説明

水なし平版印刷版原版

【課題】検版性に優れ、かつ火膨れ耐性が良好な水なし平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】基板上に、少なくとも感熱層と、有色顔料を含むシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、前記有色顔料の粒度分布が、少なくとも400nm以上の領域および150nm以下の領域にそれぞれ極大値を有することを特徴とする水なし平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿し水を用いずに印刷が可能な水なし平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、シリコーンゴムやフッ素樹脂をインキ反発層として使用した、湿し水を用いない平版印刷(以下、水なし平版印刷という)を行うための印刷版が種々提案されている。水なし平版印刷は、画線部と非画線部とをほぼ同一平面に存在させ、画線部をインキ受容層、非画線部をインキ反発層として、インキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷をする平版印刷方法であり、湿し水を用いることなく印刷できることが特徴である。
【0003】
水なし平版印刷版原版の露光方法としては様々な方法が提案されているが、原画フィルムを介して紫外線照射を行う方式と、原画フィルムを用いることなく原稿から直接画像を書き込むコンピュータートゥプレート(CTP)方式とに大別される。CTP方式としては、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでインキ反発層またはインキ受容層を形成する方法などが挙げられる。これらの中で、レーザー光を用いる方法は、解像度および製版速度の面で他の方式よりも優れている。
【0004】
また、水なし平版印刷版原版は、感熱層を露光工程または現像工程で除去する感熱層除去型と、露光工程、現像工程を経た後でも感熱層が残存する感熱層残存型に大別される。感熱層除去型は感熱層が除去されるため、感熱層中に有色色素を含むことにより画線部、非画線部間に色コントラストをつけることが可能である。このため、後染色工程がなくても検版できるといったメリットを有している。しかし、画線部を形成するセルの深さが深いために、印刷時に多量のインキを必要とする。また、感熱層を深さ方向に除去する必要があるため、微細画像を再現し難いといった課題も有している。
【0005】
一方、感熱層残存型は、現像後も画線部の感熱層が残存するため、印刷時のインキ使用量が少なく、微細画像の再現性も良好である。特にCTP方式の場合には、低いレーザー出力で露光できるため、ランニングコストやレーザー寿命の点で有利であるばかりでなく、レーザー照射時にアブレーションカスが発生しないため、特別な吸引装置が不要となる。しかしながら、画線部、非画線部ともに感熱層が残存することから、画線部と非画線部の色コントラストが得られにくく、検版が困難であった。
【0006】
感熱層残存型の水なし平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製造する方法において、版を染色する工程を有する方法が提案されている。この方法により画線部染色後の印刷版は検版が可能となるが、染色工程が余分に必要となるため、染色液の管理、現像機の大型化、コスト等の点で課題があった。
【0007】
これに対して、シリコーンゴム層中に光退色性物質または光発色性物質を含有する水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)、シリコーンゴム層中に染料を含有する水なしCTP平版印刷版原版(例えば、特許文献2参照)が提案されている。これらの印刷版原版は、後染色工程がなくとも検版することができる。しかし、光退色性物質または光発色性物質を含有するものは明室で取り扱うことができない課題を有していた。また、染料を含有するものは、経時によりシリコーンゴム層中の染料が層内凝集を生じたり、より極性の高い感熱層界面に染料が集中したり、シリコーンゴム層上に保護フィルムを有する場合には保護フィルムに染料が吸着する等、シリコーンゴム層における色素定着性に課題があった。このため、検版性の低下や、染料集中によるシリコーンゴム層/感熱層間の接着力低下が生じる場合があった。また、現像時に使用する各種有機薬液や印刷時に用いられるインキ中の溶剤等で有色染料が抽出される場合もあり、検版性の低下や、抽出された染料による現像薬液やインキの汚染が生じる場合があった。
【0008】
これに対して、後染色工程を必要とせずに検版が可能であり、明室での取り扱いが可能で、シリコーンゴム層中の色素定着性に優れた高感度な水なし平版印刷版原版として、有色顔料のシリコーンゴム層中における体積濃度が5体積%以下であり、かつ有色顔料の平均粒子径が400nm以下である水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−189993号公報
【特許文献2】特開2002−244279号公報
【特許文献3】特開2009−80422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載された技術により、検版性は向上するものの、露光時にシリコーンゴム層が浮き上がる(以下、火膨れと称する)という新たな課題が発生した。露光部のシリコーンゴム層は、通常、現像により除去される部分である。しかし、火膨れにより現像に先立って剥離したシリコーンゴム層は、自動現像機のローラーに付着したり露光機内を汚染したりするなど、製版作業性の低下につながる。本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、検版性に優れ、かつ火膨れ耐性が良好な水なし平版印刷版原版を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板上に、少なくとも感熱層と、少なくとも有色顔料を含むシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、有色顔料の粒度分布が、少なくとも400nm以上の領域および150nm以下の領域にそれぞれ極大値を有することを特徴とする水なし平版印刷版原版である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検版性に優れ、火膨れ耐性が良好な水なし平版印刷版原版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、検版性と火膨れ耐性の両立という上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、有色顔料の粒度分布を特定の範囲にすることにより、課題を解決することを見いだした。
【0014】
