説明

水の長期保存方法

【構成】
本発明は高度さらし粉またはさらし粉と塩化カルシウムを収めた容器の少なくとも一部がガス透過性を有するフィルムから構成され、このガス透過性フィルムを透して塩素を徐放せしめる塩素徐放具において、塩化カルシウム量の多い塩素徐放具Aと塩化カルシウム量の少ない塩素徐放具Bを併用して水に浸漬することにより、水中の塩素濃度を長期間適度な濃度に保つものである。
【効果】
ポリタンクのような大型容器で水道水を長期保存する場合、本発明の方法を用いると初期から水中の塩素濃度を適度に維持することが出来、その後も長期にわたって適度な塩素濃度を維持することが出来る。また本発明で用いる塩素徐放具は簡単な構造で安価に製造出来るため、経済的に有利な水の長期保存が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素剤から塩素放出速度を制御して塩素を徐放する塩素徐放具を用いて水、特に飲用に適した水を長期間保存する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震などの大災害が発生したとき、上水道の復旧までの間飲料水などの水を如何にして調達するかは極めて重要な問題である。その対策の一つとして各家庭等での水の備蓄が推奨されているが、ポリタンク等を用いて水道水を保存しようとすると、水道水中の残留塩素が速やかに消失するため、少なくとも1週間毎に水を更新する必要があるとされている。
【0003】
このため災害時対策用の飲料水貯蔵容器としてのポリタンクの付属品である注水筒を銀担持ゼオライト等の抗菌剤を含有した樹脂で形成し、保存期間中に飲料水中に浸しておくことにより飲料水の腐敗を防止する方法(特開平9−58694)が提案されているが、確実な消毒効果は期待出来ない。また災害時における非常用飲料水の容器に、高度さらし粉等の飲料水用固体殺菌剤を密封して付属させ、災害時に開封して添加混合する提案(特開2000−264376)があるが、災害発生時に消毒操作を行う必要があって煩雑であり、また災害発生時まで殺菌剤なしで水を長期保存することにより、水が著しく汚染されてしまう問題もある。
【0004】
本発明者は特願2005−333182において、塩素を放出し得る塩素剤から、ガス透過性フィルムを透して塩素を放出せしめることにより、塩素の放出を制御することに成功し、塩素剤を収めた容器の少なくとも一部がガス透過性を有するフィルムから構成されていることを特徴とする塩素徐放具を開発した。この塩素徐放具を水道水の長期保存に用いることを試みたところ、水中の塩素濃度を長期にわたって適度な濃度に保つのが難しい場合のあることがわかった。すなわち水中の塩素濃度が高くなり過ぎないようにすると、はじめの1〜2ヶ月の塩素濃度が低くなり過ぎ、逆に初期の塩素濃度を適度にしようとすると後で塩素濃度が過大となり、制御が困難なのである。水道水を長期間飲用に適する状態で保存しようとするとき、水中の塩素濃度が低すぎると微生物が増殖するおそれがある。一方塩素濃度が高すぎると飲料水として安全上問題がある。したがって水道水の残留塩素の消失分を補充し、さらに長期保存中の塩素の消失分を補充して、水中の塩素濃度を長期にわたって適度な範囲に保つための改良が必要となった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−58694号公報
【特許文献2】特開2000−264376号公報
【特許文献3】特願2005−333182号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は上述した事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ポリタンク等で水を長期保存する場合に塩素徐放具を用いて水中の塩素濃度を長期にわたって適度に保ちうる改良法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては上記課題を解決するため種々検討した結果、塩化カルシウム量の異なる2種以上の塩素徐放具を併用することにより長期にわたって容易に水中の塩素濃度を希望する範囲に調節することに成功した。
【0008】
すなわち本発明は 少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成されている容器に塩化カルシウムと高度さらし粉またはさらし粉を共存させた塩素徐放具であって、塩化カルシウムの含有量a(g)が1≦a≦20である徐放具Aと、塩化カルシウムの含有量b(g)が0.05≦b≦1.5(ここでa>bである)である徐放具Bとをそれぞれ1種以上組み合わせて水中に浸漬することを特徴とする水の長期保存方法をその要旨とする。
【0009】
また本発明は、少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成されている容器に塩化カルシウムを共存せしめない高度さらし粉またはさらし粉を収容する塩素徐放具Cを一つ以上併用して、塩素徐放具A及びBとともに水中に浸漬することを要旨とする水の長期保存方法を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、ポリタンク等で水道水等を保存する場合、長期にわたって水中の塩素濃度を適度な範囲に調節することが容易となった。また本発明で用いる塩素徐放具は簡単で安価なため、一般家庭においても災害用として大量の水道水を長期に保存することが容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は塩化カルシウムの量が多い塩素徐放具Aと塩化カルシウムの量が少ない塩素徐放具Bを併用する。塩素徐放具Aは長期にわたって塩素を放出する役割をにない、塩素徐放具Bは初期のみ塩素を放出する役割をになう。塩素徐放具Aは高度さらし粉またはさらし粉にa(g)の塩化カルシウムを共存せしめ、これを少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成された容器に収める。塩化カルシウムの量aは1g〜20gとする。aが1gより少ないと長期にわたって塩素を放出することができない。好ましくは1.5g以上である。塩化カルシウムの量が多いと塩素の放出は水中に長期間浸漬しても低下することが少なく、aの上限は特にないが、実質的に20g以上は不必要である。
