説明

水中に浸漬される前に溶解に対して耐性を有する水溶性フィルムを製造する方法

少量の水との接触に対して耐性を有する水溶性フィルム、及びポリビニルアルコールのような水溶性フィルム形成組成物から、フィルムの表面に適用された塩を有する水溶性フィルムを製造する方法、及びそれから作製される物品を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性フィルムに関し、より特には、少量の水との接触に対して耐性を有する水溶性フィルム、及びそれを製造する方法に関する。本発明はまた、この水溶性フィルムから製造されるパウチのような物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性フィルムは、包装材料としての使用に幅広い支持を得ている。包装材料には、フィルム、シート、吹き込み又は成形中空体(即ち、サッシェ、パウチ、及びタブレット)、瓶、容器などが挙げられる。水溶性フィルムは、多くの場合、これらの物品の特定の種類、例えばサッシェ及びパウチの調製に用いられるとき、少量の水の混入又は高湿度への暴露により、漏れたり及び/又は粘着性となり、このためその中に収容される組成物の包装及び保存に使用するには不適切になる可能性がある。
【0003】
一般消費者の大部分は、水溶性パウチが偶然水に暴露されたとき、例えば、水が、濡れた手、高湿度、保存中の水漏れする流し台又はパイプなどから、パウチが販売され及び購入後に保存される外部包装内部に入るとき、望ましくないパウチの溶解につながることに不満を持っている。これにより、水溶性パウチは、使用前に漏れたり、及び/又は互いに粘着する場合がある。2番目に多いよくある不満は、使用の際に水溶性パウチが完全に溶解しないことである。したがって、少量の水への暴露後の溶解及び/又は漏れには耐えられるが、その後すすぎ及び/又は洗浄水のような水溶液中に浸漬されたときには非常に速く溶解できる、水溶性フィルム及びパウチへの満たされていない要求が残っている。
【0004】
特定の塩は、ポリビニルアルコール(PVOH)溶液に加えられたとき、PVOHを沈殿させる場合があることが、1960年代から知られている。これらの塩は、水性PVOHを固化するために有用であると、一般には見なされている。水溶性フィルム中での塩の使用についての別の開示が、米国特許第5,429,874号(バンプッテ(VanPutte))の中にある。バンプッテ(VanPutte)の特許は、腐食性の化学薬品を包装するために好適な水溶性フィルムを対象としており、これは水溶性ポリマー材料の外層、及びこのフィルムから製造されるパッケージの内容物と適合性があるポリマー材料の内層を有する。フィルムの引張り強度、嵩、粗雑な使用に対する耐性、又は幾つかのその他の特性に寄与するために、任意選択的に、中間層を含むことが可能である。塩のような水溶性充填剤は、フィルムの押出成形前又は押出成形中に、フィルムの加工性若しくは水中でのその溶解速度を改善するために、又は色素をフィルムに加えるために、任意選択的に、ポリマー材料の1つまたは複数に加えることができる。
【0005】
未処理のパウチ表面が水滴に暴露されるとき、これらの未処理のパウチ表面は、溶解及び/又は漏れる傾向のあることが知られている。しかしながら、Na2SO4溶液が、PVOHパウチの外側表面に適用され、そしてパウチの外側表面が少量の水に暴露されるとき、処理されたパウチは実質的に溶解しない及び/又は漏れないことが驚くべきことに見出された。むしろ、処理されたパウチが少量の水に暴露されるとき、それは、漏れの減少及びパウチとパウチの粘着に対する耐性の増加を示す。
【0006】
水溶性(特に、ポリビニルアルコール)フィルムの外側表面に特定の塩を加えることにより、少量の水(即ち、濡れた手、液滴)への暴露に対する耐性が、製品を水溶液中(例えば水浴)に浸漬したときの水溶性パウチの溶解特性に、感知できるほどの影響を与えることなく実現できる。水溶性フィルムの最も外側部分の中に塩を組み込むことは、従来の粉の振りかけ、コーティング、キャスト、又はフィルムの製造に用いられるその他の方法を含む、多様なやり方で実現できる。所望の溶解特性を実現し及びパウチの審美性を最適化するために、塩の濃度を調整してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書において記載される水溶性フィルムは、いずれかの袋状製品、例えば洗濯洗剤組成物、自動食器洗い用洗剤組成物、硬質表面クリーナー、布地強化剤及び/又は柔軟仕上げ剤を含有するパウチ、並びに少量の水との接触が早過ぎるパウチの溶解、望ましくないパウチの漏れ及び/又は望ましくないパウチとパウチの粘着を生み出す可能性がある新しい製品形態の製造に用いられることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水溶性フィルムに関し、より特には、少量の水との接触に対して耐性を有する水溶性フィルム、及びそれを製造する方法に関する。しかしながら水溶性フィルムは、水中に浸漬されるとき、実質的に水溶性であってもよい。本発明はまた、本明細書に記載される水溶性フィルムから製造されるパウチのような物品に関する。
【0009】
本明細書に記載される水溶性フィルムの、多数の非限定的実施形態が存在する。1つの非限定的実施形態では、本発明は、水溶液(例えば、水)中に浸漬される前に溶解に対して耐性を有する水溶性フィルムを含む。水溶性フィルムは、第1表面、第2表面、及び第1と第2表面との間の厚さを有する。この実施形態では、水溶性フィルムは、少なくとも幾らかのポリビニルアルコールを含む水溶性フィルム形成組成物、及び水溶性フィルムの厚さ全体より、第1及び第2表面の少なくとも1つに、より密接して分配される塩を含む。以下の幾つかの位置の1つまたは複数に塩を配置してもよいし、多層フィルムの外層の中に組み込んでもよく、その幾つかの位置には、水溶性フィルム表面の1つの上、及び水溶性フィルムの厚さ全体より第1及び第2表面の少なくとも1つにより密接して分配される位置での水溶性フィルムの表面と表面との間の水溶性フィルム内部が挙げられる。
【0010】
本明細書に記載される水溶性フィルムを製造する方法の多数の非限定的実施形態が存在する。1つの実施形態では、方法は、フィルムを提供すること、及び水溶性フィルムの表面の少なくとも1つに塩を適用することを含む。塩は幾つかの異なる方式で適用され得る。この実施形態の1つの変形では、塩は粉末形態で適用される。本方法のこの実施形態の別の変形では、塩は水溶性フィルムの少なくとも1つの表面に適用される溶液の形態で提供される。方法のこれらの実施形態は、水溶性フィルムの表面に塩を適用する前に、水溶性フィルムの表面の少なくとも一部分を湿潤する工程を更に含んでもよい。
【0011】
別の実施形態では、水溶性フィルムを製造する方法は、(a)水溶性フィルム形成組成物を形成する工程、(b)塩を水溶性フィルム形成組成物に加える工程、及び(c)水溶性フィルム形成組成物とその中の塩からフィルムを形成する工程を含む。
【0012】
別の実施形態では、水溶性フィルムを製造する方法は、(a)第1の水溶性フィルム形成組成物を提供する工程であって、この第1フィルム形成組成物が第1濃度の塩を含む工程、(b)第1水溶性フィルム形成組成物から第1フィルムを形成する工程、(c)第2の水溶性フィルム形成組成物を提供する工程であって、この第2フィルム形成組成物は、第1水溶性フィルム形成組成物より少ない塩を含むか、又は塩を実質的に若しくは完全に含まない工程、及び(d)第2水溶性フィルム形成組成物から第2フィルムを形成する工程であって、第2フィルムを第1フィルムと組み合わせる工程を含む。
【0013】
本発明はまた、この水溶性フィルムから製造されるパウチのような物品に関する。そこに、より密接して分配される塩を有する水溶性フィルムの表面は、物品の外側表面を形成してもよい。1つの非限定的実施形態では、本発明は、組成物の1回用量を含有する水溶性フィルムを含む製品を含む。製品は、洗濯、硬質表面の洗浄、手による食器洗い、自動食器洗い、布地強化剤(例えば、柔軟剤、増白剤など)、又は使用前に少量の水による接触を受けやすい水溶性フィルムを使用するいずれかの他の用途に用いる組成物の1回容量を含むことができる。他の実施形態では、こうした製品は、その中に又はその上に分配された塩を有するフィルムの少なくとも片側が、物品の内側表面を形成して、製品中に収容されるいずれかの水性組成物からの漏れに対して耐性を提供するようなやり方で、配向される又は形成されるフィルムを有してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、水溶性フィルムに関し、より特には、少量の水との接触に対して耐性を有する水溶性フィルム、及びそれを製造する方法に関する。また一方で水溶性フィルムは、水中に浸漬されるとき、実質的に水溶性であってもよい。本発明はまた、本明細書に記載される水溶性フィルムから製造される水溶性パウチのような物品にも関する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」は、完全に水溶性のフィルム構造体を指すだけでなく、実質的に水溶性であるが、水溶性でない材料(類)を水溶性フィルム構造体中に有するフィルム、相対的に高い水温でのみ又は限定されたpH条件下でのみ水溶性である材料を有するフィルム、及び非水溶性材料、例えば、非水溶性材料の相対的に薄い層の幾らかの量を包含するフィルムもまた含む。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「接触に対して耐性」(又は「溶解に対して耐性」)は、少量の水に接触したときに、早過ぎる溶解をするその領域を低減又は排除した水溶性フィルムを指す。例えば、溶解に対して耐性を有する水溶性フィルムから製造されるパウチのようなパッケージは、少量の水に接触した後、漏れる又は共に粘着する傾向が低減されている。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「少量の水」は、水溶性フィルムを完全に浸漬するためには十分でない水の量を指す。
