説明

水処理システム

【課題】水質改善を行う湖沼や河川全体に、ブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤を行き渡らせて確実に水質改善を行うことができる水処理システムを提供すること。
【解決手段】水流の上流給入側3付近と下流排出側5付近に、バブルカーテンを形成する。バブルカーテンは、凝集剤供給装置から送給された凝集沈降剤7とナノバブル発生装置から供給されたナノ気泡8とを、エジェクタ13で混合した状態で水中内に噴射して形成する。凝集沈降剤7は、苔虫類の化石であるブライオゾーアを主体として形成し、湖沼1の底部に溜まっているヘドロ中の重金属や切削油、あるいは廃油等を吸着することによってphを中性化して沈降する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質汚濁された湖沼や河川又は養殖場、あるいは下水道又は浄水場等の水中内の水質改善を行う水処理システムに関し、特に、苔虫類の化石であるブライオゾーアを利用して水質改善を行う水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水質汚濁は、湖沼や河川に生活排水が流出することにより発生し、窒素、りん酸などの冨栄養化物が腐敗時に水中の酸素を大量に消化する。そのため、ヘドロの主体である嫌気性菌が繁殖し、悪臭を放ちメタンガスを発生する。また、その冨栄養化浮遊物は、プランクトンの異常発生を招いて赤潮や青潮の発生原因となり、干潟の死滅や磯焼け現象などを起こして著しく生態系を狂わしている。
【0003】
近年、苔虫の化石であるブライオゾーアが発見され、この主成分である炭酸カルシウムが、通常の低圧高温化の石灰石よりはるかに活性であることから、土壌改良や水質改善に極めて有効であることが知られてきた。特に、ブライオゾーアは、浮遊する冨栄養化物を吸着して沈降させ、光合成菌活性化させる。さらに、殺菌効果が嫌気性菌を死滅させ、好気性菌を活性化させることによってメタンガスの発生を止める。そして、酸素を発生させてヘドロなどを分解させることによって脱臭効果を有することから悪臭をなくすこととなる。
【0004】
従来、このブライオゾーアを利用したものが特許文献に提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1においては、ブライオゾーアを粉体加工して凝集沈降剤とする技術が開示され、河川・湖沼及び海水の水質浄化、工事廃水・工場廃水・濁水の浄化、汚染処理等に有効に利用されている。つまり、ブライオゾーアは、炭酸カルシウムの作用より、水中で方解石化し、ヘドロに含まれる重金属や切削油あるいはインクや亜硫酸ガス等を物理的に吸着し、吸着することによってphを中性化して沈降固定する。これによって水質を浄化することができる。
【0006】
また、特許文献2においては、水中内にブライオゾーアを攪拌して水を浄化する浄水システムが提供されている。これによると、図9に示すように、この浄水システム80は、湖沼1からの汚濁水を攪拌槽82に取り組む取り込み手段81と、汚濁水に凝集剤を投入して攪拌する攪拌装置83と、攪拌装置83で攪拌した汚濁水を取り込み、凝集剤の働きにより浄水とフロックを生成する反応槽84と、反応槽84において生成された浄水とフロックを自然界に放出する放出手段85を備えている。攪拌装置83内には上下方向の回転軸831を備え、その回転軸831に、抜き穴832を有する平板状の上羽根833と、上昇水流を起こす下羽根834とを一体的に設けている。
【0007】
これによってブライオゾーアを粉体加工した凝集剤は、液全体に分散されて凝集材の性能を充分に発揮することができる。
【特許文献1】特許第3013249号公報(4〜7頁)
【特許文献2】特開2003−38946公報(3〜4頁、図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に示されている従来の浄水システムは、河川や湖沼1から汚濁水を、一旦、攪拌装置83に取り込んで、凝集剤を充分に含ませた後、攪拌装置83から反応槽84へと送り込んで、浄水とフロックに分離して再び河川や湖沼1に放出している。
【0009】
一方、凝集剤を含んだフロックは、池や沼の底にあるヘドロの上に堆積・浸透することによって、フロックに含まれる炭酸カルシウムが酸素を発生することや、フロックがヘドロ中の嫌気性菌を減少させることで水質改善や土壌改善を促すこととなる。
【0010】
上記の特許文献2に示す浄水システム80では、放出されたフロックは放出部位付近に溜まることとなって、その周りの汚泥やヘドロは浄化されるものの、河川・湖沼1全体には行き渡りにくい。そのため、河川や湖沼1の全体的な浄化には課題が残されていた。また、汚濁水を河川や湖沼1から取り込むため、装置そのものが大型化して、その設置スペースも広く取ることとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、凝集沈降剤、特にブライオゾーア含んだ凝集沈降剤を確実に攪拌させて、仕切られた河川や湖沼全体の水質改善を行うとともに、設置スペースを縮小できる水処理システムを提供することを目的とするものであり、この目的を達成するために、以下のように構成するものである。すなわち、本発明の水処理システムは、