【0012】
塩素徐放具Aに用いる高度さらし粉またはさらし粉の量は水を保存するタンクの大きさ、目標とする水中の塩素濃度などにより異なる。高度さらし粉またはさらし粉の量が多いと塩素放出量は増大する。通常保存する水1リットルに対して高度さらし粉またはさらし粉を0.004g〜0.04gの比率で用いるのが適当である。さらに好ましくは0.05g〜0.03gである。高度さらし粉またはさらし粉の量が水1リットルあたり0.004gより少ないと微生物の繁殖を抑制するに十分な塩素を放出することが出来ない。また0.04gより多いと塩素の放出が過大となり、飲用上安全な塩素濃度を超えるおそれがある。
【0013】
塩素徐放具Bは高度さらし粉またはさらし粉にb(g)の塩化カルシウムを共存せしめ、これを少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成された容器に収容する。塩化カルシウム量bは0.05g〜1.5gとする。塩素徐放具Bの塩化カルシウム量bは塩素徐放具Aの塩化カルシウム量aより少ない必要がある。塩素徐放具Bの塩化カルシウム量は好ましくは0.08g〜1gであり、さらに好ましくは0.1g〜0.8gである。塩素徐放具Bを水に浸漬しておくと塩素放出量は経時的に低下し、一定時間後には塩素放出量は実質的にゼロとなる。塩化カルシウム量bが0.05gより少ないと水浸漬時の塩素放出の低下が急激過ぎて塩素濃度維持が困難となる。また1.5gより多いと水浸漬時の経時的塩素放出の低下が緩やか過ぎ、水中の塩素濃度が過大となるおそれが大きくなる。
【0014】
塩素徐放具Bにおいては用いる高度さらし粉またはさらし粉の量は塩素徐放具Aの場合と異なり塩素放出量に僅かしか影響しない。通常は0.05g〜0.8g、好ましくは0.1g〜0.5gを用いればよい。高度さらし粉またはさらし粉の量が0.05gより少ないと初期の塩素放出量が不足する。一方0.8gより多くしても塩素放出量はほとんど変わらない。
【0015】
塩素徐放具AおよびBに用いるガス透過性を有する無孔フィルムとしては、市販されているガス透過性のあるプラスチックフィルムを用いればよい。ガス透過性の特に高いフィルムを用いる必要はなく、いわゆるガスバリヤー性フィルム以外のフィルムであればよい。例えばOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、CPP(Tダイキャスト法で作られた無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)、高密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリメチルペンテンー1フィルム、ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレートラミネートフィルム、ポリメチルペンテンー1・ポリエチレンラミネートフィルム等が用いられる。一方、MXDナイロンフィルム、ポリ塩化ビニリデン系フィルムおよびポリアクリロニトリル系フィルムのようなガスバリヤー性フィルムは塩素を実質的に透過しないため用いることは出来ない。
【0016】
上記フィルムの中で特に好ましいのはOPPフィルム、CPPフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、LLDPEフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合フィルム等であり、この中でもLLDPEフィルムが特に好ましい。
【0017】
塩素徐放具AおよびBの容器としては少なくとも一部が上記ガス透過性フィルムで構成されているものを用いる。最も簡単な形状としてはフィルムをヒートシールして作製した小袋に高度さらし粉またはさらし粉と塩化カルシウムを入れ、ヒ−トシールして密封したものが用いられる。
【0018】
塩素徐放具Aに用いるガス透過性を有する無孔フィルムの厚さはLLDPEフィルムで25〜200ミクロンが望ましい。特に好ましくは40〜150ミクロンである。フィルムの厚さが厚くなると薄い場合と比べて塩素の放出がゆるやかになる傾向があるので厚めのフィルムを塩素の放出量のコントロールに利用することが可能である。塩素徐放具Bに用いるガス透過性を有する無孔フィルムの厚さはLLDPEフィルムの場合30〜150ミクロンが望ましく、特に好ましくは35〜80ミクロンである。塩素徐放具Bの場合ガス透過性を有するフィルムの厚さが薄過ぎると水に浸漬したときの塩素放出量の経時的低下が急激過ぎて好ましくない。また厚すぎると塩素放出量の経時的低下が緩やか過ぎることになる。薄いフィルムを使用する場合は好適な塩化カルシウム量が本発明の範囲内で多い方に移行する。
【0019】
