水中カット造粒装置のダイプレート
【課題】ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を簡単に安定化させる。
【解決手段】径外流路20、径内流路21及びヒートチャネル22の少なくとも1つに、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設ける。流量安定化手段は、径外流路20側又は径内流路21側のどちらか一方に形成されて当該流路に加熱媒体を供給する供給口30と、供給口30が形成されていない径外流路20側又は径内流路21側の他方に形成されて当該流路から加熱媒体を排出する排出口31とにより構成されている。また、流量安定化手段は、各ヒートチャネル22に形成した同一断面積の絞り部33により構成されている。
【解決手段】径外流路20、径内流路21及びヒートチャネル22の少なくとも1つに、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設ける。流量安定化手段は、径外流路20側又は径内流路21側のどちらか一方に形成されて当該流路に加熱媒体を供給する供給口30と、供給口30が形成されていない径外流路20側又は径内流路21側の他方に形成されて当該流路から加熱媒体を排出する排出口31とにより構成されている。また、流量安定化手段は、各ヒートチャネル22に形成した同一断面積の絞り部33により構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、樹脂製のペレットを製造するために用いられる水中カット造粒装置のダイプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、樹脂製のペレットを製造するために用いられる水中カット造粒装置は、押出機の下流側に設けられており、溶融樹脂(溶融した処理材)が押し出されるノズルが設けられたダイプレートとこのノズルから押し出された樹脂を回転しながら粒状に切断するカッタとを有している。加えて、これらダイプレートやカッタを覆う循環箱が設けられ、この循環箱の内側は循環する冷却水で満たされている水室がある。
【0003】
ダイプレートには、ノズル内を通る溶融樹脂の保温するために加熱媒体を通るヒートチャネルが複数形成されている。この加熱流路の流路に、高温の蒸気、オイルなどの加熱媒体を供給することにより、ノズルを通過する溶融樹脂の温度を調整している。このように、加熱流路に加熱媒体を供給することによって溶融樹脂の温度を調整する技術として特許文献1〜特許文献2に示すものがある。
【0004】
特許文献1は、ノズル部リングの外側と内側に加熱媒体が流れる環状通路を備えるとともに、これら外側環状通路と内側環状通路との間に多数の加熱チャネル(ヒートチャネル)を形成し、これらヒートチャネルの各間にノズル部リングを貫通する多数の樹脂押出ノズルを設けてなる樹脂ペレット製造用ダイスにおいて、ヒートチャネルが樹脂押出ノズルの小径通路側より大径通路側に所定の長さ延在されてなる樹脂ペレット製造用ダイスである。
【0005】
特許文献2は、ダイス外側表面に多数のノズル孔が形成されてなる樹脂ペレット製造用ダイスにおいて、ノズルに通じるダイス外側表面近傍における樹脂流路と交差する方向に延在し且つこの樹脂流路に沿って配列した複数列の熱媒流路(ヒートチャネル)が設けられてなる樹脂ペレット製造用ダイスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−277528号公報
【特許文献2】特開2001−179734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2におけるダイス(ダイプレート)においては、ヒートチャネルを通る加熱媒体の流量は必ずしも一定ではなく、流量が多いヒートチャネルに近いノズルは加熱が大きく、流量の少ないヒートチャネルの近くのノズルは加熱が小さく、ダイプレートの内の位置により加熱のばらつきが大きかった。
したがって、特許文献1及び特許文献2のダイプレートでは、ノズルの位置によって溶融樹脂の加熱条件にばらつきが大きく、これが造粒のカッティングに影響して、製品の粒子の径が安定しないという問題があった。さらに加熱が十分でないノズルにおいては、溶融樹脂がノズル内において固化してノズルの穴が閉塞することもあった。これらを防ぐために、加熱媒体の流量を増加させたり、あるいは加熱媒体の温度を上昇させるということが考えられるが、この場合、ダイプレート表面から水室に放出される熱が増えることとなり、加熱の効率が悪化するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を簡単に安定化することによって、ノズルに流れる加熱媒体に対する加熱効率が向上すると共に、ノズルから押し出される処理材の温度が一定して造粒のバラツキが小さい水中カット造粒装置のダイプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
溶融した処理材が通過するノズルが形成され、且つ、このノズル間を通る処理材を加熱する加熱媒体が通る加熱流路が内部に形成された円形状のダイプレートであって、前記加熱流路は、径外側に形成された径外流路と、径内側に形成された径内流路と、前記径外流路と径内流路とを径方向に連通して且つ前記ノズル間に設けられた複数のヒートチャネルとを備え、前記径外流路、径内流路及びヒートチャネルの少なくとも1つに、前記ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられていて、前記流量安定化手段は、前記各ヒートチャネルに設けた絞り部を備え、ぞれぞれの絞り部は同一断面積である点にある。
【0010】
前記絞り部は、当該絞り部の断面積と前記ヒートチャネルの他の部分の断面積との断面比率が10%以上50%以下となるように形成されていることが好ましい。
前記絞り部は、前記ヒートチャネルにおいて前記加熱媒体が流れる下流側に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を簡単に安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】水中カット造粒装置の側面断面図である。
【図2】第1参考形態におけるダイプレートの内部図である。
【図3】ヒートチャネルの断面図(図2のA−A断面)である。
【図4】第2参考形態におけるダイプレートの内部図である。
【図5】本実施形態におけるダイプレートのヒートチャネルの断面図である。
【図6】従来のダイプレートの断面図である。
【図7】比較例1におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図8】実施例1におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図9】実施例2におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図10】実施例3におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図11】実施例4におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図を基に説明する。
[第1参考形態]
図1は、第1参考形態にかかる水中カット造粒装置の側面断面図である。