【0018】
水溶性フィルム
図1は、水溶性フィルム10の1つの非限定的実施形態を示す。水溶性フィルム10は、第1表面12、第2表面14、及び第1表面12と第2表面14との間の厚さ16を有する。この実施形態では、水溶性フィルム10は、水溶性フィルム形成組成物及び塩20を含む。塩20は、水溶性フィルム10の厚さ16全体より、第1及び第2表面の少なくとも1つにより密接して分配される。説明のため、図面では、塩20は、離散粒子又は粒子の層の形態で示されている。また一方、幾つかの実施形態(例えば、以下に論じられるように、塩がフィルム形成組成物の中に組み込まれる、図2に示される実施形態)では、塩20は粒子の形態として示されるが、塩20はあるいは均質なフィルム層又は層類の一部であってもよく、塩は識別可能な粒子をもはや含まなくてもよいことは理解されるべきである。
【0019】
幾つかの実施形態では、塩20は、水溶性フィルム10の表面の少なくとも1つの上に又は隣接して、相対的に均一に分配されてもよい。他の実施形態では、塩20は、水溶性フィルム10の表面の少なくとも1つの上に又は隣接して、無作為に分配されてもよい。幾つかの実施形態では、フィルム10の厚さ16は、塩20を実質的に含まなくてもよい。他の実施形態では、幾らかの塩20(塩の総量の内の少量)はまた、水溶性フィルム10の厚さ16内部に分配されてもよい。こうした塩の少量は、フィルムの厚さ16内部に無作為に分配されてもよいし、その中に規則的な方式で分配されてもよい。他の実施形態では、塩20は、塩20のより高濃度が、水溶性フィルム10の厚さ16全体より、水溶性フィルム10の表面の少なくとも1つの上に又は隣接して見出される、勾配の形態で分配されてもよい。
【0020】
水への偶然の暴露に対する耐性からの所望の保護を提供するために、塩20は、こうした水に最も暴露されやすい水溶性フィルム10の表面(即ち、水溶性フィルム10から製造されるいずれかの製品の外側にある表面)に、より密接して分配され得る。塩20は、水溶性フィルム10上の次の位置:水溶性フィルム10の第1表面12上;水溶性フィルム10の第2表面14上;第1表面12及び/又は第2表面14のより近くなど、少なくとも1つの表面に、より密接して分配される位置での、第1表面12と第2表面14との間の水溶性フィルム10内部のいずれかの1つまたは複数に配置されることができるか、又は多層水溶性フィルムの外層の中に組み込まれることができる。
【0021】
水溶性フィルム10は、幾つかの好適な水溶性材料を含むことができる。1つの実施形態では、水溶性フィルムは、少なくとも幾らかのポリビニルアルコール(又は「PVA」若しくは「PVOH」)及び塩を含む水溶性フィルム形成組成物を含む。幾つかの実施形態では、水溶性フィルム10は、PVOH、1つまたは複数の塩、及び1つまたは複数の添加物成分から、実質的に完全に構成されることができる。他の実施形態では、水溶性フィルム10は、PVOH、1つまたは複数の塩、及び1つまたは複数の添加物成分から、本質的に成ることができる。また一方、他の実施形態では、水溶性フィルム10は、PVOH及び他の好適な水溶性又は水分散性材料、1つまたは複数の塩、及び1つまたは複数の添加物成分の混合物を含むことができる。好適な水溶性材料には、ポリマー、コポリマー、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
PVOHに加えて用いられ得る好適な水溶性フィルム材料には、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリビニルアセテート、ポリカルボン酸及び塩、ポリアミノ酸又はペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプン及びゼラチンを包含する多糖類、天然ガム、例えばキサンタン(xanthum)及びカラガム(carragum)、ポリアクリレート及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、PVOHコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(今後「HPMC」)、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
ポリマーの混合物は、その適用及び要件に依存して、フィルムの機械的特性及び/又は溶解特性を制御するために有益であり得る。好適な混合物には、例えば、1つのポリマーがもう1つのポリマーより高い水溶解度を有する混合物、及び/又は1つのポリマーがもう1つのポリマーより高い機械的強度を有する混合物、及び/又は異なる重量平均分子量を有するポリマーの混合物が挙げられる。本明細書に記載されるフィルム中に用いるのにまた好適なのは、ポリマーブレンド組成物、例えば、加水分解により分解可能な及び水溶性のポリマーブレンド、例えばポリラクチドとポリビニルアルコールであり、ポリラクチドとポリビニルアルコールを混合することにより得られ、典型的には約1〜35重量%のポリラクチドと約65重量%〜99重量%のポリビニルアルコールを含む。
【0024】
市販のフィルム材料もまた、本明細書に記載されるように、それに塩を加えることにより変性され得る。それに塩を加えることにより変性され得る好適な市販のフィルム材料は、米国インディアナ州ゲーリー(Gary)のモノソル社(MonoSol, LLC)より販売される、モノソル(MONOSOL)M8630(商標)フィルムとして既知のPVAフィルム、並びに対応する溶解度及び変形特性のPVOHフィルムである。モノソル(MonoSol)水溶性フィルムは、米国特許第3,374,195号及び第3,413,229号(ビアンコ(Bianco)らに発行)、並びに米国特許第6,787,512B1号(ベロール(Verrall)らに発行)に記載されている。本明細書に用いるために変性するのに好適な他のフィルムには:日本、愛知のアイセロ化学株式会社(Aicello Chemical Co., Ltd.)より供給されるPT(商標)フィルム又はフィルムのKシリーズ;日本、東京のクラレ(Kuraray Co., Ltd.)より供給されるVF−HPフィルム;及び日本、大阪の日本合成化学工業株式会社(The Nippon Synthetic Chemical Industry Co., Ltd.)より供給されるハイ−セロン(HI-SELON)(商標)フィルムが挙げられる。1つの特定の日本合成化学工業株式会社(Nippon Synthetic Chemical Industry Co.)の水溶性フィルムは、欧州特許公報(European Patent Publication)EP1158016A2に記載されている。
【0025】
水溶性フィルム10は、いずれかの好適な量のPVOH及び他の好適な水溶性又は水分散性材料を含むことができる。水溶性フィルム10、又は水溶性フィルム形成組成物が、PVOH及び他の水溶性又は水分散性材料を包含するとして本明細書で記載されるときには、これは、ポリマー、コポリマー、ターポリマー、及び上記の水溶性フィルム材料(これは、本明細書では「フィルム原材料(又は材料類)」と呼ばれる場合がある)を包含する水溶性又は水分散性ポリマー材料を指すが、塩、可塑剤、水、又は他の添加物成分は含まない。幾つかの実施形態では、水溶性フィルム10は、約50%〜約95%(完成フィルムの乾燥基準で)のフィルム原材料、例えばPVOH及び他の好適な水溶性又は水分散性材料を含む。特に指定のない限り、本明細書に記載される、すべての百分率は重量による。
【0026】