本発明の水なし平版印刷版原版は、基板上に、少なくとも感熱層と、少なくとも有色顔料を含むシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、有色顔料の粒度分布が、少なくとも400nm以上の領域および150nm以下の領域にそれぞれ極大値を有することを特徴とする。
【0015】
感熱層およびシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版は、一般的に、露光により感熱層とシリコーンゴム層の接着力が低下する。そして、露光部のシリコーンゴム層を現像により除去することで、水なし平版印刷版を得る。しかし、露光により感熱層とシリコーンゴム層の接着力が過度に低下して火膨れを生じると、現像に先だって露光部のシリコーンゴム層が剥離する。剥離したシリコーンゴム層は、露光機内を汚染したり、自動現像機で現像を行う場合に自動現像機のローラーに付着して搬送性を低下させたり、さらに他の水なし平版印刷版原版に付着したりする。これらは水なし平版印刷版原版から水なし平版印刷版を作製する製版作業性を低下させることから、火膨れ耐性の良好な水なし平版印刷版原版が求められている。
【0016】
本発明の水なし平版印刷版原版は、シリコーンゴム層に含まれる有色顔料が、400nm以上の領域に粒度分布の極大値を有すること、すなわち、粒子径(球状粒子の直径)が400nm以上である有色顔料を含有することにより、かかる有色顔料が存在する部分は露光工程において照射される光が感熱層へ到達することを妨げるものと考えられ、露光部であっても感熱層とシリコーンゴム層との接着を維持する。露光部において、局所的に感熱層とシリコーンゴム層との接着が維持された部分が錨のような効果を奏し、火膨れ耐性を向上させることが可能となる。粒子径が400nm未満の場合、露光工程において照射される光を十分に遮ることができないため、照射エネルギーが高い場合に火膨れを生じる。550nm以上が好ましい。一方、画像再現性の観点から、1500nm以下の領域に極大値を有することが好ましく、1000nm以下がより好ましい。
【0017】
さらに、150nm以下の領域に粒度分布の極大値を有すること、すなわち、粒子径(球状粒子の直径)が150nm以下である有色顔料を含有することにより、良好な検版性を両立させることが可能となる。150nm以上の場合、表面積の低下により反射濃度も低下するため、検版性が低下する。50〜100nmの領域に粒度分布の極大値を有することが好ましい。
【0018】
シリコーンゴム層中に分散された有色顔料の粒子径は、水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層断面を、透過型電子顕微鏡を用いて、1万倍の倍率で観察することにより測定できる。本発明においては、観察に用いる試料の切片厚さは1μmとし、22.2μmの視野に観察される有色顔料の直径を測定する。場所を変えて10視野測定し、観察された有色顔料の直径の分布から、粒度分布の極大を求めることができる。
【0019】
本発明においては、シリコーンゴム層中に有色顔料を含むことが重要である。本発明において有色顔料とは、可視光波長域(380〜780nm)におけるいずれかの光を吸収する顔料をいう。一般に、顔料は水や脂肪族炭化水素などの有機溶剤に不溶であるため、顔料を含むことにより、水や有機溶剤に可溶な染料を含む場合に比べて、現像工程において用いられる水や有機薬液、印刷工程において用いられるインキ中の溶剤や各種洗浄剤等による色素抽出が格段に抑えられる。
【0020】
有色顔料は、有色無機顔料、有色有機顔料に分類される。有色無機顔料としては、例えば、べんがら、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒等の酸化物、黄色酸化鉄、ビリジアン等の水酸化物、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物・セレン化物、紺青などのフェロシアン化物、黄鉛、ジンククロメート、モリブデンレッド、ストロンチウムクロメート等のクロム酸塩、含水硅酸塩、群青、ガーネット等の硅酸塩、マンガンバイオレット等の燐酸塩、カーボンブラック等が挙げられる。有色有機顔料としては、例えば、体質顔料に染料を染め付けた捺染系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料や、アルカリブルー、アニリンブラック等が挙げられる。捺染系顔料の材料となる染料としては、ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料、キノリンイエロー、ピーコックブルー、アルカリブルー等の酸性染料、マラカイトグリーン等の建染染料、アリザリン等の媒染染料が挙げられる。また、アゾ系顔料の具体例としては、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B等の溶性アゾ、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド等の不溶性アゾ、クロモフタルイエロー3G、クロモフタルスカーレットRN等の縮合アゾ、ニッケルアゾイエロー等のアゾ錯塩、パーマネントオレンジHL等のベンズイダゾロンアゾが挙げられる。フタロシアニン顔料の具体例としては、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。縮合多環顔料の具体例としては、アントラキノン系顔料、アントラピリミジンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー等のスレン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等のキナクリドン系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料、イソインドリノンイエロー等のイソインドリノン系顔料等が挙げられる。また、ニトロ系顔料としてはナフトールイエローS等、ニトロソ系顔料としてはナフトールグリーンB等が挙げられる。
【0021】
検版性の観点から、粒子径が150nm以下である有色顔料の含有量(体積濃度)はシリコーンゴム層中の0.1体積%以上が好ましい。また、火膨れ耐性の観点から、粒子径が400nm以上である有色顔料の含有量は1体積%以上が好ましい。また、シリコーンゴム層のインキ反発性や、版材の感度・画像再現性の低下を抑制する観点から、有色顔料の総含有量は、シリコーンゴム層中の10体積%以下が好ましい。
【0022】
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層は付加反応型、縮合反応型いずれであってもよい。
【0023】
