説明

水中の生体異物を除去するための浄化方法および装置

本発明は、水中に存在する生体異物の光化学除去方法を実行するのに適した浄化装置に言及する。この浄化装置は、汚染水用の少なくとも1の入口(2’)および浄化水用の1の出口(2”)を有する光化学反応炉ユニット(2)を備える。このユニットは、入口(2’)から出口(2”)に連続的に水を流すための流路を与える。また、このユニットには、100乃至280nmの波長範囲の紫外線放射を与える放射源モジュール(6)が設けられている。この浄化装置は、限外ろ過を実行するように設計されるとともに、入口(2’)を介して光化学反応炉ユニット(2)の上流に接続される少なくとも1の膜ろ過ユニット(1)と、光化学反応炉ユニット(2)に含まれる水に空気または二原子酸素を供給する少なくとも1の装置とをさらに備える。さらに、本発明の方法を使用する浄化方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理の分野、特に、生体異物として要約される化学および生物活性化合物を除去するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水の汚染除去は、地球上で最も重要な問題の一つである。化合物を分解、改変または除去するために、数多くの手法が開発されている。国際公開WO1999/055622は、液体から強い酸化剤を除去する装置および方法を開示しており、その装置が、照射ユニットと、その後に、軟化ユニットである処理ユニットと、金属レドックス媒体またはそれらの合成物を有する反応槽とから構成されている。照射ユニットでは、185−254nmの波長領域の紫外線光が使用される。
【0003】
欧州特許EP1160203においては、120nm乃至210nmの範囲の真空紫外放射による水の光分解と、二原子酸素の電気化学的製造とによって、水溶液中の有機化合物を分解するための方法および装置が記載されており、後者が、水溶液の照射部分で生じるものとなっている。
【0004】
また、米国特許出願公開US2006/0124556A1も、液体浄化装置および方法を開示している。その装置は、100乃至300nmの範囲の光を生成するレーザ光分解チャンバと直列に配置された複数のろ過ユニットを備える。上記の多段階装置および方法は、微生物および芳香環構造を消滅させるように設計されている。それは、エンドユーザ利用のために設計されているように思われる。
【0005】
さらに、Sosnin等は、“Application of capacitive and barrier discharge excimer lamps in photoscience”(Journal of Photochem.and Photobiol.C:Photochem.Rev.,7,2006,145−163ページ)において、水相の有機基質の酸化および無機化のために、エキシマーランプにより生成される真空紫外放射および紫外線を使用することについて述べている。貯留槽と光反応炉との間を再循環する水による流水式光化学反応炉を有するベンチスケールの装置が開示されている。
【0006】
従来技術を考慮すると、生体異物で汚染された水を産業規模で浄化する信頼できる手段を提供することに対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
この目的は、請求項1に係る特徴を有する浄化装置によって達成される。
【0008】
汚染水から生体異物を確実に除去するという目的は、請求項11に係る特徴を有する方法によって達成される。
【0009】
本発明に係る装置および方法の更なる実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0010】
本発明は、飲料水の処理において、水から、特に汚染水から、生体異物を取り除く装置および方法を提供することを求めるものである。“生体異物(Xenobiotics)”は、1リットルあたりマイクログラム乃至フェムトグラムの濃度の生体異物の汚染物質を意味し、特に、薬剤の製造および消費に起因する生体異物の汚染物質、並びに、生体異物の生産と使用のその他の源に起因する生体異物の汚染物質を意味する。
【0011】
本発明の第1実施形態では、生体異物の光化学除去のための浄化装置が提供される。この装置は、工業規模用途まで使用することができる。
【0012】
