子からなり、あるいは、Cp配位子を構成する原子は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、ゲルマニウム、ホウ素及びアルミニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択され、ここで、炭素は環要素(ring members)の少なくとも50%を構成する。又は、(一つもしくは複数の)Cp配位子は、置換された及び置換されていないシクロペンタジエニル配位子、及びシクロペンタジエニルに対して等電子的な配位子からなる群から選択される。その非限定的な例は、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル及び他の構造を含む。更に、そのような配位子の非限定的な例は、include シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンジンデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントレンデニル、3,4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタアセナフチレニル、7H−ジベンゾフルオレニル、インデン[1,2−9]アントレン、チオフェノールインデニル、チオフェノールフルオレニル、これらの水素化変型(例えば、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル、すなわち「H4Ind」)、これらの置換変型、及びこれらの複素環式変型を含む。
【0069】
15族含有触媒成分
本発明の一側面は、望ましい触媒成分として本明細書中に記述したようないわゆる「15族含有」触媒成分の、単独での使用、又は、メタロセンもしくは他のオレフィン重合触媒成分を伴う使用を含む。一般的に、本明細書中で述べる「15族含有触媒成分」は、3族〜12族の金属錯体を含み、ここで、金属は2〜8配位で、該配位部分は少なくとも二つから四つまでの15族原子を含む。一実施形態において、15族含有触媒成分は、4族金属と一つから四つの配位子との錯体であり、4族金属は、少なくとも2配位で、該配位部分は、少なくとも二つの窒素を含む。代表的な15族含有化合物は、例えば、WO99/01460号、EP Al 0 893 454号、EP Al 0 894 005号、US 5,318,935号、US 5,889,128号、US 6,333,389 B2号、及びUS 6,271,325 Bl号に開示されている。
【0070】
一実施形態において、本発明の実施形態に有益な15族含有触媒成分は、どのような程度でもオレフィン重合に向けて活性である、4族イミノ−フェノール錯体、4族ビス(アミド)錯体、及び4族ピリジル−アミド錯体を含む。
【0071】
活性剤
本明細書中、用語「活性剤」は、例えば、触媒成分からカチオン種を作り出すこと等により、シングルサイト触媒化合物(例えば、メタロセン、15族含有触媒)を活性化させ得る、支持されるかもしくは支持されない、いかなる化合物もしくは化合物の組合せにも定義される。典型的には、これは、触媒成分の金属中心からの少なくとも一つの離脱基(上記配合(化学式)/構造におけるX基)の抽出を含む。従って、本発明の実施形態の触媒成分は、そのような活性剤を用いてオレフィン重合に向けて活性化される。そのような活性剤の実施形態は、環状ポリもしくはオリゴマーポリ(ヒドロカルビルアルミニウム酸化物)及びいわゆる非配位活性剤(「NCA」)(あるいは「イオン化活性剤」もしくは「化学量論活性剤」)等のルイス酸を含み、又は、中性メタロセン触媒成分を、オレフィン重合に対して活性であるメタロセンカチオンに転換することができる他のいかなる化合物をも含む。
【0072】