請求項1記載の発明では、凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明では、前記凝集沈降剤が、粉体加工されたブライオゾーアを含んでいることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明では、前記水浄化処理装置が、湖沼の水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明では、前記水浄化処理装置が、河川の水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられ、前記水浄化処理装置の一部が、橋桁に止着されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明では、前記水浄化処理装置が、養殖場における潮の干満に対する水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の発明では、凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、下水処理場における最終処理槽の給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記最終処理槽内の給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とするものである。
【0017】
請求項7記載の発明では、凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、浄水場の取水口における給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記取水口の給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とするものである。
【0018】
請求項8記載の発明では、請求項6乃至請求項7記載の凝集沈降剤が、粉体加工されたブライオゾーアを含んでいることを特徴としている。
【0019】
請求項9記載の発明では、前記流体噴射装置が、ナノバブルを形成可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、凝集沈降剤を、水流の給入側付近と排出側付近に設置した流体噴射装置で流体を噴射することによって、水流の給入側付近と排出側付近の水中内に、バブルカーテンを形成する。これによって、水質改善しようとする範囲内を塞ぐとともに、前記凝集沈降剤を両バブルカーテン内において十分に行き渡るように攪拌する。つまり、凝集沈降剤を水中内に供給して泡立たせることによって、バブルカーテンが形成される。このバブルカーテンを給入側と排出側の水中内に形成すれば、大きな器が形成されることとなり、器内で凝集沈降剤は常に上流から流れてくる水流に乗って給入側から排出側に向かって移動することとなる。水中内で移動する凝集沈降剤は、水中の底に沈殿するヘドロの重金属や切削油、又はインクや亜硫酸ガス等の汚泥物質を塊にして分離させる。これによって水質を改善することができる。
【0021】
しかも、水流の給入側付近と排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することによって、水流からの水を陸上に取り込んで再び水流内に放出するための配管部材や装置を必要としないことから、設備スペースを広く取ることはなく、また設備自体もコンパクトに構成できる。
【0022】
なお、このバブルカーテンは、水流の給入側付近又は排出側付近の水中内のいずれか一方だけに形成しても、凝集沈降材による水浄化処理が行われ、環境汚染を改善することができる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の凝集沈降剤が、苔虫の化石である粉体加工されたブライオゾーアを含んでいることから、ブライオゾーアを形成する炭酸カルシウムが、水中の底に沈殿するヘドロの重金属や切削油、又はインクや亜硫酸ガス等と吸着して中性化させることとなる。また、ブライオゾーアは、浮遊する冨栄養化物を吸着して沈降させ、光合成菌活性化させる。さらに、殺菌効果が嫌気性菌を死滅させ、好気性菌を活性化させることによってメタンガスの発生を止める。そして、酸素を発生させてヘドロなどを分解させることによって脱臭効果を有することから悪臭をなくすこととなる。これによって、水中内に沈殿していたヘドロは、非汚泥化されて浄化されることとなる。つまり、ブライオゾーア自体が、苔虫の化石で無機物であることから、副作用を発生することなく汚染されていた水中内が浄化される。これによって、水中内で生活している動植物は活性化されることとなる。従って、従来から問題視されていた水質による環境汚染が、大掛かりな装置を使用することなく改善され、環境改善として大いに役立つこととなる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の水浄化処理装置を、湖沼の給入側付近と排出側付近に設置して、湖沼の給入側付近と排出側付近の水中にバブルカーテンを形成する。これによって汚染された湖沼の周縁や底に、凝集沈降剤又はブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤が行き渡ることとなり、湖沼が浄化される。従って、湖沼内では、例えば、多くの動植物が生活するようになり、自然環境の湖沼に復帰することができる。
【0025】
なお、このバブルカーテンは、湖沼の水流の給入側付近又は排出側付近の水中内のいずれか一方だけに形成しても、凝集沈降剤又はブライオゾーアによる水浄化処理が行われ、環境汚染を改善することができる。さらに、この河川や内湾・内海などの「閉鎖性水域」では、水の交換が少なく汚泥物質が蓄積しやすい。そのため、例えば、水中内に配置する水中ポンプを併用して行うようにすれば、水流の循環を効率的に行うことができる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の水浄化処理装置を、河川の給入側付近と排出側付近に設置する。つまり、水質改善する範囲内における河川の上流側の適宜な場所(給入側付近)と、下流側の適宜な場所(排出側付近)に水浄化処理装置を設置して、給入側と排出側の水中内にそれぞれバブルカーテンを発生させる。これによって、河川の上流側の給入側と下流側の排出側との範囲内の底は、凝集沈降剤又はブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤が行き渡って浄化される。そのため、汚染されていた河川に魚が戻り、自然状態を再現することができる。