フィルム10は、いずれの好適な塩20を含んでもよい。好適な塩20には、有機又は無機電解質を挙げてもよい。好適な塩20には、アルミニウム、アンモニウム、アンチモン、バリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、セシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、ニッケル、カリウム、ルビジウム、銀、ナトリウム、ストロンチウム、亜鉛、及びジルコニウムから選択されるカチオン又はカチオン混合物;および:酢酸塩、硫酸アルミニウム、アジ化物、重炭酸塩、亜硫酸水素塩、ボロヒドリド、ボロオキザラート、臭素酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、クロム酸塩、シアン酸塩、シアン化物、重クロム酸塩、二ケイ酸塩、ジチオン酸塩、フェリシアン化物、フェロシアン酸塩、フェロシアン化物、フッ化物、フルオロアンチモン酸塩、フルオロホウ酸塩、フルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、フルオロケイ酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、シアン化水素、リン酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、水酸化物、ヒドロキシスズ酸塩、次亜塩素酸塩、次亜硝酸塩、次亜リン酸塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、マンガン酸塩、メタ−アルミン酸塩、メタホウ酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、メタケイ酸塩、混合ハロゲン化物、モリブデン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、オルトリン酸塩、オルト亜リン酸塩、オルトケイ酸塩、シュウ酸塩、オキザラートフェラート、酸化物、過ホウ酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化物、ペルオキシ二硫酸塩、リン酸塩、ポリ臭化物、ポリ塩化物、ポリフッ化物、ポリヨウ化物、ポリリン酸塩、ポリ硫化物、ピロ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、セスキ炭酸塩、ケイ酸塩、スズ酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、チオシアン酸塩又はチオ硫酸塩から選択されるアニオン又はアニオン混合物を含んでよい。
【0027】
他の好適な塩には、カチオン、例えば置換アンモニウムイオン、R4N(この場合R=水素又はC1〜6アルキル、置換又は非置換である)が挙げられる。アニオンの他の好適な種類には、カルボン酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。好適な塩は、C1〜9アルキルカルボン酸;ポリマーのカルボン酸塩(ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸塩);短鎖(C1〜9)アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩;及び短鎖(C1〜9)アルキル硫酸塩及びアルキルスルホン酸塩を含んでもよい。
【0028】
図1は、塩20が、フィルム10の表面の少なくとも1つ、例えば表面12の上に配置されてもよいことを示す。図1はまた、塩20がフィルム10の中に組み込まれてもよいことを示す。塩20は、フィルム10の上若しくは内部、又は両方に、いずれかの好適な厚さで分配され得る。円20の厚さ(又はより具体的には「塩の分配」の厚さ)は、全フィルム厚さ16との比較に関して表されてもよい。全フィルム厚さ16は、例えば約0.013mm(0.5ミル)〜0.13mm(5ミル(又は約12若しくは13μ〜約125μ))の範囲であってもよい。(また一方、他の実施形態では、全フィルム厚さは、0.013mm(0.5ミル)未満であっても、又は0.13mm(5ミル)を超えてもよい。)幾つかの実施形態では、塩分配の厚さは、全フィルム厚さの約1%〜約80%の範囲であってもよい。塩がフィルム10内部に分配される場合、塩20はフィルム内部のいずれの好適な位置に位置してもよい。例えば、塩20は、水溶性フィルム10の表面の少なくとも1つの全フィルム厚さの、約1%〜約50%、約1%〜約40%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%内に位置してもよい。本明細書において提供される百分率は、塩20が主として分配される場所について言及しており、少量の塩がフィルム10内部の他の場所に分配されることも可能であることを理解されるべきである。
【0029】
図1に示されるように、分配される塩20を有するフィルム10を製造するためには、幾つかの異なる方式で、塩20をフィルムに適用してもよいし、フィルム10の中に組み込んでもよい。フィルムを製造するための方法は、次の節に詳細に記載される。しかしながら、これらの方法の幾つかについて、フィルムに適用されてもよい又はフィルム10の中に組み込まれてもよい塩20の量に関しては、幾つかの言及がなされる。塩20がフィルム10の表面に粉末形態において適用される場合には、それは、フィルム10の表面上に過剰の粉末が形成されるまで(即ち、フィルム上に残らない量を)適用されることができる。他の実施形態では、塩20は、フィルムの表面に適用される溶液中に組み込まれてもよい。水溶性フィルム形成組成物のための好適な塩溶液は、塩のいずれの好適なモル濃度から構成されてもよい。溶液中の好適な塩のモル濃度には、水溶液中、約0.01M〜約10M、約0.1M〜約5M、あるいは約0.5M〜約4Mの塩を挙げてもよいが、これらに限定されない。溶液中の好適な塩のモル濃度は、異なる塩について異なる調整をされてもよい。例えば、硫酸ナトリウムについては、約0.25Mほど低いモル濃度が好適である場合があり、幾つかのAl塩については、約0.03ほど低いモル濃度が好適である場合がある。他の実施形態では、好適な塩をフィルム形成組成物(例えば、PVOH組成物であって、これは水性組成物であってもよい)の中に、次の節で記載されるようないずれかの好適な方式で混合することにより、塩20はいずれかの好適な水溶性フィルム形成組成物の中に直接組み込まれてもよい。特定の非限定的実施形態では、塩の有効量は、フィルムの約0.1重量%〜約50重量%、約0.5重量%又は約1重量%から約15、20、又は25重量%まで、あるいは、約0.5重量%〜約15重量%(フィルムが形成された後の乾燥基準による)の量として定義されてもよい。フィルム形成組成物は、本発明による水溶性フィルムを形成するために変性される場合には、塩は、組成物中のPVOH(又は他のフィルム原材料)の重量による等量を置き換えてもよい。
【0030】
水溶性フィルム形成組成物及びそれから形成される水溶性フィルム10はまた、1つまたは複数の添加物又は補助剤成分を含むことができる。例えば、水溶性フィルム形成組成物及び水溶性フィルム10は、水、可塑剤、潤滑剤、離型剤、充填剤、増量剤、粘着防止剤、粘着性除去剤、消泡剤、又は他の機能成分を含有してもよい。洗浄用組成物を含有する物品の場合には、後者には、洗浄水に送達されるべき機能的洗剤添加物、例えば有機ポリマー分散剤、又は他の洗剤添加物を挙げてもよいが、これらに限定されない。
【0031】
したがって水溶性フィルム10は、水又は他の揮発性成分を含んでもよい。水又は他の揮発性成分は、いずれかの好適な量でフィルム中に存在してもよい。好適な量には、フィルムが形成され、並びに21℃及び50%の相対湿度に24時間調整された後の水溶性フィルムの、約1〜20重量%の範囲が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
上記のように水溶性フィルム10は、可塑剤を含んでもよい。好適な可塑剤には、グリセロール、グリセリン、ジグリセリン、ヒドロキシプロピルグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
1つの非限定的実施形態では、可塑剤は、例えば米国特許第3,374,195号(ビアンコ(Bianco)らに発行)に記載されるように、ヒドロキシプロピルグリセリン及び低分子量ポリエチレングリコールと、熱い約49℃(140°F)及び冷たい約24℃(75°F)の水溶性フィルム形成ポリビニルアルコールとの組み合わせを含んでもよい。こうした実施形態の特定の変形では、採用されるポリビニルアルコールは、ポリビニルアセテートの約80%〜95%又は85%〜90%のアセテート基のヒドロキシル基による置換により調製される。これらの実施形態では、水性フィルム形成組成物は、いずれかの好適な量のポリビニルアルコール(例えば、水性フィルム形成組成物の約20〜40%)を含んでもよい。ポリビニルアルコールは、20℃の4%水溶液中に、少なくとも約0.02Pa・s(20センチポアズ)又は約0.02Pa・s(20cps)〜0.05Pa・s(45Cps)の粘度を有してもよい。ヒドロキシプロピルグリセリンは、1−メチル−2−ヒドロキシエチルグリセリルエーテルであってもよく、その場合平均少なくとも約2.5、あるいは3個のグリセリンのヒドロキシルラジカルはヒドロキシルプロピル(1−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラジカルによってエーテル化、又は置換されている。ポリエチレングリコールは、約200〜600、又は約200〜300の重量平均分子量を有してもよい。1つの非限定的実施形態では、組成物はポリビニルアルコールを含有し、ポリビニルアルコール含有量の重量百分率で、約7〜17重量%のヒドロキシプロピルグリセリン、及び約10〜20重量%のポリエチレングリコールを含有する。ヒドロキシプロピルグリセリン及びポリエチレンの可塑剤の組み合わせの合計比率は、水性フィルム形成組成物の約22〜32%であってもよい。例えば、約12%のヒドロキシプロピルグリセリン及び約15%のポリエチレングリコールが用いられてもよい。
