水中生物飼育システムおよび水槽用浄化ユニット
【課題】浄化装置や、循環ポンプ等の保守点検を簡単に行える上さらに、浄化ゾーンの小型コンパクト化を図ることができる水中生物飼育システムを提供する。
【解決手段】本発明のシステムは、水槽1と、水槽1を飼育ゾーン11および浄化ゾーン12に仕切る仕切壁2と、飼育ゾーン11および浄化ゾーン12間で水を循環させる循環ポンプ81と、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器50、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー70、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備える。循環ポンプおよび少なくとも1つの浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニット3が構成され、浄化ユニット3が、搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、浄化ゾーン12に対し出し入れ自在に収容される。
【解決手段】本発明のシステムは、水槽1と、水槽1を飼育ゾーン11および浄化ゾーン12に仕切る仕切壁2と、飼育ゾーン11および浄化ゾーン12間で水を循環させる循環ポンプ81と、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器50、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー70、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備える。循環ポンプおよび少なくとも1つの浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニット3が構成され、浄化ユニット3が、搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、浄化ゾーン12に対し出し入れ自在に収容される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えば、水槽内に濾過器等の浄化装置が配置される内部浄化方式の水中生物飼育システムおよび水槽用浄化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
観賞魚を水槽で飼育する場合、水槽内の水を清浄に保つために濾過装置が設置されるのが通例である。
【0003】
水槽の水を濾過する方式としては、濾過装置が水槽とは別に設けられる外部濾過方式や、濾過装置が水槽の内部に組み込まれる内部濾過方式等が周知である。
【0004】
例えば下記特許文献1,2に示すように、内部濾過式の観賞魚飼育システムは、水槽内が飼育ゾーンと濾過ゾーンとに仕切られている。さらに濾過ゾーンは、互いに連通する複数の水路室に仕切られ、各水路室内には、濾過材や、循環ポンプ、配管等の部品がそれぞれ収容されている。
【特許文献1】米国特許第5306421号明細書(FIG.1,6)
【特許文献2】米国特許第5171438号明細書(FIG.1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に示す従来の内部濾過式飼育システムは、濾過ゾーンに、循環ポンプ、複数の濾過材、配管等の多数の部品が収容されている。このような飼育システムにおいて、ユーザーが濾過材の交換や、ポンプや配管の保守点検を行う場合には、手を濾過ゾーン内に挿入して、所定の部品を、周辺部品との連携を解除してから、水槽外部に取り出すことになる。このため濾過ゾーン内には、部品の設置スペースの他に、部品の出し入れ操作を行うための作業スペースが必要になり、その分、濾過ゾーンが大きくなってしまい、ひいては飼育システム全体の大型化を来すという問題があった。
【0006】
なお濾過ゾーン内の作業スペースを小さくすると、部品の出し入れ操作が困難になり、保守点検作業等が面倒になるという問題が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、浄化装置や、循環ポンプ等の保守点検を簡単に行える上さらに、濾過ゾーン等の浄化ゾーンの小型コンパクト化を図ることができる水中生物飼育システムおよび水槽用浄化ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を要旨としている。
【0009】
[1] 水槽と、
前記水槽を飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切る仕切壁と、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、
水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備え、
前記循環ポンプおよび少なくとも1つの前記浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、
前記ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニットが構成され、
前記浄化ユニットが、前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に収容されたことを特徴とする水中生物飼育システム。
【0010】
[2] 前記ユニット部品は、前記プロテインスキマーと、前記プロテインスキマーに、気泡を混合した水を送り込むスキマーポンプと、を含む前項1に記載の水中生物飼育システム。
【0011】
[3] 前記搭載フレームは、前記ユニット部品を出し入れ自在に収容するケーシングによって構成される前項1または2に記載の水中生物飼育システム。
【0012】
[4] 前記浄化ユニットが、前記浄化ゾーンの少なくとも1部に適合状態に収容される前項1〜3のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0013】
[5] 前記ユニット部品は、前記濾過器と、前記プロテインスキマーとを含む前項1〜4のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0014】
[6] 前記ユニット部品は、前記濾過ゾーンに配置される全ての部品を含む前項1〜5のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0015】
[7] 前記搭載フレームの外周面に、前記浄化ゾーンから前記水槽の上端部にかけてコード類引出溝が設けられ、
前記水中ポンプの送電コードが前記コード類引出溝に収容されて、前記送電コードが前記浄化ゾーンから前記水槽の外部に引き出される前項1〜6のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0016】
[8] 仕切壁により飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切られた水槽の前記浄化ゾーンに配置される水槽用浄化ユニットであって、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち少なくとも1つの浄化装置と、を含むユニット部品と、
前記ユニット部品を搭載する搭載フレームと、を備え、
前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に構成されたことを特徴とする水槽用浄化ユニット。
【発明の効果】
【0017】
発明[1]の水中生物飼育システムによれば、浄化装置や循環ポンプ等のユニット部品を搭載フレームに搭載した浄化ユニットを、浄化ゾーンに出し入れ自在に収容しているため、浄化ユニット内のデッドスペースを小さくでき、浄化ユニットおよび浄化ゾーンの小型コンパクト化を図ることができる。さらにユニット部品の保守点検時には、浄化ユニットを浄化ゾーンから抜き出せば、所望の部品を確実に取り出すことができ、保守点検作業も確実に行うことができる。
【0018】
発明[2]の水中生物飼育システムによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0019】
発明[3]の水中生物飼育システムによれば、ケーシングにユニット部品を収容しているため、浄化ユニットの小型コンパクト化をより確実に図ることができる。
【0020】
発明[4]の水中生物飼育システムによれば、浄化ゾーンの小型コンパクト化をより確実に図ることができる。
【0021】
発明[5][6]の水中生物飼育システムによれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0022】
発明[7]の水中生物飼育システムによれば、濾過ユニットに含まれるポンプ用の送電コード等を、水槽外部にスムーズに引き出すことができる。
【0023】
発明[8]の水槽用浄化ユニットによれば、上記と同様に、小型コンパクト化を図ることができるとともに、ユニット部品の保守点検作業も確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1,2はこの発明の実施形態である水中生物飼育システムを示す図である。両図に示すように、この飼育システムは、海水を循環させて濾過する機能を備えており、海洋生物例えば、海水魚等の脊椎動物はもちろん、サンゴ、クラゲ、甲殻類等の無脊椎動物も長期間確実に飼育できるようになっている。
【0025】
この水中生物飼育システムは、水槽(1)を備えている。水槽(1)の後部には、仕切壁(2)が取り付けられている。仕切壁(2)は、垂直に配置されて、水槽(1)の内部を前後に仕切っている。水槽(1)の内部における仕切壁(2)よりも前側の領域によって、飼育ゾーン(11)が構成されるとともに、仕切壁(2)よりも後側の領域によって、浄化ゾーンとしての濾過ゾーン(12)が構成される。
【0026】
図13〜15に示すように、仕切壁(2)の側部上端には、流入口(21)が形成されている。この流入口(21)は、上下に延び、かつ水平方向に複数並列に配置されるスリットによって構成されている。また仕切壁(2)における中間部の上端には、流出口(22)が形成されている。
【0027】
仕切壁(2)の後面側における流入口(21)には、後方に間隔をおいて補助板(25)が設けられている。この補助板(25)は、流入口(21)に対応する領域が切り欠かれて、流入用切欠部(26)が設けられている。なお、仕切壁(2)および補助板(25)間には隙間が形成されており、オーバーフローによって飼育ゾーン(12)から流入口(21)を通過する水は、仕切壁(2)および補助板(25)間の隙間に一時的に貯留されるようになっている。さらにその隙間に貯留された水は、後述する濾過ユニット(3)の濾過室(5)内に導入されるようになっている。
【0028】
一方図1〜10に示すように、水槽(1)の濾過ゾーン(12)には濾過ユニット(3)が収容されている。
【0029】
濾過ユニット(3)は、濾過ゾーン(12)に適合状態に収容されるボックス型のケーシング(4)を備えている。ケーシング(4)は、透明ないし半透明のプラスチック製品によって構成され、外部から内部の構造を視認できるようになっている。本実施形態において、ケーシング(4)は、搭載フレームを構成している。
【0030】
なお本実施形態においては、図5に向かって濾過ユニット(3)の正面側を前面側、裏面側を後面側、左側を左側、右側を右側、上側を上側、下側を下側として説明する。
【0031】
