説明

水から水素を採集するための触媒、触媒製造装置、水素発生装置、水素エンジンシステム並びに水素バーナシステム

【課題】安価でコンパクトな水素エネルギー利用システムを提供する。
【解決手段】金属酸化物の一種と金属水酸化物の一種とを加熱混合せしめた触媒21を付着板20に付着せしめ、600〜700℃の蒸気を発生せしめる蒸気発生装置41からの蒸気を前記付着板20を多数積層した触媒収納装置42に送って瞬時に水を水素と酸素に分解せしめ、分解装置43により水素と酸素を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水から水素を採集するための触媒、この触媒を製造するための触媒製造装置及びこの触媒を使用した水素発生装置、水素エンジンシステム並びに水素バーナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水から水素を作る方法として本件出願人は金属酸化物と金属水酸化物とを混合して高温加熱処理した触媒の表面に700℃の蒸気を接触させることを特願2007−314839号及び特願2008−4661号で提示している。
【特許文献1】特願2007−314839号
【特許文献2】特願2008−4661号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2では、具体例として酸化クロム(Cr)と水酸化カリウム(KOH)の分析がなされているのみであり、他の具体例の開示がなされていないし、触媒の用途についても具体例が乏しい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明の水から水素を採集するための触媒は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケルのうち少なくとも1つの金属酸化物と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化カルシウムのうち少なくとも1つの金属水酸化物とを加熱混合するようにした。また、前記請求項1の金属酸化物と金属水酸化物との重量比を金属酸化物の重量を1とすると金属水酸化物の重量を2以上とすることが好ましい。更に、また、前記酸化チタン(TiO)と水酸化カリウム(KOH)とを1:2以上の重量割合で加熱混合することが好ましい。更に、また、前記酸化モリブデン(MoO3)と水酸化カリウム(KOH)とを1:2以上の重量割合で加熱混合することが好ましい。
【0005】
本発明の触媒製造装置は、金属酸化物と金属水酸化物とを溶融混合するための溶融釜と、この溶融釜で溶融された混合物を付着せしめる付着板と、この付着板を収納して混合物を熱処理するための熱処理炉とからなり、前記熱処理炉は圧力調整可能になっている。また、本発明の水素発生装置は、過熱蒸気を発生させるための蒸気発生装置と、前記過熱蒸気が送られるとともに、請求項1の触媒を収納した触媒収納装置と、この触媒収納装置によって生成された水素と酸素との水蒸気のうち、少なくとも水蒸気を蒸気発生装置又は触媒収納装置内に戻すための水蒸気循環装置とからなる。また、本発明の水素エンジンシステムは、水素で駆動する水素エンジンの排気を請求項1の触媒がセットされた触媒収納装置に送って水素ガスを生成し、この水素ガスを水素エンジンに送るようにした。また、本発明の水素バーナシステムは、水素を燃焼せしめる水素バーナからの排気である高温水蒸気を請求項1の触媒を収納した触媒収納装置を通して外部に排出せしめ、このとき採集した水素を水素バーナに送るようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明の触媒は、容易に手に入るありふれた金属酸化物と金属水酸化物との混合物からなるので、その原料が安価で製造コストが安く、しかも地球上に広く分布して十分な量が存在する。また、金属酸化物より金属水酸化物の重量を多くすることにより加熱した時に金属水酸化物の液中に金属酸化物の粉末が分散し両成分の反応が活発化される。
【0007】
本発明の触媒製造装置においては、液状混合物を付着板に付着せしめ、この付着板は裏面にヒータを配置すれば均一に加熱され、しかも圧力下で熱処理できるので最終的には、高温状態でも固定状態を保つことができる。
【0008】
本発明の水素発生装置においては、触媒上の水蒸気の1回の通過による分解効率が少なくても水蒸気が触媒上を循環するので、水蒸気内に存在する水素の殆どを水素ガスにすることができる。