アルモキサン(例えば「MAO」)、改質アルモキサン(例えば「TIBAO」)、及び活性剤としてのアルキルアルミニウム化合物等のルイス酸、及び/又は、本明細書中に記載したメタロセンを活性化する、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素及び/又はトリスペルフルオロフェニルホウ素メタロイド前駆物質等のイオン化活性剤(中性もしくイオン)の使用は本発明の範囲内にある。MAO及び他のアルミニウムベースの活性剤は、当業界においてよく知られている。イオン化活性剤は、当業界においてよく知られており、例えば、Eugene You-Xian Chen & Tobin J. Marks, Cocatalysts for Metal-Catalyzed Olefin Polymerization:Activators, Activation Processes, and Structure-Activity Relationships 100(4) CHEMICAL REVIEWs 1391-1434(2000)が記述しいてる。活性剤は、担体に付随もしくは結合され得、触媒成分(例えばメタロセン)と会合するか、もしくは、触媒成分から分離する。この点は、Gregory G. Hlatky, Heterogeneous Single-Site Catalysts for Olefin Polymerization 100(4) CHEMICAL REVIEWS 1347-1374(2000)が記述している。
【0073】
チーグラー−ナッタ触媒化成分
触媒組成は、非メタロセン化合物である(もしくは非メタロセン化合物を含む)触媒成分からなり得る。実施形態において、触媒成分は、チーグラー−ナッタ触媒化合物を含み得、チーグラー−ナッタ触媒化合物は、例えば、ZIEGLER CATALYSTS 363-386(G. Fink, R. Mulhaupt and H.H. Brintzinger, eds., Springer-Verlag 1995);又はEP103 120;EP102 503;EP0 231 102;EP 0 703 246;RE 33,683;US4,302,565;US5,518,973;US5,525,678;US5,288,933;US5,290,745;US5,093,415及びUS6,562,905に開示されている。そのような触媒の例は、4族、5族もしくは6族の遷移金属の酸化物、アルコキシド及びハロゲン化物からなるもの、又は、チタン、ジルコニウムもしくはバナジウムの酸化物、アルコキシド及びハロゲン化物の化合物からなるものを含み、随意的に、マグネシウム化合物、内部及び/又は外部電子供与体(アルコール、エーテル、シロキサン等)、アルミニウムもしくはホウ素アルキル及びハロゲン化アルキル、及び無機酸化物担体と組み合わせたものを含む。
【0074】
慣用タイプの遷移金属触媒は、それらの遷移チーグラー−ナッタ触媒であり、これらは当業界に知れれている。慣用タイプの遷移金属触媒の例は、米国特許第4,115,639号、同第4,077,904号、同第4,482,687号、同第4,564,605号、同第4,721,763号、同第4,879,359号及び同第4,960,741号に記述されている。本発明に使用され得る慣用タイプの遷移金属触媒化合物は、元素周期表の3族〜17族、もしくは4族〜12族、もしくは4族〜6族の遷移金属化合物を含む。
【0075】
これらの慣用タイプの遷移金属触媒は、化学式:MRxで表され得る。ここで、Mは、3族〜17族の金属、もしくは4族〜6族の金属、もしくは4族の金属、もしくはチタニウムであり、Rは、ハロゲン基もしくはヒドロカルビルオキシ基であり、また、xは金属Mの原子価である。Rの例は、アルコキシ、フェノキシ、臭化物、塩化物及びフッ化物を含む。慣用タイプのMがチタンである遷移金属触媒の例は、TiCl4、TiBr4、Ti(OC253Cl、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC493Cl、Ti(OC372Cl2、Ti(OC252Br2、TiCl3.1/3AlCl3及びTi(OC1225)Cl3を含む。
【0076】
本発明の実施形態に有用な慣用タイプのマグネシウム/チタン電子供与体錯体ベースの電子遷移金属触媒化合物は、例えば、米国特許第4,302,565号及び同第4,302,566号に記述されている。Mg/Ti/Cl/THFから生じる触媒もまた企図され、これは、当業者にはよく知られている。そのような触媒の調製の一般的な方法の一例は、次のものを含む。すなわち、TiCl4をTHFに溶解し、Mgを用いて該化合物をTiCl3に還元し、該溶剤を除去する。
【0077】
