説明

水の光分解装置および光分解方法

本発明に係る水の光分解装置は、外部から太陽光Lが入射可能なケーシング1と、ケーシング1内に収容される光分解層5とを備え、光分解層5は、光透過性のある多孔体51とこれに担持される光触媒粒子52とを備えており、光分解層5の下方には、第1の空間6を介して液体状の水を含む水層4が配置され、ケーシング1内において光分解層5の上方には密閉された第2の空間7が形成されており、水層4から発生した水蒸気が第1の空間6を介して光分解層5に導入され、太陽光Lによって励起された光触媒粒子52により水蒸気が酸素と水素とに分解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光触媒反応により、水を分解して水素及び酸素を得る光分解装置および光分解方法に関する。
【背景技術】
半導体光電極での水の光分解の発見、いわゆる本多−藤島効果の発見以来、光を化学エネルギーに変換する有力な手段として、光触媒による水の分解に関する多くの研究がなされている。半導体光触媒による水の光分解のメカニズムについては、以下のことが知られている。すなわち、例えばn型半導体を光触媒とした場合、バンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯に光励起され、伝導帯には自由電子が生成される一方、価電子帯には正孔が生成される。そして、これらが、それぞれ還元反応と酸化反応を起こすことができれば、光触媒反応が進行する。
半導体光触媒によって水の光分解が起こるためには、半導体のバンド幅が水の電解電圧(理論値1.23V)より大きくなければならない。さらに、伝導帯の電子が水を還元でき、かつ価電子帯の正孔が水を酸化できる能力も必要とされる。すなわち、伝導帯の下端は、水からの水素発生電位よりマイナス側に位置していなければならず、価電子帯の上端は、酸素発生電位よりプラス側に位置していなくてはならない。
このような条件を満たす半導体としては、これまで、二酸化チタンを始め、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウム、硫化カドミウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄などが見出されている。さらに、これらの半導体に白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの金属を助触媒として担持したものが、水の光分解用の光触媒として、有効であることが知られている。
以上のような光触媒を利用した例として、例えば文献1(特開平11−188269号公報)及び文献2(特開2000−126761号公報)に示すものがある。これらの文献には、光触媒を担持した多孔質体を池等の水面に浮揚させておき、この多孔質体に光が照射されることで光触媒反応を生じさせ、これによって水を浄化することが開示されている。
ところで、上記のような水の光分解反応に太陽光を利用することができれば、生成した水素及び酸素を蓄えておき、必要な時に反応させて熱や電気を得ることもできる。すなわち、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵したことになり、太陽エネルギーの極めて有効な利用手段となり得る。
しかしながら、水素発生に活性な触媒、特に金属触媒は、水素と酸素との反応にも活性であり、水の光分解を行うと逆反応が発生するという問題があった。例えば、白金(Pt)を担持した光触媒を水中に懸濁し、これに光照射した場合、光分解反応によって生成した水素と酸素とは、別個の気泡として触媒から離脱する前に混合していた。こうして混合された水素及び酸素は、Ptに触れて反応し、再び水に戻ってしまうため、得られる水素及び酸素の量はわずかであった。
これを解決するため、例えば文献3(表面、第33巻、第2号、45〜58ページ(1995年))には、粉末状の半導体光触媒を水に分散させて、反応装置全体を振とうすることにより、太陽光と触媒との接触を増加させる方法が開示されている。また、文献4(特許第3096728号公報)には、光触媒を吸水材料の上に載置するとともに、吸水材料に水を含浸させることにより表面が濡れている程度にし、上方から太陽光を照射する方法が開示されている。
しかしながら、文献3の方法では、機械的エネルギーの投入が必要であり、得られるエネルギー量よりも、水素を生成するために投入するエネルギー量の方が大きくなるという問題がある。これを解決するため、文献4では、光触媒表面に吸水材料から水を供給するとともに、太陽光が直接的に光触媒と水との界面に到達できるようにしており、振とうなどの機械的混合を行わなくてもよい構成としている。しかしながら、この構成では、光触媒が吸水材料表面にのみ分散しており、密度が低いため、十分な収量を得ることは難しい。
また、次のような問題もある。すなわち、太陽光は、紫外領域から赤外領域まで広い範囲のエネルギー分布を有するが、光触媒による分解反応に利用されるのは紫外〜可視光領域のみである。そのため、従来より、赤外領域にある太陽熱エネルギーは利用されていない。したがって、従来の光分解装置では、必ずしも太陽光を有効に利用しているとは言えなかった。