浄化装置は、生体異物汚染水用の1またはそれ以上の入口と、浄化水用の1またはそれ以上の出口とを有し、連続的に流れる水のための流路が入口から出口まで設けられている光化学反応炉ユニットを備える。反応炉ユニットには、100乃至280nmの波長範囲の紫外線放射を生成する放射源モジュールが設けられている。さらに、浄化装置は、光化学反応炉ユニットの上流に接続されている1またはそれ以上の膜ろ過ユニットを備える。膜ろ過は、限外ろ過(ultra filtration)を実行して、それにより、有利なことに、後続の光化学処理を受ける水流に含まれる粒状物質および溶媒和高分子を収集するように設計されている。水流から粒子および高分子物質を除去することによって、水の高い透明度がもたらされ、汚染物質分解の効率が向上する。
【0013】
有利に酸化分解反応のプロセスを補助して生体異物の完全な無機化を達成するために、浄化装置には、二原子酸素、好ましくは空気を、光化学反応炉ユニットに供給するための少なくとも1の装置がさらに設けられている。一般に、浄化された圧縮空気または二原子酸素は、圧縮された態様で提供するようにしてもよい。しかしながら、二原子酸素は、電気分解によってその場で生成するようにしてもよい。
【0014】
浄化装置は、水位調整システムまたは水流通過調整システムをさらに備えることができ、そのシステムは、光化学反応炉と膜ろ過ユニットとの間で扱われる水の異なる流水速度の平衡を保つ中間貯留槽と組み合わせることが望ましい。
【0015】
放射源モジュールは、電源に接続されており、この電源は、モジュールの電気入力および放射線出力の操作および制御のために使用することもできる。
【0016】
限外ろ過を行うために、本発明に係る浄化装置の実施形態に含まれる膜ろ過ユニットは、0.07から0.25μmまでの範囲の孔径を有し、0.12μmの平均孔径を有する膜を備える。膜ろ過ユニットは、当業者にともに良く知られているクロスフローろ過またはデッドエンドろ過の何れかを実行するために取り付けられ、フィルタを通過した透過水(permeate)は光化学反応炉ユニット内に導かれる。好ましくは、浄化装置の膜は、ろ過される媒体の化学特性に対応する親水性膜である。
【0017】
本発明のその他の実施形態は、光化学反応炉内で使用されて、入口と出口の間にそれぞれ提供される水流路または水の流れに対して平行または横断方向に配置される放射源モジュールに言及する。
【0018】
放射源モジュールは、放射源を囲む少なくとも1の被覆管(enveloping tube)を含むことができ、この被覆管は、放出された紫外線放射に対して少なくとも部分的に透過的である。好ましくは、被覆管の材料は、強固で、耐熱性で、化学的に不活性で、200nm未満の波長範囲でも透過的な人工水晶である。
【0019】
また、本発明の実施形態に係る浄化装置は、放射効率の損失を防止するために、放射源モジュール、特に、被覆管の機械的および/または化学的な洗浄を実行する洗浄手段を含むことができる。洗浄方法は、手動で実行することができ、あるいは、予め設定されたタイミングまたは透明度測定から生じる信号に続いて、自動的に起動させることができる。
【0020】
汚染水の体積流量および光化学反応炉ユニットの設計に応じて、複数の放射源モジュールを光化学反応炉ユニット内で順番におよび/または同時に操作することができる。一般に、100から280nmまでの範囲の波長を有する光を発する所望の発光スペクトルに従って、放射源モジュールの種類が選択される。適切な紫外線放射源は、主に185nmおよび254nmの波長で紫外線放射を発する低圧水銀灯である。
【0021】
大量の汚染水を処理するために、浄化装置は、複数の光化学反応炉ユニットと、それぞれ、適当な数の膜ろ過ユニットとを備えることができ、膜ろ過ユニットは、処理される水の特性および/または流動条件に応じて、直列および並列の一方または両方の態様で配置することができる。一般に、膜ろ過ユニットは、各光化学反応炉ユニットの上流に取り付けられる。
【0022】
さらに、浄化装置は、生体異物の分解を改善するために、過酸化水素を光化学反応炉ユニット内に供給する少なくとも1の装置を含むことができる。照射段階中に過酸化水素を加えることは、特に190nm以上の波長でヒドロキシラジカルの生成を増加させることになり、一方、100から190nmまでの波長領域では、水分子の光分解および/またはホモリシスによりヒドロキシラジカルが生成される。ヒドロキシラジカルは生体異物と異なるラジカル反応を開始し、それは、提供された二原子酸素(空気中のまたは純粋な)との組合せにより、生体異物の酸化的分解反応および最終的な無機化をもたらす。
