説明

水中油型乳化物

【課題】粘度が1000mPa・s以上であっても、低温環境下に置くことによる油相分離が抑えられる水中油型乳化物を提供する。
【解決手段】粘度が1000mPa・s以上であり、以下の(A)、(B)、(C)が必須成分として配合された水中油型乳化物。
(A)カチオン化セルロース
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種
(C)炭素数5以下のアルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乳化物を調製する場合に、界面活性剤の配合量を低く抑え、水溶性高分子を乳化剤として配合させることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平07−089823号公報)に記載の乳化組成物では、カチオン化セルロースとヒアルロン酸もしくはその塩を配合させることが提案されている。この特許文献1に記載の発明では、特に、系の粘度が低い乳液において、乳化力や安定性を向上させることを課題視している。
【0004】
また、特許文献2(特開平09−301824号公報)に記載の発明では、従来の界面活性剤を使用しない場合であっても、乳化安定性を良好にさせることを課題としており、カチオン化セルロースとヒアルロン酸ナトリウムとからなるポリイオンコンプレックスを含む水相と、油相とが、油中水型(W/O型)に乳化されてなるW/O型乳化組成物を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の乳化組成物では、特に系の粘度が低い乳液において乳化力や安定性が問題となることに着目し、粘度が150cps、180cps、200cpsの実施例や、粘度が810cps、840cpsの比較例等のように、系の粘度が1000cps(=1000mPa・s)未満である低い粘度についてのみ検討している。これによると、系の粘度が高い場合には、乳化は、特別問題視する必要が無いことが示唆されている。
【0006】
ところが、水中油型乳化物に関して発明者らが検討研究したところ、系の粘度が高い場合であっても、安定した乳化物が得られない場合があることが新たに見出された。すなわち、カチオン化セルロースとヒアルロン酸もしくはその塩を配合させ、系の粘度が1000mPa・s以上である高い粘度の乳化物の調製を実際に試みたが、低温環境下に置けば水相と油相が分離してしまい、安定した乳化物が得られないことが確認された(例えば、後述する比較例1参照)。
【0007】
なお、上記特許文献2に記載の乳化組成物では、W/O型乳化組成物のみが提案されており、外相が水相であり油滴が水相中に分散した状態であるO/W型乳化組成物については開示するものではない。つまり、本発明が問題としている高い粘度での水中油型乳化物は確認されていない。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、粘度が1000mPa・s以上であっても、低温環境下に置くことによる油相分離が抑制される水中油型乳化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヒアルロン酸又はアセチル化ヒアルロン酸とカチオン化セルロースが配合された粘度1000mPa・s以上の水中油型乳化物を得るために鋭意検討を行った結果、所定のアルコールの配合により、低温環境下に置いた後に確認される油相の分離が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。更に、本発明によれば、所定のアルコールの配合によって、高温環境下に置いた後に確認される粘度低下が抑えられることも本発明者らは見出した。
【0010】
すなわち、本発明に係る水中油型乳化物は、粘度が1000mPa・s以上である水中油型乳化物であって、(A)カチオン化セルロース、(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種、並びに、(C)炭素数5以下のアルコール、が配合されている。
【0011】
「本発明に係る水中油型乳化物の粘度」とは、水中油型乳化物の調製直後に、B形粘度計(株式会社トキメック製)を用いて、25℃で12rpmの条件下で測定した場合において、測定開始後60秒の時点での値をいう(以下、同じ。)。なお、M2ロータ、M3ロータ等の用いるロータは、測定される粘度に応じて適宜選択される。
【0012】
本発明に係る水中油型乳化物は、例えば、毛髪処理剤として用いられる。
【0013】
本発明に係る水中油型乳化物は、界面活性剤の配合量が10質量%未満のものが良く、界面活性剤の配合量が5.0質量%未満のものが好ましく、界面活性剤が配合されていないものがより好ましい。皮膚の状況などにより個人差があるが、界面活性剤が配合されていると皮膚に刺激を与える場合があるので、界面活性剤の配合量は10質量%未満とするか、界面活性剤を配合しないのが望ましい。
【0014】
本発明に係る水中油型乳化物は、[(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩の総配合量]/[(A)カチオン化セルロースの配合量]で算出される比(B)/(A)が、0.04以上0.32以下のものが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中油型乳化物は、粘度が1000mPa・s以上であるが、低温環境下に置いても油相分離が抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水中油型乳化物は、カチオン化セルロースと、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種と、炭素数5以下のアルコールと、が配合されており、粘度が1000mPa・s以上である(本発明の水中油型乳化物における水の配合量は、典型的には70質量%以上である。)。
上記の配合されたカチオン化セルロースと、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種は、水相に含まれることになる。この水相に油相が分散した乳化物が、本発明の水中油型乳化物である。
【0017】
(1)組成等
(A)成分:カチオン化セルロース
カチオン化セルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体である塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。当該カチオン化セルロースは市販されており、例えば、ダウ・ケミカル日本社製「UCARE Polymer JR-30M」、東邦化学工業社製「カチナールHC−200」、東邦化学工業社製「カチナールLC−200」が挙げられる。
【0018】