上記慣用タイプの遷移金属触媒化合物に対する慣用タイプの共触媒化合物は、化学式M34V2C3b-Cによって表され得る。ここで、M3は、元素周期表の1族〜3族及び12族〜13族の金属であり、M4は、元素周期表の1族の金属であり、vは0〜1の数であり、各X2は任意のハロゲンであり、cは0〜3の数であり、各R3は、一価の炭化水素基もしくは水素であり、bは1〜4の数であり、かつ、bマイナスcは、少なくとも1である。上記慣用タイプの遷移金属触媒に対する他の慣用タイプの有機金属共触媒化合物は、化学式M33kを有する。ここで、M3は、IA族、IIA族、IIB族もしくはIIIA族の金属で、例えば、リチウム、ナトリウム、ベリリウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、カドミニウム、ガリウムであり、kは、M3の原子価に応じて1、2もしくは3に等しく、この原子価は、通常、M3が属する特定の族による。また、各R3は、炭化水素基、及び、フッ化物、アルミニウムもしくは酸素、もしくはこれらの組合せ等の13〜16族の元素を含有する炭化水素基を含むいずれかの1価の基であり得る。
【0078】
重合
重合は、上記触媒と、エチレン及び一つもしくは複数のα−オレフィンから選択されるモノマーとを用いて行われ得、α−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、もしくは1−デセンから選択される。
【0079】
本発明のより深い理解を与えるため、本発明の実施において実行される実際の試験に関連して以下の実施例が提供される。
【実施例】
【0080】
本明細書中に記述した重合反応が、内径0.57メートル及び床高4.0メートルの連続パイロット規模気相流動床反応器内で行われた。該流動床は、重合体流体から構成された。液体コモノマーと共にエチレン及び水素のガス状供給ストリームが、混合ティー配列において共に混合され、反応器床下のリサイクルガスライン内に導入された。ヘキセンがコモノマーとして用いられた。エチレン、水素及びコモノマーの個々の流量は、固定組成ターゲットを維持するように制御された。エチレン濃度は、一定のエチレン分圧を維持するように制御された。水素は、一定の水素対エチレンモル比を維持するように制御された。すべてのガスの濃度は、リサイクルガスストリーム中の比較的一定の組成を保証するために、オンラインガスクロマトグラフによって測定された。
【0081】
固体触媒が、キャリヤーとして精製した窒素を用いて流動床内に直接注入された。その速度は、一定の生産速度を維持するように調整された。ポリマー粒子を成長させる反応床は、反応域を通る補給及びリサイクルガスの連続的な流れによって流動状態に維持された。これを達成するため、0.6〜0.9メートル/秒の気相流速(表面ガス速度)が用いられた。この反応器は、全圧2170kPaで稼働された。一定の反応器温度を維持するため、リサイクルガスの温度は、重合による発熱速度におけるどのような変化をも吸収するように、連続的に上下された。
【0082】
流動床は、粒状製品の形成速度に等しい速度で床の一部を引く抜くことより、一定の高さ(4.0メートル)に維持された。製品形成の速度(ポリマー生産速度)は、50〜70kg/時間の範囲にあった。該製品は、一連の弁を介して固定容積チャンバ内へと半連続的に取り去れた。該チャンバは、同時に反応器に対して排出口が与えられる(反応器に排出し戻す)。これは、高効率の製品の取り去りを可能にし、同時に、未反応ガスの大部分を反応器へと戻して再循環(もしくは再利用)させる。この製品は、同伴炭化水素を除去するためにパージされ、いかなる微量の残留触媒をも非活性化するため、加湿窒素の小さい蒸気で処理される。
【0083】
図1は、パイロット規模流動床反応器及び静電気測定器具のおおよその位置の概略図である。
【0084】
静電プローブからの読取り値が電流の形式で測定された。該電流は、Keithley Model 6517A電位計(電流モードで動作する)によって測定された。複数のプローブからのデータは、上記Model 6517A電位計におけるスキャナーカードを用いて同時に集められた。各プローブからのデータは、125読取り値/秒で集められ、平均値が6秒ごとに報告された。あるいは、プローブは、専用のKeithley Model 485ピコアンメーターに接続される。この代替ケースにおいて、各静電プローブは、上記メーターに連続的に接続され、該メーターは、「スポット(地点)」もしくは電流の瞬時値を5秒ごとに報告した。両タイプの電流メーターから報告されたデータは、コンピュータログに記録され、図4〜7に示すプロットを生成するために用いられた。