付加反応型のシリコーンゴム層は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)、反応抑制剤および硬化触媒を含む組成物(以下、シリコーンゴム層組成物液という)を塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。
【0024】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。
−(SiR−O−)− (I)
【0025】
上記一般式(I)中、nは2以上の整数を示す。RおよびRは同じでも異なってもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。
【0026】
上記一般式(I)中、RおよびRは全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0027】
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。上式中、Rはアルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。
【0028】
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクリレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレート等のジメチルハイドロジェンシリル基含有アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリル等のモノマーとを共重合したオリゴマーが挙げられる。
【0029】
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0030】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールが好ましく用いられる。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0031】
硬化触媒は公知のものから選ばれるが、好ましくは白金系化合物であり、具体的には、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを挙げることができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0032】
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、特にビニル基やアリル基を有するものが好ましい。
【0033】
縮合反応型のシリコーンゴム層は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒を含む組成物(シリコーンゴム層組成物液)を塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。
【0034】
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、前記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。
【0035】
一般式(I)中のRおよびRは、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。その取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0036】
縮合反応型のシリコーンゴム層に用いられる架橋剤としては、下記一般式(II)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミノシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
(R4−mSiX(II)
【0037】
上記一般式(II)中、mは2〜4の整数を示す。Rは同じでも異なってもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xは同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミノ基、アミノオキシ基、アミド基またはアルケニルオキシ基である。上記一般式(II)において、加水分解性基の数mは3または4であることが好ましい。
【0038】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン等のケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン等のアルケニルオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。
【0039】
架橋剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の強度や印刷版の耐傷性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0040】
硬化触媒としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中で、金属の有機酸塩が好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩が好ましい。このような化合物の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。
【0041】
硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性、接着性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物液中15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0042】
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、公知のシランカップリング剤などを含有してもよい。
【0043】
シリコーンゴム層組成物液中、およびシリコーンゴム層中における有色顔料の分散性を向上させるために、シリコーンゴム層に顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤としては、例えば、特開2009−080422号公報等に記載された顔料分散液を挙げることができる。
【0044】
有色顔料の分散やシリコーンゴム層組成物液の希釈に用いられる溶剤としては、低極性の溶剤が好ましく、中でも溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の溶剤が、溶解性、塗工性などの観点から好ましい。溶剤を2種以上用いてもよく、この場合には、いずれの溶剤も溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であることが好ましい。
