説明

水および有機溶剤に可溶および/または分散可能な剛性マトリックス組成−勾配コポリマー

下記(1)〜(3)を含む組成−勾配コポリマー:
(1)少なくとも一種の第1モノマーM1の重合で得られる反復単位であって、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg1が20℃以下で、コポリマーの全重量に対して15〜40重量%である反復単位、
(2)少なくとも一種の第2モノマーM2の重合で得られる反復単位であって、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg2が20℃以上で、コポリマーの全重量に対して45〜65重量%である反復単位、
(3)少なくとも一種の第3モノマーM3の重合で得られる親水性反復単位であって、コポリマーの全重量に対して10〜25重量%である反復単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御されたラジカル重合で得られる、水および有機溶剤に可溶および/または分散可能な剛性マトリックス組成−勾配コポリマーに関するものである。このコポリマーは両親媒性すなわち親水性と疎水性の両方の性質を示す。
本発明はさらに、上記コポリマーの製造方法と、このコポリマーの水溶解方法に関するものである。
【0002】
本発明コポリマーは多種多様な分野、特に水溶解を必要とするこの種コポリマーの分野、例えば表面処理、特にペイントまたは接着剤の分野、化粧品分野および顔料分散体に用途を見出すことができる。
従って、本発明の一般分野は両親媒性コポリマーの分野である。
【背景技術】
【0003】
両親媒性コポリマーはその構造物中に少なくとも一つの親水性官能基を有するモノマーの重合で得られる少なくとも親水性部分と、少なくとも一つの疎水性官能基を有するモノマーの重合で得られる少なくとも疎水性部分とを含むコポリマーである。そうしたコポリマーは種々の重合方法、例えばアニオン重合、標準的なラジカル重合または制御されたラジカル重合で製造できる。
【0004】
標準的なラジカル重合で得られる両親媒性コポリマーは一般にランダムコポリマーで、特に「ASR(アルカリ可溶性樹脂)」とよばれる。これは疎水性モノマー、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンと、親水性モノマー、例えばアクリル酸またはメタクリル酸とから作られる。ASRの例としてはJonhson Polymer社からのJoncrylコポリマー(スチレン-アクリル樹脂)、Neocrylコポリマー(スチレン-アクリルコポリマー)およびHaloflexコポリマー(ビニル-アクリルのコポリマー)がある。
【0005】
通常のラジカル重合で得られるランダムコポリマーの問題点は各ポリマー鎖間に不均一に分散した単位を有することにある。そのためポリマー鎖のある部分は親水性が極めて高くなり、親水性モノマーの重合で得られる単位の比率が高く、一方、別の部分は疎水性が極めて高くなる。
【0006】
ポリマー鎖の組成が不均一になる上記の問題を克服する一つの方法は、制御されたラジカル重合でポリマーを合成することである。この重合で得られたコポリマーではポリマー鎖の化学組成が均一になり、ポリマー鎖が互いに類似する。
制御されたラジカル重合で通常得られる両親媒性コポリマーは一般にブロックコポリマーであり、各ブロックは特定の特性を示す。
【0007】
しかし、このコポリマーは一般に長くて高価なプロセスを必要とするという製造上の問題がある。一般には多段合成を必要とする。特に、このブロックコポリマーの製造には連続した少なくとも2つの重合段階(少なくとも2つのブロックの形成)が必要で、2つの段階の間には最初の段階の終わりに残ったモノマーまたは揮発成分を除去する段階が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2007/0128127号明細書
【特許文献2】国際特許第2008/079677号公報
【特許文献3】米国特許第2004/180019号公報
【特許文献4】国際特許第2007/140192号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、同じ鎖内の組成に不均一性があるという上記問題と、ブロックコポリマー合成に特有の上記問題が無い、組成−勾配コポリマーを提供するという目的を設定した。
【0010】
2つ以上の異なるモノマーを含む組成−勾配コポリマーは、例えば特許文献1(米国特許第2007/0128127号明細書)で公知である。この文献には2〜25重量%の親水性モノマーと、50〜90重量%のTgが20℃以下のモノマーと、5〜25重量%の追加のモノマーとを含む組成物が、シリコンを添加した水性配合物の形で用いた時に髪の脱色を防ぐことによるヘアトリートメントでの使用に適していることが開示されている。その他の組成−勾配コポリマーは特許文献2〜4に記載されている。