【0085】
図4は、パイロット規模気相反応器において、メタロセン触媒、すなわちUnivation Technologies, LLCから市販されるXCAT EZ100によるドームシーティング事象を示す。該チャートの上部の六つのトレースは、ドームにおける表面(外壁面/外皮)熱電対の読取り値(壁温度)を示す。当業界においてよく知られているように、シーティング(このケースの場合、ドームシーティング)は、表面熱電対読取り値の急激な上昇(すなわちスパイク)によって表される。リサイクルライン静電気読取り値は、ドームシーティング事象の前に急上昇を示し、次いで突然の低下が続いた。測定した移送(リサイクル)ライン静電気の該低下は、反応器からの固体キャリーオーバーの速度の低減の結果であると考えられる。この固体キャリーオーバー速度の低減は、ドームシートの形成と同時に起こると思われる。
【0086】
図5は、パイロット規模気相反応器におけるXCAT EZ100メタロセン触媒による四つの連続するドームシーティング事象を示す。該チャートの上部における六つのトレースは、ドームにおける表面熱電対を示す。これに対応する目盛は右側に示される。ドームシーティングは、表面熱読取り値の急激な上昇(すなわちスパイク)によって表される。四つの事象それぞれは、製品排出口を塞ぐと共に流動化を妨げるのに十分な大きさのドームシートを作り出した。この四つのケースそれぞれにおいて、オペレーターは、強制的に反応器の運転を洗浄のために停止させられた。
【0087】
リサイクルラインキャリーオーバー静電気読取り値は、図5の底部のトレースによって表される。これに対応する目盛は左側に示される。各ドームシーティング事象の前にリサイクルライン静電気の急上昇がある点に留意されたい。第1、第3及び第4事象において、リサイクルライン静電気は200ピコアンペアに達した。第2事象において、リサイクルライン静電気のピークは、95ピコアンペアに達した。
【0088】
図6は、比較のために加えた分配板静電プローブからの読取り値による、図5と同様のドームシーティング事象を示する。このチャートから分かるように、分配板静電プローブは、ドームシーティング事象前にある反応を示したが、該反応は顕著なものではなく、また一貫性のあるものでもなかった。該板プローブは、同じ同伴微粉と接触しているので、我々は、リサイクルラインプローブの反応と同等の(及び該反応に比例した)反応を示すと予期していた。相違した理由は知られていない。
【0089】
図7は、メタロセン触媒、すなわち、Univation Technologies, LLCによって市販されるXCAT HP100触媒による反応器壁シーティング事象を示す。この場合、シーティング事象の前に両方の分配板プローブに顕著な反応が観察された。
【0090】
図7はまた、既述した測定問題の優れた例示を与える。慣用の反応器静電プローブは、メタロセン触媒によるシーティングイベントの前に意味のある表示を与えなかった。該図の反応器トレースによって示されるように、慣用の反応器静電プローブには、壁シーティング事象前(もしくは該事象中)に何の反応もなかった。
【0091】
図8は、比較のために加えられたリサイクルラインキャリーオーバー静電気による壁シーティングデータを示す。図から分かるように、リサイクルラインプローブは、壁シーティング事象前に顕著な反応を与えなかった。このプローブからの唯一の顕著な反応は、壁シートが形成された十分後に生じた。これは、いくつかのプローブが静電気を記録しないかもしれない一方、他のプローブが静電気を記録して、連続添加剤の使用を通じての制御を可能にするかもしれないので、反応器システム内に存在するすべてのプローブが監視されるべきである点を示している。
【0092】
実験データは、いくつかの重要で予想外の結果を提供する。すなわち、リサイクルラインキャリーオーバー静電プローブは、メタロセン触媒によるドームシーティング事象の前に意味のある反応を提供する。また、分配板プローブは、ドームシーティングに対する事前表示を与えないようである。
【0093】
逆に、壁シーティングの場合、分配板プローブは、メタロセン触媒による壁シーティング事象の前に意味のある反応を提供するが、リサイクルラインプローブは、それを提供しないようである。これらの結果は、ドームシーティングについての反対の結果を示すが、本発明は、メタロセン触媒によるドームシーティング及び壁シーティングの問題に対する解決策を明らかに提供する。キャリーオーバー静電気は、両位置、すなわちリサイクルライン及び分配板(もしくは同等のもの)で測定され、これらの測定値は、キャリーオーバー静電気をゼロ付近レベルに保つために静電気制御手段と組み合わされて用いられる。