【0034】
別の実施形態では、モノソル(MonoSol)の米国特許第6,787,512B1号(ベロール(Verrall)らに発行)に記載されるように、可塑剤は次の:グリセリン、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びトリメチロールプロパンの1つまたは複数を含んでもよい。可塑剤は、水溶性フィルム10の中に、水性フィルム形成組成物の約5重量%〜約30重量%の範囲、又は約12重量%〜約20重量%の範囲の量が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な量で組み込まれることができる。
【0035】
好適な界面活性剤には、非イオン性、カチオン性、アニオン性、及び双極性の部類を挙げてもよい。好適な界面活性剤には、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アセチレングリコール及びアルカノールアミド(非イオン性物質)、ポリオキシエチレン化アミン、第四級アンモニウム塩、及び四級化されたポリオキシエチレン化アミン(カチオン性物質)、及びアミンオキシド、N−アルキルベタイン及びスルホベタイン(双極性物質)が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、水溶性フィルム10の中に、水性フィルム形成組成物の約0.01重量%〜約1重量%の範囲、又は約0.1重量%〜約0.6重量%の範囲の量が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な量で組み込まれることができる。
【0036】
好適な潤滑剤/離型剤には、脂肪酸及びそれらの塩、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミンアセテート、及び脂肪酸アミドが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤/離型剤は、水溶性フィルム10の中に、水性フィルム形成組成物の約0.02重量%〜約1.5重量%の範囲、又は約0.04重量%〜約0.15重量%の範囲の量が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な量で組み込まれることができる。
【0037】
好適な充填剤、増量剤、粘着防止剤、粘着性除去剤には、デンプン、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク及び雲母が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤、増量剤、粘着防止剤、粘着性除去剤は、水溶性フィルム10の中に、水性フィルム形成組成物の約0.1重量%〜約25重量%の範囲、又は約1重量%〜約15重量%の範囲の量が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な量で存在することができる。デンプンが存在しない場合には、充填剤、増量剤、粘着防止剤、粘着性除去剤が、水性フィルム形成組成物の約1重量%〜約5重量%の範囲で存在することは望ましい場合がある。
【0038】
好適な消泡剤には、ポリジメチルシロキサン及び炭化水素のブレンドに基づくものが挙げられるが、これに限定されない。消泡剤は、水溶性フィルム10の中に、水性フィルム形成組成物の約0.001重量%〜約0.5重量%の範囲、又は約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な量で存在することができる。
【0039】
組成物は、材料を混合し、及び温度を約21℃(70°F)から約90℃(195°F)まで上げながら溶液が完成するまで混合物を攪拌することにより調製される。フィルム形成組成物は、いずれの好適な形態(例えば、フィルム又はシート)に作製されてもよく、その後いずれの好適な製品(例えば、単一及び多区画のパウチ、サッシェ、袋など)に形成されてもよい。
【0040】
水溶性フィルムを製造する方法
本明細書に記載される水溶性フィルム10を製造する方法の多数の非限定的実施形態が存在する。
【0041】
1つの実施形態では、方法は、先に形成された水溶性フィルムを提供すること、及び先に形成された水溶性フィルムの表面の少なくとも1つに塩を適用することを含む。(先に形成された水溶性フィルムは、フィルムを形成するために用いられる組成物に、塩が加えられたことにより変性されていない水溶性フィルムであってもよい)。こうした方法は、図1に示されるフィルム10の外側表面上に塩20を提供するために用い得る。
【0042】
塩20は、先に形成された水溶性フィルムに、幾つかの異なる方式で適用され得る。1つの非限定的実施形態では、塩は先に形成された水溶性フィルムの表面の少なくとも1つに粉末形態において(粒子又は顆粒において)適用される。塩の粒子はいずれかの好適な大きさであることができる。例えば、硫酸ナトリウム粉末は、約1μ〜約500μ;約1μ〜約300μ、あるいは約150μ以下の平均粒径を有することができる。好適な大きさの塩粒子の幾つかの非限定的実施例は、番号120及び270の大きさのふるいを通過するものである。先に形成された水溶性フィルムに加えられた塩の量は、初期フィルム重量(塩が加えられる前)の百分率として、フィルム上に加えられた塩の量により表されることができる。こうした実施形態においてフィルムに加え得る塩の量は、フィルムの約0.01重量%〜約50重量%、又はそれより多く、又は約2.5重量%〜約20重量%、又は約2.5重量%〜約7重量%が挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な範囲であることができる。こうした実施形態では、フィルムの表面に塩を適用することは、フィルム形成組成物中に塩を組み込んでいるように、フィルムの特定の特性、特にフィルムの機械的特性の望ましくない変更をしなさそうであるために、より多量の塩がフィルムに適用され得る。
【0043】
方法の別の非限定的実施形態では、塩は、水溶性フィルムの表面の少なくとも1つの上に適用される溶液の形態で提供される。溶液は、溶液を水溶性フィルムの表面の少なくとも1つの上に噴霧する及び/又は印刷することが挙げられるが、これらに限定されない、いずれかの好適な方式により、水溶性フィルムの表面の少なくとも1つに適用され得る。溶液は、いずれかの好適な量の塩と水の混合物を含むことができる。例えば、溶液は、約0.01Mから約1.25Mまで又はそれを超える、塩と水の溶液を含むことができる。1つの非限定的実施形態では、溶液は、少なくとも0.5MのNa2SO4溶液を含む。こうした溶液は、水中で少なくとも6.6%のNa2SO4を混合することにより形成されてもよい。塩溶液をその上に有するフィルムは、次に乾燥されるか、又は乾燥プロセスを経る。溶液中の塩の濃度はまた、塩溶液をその上に有するフィルムが乾燥された後、又は乾燥プロセスを経た後、残りの水中の塩の濃度が上記の範囲内であるように、例えば、フィルムの表面上の乾燥したコーティング中の塩が、少なくとも約0.5Mから約1.25Mまで又はそれを超える濃度にあってもよいように、設定されることができる。
【0044】
これらの実施形態はまた、先に形成された水溶性フィルムに塩を適用する前に、水溶性フィルムの表面の少なくとも1つの少なくとも一部分を湿潤する工程を含んでもよい。水溶性フィルムの表面を湿潤することは、フィルムの表面の外側部分を少なくとも部分的に(即ち、フィルムの厚さの中への行程の一部を)溶解する又は可溶化するために用いられてもよい。水溶性フィルムは、いずれかの望ましい深さに、少なくとも部分的に可溶化されてもよい。好適な深さには、全体のフィルムの厚さの約1%〜約40%又は約45%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、あるいは約1%〜約10%が挙げられるが、これらに限定されない。塩は次に、フィルムの表面の部分的に溶解された部分に適用される。これにより、フィルムの表面の外側部分の中に塩を埋め込むことができ、フィルムのより永続的な部分となることができる。フィルムの中に埋め込まれた塩を有するフィルムの湿潤表面は、次に乾燥され得る。方法のこうした実施形態はまた、水溶性フィルムの表面が乾燥した後の、水溶性フィルムの表面上に残るいずれかの遊離した又は過剰の塩の少なくとも幾らかを、例えばフィルムの表面を拭くこと又は掃うことにより取り除く工程を含んでもよい。
【0045】