ポリタンクのような容器を用いて水道水のような水を保存するとき、水道水の残留塩素は速やかに消失する。そこで水道水に塩素徐放具を入れ密栓しておくと、塩素徐放具から水中に塩素が補給される。このとき塩素徐放具からの塩素補給が水道水の残留塩素の消失量と同じであれば塩素濃度は一定に保たれる。水道水の残留塩素が充分でない場合にはやや多目の塩素が塩素徐放具から補給されることが好ましい。塩素の消失量は一般に水貯蔵開始の初期に多く、その後消失が遅くなる傾向がある。このため塩素徐放具を用いたとき、初期には水中の塩素濃度が低くなりすぎる傾向となる。初期の塩素濃度を保つために塩素放出量の多い塩素徐放具を用いると、初期には適度な塩素濃度を保ってもその後塩素濃度が過大になるという問題がおこる。
【0020】
本発明においてはポリタンクのような容器に水道水を満たし塩素徐放具AおよびBを入れ密栓する。水道水に含まれている塩素は消失して行くが、塩素徐放具AおよびBの両方から塩素が補給されるため水中の塩素濃度を初期から所定の濃度に保つことが可能となる。塩素徐放具Bの塩素放出は経時的に減少し、塩素徐放具Aからの塩素の放出が始まる頃には実質的に塩素の放出は停止される。一方塩素徐放具Aからは適度な塩素放出が継続されるため、水中の塩素濃度は初期から後期まで過小にも過大にもなることなく維持される。
【0021】
水を保存する容器の大きさその他の条件によっては塩素徐放具AおよびBは夫々複数用いることも可能である。また場合により塩化カルシウム量の異なる複数の塩素徐放具Bを用いることも可能である 。
【0022】
本発明においては前記塩素徐放具AおよびBに加えて、少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成される容器に塩化カルシウムを共存せしめない高度さらし粉またはさらし粉を収納した塩素徐放具Cを、少なくとも1個併用することにより一段と長期間の水の保存を可能とする。
【0023】
塩素徐放具Cにおいては水中に浸漬すると初期には殆ど塩素を放出しないかまたは若干の塩素を放出しても短時間で放出を停止する。その後高度さらし粉またはさらし粉の量に応じ、数日乃至数ヶ月後に塩素の放出を再開することがわかった。この原因は不明であるがフィルムを透して侵入した水蒸気が凝縮して高度さらし粉またはさらし粉を溶解することに関係すると思われる。したがって塩素の放出が開始されるまでの時間は、高度さらし粉またはさらし粉の量が少ないほど早く、多いほど遅い。
【0024】
水の保存が10ヶ月以上の長期にわたる場合、塩素徐放具AおよびBを併用してもなお保存終盤に水中の塩素濃度が若干低下する場合がある。前記塩素徐放具Cをさらに併用することにより、このような後期の塩素濃度低下を防ぐことが可能となる。塩素徐放具Cにおいては、高度さらし粉またはさらし粉の量を0.05g〜1.5gとするのが好ましい。高度さらし粉またはさらし粉の量が0.05gより少ないと塩素の放出の遅延がおこらない。また1.5gより多いと塩素の放出が困難となる。特に好ましい量は0.1g〜1.0gである。
【0025】
塩素徐放具Cにおいては、用いるLLDPEフィルムの厚さは25〜100ミクロンが好ましい。LLDPEフィルムの厚さが25ミクロンより薄いと塩素放出の遅延効果が不十分となる。また100ミクロンより厚いと塩素放出開始が過度に遅延される。好ましくは30〜80ミクロンである。
【0026】
こうして塩素徐放具AおよびBとさらに塩素徐放具Cを併用することにより、一層長期間の水の保存が可能となる。
【0027】
本発明は簡単で安価な塩素徐放具を組み合わせて用いることにより、水道水を飲料水として容易に長期間保存可能としたものである。以下本発明をより具体的に明らかにするために、本発明のいくつかの実施例を示しながら説明する。
【0028】
(実験例1および2)
実験例1および2は塩化カルシウムを共存せしめた高度さらし粉をLLDPEフィルムの袋に収めた塩素徐放具において、塩化カルシウム量が塩素放出量に及ぼす影響について調べた実験である。
【0029】
高度さらし粉顆粒((南海化学工業(株)製 クリヤー顆粒、有効塩素74%))0.2gおよび0.5gに夫々粒状塩化カルシウム((株)トクヤマ製)0.2g、0.5gおよび2.0gを加え、LLDPEフィルム(LL−XMTNフィルム、二村化学工業(株)製)の5cm×3cmの小袋に収めてヒートシールした。実験例1においては40ミクロン、実験例2においては厚さ120ミクロンのフィルムを用いた。100mlのバイアル瓶に水道水を満たし、前記作成した塩素徐放具を1個づつ入れ密栓した。これを30℃の恒温器中に置き、3日毎に水中の塩素濃度を測定し、測定後液を更新した。実験例1の結果を表1に、実験例2の結果を表2に示した。これらの実験から塩化カルシウム2.0gの場合は塩素放出量の経時変化は少ないが、塩化カルシウム量0.5gおよび0.2gにおいては経時的に塩素放出が減少することがわかった。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
(比較実験例1−塩素徐放具Aのみ使用した場合−)
実験例1と同様にして高度さらし粉顆粒0.2gおよび粒状塩化カルシウム4.0gを60ミクロンのLLDPEフィルムの袋に収めヒートシ−ルした。高密度ポリエチレンの20リットルのポリタンクに水道水を満たし、前記作成した塩素徐放具1個を入れ、密栓した。水を交換することなく室内に置き、定期的に水中の塩素濃度を測定した。結果を表3に示した。50日まで塩素濃度は微生物の増殖を完全に抑えるには低すぎる水準にあり、70日以降は適度な水準となった。
【0033】
【表3】

