説明

気道疾患、特に喘息の処置のための5−HT4阻害剤

本発明は一般的に、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器系の疾患の処置に関する。さらに特定的に、本発明は、喘息性気道炎症の処置及び予防の方法に関する。処置は、処置の必要な患者への5−HT4受容体アンタゴニストの投与;さらに特定的に、本明細書で定義されるアロイル化4−アミノメチルピペリジン誘導体の投与を含む。本発明の他の側面は、製薬学的組成物を含む、呼吸器障害の処置又は予防のための組成物を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器系の疾患の処置に関する。さらに特定的に、本発明は、喘息性気道炎症の処置及び予防の方法に関する。処置は、処置の必要な患者への5−HT4受容体アンタゴニストの投与;さらに特定的に、本明細書下記に定義されるアロイル化4−アミノメチルピペリジンの投与を含む。
【0002】
本発明の他の側面は、製薬学的組成物を含む、呼吸器障害の処置又は予防のための組成物を目的とする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺への損傷又は感染は、広い範囲の呼吸器系の疾患(呼吸器障害又は気道疾患)を生じ得る。複数のこれらの疾患は、公衆衛生的に非常に重要である。気道疾患には急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、職業的肺疾患、肺ガン、結核、線維症、じん肺、肺炎、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息が含まれる。
【0004】
最も一般的な気道疾患の中に喘息がある。喘息は一般に、断続的な気流閉塞から生ずる臨床的症状を有する気道の炎症性障害として定義される。それは臨床的に、ぜん鳴、呼吸困難及び咳の発作を特徴とする。それは廃疾性の(disabling)慢性の障害であり、有病率及び重度において増加しているように思われる。開発国の人口中の小児の15%及び成人の5%が喘息に苦しんでいると見積もられる。従って治療は、正常な生活が可能であるように症状を抑制することを目的とし、且つ同時に根源的な炎症の処置のための基礎を提供するべきである。
【0005】
COPDは、正常な呼吸を妨げ得る肺疾患の大きなグループを指す用語である。現在の臨床的指針は、完全には可逆的でない気流制限(airflow limitation)を特徴とする疾患状態としてCOPDを定義している。気流制限は通常進行性であり、且つ有害粒子及びガスへの肺の異常な炎症反応を伴う。そのような粒子及びガスに寄与する最も重要な源は、少なくとも西欧世界において、喫煙である。COPD患者は、咳、息切れ及び過剰な痰の発生を含む多様な症状を有し;そのような症状は、好中球、マクロファージ及び上皮細胞を含む複数の細胞区画(cellular compartments)の機能不全から生ずる。COPDに包含される2つの最も重要な状態は、慢性気管支炎及び気腫である。
【0006】
慢性気管支炎は気管支の長年の炎症であり、それは粘液の生産の増加及び他の変化を引き起こす。患者の症状は咳及び痰の喀出である。慢性気管支炎は、より頻繁且つ重症の呼吸器感染、気管支の狭窄及び塞ぎ、呼吸困難ならびに廃疾(disability)に導き得る。
【0007】
気腫は、肺胞及び/又は最小気管支(smallest bronchi)の末端を冒す慢性肺疾患である。肺はその伸縮性を失い、従って肺のこれらの領域は拡大する。これらの拡大領域は古い空気を捕獲し、それを新鮮な空気と有効に交換しない。これは呼吸困難を生じ、血液に送達される酸素を不十分にし得る。気腫を有する患者における支配的な症状は、息切れである。
【0008】
本発明は、気道疾患の処置における選択的5−HT4受容体アンタゴニストの適用に関
し、5−HT4受容体アンタゴニスト自体の、すなわち外来的に適用されるアゴニストを用いて5−HT4受容体をあらかじめ活性化しないでの効果の末梢(perifery)における最初の実例である。
【0009】
末梢において、5−HT4受容体(5−HT4 R)は主に胃腸(GI)管で研究されてきた。これらのGI 5−HT4受容体の活性化は、GIの前速度論的効果(prokinetic effects)を生ずる。この活性と矛盾なく、5−HT4 RアゴニストはGI低運動性障害の処置のために開発され、且つ開発されつつある(非特許文献1)。GI管における5−HT4 Rアゴニストの明白な効果にかかわらず、5−HT4 Rアンタゴニスト自体の効果は、我々の知識の限りでは、健康な動物モデルにおいても疾患のモデルにおいても観察されたことがない。これまで5−HT4 Rアンタゴニストは、GI管における5−HT4 Rが媒介するセロトニン又は5−HT4 Rアゴニストの前速度論的効果を抑制するか又は逆転させることができることが証明されたのみであった。
【0010】
例えばピボセロド(piboserod)(SB 207266)はインダゾールアミド5−HT4 Rアンタゴニストであり、GI管における5−HT4 Rが媒介するセロトニン(5−HT)の効果に拮抗する(非特許文献2;及び非特許文献3)が、それは動物又は人間において正常な腸運動性に影響すると思われない(非特許文献4)。
【0011】
本発明のアロイル化4−アミノメチルピペリジン5−HT4受容体アンタゴニスト(本明細書下記で化合物とも呼ばれる)(例えば化合物M0014)も、GI管における5−HT4 Rが媒介するセロトニン又は5−HT4 Rアゴニストの前速度論的活性を抑制するか又は逆転させることができた(データは示されていない)。例えば覚醒したイヌにおいて、低投薬量のM0014は、選択的セロトニン再−吸収阻害剤(SSRI)に誘導される底部コンプライアンスの喪失を逆転させた。液体食の胃排出の遅延のイヌモデルにおいても、M0014は5−HT4 Rアゴニストに誘導される胃排出の加速を有力に妨げた。最後の例として、化合物は、慢性的に移植されたひずみ計を用いて測定される5−HT4 Rアゴニストにより誘導されるイヌの腔の運動性の刺激を逆転させた。
【0012】
SB−207266と類似して、5−HT4 RアンタゴニストM0014は、研究された上記のGI機能に、独力では効果を有していなかった。一緒に理解すると、GI管において5−HTにより誘導される効果の阻害以外の効果は観察されなかった。
【0013】
喘息のような気道疾患においても、現在まで5−HT4 Rアンタゴニスト自体に関する直接の効果は観察されていない。最初の一系列の公開文献において、喘息性炎症反応への5−HT4 Rの刺激の効果は、ヒト気道上皮細胞(非特許文献5)、樹状細胞(非特許文献6)及び単球(非特許文献7)において確定することができた。RS 39604のような5−HT4 Rアンタゴニストが用いられたこれらの研究において、5−HT4
Rアンタゴニストは5−HTの効果を阻害することが示されたのみであったが、この場合も、且つGI観察に類似して、5−HT4 Rアンタゴニスト自体の効果は記載されなかった。
【0014】
本出願において示される5−HT4 Rアンタゴニストの有益な効果と対照的に、気管支収縮を含む障害の処置において用いるための5−HT4 Rアゴニストは、例えばPCT公開文献である特許文献1及び特許文献2において広範囲に記載された。この場合も、セロトニンの気管支収縮効果に5−HT4 Rが含まれることについての研究(非特許文献8)において、5−HT4 RアンタゴニストであるGR125487Dは、5−HT4 RアゴニストであるRS 67333により模倣されるコリン作用性収縮の、5−HTにより誘導される助長に拮抗できるのみであり、この場合もアンタゴニスト自体の効果