【0011】
本発明の目的は新規な組成−勾配コポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の対象は、下記(1)〜(3)を含む組成−勾配コポリマーにある:
(1)少なくとも一種の第1モノマーM1の重合で得られる反復単位、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg1が20℃以下で、上記反復単位はコポリマーの全重量に対して15〜40重量%、有利には20〜35重量%である、
(2)少なくとも一種の第2モノマーM2の重合で得られる反復単位、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg2が20℃以上で、上記反復単位はコポリマーの全重量に対して45〜65重量%、有利には50〜62重量%である、
(3)少なくとも一種の第3モノマーM3の重合で得られる親水性反復単位、上記反復単位はコポリマーの全重量に対して10〜25重量%、13〜21重量%である。
【0013】
「組成勾配(composition gradient) を有するコポリマー」とは鎖に沿ってモノマー組成が局所的に連続的に変わるコポリマーを意味し(この組成は一緒に結び付けられたモノマーの反応性の関数である)、従って、局所組成が鎖に沿って不連続に変わるブロックコポリマーとは区別され、さらに、組成が連続的に変化しないランダムコポリマーとも異なる。
【0014】
Tg1は−150℃〜20℃、好ましくは−120℃〜15℃である。
ガラス遷移温度は示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
本発明の組成−勾配コポリマーは重量平均分子量を30,000〜70,000g/モル、好ましくは40,000〜60,000g/モルに、多分散性指数を2以下にすることができる。
【0015】
本発明では、本発明のコポリマーに親水性を付与する第3モノマーM3を下記の中から選択するのが有利である:
(1)少なくとも一種のカルボキシル基、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸またはフマル酸を含むエチレンモノマー、
(2)少なくとも一種のポリエチレングリコールおよび/または末端基がアルキル、燐酸基、ホスホン酸基またはスルホン酸基で置換されていてもよいグリコール基を含む(メタ)アクリレートモノマー、
(3)少なくとも一種のアミド基、例えば(メタ)アクリルアミドおよびそのN−置換誘導体を含むエチレンモノマー、
(4)アミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
(5)アミノアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、
(6)少なくとも一種の酸無水物基、例えば無水マレイン酸または無水フマル酸を含むエチレンモノマー、
(7)ビニルアミドモノマー、例えばビニルピロリドンまたはビニルアセトアミド、
(8)ビニルアミンモノマー、例えばビニルモルホリンまたはビニルアミン、
(9)ビニルピリジン、および
(10)これらの混合物。
【0016】
特に、第3モノマーM3はメタクリル酸にすることができる。
第1モノマーM1は対応するホモポリマーはガラス遷移温度が20℃以下であるアルキルアクリレート、例えば直鎖または分岐鎖のC1−C12アルキルアクリレート、特にエチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびジエンモノマーの中から選択するのが有利であり、第2モノマーM2はスチレンモノマー、特にスチレン、対応するホモポリマーはガラス遷移温度が20℃以上である(メタ)アクリレートモノマー、例えばノルボルニルアクリレートまたはメチルメタクリレート、または(メタ)アクリロニトリルの中から選択するのが有利である。
【0017】
本発明の一つの組成−勾配コポリマーは下記(1)〜(3)を含むコポリマーである:
(1)エチルアクリレートである少なくとも一種の第1モノマーM1の重合で得られる反復単位(この反復単位はコポリマーの全重量に対して32重量%または23重量%にすることができる)、
(2)スチレンである少なくとも一種の第2モノマーM2の重合で得られる反復単位(この反復単位はコポリマーの全重量に対して53重量%または60重量%にすることができる)、
(3)メタクリル酸である少なくとも一種の第3モノマーM3の重合で得られる親水性反復単位(この反復単位はコポリマーの全重量に対して15重量%または17重量%にすることができる)。
【0018】
本発明の組成−勾配コポリマーは下記(a)および(b)の段階を含む方法によって製造できる:
(a)下記(1)〜(3)を含むモノマーの混合物を少なくとも一種の制御剤(制御剤が重合反応を開始できない場合には必要に応じてさらに一種の重合開始剤)と接触させて、制御されたラジカル重合を行う段階:
(1)少なくとも一種の第1モノマーM1、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg1が20℃以下で、この第1モノマーは混合物の全重量に対して15〜40重量%である、
(2)少なくとも一種の第2モノマーM2、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg2が20℃以上で、この第2モノマーはコポリマーの全重量に対して45〜65重量%である、
(3)親水性または親水性官能基に変換可能な少なくとも一種の基を含む少なくとも一種の第3モノマーM3、この第3モノマーはコポリマーの全重量に対して10〜25重量%である、および
(b)任意段階の上記コポリマーの分離段階。
【0019】
重合段階(a)は特に、制御されたラジカル重合で用いる反応物に対して不活性なガス、例えばアルゴンまたは窒素の雰囲気下で、必要に応じて反応物を溶解する有機溶剤(モノマー、制御剤、任意成分の開始剤)の存在下で行うのが有利である。この有機溶剤は酢酸アルキル、例えば酢酸ブチルまたは酢酸エチルにすることができる。この有機溶剤は芳香族溶剤、ケトン溶剤またはアルコール溶剤にすることもできる。
【0020】
重合段階は、モノマーの混合物の化学組成、特にモノマーの伝搬速度定数および制御剤に対するモノマーの親和性に従って選択される温度で行う。この温度は10〜160℃、例えば25〜130℃、好ましくは50〜100℃の範囲で選択できる。
【0021】
重合段階では、モノマー混合物を一回で添加するか、重合段階の全持続時間にわたって連続的に添加することができる。
所望の変換率に達したときに、重合段階を停止する。少なくとも50%の変換率、好ましくは少なくとも75%の変換率、さらに好ましくは少なくとも90%の変換率にするのが好ましい。
重合段階の終わりに、必要に応じて、残っている可能性のあるモノマーを蒸発によって、または通常の重合開始剤、例えば過酸化物またはアゾ誘導体の添加によって除去する段階を実施できる。
得られた勾配コポリマーは(b)段階で重合媒体から単離できる。
【0022】
本発明では、制御剤は下記式(I)に対応するのが有利である:
【化1】

【0023】
(ここで、
1およびR3は1〜3の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
2は水素原子、1〜8の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属、例えばLi、NaまたはKまたはアンモニウムイオン、例えばNH4+またはNHBu3+を表し、
1およびR3はCH3で、R2はHであるのが好ましい)
【0024】
本発明の勾配コポリマーの設計に使用可能な特定の制御剤は下記式(II)に対応する:
【化2】

【0025】
この制御剤はブロックビルダー(BlocBuilder)とよばれている。
この制御剤は下記式(III)に対応する多官能性アルコキシアミンにすることもできる:
【化3】

【0026】
[ここで、
1およびR3は1〜3の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよく、
2は水素原子、1〜8の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属、例えばLi、NaまたはKまたはアンモニウムイオン、例えばNH4+またはNHBu3+を表し、
1およびR3はCH3で、R2はHであるのが好ましく、
Zはアリール基または式Z1−[X−C(O)]nの基を表し(ここで、Z1は例えばポリオール型化合物から得られる多官能性構造を表し、Xは酸素原子、炭素化された基または水素原子を有する窒素原子または硫黄原子であり、
nは2以上の整数である)]
【0027】
Etはエチル基に対応する省略記号であり、Buがブチル基に対応する省略記号であり、種々の異性体(n−ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)の形で存在できる。
【0028】
上記の一般定義に従った多官能性アルコキシアミン型の制御剤の例は下記の式に対応する多官能性アルコキシアミンである:
【化4】

【0029】
モノマーの選択はポリマー鎖中の正確な場所に親水性モノマーを配置する重要性によって決定される。すなわち、親水性単位をポリマー鎖のコアに配置したい場合は、親水性モノマーの反応性が疎水性モノマーの反応性より高くなるように、二官能性開始剤とモノマーの混合物とを選択するのが好ましい。これは例えば一般にアクリレートモノマーに対するメタクリル酸の場合である。親水性単位をポリマー鎖の周縁部に配置したい場合は、例えばアクリレート/ビニルピロリドン対を選択する。