図1に示すように、水中カット造粒装置1は、溶融樹脂を混練する押出混練機2の下流側(樹脂排出側)に設けられるもので、押出混練機2の樹脂排出側2aに取り付けられて多数のノズル(ダイ孔)3が形成されたダイプレート4と、このノズル3から押し出された溶融樹脂(溶融した処理材)を切り取るカッタ5と、カッタ5をダイプレート4上で回転駆動させる駆動手段6と、ダイプレート4と共に水室7を形成する環状箱(ケース)8とを備えている。
【0014】
ケース8(水室7)内には、駆動手段6の回転軸9が回転自在に設けられ、この回転軸9の先端側(押出混練機2側)に円盤状のカッタホルダ10が設けられ、このカッタホルダ10の外周縁にカッタ5が取り付けられている。
この水中カット造粒装置1では、押出混練機2の樹脂排出側2aに設けられた樹脂導入孔11に溶融樹脂を送り、この樹脂導入孔11に連通する複数のノズル3に溶融樹脂を通すことによって、溶融樹脂が水室7側へと押し出すことができる。一方で、駆動手段6の回転軸9を回転させることによって、カッタ5はダイプレート4の水室7側の面に沿って回転することなり、ノズル3を介して水室7側に押し出された溶融樹脂は、回転するカッタ5によって所定の大きさに切断される。カッタ5によって切断された溶融樹脂は水室7内でペレット12となり、このペレット12は水室7に形成された入口13から導入された冷却水によって、水室7に形成された出口14に向かって流されて運搬される。
【0015】
以下、水中カット造粒装置1に用いられるダイプレート4について、図2を用いて詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図2の紙面の左右を左右方向、紙面上下を上下方向と
いうことがある。
図2に示すように、ダイプレート4は円形状であって、外側を構成する外側体15と、この外側体15の内部に設けられてノズル3が設けられたダイプレート本体16と、このダイプレート本体16の内部に設けられた内側体17とを備えている。
【0016】
これら外側体15、ダイプレート本体16及び内側体17によって、ダイプレート4の内部には、加熱媒体(例えば、温水)が通る加熱流路18が形成されている。
加熱流路18は、径外側に設けられた径外流路20と、径内側に設けられた径内流路21と、径外流路20と径内流路21とを径方向に連通して且つノズル3間に設けられた複数のヒートチャネル22とを備えている。
【0017】
具体的には、径外流路20は、外側体15とダイプレート本体16とを径方向に離間することにより構成されている。径内流路21は、内側体17とダイプレート本体16とを径方向に離間することにより構成されている。図3に示すように、ヒートチャネル22の内壁は同じ大きさであって、その断面比率は同じとなっている。
図2に示すように、ダイプレート4の内部には、周方向に8個の径外流路20が設けられ、周方向に4個の径内流路21が設けられている。それぞれの径外流路20や径内流路21は、上下に伸びる中心線C1を中心に左右対称であり、左右に伸びる中心線C2を中心に上下対称となっている。即ち、ダイプレート4(外側体15、ダイプレート本体16、内側体17)を90度毎に4分割した各エリアに、径外流路20や径内流路21が設けられている。
【0018】
このように、ダイプレート4を4分割した対称となる各エリアに、径外流路20や径内流路21が設けられている。
以下、第1区画(0〜90度の範囲)について説明をする。他の部分については、対称であるため説明を省略する。
第1区画Kには、2つの径外流路20(20a,20b)が周方向に離間して設けられており、両者の径外流路20a,20b間には両者を仕切る第1仕切体25が設けられている。この第1仕切体25によって、一方の径外流路(第1径外流路)20a内の加熱媒体が他方の径外流路(第2径外流路)20bへと流れないようにしている。なお、各区画(エリア)において、互いに隣接する部分には、径外流路20を仕切る第2仕切体26が設けられている。
【0019】
第1区画Kには、1つの径内流路21が設けられており、この径内流路21は、一方側(90度側)から他方側(0度)に範囲に亘るものとされている。なお、各区画(エリア)において、互いに隣接する部分には、径内流路21を仕切る第3仕切体27が設けられている。
第1区画K内において、90度〜45度となる範囲、即ち、第1エリアKAに複数のヒートチャネル22が設けられてと共に、0度〜45度となる範囲、即ち、第2エリアKBに複数のヒートチャネル22が設けられている。
【0020】
第1エリアKAに設けられたヒートチャネル22は、1つの第1径外流路20aと、当該第1径外流路20aに対応する径内流路21とを連通するように、ダイプレート本体16を貫通することにより構成されている。詳しくは、第1エリアKAに設けられた複数のヒートチャネル22の径外側(一端)は1つの第1径外流路20aに連通していて、複数のヒートチャネル22の径内側(他端)は径内流路21に連通している。
【0021】
第2エリアKBに設けられたヒートチャネル22は、第2径外流路20bと、当該第2径外流路20bに対応する径内流路21とを連通するようにダイプレート本体16を貫通することにより構成されている。詳しくは、第1エリアKBに設けられた複数のヒートチャネル22の径外側(一端)は1つの第2径外流路20bに連通していて、複数のヒートチャネル22の径内側(他端)は径内流路21に連通している。
【0022】
第1エリアKA及び第2エリアKBのヒートチャネル22は、ノズル3の両端側に位置していて、加熱媒体を通すことによって、ノズル3を通る処理材を加熱するものとなっている。
径外流路20、径内流路21及びヒートチャネル22の少なくとも1つには、ヒートチ
ャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられている。
【0023】
流量安定化手段は、第1エリアKAに設けられた複数のヒートチャネル22や第2エリアKBに設けられた複数のヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量が、それぞれのヒートチャネル22内によって大きく変動することなく略同じ流量となるようにしたものである。
この第1参考形態における流量安定化手段は、加熱流路18に加熱媒体を供給する供給口30と、加熱媒体を排出する排出口31とを適宜配置することによって構成され、供給口30及び排出口31の位置関係によって加熱媒体の流量が安定化するものとなっている。
【0024】
具体的には、供給口30は第1径外流路20aと第2径外流路20bとの両方にぞれぞれ設けられ、排出口31は供給口30が設けられていない径内流路21の略真ん中となる位置に設けられている。即ち、加熱媒体を供給するための供給口30と、加熱媒体を排出するための排出口31とは、ヒートチャネル22を挟んで、ぞれぞれ反対側の流路に設けられるものとなっている。
【0025】
なお、供給口30は、1の区間K毎に径外流路20にすくなくとも2つ設けていればよく、排出口31も1の区間K毎に径内流路21側に少なくとも1つの設けらればよい。
このように供給口30を第1径外流路20a及び第2径外流路20bのぞれぞれに設け、径外流路20が設けられていない側の径内流路21に排出口31を設けることによって、第1径外流路20aに入った加熱媒体は、第1エリアKAのヒートチャネル22を通過して第1エリアKAの径内流路21に入り、径内流路21に中央に向けて流れて排出口31から排出する。
【0026】
また、第2径外流路20bに入った加熱媒体は、第2エリアKBのヒートチャネル22を通過して第2エリアKBの径内流路21に入り、径内流路21に中央に向けて流れて排出口31から排出する。