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであって、逆反応を抑制することにより水素及び酸素を効率よく得ることができ、さらに、太陽エネルギーを有効利用して水の光分解を促進することができる水の光分解装置および光分解方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明に係る水の光分解装置は、上記問題を解決するためになされ、外部からの光が入射可能なケーシングと、前記ケーシング内に収容される光分解層とを備え、前記光分解層は、光透過性のある多孔体と、この多孔体に担持される光触媒とを有し、前記光分解層の下方には、第1の空間を介して液体状の水を含む水層が配置され、前記ケーシング内において前記光分解層の上方には密閉された第2の空間が形成されており、前記水層から発生した水蒸気が前記第1の空間を介して前記光分解層に導入され、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気が水素と酸素とに分解される。
また、本発明に係る水の光分解方法は、上記問題を解決するためになされ、光透過性を有する多孔体とこの多孔体に担持される光触媒とを備えた光分解層を、液体状の水を含む水層上に、所定間隔をおいて配置するステップと、前記光分解層に光を照射するステップと、前記水層から発生した水蒸気が前記光分解層に導入されると、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気を水素と酸素とに分解するステップとを備えている。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態に係る水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る光分解層の模式図である。
図3は、本発明の第2実施形態に係る水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。
図4は、本発明の第3実施形態に係る水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。
図5は、本発明の第3実施形態に係る他の水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。
図面の中の参照符号の一覧
1:ケーシング 4:水層
11:本体部 5:光分解層
111:排出口 51:多孔体
115:導入口 52:光触媒粒子
116:第1の排出口 6:第1の空間
117:第2の排出口 7:第2の空間
118:開口 8:水素分離膜
12:光透過窓 9:水層
3:光熱変換層
【発明を実施するための最良の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る水の光分解装置について図面を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、この光分解装置は、上部が開口するカップ状の本体部11と、この本体部11の上部開口を塞ぐ光透過窓12とからなるケーシング1を備えており、全体として気密な構造となっている。光透過窓12は、石英ガラス等の透光性材料で構成されており、この光透過窓12を介して太陽光がケーシング1内部へと入射するようになっている。ケーシング1内部の底面には、金属薄膜で形成された光熱変換層3が配置されており、この光熱変換層3上に液体状の純水からなる水層4が形成されている。水層4の上方には水を分解するための光分解層5が配置されており、水層4と光分解層5との間には第1の空間6が形成されている。そして、この光分解層5と光透過窓12との間には密閉された第2の空間7が形成されている。また、ケーシング1の側壁には、第2の空間7と外部とを連通する排出口111が形成されており、この排気口111には図示を省略するガス分離器が取り付けられている。なお、図示を省略するが、ケーシング内部の水層4に液体状の水を導入するための導入口を、ケーシングの側壁に形成することもできる。
次に、光分解層5について図2を参照しつつ説明する。図2は光分解層の構造を説明する模式図である。同図に示すように、光分解層5は、多孔質構造を有する気体透過膜51の表面に、光触媒粒子52が分散された構造となっている。この気体透過膜51は、少なくとも光触媒が活性を有する波長域に対して透明であるとともに、実質上、水に不溶及び不活性であり、且つ水蒸気を透過するものであればよい。このような気体透過膜としては、例えば有機材料や無機材料で構成された多孔体を挙げることができる。以下、この多孔体の一例として、網目構造骨格を有する無機酸化物多孔体について説明する。
無機酸化物多孔体の材料としては、透明な金属酸化物でよいが、網目構造骨格を形成するためにゾルゲル法で形成されるものが好ましい。例えば、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化チタンなどや、複数の金属を含む酸化物が挙げられる。これらのうち、シリカ及びアルミナは、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であるため、特に好ましく用いることができる。これらの無機酸化物の原料としては、ゾルゲル反応で湿潤ゲルを形成できるものであればよい。例えば、ケイ酸ナトリウムや水酸化アルミニウムなどの無機原料、テトラメロキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシドやアルミニウム−sec−ブトキシドなどの有機金属アルコキシドの有機原料などを使用することができる。そして、ゾルゲル法によって、これらの材料を触媒とともに溶媒中で反応させて、湿潤ゲルを形成する。