【0094】
キャリーオーバー静電気をゼロ付近レベルに保つための有効な制御手段を決定するため、ヘキサン溶液もしくは鉱油中の固体スラリーとして種々の連続添加剤が試験された。固体スラリーは、不溶解性成分(ステアリン酸アルミニウム)に用いられ、他方、ヘキサン溶液は、オレイン酸アルミニウム、及び商標OCTASTAT3000及びOCTASTAT2000下でAssociated Octel Companyが販売する市販入手可能な製品に用いられた。オレイン酸アルミニウム溶液濃度は、0.40重量%で調製された。OCTASTAT2000及び3000溶液濃度は、0.53重量%で調製された。これらの溶液は、容積移送式ポンプを用いて有効範囲100〜1200cc/時間で反応域に供給された。ステアリン酸アルミニウスラリーは、固体ステアリン酸アルミニウを、窒素を用いて80〜100°Fで24時間ガス抜きした鉱油に加えることによって調製された。結果として生じたスラリー濃度は、5.66重量%であった。スラリーは、シリンジポンプを用いて有効範囲1〜100cc/時間で反応域内に供給された。イソペンタンは、その上、反応器への供給ラインにおけるフラッシュとしても用いられた。
【0095】
パイロット規模重合反応からのデータは、いくつかの添加物の個別添加及び独立制御は、流動床反応器のドーム及び下方区域の両方のシーティングを制御しかつ軽減することができることを示す。連続添加剤の多くは相対的に不溶解性であり、そのため、上述したように鉱油中のスラリーとして供給される。可溶性材料は、ヘキサンに溶解され、反応器に直接供給される。
【0096】
次の化合物が、XCAT HP200及びXCAT EZ100メタロセン触媒系により試験された。
オレイン酸アルミニウム(溶液)
ステアリン酸アルミニウム(スラリー)
OCTASTAT3000(溶液)
OCTASTAT2000(溶液)
AS−990(スラリー)
ATMER163(溶液)
【0097】
二つの一連の試験が、一方はXCAT HP200メタロセン触媒を用いて、他方はXCAT EZ100メタロセン触媒において行われた。XCAT HP200メタロセン触媒試験プロトコルは、触媒とジステアリン酸アルミニウム(触媒の3重量%)の乾式混合物において動作することにより始動された。次いで、添加剤供給が開始され、反応器はラインアウトすることが許容された。触媒は、次に、「ベアー(むき出しの/裸の)触媒(bare catalyst)」と呼ばれる、ジステアリン酸アルミニウムが無いものに変えられ、これは、操作性(稼働性)の問題が存在しない一方、反応器に添加剤が依然として加えられていること仮定としている。添加剤の供給速度は、別個の連続添加剤供給ラインを介して約20重量ppmまで段階的に高められた。最終工程は、添加剤流をベアー触媒においてゼロへと低減することであった。XCAT EZ100メタロセン触媒試験は、商用試験のために計画された触媒の操作性性能を評価する試みの間、行われた。この場合、XCAT EZ100メタロセン触媒における連続運転を可能にするため、AS−990が、コールド表面熱電対読取り値(すなわち、通常温度からの負偏位(負への逸脱もしくはネガティブエクスカーション))に応答して加えられた。ポジティブな結果を生み出した添加剤は、次のものであった。
ステアリン酸アルミニウム
AS−990
オレイン酸アルミニウム
OCTASTAT2000
【0098】
これらの試行中、いくつかの重要な結果が観察された。連続添加剤の別個の追加を伴うことなくベアー触媒が使用された場合、コールド表面(外皮/外壁面)温度読取り値が生じた。いくつかのケースでは、これらは、これらが当然これら自体を反転させるまで、次第に悪化するように進行し、シーティング事象をもたらした。混合された触媒/連続添加剤を用いてより高いレベルのキャリーオーバー静電気も観察された。キャリーオーバー静電気は、より高いレベルの連続添加剤の追加、一般に別個の追加の連続添加剤(連続添加剤と混合された触媒とは別個の)によって低減された。増大したレベルのキャリーオーバー静電気は、増大したレベルの反応器静電気に対応した。連続添加剤流が増すにつれ、キャリーオーバー静電気が低下した。最終的に、二つのシーティング事象は、キャリーオーバー静電気が徐々に低下し、続いて、キャリーオーバー静電気が突然増加することによって特徴付けられた。「ベアー」触媒での運転は、これらのシーティング事象を促進した。この時点で、表面熱電対偏位及びシーティングが生じた。これに対する正確なメカニズムは不明であるが、キャリーオーバー静電気の低下が証拠となるように触媒が壁に引き付けられたと考えられる。表面温度偏位が起こると、触媒が解放されるらしく、キャリーオーバー静電気は突然増加した。