は記載されなかった。後者の文献において、効果を見るために高濃度の5−HTが必要であり(10μM〜0.3mM)、この効果に拮抗するために高濃度のGR 125487D(1μM)が用いられた。従って、これらの効果に5−HT4 Rが含まれることは、確証を必要とする。
【0015】
これまで、例えばPCT公開文献である特許文献3に記載されているような、ムスカリン様受容体とセロトニン受容体の両方のアンタゴニズムを結びつける化合物のみが、セロトニンにより誘導される気管支収縮の減少に有効であり、従って喘息のような気管支収縮を含む障害の処置において有用であることが見出されていた。そのような化合物は、ムスカリン様受容体のみ又はセロトニン受容体のみのいずれかへの選択性を有しておらず、5−HT4受容体とムスカリン様受容体の両方に向けて(address)、セロトニンにより誘導される気道平滑筋収縮を減少させる。かくして選択的5−HT4 Rアンタゴニストのみ(追加のムスカリン様受容体のアンタゴニズムなし)及びそれ自体(アゴニストを用いる予備−収縮なし)による、そして本出願において示される収縮反応への効果は示されていなかった。
【0016】
予期に反して、且つGI管において、ならびに喘息に関する炎症的及び機構的試験管内研究において5−HT4 Rアンタゴニストに関して記載された、効果の欠如に反して、今回我々は化合物自体の効果を明白に示す:すなわちそれらは喘息及び肺炎の生体内マウスモデルにおいて炎症細胞供給を妨げ、且つそれらは喘息の生体内マウスモデルにおいてサイトカイン生産を妨げて呼吸器機能を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第00/76500号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/36113号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/64631号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Sanger et al.著,;Development of drugs for gastrointestinal motor disorders:translating science to clinical need.Neurogastroenterol Motil,20(3),2008年,177−84
【非特許文献2】Sanger et al.著,;“Increased defecation during stress or after 5−hydroxytryptophan:selective inhibition by the 5−HT(4) receptor antagonist,SB−207266.”Br J Pharmacol;130(3):2000年,706−12
【非特許文献3】Bharucha et al.著,;“Effects of a serotonin 5−HT(4) receptor antagonist SB−207266 on gastrointestinal motor and sensory function in humans.”Gut,47(5):2000年,667−74
【非特許文献4】Sanger et al.著,“SB−207266:5−HT4 receptor antagonism in human isolated gut and preventio of 5−HT−evoked sensitization of peristalsis and increased defaecation in animal models.”Neurogastroenterol Motil,10(4):1998年,271−9
【非特許文献5】Bayer et al.著,“Serotoninergic receptors in human airway epihthelial cells.”Am J Respir Cell Mol Biol.36(1):2007年,85−93
【非特許文献6】Idzko et al.著,“The serotoninergic receptors of human dendritic cells:identification and coupling to cytokine release.”J Immunol.172(10):2004年,6011−9
【非特許文献7】Duerk et al.著,“5−Hydroxytryptamine modulates cytokine and chemokine production in LPS−primed human monocytes via stimulation of different 5−HTR subtypes.”Int Immunol.17(5):2005年,599−606
【非特許文献8】Dupont et al.著,“The effects of 5−HT on cholinergic contraction in human airways in vitro.”Eur Respir J 14:1999年,642−649
【0019】
図面の簡単な記述
図1.M0014の局所的投与は喘息の特徴を抑制する。0日及び7日にマウスをOVA/alumの腹腔内注入により感作し、19−21日にOVAエアゾールに暴露した。各エアゾールの前に、ビヒクル又は0.1、0.4又は4nMにおけるM0014の気管内注入を与えた。凡例のラベル(例えばOVA/M0014/OVA)は、感作/処置/挑戦を示す。フローサイトメトリーによりBAL液を分析した(A)。BAL液中(B)及びOVAを用いて4日間、試験管内で再−刺激されたMLN細胞(C−D)中のサイトカイン生産。データは平均±SEMである;n=グループ当たり8匹のマウス。
図2.種々の用量の静脈内メタコリンへのBHR(気管支高反応性(bronchial
hyperreactivity)を、動的抵抗(上図)及び肺コンプライアンス(下図)における変化に関して評価し、吸入されるメタコリンへのBHRをPenH反応に関して、最後の抗原暴露が測定された24時間後に評価した。
図3.BALBcマウスにおける合計細胞供給(左上のパネル)、単核細胞数(右上のパネル)及び好中球供給(左下のパネル)へのM0014の効果。各柱は、3−6匹の動物からの平均+平均の標準偏差を示す。合計及び好中球細胞数へのM0014の有意な効果があった(<0.05,ザイモサンのみを参照されたい)。
【発明の概要】
【0020】
発明の詳細な記述
本発明は呼吸器系の疾患の処置及び予防のための方法及び組成物に関し、ベンゾエート誘導体;インドールアミド;インドールエステル及びイミダゾピリジン;(Langlois et al.著,“5−HT4 Receptor ligands:Applications and new prospects.”J.Med.Chem.,46(3):2003年,319−344)に記載されているインダゾール及びベンズイミダゾール誘導体のような選択的5−HT4 Rアンタゴニストが、喘息及びCOPDのような慢性気道疾患における呼吸機能に関して有意な向上をもたらすという発見に基づく。
【0021】
従って本発明の第1の側面は、気道疾患の処置及び/又は予防において用いるため;特に喘息性気道炎症の処置及び/又は予防において用いるための選択的5−HT4 Rアンタゴニストを提供することである。
【0022】
特別な態様において、気道疾患の処置及び/又は予防において用いるための5−HT4