【0045】
溶解度パラメーターは、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2により定義される量δをいう。溶解度パラメーターの単位には(MPa)1/2を用いる。溶解度パラメーターの単位としては(cal・cm−31/2もよく用いられており、両者の単位間には、δ(MPa)1/2=2.0455×δ(cal・cm−31/2の関係式がある。具体的には、溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2は8.3(cal・cm−31/2となる。溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2以下の溶剤としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類が挙げられる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソオクタン、“アイソパー”(登録商標)C、“アイソパー”(登録商標)E、“アイソパー”(登録商標)G、“アイソパー”(登録商標)H、“アイソパー”(登録商標)K、“アイソパー”(登録商標)L、“アイソパー”(登録商標)M(エクソン化学(株)製)等の脂肪族飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等の脂肪族不飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トリフルオロトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル等のエーテル類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。経済性および安全性の点から、脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素が好ましい。これら脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素の炭素数は4〜20が好ましく、6〜15がより好ましい。
【0046】
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層の膜厚は0.5〜20g/mが好ましい。膜厚を0.5g/m以上とすることで印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20g/m以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。
【0047】
本発明に用いられる感熱層としては、これまでに感熱層残存型水なし平版印刷版原版用感熱層として提案されたいずれのタイプの感熱層も使用可能である。以下、具体例を挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0048】
(感熱層−1)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開2005−300586号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造と気泡を有しており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層の表層が隆起するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分の感熱層の表層とシリコーンゴム層が除去される。隆起によって現像が可能となるため、火膨れが起こりやすい。
【0049】
(感熱層−2)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平11−221977号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0050】
(感熱層−3)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開2005−300586号公報に記載の気泡を含んだ感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0051】
(感熱層−4)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平9−131981号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で破壊されるタイプの感熱層である。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が破壊された感熱層と一緒に除去され画線部となる。一般的にこのような感熱層は検版性の観点から感熱層を深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし感熱層を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると感熱層の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。感熱層の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明における有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には、感熱層の大部分が残存しても検版が可能となる。
【0052】
(感熱層−5)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平7−314934号公報や特開平9−086065号公報に記載の金属、またはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物の薄膜等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で金属薄膜が破壊される。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。感熱層−4同様、一般的にこのような金属薄膜も検版性の観点から深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし金属薄膜を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると金属薄膜の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。金属薄膜の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明における有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には、金属薄膜の大部分が残存しても検版が可能となる。