したがって、ダイプレート4の全体を見ると、加熱媒体は外側に配置された供給口30から内側に配置された排出口31へ向けて、径内外を行ったり来たりすることなく(戻りが少なく)、径外側から径内側へとスムーズに流れることになる。これによって各ヒートチャネル22内の加熱媒体の流量が安定する。
【0027】
[第2参考形態]
図4はダイプレートの内部における変形例を示したものであり、第2参考形態である。
この第2参考形態においても、ダイプレート4を4分割した対称となる各エリアに径外流路20や径内流路21が設けられているため、以下、説明の便宜上、第1区画K(0〜90度の範囲)について説明をする。他の部分については、対称であるため説明を省略する。
【0028】
第1区画Kには1つの径外流路20が設けられている。区画間で隣接する径外流路20の間には仕切る第2仕切体26が設けられている。第1区画Kには1つの径内流路21が設けられていて、この径内流路21は、第1参考形態と同様に、一方側(90度側)から他方側(0度)に範囲に亘るものとされている。
この径外流路20と径内流路21との間には、複数のヒートチャネル22が設けられている。即ち、複数のヒートチャネル22に連通する1つの径外流路20が設けられ、複数のヒートチャネル22に連通する1つの径内流路20が設けられて、ヒートチャネル22の径外側が径外流路20に連通していて、径内側が径内流路21に連通している。
【0029】
この実施形態においても、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられている。
この第2参考形態における流量安定化手段は、第1参考形態と同様に、供給口30と、排出口31との配置により構成されていて、供給口30及び排出口31の位置関係によって加熱媒体の流量が安定化するものとなっている。具体的には、供給口30は径外流路20の略真ん中となる位置に設けられ、排出口31は供給口30が設けられていない径内流路21の略真ん中となる位置に設けられている。なお、供給口30は、1の区間毎に径外流路20側にすくなくとも1つ設けらればよく、排出口31も1の区間毎に径内流路21
側に少なくとも1つの設ければよい。
【0030】
このように供給口30及び排出口31を構成することによって、径外流路20に入った加熱媒体はヒートチャネル22を通過して径内流路21に入り、排出口31から排出し、径内外を行ったり来たりすることなく(戻りが少なく)、径外側から径内側へとスムーズに流れることになり、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量が安定する。
以上、第1参考形態及び第2参考形態によれば、供給口30は、径外流路20側又は径内流路21側のどちらか一方に設けられていればよく、排出口31は、供給口30が設けられていない径外流路20側又は径内流路21側の他方に設けられていればよい。
【0031】
このように径外流路20や径内流路21に対する供給口30や排出口31の位置関係によって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が構成され、このような流量安定化手段によって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の全体の流量偏差を小さくすることができる。
[本実施形態]
図5は流量安定化手段の実施形態を示したものである。
【0032】
第1参考形態や第2参考形態では、供給口30や排出口31の位置を最適化することのよって流量安定化手段を構成していたが、本実施形態では、径外流路20や径内流路21と連通するヒートチャネル22の形状(ヒートチャネル22と径外流路20との連通部分又はヒートチャネル22と径内流路21との連通部分との形状)によって、流量安定化手段を構成したものである。
【0033】
第1参考形態及び第2参考形態では、ヒートチャネル22内の断面比率は同じとなっていたが、この実施形態では、断面積の比率を変えることによって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化するようにしている。以下、詳しく説明する。
図5に示すように、各ヒートチャネル22には、他の部分に比べて断面積が小さい絞り部33が形成されている。各ヒートチャネル22の絞り部33の断面積はそれぞれ同じとなっている。即ち、ヒートチャネル22に設けた全ての絞り部33の断面積がそれぞれ同じとなっている。
【0034】
この絞り部33は、加熱媒体が流れる方向を基準にすると、加熱媒体が流れる下流側の端部(ヒートチャネル22の端部)に設けられている。絞り部33に加熱媒体を流したとき、絞り部33よりも下流側においては少し流れの乱れが生じるが、絞り部33をヒートチャネル22の下流側の端部に設けると、絞り部33による加熱媒体の流れの乱れは、径内流路21や径外流路20で発生することになり、ヒートチャネル22内では発生しない。これによって、絞り部33を設けることによる乱流の影響はヒートチャネル22内には存在しなくなり、絞り部33を上流側に比べて加熱媒体の流量の安定化を図ることができる。
【0035】
絞り部33の断面積とヒートチャネル22の他の部分の断面積との断面比率(S1/S2)は、10%以上50%以下となっている。断面比率が10%未満であると、ヒートチャネル22に加熱媒体を流した際に圧力損失が大きくなり過ぎ、断面比率が50%よりも大きいと絞り部33による効果が少なくなる傾向となる。
以上、本実施形態によれば、流量安定化手段は、各ヒートチャネル22に形成した同一断面積の絞り部33により構成されており、この絞り部33によってヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させることができる。
【0036】
より好ましくは、絞り部33をヒートチャネル22の下流側に設けると共に、絞り部33の断面積とヒートチャネル22の他の部分の断面積との断面比率(S1/S2)を10%〜50%とするのがよい。
【実施例】
【0037】
表1は、本発明のダイプレートを用いた場合の実施例と、本発明とは異なる従来のダイプレートを用いた場合の比較例との実験結果をまとめたものである。
図7〜図11は、実施例及び比較例における各ヒートチャネル22での流量変化をまとめたものである。同図において流量番号はヒートチャネル22の順番を示していて、例えば、流量番号10では10番目のヒートチャネル22のことを示している。図7〜図11
における流速はヒートチャネル22の両端部の流量を測定した上でその差分を記載したものである。また、同図では流速0m/sを基準として流速の振れが小さい場合は戻りが少なく、振れが大きい場合は戻りが大きいことを示している。なお、図7〜図11において、図中の記号[○]は1回目の結果を示しており、記号[□]は2回目の結果を示している。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1における「実施例1」は第1参考形態の実施例であり、「実施例2」は上述した第2参考形態の実施例である。本実施形態の実施例は、「実施例3」、「実施例4」である。
表1に示す流路モデルAは、ヒートチャネル22に絞り部33を設けていないダイプレート4を示しており、ヒートチャネル22の断面積の比率が同じであるものを示している。流路モデルBは、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4を示しており、ヒートチャネル22の断面積の比率が10%以上50%以下の範囲にあるものを示している。
【0040】