カチオン化セルロースは、2質量%水溶液にしたときの粘度が10000mPa・s以上40000mPa・s以下のものを選定すると良く、20000mPa・s以上40000mPa・s以下のものを選定するのが好ましい。この粘度が高くなるほどに、本発明の水中油型乳化物の粘度も高くなる傾向にある。なお、カチオン化セルロースの2質量%水溶液の粘度については、B形粘度計を用いて、25℃、M4ロータ、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値を採用する。
【0019】
カチオン化セルロースのカチオン化度(カチオン化セルロースにおける窒素含有質量の百分率)は、特に限定されないが、1.3%以上2.0%以下が良く、1.5%以上2.0%以下が好ましい。
(A)成分の水中油型乳化物における配合量の下限は、0.20質量%が好ましく、0.25質量%がより好ましい。また、その上限値は、特に限定されないが、水中油型乳化物を高価としないために、0.55質量%が好ましい。
【0020】
(B)成分:ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種
塩の形態をとるときの(B)成分としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムとしてのナトリウム塩となった形態である。
【0021】
ヒアルロン酸を選定する場合、例えば、その1質量%水溶液の粘度が15000mPa・s以上30000mPa・s以下のものが良く、19000mPa・s以上26000mPa・sのものでも良い。ヒアルロン酸を選定する場合と同じく、ヒアルロン酸の塩を選定する場合も、1質量%水溶液の粘度が15000mPa・s以上30000mPa・s以下のものが良く、19000mPa・s以上26000mPa・sのものでも良い。なお、それら1質量%水溶液の粘度については、B形粘度計を用いて、25℃、M4ロータ、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値を採用する。
【0022】
(B)成分の水中油型乳化物における配合量の下限値は、特に限定されないが、0.02質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。(B)成分の水中油型乳化物における配合量の上限値についても、特に限定されないが、水中油型乳化物を高価としないために、0.20質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましい。
(A)成分の配合量に対する(B)成分の配合量の比([(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩の総配合量]/[(A)カチオン化セルロースの配合量]により算出される比(B)/(A))の下限値は、0.04が好ましく、0.10がより好ましい。また、その上限値としては、0.32が好ましく、0.30がより好ましい。比(B)/(A)が0.04以上0.32以下であれば、水中油型乳化物の製造が容易である。
【0023】
(C)成分:炭素数5以下のアルコール
本発明の水中油型乳化物においては、(C)成分の配合によって、低温環境下に置いた後の油相の分離が抑制される上に、45℃程度の高温環境下に置いたときの粘度低下が抑制される。
【0024】
(C)成分は、炭素数5以下のアルコールであれば特に限定されないが、一価アルコール、二価アルコール、及び、三価アルコールから選択された一種又は二種以上が好ましく、二価アルコール及び/又は三価アルコールがより好ましい。
この(C)成分としては、例えば、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、及び、1,3−プロパンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも一種であってよい。なかでも、低温での経時安定性に優れる点で、グリセリン、1,3−プロパンジオールが好ましい。
【0025】
水中油型乳化物における(C)成分の配合量の下限値は、3.0質量%が好ましく、5.0質量%がより好ましい。その上限値は、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
【0026】
(D)成分:油相成分
(D)成分は、水との相溶性が無いか又は水との相溶性が低いものであり、本発明の水中油型乳化物の水相中に分散させるものである。(D)成分としては、例えば、25℃で液体又は固体の油脂、エステル油、高級アルコール、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、シリコーンが挙げられる((D)成分の具体例は、株式会社薬事日報社から発行されている「日本化粧品原料集2007」などに記載されている。)。(D)成分は、一種又は二種以上が配合されると良い。
【0027】
(D)成分である油脂としては、例えば、アーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、シア脂油、水添オリーブ油、ステアリルエステルズ、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、マカデミアナッツ油、野菜油、ローズヒップ油が挙げられる。
【0028】
(D)成分であるエステル油としては、例えば、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。
【0029】
(D)成分である高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、ドデシルヘキサデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールが挙げられる。
【0030】
(D)成分であるロウとしては、例えば、水添オリーブ油ラウリルエステルズ、水添オリーブ油ミリスチルエステルズ、水添オリーブ油セチルエステルズ、ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、カルナウバロウが挙げられる。
【0031】
(D)成分である炭化水素としては、例えば、ジオクチルシクロヘキサン、軽質流動イソパラフィン、スクワランが挙げられる。
【0032】
(D)成分である高級脂肪酸としては、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸が挙げられる。
【0033】
(D)成分であるシリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等)、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、ポリエーテル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、シラノール変性シリコーンが挙げられる。