【0009】
本発明の水素エンジンシステム及び水素バーナシステムにおいては、エンジン及びバーナでの水素の燃焼により高温の排気として水蒸気が発生するが、この高温水蒸気を触媒に接触させれば、水素を効率よく採集できるばかりでなく、残りの水蒸気を空気中に捨てても何ら害はなく、特にバーナシステムにおいて温室内に排出すれば加湿効果が加わり栽培植物がよく育つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
先ず、水から水素を採集するための触媒について説明する。
【0012】
本発明の触媒は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル等の金属酸化物のうち少なくとも一種と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物うち少なくとも一種を加熱混合せしめる。
【0013】
例えば、 酸化チタン(TiO)の粉末と水酸化カリウム(KOH)の粒子とを加熱混合せしめて固化して触媒とし、この触媒に600℃の水蒸気を接触させると水素と酸素と水蒸気が発生する。ここで、酸化チタンの粉末は1μ以下、すなわち、10ナノメータ以下にし、水酸化カルシウムの結晶中にできるだけ多くの量を分散させる。酸化チタン粉末の平均径が5〜10ナノメータであると水酸化カリウムの重量の10分の1程度が分散できる。
【0014】
このとき、いかなる反応が進行しているかの詳細は不明であるが、例えば次のようなことが考えられる。
(1)強アルカリであるKOHリッチでかつ高温条件下においては、ナノオーダの酸化チタン粒子は、活性状態の水分子(水蒸気)に対し、触媒活性を発揮し、水の分解反応が生じる。
【0015】
KOHrich
O→H↑+1/2O
TiO
(2)ナノオーダの酸化チタン粒子が、強アルカリであるKOHに高温条件下に曝されると、酸化チタンの界面において、一部チタン原子と酸素原子との結合が切れ、チタン原子には水酸基、酸素原子にはカリウム原子が結びつき、不安定なチタン酸化合物(K,H)Tiが形成される。
【0016】
2TiO+KOH→(K,H)Ti…(1)
このチタン酸化合物が水(水蒸気)と容易に反応して分解し、一部は酸化チタンに戻るが、一部は酸化チタン水和物の形で残り、この過程で水素が発生する。
【0017】
(K,H)Ti+(n+1)HO→TiO+TiO3・nHO+KOH
+H↑ …(2)
そして、最後にこの酸化チタン水和物が熱により脱水され安定な酸化チタンに戻る際に酸素が発生する。
【0018】
TiO3・nHO→TiO+1/2O+nHO …(3)
ここで、式(1)、(2)、(3)を加え合わせると、
O→H+1/2O…(4)
となり、この場合の化学反応は、(4)式で示されるように見かけ上HOがHとOに分解されることを示している。
【0019】
この反応は、水酸化ナトリウム(NaOH)の結晶との間でも起り得る。
【0020】
また、酸化モリブデン(MoO、MoO)のナノオーダの粉末と水酸化カリウム(KOH)又は水酸化ナトリウム(NaOH)並びに水酸化カルシウムとの混合物の間でも起こる。すなわち、強アルカリである水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ベリリウム、リッチでかつ高温条件下では、ナノオーダの酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル等の金属酸化物の細かい粒子は、活性状態(高温過熱水蒸気)の水分子に対し、触媒活性を発揮し、水の分解反応が生じる。なお、密閉された空間での反応であるので、水の気化による影響で反応時には圧力が0.2Mpa以上となっている。なお、金属酸化物は2種類以上混合してもよいし、金属水酸化物も2種類以上混合してもよい。
【0021】
上述のように、酸化チタンと水酸化カリウムの場合には、600℃以下で見かけ上水の分解が行なわれるが、他の例の場合には600〜800℃で反応して水素を発生する。水酸化ナトリウム(NaOH)の場合には、反応温度が高く700℃以上で水素を発生する。一般に、金属酸化物の粉末と水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウム等の金属水酸化物粒子との混合の際、それらを300〜600℃(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物の融点以上沸点以下で且つ金属酸化物の融点以下)に加熱して十分に混ぜ合わせる。この際、金属酸化物と金属水酸化物との重量比は、金属酸化物の粉末の周囲が金属水酸化物で被覆されるように金属水酸化物の重量を金属酸化物の重量よりはるかに多くなるようにするのが好ましく、一般に金属酸化物の粉末と金属水酸化物との重量比は1:2以上である。金属水酸化物の量が少ないと、加熱中固まってしまうし、その量が余り多いと反応性が悪くなる。