【0023】
本発明の実施形態に係る装置で、かつ本明細書に記載の方法を使用して、処理および除去される生体異物は、相対的に低分子量の外因性分子である。これら生体異物は、薬剤組成物によるものであってもよく、あるいは、水または大気汚染物質、食品添加物、フィトファーマシューティカルズ(phytopharmaceuticals)およびその他の発生源に含まれるものであってもよい。
【0024】
本発明の実施形態に係る水中の生体異物を除去する方法は、上述したような浄化装置を使用する。この方法は、水をろ過するステップと、所望の波長で透過水を照射に曝すステップの僅か2ステップのみの実行しか一般に必要としない単純な手順である。
【0025】
最初に、汚染水の連続的なフローは、膜ろ過ユニットに供給されて、限外ろ過ステップが実行され、それにより、浮遊および溶媒和高分子物質がその水から除去される。その後、浄化前の水、“透過水”は、光化学反応炉ユニット内に導かれて、100から280nmまでの範囲の波長で紫外線照射を受け、生体異物が、光誘起ヒドロキシラジカルの生成により分解される。提供される空気または二原子酸素の存在下では、酸化的分解反応が生体異物の無機化を引き起こすことができる。
【0026】
浄化水の連続的な流れは、ここで浄化装置から放出することができる。
【0027】
本発明に係る方法は、汚染水を供給するステップと、酸化的方法を通じて生体異物を除去するために、ろ過して、ろ過した水を照射するステップと、その後に、照射された水を排出するステップとを備えるものであるが、これは、連続プロセスとして実行することが好ましい場合もある。そのような目的のために、幾つかの光化学反応炉ユニットを同時または順番に使用するようにしてもよい。バッチ式または半連続プロセスが可能であるが、1または幾つかの光化学反応炉ユニットを通って水を再循環させることにより、連続的な水の流れは紫外線照射を繰り返し受けることが必要である。
【0028】
本発明および本発明の目的は、数多くの実施例と併せて、詳細な説明を読むとともに、図面を検討することにより、良好に理解されることとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、開水路設計(open channel design)を有する光化学反応炉ユニットの概略図を示している。
【図2】図2は、クロスフロー膜ろ過ユニットおよび光化学反応をユニットを有する本発明の実施形態に係る浄化装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1および図2は、本発明の浄化装置に組み入れるのに適した異なるタイプの光化学反応炉ユニット2を示している。光化学反応炉ユニット2の上流では、水中の生体異物の光化学除去用の浄化装置が、図2に示す膜ろ過ユニット1に接続されている。本発明の実施形態に係る装置は、大規模下水処理または飲料水の処理に適している。
【0031】
図2に示す膜ろ過ユニットは、矢印Aにより示される汚染水の流入のための入口3を備える。浮遊粒子または溶媒和高分子物質は、膜ろ過ユニット1の膜5に沿って流れる濃縮液(retentate)のフローA’において濃縮され、この膜は、ここでは、0.07から0.25μmまでの範囲の孔径を有し、平均孔径が0.12μmの親水性膜である。典型的な精密ろ過膜の孔径範囲は、0.1乃至10μmであり、限外ろ過膜の典型的な孔径は0.1μm未満であり、本発明の装置に使用される膜5は、精密ろ過と限外ろ過の間の孔径を示している。図2に示すようなクロスフローろ過は、ろ過ケーキが蓄積しないため、膜が汚染されるのを防止する。
【0032】
フロー条件に応じて、膜ろ過ユニットへの複数の入口を提供することができる。
【0033】
一般に、精密ろ過は、ミクロンサイズのフィルタとして機能する微多孔膜を通過する流体から汚染物質を除去するろ過方法である。精密ろ過は、圧力を使用してまたは使用せずに実行することができる。フィルタ膜は、多孔質であり、水、一価の種(monovalent species)、溶解性有機物、小さいコロイドおよびウィルスの通過を許容するが、粒子状物質、沈殿物、藻または大きなバクテリアを保持する。汚水処理において限外ろ過を使用することは、さらに、連続的なろ過プロセスにおいて対象となる高分子を分離して濃縮する働きをする。使用される膜の分画分子量(MWCO)に依存して、高分子は透過水中に移入されるか、または濃縮液において分離または濃縮される。
