説明

水中打設船

【課題】水質汚濁を最小限に抑えつつ大量の埋立て材を打設できるようにすること。
【解決手段】管体30の揺動角度が調節され、筒状部材54の下端が海底Bに付くと、海底Bに堆積された浮泥の中に筒状部材54の下端が沈む。埋立て材は、管体30の内部をスクリュー羽根34により密着した状態で押し進められ、管体30の下端3010から押し出された埋立て材は、整流部材52に衝当して筒状部材54の内面に向きが変えられ、筒状部材54の内面に衝当し、筒状部材54の内部で下から上へ充填されていく。そして、筒状部材54の上端から筒状部材54の外側へ、勢い(流速)が減衰された埋立て材が溢れ出し、筒状部材54の首位の海底B上において勢い(流速)が減衰された埋立て材があたかも広がりつつ順次積み重ねられていき、埋立て材が打設されていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋立地において、浚渫土砂などにセメント系等の固化材を添加した埋立て材を、浚渫土砂と固化材が分離することなく水中打設するようにした水中打設工法および水中打設具ならびに水中打設船に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土砂などにセメント系等の固化材を添加し、固化していない状態のものは、埋立て材として使用可能であり、このような埋立て材を水中に打設して埋立てる工法として、(1)トレミー管またはシュートを介して埋立て材を水中に打設する工法、(2)垂直に吊ったケーシングの下端の打設口を、常に一定の深さで既埋立て土中に埋め込んで埋立て材を水中打設する工法(例えば、特公平6−63214号や特公平6−63215号など)が一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の工法で埋立て材を水中打設する場合、次のような不具合がある。
上記(1)のトレミー管やシュートを用いる工法では、トレミー管やシュート内に水が充満しており、埋立て材が水底に到達する途中で浚渫土砂と固化材が分離し、埋立て材の品質を確保することができず、また、水質汚濁が生じる不具合があった。
上記(2)の垂直に吊ったケーシングの下端の打設口を常に一定の深さで既埋立て土中に埋め込む工法では、ケーシングの下端が常に既埋立て土中に埋め込まれている状態が維持される必要があり、そのため先に打設された既埋立て土をその内部から押し広げるような少量ずつの打設しか行えず、短時間で大量の土砂を打設することができない。
すなわち、短時間で大量の土砂を打設すると、ケーシングの下端の振動が大きくなり、また、ケーシングの下端から流出される埋立て材の勢い(流速)も大きくなる。そのため、ケーシングの下端で周囲の浮泥や先に打設された既埋立て土を撹乱させ、また、埋立て材は水底に当たってケーシングの径方向外方に勢いよく流出するため、ケーシングの下端が水中に露出すると共に埋立て材は水底上の広い範囲にわたって拡散される。その結果、水質汚濁が生じ、また、埋立て材が何処に打設されたかも不明となる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、埋立て材の品質を確保でき、また、水質汚濁を最小限に抑えつつ大量の埋立て材を打設できる水中打設工法および水中打設具ならびに水中打設船を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため本発明の水中打設工法は、管体の下端に、上下に開放状で上端が前記管体の先端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の下端よりも下方に位置して管体の下端部分の周囲を囲む筒状部材を配設し、前記管体の下端の下方に臨ませて、該下端から流出される埋立て材に衝当し埋立て材の流れを前記筒状部材の内面に向ける整流部材を設け、前記筒状部材の下端を水底上に付け、前記管体の下端から流出される埋立て材を整流部材を介して前記筒状部材の内面に衝当させ、前記筒状部材の内側で前記埋立て材の流れの勢いを減衰して埋立て材を筒状部材の内部に充填していき、前記管体の外周面と筒状部材の内周面で形成される環状空間の上端から、前記勢いが減衰された埋立て材を溢れ出させるようにして埋立て材を水底上に打設するようにしたことを特徴とする。
また、本発明の水中打設具は、整流部材と筒状部材を備え、前記整流部材は、前記管体の下端の下方に臨み該下端から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体の径方向外方に向けるように前記管体に取着され、前記筒状部材は、上下に開放状で上端が前記管体の下端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の下端よりも下方に位置して管体の下端部分および前記整流部材の周囲を囲むように前記管体に取着されていることを特徴とする。