ケーシング(4)における左側半分の上側が、濾過室(5)として構成されるとともに、左側半分の下側が、ポンプ室(8)として構成される。さらに濾過ユニット(3)における右側半分の左側が、水路集約室(6)として構成されるとともに、右側がスキマー室(7)として構成される。
【0032】
ケーシング(4)における濾過室(5)およびポンプ室(8)間には、水平に隔壁(43)が設けられて、その隔壁(43)によって、両室(5)(8)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(43)の左側端部には、通水口(44)が設けられ、この通水口(44)を介して両室(5)(8)が互いに連通されている。
【0033】
ケーシング(4)における濾過室(5)および水路集約室(6)間には、垂直に隔壁(47)が設けられて、その隔壁(47)によって、両室(4)(5)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(47)の下端部には、通水口(48)が設けられ、この通水口(48)を介して、両室(5)(6)が互いに連通されている。
【0034】
さらにケーシング(4)における水路集約室(6)およびスキマー室(7)間には、垂直に隔壁(45)が設けられて、その隔壁(45)によって、両室(6)(7)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(45)の下端部には、通水口(46)が設けれ、この通水口(45)によって、両室(6)(7)が互いに連通されている。
【0035】
ケーシング(4)の上端は開放されており、この上端開口部(41)を介して、濾過室(5)、水路集約室(6)およびスキマー室(7)の各上端はそれぞれ上方に開放されている。ケーシング(4)の上端開口部(41)は、ユニット部品を出し入れするための開口部として構成されている。
【0036】
ケーシング(4)の前壁および後壁には、ポンプ室(8)に対応して、開口部(42)が形成されて、ポンプ室(8)が前後方向に開放されている。前後壁開口部(42)は、ユニット部品を出し入れするための開口部として構成されている。
【0037】
またケーシング(4)の前壁における濾過室(5)の上端部が切り欠かれて、流入用切欠部(31)が設けられている。図2,3,7に示すように、流入用切欠部(31)の下縁部には、濾過室(5)の内部から前方にかけて水平に配置される誘導板(35)が設けられるとともに、この誘導板(35)の前端縁には、下方に延びる掛止片(36)が設けられている。
【0038】
図7に示すようにこの掛止片(36)は、ケーシング(4)を水槽(1)の濾過ゾーン(12)に収容した際に、上記仕切壁(2)の補助板(25)における流入用切欠部(26)の下縁部に掛止することによって、ケーシング(4)の誘導板(35)が、仕切壁(2)の流入口(21)と、ケーシング(4)の濾過室(5)との間に架け渡される。これにより、飼育ゾーン(11)から仕切壁(2)の流入口(21)を通過する水が、誘導板(35)上を通って濾過室(5)にスムーズに導かれるようになっている。
【0039】
濾過室(5)は、濾過室(5)の上部に設けられる上部濾過材室(51)と、上部濾過材室(51)の下側に設けられる下部濾過材室(52)と、下部濾過材室(52)および上記ポンプ室(8)間に設けられる出口室(53)とを有している。
【0040】
上部濾過材室(51)および下部濾過材室(52)間には、一対の上部散水板(55)(56)が互いに間隔をおいてそれぞれ水平に設けられている。一対の上部散水板(55)(56)は、濾過室(5)にそれぞれ着脱自在に設置されており、上端開口部(41)を介して出し入れできるようになっている。
【0041】
一対の上部散水板(55)(56)には、多数の散水孔(551)(561)が分散して設けられている。従って、上部濾過材室(51)に導入された水は、散水孔(551)(561)を通って落下し、下部濾過材室(52)に流入されるようになっている。
【0042】
下部濾過材室(52)および出口室(53)間には、下部散水板(57)が水平に設けられている。下部散水板(57)は、濾過室(5)に着脱自在に設置されており、上部散水板(55)(56)を取り外した状態において、上端開口部(41)を介して、出し入れできるようになっている。
【0043】
下部散水板(57)には、多数の散水孔(571)が分散して設けられている。従って、下部濾過材室(52)に導入された水は、散水孔(571)を通って落下し、出口室(53)に流入されるようになっている。
【0044】
出口室(53)に流入された水は、上記の通水口(44)を通って、ポンプ室(8)に導入されるようになっている。
【0045】
本実施形態においては、上部濾過材室(51)内には、ウールや活性炭等の物理濾過用濾過材(図示省略)が収容されて、その濾過材に水を透過させることによって、水内の夾雑物を捕捉できるようになっている。
【0046】
さらに下部濾過材室(52)内には、セラミックリングや、プラスチックバイオボール等の生物濾過用濾過材(図示省略)が収容されて、その濾過材に付着する濾過細菌によって、水内の汚染物質を分解できるようになっている。
【0047】
ここで本実施形態においては、上下濾過材室(51)(52)、出口室(53)、および散水板(55)〜(57)等によって濾過器(50)が構成されている。
【0048】
ケーシング(4)の前壁における水路集約室(6)の上端には、仕切壁(2)の流出口(22)に対応して、流出口(32)が設けられている(図2参照)。この流出口(32)は、濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)内に収容した際に、仕切壁(2)の流出口(22)に臨むようになっている。
【0049】
一方、ポンプ室(8)内には、循環ポンプ(81)と、スキマーポンプ(85)とが設置されている。
【0050】
循環ポンプ(81)は、以下に説明するように、飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)間で水を循環させる。
【0051】
すなわち循環ポンプ(81)の吸引口(82)は、ポンプ室(8)の底面に対向するように配置されて、ポンプ室(8)の水が、循環ポンプ(81)の吸引口(82)から吸い込まれるようになっている。
【0052】
図6〜8に示すように、循環ポンプ(81)の吐出口(83)には、吐出チューブ(832)が連通接続されている。この吐出チューブ(832)は、ポンプ室(8)から水路集約室(6)に導かれて、ケーシング(4)の上記流出口(32)に連通接続されている。従って、循環ポンプ(81)の吐出口(83)から吐出される水は、吐出チューブ(832)を通って、流出口(32)から吐出されるようになっている。またケーシング(4)が濾過ゾーン(12)内に収容された状態では、ケーシング(4)の流出口(32)から吐出される水は、仕切壁(2)の吐出口(22)を介して飼育ゾーン(11)内に戻されるようになっている。さらに濾過ゾーン(12)から飼育ゾーン(11)内に水が送り込まれるのに伴って、水が、飼育ゾーン(11)から仕切壁(2)の流入口(21)を通過して、濾過室(5)に流入されるようになっている。
【0053】
こうして循環ポンプ(81)によって、水が飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)間で循環されるようになっている。
【0054】
またスキマーポンプ(85)は、以下に説明するように、プロテインスキマー(70)に気泡が混合された水を送り込む。
【0055】
すなわちスキマーポンプ(85)の吸引口(86)は、ポンプ室(8)の底面近傍に配置される。さらにスキマーポンプ(85)の吸込口(86)には、エアーチューブ(88)の一端が接続されて、そのエアーチューブ(88)の他端はケーシング(4)の上方(水面上)に配置されている。
【0056】
そしてスキマーポンプ(85)を駆動した際には、ポンプ室(8)内に貯留する水が、スキマーポンプ(85)の吸引口(86)に吸い込まれると同時に、エアーチューブ(88)を介して、外気が吸い込まれる。こうして吸引口(86)に吸い込まれた水および空気は混合され、その気泡混合水が吐出口(87)から吐出されるようになっている。
【0057】
スキマーポンプ(85)の吐出口(87)には、吐出チューブ(89)が連通接続されている。この吐出チューブ(89)は、水路集約室(6)を貫通してスキマー室(7)に導かれて、後述するスキマーシリンダ(71)に連通接続されている。従って、スキマーポンプ(85)の吐出口(87)から吐出された気泡混合水は、吐出チューブ(89)を通ってスキマーシリンダ(71)に導入されるようになっている。
【0058】
なお図3,9に示すように本実施形態において、ケーシング(4)の後壁には、水路集約室(6)に対応して上下方向に延びるコード類引出溝(84)(84)が形成されている。このコード類引出溝(84)(84)は、下端がケーシング(4)の後壁開口部(42)に開放されるとともに、上端がケーシング(4)の上端に開放されている。従って例えば、スキマーポンプ(85)に接続されるエアーチューブ(88)を、コード類引出溝(84)に沿って収容することにより、エアーチューブ(88)を、他の部品に絡み付くような不具合を防止しつつ、ポンプ室(8)から濾過ユニット(3)の外部、つまり水槽(1)の外部にスムーズに引き出すことができる。
【0059】
また本実施形態においては、循環ポンプ(81)およびスキマーポンプ(85)の送電コード(図示省略)も、上記コード類引出溝(84)に沿って収容することにより、これらの送電コードを、他の部品に絡み付くような不具合を防止しつつ、水槽外部にスムーズに引き出すことができる。
【0060】
図5,6,10に示すようにスキマー室(7)には、円筒形のスキマーシリンダ(71)が垂直配置に取り付けられている。このスキマーシリンダ(71)の下端はスキマー室(7)の下壁によって閉塞されるとともに、上端はスキマー室(7)内に開放されている。
【0061】
ケーシング(4)の上端開口部(41)におけるスキマー室(7)に対応する部分には、プロテイン収集ボックス(72)が挿脱自在に嵌め込まれている(図4等参照)。プロテイン収集ボックス(72)は、上端が開放されており、この上端開放部に蓋部材(73)が着脱自在に取り付けられている。
【0062】
さらにプロテイン収集ボックス(72)の底壁には、プロテイン導入パイプ(74)が貫通状態に取り付けられている。このパイプ(74)の上端開口部は、プロテイン収集ボックス(72)の内部に開放されるとともに、下端開口部は、スキマーシリンダ(71)の上端開口部に対向して配置されている。さらにプロテイン導入パイプ(74)の下端には、末広がり状のガイド部材(75)が設けられて、後述するようにスキマーシリンダ(71)から排出される無数の気泡群がガイド部(75)を介して効率良くパイプ(74)内に流入されるようになっている。
【0063】
ここで本実施形態においては、スキマーシリンダ(71)、プロテイン収集ボックス(72)、蓋部材(73)およびプロテイン導入パイプ(74)、ガイド部材(75)によって、プロテインスキマー(70)が構成されている。なお広義には、これらの構成要素に加えて、スキマーポンプ(85)や、スキマー室(7)等も含めて、プロテインスキマー(70)を構成することもある。
【0064】
このプロテインスキマー(70)においては既述したように、スキマーポンプ(85)から吐出チューブ(89)を介してスキマーシリンダ(71)内に気泡が混合された気泡混合水が導入される。
【0065】