比較例1では、供給口30や排出口31の位置が従来と同じダイプレート4Dを用いた。即ち、比較例1では、図5に示すように、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に1個設けると共に、排出口31を径外側に1個設けたダイプレート4Dを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外1」、排出位置及び個数の欄「外1」)。
実施例1では、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に2個設けると共に、排出口31を径内側に1個設けた図2に示すようなダイプレート4Aを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
【0041】
実施例2では、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に1個設けると共に、排出口31を径内側に1個設けた図3に示すようなダイプレート4Bを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外1」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
実施例3では、供給口30及び排出口31の位置が図2に示すものと同じであって、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4Cを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
【0042】
実施例4では、供給口30及び排出口31の位置が図3に示すものと同じであって、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4Cを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
比較例1及び実施例1〜実施例4では、各ダイプレート4について、供給口30から加熱媒体(温水)を供給し、排出口31から加熱媒体を排出することとし、各ヒートチャネル22における加熱媒体の流量を測定した。なお、ヒートチャネル22における加熱媒体の流量と、ダイプレート4の表面温度との相関関係は過去に表面温度の測定により確認している。加熱媒体の流量が多いヒートチャネル22が集まる領域付近ではダイプレート4の表面温度は高く、加熱媒体の流量が少ないヒートチャネル22が集まる領域付近では表面温度は低いものとなり、このことから、流量分布の均一度とダイプレート4の表面温度の均一度(ノズル3内の処理材に対しての加熱度合い)には相関関係がある。
【0043】
上述したように、ヒートチャネル22の流量分布を均一化(各ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化)をすれば、ダイプレート4の表面温度が均一化(ノズル3内の処理材に対して満遍なく加熱できる状態となる)されて、ノズル3から押し出される処理材の温度が一定して造粒のバラツキが小さいものを製造することができる。
そこで、比較例1及び実施例1〜実施例4に示す如く、各ヒートチャネル22においての加熱媒体の流量のバラツキの度合いを評価した。
【0044】
具体的には、比較例1及び実施例1〜実施例4の評価においては、複数のヒートチャネル22における流量のバラツキを示す標準偏差を式(1)によって求め、流量の標準偏差が0.5以上であれば不良(表1、流量の均一度、「×」)とした。流量の標準偏差が0.5未満であるものについては良好とし、良好の中でも標準偏差の小さいものについては、段階的に評価を行った(表1、流量の均一度、「△」、「○」、「◎」)。
【0045】
【数1】
【0046】
比較例1においては、本発明のような流量安定化手段を設けていないため、図7に示すように、IN側(供給口30側)からOUT側(排出口31側)にかけて、即ち、流量番号1〜流量番号20にかけて、全体的に加熱媒体の流量変動(各ヒートチャネルの流量の偏り、流量偏差)は大きなものとなっている(表1、流量の均一度、「×」)。
一方で、実施例1においては、比較例1に比べ、加熱媒体が径内外を行ったり来たりすることないように、2つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設けているため、図8に示すように、IN側及びOUT側の付近での流量偏差が大きいものの、中間部分(流量番号が4番〜17番)では流量偏差は小さなものとなっている(表1、流量の均一度、「△」)。
【0047】
また、実施例2においては、加熱媒体が径内外を行ったり来たりすることないように、1つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設けているため、図9に示すように、中間付近(流量番号が10番前後)では流量偏差は少し大きいものの、全体としては、流量偏差は小さなものとなっている(表1、流量の均一度、「○」)。
【0048】
また、実施例3においては、2つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設け、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けているため、図10に示すように、全体的に流量偏差は小さいものとなった(表1、流量の均一度、「◎」)。
実施例4においては、1つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設け、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けているため、図11に示すように、全体的に流量偏差は小さいものとなった(表1、流量の均一度、「◎」)。
【0049】
実施例3及び実施例4によれば、ヒートチャネル22内の加熱媒体の流れが良くなるように供給口30及び排出口31の位置を調整し、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けるようにすることによって、ヒートチャネル22内を流れる加熱媒体の流量の偏りを最も無くすことができた。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0050】
上記実施形態では、径外流路20に供給口30を設けると共に、径内流路21に排出口31を設けるものとしているが、これに限らず、径内流路21に供給口30を設けると共に、径外流路20に排出口31を設けるものとして、供給口30と排出口31とを逆に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 水中カット造粒装置
18 加熱流路
20 径外流路
21 径内流路
22 ヒートチャネル
30 供給口
31 排出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、樹脂製のペレットを製造するために用いられる水中カット造粒装置のダイプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、樹脂製のペレットを製造するために用いられる水中カット造粒装置は、押出機の下流側に設けられており、溶融樹脂(溶融した処理材)が押し出されるノズルが設けられたダイプレートとこのノズルから押し出された樹脂を回転しながら粒状に切断するカッタとを有している。加えて、これらダイプレートやカッタを覆う循環箱が設けられ、この循環箱の内側は循環する冷却水で満たされている水室がある。
【0003】