【0099】
種々の連続添加剤の試験中、流動床反応器のドームに対する目視観察がなされた。触媒/連続添加剤混合物による稼働中、ドームコーティングは常に存在した。一般に別個の供給ラインを通じて添加剤レベルが高められるにつれ、ドームは、次第に明瞭になり、これは、完全に明瞭になってむき出しの金属壁となるまで続いた。ステアリン酸アルミニウムの場合、これは、生産速度に基づいて、総濃度10〜15重量ppm(ppmw)を必要とした。ステアリン酸アルミニウが触媒と混合されると、生産性の制約が、ステアラートの濃度を、該混合物のパーセンテージで6重量ppmに制限する(これは、おおよそのレベルであるが、該混合物が具合が悪くなる、すなわち扱いにくくなる上記のこのレベルは、そのため、今日の材料及び供給機構について実際的な制限を与える。)。メタロセン触媒のより高い活性のバージョンは、混合物中における更に低いレベルすなわち3〜4ppmwの最大含有物をもたらし、これは、添加物の別個の追加の必要性を実証した。
【0100】
XCAT EZ100メタロセン触媒による試験は、パイロットプラント重合反応においてドームシーティング事象によって悩まされた。しかしながら、連続添加剤AS−990を用いた本発明のデモンストレーションは、コールド表面温度読取り値を取り除き、シーティングを除去した。例えば、10日間の運転は、板付近及び拡大区域におけるコールド表面温度読取り値を取り除くために鉱油中のAS−990のスラリーが反応器に供給された場合、いかなる操作性問題をも伴わずに円滑に稼働した。床におけるAS−990レベル(追加供給からの)は、平均約10〜30ppm(床重量に基づく)であった。AS−990無しでの稼働の試みは、表面温度偏位をもたらした。
【0101】
図9は、本発明の実施におけるパイロットプラント重合反応からのデータを示す。該データは13日間に及び。
【0102】
グラフの上部の種々の線は、反応器の表面温度である。階段状変化を示す下方の破線は、連続添加剤の流量である。該流量は手動で記録され、0〜20ppmまで変化した。ポイント1は、ベアー触媒が作動された場合の表面温度における影響を示し、これはコールド温度読取り値の発生を示す。オレイン酸アルミニウム流が増加するにつれ、コールド表面温度読取り値はなくなった。更に、オレイン酸アルミニウム流が増加すると、コールド表面温度読取り値は再び生じた。これは、この添加剤に対する最適レベルが存在することを実証する。
【0103】
ポイント2は、オレイン酸アルミニウムの流れの停止及びべアー触媒による稼働の結果を示す。これは、添加剤の低下が、これを増やす場合とは異なる結果、すなわち、コールド表面温度読取り値は無いが表面温度偏位がある結果をもたらすことを実証する。これは、最適レベルの添加剤が必要であることを裏付ける。全体的に、ジステアリン酸アルミニウムによる稼働は、非常に安定し、コールド表面温度偏位は全く観察されなかった。ポイント3では、導入された触媒は、ベアー触媒に変えられた。これは、コールド表面温度の再発をもたらしたが、正(ポジティブ)の表面温度偏位は無かった。
【0104】
ポイント4は、OCTASTAT2000による結果を示す。この添加剤は、オレイン酸アルミニウムと同様に最適レベルを有する。一旦、連続添加剤の流れが増加されると、過度のコールド表面温度が生じ始めた。
【0105】
図10のグラフは図9のグラフに対応するが、図10の場合、三つの異なる静電気測定値が示される。反応器静電気1とラベルが付けられた上部の線は、電流プローブを用いた反応器静電気のプロット(グラフ)である。反応器静電気2の中間ラベルが付いた線は、電圧プローブを用いた反応器静電気のプロットである。底部の線は、キャリーオーバー静電気のプロットである。キャリーオーバー静電気は絶対値項で測定された。破線は上述した連続添加剤の流れである。