ここで吐出チューブ(89)の流出側端部における水の吐出方向は、スキマーシリンダ(71)の内周面に対しほぼ接線方向に設定されている。このため、吐出チューブ(89)からスキマーシリンダ(71)内に導入された気泡混合水は、スキマーシリンダ(71)の内周面に沿って旋回しながら徐々に上昇していく。このように気泡混合水が螺旋状に上昇することによって、気泡と水との接触時間を多く確保することができ、水の内部に夾雑するプロテイン等の異物を、気泡に効率良く付着させることができ、プロテイン等を水中から確実に除去することができる。
【0066】
プロテインが除去された水は、スキマーシリンダ(71)の上端位置からオーバーフローして、スキマー室(7)を流下する。
【0067】
また、プロテインが付着した気泡は、浮力によって上昇するとともに、下側から連続して浮揚する気泡に順次押し上げられていき、スキマーシリンダ(71)の上端から流出された後、さらに上昇して、ガイド部材(75)を介してプロテイン導入パイプ(74)内に導入される。パイプ(74)内に導入されたプロテイン付きの気泡は、パイプ(74)を上昇していき、パイプ(74)の上端からオーバーフローして、プロテイン収集ボックス(72)内に収集される。
【0068】
なお言うまでもなく、プロテイン収集ボックス(72)に収集されたプロテインを廃棄する場合には、プロテイン収集ボックス(72)を、スキマー室(7)から取り外すとともに、蓋部材(73)を取り外して、プロテイン収集ボックス(72)内のプロテインを廃棄すれば良い。
【0069】
一方、プロテインが除去されて、スキマーシリンダ(71)の上端からオーバーフローした水は、以下に説明するように、ポンプ室(8)に戻されて、そこから循環ポンプ(81)によって、飼育ゾーン(11)内に戻される。
【0070】
すなわち図5,9,11に示すように、水路集約室(6)およびスキマー室(7)間の隔壁(45)の下端前部には、通水口(46)が設けられて、スキマー室(7)の下端から水が通水口(46)を通って、水路集約室(6)の後述する第1水路(61)の下端に流入されるようになっている。なお発明の理解を容易にするため、図11においては、水の流れを連続する矢印によって示している(以下の図12においても同じ)。
【0071】
また水路集約室(6)は、複数の仕切部材によって、複数の水路(61)〜(64)に仕切られている。
【0072】
まず水路集約室(6)の前部には、垂直方向に沿って第1水路(61)が設けられている。この第1水路(61)の下端部は、上記したようにスキマー室(7)の下端に、通水口(46)を介して連通接続されている。従ってスキマー室(7)の下端から通水口(46)を介して第1水路(61)の下端に導入された水は、第1水路(61)に沿って上昇するようになっている。
【0073】
第1水路(61)の上端部には、水位調整パイプ(68)が設けられている。この水位調整パイプ(68)は、内パイプが外パイプに対し回転自在に収容された二重パイプ構造を有しており、内外両パイプの各周壁に形成された開口によって流出口(69)が形成されている。そして、内パイプを外パイプに対し回転操作することによって、流出口(69)の開口面積および開口位置を変化させて、水位調整パイプ(68)の流出口(69)から流出される水の流量および水圧を調整して、第1水路(61)内の水圧を調整する。これにより、スキマー室(7)の水位を調整できるようにしている。
【0074】
なお水位調整パイプ(68)は必ずしも上記のように、二重パイプ構造に形成する必要はなく、水位調整可能な構成であれば、どのような構成を採用しても良い。例えば単管の周壁に設けた流出口に、開閉自在にシャッター部材を設けて、そのシャッター部材を開閉することによって、流出口の開口面積等を変化させることにより、流出口から流出される水の流量および水圧を調整して、スキマー室(7)の水位を調整するようにしても良い。
【0075】
水路集約室(6)には、右側の上部に前後方向(奥行き方向)に沿って第2水路(62)が設けられている。この第2水路(62)の前部は、水位調整パイプ(68)の流出口(69)に対応して配置されており、水位調整パイプ(68)の流出口(69)から流出された水が、第2水路(62)の前部に流入されるようになっている。さらに第2水路(62)の前部に流入された水は、第2水路(62)に沿って後方へ移動するようになっている。
【0076】
図6,9,12に示すように、水路集約室(6)には、後部右側に垂直方向に沿って第3水路(63)が設けられている。この第3水路(63)の上端右側が、通水口(65)を介して上記第2水路(62)の後端に連通接続されており、第2水路(62)の後端から流出された水が、通水口(65)を介して第3水路(63)に流入されるようになっている。
【0077】
第3水路(63)の上壁には、ヒータ差込孔(631)が形成されるとともに、このヒータ差込孔(631)が、ケーシング(4)の上端開口部(41)を介して上方に開放されている。従ってユーザーは必要に応じて、ヒータ差込孔(631)を介して、第3水路(63)内にヒータを設置できるようになっている。
【0078】
水路集約室(6)には、後部左端に垂直方向に沿って第4水路(64)が設けられている。この第4水路(64)の上端が、通水口(66)を介して上記第3水路(63)の上端左側に連通接続されている。従って第3水路(63)に流入された水は、通水口(66)を介して第4水路(64)に流入して、第4水路(64)に沿って流下するようになっている。
【0079】
なお第3水路(63)は、他の水路に比べて容量が多く形成されるとともに、流入口(65)および流出口(66)が共に上端部に形成されている。これにより第3水路(63)に流入された水は、ゆっくりと循環しながら移動して流出されるようになっている。従って第3水路(63)に上記したようにヒータを設置した場合には、そのヒータによって第3水路(63)の水を十分に加熱することができる。
【0080】
水路集約室(6)における第4水路(64)と、濾過室(5)の出口室(53)との間に設けられる隔壁(47)の下端には、通水口(48)が設けられており、この通水口(48)を介して、第4水路(64)が濾過室(5)における出口室(53)の右側端部に連通接続されている。従って第4水路(64)の下端から流出された水が、通水口(48)を介して出口室(53)に流入されるようになっている。
【0081】
なお出口室(53)に流入された水は既述したように、ポンプ室(8)に導入されて、循環ポンプ(81)によって、飼育ゾーン(11)に送り出されるようになっている(図5,6参照)。
【0082】
また図2〜4に示すように、濾過室(5)および水路集約室(6)間の隔壁(47)における上端部には、開口(49)が設けられている。この開口(49)は、上部濾過材室(51)内の水位が過度に上昇した際に、上部濾過材室(51)内の水が開口(49)からオーバーフローして直接、ポンプ室(8)内に導入されて、飼育ゾーン(11)に送り返されるようになっている。
【0083】
さらにこの開口(49)には、ハンドル(図示省略)を着脱自在に係合できるようになっている。従って濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)から引き出す際には、上記ハンドルを開口(49)に係合して取り付けて、そのハンドルを介して濾過ユニット(3)全体を引き上げる。
【0084】
以上のように、ケーシング(4)に、濾過に関連した部品すなわち、濾過器(50)、各種水路、各種チューブ、プロテインスキマー(70)、ポンプ(81)(85)等が集約して設けられて、濾過ユニット(3)が構成されている。そしてこの濾過ユニット(3)が、水槽(1)の濾過ゾーン(11)に出し入れ自在に収容されて、本実施形態の水中生物飼育システムが構成される。
【0085】
なお、濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容した状態では、濾過ユニット(3)における吐出チューブ(832)の流出側端部が、仕切壁(2)の流出口(22)に位置的に対応してそれぞれ配置される。そして図1に示すように、吐出チューブ(832)の流出側端部に、仕切壁(2)の流出口(22)を介して吐出ノズル(221)が嵌合される。
【0086】
さらに濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容した状態では、濾過ユニット(3)が濾過ゾーン(12)に適合することにより、濾過ゾーン(12)の内部における濾過ユニット(3)の外周に余分なスペースが形成されないようになっている。
【0087】
また本実施形態において、水槽(1)の上端には通常、蓋部材が設けられておらず、飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)の上方が開放されている。従って本実施形態の水中生物飼育システムでは、吊下げ式照明装置を不具合なく採用することができる。もっとも本発明においては、水槽(1)の上端を開閉自在な蓋部材を設けるようにしても良い。
【0088】
以上の構成の水中生物飼育システムにおいて、水(海水)をはった水槽(1)の濾過ゾーン(12)に濾過ユニット(3)を収容して、循環ポンプ(81)およびスキマーポンプ(85)を駆動すると、循環ポンプ(81)によってポンプ室(8)の水が、吐出チューブ(832)を介して飼育ゾーン(11)内に送り出される。
【0089】
その一方、飼育ゾーン(11)の水が、仕切壁(2)の流入口(21)を通って濾過ユニット(3)の流入用切欠部(31)をオーバーフローすることにより、上部濾過材室(51)内に流入される。上部濾過材室(51)に流入された水は、上部濾過材室(51)内に配置された物理濾過用濾過材(図示省略)を透過することによって、物理濾過された後、上部散水板(55)(56)の散水孔(551)(561)から滴下されて、下部濾過材室(52)に流入される。下部濾過材室(52)に流入された水は、下部濾過材室(52)内に配置された生物濾過用濾過材(図示省略)を透過することによって、生物濾過された後、下部散水板(57)から滴下されて、出口室(53)に流入される。出口室(53)に流入された水は、通水口(44)を通ってポンプ室(8)に流入される。
【0090】
なお本実施形態においては、ポンプ室(8)の通水口(44)に対応する位置に、スポンジ等の連続気泡軟質フォームを配置しても良い。この場合、通水口(44)から流下する水をスポンジに透過させて、ポンプ室(8)内に緩やかに導入することによって、水の落下音が発生するのを防止することができる。さらに水を上記スポンジに透過させることによって、物理濾過を行うことができ、より一層濾過性能を向上させることができる。
【0091】
ポンプ室(8)に流入された水は、循環ポンプ(81)に吸い込まれて、吐出チューブ(832)を介して飼育ゾーン(11)に戻される。
【0092】
またポンプ室(8)に流入された水のうち一部の水は、スキマーポンプ(85)に吸い込まれて、気泡が混合されて、吐出チューブ(89)を介してスキマーシリンダ(71)の送り込まれる。
【0093】
スキマーシリンダ(71)に導入された気泡混合水は上記したように、旋回しながら上昇していき、その間に水内に夾雑したプロテイン等の異物が気泡に付着して、水内からプロテインが除去される。プロテインが除去された水は、スキマーシリンダ(71)からオーバーフローして、スキマー室(7)に流入される。またプロテインが付着した無数の気泡は上昇していき、プロテイン導入パイプ(74)を通って、プロテイン収集ボックス(72)内に収集される。
【0094】
スキマー室(7)に流入された水は既述したように、水路集約室(6)の各水路(61)〜(64)を通って、濾過室(5)の出口室(53)に流入される。さらに出口室(53)に流入された水は、上記と同様に、ポンプ室(8)に流入されて、飼育ゾーン(12)に戻される。
【0095】