【0034】
図2では、膜5が、濃縮液A’の入口3から出口7に至る流体経路に対して平行な方向に配置され、それによりクロスフローろ過を提供する。クロスフローは、膜5上で汚れるのを防止する。分離された浮遊および溶媒和高分子物質は、濃縮水A’(矢印を参照)において濃縮され、一方、溶解性汚染物質で満ちている矢印Bで示される透過水は、入口2’を介して、光化学反応炉ユニット2内に送り込まれる。
【0035】
膜上のろ過ケーキの蓄積は、デッドエンドろ過が実行されるときに、それでも生じる可能性があり、膜ろ過ユニットの不連続動作の原因となる周期的な除去を必要とする。したがって、汚水入口と、下流の光化学反応炉ユニットとに交互に接続される少なくとも2の膜ろ過ユニットを提供して、膜ろ過ユニットの一方がメンテナンスを受けている間に、水が膜ろ過ユニットのもう一方を通って連続的に確実に流れるようにすることは、都合が良い場合がある。
【0036】
浄化装置の光化学反応炉ユニット2には、図2の点線によって示されるように、1つの放射源モジュール6を設けることができる。代替的には、それには、図1に示すように、2以上の放射線モジュール6を設けるようにしてもよく、ここでは、4つの放射線モジュール6(点線)が互いに平行に配置されて、反応炉内の主流路B’と位置合わせされ、主流路が、膜ろ過ユニット1の透過水Bの出口と接続される。各放射源モジュール6は、100乃至280nmの波長範囲の紫外線放射を放出する放射源を含む。
【0037】
図1および図2の光化学反応炉ユニット2内の放射源モジュール6は、水流路B’と位置合わせされている。その他の光化学反応炉ユニットは、提供される主流路に対して垂直に配置された放射源モジュールを含むことができる。光化学反応炉ユニット内で2以上の放射源モジュールが使用される場合、モジュールを平行または横に、一方向に配置することができ、あるいは、それらを、照射される反応炉容積の均質な照射を達成するために、クロスパターンを形成するように配置することもできる。
【0038】
放射源モジュールの放射源は、少なくとも1の被覆管に取り囲まれるようにしてもよい。この被覆管は、光化学的に誘発される分解方法に必要とされる波長を有する放射に少なくとも部分的に透過的なものである。したがって、被覆管の材料は、水晶材料、好ましくは200nm未満の真空紫外放射に透過的な人工水晶品質から形成されることが望ましい。
【0039】
被覆管の良好な透過率を維持するために、被覆管を洗浄する手段を設けることができる。洗浄は機械的および/または化学的に行うものであってもよく、また洗浄手段は、手動またはタイミング良く自動的な方法で操作されるものであってもよい。
【0040】
光化学反応炉ユニットは、複数の放射源モジュールを含むことができ、それらは、光化学反応炉ユニットの設計および望ましいフロー条件に応じて、直列および/または並列に接続することができる。幾つかの光化学反応炉ユニットは、処理される汚水の流量、分解される汚染物質の性質および濃度に応じて、直列および/または並列に接続することができる。放射源は、異なる発光スペクトルを有する異なるタイプのものであってもよく、あるいは、同じ発光スペクトルを有するすべて同じタイプのものであってもよい。
【0041】
好ましい放射源は、185nmおよび254nmの波長で支配的な輝線を有する発光スペクトルを示す低圧水銀灯である。人工水晶の被覆管は、185nmと254nmの放射の両方の伝送を可能にするが、天然石英の被覆管は、254nmの放射の伝送のみを可能にする。
【0042】
その他の適当な放射源は、要求される波長範囲の光を出力するエキシマーランプであり、特に適当な放射源は、172nmで発光極大を有するXeエキシマーランプ、193nmおよび175nmでそれぞれ発光極大を有するArFおよびArClエキシマーランプのような真空紫外放射源である。例えば、上記波長範囲の放射線を放出することができるその他の放射源は、例えば、222nmで発光極大を有するKrClエキシマーランプのようなUV−C放射源を含む。
【0043】
市販の放射源およびランプの幅広い出力、寸法および形状に関して、185nmの真空紫外放射線と、場合により254nmの紫外線C放射を組み合わせた、水の照射技術に基づく生体異物の分解および除去は、すべての水処理施設サイズにおいて有利に実施されることがある。