次に、シリカ湿潤ゲルの製造方法を例として詳細に説明する。湿潤ゲルを得る方法としては、シリカの原料を溶媒中でのゾルゲル反応によって合成および湿潤ゲル化するものである。このとき、必要に応じて触媒を用いる。この形成過程では、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目構造骨格を形成し湿潤ゲルが得られる。具体的には、所定の固体成分である原料および溶媒の組成を決定する。その組成に調製した溶液に、必要に応じて、触媒や粘度調整剤などを加えて攪拌し、注型、塗布などによって所望の使用形態にする。この状態で一定時間経過することによって、溶液はゲル化して湿潤ゲルが得られる。また、必要に応じて、湿潤ゲルの熟成や細孔制御のためにエージング処理を行ってもよい。
製造時の温度条件としては通常の作業温度である室温近傍で行うが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度で実施することもある。このときのシリカの原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー化合物、またケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物など、またコロイダルシリカなどを単独または混合して用いることができる。溶媒としては原料が溶解してシリカが形成すれば良く、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの一般的な有機溶媒を単独または混合して用いることができる。触媒としては、水や、塩酸、硫酸、酢酸などの酸や、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであればこれらに限られるものではない。
次に、得られた無機酸化物の湿潤ゲルを乾燥して、乾燥ゲルを得る。乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法や、超臨界乾燥法、凍結乾燥法などを用いることができる。一般に、乾燥ゲルの表面積を高く、かつ低密度にするためには、湿潤ゲル中の固体成分量を少なくするとゲル強度が低下する。また、通常、ただ単に乾燥するだけの乾燥法では、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまうことが多い。そのため、湿潤ゲルから優れた多孔質性能を有する乾燥ゲルを得るためには、乾燥手段として超臨界乾燥や凍結乾燥を好ましく用いることによって、乾燥時のゲルの収縮、すなわち高密度化を防ぐことができる。通常の溶媒蒸発させる乾燥手段においても、蒸発速度をゆっくりするための高沸点溶媒を使用したり、蒸発温度を制御したりして乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。また、湿潤ゲルの固体成分の表面を撥水処理等によって表面張力を制御することによっても、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
超臨界乾燥法や凍結乾燥法では、溶媒を液体状態から相状態を変えることによって、気液界面を無くして表面張力によるゲル骨格へのストレスを無くして乾燥することができるため、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができ、低密度の乾燥ゲルの多孔質体を得るのに適した方法である。特に、超臨界乾燥法で作られた乾燥ゲルを本発明では好ましく用いることができる。
この超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの溶媒を用いることができる。また必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、二酸化炭素、水が挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの一般的な取扱いしやすい有機溶剤に置換しておいてもよい。
超臨界乾燥条件としては、オートクレーブなどの圧力容器中で行い、例えばメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放して乾燥を行う。また、二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。また、水の場合には、臨界圧力22.04MPa、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
湿潤ゲルを撥水処理してから乾燥する方法は、撥水処理のための表面処理剤を湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に化学反応させる。これによって湿潤ゲルの網目構造の細孔内に発生する表面張力を低減し、乾燥時の応力を低減することができ、通常乾燥にて収縮を抑制した乾燥ゲルを得ることができる。表面処理剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤、トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤、ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。湿潤ゲルを収縮させること無く、通常乾燥方法から乾燥ゲルを得ることができればこれらの表面処理剤に限られるものではない。