また、本発明の水中打設船は、前後方向の長さを有する船体と、前記船体に設けられた水中打設装置とを備え、前記水中打設装置は、直線状に延在し前記船体の前後長さに対応した長い長さを有する管体と、前記管体の一端に設けられ埋立て材が投入されるホッパーと、前記管体の内部に回転可能に配設され回転することで埋立て材を密着した状態で管体内を押し進めるスクリュー羽根と、スクリュー羽根を回転駆動する駆動部と、前記管体の他端に設けられた水中打設具とで構成され、前記管体は、その長さ方向を船体の前後方向に向けて配設されると共に、前記一端側が船体の前部寄りまたは後部寄りの部分に上下に揺動可能に結合され、前記管体を上下揺動させる揺動駆動手段が設けられ、前記水中打設具は、整流部材と筒状部材を備え、前記整流部材は、前記管体の下端の下方に臨み該下端から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体の径方向外方に向けるように前記管体に取着され、前記筒状部材は、上下に開放状で上端が前記管体の他端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の他端よりも下方に位置して管体の他端部分および前記整流部材の周囲を囲むように前記管体に取着されていることを特徴とする。
また、本発明の水中打設船は、前記揺動駆動手段が、船体上に配設されワイヤが巻回されたウィンチと、船体の外縁に設けられたワイヤ案内部と、前記ウィンチから引き出され前記ワイヤ案内部を経て端部が前記管体に連結されたワイヤとで構成され、前記管体は、その長さ方向を船体の前後方向に向けて配設されると共に、前記一端側が船体の前部または後部のうちの一方寄り部分に上下に揺動可能に結合され、前記案内部は、前記船体の前部または後部のうちの他方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、埋立て材の品質を確保でき、また、水質汚濁を抑制しつつ短時間で大量の埋立て材を確実に打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】水中打設船の平面図である。
【図2】埋立て材を水中打設している状態の水中打設船の正面図である。
【図3】水中打設装置の正面図である。
【図4】水中打設装置の平面図である。
【図5】水中打設船の移動時の正面図である。
【図6】(A)は水中打設具の断面正面図、(B)は同平面図である。
【図7】水中打設具を用いて埋立て材を打設する際の説明図である。
【図8】(A)は別の実施の形態に係る水中打設具の断面正面図、(B)は同平面図である。
【図9】(A)は別の実施の形態に係る水中打設具の断面正面図、(B)は同平面図である。
【図10】水中打設船と固化処理船と固化材プラント船と土運搬船との位置関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の水中打設工法を水中打設具、水中打設船と共に添付図面にしたがって説明する。
図10は水中打設船と固化処理船と固化材プラント船と土運搬船との位置関係の説明図を示す。
図10に示すように、例えば、海上に、水中打設船12と固化処理船14と固化材プラント船16とがそれぞれアンカーを介して配置され、図10において符号Rはアンカロープを示す。
固化処理船14に土運船18から浚渫土砂が運ばれ、固化材プラント船16で作られたセメントミルクが固化処理船14に供給され、固化処理船14で浚渫土砂とセメントミルクが攪拌混合され埋立て材とされる。そして、この埋立て材は海上配管Hを介してエアーにより水中打設船12に圧送され、水中打設船12により海底に打設される。
【0008】
図1は水中打設船の平面図、図2は埋立て材を水中打設している状態の水中打設船の正面図、図3は水中打設装置の正面図、図4は水中打設装置の平面図、図5は水中打設船の移動時の正面図を示す。
図1に示すように、水中打設船12は船体20を備え、船体20には、海上配管Hを介して圧送されてくる埋立て材から空気を分離するサイクロン22と、空気が分離された埋立て材を貯溜する貯泥槽24と、貯泥槽24から供給される埋立て材を水中打設する水中打設装置26と、水中打設装置26を上下に揺動させる揺動駆動手段28を備えている。
船体20は前後方向の長さが左右方向の幅よりも大きい平面視長方形に形成され、図1において、符号2002はアンカロープRの巻き上げ繰り出しを行なう送船ウィンチ、2004は操作室、2006は制御室を示す。
【0009】
水中打設装置26は、船体20の左右方向の端部に位置する船体20の側部に配設されている。
水中打設装置26は、船体20の前後長さに対応した長い長さを有する管体30と、管体30の一端に設けられ埋立て材が投入されるホッパー32と、管体30の内部に回転可能に配設され回転することで埋立て材を密着した状態で管体30内を押し進めるスクリュー羽根34と、管体30の一端側に設けられスクリュー羽根34を回転駆動する駆動部36と、管体30の他端(先端または下端)に配設された水中打設具50とで構成されている。