Rアンタゴニストは;
【0023】
【化1】

【0024】
より成る群から選ばれる。
【0025】
さらに別の態様において、気道疾患の処置及び/又は予防において用いるための5−HT4 Rアンタゴニストは、PCT特許公開、国際公開第2005003121号パンフレット;国際公開第2005003122号パンフレット;国際公開第2005003124号パンフレット、国際公開第2005000837号パンフレット及び国際公開第2005000838号パンフレット中に記載されているアロイル化4−アミノメチルピペリジンの種類から選ばれ、一般的に式(I)
【0026】
【化2】

【0027】
[式中、
−R−R−は、式
−O−CH−O− (a−1)
−O−CH−CH− (a−2)
−O−CH−CH−O− (a−3)
−O−CH−CH−CH− (a−4)
−O−CH−CH−CH−O− (a−5)
−O−CH−CH−CH−CH− (a−6)
−O−CH−CH−CH−CH−O− (a−7)
−O−CH−CH−CH−CH−CH− (a−8)
の2価の基であり、
ここで該2価の基において、場合により同じ又は異なる炭素原子上の1もしくは2個の水素原子はC1−6アルキル又はヒドロキシにより置き換えられていることができ、
は水素、ハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル;シアノ又はC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ又はモノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノであり;
は水素又はC1−6アルキルであり、−OR基はピペリジン部分の3−又は4−位に位置し;
Lは水素であるか、あるいはLは式
−Alk−R (b−1)
−Alk−X−R (b−2)
−Alk−Y−C(=O)−R (b−3)
−Alk−Z−C(=O)−NR1112 (b−4)
−Alk−C(=O)−NH−C(=O)−R13 (b−5)
−Alk−C(=O)−NH−SO−R13 (b−6)
−Alk−SO−NH−C(=O)−R13 (b−7)
−Alk−SO−NH−SO−R13 (b−8)
の基であり、
ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
は水素;ヒドロキシ;シアノ;C3−6シクロアルキル;C1−6アルキルスルホニルアミノ;アリール;場合によりC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はフェニルで置換されていることができるアミノスルホニル;あるいはHetであり;
はC1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;ヒドロキシで置換されたC1−6アルキル;C3−6シクロアルキル;アリール又はHetであり;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ又はアリールであり;
XはO、S、SO又はNRであり;該Rは水素又はC1−6アルキルであり;Rは水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ又はアリールであり;
Yは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルで
あり;
Zは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;
11及びR12はそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルであるか、あるいはR11及びR12は、R11及びR12を保有する窒素原子と一緒になって、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル又は4−モルホリニル環を形成することができ、両者とも場合によりC1−6アルキルで置換されていることができ;
13はC1−6アルキル又はフェニルであり;
アリールは非置換フェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルカルボニル、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル及びアミノスルホニルからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルを示し;そして
Hetはフラニル;C1−6アルキル又はハロで置換されたフラニル;テトラヒドロフラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロフラニル;ジオキソラニル;C1−6アルキルで置換されたジオキソラニル;ジオキサニル;C1−6アルキルで置換されたジオキサニル;テトラヒドロピラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロピラニル;2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ハロ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換された2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ピロリジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピロリジニル;ピリジニル;ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリジニル;ピリミジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリミジニル;ピリダジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリダジニル;ピラジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピラジニル;モルホリニル;C1−6アルキルで置換されたモルホリニル;テトラゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたテトラゾリル;ピラゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたピラゾリル;イソオキサゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたイソオキサゾリル;イソチアゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたイソチアゾリル;2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;ハロ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換された2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;オキサゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたオキサゾリル;チアゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたチアゾリル;あるいはピラニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたピラニルである]