【0044】
水位調整システムは、図1の開水路設計を有する光化学反応炉ユニット2において特に有効である場合がある。
【0045】
放射源モジュールは、当業者に知られているように、放射源または放射源モジュールを操作および制御する手段を有する電源装置と接続されたときに、作動される。
【0046】
酸化法を補助して、生体異物の完全な無機化を達成するために、浄化装置には、圧縮空気または二原子酸素を光化学反応炉ユニットに、特に、放射源モジュールを取り囲む照射領域に供給する少なくとも1の装置が設けられている。二原子酸素のその場での製造は、照射領域に適当な方法で配置された電極を使用して、電気化学的に実現することができる。
【0047】
汚水の大量のフローを管理するために、複数の膜ろ過ユニットを直列および/または並列に配置して、その後に、複数の光化学反応炉ユニットを配置することができ、それにより、汚水の大規模体積フローのための主入口をフロースプリッタに接続して、そのフローを、膜ろ過ユニットに供給する幾つかのサブフローに分けるようにしてもよい。その場合、透過水合流装置を設計するようにしてもよい。
【0048】
光化学反応炉ユニットに過酸化水素を供給する少なくとも1つの装置の配置は、190nmより上の波長領域の過酸化水素のホモリシスによって追加のヒドロキシラジカルを生成するのに役立ち、そこでは、水の光化学のホモリシスは生じない。その結果、低圧水銀灯の放出された放射線は、185nmで水のホモリシスによりヒドロキシラジカルを生成して、254nmで過酸化水素のホモリシスによりヒドロキシラジカルを生成させる。
【0049】
ヒドロキシラジカルは、生体異物と様々なラジカル反応を始め、それは、二原子酸素との併用で、生体異物の分解および無機化をもたらす。それらのヒドロキシラジカルで開始される反応の反応経路は、従来より知られている。
【0050】
浄化方法は、汚染水の連続する流れを膜ろ過ユニットに通して、浮遊および溶媒和高分子物質を取り除き、その後に、100から280nmまでの波長範囲の紫外線放射で透過水(相対的に低い分子量の溶解汚染物質を含む)を照射するステップを備える。照射は、光化学反応炉ユニット内で行われて、生体異物の除去を開始するヒドロキシラジカルを生成する。
【0051】
光化学ステップへの圧縮空気または二原子酸素の供給は、生体異物の分解および無機化を増進し、よって生体異物の除去を増進する。照射後、浄化水(矢印Cによって示される。図2を参照)は、光化学反応炉ユニットから、1またはそれ以上の出口2”を介して排出することができる。
【0052】
浄化装置および方法は、任意の種類の汚染水から生体異物および全有機体炭素を取り除くのに適している。その方法は、好ましくは連続的に実行することができる。しかしながら、そのプロセスは、連続的または半連続的に実行できることに留意されたい。半連続運転においては、水が繰り返し照射を受ける。
【0053】
次の実施例は、生体異物の光化学誘発分解ステップをより明白に示している。実施例は、単なる例示を目的として与えられるものであり、本発明の範囲に関して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0054】
実施例1:人工水晶管内に配置される放射源として低圧水銀灯を有する浄化装置におけるジクロルボス(有機リン殺虫剤)の分解
【0055】
ジクロルボスは、接触、摂取または吸入後に昆虫に対して有効となる外部殺虫剤に属するものである。これは、例えば、家庭および農業において使用される。この分子は、酸性pHの水性環境においてある程度安定しており、その加水分解速度は、pHおよび温度とともに増加し、ジメチルリン酸およびジクロロアセトアルデヒドの生成をもたらす。
【0056】
水350ml中に10−3mol/lの初期濃度のジクロルボスは、UV−C放射と組み合わせて、真空紫外放射を受けた後(バッチプロセス、人工水晶管内の低圧水銀灯、40W)に、50分以内にゼロに減少する。
【0057】
実施例2:放射源としてXeエキシマーランプを有する浄化装置における2,4−ジヒドロキシ安息香酸の分解
【0058】
2,4−ジヒドロキシ安息香酸は、下水で頻繁に見付かるサリチル酸の分解生成物である。その存在は、中毒現象の主な原因となり、それは、水中の濃度が上昇するに連れて重要性が増加する。濃度が上昇するほど、その化合物の分解がより困難になる。