ダイプレートには、ノズル内を通る溶融樹脂の保温するために加熱媒体を通るヒートチャネルが複数形成されている。この加熱流路の流路に、高温の蒸気、オイルなどの加熱媒体を供給することにより、ノズルを通過する溶融樹脂の温度を調整している。このように、加熱流路に加熱媒体を供給することによって溶融樹脂の温度を調整する技術として特許文献1〜特許文献2に示すものがある。
【0004】
特許文献1は、ノズル部リングの外側と内側に加熱媒体が流れる環状通路を備えるとともに、これら外側環状通路と内側環状通路との間に多数の加熱チャネル(ヒートチャネル)を形成し、これらヒートチャネルの各間にノズル部リングを貫通する多数の樹脂押出ノズルを設けてなる樹脂ペレット製造用ダイスにおいて、ヒートチャネルが樹脂押出ノズルの小径通路側より大径通路側に所定の長さ延在されてなる樹脂ペレット製造用ダイスである。
【0005】
特許文献2は、ダイス外側表面に多数のノズル孔が形成されてなる樹脂ペレット製造用ダイスにおいて、ノズルに通じるダイス外側表面近傍における樹脂流路と交差する方向に延在し且つこの樹脂流路に沿って配列した複数列の熱媒流路(ヒートチャネル)が設けられてなる樹脂ペレット製造用ダイスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−277528号公報
【特許文献2】特開2001−179734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2におけるダイス(ダイプレート)においては、ヒートチャネルを通る加熱媒体の流量は必ずしも一定ではなく、流量が多いヒートチャネルに近いノズルは加熱が大きく、流量の少ないヒートチャネルの近くのノズルは加熱が小さく、ダイプレートの内の位置により加熱のばらつきが大きかった。
したがって、特許文献1及び特許文献2のダイプレートでは、ノズルの位置によって溶融樹脂の加熱条件にばらつきが大きく、これが造粒のカッティングに影響して、製品の粒子の径が安定しないという問題があった。さらに加熱が十分でないノズルにおいては、溶融樹脂がノズル内において固化してノズルの穴が閉塞することもあった。これらを防ぐために、加熱媒体の流量を増加させたり、あるいは加熱媒体の温度を上昇させるということが考えられるが、この場合、ダイプレート表面から水室に放出される熱が増えることとなり、加熱の効率が悪化するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を簡単に安定化することによって、ノズルに流れる加熱媒体に対する加熱効率が向上すると共に、ノズルから押し出される処理材の温度が一定して造粒のバラツキが小さい水中カット造粒装置のダイプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
溶融した処理材が通過するノズルが形成され、且つ、このノズル間を通る処理材を加熱する加熱媒体が通る加熱流路が内部に形成された円形状のダイプレートであって、前記加熱流路は、径外側に形成された径外流路と、径内側に形成された径内流路と、前記径外流路と径内流路とを径方向に連通して且つ前記ノズル間に設けられた複数のヒートチャネルとを備え、前記径外流路、径内流路及びヒートチャネルの少なくとも1つに、前記ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられていて、前記流量安定化手段は、前記各ヒートチャネルに設けた絞り部を備え、ぞれぞれの絞り部は同一断面積である点にある。
【0010】
前記絞り部は、当該絞り部の断面積と前記ヒートチャネルの他の部分の断面積との断面比率が10%以上50%以下となるように形成されていることが好ましい。
前記絞り部は、前記ヒートチャネルにおいて前記加熱媒体が流れる下流側に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を簡単に安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】水中カット造粒装置の側面断面図である。
【図2】第1参考形態におけるダイプレートの内部図である。
【図3】ヒートチャネルの断面図(図2のA−A断面)である。
【図4】第2参考形態におけるダイプレートの内部図である。
【図5】本実施形態におけるダイプレートのヒートチャネルの断面図である。
【図6】従来のダイプレートの断面図である。
【図7】比較例1におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図8】実施例1におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図9】実施例2におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図10】実施例3におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【図11】実施例4におけるヒートチャネルの流量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図を基に説明する。
[第1参考形態]
図1は、第1参考形態にかかる水中カット造粒装置の側面断面図である。
図1に示すように、水中カット造粒装置1は、溶融樹脂を混練する押出混練機2の下流側(樹脂排出側)に設けられるもので、押出混練機2の樹脂排出側2aに取り付けられて多数のノズル(ダイ孔)3が形成されたダイプレート4と、このノズル3から押し出された溶融樹脂(溶融した処理材)を切り取るカッタ5と、カッタ5をダイプレート4上で回転駆動させる駆動手段6と、ダイプレート4と共に水室7を形成する環状箱(ケース)8とを備えている。
【0014】
ケース8(水室7)内には、駆動手段6の回転軸9が回転自在に設けられ、この回転軸9の先端側(押出混練機2側)に円盤状のカッタホルダ10が設けられ、このカッタホルダ10の外周縁にカッタ5が取り付けられている。
この水中カット造粒装置1では、押出混練機2の樹脂排出側2aに設けられた樹脂導入孔11に溶融樹脂を送り、この樹脂導入孔11に連通する複数のノズル3に溶融樹脂を通すことによって、溶融樹脂が水室7側へと押し出すことができる。一方で、駆動手段6の回転軸9を回転させることによって、カッタ5はダイプレート4の水室7側の面に沿って回転することなり、ノズル3を介して水室7側に押し出された溶融樹脂は、回転するカッタ5によって所定の大きさに切断される。カッタ5によって切断された溶融樹脂は水室7内でペレット12となり、このペレット12は水室7に形成された入口13から導入された冷却水によって、水室7に形成された出口14に向かって流されて運搬される。
【0015】
以下、水中カット造粒装置1に用いられるダイプレート4について、図2を用いて詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図2の紙面の左右を左右方向、紙面上下を上下方向と
いうことがある。
図2に示すように、ダイプレート4は円形状であって、外側を構成する外側体15と、この外側体15の内部に設けられてノズル3が設けられたダイプレート本体16と、このダイプレート本体16の内部に設けられた内側体17とを備えている。
【0016】
これら外側体15、ダイプレート本体16及び内側体17によって、ダイプレート4の内部には、加熱媒体(例えば、温水)が通る加熱流路18が形成されている。
加熱流路18は、径外側に設けられた径外流路20と、径内側に設けられた径内流路21と、径外流路20と径内流路21とを径方向に連通して且つノズル3間に設けられた複数のヒートチャネル22とを備えている。
【0017】