以上の方法で得られた無機酸化物多孔体の構造は、微粒子が凝集して網目構造を形成するために、図2に示すように模式的に表される。これを電子顕微鏡等で観察すると、微粒子の凝集体で、その空隙が多孔構造となっている。このように生成された無機酸化物多孔体51は、太陽光の広い波長域に対して透明であるとともに、撥水性を有するため、気体のみを通す性質を有している。
この場合、多孔体の空孔率は50%以上98%以下であることが好ましい。その理由は、以下の通りである。空孔率が50%未満であると気体の透過量が減ってしまう傾向になり、98%より大きくなると脆くなり強度が弱く取り扱いにくくなってしまうからである。ただし、この範囲に関しては、無機酸化物の材質の特徴によっても好ましい値が異なることもあり、必ずしも限定されるものではない。なお、ここでいう空孔率は、多孔体の見かけ密度を多孔体の骨格を形成する材料の真密度で割った百分率の値を100%から引いた値であり、密度は液相置換(アルキメデス法)や気相置換による方法で計測される値である。
また、網目構造を有する無機酸化物の細孔サイズとしては、細孔直径で1μm以下であり、好ましくは100nm以下のサイズ、より好ましく数10nm以下の範囲を特に好ましく用いることができる。この範囲より小さくなると大きくなると、多孔体の比表面積が小さくなり担持する光触媒粒子の量が少なく、反応効率が低下する傾向になるためである。好ましい比表面積としては、数十m/g以上であり、より好ましくは100m/g以上を用いることができる。なお、ここでいう細孔サイズおよび比表面積は水銀ポロシメータや窒素吸着法などによって多孔体の物性を計測することで求めたものである。
続いて、このような多孔体51に担持される光触媒粒子52について説明する。ここで用いられる光触媒粒子52としては、前述したような光触媒反応を起こすこものであれば任意に選んで使用することができる。例えば、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウム、硫化カドミウム、二酸化ジルコニウム、α−Fe、KNb17、RbNb17、KRbNb17、Pb1−x2xNbO(0<x<1)などの半導体や、これらに助触媒として、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの金属、NiO、RuO、RhOなどを担持させたものを挙げることができ、その平均粒径は0.01μm以上10μm以下の範囲が好適である。助触媒の担持量は、光触媒活性の点から、半導体と助触媒との合計重量に基づき、0.1重量%以上20重量%以下の範囲で選べばよい。また、光触媒は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。同様に、助触媒もまた、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、無機酸化物多孔体51に光触媒粒子52を担持する方法について説明する。光触媒粒子52を形成する手段としては、コロイドによる担持や、金属塩などの前駆体を担持してその後に水素や還元剤による還元や、金属塩などの前駆体を焼成するなどによって形成する。触媒またな触媒の前駆体を担持する方法としては、無機酸化物の湿潤ゲル形成の際に加える方法、無機酸化物の湿潤ゲルを形成しその表面に形成する方法などがある。触媒の前駆体として担持した際には、担持後に触媒化する処理を実施することになる。これらの方法は、用いる材料や構成によって選択すればよい。以上のような光分解層5は、例えば、その周縁に取り付けられたガスケットを介してケーシング1の内壁面に固定される。
続いて、上記のように構成された水の光分解装置の動作を説明する。まず、太陽光Lが光透過窓12を介してケーシング1の内部に照射されると、照射された太陽エネルギーのうち、赤外領域部(熱エネルギー)の光は、光分解層5を透過して、水層4に照射される。この熱エネルギーの一部は水層4に吸収される一方、残りは水層4を透過し光熱変換層3に吸収される。こうして光熱変換層3に吸収された熱エネルギーは水層4を間接的に温め、温められた水は、その一部が水蒸気となる。ここで、光分解層5を構成する気体透過膜51は前述したように気体のみを透過し、しかも水層4と光分解層5とは空間6を介して離間しているため、水蒸気のみが光分解層5に導入されることになる。
一方、光触媒粒子のバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの光(紫外〜可視域)は、光分解層5中に分散された光触媒粒子52に吸収される。このとき、光分解層5に導入された水蒸気が光触媒粒子52の表面に到達すると、水の光分解反応が進行し、水素及び酸素が発生する。生成された水素及び酸素は、光分解層5を通過して気相に拡散するため、光触媒粒子表面での逆反応が抑制され、第2の空間7に効率的に集積される。こうして、ケーシング1内の圧力が上昇すると、これらのガス、つまり水素及び酸素は、排出口11を介してガス分離器に導入され、分離された後、それぞれの用途に供される。
ここで、ケーシング1内を減圧雰囲気にしておくと、生成された水素及び酸素の第2の空間7への拡散を早めることができ、逆反応をさらに抑制することができる。或いは、ケーシング1内の気相中をアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることが好適である。この場合、排出口111と対向する壁面に、導入口を形成しておけば、ここから不活性ガスを導入することができる。
以上のように本実施形態によれば、水層4から発生した水蒸気を光分解して水素及び酸素を得ている。したがって、気相での拡散を利用できるため、従来例で示した水の攪拌等の機械エネルギーを必要としない。その結果、エネルギー効率を向上することができる。