【0022】
反応性を高めるためには、金属酸化物の粉末を細かくするのが望ましいが、酸化チタンと水酸化カリウムの場合で、酸化チタン粉末が1μ以下の場合(10ナノ以下)には、酸化チタンと水酸化カリウムの重量比を1:5以上とする必要があり、特に1:8が望ましい。これは、酸化チタン粉末の表面積が極端に大きくなりその粉末が水酸化カリウムの液を吸着して固まってしまうからである。
【0023】
金属酸化物と金属水酸化物との混合は、加熱容器内で300〜600℃の温度(酸化チタンの場合は300〜350℃)で1.5〜3時間攪拌しながら十分に混合する。金属酸化物に比較して金属水酸化物の量が少ない場合には、混合物が固まってしまうので、金属水酸化物を新たに加えながら混合を行なう。金属水酸化物の量が多すぎると溶融した金属水酸化物が混合物上に浮上してしまうし、反応性も劣る。加熱容器内で加熱混合された混合物は、浅底の複数の枠板(付着板)上に注入されるが、この状態で温度が下がることにより固まる。この枠板は次に加熱可能な圧力容器内に上下に所定間隔で配置され、圧力を0.1〜0.4MPaの範囲内でかけて400℃の温度下で、3〜4時間保持し、更に450℃を3〜4時間保持し、更に500℃で3時間以上、次いで600℃で2時間、仕上げは700℃で圧力を0.4MPaとして10分間位維持する。なお、酸化チタンと水酸化カリウムの場合には、600℃で圧力0.4MPaの下で3時間保持する。このようにして熱処理を行い触媒が完成する。この触媒は、枠板(触媒を付着した付着板)のまま水素発生装置の触媒収納装置内に上下に所定間隔でセットされる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0025】
図1〜3において、本発明の触媒製造装置Mは、金属酸化物の粉末と金属水酸化の粒子とを投入して加熱混合するための溶融釜1を有し、この溶融釜1は筒状の本体2を有し、この本体2の上部側面には、混合物の排出口3が設けられている。前記本体2の上面は蓋体4によって閉塞され、この蓋体4にはモータ5が戴置され、モータ5からは撹拌棒6が垂下し、この撹拌棒6には撹拌羽根7、7が取付けられている。前記本体2の周囲及び底面には電気ヒータ8が巻回され、この電気ヒータ8は断熱材11によって被覆されている。
【0026】
前記本体1内には、適宜本数の熱電対9、9が設置され、この熱電対9及びヒータ8がコントローラ10に接続され、このコントローラ10は、混合物の温度に従って電気ヒータ8をコントロールする。
【0027】
一般に、金属酸化物の粉末と金属水酸化物の粒子とは常温では化学反応せず、この溶融釜1では金属水酸化物を融点以上に温度上昇せしめ液状にし、この金属水酸化物の液体中に金属水酸化物の粉末を均一に分散せしめる。例えば、金属酸化物のうち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの融点はぞれぞれ380℃、318℃、580℃、350℃であり、沸点はそれぞれ、1324℃、1390℃であり、水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムの沸点は特定されない。
【0028】
金属水酸化物は、融点以上で液状となるので、その粒子径は、問題とする必要がないが、金属酸化物のうち、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化バナジウム(V)の融点は、それぞれ1856℃、795℃、2852℃、690℃であり、その融点以下で混合するので、均一分散と反応性を増加させるためには、その粉末の粒子径が大きな影響を与える。すなわち、その粒子径によって、金属酸化物と金属水酸化物との混合割合(重量比)は大きく異なってくる。例えば、金属酸化物の粒子径を100μ以上とすると、金属酸化物と金属酸化物の重量比は1:2が好ましいが、金属酸化物の粒子径を2〜6μ位にすると、その重量比は1:5が好ましい。金属酸化物の粒子径が小さくなるとその表面積が増え、これに対して金属水酸化物の量が少ないと混合物が固まってしまい、金属水酸化物の量が多すぎると、液状金属酸化物が混合物の上に浮上してしまい均一な混合物とならない。更に、金属酸化物の粒子径を1μ以下、すなわち10n(ナノ)以下にすると、重量としては僅かな量を加えればよくなる。酸化チタン(TiO)の場合には、その粒子径を8ナノだと、水酸化カルシウムとの比は1:5以上で1:8〜10が好ましい。