別の実施形態では、水溶性フィルム10を製造する方法は、(a)水溶性フィルム形成組成物を提供する工程、(b)塩を水溶性フィルム形成組成物に加える工程、及び(c)水溶性フィルム形成組成物とその中の塩を含む混合物からフィルムを形成する工程を含む。以下に記載される多層の実施形態を含むこうした実施形態では、フィルムのいずれかの好適な重量百分率で塩20を加えることができる。好適な百分率には、フィルム10の特性に不利に影響せずに、フィルムの約20%まで、約20%以下及び約1%〜約15%が挙げられるが、これらに限定されない。塩20は、水溶性フィルムを形成するプロセスの前又は間に、フィルム形成組成物に加えられることができる。こうした実施形態では、フィルムが形成された後、前記水溶性フィルムの厚さ全体より前記第1及び第2表面の少なくとも1つに、より密接して分配されるように、塩を水溶性フィルムの形成プロセス中に加えること(例えば、キャストはされたが乾燥はされていないフィルムのような、部分的に形成されたフィルムに塩を加えることによるなど)が望ましい場合がある。上記の成分は、こうしたフィルムを製造するために本明細書に記載される方式で組み合わされ、フィルムを製造するために利用可能なプロセスのいずれかを用いて水溶性フィルム10を形成する。好適なフィルムは、例えばフィルム形成材料のコーティング、積層化、キャスト、吹込み成形、及び/又は押出成形若しくはブロー押出成形の1つまたは複数の、フィルム形成方法によって調製されることが可能である。
【0046】
別の実施形態では、フィルムが製品中に用いられた後に水溶性フィルム10に塩を加えることができる。例えば、組成物を収容する水溶性パウチを形成するために水溶性フィルムが用いられる場合、塩はフィルムに、水溶性パウチの表面の少なくとも一部分上に加えられることができる。これは、幾つかの異なる方式により行なわれ得る。こうした方法の幾つかの非限定的実施例を以下に記載する。こうした方法の代替としては、濃縮された塩溶液中に少なくとも部分的に又は完全に製品(例えば、パウチ)を浸漬することである。
【0047】
別の実施形態では、水溶性フィルム10を製造する方法は、多層水溶性フィルムを形成することを含む。多層水溶性フィルムは、2以上の層(例えば、3、4、5層など)を含むことができる。本明細書で使用するとき、用語「層」は、別個の層を含むだけでなく、コーティングもまた含む。したがって、特に指定のない限り、コーティングもまた層と見なされてもよい。多層水溶性フィルムは、その中に組み込まれている又はその上に分配されている塩を有する少なくとも1つの外層を有する。(他の実施形態では、その中に組み込まれている又はその上に分配されている塩を有する層が多層フィルムの内層を構成する、多層フィルムを作り出すこともまた可能である。)こうした多層フィルムは、幾つかの異なる方式で製造され得る。
【0048】
図2は、フィルム10の概略的側面図の1つの非限定的実施形態を示し、フィルム10は、その表面を形成する1つまたは複数の層を有し、その表面の中に組み込まれた塩を有する。図2に示される実施形態では、フィルム10は2つの層を含む。これらは、第1層22及び第2層24と呼ばれる。図2に示されるように、多層水溶性フィルム10は、キャスト表面40のような表面上に下向きに面する第1層22を有して形成される。
【0049】
第1層22は、第1表面26、第2表面28を含み、第1表面と第2表面との間の厚さ30を有する。第2層24は、第1表面32、第2表面34を含み、第1表面と第2表面との間の厚さ36を有する。第2層24の第1表面32が、第1層22の第2表面28に隣接し、接合するように、第1及び第2層22及び24を共に組み合わせる。第1層22の第1表面26は、多層フィルム10の第1表面12を形成し、第2層24の第2表面34は、多層フィルム10の第2表面14を形成する。第1層22の厚さ30内部に、塩20は分配される。
【0050】
いずれかの好適な方式によって、図2に示される多層フィルム10は形成され得る。1つの実施形態では、第1層22を形成するために用いられる、第1水溶性フィルム形成組成物を調製することによって、多層フィルム10を形成する。第1水溶性フィルム形成組成物は、1つまたは複数の塩20の第1濃度を含む。その中に塩20を有する第1水溶性フィルム形成組成物は、第1層22に形成される。塩20を有する第1水溶性フィルム形成組成物は、第1層22に、いずれかの好適な方式により形成され得る。第1層22は、例えば、フィルム形成材料のキャスト、吹込み成形、及び/又は押出成形若しくはブロー押出成形、又はこれらの組み合わせの1つまたは複数のフィルム形成方法により形成され得る。
【0051】
図2に示される実施形態では、第1水溶性フィルム形成組成物を好適なキャスト表面40上にキャストすることにより、第1層22を形成する。フィルム形成組成物は、それが高温である時、又は加熱されるときにキャストされてもよい。フィルム形成組成物は、それがキャストされるときに、いずれの好適な温度であってもよい。1つの非限定的実施形態では、フィルムが研究室で製造される場合には、フィルム形成組成物は、キャストされるとき約74℃(165°F)の温度である。大規模連続フィルム製造プロセスでは、フィルム形成組成物が、より高い温度(例えば、約74℃(165°F)より高い)でキャストされることが望ましい場合がある。キャスト表面40は、フィルムのようなキャストに好適ないずれの表面を含むこともでき、この目的のために業界で典型的に用いられるベルト又はドラムを含むことができる。研究室でフィルムを製造するためには、一枚のガラスが、キャスト表面40として用いられてもよい。第1層22を形成するために、いずれかの好適な方式で、第1水溶性フィルム形成組成物がキャスト表面40に適用される。第1層22は、単一コーティング若しくは層をキャスト表面40上に形成することにより、又は第1水溶性フィルム形成組成物を連続的にコーティング又は層化して、所望の厚さ30の第1フィルム22を形成することにより、キャスト表面40上に形成されてもよい。
【0052】
第2層24は、第2水溶性フィルム形成組成物から形成される。第2水溶性フィルム形成組成物は、第1水溶性フィルム形成組成物より少ない塩を含むか、又は塩を実質的に若しくは完全に含まない。第2水溶性フィルム形成組成物から第2フィルムを形成することにより、第2層24はを形成し、第2層24と第1層22を組み合わせる。第2水溶性フィルム形成組成物は、第2層24に、いずれかの好適な方式により形成され得る。第2層24は、例えば、フィルム形成材料のキャスト、吹込み成形、及び/又は押出成形若しくはブロー押出成形、又はこれらの組み合わせの1つまたは複数により形成され得るフィルム形成方法により形成され得る。図2に示される実施形態では、第2層24は、第2水溶性フィルム形成組成物を第1層22の上にコーティング又はキャストすることにより形成される。
【0053】
組み合わされた層は、水溶性フィルム10の1つの表面12に、より密接して分配された塩を有する多層フィルム10を形成する。図2に示される実施形態では、塩20を含有する第1層22は、より少ない塩を含有するか又は塩を実質的に含まない第2層24の前に形成される。加えて、塩20を含有する第1層22は、より少ない塩を含有するか又は塩を実質的に含まない第2層24より薄い。
【0054】
図2に示されるフィルムを製造する多数の別の実施形態が存在する。これらには、次の工程が挙げられるが、これらに限定されず、その場合、その方法の工程は、幾つかの異なる順番で実行されることができる。例えば、異なるフィルム形成組成物は、いずれの順番でも形成されることができる。第1フィルム形成組成物が、第2フィルム形成組成物の前に調製されることは必要ない。他の実施形態では、塩20を含有する第1層22は、より少ない塩を含有するか又は塩を実質的に含まない第2層24の後に及び/又は上に形成され得る。他の実施形態では、塩20を含有する第1層22は、より少ない塩を含有するか又は塩を実質的に含まない第2層24より厚いことができる。
【0055】
他の実施形態では、多層フィルムは、2を超える層により調製され得る。こうした場合、本方法は、1つまたは複数の追加の水溶性フィルム形成組成物を提供することを更に含むことができる。1つまたは複数の追加のフィルム形成組成物は、第1水溶性フィルム形成組成物より少ない塩を含んでもよいし又は塩を実質的に含まなくてもよい。方法は、1つまたは複数の追加のフィルム層を1つまたは複数の追加の水溶性フィルム形成組成物から形成することを更に含むことができ、1つまたは複数の追加のフィルムは第2フィルムと組み合わされて3以上の層の多層フィルムを形成する。こうした実施形態の別の変形では、1つまたは複数の追加のフィルム形成組成物は、塩の同じ百分率を含んでもよいし、又は第1水溶性フィルム形成組成物より多くの塩を含んでもよい。こうした別の実施形態では、最も高濃度の塩を有する層が、多層水溶性フィルムの厚さ全体より、多層フィルムの第1表面(26、32)及び第2表面(28、34)の少なくとも1つにより近いように、層を組み合わせるべきである。
【0056】