また、光分解反応を気相で行うため、生成された水素及び酸素の逆反応を抑制することができる。この点について、本実施形態に係る光分解装置は、水層4と光分解層5との間に第1の空間6を設けるという特有の構成を有することで、逆反応をさらに抑制している。すなわち、水層4から揮発して水蒸気となった水分子は、この第1の空間6を通り、光分解層14に入る。ここで、例えば上記文献1,2で示されるように、水層と多孔質の光分解層とを接触させていると、毛細管現象により、液体状態の水が多孔質内部に浸入し、液体の水と光触媒とが反応すると考えられる。しかしながら、これでは、太陽光の照射で生成した水素と酸素とがは逆反応により再び水に戻ってしまうため、生成効率が著しく低くなる。これに対して、本実施形態では、上記従来例とは異なり、水層4と光分解層5との間に第1の空間6を形成して水層4と光分解層5とが接触しないようにしている。そのため、液体の水が容易に進入することはなく、水層4から揮発して水蒸気となった水分子のみを光分解層5に進入させることができる。その結果、上述した逆反応を生じにくくすることができる。また、液体状態の水と比較して水蒸気は高エネルギーを有しているため、光触媒とすみやかに反応し、水素及び酸素が効率的に得られるという利点もある。
また、水層4の底部に光熱変換層3が設けられているため、水層4を通過した赤外領域の太陽熱Lは光熱変換層3に吸収される。そのため、この熱によって水層4から水蒸気を発生させることができる。したがって、従来利用されなかった赤外領域のエネルギーも利用することができるため、エネルギー効率をさらに向上することができる。この場合、温度が高い方が触媒活性も高まるため、光分解反応がより促進されるという効果も有する。
さらに、次のような利点もある。本実施形態では、太陽光Lと水蒸気とが光分解層5内の厚さ方向全体に導入されるため、光分解反応の生じる領域が、従来例のように光分解層5と水層4との界面に限定されることがない。このため、光分解層5の厚さに応じて、光分解反応が促進される。
以上のようにして得られた水素および酸素は、例えば、燃料電池に供給されるエネルギー源として利用され得る。
(第2実施形態)
以下、本発明に係る水の光分解装置の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態に係る水の光分解装置の概略構成を示す断面図である。本実施形態が、第1実施形態と相違するのは、第2の空間及びその周囲のケーシングの構成であり、その他の構成については第1実施形態と同様であるので、同一構成には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態では、光分解層5と光透過窓12との間に形成される第2の空間7が、水素分離膜8を介して上下二つの空間に分離されている。すなわち、光分解層5と水素分離膜8との間に第1のガス集積部71が形成され、水素分離膜8と光透過窓12との間に第2のガス集積部72が形成されている。また、ケーシング1の壁面には外部と連通する3つの貫通孔が形成されている。すなわち、第1のガス集積部71の壁面の対向する位置には導入口115と第1の排出口116とがそれぞれ形成されており、第2のガス集積部72の壁面には、第2の排出口117が形成されている。導入口115と第1の排出口116とは互いに対向する壁面にそれぞれ形成されている。水素分離膜8は、水素を透過できるものであれば、特には限定されないが、例えばポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社・商品名「Kapton(登録商標)」として入手)を600℃以上1000℃以下で熱処理したものを使用することができる。
次に、上記のように構成された水の光分解装置の動作について説明する。まず、太陽光Lが光透過窓12を介してケーシング1の内部に照射されると、第1実施形態と同様に、赤外領域部(熱エネルギー)は、光分解層5を透過して、水層4に照射される。そして、水層4を透過し光熱変換層3に吸収された熱エネルギーによって水層4が温められ、その一部が水蒸気となる。水蒸気は、第1の空間6を通過して光分解層5へ進入する。
一方、紫外〜可視域の光は、光分解層5中に分散された光触媒粒子52に吸収される。このとき、光分解層5に導入された水蒸気が光触媒粒子52の表面に到達すると、水の光分解反応が進行し、水素及び酸素が発生する。生成された水素及び酸素は、光分解層5を通過して容易に気相に拡散するため、光触媒粒子表面での逆反応が抑制され、第1のガス集積部71に効率的に集積される。第1のガス集積部71に集積された水素は、水素分離膜8を通過して第2のガス集積部72に集積される。そして、第2の排出口117を介してケーシング1の外部に排出され、図示を省略する水素貯蔵部に貯蔵される。一方、水素分離膜8を透過できない酸素は、第1の排出口116から排出される。なお、第1排出口116から排出されるガスを第1実施形態と同様にガス分離器によって分離することもできる。
ここで、第2の排出口117に接続されている排気系を用いて、第2のガス集積部72内を減圧雰囲気にすると、このガス集積部72内への水素の拡散を早めることができる。その結果、逆反応がさらに抑制されて、水素のみを効率よく分離・回収することができる。あるいは、第1のガス集積部71に設けられている導入口115からアルゴンなどの不活性ガスを導入することで、第1のガス集積部71の圧力が第2のガス集積部72よりも大きくなるようにして両ガス集積部71,72の圧力差を生じさせることもできる。この場合の圧力差は、例えば約1.3×10Pa(約100Torr)以上約1×10Pa(約7600Torr、すなわち約10気圧)以下が好ましい。これは、圧力差が約1.3×10Pa未満であると、両ガス集積部71,72間の圧力差が不十分であり、水素を効率よく分離・回収することが難しくなるからである。一方、圧力差が約1×10Paを超えると、圧力差が大きすぎるため、水素分離膜8が破けてしまう可能性があるからである。