具体的には、径外流路20は、外側体15とダイプレート本体16とを径方向に離間することにより構成されている。径内流路21は、内側体17とダイプレート本体16とを径方向に離間することにより構成されている。図3に示すように、ヒートチャネル22の内壁は同じ大きさであって、その断面比率は同じとなっている。
図2に示すように、ダイプレート4の内部には、周方向に8個の径外流路20が設けられ、周方向に4個の径内流路21が設けられている。それぞれの径外流路20や径内流路21は、上下に伸びる中心線C1を中心に左右対称であり、左右に伸びる中心線C2を中心に上下対称となっている。即ち、ダイプレート4(外側体15、ダイプレート本体16、内側体17)を90度毎に4分割した各エリアに、径外流路20や径内流路21が設けられている。
【0018】
このように、ダイプレート4を4分割した対称となる各エリアに、径外流路20や径内流路21が設けられている。
以下、第1区画(0〜90度の範囲)について説明をする。他の部分については、対称であるため説明を省略する。
第1区画Kには、2つの径外流路20(20a,20b)が周方向に離間して設けられており、両者の径外流路20a,20b間には両者を仕切る第1仕切体25が設けられている。この第1仕切体25によって、一方の径外流路(第1径外流路)20a内の加熱媒体が他方の径外流路(第2径外流路)20bへと流れないようにしている。なお、各区画(エリア)において、互いに隣接する部分には、径外流路20を仕切る第2仕切体26が設けられている。
【0019】
第1区画Kには、1つの径内流路21が設けられており、この径内流路21は、一方側(90度側)から他方側(0度)に範囲に亘るものとされている。なお、各区画(エリア)において、互いに隣接する部分には、径内流路21を仕切る第3仕切体27が設けられている。
第1区画K内において、90度〜45度となる範囲、即ち、第1エリアKAに複数のヒートチャネル22が設けられてと共に、0度〜45度となる範囲、即ち、第2エリアKBに複数のヒートチャネル22が設けられている。
【0020】
第1エリアKAに設けられたヒートチャネル22は、1つの第1径外流路20aと、当該第1径外流路20aに対応する径内流路21とを連通するように、ダイプレート本体16を貫通することにより構成されている。詳しくは、第1エリアKAに設けられた複数のヒートチャネル22の径外側(一端)は1つの第1径外流路20aに連通していて、複数のヒートチャネル22の径内側(他端)は径内流路21に連通している。
【0021】
第2エリアKBに設けられたヒートチャネル22は、第2径外流路20bと、当該第2径外流路20bに対応する径内流路21とを連通するようにダイプレート本体16を貫通することにより構成されている。詳しくは、第1エリアKBに設けられた複数のヒートチャネル22の径外側(一端)は1つの第2径外流路20bに連通していて、複数のヒートチャネル22の径内側(他端)は径内流路21に連通している。
【0022】
第1エリアKA及び第2エリアKBのヒートチャネル22は、ノズル3の両端側に位置していて、加熱媒体を通すことによって、ノズル3を通る処理材を加熱するものとなっている。
径外流路20、径内流路21及びヒートチャネル22の少なくとも1つには、ヒートチ
ャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられている。
【0023】
流量安定化手段は、第1エリアKAに設けられた複数のヒートチャネル22や第2エリアKBに設けられた複数のヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量が、それぞれのヒートチャネル22内によって大きく変動することなく略同じ流量となるようにしたものである。
この第1参考形態における流量安定化手段は、加熱流路18に加熱媒体を供給する供給口30と、加熱媒体を排出する排出口31とを適宜配置することによって構成され、供給口30及び排出口31の位置関係によって加熱媒体の流量が安定化するものとなっている。
【0024】
具体的には、供給口30は第1径外流路20aと第2径外流路20bとの両方にぞれぞれ設けられ、排出口31は供給口30が設けられていない径内流路21の略真ん中となる位置に設けられている。即ち、加熱媒体を供給するための供給口30と、加熱媒体を排出するための排出口31とは、ヒートチャネル22を挟んで、ぞれぞれ反対側の流路に設けられるものとなっている。
【0025】
なお、供給口30は、1の区間K毎に径外流路20にすくなくとも2つ設けていればよく、排出口31も1の区間K毎に径内流路21側に少なくとも1つの設けらればよい。
このように供給口30を第1径外流路20a及び第2径外流路20bのぞれぞれに設け、径外流路20が設けられていない側の径内流路21に排出口31を設けることによって、第1径外流路20aに入った加熱媒体は、第1エリアKAのヒートチャネル22を通過して第1エリアKAの径内流路21に入り、径内流路21に中央に向けて流れて排出口31から排出する。
【0026】
また、第2径外流路20bに入った加熱媒体は、第2エリアKBのヒートチャネル22を通過して第2エリアKBの径内流路21に入り、径内流路21に中央に向けて流れて排出口31から排出する。
したがって、ダイプレート4の全体を見ると、加熱媒体は外側に配置された供給口30から内側に配置された排出口31へ向けて、径内外を行ったり来たりすることなく(戻りが少なく)、径外側から径内側へとスムーズに流れることになる。これによって各ヒートチャネル22内の加熱媒体の流量が安定する。
【0027】
[第2参考形態]
図4はダイプレートの内部における変形例を示したものであり、第2参考形態である。
この第2参考形態においても、ダイプレート4を4分割した対称となる各エリアに径外流路20や径内流路21が設けられているため、以下、説明の便宜上、第1区画K(0〜90度の範囲)について説明をする。他の部分については、対称であるため説明を省略する。
【0028】
第1区画Kには1つの径外流路20が設けられている。区画間で隣接する径外流路20の間には仕切る第2仕切体26が設けられている。第1区画Kには1つの径内流路21が設けられていて、この径内流路21は、第1参考形態と同様に、一方側(90度側)から他方側(0度)に範囲に亘るものとされている。
この径外流路20と径内流路21との間には、複数のヒートチャネル22が設けられている。即ち、複数のヒートチャネル22に連通する1つの径外流路20が設けられ、複数のヒートチャネル22に連通する1つの径内流路20が設けられて、ヒートチャネル22の径外側が径外流路20に連通していて、径内側が径内流路21に連通している。
【0029】
この実施形態においても、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられている。
この第2参考形態における流量安定化手段は、第1参考形態と同様に、供給口30と、排出口31との配置により構成されていて、供給口30及び排出口31の位置関係によって加熱媒体の流量が安定化するものとなっている。具体的には、供給口30は径外流路20の略真ん中となる位置に設けられ、排出口31は供給口30が設けられていない径内流路21の略真ん中となる位置に設けられている。なお、供給口30は、1の区間毎に径外流路20側にすくなくとも1つ設けらればよく、排出口31も1の区間毎に径内流路21
側に少なくとも1つの設ければよい。
【0030】
このように供給口30及び排出口31を構成することによって、径外流路20に入った加熱媒体はヒートチャネル22を通過して径内流路21に入り、排出口31から排出し、径内外を行ったり来たりすることなく(戻りが少なく)、径外側から径内側へとスムーズに流れることになり、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量が安定する。