以上のように、本実施形態の水中生物飼育システムによれば、ケーシング(4)に、濾過に関連した部品例えば、濾過器(50)、各種水路、各種チューブ、プロテインスキマー(70)、ポンプ(81)(85)等を集約して組み込んで、濾過ユニット(3)を構成し、その濾過ユニット(3)を水槽(1)の濾過ゾーン(12)に収容している。このため、ケーシング(4)内のデッドスペースを可及的に小さくすることができ、濾過ユニット(3)および濾過ゾーン(12)の小型コンパクト化、ひいては飼育システム全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0096】
また濾過ユニット(3)は、水槽(1)の濾過ゾーン(12)に対し出し入れ自在に構成しているため、ユニット部品(機能部品)例えば、循環ポンプ(81)の保守点検を行うような場合には、濾過ユニット(3)を水槽(1)から取り出してから、その濾過ユニット(3)から循環ポンプ(81)等の部品を取り外すことにより、所定の部品の保守点検を効率良く確実に行うことができる。
【0097】
特に本実施形態においては、濾過ゾーン(12)に収容される全ての部品をケーシング(4)に一括して組み込んで、濾過ユニット(3)を構成しているため、いずれの部品の保守点検を行う場合であっても、濾過ユニット(3)を取り出すだけで確実に対処することができ、保守点検作業をより一層効率良く正確に行うことができる。
【0098】
なお保守点検後は、循環ポンプ(81)等の部品を濾過ユニット(3)に組み込んでから、その濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容すれば良い。
【0099】
本実施形態の濾過ユニット(3)は、濾過材に水を透過して濾過する透過式の濾過器(50)と、水中のプロテインを気泡に付着させて気泡と共に除去するプロテインスキマー(70)との2種類の濾過装置(浄化装置)を組み込んでいるため、濾過性能をより一層向上させることができる。特にプロテインスキマー(70)は、プロテイン等の夾雑物を、水の循環経路内に滞留させることなく、連続的に外部に取り除くことができるため、濾過能力を格段に向上させることができる。従って、海水魚はもちろん、水質条件が極めて厳しいサンゴやクラゲ等の無脊椎動物に対しても、清浄な海水で満たされた快適な飼育環境を提供することができ、これらの海洋生物を長期間不具合なく簡単に飼育することができる。
【0100】
さらに本実施形態においては、ケーシング(4)の濾過材室(51)(52)に濾過材を収容して、濾過ユニット(3)を構成するようにしているため、濾過材の交換時に、水槽内が汚染されるような不具合を確実に防止することができる。
【0101】
すなわち従来の飼育システムのように、濾過ゾーンに濾過材を直接収容する場合には、交換時に濾過材を取り出した際に、濾過材に取り込まれたペースト状の異物や雑菌等が水槽内に垂れ落ちて、水槽内の水が汚染されてしまい、水中生物に多大な悪影響を及ぼす恐れがある。
【0102】
これに対し、本実施形態では、濾過材がケーシング(4)に収容されて、濾過ユニット(3)が構成されているため、濾過材交換時に、濾過ユニット(3)を水槽(1)から取り出したとしても、濾過材から垂れ落ちる異物や雑菌等は、ケーシング(4)の内部で受け止めることができる。このため異物や雑菌等が、ケーシング(4)の外部、つまり水槽(1)の内部に異物や雑菌が入り込むのを確実に防止することができる。従って、濾過材交換時に、水槽内が汚染されるような不具合を確実に防止することができる。
【0103】
また本実施形態においては、プロテインスキマー(70)を通過させた後の水を、複数の水路(61)〜(64)等によって構成される複雑で長い排水経路に通過させて、飼育ゾーン(11)に戻すようにしているため仮に、プロテインスキマー(70)を通過させた後の水に、気泡(プロテイン)が混入したとしても、上記の複雑で長い排水経路を通過させることにより、気泡が浮力によって上方に浮揚して、水面から放出される。従って、気泡(プロテイン等の不純物)が混入した水が、飼育ゾーン(11)に流入されるのを確実に防止でき、水が汚染するのをより一層確実に防止することができる。
【0104】
なお上記実施形態においては、浄化装置として、透過式の濾過器(50)およびプロテインスキマー(70)を用いているが、本発明においては、浄化装置として、水に紫外線を照射して殺菌することにより、水中の雑菌等の細菌を消滅させる紫外線照射装置を用いるようにしても良い。もっとも、本発明において、透過式濾過器、プロテインスキマーおよび紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置を含めるようにすれば良い。
【0105】
また本発明において、濾過ゾーン(浄化ゾーン)に配置される全ての部品を必ずしもユニット部品に構成する必要はない。例えば濾過ゾーンに複数の浄化装置を配置する場合、濾過ユニット(浄化ユニット)に、濾過ゾーンに配置される浄化装置のうち、一部の浄化装置のみを含めるような構成も可能である。例えば濾過ユニットにプロテインスキマーを含めて、透過式濾過器は、濾過ユニットとは別にして、濾過ゾーンに配置するようにしても良い。この場合、プロテインスキマー用のスキマーポンプおよび水循環用の循環ポンプの双方を濾過ユニットに含めるようにしても良いし、循環ポンプのみを濾過ユニットに含めるようにしても良い。
【0106】
また上記実施形態においては、気泡を水に混合してスキマーシリンダに送り込むスキマーポンプを使用するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ウッドストーン等の気泡発生手段を、スキマーシリンダの内部に配置して、そのスキマーシリンダに水を投入するようにした、いわゆるウッドストーンタイプのプロテインスキマーを採用するようにしても良い。
【0107】
また上記実施形態においては、1つの水槽を仕切壁によって、飼育ゾーンと濾過ゾーン(浄化ゾーン)とに仕切るようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、水槽本体に後付けで濾過ゾーン用のボックスを取り付けて、水槽本体を飼育ゾーンとし、濾過ゾーン用ボックス内を濾過ゾーンとして構成するようにしても良い。さらに濾過ゾーン用ボックスを取り付けて濾過ゾーンとして構成する場合であっても、上記実施形態と同様に、濾過ゾーンと、濾過ユニットとは別部材によって構成されるものである。
【0108】
また上記実施形態においては、本発明を海洋生物を飼育する飼育システムに適用した場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、淡水魚等の淡水中に生息する水中生物を飼育する飼育システムにも適用することができる。
【0109】
ところで、上記実施形態の濾過ユニット(3)においては、冷却装置を連結することも可能である。すなわち循環ポンプ(81)の吐出口(83)に連結したチューブを、濾過ユニット(3)の外部に引き出して、そのチューブの引出端部を冷却装置の流入口に接続するとともに、冷却装置の流出口に接続したチューブを濾過ユニット(3)の内部に引き込んで、そのチューブの引込端部を濾過ユニット(3)の上側流出口(32)に連結するようにすれば良い。これにより、循環ポンプ(81)によって吐出された一部の水は、冷却装置を通って冷却された後、飼育ゾーン(11)に送り込まれるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明の水中生物飼育システムは、観賞魚等を飼育する設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】この発明の実施形態である水中生物飼育システムを示す斜視図である。
【図2】実施形態の水中生物飼育システムにおいて濾過ユニットを抜き取った状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態における水中生物飼育システムの濾過ユニットを示す斜視図である。
【図4】実施形態の濾過ユニットにおいて各部品を取り外した状態で示す斜視図である。
【図5】実施形態の濾過ユニットにおける前部の正面断面図である。
【図6】実施形態の濾過ユニットにおける後部の正面断面図である。
【図7】実施形態の濾過ユニットにおける濾過室部分を仕切壁に取り付けた状態で示す側面断面図であって、図5のD1−D1断面に相当する断面図である。
【図8】実施形態の濾過ユニットにおける水路集約室左側部分の側面断面図であって、図5のD2−D2断面に相当する断面図である。
【図9】実施形態の濾過ユニットにおける水路集約室右側部分の側面断面であって、図5のD3−D3線断面に相当する断面図である。
【図10】実施形態の濾過ユニットにおけるスキマー室部分の側面断面図であって、図5のD4−D4線断面に相当する断面図である。
【図11】実施形態の濾過ユニットにおけるプロテイン除去後の排水経路の前半を示す斜視図である。
【図12】実施形態の濾過ユニットにおけるプロテイン除去後の排水経路の後半を示す斜視図である。
【図13】実施形態の水中生物飼育システムに適用された仕切壁を示す正面側の斜視図である。
【図14】実施形態の仕切壁を示す裏面側の斜視図である。
【図15A】実施形態の仕切壁を示す正面図である。
【図15B】実施形態の仕切壁を示す裏面図である。
【図15C】実施形態の仕切壁を示す側面図である。
【符号の説明】
【0112】
1…水槽
11…飼育ゾーン
12…濾過ゾーン(浄化ゾーン)
2…仕切壁
3…濾過ユニット(浄化ユニット)
4…ケーシング(搭載フレーム)
50…濾過器
70…プロテインスキマー
81…循環ポンプ
84…コード類引出溝
85…スキマーポンプ
【技術分野】
【0001】
この発明は例えば、水槽内に濾過器等の浄化装置が配置される内部浄化方式の水中生物飼育システムおよび水槽用浄化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
観賞魚を水槽で飼育する場合、水槽内の水を清浄に保つために濾過装置が設置されるのが通例である。
【0003】
水槽の水を濾過する方式としては、濾過装置が水槽とは別に設けられる外部濾過方式や、濾過装置が水槽の内部に組み込まれる内部濾過方式等が周知である。
【0004】
例えば下記特許文献1,2に示すように、内部濾過式の観賞魚飼育システムは、水槽内が飼育ゾーンと濾過ゾーンとに仕切られている。さらに濾過ゾーンは、互いに連通する複数の水路室に仕切られ、各水路室内には、濾過材や、循環ポンプ、配管等の部品がそれぞれ収容されている。
【特許文献1】米国特許第5306421号明細書(FIG.1,6)
【特許文献2】米国特許第5171438号明細書(FIG.1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に示す従来の内部濾過式飼育システムは、濾過ゾーンに、循環ポンプ、複数の濾過材、配管等の多数の部品が収容されている。このような飼育システムにおいて、ユーザーが濾過材の交換や、ポンプや配管の保守点検を行う場合には、手を濾過ゾーン内に挿入して、所定の部品を、周辺部品との連携を解除してから、水槽外部に取り出すことになる。このため濾過ゾーン内には、部品の設置スペースの他に、部品の出し入れ操作を行うための作業スペースが必要になり、その分、濾過ゾーンが大きくなってしまい、ひいては飼育システム全体の大型化を来すという問題があった。
【0006】
なお濾過ゾーン内の作業スペースを小さくすると、部品の出し入れ操作が困難になり、保守点検作業等が面倒になるという問題が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、浄化装置や、循環ポンプ等の保守点検を簡単に行える上さらに、濾過ゾーン等の浄化ゾーンの小型コンパクト化を図ることができる水中生物飼育システムおよび水槽用浄化ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を要旨としている。