の化合物、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態あるいは製薬学的に許容され得るその酸もしくは塩基付加塩として示される。
【0028】
本発明の1つの態様において、気道疾患の処置において用いるための化合物は、以下の制限の1つもしくはそれより多くが当てはまる式(I)の化合物から選ばれる:
は水素、ハロ又はC1−6アルキルである;
はC1−6アルキル;シアノ又はC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ又はモノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノである;
Lは水素であるか、あるいはLは式
−Alk−R (b−1)
−Alk−X−R (b−2)
−Alk−Y−C(=O)−R (b−3)又は
−Alk−Z−C(=O)−NR1112 (b−4)
の基であり、
ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
は水素;ヒドロキシ;シアノ;C3−6シクロアルキル;C1−6アルキルスルホニルアミノ;アリール;あるいはHetであり;
はC1−6アルキル;ヒドロキシで置換されたC1−6アルキル;C3−6シクロアルキル;アリール又はHetであり;
は水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ又はアリールであり;
Yは直接結合又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;
Zは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;
11及びR12は、それぞれ独立して水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルであるか、あるいはR11及びR12は、R11及びR12を保有する窒素原子と一緒になって、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル又は4−モルホリニル環を形成することができ、両者とも場合によりC1−6アルキルで置換されていることができ;
アリールは非置換フェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルカルボニル、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル及びアミノスルホニルからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルを示し;そして
Hetはフラニル;C1−6アルキル又はハロで置換されたフラニル;テトラヒドロフラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロフラニル;ジオキソラニル;C1−6アルキルで置換されたジオキソラニル;ジオキサニル;C1−6アルキルで置換されたジオキサニル;テトラヒドロピラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロピラニル;2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ハロ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換された2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ピロリジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピロリジニル;ピリジニル;ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリジニル;ピリミジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリミジニル;ピリダジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリダジニル;ピラジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピラジニルである。
【0029】
気道疾患の処置において用いるために興味深い群の化合物は、以下の制限の1つもしくはそれより多くが当てはまる式(I)の化合物から選ばれる:
−OR基はピペリジン部分の3−又は4−位に位置する;
ピペリジン部分の絶対立体配置は(3S,4S)である;
Lは式(b−1)、(b−2)、(b−6)又は(b−8)の基である;さらに特定的にLは式(b−2)の基である;
AlkはC1−4アルカンジイル;1,3−プロパンジイル又は1,4−ブタンジイルである;さらに特定的にAlkはC1−4アルカンジイルである;
−R−R−は式(a−5)の2価の基である;
は水素、ハロ又はC1−4アルキルである;さらに特定的にRは水素である;
はハロ又はC1−6アルキルである;さらに特定的にRはC1−6アルキルである;
は水素又はC1−6アルキルである;さらに特定的にRは水素であり、−OR基はトランス立体配置を有するピペリジン部分の3−位に位置する;
はHet、アミノスルホニル又はC1−4アルキルもしくはフェニルで置換されたアミノスルホニルである;さらに特定的にRはHetである;
はアリール又はC1−6アルキルである;
13はC1−4アルキルである;
Hetはモルホリニル;ヒドロキシで置換されたピラゾリル;ヒドロキシで置換されたイソオキサゾリル;2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;テトラゾリル;又はヒドロキシで置換されたテトラゾリルである。
【0030】
さらに特別な態様において、本発明に従って用いられるアロイル化4−アミノメチルピペリジン誘導体は;
−R−R−が式(a−5)の基であり;
が水素であり;
がメチルであり;
が水素であり;
Lが式(b−2)の基であり、ここでXはOであり、AlkはC1−4アルカンジイルであり、そしてRはC1−6アルキルである
式(I)の化合物から成り;そしてその立体異性体、溶媒和物及び製薬学的に許容され得る付加塩を含む。
【0031】
さらにもっと別の態様において、本発明に従って用いられるベンゾフランカルボキシアミド誘導体は、本明細書下記の実験部分で化合物M0014とも呼ばれる
【0032】
【化3】

【0033】
(3S−トランス)−8−メチル−3,4−ジヒドロ−3H−ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−6−カルボン酸[3−ヒドロキシ−1−(3−メトキシ−プロピル)−ピペリジン−4−イルメチル]−アミドから成り、その立体異性体、溶媒和物及び製薬学的に許容され得る付加塩を含む。
【0034】