以上、第1参考形態及び第2参考形態によれば、供給口30は、径外流路20側又は径内流路21側のどちらか一方に設けられていればよく、排出口31は、供給口30が設けられていない径外流路20側又は径内流路21側の他方に設けられていればよい。
【0031】
このように径外流路20や径内流路21に対する供給口30や排出口31の位置関係によって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が構成され、このような流量安定化手段によって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の全体の流量偏差を小さくすることができる。
[本実施形態]
図5は流量安定化手段の実施形態を示したものである。
【0032】
第1参考形態や第2参考形態では、供給口30や排出口31の位置を最適化することのよって流量安定化手段を構成していたが、本実施形態では、径外流路20や径内流路21と連通するヒートチャネル22の形状(ヒートチャネル22と径外流路20との連通部分又はヒートチャネル22と径内流路21との連通部分との形状)によって、流量安定化手段を構成したものである。
【0033】
第1参考形態及び第2参考形態では、ヒートチャネル22内の断面比率は同じとなっていたが、この実施形態では、断面積の比率を変えることによって、ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化するようにしている。以下、詳しく説明する。
図5に示すように、各ヒートチャネル22には、他の部分に比べて断面積が小さい絞り部33が形成されている。各ヒートチャネル22の絞り部33の断面積はそれぞれ同じとなっている。即ち、ヒートチャネル22に設けた全ての絞り部33の断面積がそれぞれ同じとなっている。
【0034】
この絞り部33は、加熱媒体が流れる方向を基準にすると、加熱媒体が流れる下流側の端部(ヒートチャネル22の端部)に設けられている。絞り部33に加熱媒体を流したとき、絞り部33よりも下流側においては少し流れの乱れが生じるが、絞り部33をヒートチャネル22の下流側の端部に設けると、絞り部33による加熱媒体の流れの乱れは、径内流路21や径外流路20で発生することになり、ヒートチャネル22内では発生しない。これによって、絞り部33を設けることによる乱流の影響はヒートチャネル22内には存在しなくなり、絞り部33を上流側に比べて加熱媒体の流量の安定化を図ることができる。
【0035】
絞り部33の断面積とヒートチャネル22の他の部分の断面積との断面比率(S1/S2)は、10%以上50%以下となっている。断面比率が10%未満であると、ヒートチャネル22に加熱媒体を流した際に圧力損失が大きくなり過ぎ、断面比率が50%よりも大きいと絞り部33による効果が少なくなる傾向となる。
以上、本実施形態によれば、流量安定化手段は、各ヒートチャネル22に形成した同一断面積の絞り部33により構成されており、この絞り部33によってヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化させることができる。
【0036】
より好ましくは、絞り部33をヒートチャネル22の下流側に設けると共に、絞り部33の断面積とヒートチャネル22の他の部分の断面積との断面比率(S1/S2)を10%〜50%とするのがよい。
【実施例】
【0037】
表1は、本発明のダイプレートを用いた場合の実施例と、本発明とは異なる従来のダイプレートを用いた場合の比較例との実験結果をまとめたものである。
図7〜図11は、実施例及び比較例における各ヒートチャネル22での流量変化をまとめたものである。同図において流量番号はヒートチャネル22の順番を示していて、例えば、流量番号10では10番目のヒートチャネル22のことを示している。図7〜図11
における流速はヒートチャネル22の両端部の流量を測定した上でその差分を記載したものである。また、同図では流速0m/sを基準として流速の振れが小さい場合は戻りが少なく、振れが大きい場合は戻りが大きいことを示している。なお、図7〜図11において、図中の記号[○]は1回目の結果を示しており、記号[□]は2回目の結果を示している。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1における「実施例1」は第1参考形態の実施例であり、「実施例2」は上述した第2参考形態の実施例である。本実施形態の実施例は、「実施例3」、「実施例4」である。
表1に示す流路モデルAは、ヒートチャネル22に絞り部33を設けていないダイプレート4を示しており、ヒートチャネル22の断面積の比率が同じであるものを示している。流路モデルBは、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4を示しており、ヒートチャネル22の断面積の比率が10%以上50%以下の範囲にあるものを示している。
【0040】
比較例1では、供給口30や排出口31の位置が従来と同じダイプレート4Dを用いた。即ち、比較例1では、図5に示すように、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に1個設けると共に、排出口31を径外側に1個設けたダイプレート4Dを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外1」、排出位置及び個数の欄「外1」)。
実施例1では、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に2個設けると共に、排出口31を径内側に1個設けた図2に示すようなダイプレート4Aを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
【0041】
実施例2では、1つの区画(0〜90度の範囲)につき、供給口30を径外側に1個設けると共に、排出口31を径内側に1個設けた図3に示すようなダイプレート4Bを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外1」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
実施例3では、供給口30及び排出口31の位置が図2に示すものと同じであって、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4Cを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
【0042】
実施例4では、供給口30及び排出口31の位置が図3に示すものと同じであって、ヒートチャネル22に絞り部33を設けたダイプレート4Cを用いた(表1、供給位置及び個数の欄「外2」、排出位置及び個数の欄「内1」)。
比較例1及び実施例1〜実施例4では、各ダイプレート4について、供給口30から加熱媒体(温水)を供給し、排出口31から加熱媒体を排出することとし、各ヒートチャネル22における加熱媒体の流量を測定した。なお、ヒートチャネル22における加熱媒体の流量と、ダイプレート4の表面温度との相関関係は過去に表面温度の測定により確認している。加熱媒体の流量が多いヒートチャネル22が集まる領域付近ではダイプレート4の表面温度は高く、加熱媒体の流量が少ないヒートチャネル22が集まる領域付近では表面温度は低いものとなり、このことから、流量分布の均一度とダイプレート4の表面温度の均一度(ノズル3内の処理材に対しての加熱度合い)には相関関係がある。