【0009】
[1] 水槽と、
前記水槽を飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切る仕切壁と、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、
水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備え、
前記循環ポンプおよび少なくとも1つの前記浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、
前記ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニットが構成され、
前記浄化ユニットが、前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に収容されたことを特徴とする水中生物飼育システム。
【0010】
[2] 前記ユニット部品は、前記プロテインスキマーと、前記プロテインスキマーに、気泡を混合した水を送り込むスキマーポンプと、を含む前項1に記載の水中生物飼育システム。
【0011】
[3] 前記搭載フレームは、前記ユニット部品を出し入れ自在に収容するケーシングによって構成される前項1または2に記載の水中生物飼育システム。
【0012】
[4] 前記浄化ユニットが、前記浄化ゾーンの少なくとも1部に適合状態に収容される前項1〜3のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0013】
[5] 前記ユニット部品は、前記濾過器と、前記プロテインスキマーとを含む前項1〜4のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0014】
[6] 前記ユニット部品は、前記濾過ゾーンに配置される全ての部品を含む前項1〜5のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0015】
[7] 前記搭載フレームの外周面に、前記浄化ゾーンから前記水槽の上端部にかけてコード類引出溝が設けられ、
前記水中ポンプの送電コードが前記コード類引出溝に収容されて、前記送電コードが前記浄化ゾーンから前記水槽の外部に引き出される前項1〜6のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【0016】
[8] 仕切壁により飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切られた水槽の前記浄化ゾーンに配置される水槽用浄化ユニットであって、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち少なくとも1つの浄化装置と、を含むユニット部品と、
前記ユニット部品を搭載する搭載フレームと、を備え、
前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に構成されたことを特徴とする水槽用浄化ユニット。
【発明の効果】
【0017】
発明[1]の水中生物飼育システムによれば、浄化装置や循環ポンプ等のユニット部品を搭載フレームに搭載した浄化ユニットを、浄化ゾーンに出し入れ自在に収容しているため、浄化ユニット内のデッドスペースを小さくでき、浄化ユニットおよび浄化ゾーンの小型コンパクト化を図ることができる。さらにユニット部品の保守点検時には、浄化ユニットを浄化ゾーンから抜き出せば、所望の部品を確実に取り出すことができ、保守点検作業も確実に行うことができる。
【0018】
発明[2]の水中生物飼育システムによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0019】
発明[3]の水中生物飼育システムによれば、ケーシングにユニット部品を収容しているため、浄化ユニットの小型コンパクト化をより確実に図ることができる。
【0020】
発明[4]の水中生物飼育システムによれば、浄化ゾーンの小型コンパクト化をより確実に図ることができる。
【0021】
発明[5][6]の水中生物飼育システムによれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0022】
発明[7]の水中生物飼育システムによれば、濾過ユニットに含まれるポンプ用の送電コード等を、水槽外部にスムーズに引き出すことができる。
【0023】
発明[8]の水槽用浄化ユニットによれば、上記と同様に、小型コンパクト化を図ることができるとともに、ユニット部品の保守点検作業も確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1,2はこの発明の実施形態である水中生物飼育システムを示す図である。両図に示すように、この飼育システムは、海水を循環させて濾過する機能を備えており、海洋生物例えば、海水魚等の脊椎動物はもちろん、サンゴ、クラゲ、甲殻類等の無脊椎動物も長期間確実に飼育できるようになっている。
【0025】
この水中生物飼育システムは、水槽(1)を備えている。水槽(1)の後部には、仕切壁(2)が取り付けられている。仕切壁(2)は、垂直に配置されて、水槽(1)の内部を前後に仕切っている。水槽(1)の内部における仕切壁(2)よりも前側の領域によって、飼育ゾーン(11)が構成されるとともに、仕切壁(2)よりも後側の領域によって、浄化ゾーンとしての濾過ゾーン(12)が構成される。
【0026】
図13〜15に示すように、仕切壁(2)の側部上端には、流入口(21)が形成されている。この流入口(21)は、上下に延び、かつ水平方向に複数並列に配置されるスリットによって構成されている。また仕切壁(2)における中間部の上端には、流出口(22)が形成されている。
【0027】
仕切壁(2)の後面側における流入口(21)には、後方に間隔をおいて補助板(25)が設けられている。この補助板(25)は、流入口(21)に対応する領域が切り欠かれて、流入用切欠部(26)が設けられている。なお、仕切壁(2)および補助板(25)間には隙間が形成されており、オーバーフローによって飼育ゾーン(12)から流入口(21)を通過する水は、仕切壁(2)および補助板(25)間の隙間に一時的に貯留されるようになっている。さらにその隙間に貯留された水は、後述する濾過ユニット(3)の濾過室(5)内に導入されるようになっている。
【0028】
一方図1〜10に示すように、水槽(1)の濾過ゾーン(12)には濾過ユニット(3)が収容されている。
【0029】
濾過ユニット(3)は、濾過ゾーン(12)に適合状態に収容されるボックス型のケーシング(4)を備えている。ケーシング(4)は、透明ないし半透明のプラスチック製品によって構成され、外部から内部の構造を視認できるようになっている。本実施形態において、ケーシング(4)は、搭載フレームを構成している。
【0030】
なお本実施形態においては、図5に向かって濾過ユニット(3)の正面側を前面側、裏面側を後面側、左側を左側、右側を右側、上側を上側、下側を下側として説明する。
【0031】
ケーシング(4)における左側半分の上側が、濾過室(5)として構成されるとともに、左側半分の下側が、ポンプ室(8)として構成される。さらに濾過ユニット(3)における右側半分の左側が、水路集約室(6)として構成されるとともに、右側がスキマー室(7)として構成される。
【0032】
ケーシング(4)における濾過室(5)およびポンプ室(8)間には、水平に隔壁(43)が設けられて、その隔壁(43)によって、両室(5)(8)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(43)の左側端部には、通水口(44)が設けられ、この通水口(44)を介して両室(5)(8)が互いに連通されている。
【0033】
ケーシング(4)における濾過室(5)および水路集約室(6)間には、垂直に隔壁(47)が設けられて、その隔壁(47)によって、両室(4)(5)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(47)の下端部には、通水口(48)が設けられ、この通水口(48)を介して、両室(5)(6)が互いに連通されている。
【0034】
さらにケーシング(4)における水路集約室(6)およびスキマー室(7)間には、垂直に隔壁(45)が設けられて、その隔壁(45)によって、両室(6)(7)が仕切られている。なお後述するように、隔壁(45)の下端部には、通水口(46)が設けれ、この通水口(45)によって、両室(6)(7)が互いに連通されている。
【0035】
ケーシング(4)の上端は開放されており、この上端開口部(41)を介して、濾過室(5)、水路集約室(6)およびスキマー室(7)の各上端はそれぞれ上方に開放されている。ケーシング(4)の上端開口部(41)は、ユニット部品を出し入れするための開口部として構成されている。
【0036】
ケーシング(4)の前壁および後壁には、ポンプ室(8)に対応して、開口部(42)が形成されて、ポンプ室(8)が前後方向に開放されている。前後壁開口部(42)は、ユニット部品を出し入れするための開口部として構成されている。
【0037】
またケーシング(4)の前壁における濾過室(5)の上端部が切り欠かれて、流入用切欠部(31)が設けられている。図2,3,7に示すように、流入用切欠部(31)の下縁部には、濾過室(5)の内部から前方にかけて水平に配置される誘導板(35)が設けられるとともに、この誘導板(35)の前端縁には、下方に延びる掛止片(36)が設けられている。
【0038】
図7に示すようにこの掛止片(36)は、ケーシング(4)を水槽(1)の濾過ゾーン(12)に収容した際に、上記仕切壁(2)の補助板(25)における流入用切欠部(26)の下縁部に掛止することによって、ケーシング(4)の誘導板(35)が、仕切壁(2)の流入口(21)と、ケーシング(4)の濾過室(5)との間に架け渡される。これにより、飼育ゾーン(11)から仕切壁(2)の流入口(21)を通過する水が、誘導板(35)上を通って濾過室(5)にスムーズに導かれるようになっている。
【0039】
濾過室(5)は、濾過室(5)の上部に設けられる上部濾過材室(51)と、上部濾過材室(51)の下側に設けられる下部濾過材室(52)と、下部濾過材室(52)および上記ポンプ室(8)間に設けられる出口室(53)とを有している。
【0040】
上部濾過材室(51)および下部濾過材室(52)間には、一対の上部散水板(55)(56)が互いに間隔をおいてそれぞれ水平に設けられている。一対の上部散水板(55)(56)は、濾過室(5)にそれぞれ着脱自在に設置されており、上端開口部(41)を介して出し入れできるようになっている。
【0041】
一対の上部散水板(55)(56)には、多数の散水孔(551)(561)が分散して設けられている。従って、上部濾過材室(51)に導入された水は、散水孔(551)(561)を通って落下し、下部濾過材室(52)に流入されるようになっている。
【0042】
下部濾過材室(52)および出口室(53)間には、下部散水板(57)が水平に設けられている。下部散水板(57)は、濾過室(5)に着脱自在に設置されており、上部散水板(55)(56)を取り外した状態において、上端開口部(41)を介して、出し入れできるようになっている。
【0043】
下部散水板(57)には、多数の散水孔(571)が分散して設けられている。従って、下部濾過材室(52)に導入された水は、散水孔(571)を通って落下し、出口室(53)に流入されるようになっている。