PCT特許公開、国際公開第2005003121号パンフレット;国際公開第2005003122号パンフレット;国際公開第2005003124号パンフレット、国際公開第2005000837号パンフレット及び国際公開第2005000838号パンフレット中の薬理学的実施例から明らかな通り、本明細書で提供される5−HT4受容体アンタゴニストは、HEK293−5−HT4結合アッセイに基づいて、選択的な5−HT4受容体アンタゴニストである。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、気道疾患の処置及び/又は予防用;特に喘息及びCOPDのような慢性気道障害の処置及び/又は予防用;さらに特定的に喘息性気道炎症の処置における薬剤の製造における、前記で定義されたアロイル化4−アミノメチルピペリジン誘導体のような5−HT4受容体アンタゴニストの使用を提供する。特別な態様において、本発明は、気道疾患の処置及び/又は予防用;特に喘息及びCOPDのような慢性気道障害の処置及び/又は予防用;さらに特定的に喘息性気道炎症の処置における薬剤の製造における、前記で定義されたベンゾフランカルボキシアミド誘導体の使用を提供する。さらに別の態様において、本発明は、気道疾患の処置及び/又は予防用;特に喘息及びCOPDのような慢性気道障害の処置及び/又は予防用;さらに特定的に喘息性気道炎
症の処置における薬剤の製造における、(3S−トランス)−8−メチル−3,4−ジヒドロ−3H−ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−6−カルボン酸[3−ヒドロキシ−1−(3−メトキシ−プロピル)−ピペリジン−4−イルメチル]−アミド(M0014としても既知)の使用を提供する。
【0036】
置換基に関して本明細書で用いられる場合、且つ他にことわらなければ、「アルキル」という用語は、直鎖及び分枝鎖を含む完全に飽和した炭化水素に関し、ここで例えばC1−4アルキルは1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の完全に飽和した炭化水素基、例えばメチル、プロピル、1−メチル−エチルなどを示す。
【0037】
置換基に関して本明細書で用いられる場合、且つ他にことわらなければ、「アルカンジイル」という用語は、2価の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素に関し、ここで例えばC1−12アルカンジイルは、1〜12個の炭素原子を含有する2価の直鎖状もしくは分枝鎖状炭化水素基、例えばメタンジイル、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイル、1,5−ペンタンジイル、1,6−ヘキサンジイル、1,7−ヘプタンジイル、1,8−オクタンジイル、1,9−ノナンジイル、1,10−デカンジイル、1,11−ウンデカンジイル、1,12−ドデカンジイル及びそれらの分枝異性体を示す。
【0038】
置換基に関して本明細書で用いられる場合、且つ他にことわらなければ、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素より成る群から選ばれるいずれかの原子を指す。
【0039】
本発明に従う化合物の有用性の観点から、気道疾患に苦しむ動物、例えば人間を含む哺乳類の処置方法を提供し、それは本発明に従う化合物、すなわち5−HT4受容体アンタゴニストの有効量を該動物に投与することを含む。
【0040】
該方法は、人間を含む動物への本発明に従う化合物の有効量の全身的又は局所的投与を含んでなる。
【0041】
本発明に従う化合物を、当該技術分野において既知の方法により、そして特に本明細書で言及され、且つその記載事項が引用することにより本明細書の内容となる公開特許明細書、国際公開第2005003121号パンフレット;国際公開第2005003122号パンフレット;国際公開第2005003124号パンフレット、国際公開第2005000837号パンフレット及び国際公開第2005000838号パンフレットに従って製造し、且つ製薬学的組成物に調製することができる。
【0042】
前記の製薬学的組成物の調製のために、活性成分として場合により塩の形態にあることができる特定の化合物の治療的に有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、担体は投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、好ましくは経口的、経皮的又は非経口的投与のような全身的投与;あるいは吸入、鼻スプレー、点眼を介するか又はクリーム、ジェル、シャンプーなどを介するような局所的投与に適した単位投薬形態にある。
【0043】
本発明の製薬学的組成物をいずれかの既知の方法、あるいはそうでなければ、選ばれる製品形態の調製又は製造に有効な方法により調製することができる。本発明に従う製薬学的組成物の調製方法を、“Remington’s Pharmaceutical Science”,Mid.Publishing Co.,Easton,Pa.,USA中に見出すことができる。
【0044】
例えば化合物を通常の賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に調製し、経口用錠剤、カプセル、スプレー、洗口剤、ロゼンジ、処理された基質(例えば経口用もしくは局所用綿棒、パッドあるいは本発明の組成物で処理された使い捨ての非−消化性基質);経口用液剤(例えば懸濁剤、溶液、乳剤)、粉剤あるいはいずれかの他の適した投薬形態物に形づくることができる。
【0045】
適した賦形剤、希釈剤及び担体の制限ではない例を、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,Second edition,American Pharmaceutical Association,1994中に見出すことができ、それには:充填剤及び増量剤、例えばデンプン、糖類、マンニトール及びケイ酸誘導体;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン及びポリビニルピロリドン;湿潤剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウム;溶解を遅らせるための薬剤、例えばパラフィン;再吸収加速剤、例えば第4級アンモニウム化合物;界面活性剤、例えばアセチルアルコール、グリセロールモノステアレート;吸着性担体、例えばカオリン及びベントナイト;担体、例えばプロピレングリコール及びエチルアルコールならびに滑択剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム及びマグネシウムならびに固体ポリエチルグリコールが含まれる。
【0046】
本発明の他の側面として、本明細書上記で定義されたベンゾフランカルボキシアミド誘導体のような5−HT4 Rアンタゴニストと、喘息及びCOPDのような慢性気道障害の処置において用いられる他の薬剤の組み合わせが意図されている。
【0047】
喘息及びCOPDのような慢性気道障害の処置のため、特に喘息性気道炎症の処置及び/又は予防のために;本発明の化合物を喘息の処置において用いられる他の薬剤と組み合わせて有利に用いることができる。喘息の処置において用いられる他の薬剤の例には、長期間抑制薬剤(medications)、迅速軽減(quick−relief)(救助(rescue))薬剤及びアレルギーを処置するための薬剤が含まれる。
【0048】
長期間抑制薬剤
−吸入されるコルチコステロイド、例えばフルチカゾン(fluticasone)(フロベント・ジスクス(Flovent Diskus))、ブデソニド(budesonide)(プルミコルト(Pulmicort))、トリアムシノロン(triamcinolone)(アズマコルト(Azmacort))、フルニソリド(flunisolide)(アエロビド(Aerobid))、ベクロメタゾン(beclomethasone)(クバル(Qvar))及び他。これらの薬剤は気道炎症を縮小させ、最も一般的に用いられる長期間喘息薬である。