【0043】
上述したように、ヒートチャネル22の流量分布を均一化(各ヒートチャネル22に流れる加熱媒体の流量を安定化)をすれば、ダイプレート4の表面温度が均一化(ノズル3内の処理材に対して満遍なく加熱できる状態となる)されて、ノズル3から押し出される処理材の温度が一定して造粒のバラツキが小さいものを製造することができる。
そこで、比較例1及び実施例1〜実施例4に示す如く、各ヒートチャネル22においての加熱媒体の流量のバラツキの度合いを評価した。
【0044】
具体的には、比較例1及び実施例1〜実施例4の評価においては、複数のヒートチャネル22における流量のバラツキを示す標準偏差を式(1)によって求め、流量の標準偏差が0.5以上であれば不良(表1、流量の均一度、「×」)とした。流量の標準偏差が0.5未満であるものについては良好とし、良好の中でも標準偏差の小さいものについては、段階的に評価を行った(表1、流量の均一度、「△」、「○」、「◎」)。
【0045】
【数1】
【0046】
比較例1においては、本発明のような流量安定化手段を設けていないため、図7に示すように、IN側(供給口30側)からOUT側(排出口31側)にかけて、即ち、流量番号1〜流量番号20にかけて、全体的に加熱媒体の流量変動(各ヒートチャネルの流量の偏り、流量偏差)は大きなものとなっている(表1、流量の均一度、「×」)。
一方で、実施例1においては、比較例1に比べ、加熱媒体が径内外を行ったり来たりすることないように、2つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設けているため、図8に示すように、IN側及びOUT側の付近での流量偏差が大きいものの、中間部分(流量番号が4番〜17番)では流量偏差は小さなものとなっている(表1、流量の均一度、「△」)。
【0047】
また、実施例2においては、加熱媒体が径内外を行ったり来たりすることないように、1つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設けているため、図9に示すように、中間付近(流量番号が10番前後)では流量偏差は少し大きいものの、全体としては、流量偏差は小さなものとなっている(表1、流量の均一度、「○」)。
【0048】
また、実施例3においては、2つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設け、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けているため、図10に示すように、全体的に流量偏差は小さいものとなった(表1、流量の均一度、「◎」)。
実施例4においては、1つの供給口30を径外流路20に設けると共に1つの排出口31を径内流路21に設け、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けているため、図11に示すように、全体的に流量偏差は小さいものとなった(表1、流量の均一度、「◎」)。
【0049】
実施例3及び実施例4によれば、ヒートチャネル22内の加熱媒体の流れが良くなるように供給口30及び排出口31の位置を調整し、さらに、ヒートチャネル22に絞り部33を設けるようにすることによって、ヒートチャネル22内を流れる加熱媒体の流量の偏りを最も無くすことができた。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0050】
上記実施形態では、径外流路20に供給口30を設けると共に、径内流路21に排出口31を設けるものとしているが、これに限らず、径内流路21に供給口30を設けると共に、径外流路20に排出口31を設けるものとして、供給口30と排出口31とを逆に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 水中カット造粒装置
18 加熱流路
20 径外流路
21 径内流路
22 ヒートチャネル
30 供給口
31 排出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した処理材が通過するノズルが形成され、且つ、このノズル間を通る処理材を加熱する加熱媒体が通る加熱流路が内部に形成された円形状のダイプレートであって、
前記加熱流路は、径外側に形成された径外流路と、径内側に形成された径内流路と、前記径外流路と径内流路とを径方向に連通して且つ前記ノズル間に設けられた複数のヒートチャネルとを備え、
前記径外流路、径内流路及びヒートチャネルの少なくとも1つに、前記ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられていて、
前記流量安定化手段は、前記各ヒートチャネルに設けた絞り部を備え、ぞれぞれの絞り部は同一断面積であることを特徴とする水中カット造粒装置のダイプレート。
【請求項2】
前記絞り部は、当該絞り部の断面積と前記ヒートチャネルの他の部分の断面積との断面比率が10%以上50%以下となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水中カット造粒装置のダイプレート。
【請求項3】
前記絞り部は、前記ヒートチャネルにおいて前記加熱媒体が流れる下流側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中カット造粒装置のダイプレート。
【請求項1】
溶融した処理材が通過するノズルが形成され、且つ、このノズル間を通る処理材を加熱する加熱媒体が通る加熱流路が内部に形成された円形状のダイプレートであって、
前記加熱流路は、径外側に形成された径外流路と、径内側に形成された径内流路と、前記径外流路と径内流路とを径方向に連通して且つ前記ノズル間に設けられた複数のヒートチャネルとを備え、
前記径外流路、径内流路及びヒートチャネルの少なくとも1つに、前記ヒートチャネルに流れる加熱媒体の流量を安定化させる流量安定化手段が設けられていて、
前記流量安定化手段は、前記各ヒートチャネルに設けた絞り部を備え、ぞれぞれの絞り部は同一断面積であることを特徴とする水中カット造粒装置のダイプレート。
【請求項2】
前記絞り部は、当該絞り部の断面積と前記ヒートチャネルの他の部分の断面積との断面比率が10%以上50%以下となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水中カット造粒装置のダイプレート。
【請求項3】
前記絞り部は、前記ヒートチャネルにおいて前記加熱媒体が流れる下流側に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中カット造粒装置のダイプレート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−228890(P2012−228890A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191822(P2012−191822)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2008−189904(P2008−189904)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2008−189904(P2008−189904)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]