【0029】
前記溶融釜1内には、金属酸化物の粉末と金属水酸化物の粒子が投入され、電気ヒータ8により金属水酸化物の融点以上、融点が高い水酸化カルシウムはそれが580℃であり、他の金属水酸化物の融点はこれより低いので、金属水酸化物の種類に応じて350℃〜600℃の範囲内で加熱混合される。水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化マグネシウム(Mg(OH))と酸化チタン(TiO)又は酸化モリブデン(MoO)の場合には、混合物は約450℃〜500℃に加熱することが好ましい。水酸化カルシウムの場合には600℃が必要である。混合物は撹拌羽根7により十分に撹拌されつつ1.5〜3時間程度加熱される。溶融釜1で加熱混合された混合物は、図2に示す如く、傾斜せしめて排出口3から浅底の枠板20に注入される。この枠板20は、例えばステンレス性の矩形板からなり、その周囲の側板20aの高さは1.5〜2cm程度である。側板20aは必ずしも必要でなく、触媒を付着せしめる単なる付着板でよい。この枠板20内には、混合物が0.1〜0.5cm程度の暑さに触媒層21が形成される。このようにして製造された複数の枠板20は、図3に示す如く触媒製造装置の一部をなす熱処理炉30内に所定間隔で設置され、この熱処理炉30は、ケーシング31を有し、その周囲は断熱材31bで被われ、その断熱材31b内に電気ヒータ38が設置されている。この熱処理炉30内は圧力調整可能になっており、炉内を10気圧程度に増圧するためのコンプレッサ32と、減圧するための真空ポンプ33を備え、前記コンプレッサ32は窒素ガスボンベ34に接続され、熱処理炉30内の触媒の酸化を防ぐために窒素ガスにより増圧されるようになっている。なお、熱処理炉30には、温度計35、圧力計36が設けられ、これらはコントローラ37に接続されている。
【0030】
前記枠板20はスペーサ39によって一定間隔で積層され、前記スペーサ39の変わりにヒータhを備えた伝熱板39aを設け、この上に前記枠板20を戴置してもよい(図4)。
【0031】
酸化チタン又は酸化モリブデンと水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの場合には、熱処理温度は600℃以下で行なう必要があり、例えば、400℃で2〜3時間加熱後に500℃で3〜4時間加熱し、仕上げとして580〜600℃で3時間程度加熱する。
【0032】
なお、これらの加熱中において、400℃で加熱の場合には1.5気圧程度、500℃で加熱の場合には2気圧程度、580〜600℃で加熱の場合には4気圧程度にする。なお、これら増圧間に僅かな時間(5分程度)で数回減圧すると、触媒活性が増大する。
【0033】
このようにして作られた触媒は、図5に示す如く、本発明の水素発生装置40は、過熱蒸気を発生させるための蒸気発生装置41と、前記触媒層が設けられた枠板20が複数枚収納された触媒収納措置42と、この装置42から流出する水素と、酸素と、水蒸気とを分離するための分離装置43と、分解する水を供給するための水タンク44とを備えている。
【0034】
前記蒸気発生装置41は、密封ケーシング45を備え、この密封ケーシング45内には複数の蒸発板46、47、48、49が傾斜して設けられ、最上の蒸発板46の左基端は密封ケーシング45の側壁に付着され、基端から下方に下がっている右先端が密封ケーシング45の右側側壁から離れており、蒸発板46の下側に位置する中間蒸発板47は、最上蒸発板46とは逆方向に傾斜しており、その基端は密封ケーシング45の右側壁に付着され、その左先端が開放されている。前記各蒸発板46、47、48、49の裏側にはヒータ51…51が設けられ、これらのヒータ51は各蒸発板を600℃〜700℃に加熱する。第1中間蒸発板47の下方の第2中間蒸発板48は最上蒸発板46と同じような傾斜構造をなし、最下蒸発板49は第1中間蒸発板47と同じような傾斜構造をなしている。前記水タンク44内の水はバルブ50を通って最上蒸発板46の基端側に滴下され(図5)、斜めに粒状に落ちて行く。なお、水滴は、600〜700℃の板の上では、丸くなり、ゆっくりと転がりながら蒸発し、最下位の蒸発板49上では全ての供給水滴が蒸発するようにバルブ50の開度が調整される。前記蒸気発生装置41には、温度計Tと圧力計Pが取付けられ、これらと各蒸発板46〜49の裏側のヒータ51がコントローラ53に接続されている。