【0030】
本発明の勾配コポリマーは水溶性または水分散性である。「水溶性コポリマー」とは通常は25℃の温度の水に5重量%の含有量で溶液にしたときに、透明な溶液を形成できるコポリマーを意味する。「水分散性コポリマー」とは25℃の水中に5重量%の含有量で、微細な一般に球形の粒子からなる安定な懸濁液を形成できるコポリマーを意味する。上記分散体を形成する粒子の平均径は1μm以下、一般には5〜400nm、好ましくは10〜250nmである。これらの平均粒径は光散乱法で測定する。
【0031】
従って、コポリマーを水溶液中に極めて自然に入れることができる。従って、本発明の第3の対象は、下記段階を含む、上記定義のまたは上記定義の方法で得られる勾配コポリマーの水溶解方法にある:
(a)ケトン溶剤を含む有機溶液中にコポリマーを溶解する段階、
(b)(a)で得られた上記溶液を、必要に応じて酸または塩基の溶液の添加によって中和する段階、
(c)(a)または(b)で得られた溶液に、水または水溶液を添加する段階、
(d)上記有機溶液を蒸発させる段階。
【0032】
第1段階ではケトン溶剤を含む有機溶液中にコポリマーを溶解する。コポリマーは一般に、溶液の全重量に対して20〜90重量%、好ましくは20〜50重量%の含有量の比率で溶解し、ケトン溶剤はアセトンまたはメチルエチルケトンにすることができる。
【0033】
必要に応じて、本発明の方法はコポリマーの酸および/または塩基性官能基を中和するための段階を含む。具体的には、コポリマーが酸性親水性官能基を含む場合は、中和段階を、コポリマーを含む有機溶液に、ヒドロキソニウムイオンOH-、アミン化合物、炭酸イオンCO32-または炭酸水素イオンHCO3-を含む塩基性溶液、好ましくは少なくとも1Mのものを添加することで構成できる。コポリマーがアミン型の塩基性親水性官能基を含む場合は、中和段階を、コポリマーを含む有機溶液に、酸性溶液、好ましくは少なくとも1Mのもの、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、酢酸、プロピオン酸、硫酸、ホスホン酸またはホウ化水素酸の溶液を添加することで構成できる。
コポリマーが親水性官能基、例えばジメチルアクリルアミドまたはN−ビニルピロリドンモノマーで得られるものしか含まない場合は、中和段階を実施しない。
【0034】
有機溶解の段階および任意の中和段階の後に、本発明方法は水または少なくとも水溶液を、有利には、コポリマーが、得られた溶液(有機溶液+水/水溶液)の全重量の1〜80%を占めるような比率で添加する段階を含む。水溶液は、場合によって、水とアルコールとを99/1〜50/50にすることができる比率で含む溶液にすることもできる。アルコールはエタノールおよびイソプロパノールにすることができる。
【0035】
本発明方法は所望の濃度のコポリマーが得られるまで有機溶剤を蒸発させる段階を含む。この蒸発段階は有機溶剤の蒸発に十分な温度で加熱する段階で構成できる。
【0036】
本発明の別の対象は、上記定義または上記定義の方法で得られる少なくとも一種のコポリマーを含む水性または有機組成物(または溶液)にある。この水性または有機組成物および溶解されていない本発明のコポリマーは、ペイントまたは接着配合物(特に水に対してほとんど固有親和性がない表面に塗布するためのもの)の分野または化粧配合物または顔料分散体の分野で使用できる。これらの組成物中で、コポリマーは水または水/アルコール混合物中に、有利には5重量%以上の濃度で溶解しているのが有利である。
以下、本発明の実施例を示すが、下記実施例は一例として示すもので、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0037】
以下の実施例では、モル質量およびその分散度(多分散性指数)は立体排除クロマトグラフィで決定した。較正は標準としてポリスチレンを用い、コポリマーのPMMAにはMark-Houwink係数を用いた。
コポリマーの化学組成はプロトンNMR、紫外分光法または赤外分光法で求めることができる。
【0038】
実施例1
624gのエチルアクリレートと、729.6gのスチレンと、246.4gのメタクリル酸と、400gのメチルエチルケトンと、14.1gのブロックビルダー(純度=99%)とを室温で5リットルの反応器に導入する。反応媒体を脱気した後、119℃に加熱する。この温度を200分間維持し、次いで、反応媒体を室温に冷却する。得られた変換率は73%である。次いで、500gのメチルエチルケトンを添加し、このポリマー溶液を次いで揮発装置に導入して溶剤および残留モノマーを除去する。次いで、ポリマーを固形で回収する。
ポリマーは以下の特徴を示す:
ポリ(エチルアクリレート)% 32重量%
ポリ(スチレン)% 53重量%