本明細書に記載される多層フィルムの層は、いずれの好適な厚さも有することができ、全体のフィルムの厚さのいずれの好適な割合又は百分率も含むことができる。塩を含有する層は、全フィルム厚さ16の約1%〜約80%の厚さの範囲であってもよい。例えば、第1フィルム層は、全体のフィルムの厚さの、約1%〜約50%、約1%〜約40%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、約1%〜約10%、あるいは約1%〜約5%を構成してもよい。したがって、特定の実施形態では、第2層24と第1層22との厚さの比は、2:1より大きくてもよい。例えば、1つの非限定的実施形態では、多層フィルムの全体の厚さは、約75μであってもよく、第1層22は、約10μの厚さを有してもよく、第2層24は約65μの厚さを有してもよい。
【0057】
水溶性パウチを製造する方法
本明細書に記載される水溶性フィルム10は、製品に、及び水溶性フィルムがその中で包装材料として用いられるものが挙げられるがこれらに限定されない他の物品に、成形され得る。こうした製品には、水溶性パウチ、サッシェ、及び他の容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書に記載される水溶性フィルム10を組み込む水溶性パウチ及び他のこうした容器は、当該技術分野において既知のいずれかの好適な方式で製造され得る。水溶性フィルム10は、水溶性フィルム10を最終製品に成形する前又は後のいずれかにおいて、溶解に対して改善された耐性を備えることができる。どちらの場合でも、特定の実施形態では、こうした製品を製造するときに、塩20がその上に分配されるフィルム10の表面12(又はフィルムの厚さ内部に含有される塩により密接して位置する表面)が製品の外側表面を形成することが望ましい。
【0059】
水溶性パウチを製造するための幾つかのプロセスが存在する。これらには、垂直型充填シールプロセス、水平型充填シールプロセス、及び円形ドラム表面上のモールド中でのパウチ形成として当該技術分野において既知のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。垂直型充填シールプロセスでは、フィルムを折り畳むことにより垂直管が形成される。管の底末端部がシールされて、開放型パウチが形成される。このパウチは、部分的に充填されて、ヘッドスペースを可能にする。開放型パウチの最上部は、その後共にシールされてパウチを閉じ、次の開放型パウチを形成する。第1のパウチがその後切り取られ、及びプロセスが繰り返される。こうしたやり方で形成されたパウチは、通常はピロー形状を有する。水平型充填シールプロセスは、一連のモールドをその中に有するダイを用いる。水平型充填シールプロセスでは、フィルムがダイの中に設置され、これらのモールド中で開放型パウチが形成され、これらは次に充填され、フィルムの別の層により被覆され、そしてシールされることができる。第3のプロセス(円形ドラム表面上のモールド中でのパウチの形成)では、フィルムはドラムの上を循環されて、ポケットが形成され、これは充填機の下を通過して開放型ポケットを充填する。充填及びシールは、ドラムにより描かれる円の最高点(最上部)において行なわれ、例えば典型的には、充填は回転ドラムが下向きの円運動を始める直前に、及びシールはドラムがその下向きの運動を始めた直後に行なわれる。
【0060】
開放型パウチを形成する工程を伴うプロセスのいずれにおいても、フィルムは、熱成形、真空成形、又は両方を用いて、開放型パウチの形状に、初めに成形又は形成され得る。熱成形は、モールドに加熱要素で接触する、又は熱い空気を吹き込むことにより、又はモールド及び/若しくはフィルムを加熱するために加熱ランプを用いることによるなど、いずれかの既知のやり方で熱を適用することによって、モールド及び/若しくはフィルムを加熱することを伴う。真空成形の場合には、フィルムをモールドの中に入れるのを助けるために、真空による援助が採用される。他の実施形態では、2つの技術が組み合わされてパウチを形成することができ、例えばフィルムは、真空成形によって開放型パウチに形成されることができ、熱がプロセスを促進するために提供され得る。開放型パウチは、次にその中に収容されるべき組成物により充填される。
【0061】
充填された開放型パウチは次に閉鎖されるが、これはいずれの方法によっても行なわれ得る。水平型パウチ形成プロセスのような、幾つかの場合には、閉鎖は、第2材料又はフィルム、例えば水溶性フィルムを開放型パウチのウェブの上方及び上に連続的に供給し、次いで第1フィルムと第2フィルムを共にシールすることにより行なわれる。第2材料又はフィルムは、本明細書に記載される水溶性フィルム10を含むことができる。その上に塩が分配される(又はフィルムの厚さ内部に含有される塩により密接して位置する)第2フィルムの表面は、パウチの外側表面を形成するように配向されることが望ましい場合がある。
【0062】
こうしたプロセスでは、第1及び第2フィルムは、モールドの間、したがって隣接するモールドの中で形成されるパウチの間の領域において、典型的にはシールされる。シールは、いずれの方法によっても行なわれ得る。シールの方法には、ヒートシール、溶媒溶接、及び溶媒密封又は湿潤密封が挙げられる。シールされたパウチのウェブは次に切断装置により切断されることができ、この切断装置は、ウェブ中のパウチを、別個のパウチに互いに切り離す。水溶性パウチを形成するプロセスは、米国特許出願09/994,533、公報番号(Publication No.)US2002/0169092A1(カトリン(Catlin)らの名前により公開)に更に記載されている。
【0063】
製造品
本発明は、製品組成物を保持するためのパウチ、サッシェ、カプセル、袋などのような容器に形成されてもよい、製品組成物及び水溶性フィルムを含む、製造品(若しくは「物品」)又は製品を含んでもよい。そこに、より密接して分配される塩を有する水溶性フィルムの表面は、容器の外側表面を形成するために用いられてもよい。水溶性フィルムは、製品組成物の1回用量を提供する容器の少なくとも一部分を形成してもよい。
【0064】
本明細書における論議はまた他の種類の容器にも当てはまることは理解されるべきであるが、簡単にするため、本明細書において関心のある物品は、水溶性パウチに関して記載される。
【0065】
前述の方法により形成されたパウチは、水溶性パウチの水中への浸漬など、水溶性パウチから組成物を放出することが望まれるまで、その中に収容される組成物を保持するために好適ないずれの形態及び形状であることができる。パウチは、1つの区画又は2以上の区画を含むことができる(即ち、パウチは多区画パウチであることができる)。1つの実施形態では、水溶性パウチは、ほぼ重ね合わされる関係にある2以上の区画を有してもよく、並びにパウチは、上方及び下方のほぼ相対する外壁、パウチの側面を形成するスカート様の側壁、並びに異なる区画を互いに分離する1つまたは複数の内部隔壁を含む。パウチ内に収容される組成物が異なる形態又は構成成分を含む場合には、組成物の異なる構成成分は、水溶性パウチの異なる区画内に収容されてもよいし、水溶性材料の障壁により互いに分離されてもよい。
【0066】
パウチ又は他の容器は、洗濯洗剤組成物、自動食器洗い用洗剤組成物、硬質表面クリーナー、染み除去剤、布地強化剤及び/又は柔軟仕上げ剤、並びに少量の水との接触が早過ぎるパウチの溶解、望ましくないパウチの漏れ及び/又は望ましくないパウチとパウチの粘着を生み出す可能性がある新しい製品形態として用いる1つまたは複数の組成物の1回用量を含有してもよい。パウチ内の組成物は:液体、液体ゲル、ゲル、ペースト、クリーム、固体、顆粒、粉末などが挙げられるが、これらに限定されないいずれかの好適な形態であることができる。多区画パウチの異なる区画は、適合性のない成分を分離するために用いられてもよい。例えば、漂白剤と酵素を別の区画内に分離することは望ましい場合がある。多区画の実施形態の他の形態には、液体含有区画と組み合わされた粉末含有区画を挙げてもよい。多区画水溶性パウチの追加の実施例は、米国特許第6,670,314B2号(スミス(Smith)ら)に開示される。
【0067】
水溶性パウチは、いずれかの好適な水溶液(例えば、熱い又は冷たい水)中に投入されてもよく、すぐに水溶性パウチを形成する水溶性フィルム材料が溶解してパウチの内容物を放出する。本明細書に記載されるフィルム及びパウチは、水に可溶性又は分散性であってもよく、少なくとも約50重量%、あるいは少なくとも約75重量%、又は更には少なくとも約95重量%の水溶解度を有する。フィルム及びパウチの溶解度を、フィルムの一片又はパウチの1つのいずれか(パウチを構成するフィルムを含む)を蒸留水に加え、フィルム又はパウチのいずれかを含有する蒸留水を磁性攪拌器を用いて激しく攪拌し、フィルム又はパウチを含有する水を、20μの最大孔径を有するガラス濾過器を用いて濾過する方法により測定してもよい。次に濾過器上に収集された材料の乾燥重量を、初期試料の重量と比べ、百分率で表す。
【実施例】
【0068】
次の実施例は、本発明の完全な理解を補助するために与えられる。本発明は、ここに記載される実施例に、又は手順、材料、比率、及び条件に限定されるものではなく、これらは単に説明に役立てるためだけであることは理解される。特に指定のない限り、比率は重量による。
【0069】
実施例1−溶解に対して改善された耐性を有する水溶性フィルムから製造されるパウチの提供