【0035】
前記蒸発発生装置45から発生した600〜700℃の蒸気は、弁54を介して接触収納装置42に入り、触媒収納装置42は、密封ケーシング61を備え、この密封ケーシング61の蒸気発生装置41側には、蒸気を上下左右に分散させるための分散室62が設けられ、この分散室62は仕切板63(図7)によって仕切られ、この仕切板63には、枠板20によって対応して横方向に開口64、64…64が設けられている。前記各枠体20は、上下に所定間隔で設けられた加熱板65上に戴置され、この加熱板65内にはヒータ66が設けられている。
【0036】
前記加熱板65は、枠板20の上面に蒸気通路を形成する作用をなし、加熱板65の前端は枠板20の前端より僅かに後退して蒸気入口67を形成し、前記加熱板66の下面には蒸気入口66から流入した蒸気がジグザグに流れるように斜めに邪魔板68、68…68が取付けられ、この邪魔板68が枠板20内の接触上面に臨まされている。
【0037】
前記密封ケーシング61の分散室62の反対側には、触媒により分解した水素と酸素と水蒸気を集めるための集合室103が設けられ、この集合室103内の気体が排出管64を経て分離装置43に流入する。この分離装置43は各気体の分子の大きさによって水素と酸素と水蒸気をフィルタ65、66によって分離するものである。分離された水素と酸素はそれぞれ、水素タンク67、酸素タンク68に収納され、分離された水蒸気は、ポンプ69を備えた循環路70を経て前記蒸気発生装置41に戻される。なお、循環路70にヒータを設けて、戻り蒸気を600℃以上に維持すれば水蒸気を触媒収納装置42に戻してもよい。そして、循環路70及びヒータ等が水蒸気循環装置を形成している。
【0038】
次に、本発明の水素発生装置を利用した水素エンジンシステム及び水素バーナシステムについて説明する。
【0039】
図8は水素エンジンシステムのうち、自動車のエンジン80に本発明の水素発生装置を設置した場合を示している。水素エンジン80は、例えば自動車、発電機、飛行機等各種回転体を回転せしめるものに使用可能となる。水素エンジンはロータリーエンジンに適合すると言われており、このエンジン80の吸入孔82から吸入された水素ガスは、ピストン83により吸入、圧縮、爆発、排気の工程を経て排気孔81から排気される。この排気ガスは高温水蒸気、窒素、酸素からなっており、フィルタ84で窒素(N)、酸素(O)と高温水蒸気(V)を分離した後、高温水蒸気を加熱器85を通して600℃以上とし、その後前記触媒を上下又は左右に多数積層又は並設した触媒収納装置86を通して水素(H)、酸素(O)とし、必要に応じて未分解の水蒸気(V)を触媒収納装置86内を循環せしめた後、前記エンジンの吸入孔82からポンプ88を経てエンジン内に水素と酸素が送られる。一般に、水素エンジンの排気ガスの温度は400〜500℃であり、本発明の触媒収納装置86の作動温度が600〜700℃であるので、加熱器85及び触媒収納装置86を作動温度に保持しておく必要がある。自動車の場合には、太陽光を採光してその不足分の熱を得ることも可能であるし、駆動開始等はバッテリーから不足分の熱を得て、その後は自らの水素を燃焼させて不足熱を得ることも可能である。
【0040】
前記触媒収納装置86は、図5の触媒収納装置42のようなタイプのものでもよい。
【0041】
図9は、加熱装置としての水素バーナシステムを示すものであり、例えば、バーナをボイラに使用した場合には、ボイラのケーシング90の下部には炉心91が設けられ、この炉心91内に水素バーナ92が臨まされている。この水素バーナ92には、水素と空気(窒素と酸素)が供給されるが、炉心91で発生した高温水蒸気と燃焼しなかった窒素と酸素は炉心91の上方に設けられた触媒収納装置93を通って水素が回収された後に熱交換部94を通って排出される。この排気ガスは高温水蒸気と窒素と酸素であるので、そのまま放出しても何ら問題がない。特に植物栽培のビニールハウス等では加湿作用のあるガスとなるので、煙突は全く不要である。前記触媒収納装置93で採集された水素はタンク95に貯蔵され、ここからポンプによりバーナ92に一定圧で送られる。
【0042】