【0010】
前記管体30は、直線状に延在し後述するように船体20側により揺動可能に支持される管体本体部3002と、管体本体部3002の先端に屈曲部3004を介して設けられ管体本体部3002を水平に向けたときに前記屈曲部3002から斜め下向きに直線状に延在する管体先部3006により構成されている。
管体30は、船体20の前後長さに対応した長い長さを有し、その長さ方向を船体20の前後方向に向けて配設されている。この場合、管体30の長さは、船体20の前後長さよりも長くてもよく、あるいは、短くてもよく、あるいは、ほぼ同じでもよいが、要するに、管体30の長さは、船体20の前後長さと比べる程度に十分に長い長さを有している。
本実施の形態では、管体30は互いに平行に延在するように2本併設して設けられ、各管体30にそれぞれスクリュー羽根34が配設され、各管体本体部3002の先端までスクリュー羽根34が延在している。
【0011】
また、2本の管体30(管体本体部3002)の一端の上面には前記ホッパー32が設けられている。
ホッパー32は単一で、このホッパー32に貯泥槽24から埋立て材が投入され、ホッパー32から2本の管体30に埋立て材が投入される。
本実施の形態では、埋立て材がホッパー32から管体30に均等に投入されるように、図3に示すように、ホッパー32の底部に攪拌機3202が配設されている。また、管体30(管体本体部3002)の傾斜の如何に拘わらず埋立て材が貯泥槽24からホッパー32に円滑に投入されるように、ホッパー32の開口3204は前後に長く形成され、この開口3204の中央に貯泥槽24の投入口2402が臨んでいる。
【0012】
2本の管体30(管体本体部3002)の一端の下面には、管体30(管体本体部3002)の延長上を延在するようにフレーム部材40が設けられ、このフレーム部材40は、船体20に固定されたブラケット2010、ブラケット2010とフレーム部材40に挿通されたピン2012を介して船体20で支持され、ピン2012は船体20の前部寄りの部分に位置している。これにより管体30(管体本体部3002)は、ホッパー32が常に水面上に位置するように、ピン2012を支点として船体20の前部寄り箇所で揺動可能に支持されている。
前記駆動部36は油圧式あるいは電動式のモータで構成され、スクリュー羽根34に対応して2つ設けられている。そして、各スクリュー羽根34の上端はそれぞれモータに連結され、各モータはフレーム部材40上に管体30の長手方向に沿って移動可能に配設されている。
また、前記フレーム部材40の端部には油圧シリンダ42が2つ設けられ、各油圧シリンダ42のピストンロッドは対応するモータに連結され、油圧シリンダ42の伸縮作動により、スクリュー羽根34およびモータは管体30(管体本体部3002)の延在方向に沿ってスライドするように構成されている。このように管体30(管体本体部3002)に対してスクリュー羽根34をスライドさせることにより、目詰まりなどを除去するメンテナンス時に大変便利となる。
【0013】
揺動駆動手段28は、船体20上に配設されたウィンチ2802と、ウィンチ2802に巻回されたワイヤ2804と、船体20の後部で幅方向の外縁に設けられたワイヤ案内部2806とを備えている。
ウィンチ2802から引き出されたワイヤ2804は、ワイヤ案内部2806を経て端部が管体30(管体本体部3002)の先端寄り箇所に連結され、ウィンチ2802の駆動により水中打設装置26がピン2012を支点として上下に揺動するように構成されている。そして、管体30(管体本体部3002)を船体20の側部で水平に吊り上げられるように、前記ワイヤ案内部2806は、所定の高さの支柱2806Aと、この支柱2806Aの上端に配設されワイヤ2804を案内する滑車2806Bから構成されている。
【0014】
前記水中打設具50は、図6(A)、(B)で示すように、整流部材52と筒状部材54を備えている。
前記整流部材52は、前記管体先部3006の先端(下端)3010の下方に臨むように、複数本のロッド56を介して管体先部3006に取着されている。
そして、整流部材52が管体先部3006の先端3010に臨む面は、先端3010から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体先部3006の径方向外方に向けるように、中央が先端3010側に突出した円錐面で形成されている。
【0015】
前記筒状部材54は鋼製で、2本の管体先部3006の先端3010の外側を囲むように横長の楕円状に形成され、上下部は開放されている。