以上の構成によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができるほか、次の効果を得ることができる。すなわち、第2の空間7に水素分離膜8を設けているため、光分解層5によって分離された水素を効率よく分離することができる。したがって、ガス分離器を使用することなく水素を得ることができるため、装置コストを低減することができる。
ところで、上記各実施形態では、ケーシング1内に液体の水を供給して水層を形成しているが、ケーシング1内に水を供給せず、外部の水を利用して光分解を行うようにすることもできる。以下では、この態様について説明する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。図4は、第3実施形態に係る水の光分解装置を示す断面図である。本実施形態が上記各実施形態と相違するのは、ケーシングの構成であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
図4に示すように、本実施形態に係る水の光分解装置は、ケーシング1の底部に開口118が形成されており、本体部11は全体として角筒型に形成されている。ケーシング1は、液体状の水が貯留された水層、屋内外のスイミングプール(好ましくは屋内のスイミングプール)、池、湖、海等の貯水領域に配置され、図示を省略する支持装置によって、水層9上に支持されている。より詳細には、ケーシング1の下部が水層9内に挿入され、水層9に浮かんだ状態で設置されている。このとき、水層9の水面と光分解層5とを離間させ、その間に空間6(第1の空間)が形成されるようにケーシング1を配置する必要がある。
上記のように構成された光分解装置では、上記各実施形態と同様の動作が行われる。すなわち、太陽光Lの照射等によって水層9からは水蒸気が蒸発し、この水蒸気は上記第1の空間6を介して光分解層5に導入される。このとき、光分解層5においては、太陽光Lによって光触媒粒子52が励起され、導入された水蒸気を水素と酸素とに分解する。
以上のように本実施形態によれば、上記各実施形態と同様の効果が得られる他、次の効果を得ることができる。すなわち、上記光分解装置は、ケーシング1の底部に開口18を有しており、この開口18からケーシング1内に水蒸気を導入可能となっている。そのため、第1及び第2実施形態の装置と異なり、ケーシング1内に水を供給して収容しておく必要がなく、水の存在する場所に上記装置を配置するだけで、水の分解を行うことができる。したがって、水の供給作業が不要となり、作業の簡素化を図ることができる。
ところで、本実施形態では、ケーシング1を水層4に浮かべた状態にしているが、これに限定されるものではなく、図5のように構成することができる。同図に示すように、この例では、水深が比較的浅い水層や、上述したスイミングプールを対象としており、ケーシング1の底部を水層9の底面に接触させることで、ケーシング1を設置している。このとき、水層9の水面と光分解層5との間に空間6(第1の空間)を形成し両者が接触しないようにする必要がある。そのためには、水深の浅い場所にケーシング1を設置したり、ケーシング1底部と光分解層5との間の距離を調整することで、上記空間6を確保するようにする。また、ケーシング1の側壁下部には水の導入口114が形成されており、この導入口114を介して水層9からケーシング内部に水が導入される。以上のような構成であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができ、しかも、ケーシング1の設置が容易になる。
なお、図5に示す例では、ケーシング1の底部に開口118を形成しているが、水層9からケーシング内部に水が導入できるような導入口が形成されていれば、図1に示すような底部が閉じたケーシングを用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本発明で用いる多孔体としては、第1実施形態で説明した以外の構造でも用いることができる。例えば、多孔質ガラスや、無機酸化物粒子の焼結体や結着体などを用いることができる。なお、これらの場合には、第1実施形態で説明した多孔体の構造とは異なるために、空孔率や細孔サイズなどについては、その構造で特に好ましく規定された範囲に限定されることはない。さらに、第1及び第2実施形態では、水層4の下面に金属薄膜からなる光熱変換層3が形成されているが、光熱変換層3はこれに限定されるものではなく、水層4に接するものであれば、熱エネルギーを吸収しやすい、例えば、黒色の板体等で光熱変換層3を構成することができる。また、光熱変換層3は必ずしも設ける必要はなく、例えば、熱が吸収された屋根に配置する場合には、屋根からの熱、つまり外部からの熱によって水層を温めることができるため、このような場合は光熱変換層を設ける必要はない。また、太陽光が強い場合には、これのみによって水層を温めて水蒸気を発生させることができるため、光熱変換層は必ずしも必要としない。