この実施例では、水中に浸漬される前に溶解に対して改善された耐性を有する水溶性フィルムから製造された既成の水溶性パウチが提供される。これは、パウチフィルムの外側表面に塩を振りかけることにより達成される。
【0070】
アリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標)として既知の液体洗濯洗剤の1回用量を含有する市販の水溶性パウチが、ヨーロッパのプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から得られる。アリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標)水溶性パウチの内容物は、少なくとも幾らかのPVOHを含む水溶性フィルム中に収容される。
【0071】
アリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標)水溶性パウチの外側表面に、番号120又は番号270の大きさのふるいのいずれかを通過する硫酸ナトリウム粉末が振りかけられる。水溶性フィルムに加えられた塩の量は、初期フィルム重量(塩が加えられる前)に対する百分率として、フィルム上に加えられた塩の量に関して表されることができる。フィルムに加えられる塩の量は、初期フィルム重量の約2.5重量%〜約7重量%である。この方式で作り出された3組の試料の、少量の水に接触したときの溶解に対する改善された耐性が表2に示される。試料が「変形した」として記載される場合、それらは変形するが、漏れてはいない。
【0072】
実施例2−溶解に対して改善された耐性を有する水溶性フィルムから製造されるパウチの提供
この実施例では、水中に浸漬される前に溶解に対して改善された耐性を有する水溶性フィルムから製造された水溶性パウチが提供される。これは、水溶性フィルムの外側表面を少なくとも部分的に溶解し、次いでそれに塩を振りかけることにより達成される。
【0073】
液体洗濯洗剤の1回用量を含有する別のアリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標)水溶性パウチが得られる。アリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標)水溶性パウチの外側表面は、湿潤手段を用いて(例えば、濡れたスポンジ、霧状の水、水噴霧などを用いて)フィルム面の表面に水を適用することにより、フィルムの奥行きまでの行程の一部が濡らされ、溶解される。次にパウチの湿潤外側表面に、約150μ以下の平均粒径を有する硫酸ナトリウム粉末が振りかけられる。次にパウチは、表面が乾いた手触りになるまで乾燥させられる。水溶性パウチの表面をタオルで接触して擦ることにより、過剰の硫酸ナトリウムが取り除かれ、外側表面の中に埋め込まれた塩を有するパウチの形成が完了する。
【0074】
上記の実施例1及び2に記載された同じ工程がまた、溶解に対して改善された耐性を有する水溶性フィルムから製造される多区画水溶性パウチを提供するために用いられてもよい。これは、多区画水溶性パウチ、例えば、米国のプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から得られる自動食器洗い機用洗剤の1回用量を含有するカスケード(CASCADE)(登録商標)アクションパック(ActionPac)(商標)多区画水溶性パウチに対して、実施例1及び2に記載されたのと同じ方式で行なわれることができる。
【0075】
実施例3−多層水溶性フィルムの形成
この実施例では、2層を含む多層水溶性フィルムが形成される。2つの溶液が、モノソル(MonoSol)のM8630(商標)フィルムを用いて作製される。モノソル(MonoSol)のM8630(商標)フィルムが、脱イオン水中に75〜80℃で溶解されて溶液を形成する。2つの溶液は、塩を含有しない溶液(溶液1)、及び硫酸ナトリウムを含有する溶液(溶液2)を含む。これらの溶液の組成が表1に一覧にされる。
【0076】
【表1】

【0077】
米国フロリダ州ポンパノビーチ(Pompano Beach)のポールN.ガードナー社(Paul N. Gardner Company, Inc.)から入手可能なガードコ(GARDCO)(商標)自動ドローダウン機(Automatic Drawdown machine)を、#26のキャストバー及び6.0のキャスト速度設定と共に用いて、溶液2がガラスプレート又はガラススライド上でフィルムにキャストされる。キャスト後、スライドは、オーブン中に74℃(165℃)で20分間設置される。74℃(165°F)で20分後、ガラススライドはオーブンから取り出され、ガードコ(GARDCO)(商標)自動ドローダウン機(Automatic Drawdown machine)上に設定し直される。この第1のキャストの厚さは、およそ20ミクロンである。
【0078】
#42/76のキャストバー及び12.4のキャスト速度設定を用いて、溶液1が、溶液2を用いて製造されたガラススライド上のフィルムの上で、フィルムにキャストされる。次にガラススライドは、オーブン中に74℃(165°F)で1時間設置される。1時間後、水溶性のキャスト材料の層をその上に有するガラススライドがオーブンから取り出され、21℃で40%相対湿度の室内に24時間設置されて多層フィルムを形成する。最終多層フィルムの結果として得られる厚さは、およそ72ミクロンである。
【0079】
本明細書で形成される水溶性フィルムは、いずれの好適な製品組成物を保持するいずれの好適な容器(例えば、水溶性パウチ)を形成するためのパウチ材料として用いられてもよい。
【0080】
水滴耐性試験方法−漏れ試験
水滴耐性試験は、
a)水溶性パウチを提供する;
b)水溶性パウチの外側表面の1つの中心に0.001〜0.01mLの室温水滴を適用する;
c)10分間待つ、及び
d)水溶性パウチが漏れるかどうか決定する;
により実行される。
【0081】
パウチとパウチの粘着試験
パウチとパウチの粘着試験は、
a)試験する水溶性パウチを提供する;
b)試験する水溶性パウチの外側フィルム表面の中心に0.03mLの室温水滴を適用する;
c)本明細書に記載される水溶性フィルムを含まない水溶性パウチを提供する(「塩を含まない」対照パウチ);
d)「塩を含まない」水溶性パウチを試験する水溶性パウチ表面の湿潤領域の上に設置する;
e)10秒間待つ、及び
f)塩を含まない水溶性パウチを15cm(6インチ)持ち上げる;及び
g)試験する水溶性パウチが、塩を含まない水溶性パウチに粘着したかどうかを決定する;
により行われる。
【0082】
すべての試験は、特に指定のない限り、標準実験室条件下で行なわれる。
【0083】
表2は、市販の液体洗剤パウチ(例えば、ヨーロッパのプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から得られるアリエール(ARIEL)(登録商標)リクイタブズ(Liquitabs)(商標))についての水滴耐性試験の結果を示す。塩の付加重量が、フィルム重量の百分率として与えられる。結果は、塩を含む水溶性パウチは、塩を含まない水溶性パウチに対して、即時の漏れについて75%を超える減少を示すため、水溶性パウチは、早過ぎるパウチの溶解、望ましくないパウチの漏れ、及び/又は望ましくないパウチとパウチの粘着に対して耐性があることを示す。
【0084】
【表2】

【0085】
Na2SO4の粉末をかけることは、パウチとパウチの粘着を減らすことがまた観察される。0.03mLの水滴が、第1の塩を含まない水溶性パウチ(即ち米国のプロクター・アンド・ギャンブル社(The Procter & Gamble Company)から得られるカスケード(CASCADE)(登録商標)アクションパック(ActionPac)(商標))の表面に適用され、次いで第2の塩を含まない水溶性パウチが第1の塩を含まない水溶性パウチの上に10秒間設置されるとき、2つの塩を含まない水溶性パウチは強く結合されるため、それらは水溶性パウチ材料又は水溶性フィルムを破かずに、別々に離すことができない。この同じ手順が、塩を含む水溶性パウチに対して実行されるとき、塩を含む水溶性パウチは、粘着しないか、又は簡単に振り離されるかのいずれかである。
【0086】
本発明は、少量の水に接触したときに、溶解に対して耐性を有するフィルムを提供することに加えて多数の利点を提供してもよい。塩をフィルムに加えることは、より薄いフィルムが構築できるようにし、及び/又は水中に浸漬されたときに、より大きい溶解度を有するフィルムを可能にする場合があるが、これは、少量の水に接触したときの溶解度への耐性を提供するために、追加の厚さを有するフィルムを設計することが必要でないためである。本明細書に記載される方式で、少量の水に接触したときの溶解度への耐性を有するフィルムを提供することは、物理的特性(例えば、溶解度、可撓性、伸展性など)及び審美的特性(例えば、透明又は半透明である場合は透明性又は半透明性)を維持し、並びにフィルムの老化の際にもこれらの特性の持続を実質的に維持する。しかしながら、請求項において記載された発明(類)は、そこで特に指定のない限り、こうした利点のいずれかを提供することを必要とされていないことは理解されるべきである。
【0087】