−長期−作用性ベータ−2アゴニスト(LABAs)、例えばサルメテロール(salmeterol)(セレベント・ジスクス(Serevent Diskus))及びホルモテロール(formoterol)(ホラジル・アエロライザー(Foradil Aerolizer))。長期−作用性気管支拡張薬と呼ばれるこれらの吸入される薬剤は気道を開き、且つ炎症を縮小させる。それらは多くの場合、吸入されるコルチコステロイドと組み合わされて持続性喘息(persistent asthma)の処置に用いられる。
−ロイコトリエン改変剤(modifiers)、例えばモンテルカスト(montelukast)(シングライル(Singulair))、ザフィルルカスト(zafirlukast)(アコレート(Accolate))及びジレウトン(zileuton)(ジフロ CR(Zyflo CR))。これらの吸入される薬剤は、気道を開き、炎症を縮小させ、且つ粘液生産を減少させることにより働く。
−クロモリン(cromolyn)及びネドクロミル(nedocromil)(チレー
ド(Tilade))。これらの吸入される薬剤は、アレルギー反応を減少させることにより喘息の徴候及び症状を低下させる。
−テオフィリン(theophylline)、気道を開く毎日の(daily)丸薬(気管支拡張薬)。それは気道の周りの筋肉を弛緩させる。
【0049】
救助薬剤とも呼ばれる迅速軽減薬剤は、喘息の発作の間又は運動の前に、症状の急速な短期間軽減のために必要な場合に用いられる。迅速軽減薬剤の型には以下が含まれる:
−短期−作用性ベータ−2アゴニスト、例えばアルブテロール(albuterol)。気管支拡張薬と呼ばれるこれらの吸入される薬剤は、気道筋肉を一時的に弛緩させることにより、呼吸を容易にする。それらは数分内に作用し、効果は4〜6時間続く。イプラトロピウム(ipratropium)(アトロベント(Atrovent))。他の気管支拡張薬と同様に、イプラトロピウムは気道を弛緩させ、呼吸をより容易にする。イプラトロピウムは、多くは気腫及び慢性気管支炎のために用いられる。
−急性喘息発作又は非常に重症の喘息の処置のための経口用及び静脈内用コルチコステロイド。例にはプレドニゾン(prednisone)及びメチルプレドニゾロン(methylprednisolone)が含まれる。
アレルギーが誘導する喘息のための薬剤。
【0050】
これらは特定のアレルゲンへの感度を低下させるか、又は免疫系がアレルゲンに反応するのを妨げる。喘息のためのアレルギー処置には以下が含まれる:
−免疫療法。アレルギー−脱感作注射(shots)(免疫療法)は、特定のアレルゲンへの例の(your)免疫系反応を徐々に低下させる。
−抗−IgEモノクローナル抗体、例えばオマリズマブ(omalizumab)(クソライル(Xolair))は、アレルゲンへの免疫系の反応を低下させる。
【0051】
本発明は、続く実験的詳細を参照することによってより良く理解されるであろうが、これらは単に、その後に続く請求の範囲にさらに十分に記載される本発明の例であることを、当該技術分野における熟練者は容易に認めるであろう。さらに、本出願全体を通じて種々の公開文献が引用される。これらの公開文献の開示は引用することにより、本発明が関係する技術の現状をより十分に記述するために、本出願の内容となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】M0014の局所的投与は喘息の特徴を抑制することを示すグラフ。
【図2】種々の用量の静脈内メタコリンへのBHR(気管支過敏性)を、動的抵抗(上図)及び肺コンプライアンス(下図)における変化に関して評価したグラフ。
【図3】BALBcマウスにおける合計細胞供給(左上のパネル)、単核細胞数(右上のパネル)及び好中球供給(左下のパネル)へのM0014の効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例
以下の実施例は本発明を例示するものである。当該技術分野における熟練者は、これらの実施例を見て他の態様を思い付くであろう。
【0054】
マウスにおける喘息性気道炎症のM0014による妨害
実験法
0日及び7日に、OVA/alum(1mgの水酸化アルミニウムに吸着させた10μgのOVA等級V;Sigma−Aldrich)の腹腔内注入により、BALB/cマウス(n=グループ当たり6−8匹)をOVAに対して感作し、17−19日にOVAエアゾール挑戦(等級III)に供した;エアゾール挑戦は、PBS中の1% OVAを30分間送達するジェットネブライザーから与えられた。各OVA暴露から30分前に、A
vertin(Sigma−Aldrich)を用いてマウスを麻酔し、80μlの容量における標準ビヒクル又はM0014(PBS中の0.1,0.4又は4nM)の気管内注入を与えた。最後のOVA暴露から24時間後、BALを行い、LNsを切除し、コラーゲナーゼ/DNAseを用いて消化した。
【0055】
フローサイトメトリー及びソーティング。計数及び洗浄の後、0.5% BSA及び0.01%ナトリウムアジドを含有するPBS中のFITC−標識抗−I−Ad/I−Ed(マクロファージ/DCs)、PE−標識抗−CCR3(好酸球)、Cy−クロム−標識抗−CD3及び抗−CD19(リンパ球)ならびにアロフィコシアニン−標識(APC標識)抗−CD11c(マクロファージ/DCs)を用い、BAL細胞を30分間染色した。前に記載された通り(van Rijt et al.,2004年)、フローサイトメトリーにより微分細胞カウント(differential cell counts)を分析した。
【0056】
サイトカイン測定。サイトカインレベルを測定するために、丸底96−ウェルプレートにおいてMLN細胞を平板培養し(ml当たり1x106個の細胞)、OVA(10μg/ml)を用いて4日間再刺激した。ELISAにより、IL−4、IL−5、IL−13及びIFN−γの存在を上澄み液についてアッセイした(BD)。
【0057】
動的抵抗及びコンプライアンスの測定のために、ウレタンを用いてマウスを麻酔し、d−ツボクラリン(d−tubocurarine)を用いて麻痺させ、気管切開し、18−ゲージカテーテルを挿管し、続いてフレキシベント(Flexivent)装置(SCIREQ)を用いて機械的に換気した。呼吸頻度を、0.2mlの1回換気量及び2ml
Oの呼気終末陽圧を以て、1分当たり120回の呼吸に設定した。頸静脈を介して、増加する濃度のメタコリンを投与した。10秒毎に2分間与えられる標準化された吸入操作の後に、動的抵抗及びコンプライアンスを記録した。続く用量のメタコリンの投与の前に、ベースラインの抵抗に復帰させた。
【0058】
結果
すでに感作されたマウスにおける実験的喘息の発現に、M0014の局所的適用が影響し得るかどうかを調べた。Th2アジュバントalum(adjuvant alum)中のOVA(又は見せかけのPBS)の腹腔内注入を用いて、OVAへの感作を誘導し、10日後にマウスに連続的に3回挑戦した。予想通り、OVAエアゾール挑戦の前にビヒクルで処置されたOVA−感作マウス(OVA/ビヒクル/OVA)は、気管支肺胞洗浄(BAL)液好酸球増加症及びリンパ球増加症を発現し、縦隔LNs(MLNs)におけるTh2サイトカイン生産の増強が伴い、見せかけ−感作マウス(PBS/ビヒクル/OVA;図1A)において効果は見られなかった。各アレルゲン挑戦から30分前のM0014(80μl)の気管内(i.t.)投与は、BAL区画中へのマクロファージ、リンパ球及び好酸球浸潤を有意に用量−依存的に減少させた(図1A)。M0014で処置されたマウスにおける気道炎症の縮小は、MLNsにおけるIL−4、IL−5及びIL−13のレベルの穏やかだが有意な減少ならびにIFN−γ生産における弱い増加を伴った(図1C及びD)。