【0059】
水350ml中に400mg/lの初期濃度の2,4−ジヒドロキシ安息香酸は、真空紫外放射を受けた後(バッチプロセス、Xeエキシマー、光子束:Pa=(5.0±0.5)1017光子数/s)に、70分以内にゼロに減少する。濃度が10分の1の場合、全体の分解は、10分未満で達成することができる。
【0060】
人工水晶管によって包まれた低圧水銀灯は、必要に応じて過酸化水素を添加して、同様に使用することができる。
【0061】
実施例3:Xeエキシマーランプを有する浄化装置における2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸の分解
【0062】
水350ml中に400mg/lの初期濃度の2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸は、真空紫外放射を受けた後(バッチプロセス、Xeエキシマー、光子束:Pa=(5.0±0.5)1017光子数/s)に、60分以内にゼロに減少する。濃度が10分の1の場合、全体の分解は、10分未満で達成することができる。
【0063】
ここでも、人工水晶管によって包まれた低圧水銀灯は、必要に応じて過酸化水素を添加して、同様に使用することができる。
【0064】
実施例4:Xeエキシマーランプを有する浄化装置におけるニトログリセリンの分解
【0065】
水350ml中に1.2g/lの初期濃度のニトログリセリンは、溶液を空気で永続的に飽和させた条件下で、真空紫外放射を受けた後(Xeエキシマー、120W)に、4mg/sの速度で除去される。汚染物質の無機化が完了した後、溶液中に亜硝酸塩の痕跡は見付からなかった。
【0066】
全有機体炭素(TOC)に関しても、同様に優れた結果が得られた。任意の種類の汚染水を上述した方法および装置で処理することができ、得られた浄化水におけるTOCの完全な除去をもたらすことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に存在する生体異物の光化学分解および除去方法を実行するのに適した浄化装置であって、
汚染水用の少なくとも1の入口(2’)および浄化水用の1の出口(2”)を有し、前記入口(2’)から前記出口(2”)に連続的に水を流すための流路を与える光化学反応炉ユニットであって、100乃至280nmの波長範囲の紫外線放射を与える放射源モジュール(6)が設けられた光化学反応炉ユニット(2)を備え、
前記浄化装置が、
限外ろ過を実行するように設計されるとともに、前記入口(2’)を介して前記光化学反応炉ユニット(2)の上流に接続される少なくとも1の膜ろ過ユニット(1)と、
前記光化学反応炉ユニット(2)に含まれる水に空気または二原子酸素を供給する少なくとも1の装置とをさらに備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浄化装置において、
1またはそれ以上の水の流量および/または水位調整システムが提供され、少なくとも前記光化学反応炉ユニット(2)に、水の流量および/または水位調整システムが設けられていることを特徴とする浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浄化装置において、
前記膜ろ過ユニット(1)が、0.07μm乃至0.25μmの範囲の孔径、好ましくは0.12μmの平均孔径を有する膜(5)、特に親水性膜を備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の浄化装置において、
前記膜ろ過ユニット(1)が、クロスフローろ過またはデッドエンドろ過を実行するために取り付けられ、透過水がフィルタを通過して、前記光化学反応炉ユニット(2)に導かれることを特徴とする浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の浄化装置において、
前記放射源モジュール(6)が、前記光化学反応炉ユニット(2)内で、前記入口(2’)から前記出口(2”)に至る水の流路に対して、平行にかつ/または横断する方向に配置されることを特徴とする浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の浄化装置において、