【0053】
(感熱層−6)ポジ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平11−157236号公報や、特開平11−240271号公報に記載の熱硬化型感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で熱活性化架橋剤による架橋構造が形成されるタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部のシリコーンゴム層が除去される。レーザー未照射部の感熱層は現像後も残存する。
【0054】
本発明に用いられる基板としては、従来印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、フィルム等を使用することができる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフィルム、上記の金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明、不透明いずれのものでも使用できる。中でも不透明のフィルムを用いることが検版性の点から好ましい。
【0055】
これら基板のうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用のフレキシブルな基板としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0056】
基板と感熱層間の接着性向上、光ハレーション防止、検版性向上、断熱性向上、耐刷性向上等を目的に、前述の基板の上にプライマー層を有してもよい。本発明に用いられるプライマー層としては、例えば特開2004−199016号公報等に記載されたプライマー層を挙げることができる。
【0057】
上述したように構成された水なし平版印刷版原版は、シリコーンゴム層保護の目的で保護フィルムや合紙を有してもよい。保護フィルム、および合紙は、そのどちらか一方を単独で有してもよいし、両方を併用してもよい。
【0058】
保護フィルムとしては、露光光源波長の光を良好に透過する厚み100μm以下のフィルムが好ましい。代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。また、曝光による原版の感光を防止する目的で、特開平2−063050号公報に記載されたような種々の光吸収剤や光退色性物質、光発色性物質を保護フィルム上に有してもよい。原画フィルムを用いて露光する場合は、原画フィルムとの密着性向上の観点から、特開昭55−55343号公報や特開平2−063051号公報に記載された凹凸加工された保護フィルムを用いることが好ましい。
【0059】
合紙としては、秤量30〜120g/mのものが好ましく、より好ましくは30〜90g/mである。秤量30g/m以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、水なし平版印刷版原版と紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m(王子製紙(株))、クルパック73g/m(王子製紙(株))などがあげられるがこれらに限定されるものではない。
【0060】
次に、本発明の水なし平版印刷版原版の製造方法を記載する。塗布面を脱脂した基板上に、必要によりプライマー層組成物液を塗布し、プライマー層を設ける。乾燥や硬化のために加熱処理を行ってもよい。その後プライマー層と同様の方法で、感熱層、シリコーンゴム層を順次設けることで水なし平版印刷版原版を得ることができる。各液の塗布方法としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーターなどによる塗布方法が用いられる。また感熱層として金属薄膜を設ける場合は、蒸着法やスパッタリング法等の一般的な方法が用いられる。各層の加熱には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。
【0061】
有色顔料含有シリコーンゴム層は、有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液を感熱層上に塗布することにより得られる。必要により、乾燥や硬化のための加熱処理を行ってもよい。以下、各液の具体的な作製方法を記載する。
【0062】
有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液は、有色顔料の分散性の観点から、有色顔料分散液と、有色顔料を除くシリコーンゴム層組成物液を予め別々に作製しておき、後に両液を混合する方法が好ましい。有色顔料分散液は、少なくとも顔料分散剤および溶剤を含有する溶液中に、有色顔料を添加し、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ディスパーサー、ホモジナイザー、アトライター、超音波分散機等の分散機で均一に分散混合することにより得られる。一方、有色顔料を除くシリコーンゴム層組成物液は、溶媒に、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤、反応触媒等)を混合することにより得られる。
【0063】
この作製方法の利点としては、有色顔料分散液をシリコーンゴム層組成物液中に加えてすぐに塗布が可能なため、顔料凝集を起こしにくいという利点がある。また、予め希釈溶剤中に有色顔料が分散されていることから、有色顔料分散シリコーンペーストを溶剤で希釈する方法に比べ、溶剤希釈時に発生する有色顔料の凝集も起こりにくい。さらに、分散機を用いた分散工程において、有色顔料分散液はシリコーン材料を含まないため、シリコーン材料による分散機への汚染もない。
【0064】
有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液を塗布する際、感熱層表面に付着した水分を可能な限り除去することが接着性の観点から好ましい。具体的には、乾燥ガスを充填、または、連続供給することにより水分を除去した空間で、有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液の塗布を行う方法が挙げられる。
【0065】
有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液は、塗布後、直ちに加熱されることが硬化性や感熱層との接着性の観点から好ましい。
【0066】
得られた水なし平版印刷版原版上に保護フィルム、または合紙のいずれか一方、もしくはその両方を設けて保管することが、版面保護の観点から好ましい。
【0067】