【0059】
メタコリンのような非−特異的な刺激へのBHRは、アレルギー性喘息をはっきり示す症状の1つである。図2に示される通り、OVA−感作マウスのアレルゲン挑戦は、最後のOVAエアゾール挑戦から24時間後に、機械的に換気されるマウスにおける動的抵抗及びコンプライアンスの侵襲的測定により測定される通り、見せかけ−感作マウスと比較して静脈内メタコリンへの反応性における有意な変化を誘導した。各アレルゲン挑戦の前のM0014の吸入は、OVAにより誘導されるメタコリン反応性における変化を顕著に減衰させた。
【0060】
M0014による肺への炎症細胞供給の抑制
下記は、マウスモデルにおける、ザイモサン(zymosan)により誘導される肺への炎症細胞供給へのM0014の経口的投与の、2つの独立した研究の結果をまとめている。
【0061】
実験法−肺への好中球供給
すべての研究において、雌のBalb/cマウス(7〜8週令;20g)を用いた。動物は標準的な動物収容施設中に保たれ、食物及び水への接近は制限されなかった。ザイモサンの投与(外鼻腔内(i.n);40μLの合計投与容量を与えるように各外鼻腔に20μL)から30分前及び6時間後に、経口的経路を介してビヒクル又は20gのマウス当たりに0.1〜0.2mlのM0014(0.001、0.01、0.1及び1mg/kg)を動物に無作為に与えた。動物にザイモサンAを与え、4mg/マウスの合計用量を与えた。
【0062】
薬剤調製
5mgのM0014を5mLの無菌水中に溶解し、1mg/mlの溶液を与えた。溶液は各回に新しく調製された。1mg/mlの溶液を0.1、0.01、0.001及び0.0001mg/mlの溶液に希釈した。これらの濃度から0.2mlを経口的に投与して、それぞれ1、0.1、0.01及び0.001mg/kgを得た。標準ビヒクルとして無菌水を用いた。
【0063】
実験案
研究の実験設計は以下の通りであった:
投薬から24時間後、注入用麻酔薬の過剰投薬によりマウスを死なせ、気管カニューレを介して0.5mlの食塩水を肺中に注入し、液を集めた。これを3回繰り返した。約1mlの洗浄液を集め、氷上で保存した。合計細胞及び区別的細胞を計数し、好中球数の減少が一次的終点(primary end point)であった。
【0064】
結果
気道に供給される細胞の合計数はM0014により有意に減少した(0.01及び0.1mg/kg;P<0.05,標準に対するDunnettの試験;図3a)。これは、気道への好中球の供給における0.01及び0.1mg/kgでの約40−50%の有意な減少に対応する(P<0.01;標準に対するDunnettの試験;図3c)。
【0065】
議論
本明細書上記ですでに言及した通り、現在まで、5−HT4 Rアンタゴニストに関し、例えば喘息のような気道疾患において直接の効果は観察されなかった。動物モデルにおいて、気道過応答(airway hyperresponsiveness)(AHR)の発現に含まれると主張された唯一の5−HT受容体は5−HT2A受容体であった(De Bie JJ,Henricks PA,Cruikshank WW et al.著,Modulation of airway hyperresponsiveness and eosinophilia by selective histamine and 5−HT receptor antagonists in a mouse model of allergic asthma.Br J Pharmacol 1998;124:857−64.1996;304:15−21)。
【0066】
今回、喘息性気道炎症の動物モデルにおいて5−HT4 R特異的アンタゴニストが気管支過敏性を妨げ、復帰させることができる点で、5−HR4 Rが気道過応答の発現に直接含まれる(図3を参照されたい)ことが見出され、それは前の研究と異なる。さらに
5HT4受容体のアンタゴニズム自体も、非−アレルギー性炎症のモデルにおいて炎症の部位への好中球の供給を減少させる。
【0067】
これらの結果はSegura,P.et al.の最近の公開文献において確証されており、それはモルモットにおける抗原により誘導される気道過応答にセロトニン受容体、5−HT2A、5−HT4及び5−HT7が直接含まれることを同定している(P.Segura et al.著,Clin. & Exp. Allergy (2009)
Dec 3;1−12)。この研究で、多様な5−HT4受容体アンタゴニスト及び特にGR113808は、このモルモットモデルにおいて気道過応答を正常にすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道疾患の処置及び/又は予防において用いるため;特に喘息性気道炎症及びCOPDの処置及び/又は予防において用いるための5−HT4 Rアンタゴニスト。
【請求項2】
該5−HT4 Rアンタゴニストが;
【化1】

より成る群から選ばれる請求項1に記載の5−HT4 Rアンタゴニスト。
【請求項3】
気道疾患の処置及び/又は予防において用いるため;特に喘息性気道炎症の処置及び/又は予防において用いるための式(I)
【化2】

[式中、
−R−R−は、式
−O−CH−O− (a−1)
−O−CH−CH− (a−2)
−O−CH−CH−O− (a−3)
−O−CH−CH−CH− (a−4)
−O−CH−CH−CH−O− (a−5)
−O−CH−CH−CH−CH− (a−6)
−O−CH−CH−CH−CH−O− (a−7)
−O−CH−CH−CH−CH−CH− (a−8)
の2価の基であり、
ここで該2価の基において、場合により同じ又は異なる炭素原子上の1もしくは2個の水素原子はC1−6アルキル又はヒドロキシにより置き換えられていることができ、
は水素、ハロ、C1−6アルキル又はC1−6アルキルオキシであり;
は水素、ハロ、C1−6アルキル;シアノ又はC1−6アルキルオキシで置換されたC1−6アルキル;C1−6アルキルオキシ;シアノ;アミノ又はモノもしくはジ(C1−6アルキル)アミノであり;
は水素又はC1−6アルキルであり、−OR基はピペリジン部分の3−又は4−位に位置し;
Lは水素であるか、あるいはLは式
−Alk−R (b−1)
−Alk−X−R (b−2)
−Alk−Y−C(=O)−R (b−3)
−Alk−Z−C(=O)−NR1112 (b−4)
−Alk−C(=O)−NH−C(=O)−R13 (b−5)
−Alk−C(=O)−NH−SO−R13 (b−6)
−Alk−SO−NH−C(=O)−R13 (b−7)
−Alk−SO−NH−SO−R13 (b−8)
の基であり、
ここで各AlkはC1−12アルカンジイルであり;そして
は水素;ヒドロキシ;シアノ;C3−6シクロアルキル;C1−6アルキルスルホニルアミノ;アリール;場合によりC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル又はフェニルで置換されていることができるアミノスルホニル;あるいはHetであり;
はC1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;ヒドロキシで置換されたC1−6アルキル;C3−6シクロアルキル;アリール又はHetであり;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ又はアリールであり;