ポリ(メタクリル酸)% 15重量%
数平均分子量(Mn) 20,840g/モル
ピーク分子量(Mp) 51,280g/モル
重量平均分子量(Mw) 46,500g/モル
多分散性指数(PI) 1.9
【0039】
実施例2
404gのエチルアクリレートと、928gのスチレンと、272gのメタクリル酸と、400gのメチルエチルケトンと、14.2gのブロックビルダー(純度=99%)とを室温で5リットルの反応器に導入する。反応媒体を脱気した後、119℃に加熱する。この温度を255分間維持し、次いで、反応媒体を室温に冷却する。得られた変換率は73%である。次いで、500gのメチルエチルケトンを添加し、このポリマー溶液を次いで揮発装置に導入して溶剤および残留モノマーを除去する。ポリマーを次いで固形で回収する。
ポリマーは以下の特徴を示す:
ポリ(エチルアクリレート)% 23重量%
ポリ(スチレン)% 60重量%
ポリ(メタクリル酸)% 17重量%
数平均分子量(Mn) 22,390g/モル
ピーク分子量(Mp) 51,680g/モル
重量平均分子量(Mw) 47,330g/モル
多分散性指数(PI) 1.9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を含む組成−勾配コポリマー:
(1)少なくとも一種の第1モノマーM1の重合で得られる反復単位であって、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg1が20℃以下で、コポリマーの全重量に対して15〜40重量%である反復単位、
(2)少なくとも一種の第2モノマーM2の重合で得られる反復単位であって、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg2が20℃以上で、コポリマーの全重量に対して45〜65重量%である反復単位、
(3)少なくとも一種の第3モノマーM3の重合で得られる親水性反復単位であって、コポリマーの全重量に対して10〜25重量%である反復単位。
【請求項2】
第1モノマーM1の重合で得られる上記反復単位が、コポリマーの全重量に対して20〜35重量%である請求項1に記載の勾配コポリマー。
【請求項3】
第2モノマーM2の重合で得られる上記反復単位が、コポリマーの全重量に対して50〜62重量%である請求項1または2に記載の勾配コポリマー。
【請求項4】
第3モノマーM3の重合で得られる上記反復単位が、コポリマーの全重量に対して13〜21重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の勾配コポリマー。
【請求項5】
Tg1が−150℃〜20℃、好ましくは−120℃〜15℃である請求項1〜4のいずれか一項に記載の勾配コポリマー。
【請求項6】
重量平均分子量が30,000〜70,000g/モル、好ましくは40,000〜60,000g/モルで、多分散性指数が2以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の勾配コポリマー。
【請求項7】
第3モノマーM3が下記(1)〜(10)の中から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の勾配コポリマー:
(1)少なくとも一つのカルボキシル基、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸またはフマル酸を有するエチレンモノマー、
(2)少なくとも一つのポリエチレングリコールおよび/または末端基がアルキル、燐酸基、ホスホン酸基またはスルホン酸基で置換されていてもよいグリコール基を有する(メタ)アクリレートモノマー、
(3)少なくとも一つのアミド基、例えば(メタ)アクリルアミドおよびそのN−置換誘導体を有するエチレンモノマー、
(4)アミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
(5)アミノアルキル(メタ)アクリルアミドモノマー、
(6)少なくとも一つの酸無水物基、例えば無水マレイン酸または無水フマル酸を有するエチレンモノマー、
(7)ビニルアミドモノマー、例えばビニルピロリドンまたはビニルアセトアミド、
(8)ビニルアミンモノマー、例えばビニルモルホリンまたはビニルアミン、
(9)ビニルピリジン、
(10)これらの混合物。
【請求項8】
第1モノマーM1がアルキルアクリレート(その対応するホモポリマーはガラス遷移温度が20℃以下である)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびジエンモノマーの中から選択される請求項1〜7のいずれか一項に記載の勾配コポリマー。
【請求項9】