図10は、既存の火力発電システムに本発明の水素発生装置を組み込んだものであり、ボイラ100には、水タンク107からの水が後述する熱交換器104を介して供給されるとともに、ボイラ100は、水素タンク101からの水素で燃焼する水素バーナ102を有している。このボイラ100では、水が1000〜1500℃の水蒸気となり、この水蒸気は、発電機103に送られて、発電機のロータを回転した後に熱交換器104を介して水タンク107から供給される水と熱交換されて600〜700℃の水蒸気とするとともに熱交換器104で熱せられた水はボイラ100に送られる。
【0043】
ここで、600〜700℃に下げられた水蒸気は、触媒収納装置105に送られ、ここで収集されたガスは分離器106により分離され、ここで分離された水素は前記水素タンク101に送られ分離された酸素は酸素タンク108に貯留され未分解の水蒸気は熱交換器104で昇温され、再度触媒収納装置105内に供給される。
【0044】
前記分離器109で分離された熱風(O、N)は例えば、暖房等に別途使用される。なお、触媒は図2において、枠板20の代わりにペレット成形板を用い、ペレットを多数成形して図5の触媒収納装置にペレットを収納してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】溶融釜の縦断面である。
【図2】枠板に触媒も注入する際の状態図である。
【図3】熱処理部の縦断面図である。
【図4】熱処理部の枠板が加熱時の他の実施例を示す図である。
【図5】水素発生装置のシステムズである。
【図6】蒸気発生装置の要部斜視図である。
【図7】触媒収納装置の要部斜視図である。
【図8】水素エンジンのシステム図である。
【図9】水素バーナの燃焼システム図である。
【図10】水を使用した発電システム図である。
【符号の説明】
【0046】
1…溶融釜
8…電気ヒータ
20…枠板(付着板)
21…触媒層
32…コンプレッサ
33…真空ポンプ
40…水素発生装置
42…触媒収納装置
68…邪魔板
70…循環器
80…水素エンジン
85…加熱器
91…炉心
100…ボイラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケルのうち少なくとも1つの金属酸化物と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化カルシウムのうち少なくとも1つの金属水酸化物とを加熱混合してなる、水から水素を採集するための触媒。
【請求項2】
請求項1の金属酸化物と金属酸化物との重量比を金属酸化物の重量を1とすると金属水酸化物の重量を2以上としたことを特徴とする請求項1記載の触媒。
【請求項3】
酸化チタン(TiO)と水酸化カリウム(KOH)とを1:2以上の重量割合で加熱混合してなる水から水素を採集するための請求項2記載の触媒。
【請求項4】
酸化モリブデン(MoO3)と水酸化カリウム(KOH)とを1:2以上の重量割合で加熱混合してなる水から水素を採集するための、請求項2記載の触媒。
【請求項5】
金属酸化物と金属水酸化物とを溶融混合するための溶融釜と、この溶融釜で溶融された混合物を付着せしめる付着板と、この付着板を収納して混合物を熱処理するための熱処理炉とからなり、前記熱処理炉は圧力調整可能になっている触媒製造装置。
【請求項6】
過熱蒸気を発生させるための蒸気発生装置と、前記過熱蒸気が送られるとともに、請求項1の触媒を収納した触媒収納装置と、この触媒収納装置によって生成された水素と酸素と水蒸気のうち、少なくとも水蒸気を蒸気発生装置又は触媒収納装置内に戻すための水蒸気循環装置とからなる水素発生装置。
【請求項7】
水素で駆動する水素エンジンの排気を請求項1の触媒がセットされた触媒収納装置に送って水素ガスを生成し、この水素ガスを水素エンジンに送るようにした水素エンジンシステム。
【請求項8】
水素を燃焼せしめる水素バーナからの排気である高温水蒸気を請求項1の触媒を収納した触媒収納装置を通して外部に排出せしめ、このとき採集した水素を水素バーナに送るようにした水素バーナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−247961(P2009−247961A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97501(P2008−97501)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(504323205)
【Fターム(参考)】