【0034】
(比較実験例2−塩素徐放具Bのみ使用した場合−)
高度さらし粉の量を0.5gとした以外は比較実験例1と同様にして作成した塩素徐放具を、比較実験例1と同様の水道水を満たしたポリタンクに入れ、同様にして水中の塩素濃度の経時変化をしらべた結果を表4に示した。50日以降、水中の塩素濃度は飲用に適さない水準まで上昇した。
【0035】
【表4】

【0036】
(比較実験例3−塩素徐放具Aのみ使用した場合−)
比較実験例1と同様の塩素徐放具2個を比較実験例1と同様のポリタンクに入れ、同様にして水中の塩素濃度の経時変化をしらべた。結果を表5に示した。30日までは塩素濃度は適度な水準にあったが、50日以降は飲用に適さない水準まで上昇した。
【0037】
【表5】

【0038】
(比較実験例4−塩素徐放具Bのみ使用した場合−)
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gおよび粒状塩化カルシウム0.2gを実験例1と同様の40ミクロンLLDPEフィルムの袋に収め、ヒートシールした。比較実験例1と同様の20リットルポリタンクに水道水を満たし、前記作成した塩素徐放具2個を入れて密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度を測定した結果を表6に示した。30日まで適度な塩素濃度が維持されたがその後濃度は低下し、長期間の水の保存は困難であった。
【0039】
【表6】

【実施例1】
【0040】
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム4.0gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし、塩素徐放具Aとした。また実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム0.2gを実験例1と同様の40ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし塩素徐放具Bとした。塩素徐放具AおよびBを夫々1個づつ比較実験例1と同様の水道水を満たした20リットルのポリタンクに入れ密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度の経時変化を測定した結果を表7に示した。塩素濃度は初期から適度な数値を示し、70日以降も過度に上昇することなく、水の長期保存が可能なことがわかった。
【0041】
【表7】