【0044】
出口室(53)に流入された水は、上記の通水口(44)を通って、ポンプ室(8)に導入されるようになっている。
【0045】
本実施形態においては、上部濾過材室(51)内には、ウールや活性炭等の物理濾過用濾過材(図示省略)が収容されて、その濾過材に水を透過させることによって、水内の夾雑物を捕捉できるようになっている。
【0046】
さらに下部濾過材室(52)内には、セラミックリングや、プラスチックバイオボール等の生物濾過用濾過材(図示省略)が収容されて、その濾過材に付着する濾過細菌によって、水内の汚染物質を分解できるようになっている。
【0047】
ここで本実施形態においては、上下濾過材室(51)(52)、出口室(53)、および散水板(55)〜(57)等によって濾過器(50)が構成されている。
【0048】
ケーシング(4)の前壁における水路集約室(6)の上端には、仕切壁(2)の流出口(22)に対応して、流出口(32)が設けられている(図2参照)。この流出口(32)は、濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)内に収容した際に、仕切壁(2)の流出口(22)に臨むようになっている。
【0049】
一方、ポンプ室(8)内には、循環ポンプ(81)と、スキマーポンプ(85)とが設置されている。
【0050】
循環ポンプ(81)は、以下に説明するように、飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)間で水を循環させる。
【0051】
すなわち循環ポンプ(81)の吸引口(82)は、ポンプ室(8)の底面に対向するように配置されて、ポンプ室(8)の水が、循環ポンプ(81)の吸引口(82)から吸い込まれるようになっている。
【0052】
図6〜8に示すように、循環ポンプ(81)の吐出口(83)には、吐出チューブ(832)が連通接続されている。この吐出チューブ(832)は、ポンプ室(8)から水路集約室(6)に導かれて、ケーシング(4)の上記流出口(32)に連通接続されている。従って、循環ポンプ(81)の吐出口(83)から吐出される水は、吐出チューブ(832)を通って、流出口(32)から吐出されるようになっている。またケーシング(4)が濾過ゾーン(12)内に収容された状態では、ケーシング(4)の流出口(32)から吐出される水は、仕切壁(2)の吐出口(22)を介して飼育ゾーン(11)内に戻されるようになっている。さらに濾過ゾーン(12)から飼育ゾーン(11)内に水が送り込まれるのに伴って、水が、飼育ゾーン(11)から仕切壁(2)の流入口(21)を通過して、濾過室(5)に流入されるようになっている。
【0053】
こうして循環ポンプ(81)によって、水が飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)間で循環されるようになっている。
【0054】
またスキマーポンプ(85)は、以下に説明するように、プロテインスキマー(70)に気泡が混合された水を送り込む。
【0055】
すなわちスキマーポンプ(85)の吸引口(86)は、ポンプ室(8)の底面近傍に配置される。さらにスキマーポンプ(85)の吸込口(86)には、エアーチューブ(88)の一端が接続されて、そのエアーチューブ(88)の他端はケーシング(4)の上方(水面上)に配置されている。
【0056】
そしてスキマーポンプ(85)を駆動した際には、ポンプ室(8)内に貯留する水が、スキマーポンプ(85)の吸引口(86)に吸い込まれると同時に、エアーチューブ(88)を介して、外気が吸い込まれる。こうして吸引口(86)に吸い込まれた水および空気は混合され、その気泡混合水が吐出口(87)から吐出されるようになっている。
【0057】
スキマーポンプ(85)の吐出口(87)には、吐出チューブ(89)が連通接続されている。この吐出チューブ(89)は、水路集約室(6)を貫通してスキマー室(7)に導かれて、後述するスキマーシリンダ(71)に連通接続されている。従って、スキマーポンプ(85)の吐出口(87)から吐出された気泡混合水は、吐出チューブ(89)を通ってスキマーシリンダ(71)に導入されるようになっている。
【0058】
なお図3,9に示すように本実施形態において、ケーシング(4)の後壁には、水路集約室(6)に対応して上下方向に延びるコード類引出溝(84)(84)が形成されている。このコード類引出溝(84)(84)は、下端がケーシング(4)の後壁開口部(42)に開放されるとともに、上端がケーシング(4)の上端に開放されている。従って例えば、スキマーポンプ(85)に接続されるエアーチューブ(88)を、コード類引出溝(84)に沿って収容することにより、エアーチューブ(88)を、他の部品に絡み付くような不具合を防止しつつ、ポンプ室(8)から濾過ユニット(3)の外部、つまり水槽(1)の外部にスムーズに引き出すことができる。
【0059】
また本実施形態においては、循環ポンプ(81)およびスキマーポンプ(85)の送電コード(図示省略)も、上記コード類引出溝(84)に沿って収容することにより、これらの送電コードを、他の部品に絡み付くような不具合を防止しつつ、水槽外部にスムーズに引き出すことができる。
【0060】
図5,6,10に示すようにスキマー室(7)には、円筒形のスキマーシリンダ(71)が垂直配置に取り付けられている。このスキマーシリンダ(71)の下端はスキマー室(7)の下壁によって閉塞されるとともに、上端はスキマー室(7)内に開放されている。
【0061】
ケーシング(4)の上端開口部(41)におけるスキマー室(7)に対応する部分には、プロテイン収集ボックス(72)が挿脱自在に嵌め込まれている(図4等参照)。プロテイン収集ボックス(72)は、上端が開放されており、この上端開放部に蓋部材(73)が着脱自在に取り付けられている。
【0062】
さらにプロテイン収集ボックス(72)の底壁には、プロテイン導入パイプ(74)が貫通状態に取り付けられている。このパイプ(74)の上端開口部は、プロテイン収集ボックス(72)の内部に開放されるとともに、下端開口部は、スキマーシリンダ(71)の上端開口部に対向して配置されている。さらにプロテイン導入パイプ(74)の下端には、末広がり状のガイド部材(75)が設けられて、後述するようにスキマーシリンダ(71)から排出される無数の気泡群がガイド部(75)を介して効率良くパイプ(74)内に流入されるようになっている。
【0063】
ここで本実施形態においては、スキマーシリンダ(71)、プロテイン収集ボックス(72)、蓋部材(73)およびプロテイン導入パイプ(74)、ガイド部材(75)によって、プロテインスキマー(70)が構成されている。なお広義には、これらの構成要素に加えて、スキマーポンプ(85)や、スキマー室(7)等も含めて、プロテインスキマー(70)を構成することもある。
【0064】
このプロテインスキマー(70)においては既述したように、スキマーポンプ(85)から吐出チューブ(89)を介してスキマーシリンダ(71)内に気泡が混合された気泡混合水が導入される。
【0065】
ここで吐出チューブ(89)の流出側端部における水の吐出方向は、スキマーシリンダ(71)の内周面に対しほぼ接線方向に設定されている。このため、吐出チューブ(89)からスキマーシリンダ(71)内に導入された気泡混合水は、スキマーシリンダ(71)の内周面に沿って旋回しながら徐々に上昇していく。このように気泡混合水が螺旋状に上昇することによって、気泡と水との接触時間を多く確保することができ、水の内部に夾雑するプロテイン等の異物を、気泡に効率良く付着させることができ、プロテイン等を水中から確実に除去することができる。
【0066】
プロテインが除去された水は、スキマーシリンダ(71)の上端位置からオーバーフローして、スキマー室(7)を流下する。
【0067】
また、プロテインが付着した気泡は、浮力によって上昇するとともに、下側から連続して浮揚する気泡に順次押し上げられていき、スキマーシリンダ(71)の上端から流出された後、さらに上昇して、ガイド部材(75)を介してプロテイン導入パイプ(74)内に導入される。パイプ(74)内に導入されたプロテイン付きの気泡は、パイプ(74)を上昇していき、パイプ(74)の上端からオーバーフローして、プロテイン収集ボックス(72)内に収集される。
【0068】
なお言うまでもなく、プロテイン収集ボックス(72)に収集されたプロテインを廃棄する場合には、プロテイン収集ボックス(72)を、スキマー室(7)から取り外すとともに、蓋部材(73)を取り外して、プロテイン収集ボックス(72)内のプロテインを廃棄すれば良い。
【0069】
一方、プロテインが除去されて、スキマーシリンダ(71)の上端からオーバーフローした水は、以下に説明するように、ポンプ室(8)に戻されて、そこから循環ポンプ(81)によって、飼育ゾーン(11)内に戻される。
【0070】
すなわち図5,9,11に示すように、水路集約室(6)およびスキマー室(7)間の隔壁(45)の下端前部には、通水口(46)が設けられて、スキマー室(7)の下端から水が通水口(46)を通って、水路集約室(6)の後述する第1水路(61)の下端に流入されるようになっている。なお発明の理解を容易にするため、図11においては、水の流れを連続する矢印によって示している(以下の図12においても同じ)。
【0071】
また水路集約室(6)は、複数の仕切部材によって、複数の水路(61)〜(64)に仕切られている。
【0072】
まず水路集約室(6)の前部には、垂直方向に沿って第1水路(61)が設けられている。この第1水路(61)の下端部は、上記したようにスキマー室(7)の下端に、通水口(46)を介して連通接続されている。従ってスキマー室(7)の下端から通水口(46)を介して第1水路(61)の下端に導入された水は、第1水路(61)に沿って上昇するようになっている。
【0073】
第1水路(61)の上端部には、水位調整パイプ(68)が設けられている。この水位調整パイプ(68)は、内パイプが外パイプに対し回転自在に収容された二重パイプ構造を有しており、内外両パイプの各周壁に形成された開口によって流出口(69)が形成されている。そして、内パイプを外パイプに対し回転操作することによって、流出口(69)の開口面積および開口位置を変化させて、水位調整パイプ(68)の流出口(69)から流出される水の流量および水圧を調整して、第1水路(61)内の水圧を調整する。これにより、スキマー室(7)の水位を調整できるようにしている。
【0074】
なお水位調整パイプ(68)は必ずしも上記のように、二重パイプ構造に形成する必要はなく、水位調整可能な構成であれば、どのような構成を採用しても良い。例えば単管の周壁に設けた流出口に、開閉自在にシャッター部材を設けて、そのシャッター部材を開閉することによって、流出口の開口面積等を変化させることにより、流出口から流出される水の流量および水圧を調整して、スキマー室(7)の水位を調整するようにしても良い。
【0075】
水路集約室(6)には、右側の上部に前後方向(奥行き方向)に沿って第2水路(62)が設けられている。この第2水路(62)の前部は、水位調整パイプ(68)の流出口(69)に対応して配置されており、水位調整パイプ(68)の流出口(69)から流出された水が、第2水路(62)の前部に流入されるようになっている。さらに第2水路(62)の前部に流入された水は、第2水路(62)に沿って後方へ移動するようになっている。
【0076】
図6,9,12に示すように、水路集約室(6)には、後部右側に垂直方向に沿って第3水路(63)が設けられている。この第3水路(63)の上端右側が、通水口(65)を介して上記第2水路(62)の後端に連通接続されており、第2水路(62)の後端から流出された水が、通水口(65)を介して第3水路(63)に流入されるようになっている。