このようにして得られた水なし平版印刷版原版は、保護フィルム上、または保護フィルム剥離後、画像フィルムを介して露光するか、デジタルデータによりレーザー走査露光することにより画像様に露光される。露光光源としては、例えば、カーボンアーク灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、紫外光レーザー、可視光レーザー、(近)赤外光レーザーなどが挙げられる。
【0068】
露光後の原版は、現像液の存在下もしくは非存在下での摩擦処理により現像がなされる。摩擦処理は、不織布、脱脂綿、布、スポンジ、ブラシ等で版面を擦ることによって、あるいは、現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジ等で版面を拭き取ることによって行うことができる。また、現像液で版面を前処理した後に水道水等をシャワーしながら回転ブラシで擦ることや、高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射することによっても行うことができる。
【0069】
現像に先立ち、前処理液中に一定時間版を浸漬する前処理を行ってもよい。前処理液としては、例えば、水や水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。界面活性剤としては、安全性、廃棄する際のコスト等の点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10重量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄コスト等の経済性の点でも好ましい。さらに、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましく、アミン化合物を共存させることがより好ましい。
【0070】
前処理液、現像液としては、特開昭63−179361号公報、特開平4−163557号公報、特開平4−343360号公報、特開平9−34132号公報、特許第3716429号公報に水なし平版印刷版原版の前処理液、現像液として開示されたものを挙げることができる。前処理液の具体例としては、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、PH−7N、CP−1、NP−1、DP−1(いずれも東レ(株)製)などを挙げることができる。
【0071】
上記現像処理は自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部、現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置等を使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(共に東レ(株)製)等や、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができ、これらを単独または併用して使用することができる。
【0072】
現像処理された印刷版を積み重ねて保管する場合には、印刷版保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。各シリコーンゴム層構成成分の秤量はボックス内の水分を追いだしたグローブボックス内で行い、各構成成分を乾燥窒素ガスで充填された容器内で分散、混合することでシリコーンゴム層組成物液を調製した。各実施例および比較例中の有色顔料の粒度分布測定、検版性評価、火膨れ耐性評価および画像再現性評価は以下の方法で行った。
【0074】
<有色顔料の粒度分布測定>
シリコーンゴム層中に分散された有色顔料の粒度分布は、水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層断面を、透過型電子顕微鏡H−7100FA(日立製作所(株)製)を用いて、1万倍の倍率で観察することにより測定した。観察に用いる試料の切片厚さは1μmとし、22.2μmの視野に観察される有色顔料の直径を測定した。場所を変えて10視野測定し、観察された有色顔料の直径の分布から、粒度分布の極大を求めた。
【0075】
<検版性評価>
各実施例および比較例により得られた水なし平版印刷版上の5%、20%、35%、50%、65%、80%、95%の各網点(175lpi)の網点面積率を、網点面積率測定装置:“ccDot”type4(センターファックス社製)により計測した。より具体的には、測定色としてシアンを選択し、露光、現像により得られた水なし平版印刷版上の50%網点の網点面積率を3回測定し、次いで、5%、20%、35%、50%、65%、80%、95%の順で各網点の網点面積率をそれぞれ3回ずつ測定し、その平均値を網点面積率とした(平均値の小数点以下第1位を四捨五入)。なお、本発明の水なし平版印刷版原版は最上層のシリコーンゴム層が着色されているため、露光、現像後の水なし平版印刷版はネガ様像となる(非画線部:濃色、画線部:淡色)。このことから、ネガ(装置での表示:−(マイナス))モードで網点面積率測定を行った。
◎:正確に読み取り可能(最大測定誤差:±1%以下)
○:ほぼ正確に読み取り可能(最大測定誤差:±2%〜3%)
×:ノイズが多く正確に読み取れない(最大測定誤差:±4%以上)
【0076】
<火膨れ耐性評価>
各実施例および比較例により得られた1030mm×800mmの水なし平版印刷版原版の版面全体を、製版機:PlateRite−8800E(大日本スクリーン(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて100%の網点(175lpi)を照射エネルギー90mJ/cmで露光し、刷版を排出した。版端部の露光後のシリコーンゴム層を目視で観察し、シリコーンゴム層の浮き上がりを観察した。浮き上がりが確認できなかった場合、照射エネルギーを5J/cmずつ増やして浮き上がりの有無を観察し、以下の基準で評価した。
◎:130mJ/cm以上で浮き上がり始める
○:120〜125mJ/cmの間で浮き上がり始める
×:115mJ/cm以下で浮き上がりが生じる。
【0077】
<画像再現性評価>
各実施例および比較例により得られた水なし平版印刷版原版を、製版機:PlateRite−8800E(大日本スクリーン(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて1〜99%の網点(175lpi)を照射エネルギー114mJ/cmで露光し、刷版を排出した。続いて、自動現像機:TWL−860KII(東レ(株)製、前処理液:35℃“PP−F”(東レ(株)製)、現像液:水道水、後処理液:“PA−F”(東レ(株)製))により、版搬送速度80cm/分で、上記露光済み版の現像を行い、得られた水なし平版印刷版の網点を、以下の基準により評価した。
◎:1〜99%の網点が再現
○:2〜99%の網点が再現
△:3〜99%の網点が再現
×:5〜99%の網点が再現
【0078】