前記筒状部材54は、管体先部3006が鉛直方向で下方に向いた状態で、その上端が管体先部3006の下端3010よりも上位に位置すると共に下端が管体先部3006の下端3010よりも下方に位置するように、両側部が各管体先部3006にそれぞれ可撓可能な3本の細長状の部材58により管体30に取着されている。なお、このような可撓可能な細長状の部材58として鎖やワイヤを用いることができる。
本実施の形態では、管体先部3006の下端3010が、筒状部材54の高さのほぼ中央に位置するように配設されている。
【0016】
次に、水中打設船12により埋立て材を海底に打設する場合について説明する。
水中打設船12では、管体30の下端に設けられた筒状部材54の下端が海底Bに付くように(載置されるように)、ウィンチ2802、ワイヤ2804を介して管体30の揺動角度、すなわち水中打設装置26の揺動角度が調節される。
そして、筒状部材54の下端が海底Bに付くと、海底Bに堆積された浮泥の中に筒状部材54の下端が沈み、筒状部材54の下端の開口は閉塞される。
【0017】
埋立て材は海上配管Hを介して固化処理船14から水中打設船12のサイクロン22に供給され、サイクロン22で空気が分離された後、埋立て材は貯泥槽24に貯溜され、貯泥槽24からホッパー32に供給され、攪拌機3202を経てスクリュー羽根34上に埋立て材が供給される。分離された空気は空気排出管Jを通じ安全に放出される。
そして、駆動部36によりスクリュー羽根34が回転駆動され、管体30の内部に海水が充満しているものの、埋立て材は、管体30の内部をスクリュー羽根34により密着した状態で押し進められ、管体30の先端3010から筒状部材54の内側の海水中に押し出される。この場合、埋立て材は、管体30の内部を密着した状態で押し進められるので、先端3010に至る前に管体30の内部で浚渫土砂と固化材が分離することがない。
【0018】
図7に示すように、前記管体30の下端3010から押し出された埋立て材は、整流部材52に衝当して筒状部材54の内面に向きが変えられ、筒状部材54の内面に衝当する。これにより先堀が防止され、また、管体30の下端3010から押し出された埋立て材の勢い(流速)が、筒状部材54の内側で減衰され、筒状部材54の下端の開口が閉塞されていることから、埋立て材は筒状部材54の内部で下から上へ充填されていく。
そして、埋立て材は管体先部3006の外周面と筒状部材54の内周面で形成される環状空間を上昇していき、筒状部材54の上端から筒状部材54の外側へ、勢い(流速)が減衰された埋立て材が溢れ出し、筒状部材54の首位の海底B上において勢い(流速)が減衰された埋立て材があたかも広がりつつ順次積み重ねられていき、これにより筒状部材54の周囲の海底B上に埋立て材が打設されていく。
【0019】
したがって、短時間で大量の土砂を打設しても、管体30から流出される埋立て材の勢いにより海底B上の浮泥や周囲の埋立て材を撹乱させることが抑制される。
また、管体30(管体先部3006)の振動が大きくなったとしても、この振動は筒状部材54により減衰されるので、振動により海底B上の浮泥や周囲の埋立て材を撹乱させることが抑制される。
したがって、水質汚濁を生じることなく、筒状部材54の周囲の限定された箇所に大量の埋立て材を短時間で確実に打設することが可能となる。
【0020】
また、揺動駆動手段28により管体30を揺動させることで、管体30の先端部3006および筒状部材54の深さ(海底からの高さ)を変えることができるので、干満潮時などのように水深が変化しても簡単に対応できる。
また、管体30を、その長さ方向を船体20の前後方向に向けて配設し、管体30の一端側を船体20の前部寄り部分でピン2012を介して上下に揺動可能に支持し、かつ、管体30の他端側に連結されたワイヤ2804の荷重を受けるワイヤ案内部2806を船体20の後部に配設したので、長尺で重量大なる水中打設装置26の重量を船体20の前後部全体で受けることができ、図2で示すように、打設作業中の船体20の安定性を高め、また、図5で示すように、管体30を海面上で水平状態として移動する際の船体20の走行安定性を高める上でも極めて有利となる。
【0021】
筒状部材54の周囲に所望量の埋立て材が打設されたならば、スクリュー羽根34による管体30内の埋立て材の移送を停止し、管体30を上方に揺動させて筒状部材54を海底から離し、次の打設箇所に船体20を移動させ、前記と同様に埋立て材を打設していく。この場合の船体20の移動は、例えば、船体20を前方に移動させる場合には、船体20の後部に配置された送船ウィンチ2002においてアンカロープRを繰り出し、また、船体20の前部に配置された送船ウィンチ2002においてアンカロープRを巻き上げることで行われる。なお、筒状部材54の下端は開放されているので、管体30を上方に揺動させると、筒状部材54の内部に埋立て材が残留することはなく、筒状部材54の内部に残留した埋立て材の荷重が管体30に影響を及ぼすことはない。
【0022】