第2モノマーM2がスチレンモノマー、(メタ)アクリレートモノマー(その対応するホモポリマーはガラス遷移温度が20℃以上である)または(メタ)アクリロニトリルの中から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の勾配コポリマー。
【請求項10】
下記(1)〜(3)を含むコポリマーである請求項1〜9のいずれか一項に記載の勾配コポリマー:
(1)エチルアクリレートである少なくとも一種の第1モノマーM1の重合で得られる反復単位、この反復単位はコポリマーの全重量に対して32重量%または23重量%にすることができる、
(2)スチレンである少なくとも一種の第2モノマーM2の重合で得られる反復単位、この反復単位はコポリマーの全重量に対して53重量%または60重量%にすることができる、
(3)メタクリル酸である少なくとも一種の第3モノマーM3の重合で得られる親水性反復単位、この反復単位はコポリマーの全重量に対して15重量%または17重量%にすることができる。
【請求項11】
下記(a)と(b)の段階を有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の勾配コポリマーの製造方法:
(a)下記(1)〜(3)を含むモノマーの混合物を少なくとも一種の制御剤、制御剤が重合反応を開始できない場合には必要に応じて重合開始剤と接触させて、制御されたラジカル重合を行う段階:
(1)少なくとも一種の第1モノマーM1で、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg1が20℃以下で、混合物の全重量に対して15〜40重量%である上記第1モノマー、
(2)少なくとも一種の第2モノマーM2で、その対応するホモポリマーはガラス遷移温度Tg2が20℃以上で、コポリマーの全重量に対して45〜65重量%である上記第2モノマー、
(3)親水性または親水性官能基に変換可能な少なくとも一種の基を含む少なくとも一種の第3モノマーM3で、コポリマーの全重量に対して10〜25重量%である第3モノマー、
(b)任意段階の上記コポリマーを分離する段階。
【請求項12】
制御剤が下記式(I)、(II)および(III)の化合物の中から選択される請求項11に記載の調製方法:
【化1】

〔ここで、
1およびR3は1〜3の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、
2は水素原子、1〜8の炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属またはアンモニウムイオンを表し、
Zはアリール基または式Z1−[X−C(O)]nの基を表し(ここで、Z1は例えばポリオール型化合物からくる多官能性構造を表し、Xは酸素原子、炭素化基または水素原子を有する窒素原子または硫黄原子を表し、
nは2以上の整数である)〕。
【請求項13】
重合段階を10〜160℃の温度で実施する請求項11または12に記載の調製方法。
【請求項14】
下記(a)〜(d)の段階を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載または請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法で得られる勾配コポリマーの水溶解方法:
(a)ケトン溶剤を含む有機溶液中にコポリマーを溶解する段階、
(b)(a)で得られた上記溶液を、必要に応じて酸または塩基の溶液の添加によって中和する段階、
(c)(a)または(b)で得られた溶液に、水または水溶液を添加する段階、
(d)上記有機溶液を蒸発させる段階。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載または請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法で得られる少なくとも一種の勾配コポリマーを含む水性または有機組成物であって、上記勾配コポリマーの濃度が5重量%以上である組成物。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載または請求項11〜13に記載の方法で得られる少なくとも一種の勾配コポリマーまたは請求項15に記載の少なくとも一種の水性または有機組成物の、ペイントまたは接着配合物または化粧配合物または顔料分散体での使用。

【公表番号】特表2012−503062(P2012−503062A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527383(P2011−527383)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051760
【国際公開番号】WO2010/031973
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】