【0106】
キャリーオーバー静電気は、ポイント1、3及び4において、ポイント3ではより小さいが、コールド表面温度形成の期間中に低下する。丸で囲んだ複数ポイントは、ジステアリン酸アルミニウムを含む混合触媒の追加を示す。図9の他のすべての時間において、ベアー触媒が供給されていた。これは、ベアー触媒と比較して、ちょうどベアー触媒に連続添加剤の別個の追加が供給された時にキャリーオーバー静電気が増加することを実証する。
【0107】
図11及び12は、OCTASTAT(登録商標)を用いた上記同様のグラフを示す。図11及び12において、ポイント1は、濃度がほぼ5重量ppmのOCTASTAT3000(反応器内の総計)、すなわち低キャリーオーバー静電気に対応し、コールド表面温度が生じる。しかしながら、OCTASTAT3000の流量が高まるにつれ(5ppm以上)、コールド表面温度がなくなり、これはまた、最適レベルの添加剤(添加剤量は破線で示される)の必要性を実証した。図11及び12において、ポイント2では、ベアー触媒及びほぼ41ppmのOCATSTAT3000濃度で反応器が稼働されていた。次に、OCTASTA流が止められた。コールド表面温度はすぐに生じ始め、同時に、キャリーオーバー静電気が減少し始めた。他の多くの連続添加剤とは対照的に、この影響は直ちに生じ、コールド表面温度の発生において遅れは無かった。
【0108】
図11及び12は、反応器(慣用静電プローブ)静電気は、キャリーオーバー静電気測定値ほどには、コールド表面温度形成と容易に相関付けられないことを実証する。反応器静電気は、反応器状態の変化に対応するいくつかの小さい変化を示したが、反応器静電気の変化は、キャリーオーバー静電気の変化ほど大きいものではなかった。加えて、これは、どの程度進展したコールド表面温度が、これがもしあまりにも長く残っていたら、正のコールド表面温度変位へと変わることができるかを実証した。更に、これは、キャリーオーバー静電気がコールド表面温度と共に、これが臨界レベルに達するまで低下することを実証した。この臨界レベル点では、キャリーオーバー静電気は急速に増加し始め、次いで、表面温度の大きな偏位が続き、これは、反応器の運転停止を必要とした。
【0109】
本発明は特定の実施形態を参照して記述され例示されたが、当業者は、本発明が本明細書に必ずしも例示されないものに変形しやすい点を認識するであろう。そのため、本発明の真の範囲を確定するため、単に特許請求の範囲が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】典型的な気相反応器の概略図を示す。
【図2】慣用の反応器静電プローブの例を示す。
【図3】少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブの形態を示す。
【図4】XCAT(登録商標)EZ100ドームシーティング事象を示す。
【図5】XCAT EZ100による四つのドームシーティング事象を示す。
【図6】XCAT EZ100の場合の分配板静電気を示す。
【図7】XCAT(登録商標)HP100による壁シーティング事象を示す。
【図8】XCAT HP100による壁シーティング事象のための同伴静電気を示す。
【図9】XCAT HP100の場合の表面温度及び添加剤流量を示す。
【図10】XCAT HP100の場合の静電気分布及び添加剤流量を示す。
【図11】XCAT HP100によるOctastat3000(登録商標)の場合の表面温度グラフを示す。
【図12】XCAT HP100によるOctastat3000(登録商標)を用いて静電気分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの連続添加剤を、少なくとも一つのオレフィンの重合反応によって生産されるポリマーのシーティングを防止もしくは後退させる量で反応器システム内に導入するための方法にして、前記重合反応が前記反応器システム内で行われ、かつ、前記反応器システムが、流動床反応器と、同伴域と、前記ポリマーを生産可能な触媒系を導入するための触媒供給物と、触媒混合物とは無関係の前記少なくとも一つの連続添加剤を導入するための少なくとも一つの連続添加剤供給物と、前記同伴域の静電気活動のレベルを監視するための手段とを備えた当該方法であって、
(a)前記少なくとも一つのオレフィンを、流動床反応器内において重合条件下で前記触媒系と接触させる工程と、