前記放射源モジュール(6)が、放射源と、前記放射源を囲む少なくとも1の被覆管とを備え、前記被覆管が、100乃至280nmの範囲の波長で紫外線放射に対して少なくとも部分的に透過的であり、前記被覆管が、好ましくは水晶材料から形成され、より好ましくは人工水晶材料から形成されることを特徴とする浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の浄化装置において、
前記浄化装置が、前記放射源モジュール(6)および/またはその部品の機械的および/または化学的な洗浄を行う洗浄装置を備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の浄化装置において、
100乃至280nmの波長範囲において紫外線放射を発する放射源が、185nmおよび254nmで放射線を放出する低圧水銀灯であることを特徴とする浄化装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の浄化装置において、
複数の光化学反応炉ユニット(2)および複数の膜ろ過ユニット(1)が直列および/または並列に配置され、膜ろ過ユニット(1)が各光化学反応炉ユニット(2)の上流に配置されることを特徴とする浄化装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の浄化装置において、
少なくとも水の流量の平衡を保つ貯留槽が、少なくとも1の膜ろ過ユニット(1)と前記光化学反応炉ユニット(2)との間に配置されることを特徴とする浄化装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の浄化装置において、
前記浄化装置が、前記光化学反応炉ユニット(2)に過酸化水素を供給する少なくとも1の装置を備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の浄化装置を使用して水中の生体異物を除去する方法であって、
前記膜ろ過ユニット(1)内に汚染水の連続的な流れを供給するステップと、
限外ろ過を実行して、それにより水から浮遊および溶媒和高分子物質を取り除くステップと、
少なくとも1の入口(2’)を介して前記光化学反応炉ユニット(2)内に透過水を導くステップと、
前記入口(2’)から前記出口(2”)に流れる水を、100から280nmまでの波長で紫外線放射に曝して、前記生体異物の分解を開始するヒドロキシルラジカルを生成するステップと、
空気または二原子酸素を水の中に供給して、それにより開始された前記生体異物の酸化的分解反応を増進させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記方法が2段階法(two step procedure)であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法において、
前記光化学反応炉ユニット(2)の入口の上流で、または前記光化学反応炉ユニット(2)内で、過酸化水素を透過水に供給するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法において、
前記方法が、連続的に、または半連続的に実行され、半連続的に実行される方法が、1またはそれ以上の光化学反応炉ユニット(2)を介して水を再循環させることにより、紫外線放射を繰り返し受ける水の連続的な流れを必要とすることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れか一項に記載の方法において、
前記方法が、水から全有機体炭素(TOC)を除去するように構成されていることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525247(P2012−525247A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507840(P2012−507840)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000982
【国際公開番号】WO2010/125450
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511257001)
【氏名又は名称原語表記】LOIRA
【Fターム(参考)】