また、上記各実施形態における水層では、純水を用いているが、これ以外でも、例えばNaHCO水溶液、NaSO水溶液、NaOH水溶液等の水溶液、或いは海水等を用い、これらを光分解することもできる。
また、ケーシング1は、上述した構造に限定されるものではなく、例えば、光透過窓12を設けず、ケーシング1全面が光透過材、例えば透明の部材で構成されていてもよい。なお、「透明」とは有色透明および無色透明のいずれでも構わないが、光を良く通すという点から、無色透明であることが好ましい。
【実施例】
以下、本発明に係る水の光分解装置の具体的な実施例を示す。但し、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
助触媒RuOを1.0重量%担持したTiO光触媒粒子を、シリカ多孔体に分散し、光分解層を作製した。光触媒粒子は次のように生成した。まず、二酸化チタン2.0gに、塩化ルテニウム水溶液50mlを加え、蒸発乾固した。その後、これを110℃で乾燥し、生成された乾燥物を空気中で400℃にて8時間加熱処理することにより、粉末状の1.0重量%RuO/TiOを得た。その平均粒径は約0.5μmであった。次に、得られた光触媒粒子を、テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)とをモル比で1対3対4になるように調製したシリカ原料液に懸濁し、容器に入れてゲル化して固体化した複合湿潤ゲル層を得た。続いて、この湿潤ゲルの内部の溶媒をアセトンに置換してから、超臨界乾燥にて乾燥させ、乾燥ゲルを得た。超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し、大気圧にしてから降温した。以上の工程により、光触媒粒子が分散されたシリカ多孔体(平均膜厚0.5mm)を得た。光触媒粒子の担持量は約0.23mg/cmであった。
以上のようにして作製した光分解層を図1に示すような光分解装置に取り付けるとともに、排出口にガスクロマトグラフを連結した。続いて、水層として純水50mlをケーシング内に供給し、ケーシング内をロータリーポンプで0.133Pa程度(すなわち、10−3Torr程度)まで真空排気した後、アルゴンガスを1.3×10Pa(約100Torr)導入した。そして、装置の上方から太陽光を照射し、生成された水素の量をガスクロマトグラフによって測定した。その結果、水素の生成量は、太陽光量当たりで換算すると、210μmol/kW・hであった。
比較のために、上記装置において光分解層を取り外し、代わりに光触媒粒子を純水中に分散させたものを作成した。そして、真空排気後アルゴンガスを1.3×10Pa(約100Torr)導入し、上記と同様に太陽光照射を行った。その結果、生成した水素量は20μmol/kW・hであった。
【実施例2】
実施例1と同様の手法で、光分解層を作成した。すなわち、助触媒RuOを1.0重量%担持したTiO光触媒粒子(平均粒径約0.5μm)をシリカ多孔体(平均膜厚0.5mm)に分散させて光分解層を作成した。この光分解層を図3に示すような装置に取り付けた。また、水層としてNaHCO水溶液(0.1mol/l)を用いた。そして、ケーシング内をロータリーポンプで真空排気した後、導入口からアルゴンガスを1.3×10Pa(約100Torr)導入し、太陽光を照射した。そして、水素分離膜により分離・回収された水素、つまり第2の排出口から排出された水素の量を測定した結果、その生成量は、太陽光量当たりで換算すると、190μmol/kW・hであった。また、回収したガスをガスクロマトグラフで分析した結果、純度95%以上の高純度水素が得られていることが分かった。
比較のために、上記装置において、光分解層を取り外し、代わりに光触媒粒子をNaHCO水溶液中に分散させたものを用いた。そして、真空排気後アルゴンガスを1.3×10Pa(約100Torr)導入し、上記と同様に太陽光照射を行った。その結果、生成した水素量は30μmol/kW・hであった。
以上の各実施例の結果から、従来の方法では、太陽光照射で生成した水素と酸素とが逆反応によって再び水に戻ってしまうため生成効率が低いのに対し、本発明によれば、水素及び酸素が効率的に生成されることが確認された。また、実施例2によれば、水素のみを効率的に分離できて、高い純度のものを回収できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
本発明により、太陽エネルギーを有効利用して水の光分解反応を促進し、さらに逆反応を抑制することにより水素及び酸素を効率よく得ることができる水の光分解装置が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの光が入射可能なケーシングと、
前記ケーシング内に収容される光分解層とを備え、
前記光分解層は、光透過性のある多孔体と、この多孔体に担持される光触媒とを有し、
前記光分解層の下方には、第1の空間を介して液体状の水を含む水層が配置され、
前記ケーシング内において前記光分解層の上方には密閉された第2の空間が形成されており、
前記水層から発生した水蒸気が前記第1の空間を介して前記光分解層に導入され、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気が水素と酸素とに分解される、水の光分解装置。
【請求項2】
前記水層は前記ケーシングの内部に収容されている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項3】
前記ケーシングには、前記水層と接し、且つ、前記光を吸収可能な光熱変換層が設けられている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項4】