(b)前記重合反応の前、その間もしくはその後の任意の時間に、前記少なくとも一つの連続添加剤を反応器システム内に導入する工程と、
(c)前記同伴域における静電気活動のレベルを監視する工程と、
(d)同伴域における静電気活動のレベルをゼロもしくはゼロ付近に維持するため、反応器システム内に導入される前記少なくとも一つの連続添加剤の量を調整する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記触媒系は、メタロセン触媒もしくは慣用の遷移金属触媒を含む請求項1の方法。
【請求項3】
当該方法は、気相プロセスからなる請求項2の方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、連続的に生産される請求項3の方法。
【請求項5】
モノマーが、エチレン、又は、エチレン及び一つもしくは複数のアルファ−オレフィンからなる請求項4の方法。
【請求項6】
前記触媒系はメタロセン触媒系からなり、前記同伴域の静電気活動のレベルを監視するための手段は、少なくとも一つのリサイクルライン静電プローブ、少なくとも一つの環状ディスクプローブ、少なくとも一つの分配板静電プローブ、又は少なくとも一つの上方反応器静電プローブのうちの一つもしくは複数を備える請求項5の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの連続添加剤は、アルコキシル化アミン、カルボン酸塩、ポリスルホン、高分子ポリアミン、スルホン酸、もしくはこれらの組合せからなる群から選択される一つもしくは複数の化合物を含む請求項6の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの連続添加剤は、エトキシル化ステアリルアミンを含む請求項6の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの連続添加剤は、ステアリン酸アルミニウムを含む請求項6の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの連続添加剤は、オレイン酸アルミニウムを含む請求項6の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの連続添加剤は混合物を含み、該混合物は、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する1デセン−ポリスルホンと、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在する、N−牛脂−1,3−ジアミノプロパンとエピクロロヒドリンの反応生成物と、該混合物の5〜15重量%の濃度で存在するドデシルベンゼンスルホン酸と、該混合物の60〜88重量%の濃度で存在する炭化水素溶剤とからなる請求項6の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの連続添加剤は間欠的に導入される請求項6の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの連続添加剤は、炭化水素液中のスラリーとして又は炭化水素液中の溶剤として導入される請求項6の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの連続添加剤はまた、前記触媒供給物を介して反応器システム内に導入される触媒混合物中に存在する請求項6の方法。
【請求項15】
前記流動床反応器内の前記少なくと一つの連続添加剤の量は、該流動床反応器内で生産されているポリマーの1〜50ppmwの濃度に維持される請求項6の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−517936(P2007−517936A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547126(P2006−547126)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/041988
【国際公開番号】WO2005/068507
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】