【実施例2】
【0042】
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.1gと粒状塩化カルシウム4.0gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収め、ヒートシールして塩素徐放具Aとした。また実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.1gと粒状塩化カルシウム0.2gを実験例1と同様の40ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし塩素徐放具Bとした。これらの塩素徐放具AおよびBを夫々1個づつ水道水を満たした高密度ポリエチレンの10リットルのリタンクに入れ密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度の経時変化を測定した結果を表8に示した。塩素濃度は初期から適度な数値を示し、70日以降も過度に上昇することなく、水の長期保存が可能であった。
【0043】
【表8】

【実施例3】
【0044】
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.15gと粒状塩化カルシウム3.0gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし、塩素徐放具Aとした。また実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム0.5gを実験例1と同様の40ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし塩素徐放具Bとした。塩素徐放具AおよびBを夫々1個づつ比較実験例1と同様の水道水を満たした20リットルのポリタンクに入れ密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度の経時変化を測定した。結果を表9に示した。水中の塩素濃度は150日にわたって適度で安定した濃度を保った。
【0045】
【表9】

【実施例4】
【0046】
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム7.0gを実験例1と同様の80ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし、塩素徐放具Aとした。また実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.3gと粒状塩化カルシウム0.2gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし塩素徐放具Bとした。塩素徐放具AおよびBを夫々1個づつ比較実験例1と同様の水道水を満たした20リットルのポリタンクに入れ密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度の経時変化を測定した。結果を表10に示した。水中の塩素濃度は170日にわたって適度で安定した濃度を保った。
【0047】
【表10】

【0048】
(実験例3−塩素徐放具Cのみ使用した場合−)
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒の0.1g、0.3gおよび0.5gを夫々40ミクロンの実験例1と同様のLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールした。実験例1と同様にして夫々を水道水を満たした100mlのバイアル瓶に入れて密栓した。実験例1と同様にして3日毎に水中の塩素濃度を測定し、測定後液を更新した。測定結果を表9に示した。高度さらし粉0.1gにおいては約30日後、0.3gにおいては約39日後、0.5gにおいては約60日後に塩素の放出が始まることがわかった。
【0049】
【表11】

【実施例5】
【0050】
実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム8.0gを実験例1と同様の100ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし、塩素徐放具Aとした。また実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.2gと粒状塩化カルシウム0.4gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムの小袋に収めてヒートシールし塩素徐放具Bとした。次に実験例1と同様の高度さらし粉顆粒0.5gを実験例1と同様の60ミクロンのLLDPEフィルムに収めてヒ−トシールし、塩素徐放具Cとした。塩素徐放具A、B、Cを夫々1個、比較実験例1と同様の水道水を満たした20リットルのポリタンクに入れ密栓した。比較実験例1と同様にして水中の塩素濃度の経時変化を測定した。結果を表12に示した。水中の塩素濃度は320日にわたって適度で安定した濃度を示した。
【0051】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成されている容器に塩化カルシウムと高度さらし粉またはさらし粉を共存させた塩素徐放具であって、塩化カルシウムの含有量a(g)が1≦a≦20である徐放具Aと、塩化カルシウムの含有量b(g)が0.05≦b≦1.5(ここでa>bである)である徐放具Bとをそれぞれ1種以上組み合わせて水中に浸漬することを特徴とする水の長期保存方法。
【請求項2】
塩素徐放具AおよびBで用いるガス透過性無孔フィルムが低密度ポリエチレンまたはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)である請求項1記載の水の長期保存方法。
【請求項3】
塩素徐放具Aの高度さらし粉またはさらし粉の含有量が保存する水1リットルに対し0.004g〜0.04gの比率である請求項1および2記載の水の長期保存方法。
【請求項4】
塩素徐放具Bの高度さらし粉またはさらし粉含有量が0.05g〜0.8gである請求項1乃至3記載の水の長期保存方法。
【請求項5】
塩素徐放具A、Bとともに、少なくとも一部がガス透過性を有する無孔フィルムから構成されている容器に塩化カルシウムを共存せしめない高度さらし粉またはさらし粉を収容する塩素徐放具Cを一つ以上、水中に浸漬することを特徴とする請求項1乃至4記載の水の長期保存方法。
【請求項6】
塩素徐放具Cの高度さらし粉またはさらし粉の重量が0.05〜1.5gである請求項5記載の水の長期保存方法。
【請求項7】
塩素徐放具Cのガス透過性を有する無孔フィルムが厚さ25〜100ミクロンの低密度ポリエチレンまたはLLDPEフィルムである請求項5および6記載の水の長期保存方法。

【公開番号】特開2008−669(P2008−669A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171772(P2006−171772)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000222473)株式会社トーメー (20)
【Fターム(参考)】