前記光熱変換層は、前記水層の下面に配置される金属薄膜で構成されている、請求項3に記載の水の光分解装置。
【請求項5】
前記光熱変換層は、前記水層の下面に配置される黒色の板体で構成されている、請求項3に記載の水の光分解装置。
【請求項6】
前記ケーシングの底部には開口が形成され、前記水層は前記開口を介して外部からケーシング内に導入される、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記水層に浮かんだ状態で設置されている、請求項6に記載の水の光分解装置。
【請求項8】
前記水層は、屋内外のスイミングプール、海、池、または湖の水によって形成される、請求項7に記載の水の光分解装置。
【請求項9】
前記ケーシングの壁面には、当該ケーシング内部の水層に液体状の水を導入する導入口が形成されている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項10】
前記ケーシングの底部には、開口が形成されている、請求項9に記載の水の光分解装置。
【請求項11】
前記ケーシングの底部が前記水層の底に接触することで、当該ケーシングが設置される、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項12】
前記ケーシングは無色透明の部材で構成されている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項13】
前記光は太陽光である、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項14】
前記多孔体は三次元網目構造を有し、粒子状の光触媒を担持する、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項15】
前記多孔体の空孔率は、50%以上98%以下である、請求項14に記載の水の光分解装置。
【請求項16】
前記多孔体の表面が撥水化処理されている、請求項14に記載の水の光分解装置。
【請求項17】
前記ケーシングの内壁面には、前記第2の空間内のガスを外部に排出する排気口が形成されている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項18】
前記第2の空間は、減圧雰囲気にされている、請求項17に記載の水の光分解装置。
【請求項19】
前記ケーシングの壁面には、前記第2の空間内に不活性ガスを導入する導入口が形成されている、請求項17に記載の水の光分解装置。
【請求項20】
前記第2の空間は、水素分離膜を介して上下方向に並ぶ2つのガス集積部に分離されており、
前記ケーシングの壁面には、前記水素分離膜の上方に位置するガス集積部から外部にガスを排出する排出口が形成されている、請求項1に記載の水の光分解装置。
【請求項21】
前記ケーシングの壁面には、前記水素分離膜の下方に位置するガス集積部に不活性ガスを導入する導入口が形成されている、請求項20に記載の水の光分解装置。
【請求項22】
前記水素分離膜の上方に位置するガス集積部の圧力は、他方のガス集積部の圧力よりも小さくされており、両ガス集積部の圧力差は、1.3×10Pa以上1×10Pa以下である、請求項20に記載の水の光分解装置。
【請求項23】
光透過性のある多孔体とこの多孔体に担持される光触媒とを備えた光分解層を、液体状の水を含む水層上に、第1の空間を介して配置するステップと、
前記光分解層に光を照射するステップと、
前記水層から発生した水蒸気が前記第1の空間を介して前記光分解層に導入されると、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気を水素と酸素とに分解するステップと
を備えている水の光分解方法。
【請求項24】
前記光分解層は、光が入射可能なケーシング内に配置され、
前記ケーシング内において前記光分解層の上方には密閉された第2の空間が形成されており、当該第2の空間に前記水素及び酸素が捕集される、請求項23に記載の水の光分解方法。
【請求項25】
前記光分解層の下方には、前記水層と接触する光熱変換層が配置されている、請求項23に記載の水の光分解方法。
【請求項26】
前記光は太陽光である、請求項23に記載の水の光分解方法。
【請求項27】
前記多孔体は三次元網目構造を有し、粒子状の光触媒を担持する、請求項23に記載の水の光分解方法。
【請求項28】
前記多孔体の空孔率は、50%以上98%以下である、請求項27に記載の水の光分解方法。
【請求項29】
前記多孔体の表面が撥水化処理されている、請求項27に記載の水の光分解方法。
【請求項30】
前記水層は、屋内外のスイミングプール、海、池、または湖の水によって形成される、請求項23に記載の水の光分解方法。

【国際公開番号】WO2004/085306
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504054(P2005−504054)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003921
【国際出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【特許番号】特許第3787686号(P3787686)
【特許公報発行日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】