【0077】
第3水路(63)の上壁には、ヒータ差込孔(631)が形成されるとともに、このヒータ差込孔(631)が、ケーシング(4)の上端開口部(41)を介して上方に開放されている。従ってユーザーは必要に応じて、ヒータ差込孔(631)を介して、第3水路(63)内にヒータを設置できるようになっている。
【0078】
水路集約室(6)には、後部左端に垂直方向に沿って第4水路(64)が設けられている。この第4水路(64)の上端が、通水口(66)を介して上記第3水路(63)の上端左側に連通接続されている。従って第3水路(63)に流入された水は、通水口(66)を介して第4水路(64)に流入して、第4水路(64)に沿って流下するようになっている。
【0079】
なお第3水路(63)は、他の水路に比べて容量が多く形成されるとともに、流入口(65)および流出口(66)が共に上端部に形成されている。これにより第3水路(63)に流入された水は、ゆっくりと循環しながら移動して流出されるようになっている。従って第3水路(63)に上記したようにヒータを設置した場合には、そのヒータによって第3水路(63)の水を十分に加熱することができる。
【0080】
水路集約室(6)における第4水路(64)と、濾過室(5)の出口室(53)との間に設けられる隔壁(47)の下端には、通水口(48)が設けられており、この通水口(48)を介して、第4水路(64)が濾過室(5)における出口室(53)の右側端部に連通接続されている。従って第4水路(64)の下端から流出された水が、通水口(48)を介して出口室(53)に流入されるようになっている。
【0081】
なお出口室(53)に流入された水は既述したように、ポンプ室(8)に導入されて、循環ポンプ(81)によって、飼育ゾーン(11)に送り出されるようになっている(図5,6参照)。
【0082】
また図2〜4に示すように、濾過室(5)および水路集約室(6)間の隔壁(47)における上端部には、開口(49)が設けられている。この開口(49)は、上部濾過材室(51)内の水位が過度に上昇した際に、上部濾過材室(51)内の水が開口(49)からオーバーフローして直接、ポンプ室(8)内に導入されて、飼育ゾーン(11)に送り返されるようになっている。
【0083】
さらにこの開口(49)には、ハンドル(図示省略)を着脱自在に係合できるようになっている。従って濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)から引き出す際には、上記ハンドルを開口(49)に係合して取り付けて、そのハンドルを介して濾過ユニット(3)全体を引き上げる。
【0084】
以上のように、ケーシング(4)に、濾過に関連した部品すなわち、濾過器(50)、各種水路、各種チューブ、プロテインスキマー(70)、ポンプ(81)(85)等が集約して設けられて、濾過ユニット(3)が構成されている。そしてこの濾過ユニット(3)が、水槽(1)の濾過ゾーン(11)に出し入れ自在に収容されて、本実施形態の水中生物飼育システムが構成される。
【0085】
なお、濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容した状態では、濾過ユニット(3)における吐出チューブ(832)の流出側端部が、仕切壁(2)の流出口(22)に位置的に対応してそれぞれ配置される。そして図1に示すように、吐出チューブ(832)の流出側端部に、仕切壁(2)の流出口(22)を介して吐出ノズル(221)が嵌合される。
【0086】
さらに濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容した状態では、濾過ユニット(3)が濾過ゾーン(12)に適合することにより、濾過ゾーン(12)の内部における濾過ユニット(3)の外周に余分なスペースが形成されないようになっている。
【0087】
また本実施形態において、水槽(1)の上端には通常、蓋部材が設けられておらず、飼育ゾーン(11)および濾過ゾーン(12)の上方が開放されている。従って本実施形態の水中生物飼育システムでは、吊下げ式照明装置を不具合なく採用することができる。もっとも本発明においては、水槽(1)の上端を開閉自在な蓋部材を設けるようにしても良い。
【0088】
以上の構成の水中生物飼育システムにおいて、水(海水)をはった水槽(1)の濾過ゾーン(12)に濾過ユニット(3)を収容して、循環ポンプ(81)およびスキマーポンプ(85)を駆動すると、循環ポンプ(81)によってポンプ室(8)の水が、吐出チューブ(832)を介して飼育ゾーン(11)内に送り出される。
【0089】
その一方、飼育ゾーン(11)の水が、仕切壁(2)の流入口(21)を通って濾過ユニット(3)の流入用切欠部(31)をオーバーフローすることにより、上部濾過材室(51)内に流入される。上部濾過材室(51)に流入された水は、上部濾過材室(51)内に配置された物理濾過用濾過材(図示省略)を透過することによって、物理濾過された後、上部散水板(55)(56)の散水孔(551)(561)から滴下されて、下部濾過材室(52)に流入される。下部濾過材室(52)に流入された水は、下部濾過材室(52)内に配置された生物濾過用濾過材(図示省略)を透過することによって、生物濾過された後、下部散水板(57)から滴下されて、出口室(53)に流入される。出口室(53)に流入された水は、通水口(44)を通ってポンプ室(8)に流入される。
【0090】
なお本実施形態においては、ポンプ室(8)の通水口(44)に対応する位置に、スポンジ等の連続気泡軟質フォームを配置しても良い。この場合、通水口(44)から流下する水をスポンジに透過させて、ポンプ室(8)内に緩やかに導入することによって、水の落下音が発生するのを防止することができる。さらに水を上記スポンジに透過させることによって、物理濾過を行うことができ、より一層濾過性能を向上させることができる。
【0091】
ポンプ室(8)に流入された水は、循環ポンプ(81)に吸い込まれて、吐出チューブ(832)を介して飼育ゾーン(11)に戻される。
【0092】
またポンプ室(8)に流入された水のうち一部の水は、スキマーポンプ(85)に吸い込まれて、気泡が混合されて、吐出チューブ(89)を介してスキマーシリンダ(71)の送り込まれる。
【0093】
スキマーシリンダ(71)に導入された気泡混合水は上記したように、旋回しながら上昇していき、その間に水内に夾雑したプロテイン等の異物が気泡に付着して、水内からプロテインが除去される。プロテインが除去された水は、スキマーシリンダ(71)からオーバーフローして、スキマー室(7)に流入される。またプロテインが付着した無数の気泡は上昇していき、プロテイン導入パイプ(74)を通って、プロテイン収集ボックス(72)内に収集される。
【0094】
スキマー室(7)に流入された水は既述したように、水路集約室(6)の各水路(61)〜(64)を通って、濾過室(5)の出口室(53)に流入される。さらに出口室(53)に流入された水は、上記と同様に、ポンプ室(8)に流入されて、飼育ゾーン(12)に戻される。
【0095】
以上のように、本実施形態の水中生物飼育システムによれば、ケーシング(4)に、濾過に関連した部品例えば、濾過器(50)、各種水路、各種チューブ、プロテインスキマー(70)、ポンプ(81)(85)等を集約して組み込んで、濾過ユニット(3)を構成し、その濾過ユニット(3)を水槽(1)の濾過ゾーン(12)に収容している。このため、ケーシング(4)内のデッドスペースを可及的に小さくすることができ、濾過ユニット(3)および濾過ゾーン(12)の小型コンパクト化、ひいては飼育システム全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0096】
また濾過ユニット(3)は、水槽(1)の濾過ゾーン(12)に対し出し入れ自在に構成しているため、ユニット部品(機能部品)例えば、循環ポンプ(81)の保守点検を行うような場合には、濾過ユニット(3)を水槽(1)から取り出してから、その濾過ユニット(3)から循環ポンプ(81)等の部品を取り外すことにより、所定の部品の保守点検を効率良く確実に行うことができる。
【0097】
特に本実施形態においては、濾過ゾーン(12)に収容される全ての部品をケーシング(4)に一括して組み込んで、濾過ユニット(3)を構成しているため、いずれの部品の保守点検を行う場合であっても、濾過ユニット(3)を取り出すだけで確実に対処することができ、保守点検作業をより一層効率良く正確に行うことができる。
【0098】
なお保守点検後は、循環ポンプ(81)等の部品を濾過ユニット(3)に組み込んでから、その濾過ユニット(3)を濾過ゾーン(12)に収容すれば良い。
【0099】
本実施形態の濾過ユニット(3)は、濾過材に水を透過して濾過する透過式の濾過器(50)と、水中のプロテインを気泡に付着させて気泡と共に除去するプロテインスキマー(70)との2種類の濾過装置(浄化装置)を組み込んでいるため、濾過性能をより一層向上させることができる。特にプロテインスキマー(70)は、プロテイン等の夾雑物を、水の循環経路内に滞留させることなく、連続的に外部に取り除くことができるため、濾過能力を格段に向上させることができる。従って、海水魚はもちろん、水質条件が極めて厳しいサンゴやクラゲ等の無脊椎動物に対しても、清浄な海水で満たされた快適な飼育環境を提供することができ、これらの海洋生物を長期間不具合なく簡単に飼育することができる。
【0100】
さらに本実施形態においては、ケーシング(4)の濾過材室(51)(52)に濾過材を収容して、濾過ユニット(3)を構成するようにしているため、濾過材の交換時に、水槽内が汚染されるような不具合を確実に防止することができる。
【0101】
すなわち従来の飼育システムのように、濾過ゾーンに濾過材を直接収容する場合には、交換時に濾過材を取り出した際に、濾過材に取り込まれたペースト状の異物や雑菌等が水槽内に垂れ落ちて、水槽内の水が汚染されてしまい、水中生物に多大な悪影響を及ぼす恐れがある。
【0102】
これに対し、本実施形態では、濾過材がケーシング(4)に収容されて、濾過ユニット(3)が構成されているため、濾過材交換時に、濾過ユニット(3)を水槽(1)から取り出したとしても、濾過材から垂れ落ちる異物や雑菌等は、ケーシング(4)の内部で受け止めることができる。このため異物や雑菌等が、ケーシング(4)の外部、つまり水槽(1)の内部に異物や雑菌が入り込むのを確実に防止することができる。従って、濾過材交換時に、水槽内が汚染されるような不具合を確実に防止することができる。
【0103】
また本実施形態においては、プロテインスキマー(70)を通過させた後の水を、複数の水路(61)〜(64)等によって構成される複雑で長い排水経路に通過させて、飼育ゾーン(11)に戻すようにしているため仮に、プロテインスキマー(70)を通過させた後の水に、気泡(プロテイン)が混入したとしても、上記の複雑で長い排水経路を通過させることにより、気泡が浮力によって上方に浮揚して、水面から放出される。従って、気泡(プロテイン等の不純物)が混入した水が、飼育ゾーン(11)に流入されるのを確実に防止でき、水が汚染するのをより一層確実に防止することができる。
【0104】
なお上記実施形態においては、浄化装置として、透過式の濾過器(50)およびプロテインスキマー(70)を用いているが、本発明においては、浄化装置として、水に紫外線を照射して殺菌することにより、水中の雑菌等の細菌を消滅させる紫外線照射装置を用いるようにしても良い。もっとも、本発明において、透過式濾過器、プロテインスキマーおよび紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置を含めるようにすれば良い。