なお、実施の形態では、船体20の幅方向の側部に水中打設装置26を配設した場合について説明したが、船体の前端または後端を除く部分で船体を幅方向に分割し、これら分割した船体間に水中打設装置を配設することも可能である。
また、実施の形態では、管体30が2本の場合について説明したが、管体30の本数は1本でもよく、あるいは、3本以上であってもよい。管体30が1本の場合には、図8(A)、(B)に示すように、筒状部材54は平面視した場合、円形となり、筒状部材54の中心に管体先部3006が位置することになる。
また、図9(A)、(B)に示すように、筒状部材54の上端から突出しつつ筒状部材54の周方向に延在する壁部60を設け、周方向に延在する筒状部材54の部分の高さを他の部分よりも高く形成すると、埋立て材の打設時に、筒状部材54の上端から筒状部材54の外側へ、勢いが減衰された埋立て材が溢れ出す方向を特定の方向に向けることができ、限定された狭い箇所のみに埋立て材を打設する場合などに有利となる。
【0023】
以上の説明で明らかなように本発明の水中打設工法および水中打設具ならびに水中打設船によれば、埋立て材の品質を確保でき、また、水質汚濁を抑制しつつ大量の埋立て材を確実に打設できる。
【符号の説明】
【0024】
12 水中打設船
20 船体
26 水中打設装置
30 管体
50 水中打設具
52 整流部材
54 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の上部を水面上に位置させると共に、前記管体の下端を水底上に臨ませ、水面上において前記管体に埋立て材を供給し、前記下端から埋立て材を流出させて水底上に埋立て材を打設する水中打設工法であって、
前記管体の下端に、上下に開放状で上端が前記管体の先端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の下端よりも下方に位置して管体の下端部分の周囲を囲む筒状部材を配設し、
前記管体の下端の下方に臨ませて、該下端から流出される埋立て材に衝当し埋立て材の流れを前記筒状部材の内面に向ける整流部材を設け、
前記筒状部材の下端を水底上に付け、
前記管体の下端から流出される埋立て材を整流部材を介して前記筒状部材の内面に衝当させ、前記筒状部材の内側で前記埋立て材の流れの勢いを減衰して埋立て材を筒状部材の内部に充填していき、
前記管体の外周面と筒状部材の内周面で形成される環状空間の上端から、前記勢いが減衰された埋立て材を溢れ出させるようにして埋立て材を水底上に打設するようにした、
ことを特徴とする水中打設工法。
【請求項2】
前記埋立て材の前記管体の内部での搬送は、前記管体の内部で管体のほぼ全長にわたって配設されたスクリュー羽根が回転し、埋立て材を密着した状態で管体内を押し進めることで行われることを特徴とする請求項1記載の水中打設工法。
【請求項3】
前記管体は、その上部が船体で上下に揺動可能に支持され、前記埋立て材の打設は、水底の深さの変化に対応させて前記管体を上下に揺動させることで行われることを特徴とする請求項1または2記載の水中打設工法。
【請求項4】
前記管体は複数本設けられ、前記整流部材は前記各管体の下端の下方に臨むようにそれぞれ配設され、前記筒状部材は単一でこれら複数本の管体の下端部分の周囲を囲むように配設されることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の水中打設工法。
【請求項5】
前記埋立て材は、浚渫土砂にセメント系等の固化材を添加したものであることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の水中打設工法。
【請求項6】
管体の下端から水底上に埋立て材を流出させて水底上に埋立て材を打設する水中打設具であって、
前記水中打設具は、整流部材と筒状部材を備え、
前記整流部材は、前記管体の下端の下方に臨み該下端から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体の径方向外方に向けるように前記管体に取着され、
前記筒状部材は、上下に開放状で上端が前記管体の下端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の下端よりも下方に位置して管体の下端部分および前記整流部材の周囲を囲むように前記管体に取着されている、
ことを特徴とする埋立て材の水中打設具。
【請求項7】
前記筒状部材は、可撓可能な複数の細長状の部材により前記管体に取着されていることを特徴とする請求項6記載の埋立て材の水中打設具。
【請求項8】
前記管体の下端は、前記筒状部材の高さのほぼ中央かあるいは中央よりも下方に位置していることを特徴とする請求項6または7記載の埋立て材の水中打設具。
【請求項9】
前記管体は複数本設けられ、前記整流部材は前記各管体の下端の下方に臨むようにそれぞれ配設され、前記筒状部材は単一でこれら複数本の管体の下端部分の周囲を囲むように配設されることを特徴とする請求項6乃至8に何れか1項記載の埋立て材の水中打設具。