各実施例および比較例に用いる有色顔料分散液は次の方法で作製した。ジルコニアビーズ:“YTZ(登録商標)”ボール(φ0.6mm、(株)ニッカトー製)2000gを充填した密閉可能なガラス製規格瓶中に、“アイソパー(登録商標)”G(エッソ化学(株)製):420g、“プレンアクト(登録商標)”KR−TTS(味の素ファインテクノ(株)製):40g、N650紺青(大日精化(株)製):100gを投入し、密閉後、小型ボールミル回転架台(アズワン(株)製)にセットし、0.4m/秒の回転速度で以下に記載の時間分散することで有色顔料分散液を得た。得られた有色顔料分散液を固形分濃度2重量%に希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500((株)堀場製作所製)を用いて平均粒子径(直径)を測定した。
有色顔料分散液1:48時間 平均粒子径2000nm
有色顔料分散液2:96時間 平均粒子径1153nm
有色顔料分散液3:120時間 平均粒子径923nm
有色顔料分散液4:168時間 平均粒子径562nm
有色顔料分散液5:240時間 平均粒子径254nm
有色顔料分散液6:300時間 平均粒子径97nm
有色顔料分散液7:340時間 平均粒子径52nm
【0079】
(実施例1〜7、比較例1〜8)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記のプライマー層組成物液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、膜厚10g/mのプライマー層を設けた。
【0080】
<プライマー層組成物液>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20重量%):375重量部
(c)アルミキレート:“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10重量%):1重量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50重量%):60重量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730重量部
(g)メチルエチルケトン:250重量部
次いで、下記の感熱層組成物液を前記プライマー層上に塗布し、120℃で90秒間加熱し、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。
【0081】
<感熱層組成物液>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)チタンキレート:“ナーセム”チタン(日本化学産業(株)製、固形分濃度:73重量%):11重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”PR50731(住友デュレズ(株)製):75重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)IB465(三洋化成工業(株)製)の溶剤置換品(置換溶剤:テトラヒドロフラン、固形分:15重量%):47重量部
(e)メチルエチルケトン:422重量部
(f)エタノール:85重量部
(g)イソパラフィン:“アイソパー”(登録商標)H(エッソ化学(株)製):17重量部
【0082】
次いで、下記組成に表1記載の有色顔料を加えた有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液を前記感熱層上に塗布し、135℃で80秒間加熱し、膜厚1.8g/mのシリコーンゴム層を設けた。加熱直後のシリコーンゴム層は完全に硬化していた。
【0083】
<有色顔料含有シリコーンゴム層組成物液>
(a)イソパラフィン:“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):550重量部
(b)両末端ビニルポリジメチルシロキサン“DMS”V52(ゲレスト社製):81.28重量部
(c)SiH基含有ポリシロキサン:“HMS”991(ゲレスト社製):3重量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3重量部
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:“サイラエース”(登録商標)S510(チッソ(株)製):4重量部
(f)白金触媒:“SRX”212(東レダウコーニングシリコーン(株)製):7重量部
(g)下記方法で調製した有色顔料分散液:3重量部
実施例1:有色顔料分散液7と有色顔料分散液2を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
実施例2:有色顔料分散液7と有色顔料分散液2を1.8/1.2(重量比)で混合したもの
実施例3:有色顔料分散液7と有色顔料分散液2を1.5/1.5(重量比)で混合したもの
実施例4:有色顔料分散液7と有色顔料分散液3を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
実施例5:有色顔料分散液7と有色顔料分散液4を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
実施例6:有色顔料分散液6と有色顔料分散液2を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
実施例7:有色顔料分散液6と有色顔料分散液4を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
比較例1:有色顔料分散液7と有色顔料分散液5を2.4/0.6(重量比)で混合したもの
比較例2:有色顔料分散液7
比較例3:有色顔料分散液6
比較例4:有色顔料分散液5
比較例5:有色顔料分散液4
比較例6:有色顔料分散液3
比較例7:有色顔料分散液2
比較例8:有色顔料分散液1
【0084】
このように作製されたネガ型水なしCTP平版印刷版原版について、上記方法で検版性、火膨れ耐性、画像再現性を評価した。結果を表1に記す。
【0085】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも感熱層と、有色顔料を含むシリコーンゴム層とを有する水なし平版印刷版原版であって、前記有色顔料の粒度分布が、少なくとも400nm以上の領域および150nm以下の領域にそれぞれ極大値を有することを特徴とする水なし平版印刷版原版。

【公開番号】特開2011−207031(P2011−207031A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76742(P2010−76742)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】