【0105】
また本発明において、濾過ゾーン(浄化ゾーン)に配置される全ての部品を必ずしもユニット部品に構成する必要はない。例えば濾過ゾーンに複数の浄化装置を配置する場合、濾過ユニット(浄化ユニット)に、濾過ゾーンに配置される浄化装置のうち、一部の浄化装置のみを含めるような構成も可能である。例えば濾過ユニットにプロテインスキマーを含めて、透過式濾過器は、濾過ユニットとは別にして、濾過ゾーンに配置するようにしても良い。この場合、プロテインスキマー用のスキマーポンプおよび水循環用の循環ポンプの双方を濾過ユニットに含めるようにしても良いし、循環ポンプのみを濾過ユニットに含めるようにしても良い。
【0106】
また上記実施形態においては、気泡を水に混合してスキマーシリンダに送り込むスキマーポンプを使用するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ウッドストーン等の気泡発生手段を、スキマーシリンダの内部に配置して、そのスキマーシリンダに水を投入するようにした、いわゆるウッドストーンタイプのプロテインスキマーを採用するようにしても良い。
【0107】
また上記実施形態においては、1つの水槽を仕切壁によって、飼育ゾーンと濾過ゾーン(浄化ゾーン)とに仕切るようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、水槽本体に後付けで濾過ゾーン用のボックスを取り付けて、水槽本体を飼育ゾーンとし、濾過ゾーン用ボックス内を濾過ゾーンとして構成するようにしても良い。さらに濾過ゾーン用ボックスを取り付けて濾過ゾーンとして構成する場合であっても、上記実施形態と同様に、濾過ゾーンと、濾過ユニットとは別部材によって構成されるものである。
【0108】
また上記実施形態においては、本発明を海洋生物を飼育する飼育システムに適用した場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、淡水魚等の淡水中に生息する水中生物を飼育する飼育システムにも適用することができる。
【0109】
ところで、上記実施形態の濾過ユニット(3)においては、冷却装置を連結することも可能である。すなわち循環ポンプ(81)の吐出口(83)に連結したチューブを、濾過ユニット(3)の外部に引き出して、そのチューブの引出端部を冷却装置の流入口に接続するとともに、冷却装置の流出口に接続したチューブを濾過ユニット(3)の内部に引き込んで、そのチューブの引込端部を濾過ユニット(3)の上側流出口(32)に連結するようにすれば良い。これにより、循環ポンプ(81)によって吐出された一部の水は、冷却装置を通って冷却された後、飼育ゾーン(11)に送り込まれるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明の水中生物飼育システムは、観賞魚等を飼育する設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】この発明の実施形態である水中生物飼育システムを示す斜視図である。
【図2】実施形態の水中生物飼育システムにおいて濾過ユニットを抜き取った状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態における水中生物飼育システムの濾過ユニットを示す斜視図である。
【図4】実施形態の濾過ユニットにおいて各部品を取り外した状態で示す斜視図である。
【図5】実施形態の濾過ユニットにおける前部の正面断面図である。
【図6】実施形態の濾過ユニットにおける後部の正面断面図である。
【図7】実施形態の濾過ユニットにおける濾過室部分を仕切壁に取り付けた状態で示す側面断面図であって、図5のD1−D1断面に相当する断面図である。
【図8】実施形態の濾過ユニットにおける水路集約室左側部分の側面断面図であって、図5のD2−D2断面に相当する断面図である。
【図9】実施形態の濾過ユニットにおける水路集約室右側部分の側面断面であって、図5のD3−D3線断面に相当する断面図である。
【図10】実施形態の濾過ユニットにおけるスキマー室部分の側面断面図であって、図5のD4−D4線断面に相当する断面図である。
【図11】実施形態の濾過ユニットにおけるプロテイン除去後の排水経路の前半を示す斜視図である。
【図12】実施形態の濾過ユニットにおけるプロテイン除去後の排水経路の後半を示す斜視図である。
【図13】実施形態の水中生物飼育システムに適用された仕切壁を示す正面側の斜視図である。
【図14】実施形態の仕切壁を示す裏面側の斜視図である。
【図15A】実施形態の仕切壁を示す正面図である。
【図15B】実施形態の仕切壁を示す裏面図である。
【図15C】実施形態の仕切壁を示す側面図である。
【符号の説明】
【0112】
1…水槽
11…飼育ゾーン
12…濾過ゾーン(浄化ゾーン)
2…仕切壁
3…濾過ユニット(浄化ユニット)
4…ケーシング(搭載フレーム)
50…濾過器
70…プロテインスキマー
81…循環ポンプ
84…コード類引出溝
85…スキマーポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽を飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切る仕切壁と、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、
水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備え、
前記循環ポンプおよび少なくとも1つの前記浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、
前記ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニットが構成され、
前記浄化ユニットが、前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に収容されたことを特徴とする水中生物飼育システム。
【請求項2】
前記ユニット部品は、前記プロテインスキマーと、前記プロテインスキマーに、気泡を混合した水を送り込むスキマーポンプと、を含む請求項1に記載の水中生物飼育システム。
【請求項3】
前記搭載フレームは、前記ユニット部品を出し入れ自在に収容するケーシングによって構成される請求項1または2に記載の水中生物飼育システム。
【請求項4】
前記浄化ユニットが、前記浄化ゾーンの少なくとも1部に適合状態に収容される請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項5】
前記ユニット部品は、前記濾過器と、前記プロテインスキマーとを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項6】
前記ユニット部品は、前記濾過ゾーンに配置される全ての部品を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項7】
前記搭載フレームの外周面に、前記浄化ゾーンから前記水槽の上端部にかけてコード類引出溝が設けられ、
前記水中ポンプの送電コードが前記コード類引出溝に収容されて、前記送電コードが前記浄化ゾーンから前記水槽の外部に引き出される請求項1〜6のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項8】
仕切壁により飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切られた水槽の前記浄化ゾーンに配置される水槽用浄化ユニットであって、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち少なくとも1つの浄化装置と、を含むユニット部品と、
前記ユニット部品を搭載する搭載フレームと、を備え、
前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に構成されたことを特徴とする水槽用浄化ユニット。
【請求項1】
水槽と、
前記水槽を飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切る仕切壁と、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、
水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち1つ以上の浄化装置と、を備え、
前記循環ポンプおよび少なくとも1つの前記浄化装置によってユニット部品が構成されるとともに、
前記ユニット部品が搭載フレームに搭載されて浄化ユニットが構成され、
前記浄化ユニットが、前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に収容されたことを特徴とする水中生物飼育システム。
【請求項2】
前記ユニット部品は、前記プロテインスキマーと、前記プロテインスキマーに、気泡を混合した水を送り込むスキマーポンプと、を含む請求項1に記載の水中生物飼育システム。
【請求項3】
前記搭載フレームは、前記ユニット部品を出し入れ自在に収容するケーシングによって構成される請求項1または2に記載の水中生物飼育システム。
【請求項4】
前記浄化ユニットが、前記浄化ゾーンの少なくとも1部に適合状態に収容される請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項5】
前記ユニット部品は、前記濾過器と、前記プロテインスキマーとを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項6】
前記ユニット部品は、前記濾過ゾーンに配置される全ての部品を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項7】
前記搭載フレームの外周面に、前記浄化ゾーンから前記水槽の上端部にかけてコード類引出溝が設けられ、
前記水中ポンプの送電コードが前記コード類引出溝に収容されて、前記送電コードが前記浄化ゾーンから前記水槽の外部に引き出される請求項1〜6のいずれか1項に記載の水中生物飼育システム。
【請求項8】
仕切壁により飼育ゾーンおよび浄化ゾーンに仕切られた水槽の前記浄化ゾーンに配置される水槽用浄化ユニットであって、
前記飼育ゾーンおよび前記浄化ゾーン間で水を循環させる循環ポンプと、水を濾過材に透過させて濾過する濾過器、水中に含まれるプロテインを気泡に付着させて除去するプロテインスキマー、および水に紫外線を照射して殺菌を行う紫外線照射装置のうち少なくとも1つの浄化装置と、を含むユニット部品と、
前記ユニット部品を搭載する搭載フレームと、を備え、
前記搭載フレームに前記ユニット部品を搭載した状態で、前記浄化ゾーンに対し出し入れ自在に構成されたことを特徴とする水槽用浄化ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【公開番号】特開2009−278894(P2009−278894A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132670(P2008−132670)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(393008418)株式会社冨永樹脂工業所 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(393008418)株式会社冨永樹脂工業所 (7)
【Fターム(参考)】
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