XはO、S、SO又はNRであり;該Rは水素又はC1−6アルキルであり;Rは水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C3−6シクロアルキル、ヒドロキシ又はアリールであり;
Yは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;
Zは直接結合、O、S又はNR10であり、ここでR10は水素又はC1−6アルキルであり;
11及びR12はそれぞれ独立して水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルであるか、あるいはR11及びR12は、R11及びR12を保有する窒素原子と一緒になって、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル又は4−モルホリニル環を形成することができ、両者とも場合によりC1−6アルキルで置換されていることができ;
13はC1−6アルキル又はフェニルであり;
アリールは非置換フェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキルカルボニル、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル及びアミノスルホニルからそれぞれ独立して選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されたフェニルを示し;そして
Hetはフラニル;C1−6アルキル又はハロで置換されたフラニル;テトラヒドロフラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロフラニル;ジオキソラニル;C1−6アルキルで置換されたジオキソラニル;ジオキサニル;C1−6アルキルで置換されたジオキサニル;テトラヒドロピラニル;C1−6アルキルで置換されたテトラヒドロピラニル;2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ハロ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換された2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−イミダゾリル;ピロリジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピロリジニル;ピリジニル;ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリジニル;ピリミジニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリミジニル;ピリダジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピリダジニル;ピラジニル;ヒドロキシ、C1−6アルキルオキシ、C1−6アルキル又はハロからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されたピラジニル;モルホリニル;C1−6アルキルで置換されたモルホリニル;テトラゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたテトラゾリル;ピラゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたピラゾリル;イソオキサゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたイソオキサゾリル;イソチアゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたイソチアゾリル;2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;ハロ又はC1−6アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1もしくは2個の置換基で置換された2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;オキサゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたオキサゾリル;チアゾリル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたチアゾリル;あるいはピラニル;ハロ、ヒドロキシ又はC1−6アルキルで置換されたピラニルである]
の化合物、その立体化学的異性体、そのN−オキシド形態あるいは製薬学的に許容され得るその酸もしくは塩基付加塩。
【請求項4】
気道疾患の処置及び/又は予防において用いるため;特に喘息性気道炎症の処置及び/又は予防において用いるための
−OR基がピペリジン部分の3−又は4−位に位置し;ピペリジン部分の絶対立体配置が(3S,4S)であり;
Lが式(b−1)、(b−2)、(b−6)又は(b−8)の基であり;さらに特定的にLが式(b−2)の基であり;
AlkがC1−4アルカンジイル;1,3−プロパンジイル又は1,4−ブタンジイルであり;さらに特定的にAlkがC1−4アルカンジイルであり;
−R−R−が式(a−5)の2価の基であり;
が水素、ハロ又はC1−4アルキルであり;さらに特定的にRが水素であり;
がハロ又はC1−6アルキルであり;さらに特定的にRがC1−6アルキルであり;
が水素又はC1−6アルキルであり;さらに特定的にRが水素であり、−OR基がトランス立体配置を有するピペリジン部分の3−位に位置し;
がHet、アミノスルホニル又はC1−4アルキルもしくはフェニルで置換されたアミノスルホニルであり;さらに特定的にRがHetであり;
がアリール又はC1−6アルキルであり;
13がC1−4アルキルであり;
Hetがモルホリニル;ヒドロキシで置換されたピラゾリル;ヒドロキシで置換されたイソオキサゾリル;2,4−ジオキソ−イミダゾリジニル;テトラゾリル;又はヒドロキシで置換されたテトラゾリルである
請求項3に従う化合物。
【請求項5】
喘息性気道炎症の処置及び/又は予防において用いるための;
−R−R−が式(a−5)の基であり;
が水素であり;
がメチルであり;
が水素であり;そして
Lが式(b−2)の基であり、ここでXはOであり、AlkはC1−4アルカンジイルであり、そしてRはC1−6アルキルである
請求項3に従う化合物。
【請求項6】
気道疾患の処置及び/又は予防において用いるため;特に喘息性気道炎症及びCOPDの処置及び/又は予防において用いるための(3S−トランス)−8−メチル−3,4−ジヒドロ−3H−ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−6−カルボン酸[3−ヒドロキシ−1−(3−メトキシ−プロピル)−ピペリジン−4−イルメチル]−アミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−516306(P2012−516306A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546848(P2011−546848)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051028
【国際公開番号】WO2010/086387
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511180581)シレ−モベテイス・エヌ・ブイ (1)
【Fターム(参考)】