【0034】
(D)成分の水中油型乳化物における配合量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上15質量%以下である。
【0035】
(E)成分:任意成分
本発明の水中油型乳化物には、界面活性剤、防腐剤、香料等の公知の毛髪処理剤原料がさらに配合されていてもよい。
【0036】
本発明の水中油型乳化物は、当該乳化物を製造する際の界面活性剤が低配合量又は界面活性剤を配合しないものであり、界面活性剤の配合は、任意となる。本発明の水中油型乳化物に界面活性剤を配合する場合には、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び、両性界面活性剤の一種又は二種以上を任意に配合する。
水中油型乳化物に界面活性剤(ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び、両性界面活性剤の一種又は二種以上)を配合する場合、その配合量は、使用者に与える皮膚刺激を抑制するために、10質量%未満が好ましく、5.0質量%未満がより好ましく、1.0質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満が特に好ましい。なお、使用者に与える皮膚刺激を抑制するには、界面活性剤を配合しないことが最適である。
【0037】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル(ラウリン酸スクロース等)、ポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(60E.O.)等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(25E.O.)等)、グリセリン脂肪酸エステル(ジイソシアリン酸グリセリン等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。ノニオン界面活性剤は、一般的に界面活性剤の中でも皮膚に低刺激なので、界面活性剤を配合する場合には、ノニオン界面活性剤を選択するのが好ましい。
【0038】
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、トリ長鎖アルキルモノメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩が挙げられる。
【0040】
上記両性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩、アルキルポリアミノポリカルボキシグリシン塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオン酸塩、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸塩、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩が挙げられる。
【0041】
(2)粘度
本発明の水中油型乳化物の粘度は、1000mPa・s以上である。なお、本発明の水中油型乳化物を毛髪処理剤として用いる場合のハンドリング性を考慮すれば、当該水中油型乳化物の粘度は、1500mPa・s以上30000mPa・s以下が良く、2000mPa・s以上20000mPa・s以下が好ましく、2500mPa・s以上10000mPa・s以下がより好ましい。
粘度の調整手法は、例えば、配合される(A)成分又は(B)成分の平均分子量を上げることで(2質量%水溶液の粘度が高い(A)成分を選定又は1質量%水溶液の粘度が高い(B)成分を選定することで)粘度を上げることができ、また、(A)成分及び(B)成分の配合量を多くすることで粘度を上げることができる。また、(A)成分又は(B)成分の平均分子量を下げる(2質量%水溶液の粘度が低い(A)成分を選定又は1質量%水溶液の粘度が低い(B)成分を選定することで)粘度を下げることができ、また、(A)成分及び(B)成分の配合量を少なくすることで粘度を下げることができる。
【0042】
(3)pH
水中油型乳化物のpHは、特に限定されないが、例えば4.0以上9.0以下であり、毛髪処理剤用途として汎用的なのは5.0以上8.0以下である。
【0043】
(4)用途
水中油型乳化物の用途は、特に限定されないが、例えば、毛髪処理剤等の化粧品として用いることができ、界面活性剤を少量配合又は配合しないで洗い流さないトリートメントとして用いてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例などにおいて、「%」は「質量%」を意味している。また、水中油型乳化物における配合量は、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の各表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0045】
(製造例)
(A)成分の水溶液を調製し、更に(B)成分以外の原料を(A)成分水溶液に配合した(固形原料については加温溶融させて、配合した。)。その(B)成分以外の原料の配合に伴い、白濁するまでホモミキサーを用いて攪拌条件3000rpmで攪拌した。次に、(B)成分の0.33質量%水溶液を配合して、さらにホモミキサーを用いて攪拌することで水中油型乳化物を得た。ここで、ホモミキサーによる攪拌条件は、5000rpmで5分間とした。以上の製造手順により、pHが5.0〜6.0である実施例の水中油型乳化物等を製造した。
【0046】
(評価基準)
乳化物を調製できたか否かの評価(乳化物調製)は、調製後数時間が経過した後、目視によって確認し、以下のように評価した。
○:乳化物として確認できた。
×:分離(透明層と不透明層の存在が明確な状態、以下同じ。)が確認された。
【0047】
(経時試験)
調製した乳化物等を収容した密栓ガラス管を、下記表1〜4、6に記載の各温度条件における恒温槽内に放置した。外観の経時変化は、目視によって確認し、以下のように評価した。
◎:分離、油の浮き、及び析出物が認められなかった。
○:分離は認められなかったが、僅かに油浮き又は析出物が認められた。
△:分離は認められなかったが、油浮き又は析出物が認められた。
×:分離が認められた。
【0048】
以下、具体的な配合成分や比率を変えながら検討した実施例1−28及び比較例1−8を、表1−6に示す。
【0049】
以下の表1では、実施例1−7及び比較例1について、経時試験前の初期粘度と、調製後に−10℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の外観について、放置日数毎に(7日間、18日間、24日間)観察した結果を示す。
【0050】
【表1】