本記述全体にわたって言及したすべての特許、特許出願(及びそれに基づいて発行されたいずれの特許、並びにいずれの関連して発行された外国特許出願も)、及び公開公告の開示内容を本明細書に参考として組み込む。しかしながら、本明細書に参考として組み込まれる文献のいずれもが本発明を教示あるいは開示していないことを明言する。
【0088】
本明細書全体を通じて記載されるあらゆる最大数値限定は、それよりも小さいあらゆる数値限定を、あたかもこうしたそれよりも小さい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように包含することは理解されるべきである。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる最小数値限定は、それよりも大きいあらゆる数値限定を、あたかもこうしたそれよりも大きい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる数値範囲は、こうしたより広い数値範囲内に入る、それよりも狭いあらゆる数値範囲を、あたかもこうしたそれよりも狭い数値範囲がすべて本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0089】
本発明の特定の実施形態について記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明らかであろう。様々な変更及び修正が、本発明の範囲から逸脱することなく実施されてもよく、本発明が、本明細書に記載されている実施形態及び実施例に限定されるものでないことは、当業者には明らかである。
【0090】
本明細書は、本発明を形成するとみなされる主題を特に指摘して明確に請求する特許請求の範囲をもってまとめられるが、本発明は、添付の図面と関連させた以下の説明で更によく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】フィルムの外側表面の1つの上に配置された塩を有するフィルムの一部分の、断片化した概略的側面図。
【図2】その外側表面上に層を有し、層の中に組み込まれた塩を有する水溶性フィルムを製造する方法の断片化した概略的側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に浸漬される前に溶解に対して耐性を有する水溶性フィルムを製造する方法であって、前記方法が、
(a)好ましくは少なくとも幾らかのポリビニルアルコールを含み、第1表面及び第2表面を有する水溶性フィルムを形成する工程と、
(b)前記フィルムの前記表面の少なくとも1つに塩を適用し、好ましくは前記塩が前記フィルムの約0.5重量%〜約15重量%を構成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
適用工程が、上に分配すること、隣接して分配すること、中に組み込むこと、内部に分配すること、中に分配すること、中に配置すること、上に配置すること、その上に分配すること、その中に組み込むこと、含有すること、及びそこに加えることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩が:
アルミニウム、アンモニウム、アンチモン、バリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、セシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、ニッケル、カリウム、ルビジウム、銀、ナトリウム、ストロンチウム、亜鉛、及びジルコニウムから選択されるカチオン又はカチオン混合物;および
酢酸塩、硫酸アルミニウム、アジ化物、重炭酸塩、亜硫酸水素塩、ボロヒドリド、ボロオキザラート、臭素酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、クロム酸塩、シアン酸塩、シアン化物、重クロム酸塩、二ケイ酸塩、ジチオン酸塩、フェリシアン化物、フェロシアン酸塩、フェロシアン化物、フッ化物、フルオロアンチモン酸塩、フルオロホウ酸塩、フルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、フルオロケイ酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、シアン化水素、リン酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、水酸化物、ヒドロキシスズ酸塩、次亜塩素酸塩、次亜硝酸塩、次亜リン酸塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、マンガン酸塩、メタ−アルミン酸塩、メタホウ酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、メタケイ酸塩、混合ハロゲン化物、モリブデン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、オルトリン酸塩、オルト亜リン酸塩、オルトケイ酸塩、シュウ酸塩、オキザラートフェラート、酸化物、過ホウ酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化物、ペルオキシ二硫酸塩、リン酸塩、ポリ臭化物、ポリ塩化物、ポリフッ化物、ポリヨウ化物、ポリリン酸塩、ポリ硫化物、ピロ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、セスキ炭酸塩、ケイ酸塩、スズ酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、チオシアン酸塩又はチオ硫酸塩から選択されるアニオン又はアニオン混合物
から成る群から選択され;
好ましくは、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が粉末形態で適用される、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩が、前記フィルムの前記表面の前記少なくとも1つの上に噴霧される溶液の形態で適用される、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)と(b)との間に、湿潤手段を用いて前記フィルムの前記表面の前記少なくとも1つの少なくとも一部分を湿潤させて、前記フィルムの湿潤表面を形成する工程を更に含み、および、工程(b)が前記湿潤表面に塩を適用することを含む、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
水中に浸漬される前に溶解に対して耐性を有する水溶性フィルムを製造する方法であって、前記水溶性フィルムが第1表面及び第2表面を含み、前記方法が、
(a)第1の水溶性フィルム形成組成物を提供する工程であって、前記第1フィルム形成組成物が第1濃度の塩を含む工程と、
(b)前記第1水溶性フィルム形成組成物から第1フィルムを形成する工程と、
(c)第2の水溶性フィルム形成組成物を提供する工程であって、前記第2フィルム形成組成物が、前記第1水溶性フィルム形成組成物より少ない塩を含むか又は塩を実質的に含まない工程と、
(d)前記第2水溶性フィルム形成組成物から第2フィルムを形成する工程であって、前記第1フィルムが前記第1表面及び前記第2表面の1つを形成するように、前記第2フィルムを前記第1フィルムと組み合わせる工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記第2フィルムが最初にキャストされ、そして前記第1フィルムが前記第2フィルムの上にキャストされるか、又は
前記第1フィルムが最初にキャストされ、そして前記第2フィルムが前記第2フィルムの上にキャストされ、
好ましくは、前記第1フィルムが前記第2フィルムより厚い、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2フィルムの少なくとも1つが、キャストにより形成されるか、又はコーティングにより形成される、請求項7〜8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記水溶性フィルムを製品に成形する工程を更に含み、好ましくは、前記製品が、水溶性のパウチ、サッシェ、カプセル、袋、又は容器であり、より好ましくは、任意選択的に、前記製品に1つまたは複数の組成物が充填される、請求項1〜9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−528729(P2008−528729A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552256(P2007−552256)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/001876
【国際公開番号】WO2006/078804
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】