【請求項10】
前記筒状部材の周方向に延在する上端部分は、他の上端部分よりも高く形成されていることを特徴とする請求項6乃至9に何れか1項記載の埋立て材の水中打設具。
【請求項11】
前後方向の長さを有する船体と、
前記船体に設けられた水中打設装置とを備え、
前記水中打設装置は、直線状に延在し前記船体の前後長さに対応した長い長さを有する管体と、前記管体の一端に設けられ埋立て材が投入されるホッパーと、前記管体の内部に回転可能に配設され回転することで埋立て材を密着した状態で管体内を押し進めるスクリュー羽根と、スクリュー羽根を回転駆動する駆動部と、前記管体の他端に設けられた水中打設具とで構成され、
前記管体は、その長さ方向を船体の前後方向に向けて配設されると共に、前記一端側が船体の前部寄りまたは後部寄りの部分に上下に揺動可能に結合され、
前記管体を上下揺動させる揺動駆動手段が設けられ、
前記水中打設具は、整流部材と筒状部材を備え、
前記整流部材は、前記管体の下端の下方に臨み該下端から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体の径方向外方に向けるように前記管体に取着され、
前記筒状部材は、上下に開放状で上端が前記管体の他端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の他端よりも下方に位置して管体の他端部分および前記整流部材の周囲を囲むように前記管体に取着されている、
ことを特徴とする水中打設船。
【請求項12】
前後方向の長さを有する船体と、
前記船体に設けられた水中打設装置と、
前記水中打設装置を上下に揺動させる揺動駆動手段を備え、
前記水中打設装置は、直線状に延在し前記船体の前後長さに対応した長い長さを有する管体と、前記管体の一端に設けられ埋立て材が投入されるホッパーと、前記管体の内部に回転可能に配設され回転することで埋立て材を密着した状態で管体内を押し進めるスクリュー羽根と、前記管体の一端側に設けられ前記スクリュー羽根を回転駆動する駆動部と、前記管体の他端に設けられた水中打設具とで構成され、
前記揺動駆動手段は、船体上に配設されワイヤが巻回されたウィンチと、船体の外縁に設けられたワイヤ案内部と、前記ウィンチから引き出され前記ワイヤ案内部を経て端部が前記管体に連結されたワイヤとで構成され、
前記管体は、その長さ方向を船体の前後方向に向けて配設されると共に、前記一端側が船体の前部または後部のうちの一方寄り部分に上下に揺動可能に結合され、
前記案内部は、前記船体の前部または後部のうちの他方に設けられ、
前記水中打設具は、整流部材と筒状部材を備え、
前記整流部材は、前記管体の下端の下方に臨み該下端から流出される埋立て材に衝当して埋立て材を管体の径方向外方に向けるように前記管体に取着され、
前記筒状部材は、上下に開放状で上端が前記管体の他端よりも上位に位置すると共に下端が前記管体の他端よりも下方に位置して管体の他端部分および前記整流部材の周囲を囲むように前記管体に取着されている、
ことを特徴とする水中打設船。
【請求項13】
前記管体は、直線状に延在して前記船体に揺動可能に結合される管体本体と、前記管体本体の端部に屈曲部を介して連結され前記管体本体に対して斜めに延在し前記管体の他端を構成する管体先部とで構成されていることを特徴とする請求項11または12記載の水中打設船。
【請求項14】
前記管体の船体への結合は、船体側で支持されたピンで前記管体が回転可能に支持されることで行われていることを特徴とする請求項11乃至13に何れか1項記載の水中打設船。
【請求項15】
前記駆動部はスクリュー羽根の上端に連結されたモータで構成され、前記スクリュー羽根およびモータは前記管体の延在方向に沿ってスライド可能に配設され、前記フレーム部材に前記モータおよびスクリュー羽根を前記管体の延在方向に沿ってスライドさせる油圧シリンダが設けられていることを特徴とする請求項11乃至14に何れか1項記載の水中打設船。
【請求項16】
前記ホッパーは、船体の前後方向に長い埋立て材投入用の開口を備えることを特徴とする請求項11乃至15に何れか1項記載の水中打設船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275854(P2010−275854A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162470(P2010−162470)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2001−65949(P2001−65949)の分割
【原出願日】平成13年3月9日(2001.3.9)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】