以下の表2では、実施例8−15について、経時試験前の初期粘度と、調製後に−10℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度について、放置日数毎に(7日間、18日間、24日間)示す。また、同条件下での調製後に45℃の恒温槽内で一ヶ月放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度を示す。
【0051】
【表2】

以下の表3では、実施例16−19について、経時試験前の初期粘度と、調製後に−10℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度について放置日数毎に(7日間、14日間、21日間)示す。また、同条件下での調製後に−2℃の恒温槽内で一ヶ月放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度を示す。また、同条件下での調製後に45℃の恒温槽内で一ヶ月放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度を示す。
【0052】
【表3】

以下の表4では、実施例20−23について、経時試験前の初期粘度と、調製後に−2℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度について放置日数毎(1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間)に示す。また、同条件下での調製後に45℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の外観と粘度について放置日数毎(1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間)示す。
【0053】
【表4】

以下の表5では、実施例24−28及び比較例2−8の一部について、初期粘度を示す。
【0054】
【表5】

表1の比較例1に示すように、(A)成分としてのカチオン化セルロースと、(B)成分としてのヒアルロン酸ナトリウムとを配合し、(C)成分としてのアルコールを配合しなかった場合には、1000mPa・s以上の高い粘度(2310mPa・s)であったにも関わらず、−10℃の恒温槽内で7日間放置した時点で分離が認められており、安定した乳化物を得ることができないことが確認された。これに対して、(C)成分としてのアルコールを配合した場合には、実施例1−19に示すように、−10℃値度の低温下であっても少なくとも7日程度は分離せずに(油浮き又は析出物が認められる程度であり)安定であったことが確認された。
【0055】
表2では、油相における成分を変えた場合を比較しているが、毛髪処理剤等の化粧品の分野で用いられる油相成分であれば、特に種類を問わず、低温下であっても高温下であっても、水中油型乳化物が安定であったことが確認された。
【0056】
表3では、B/Aの値が異なる2つの例について、界面活性剤の有無の違いの影響を検討したが、いずれの実施例16−19についても水中油型乳化物を安定させることができており、特に実施例16、19では界面活性剤を配合しなくても安定性が高いことが確認された。
【0057】
表4では、配合される界面活性剤の種類によらず、実施例20−23のいずれについても水中油型乳化物を安定させることができることが確認された。
【0058】
表5に示すとおり、比較例2は、粘度が1000mPa・sをはるかに超える5260mPa・sであったにもかかわらず、乳化物とならなかったものである。つまり、粘度を単に高めるだけでは乳化物を得ることすらできない。また、表1に示すように、B/Aの値が0.04以上0.32以下の範囲である実施例24−28については、乳化物調製の評価が「○」であったので、B/Aの値が0.04以上0.32以下であれば乳化物調製に適していることが確認された。
【0059】
上記実施例16と比較例1に関して、以下の表6では、経時試験前の初期粘度と、調製後に45℃の恒温槽内で放置させた後に常温復帰させた際の粘度について放置日数毎(1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間)に示す。
【0060】
【表6】

表6に示すとおり、(C)成分を配合した実施例16の粘度維持率は、比較例1に比して格段に高い。つまり、(C)成分の配合により、高温環境下に置いたときの粘度低下が抑制されたことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開平07−89823号公報
【特許文献2】特開平09−301824号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が1000mPa・s以上である水中油型乳化物であって、
(A)カチオン化セルロース、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種、並びに、
(C)炭素数5以下のアルコール、
が配合された水中油型乳化物。
【請求項2】
毛髪処理剤として用いられる請求項1に記載の水中油型乳化物。
【請求項3】
界面活性剤の配合量が10質量%未満、又は、界面活性剤が配合されていない、
請求項1又は2に記載の水中油型乳化物。
【請求項4】
界面活性剤の配合量が5.0質量%未満、又は、界面活性剤が配合されていない、
請求項1又は2に記載の水中油型乳化物。
【請求項5】
[(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アセチル化ヒアルロン酸、及び、アセチル化ヒアルロン酸の塩の総配合量]/[(A)カチオン化セルロースの配合量]で算出される比(B)/(A)が、0.04以上0.32以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水中油型乳化物。

【公開番号】特開2013−18708(P2013−18708A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150794(P2011−150794)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】