【0027】
なお、このバブルカーテンは、河川の水流の給入側付近又は排出側付近の水中内のいずれか一方だけに形成しても、凝集沈降剤又はブライオゾーアによる水浄化処理が行われ、環境汚染を改善することができる。
【0028】
また、橋を利用することによって設備の簡素化を図ることができる。例えば、水中内に凝集沈降剤を供給するためのパイプや、空気や水を噴射するためのパイプ等を橋桁に止着すれば、新たな設備を製作することなく水浄化処理装置を設置できることから、設備費用にかかるコストを低減して、水質による環境汚染の改善化を図ることができる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、養殖場(例えば、海辺付近の養殖場)においては、通常、養殖される養殖物は網の枠で囲まれていて、潮の干満によって流れが変わる。その潮の流れの上流側(給入側付近)と下流側(排出側付近)に水浄化処理装置を設置する。水浄化処理装置が設置された給入側付近と排出側付近の水中内に凝集沈降剤又はブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤を噴きつけ、バブルカーテンを発生させる。網の枠で囲まれていた養殖場は凝集沈降剤又はブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤が行き渡ることによって浄化されることから、養殖されている養殖物が活性化されて品質の高い養殖物が生産される。
【0030】
なお、このバブルカーテンは、養殖場における潮の干満による潮の流れの給入側付近又は排出側付近の水中内のいずれか一方だけに形成しても、凝集沈降剤又はブライオゾーアによる水浄化処理が行われ、環境汚染を改善することができる。
【0031】
請求項6又は8記載の発明によれば、水浄化処理装置を下水道の最終処理槽付近に設置して、最終処理槽の給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成する。下水道処理槽の最終処理槽では、前処理槽である反応タンクでできた活性汚泥を沈めてあることから、バブルカーテンにより放出された凝集沈降剤、特にブライオゾーア主体の凝集沈降剤が浮遊汚濁を吸着させ急速沈降するため、上澄みされた水は、短時間で浄化され、処理時間を大幅に短縮することができ、著しい処理効率を達成することができる。そして消毒されて河川等に放流される。
【0032】
請求項7又は8記載の発明によれば、水処理装置を、浄水場の取水口付近に設置するとともに、取水口の給入側付近又は排出口付近の水中内にバブルカーテンを形成する。
【0033】
通常、浄水場では、取水口から取り入れた水は、取水場を通って浄水場内に流入され、濁りを沈殿させる工程や、ろ過工程を経て各家庭内に送られる。しかし、取水口で、凝集沈降剤又はブライオゾーアを主体とした凝集沈降剤をバブルカーテン化することによって、取水口に流入された水は、取水口で汚泥物が中和される。特に、ブライオゾーアは、殺菌効果と光合成菌を活性させる効果を有していることから、消毒に用いる塩素使用量を大幅に軽減して脱臭効果によって塩素臭を軽減し、浄水場の処理効率を向上することができる。
【0034】
請求項9記載の発明によれば、バブルカーテンを、ナノバブルで形成することによって、バブルカーテンを形成する気泡を絶やさずに多量の泡を発生させることができる。しかもナノバブルは長期間バブル状に形成できることから、長期間、一対のバブルカーテン内に凝集沈降剤を行き渡らせることができ、水質浄化を有効に行なうことが可能となる。なお、ナノバブルを形成する手段としては、従来からの方法や装置(例えば、特開2003−334548公報)を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、本発明のブライオゾーアによる水処理システムの一形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
第1の形態によるブライオゾーアによる水処理システムは、図1に示すように、湖沼1における、水流の給入側3付近と排出側5付近に、それぞれ水浄化処理装置10・10を設置することによって行う。
【0037】
水浄化処理装置10は、ブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤7を水中内に供給する凝集沈降剤供給装置20と、供給された凝集沈降剤7にエア8を噴き付けるエア噴射装置30とを備えて構成されている。凝集沈降剤供給装置20に接続された供給パイプ21とエア噴射装置(例えば、コンプレッサ)30に接続された供給パイプ31とは、図2に示すように、それぞれエジェクタ13に接続され、エジェクタ13で混合されたあと、それぞれのパイプ15によって水流の給入側3付近と排出側5付近の水中内にそれぞれ放出される。
【0038】
エジェクタ13は、一般的のものを使用するものであり、例えば、図2に示すように、駆動流供給口131に配置されたノズル132から供給される駆動流(エア)8と、二次流供給口134から供給される二次流(凝集沈降剤)7とを混合する混合室133を有して形成されている。混合室133には平行部133aと平行部133aから徐々に拡径するディフュザ部133bとが形成され、駆動流8の噴出によって混合室133に生じる負圧と駆動流8の粘性とによって、二次流7が駆動流8とともに混合室133内に流入することとなる。
【0039】
凝集沈降剤7は、特許第30103246号に示されているように、採掘したブライオゾーア化石を乾燥炉において100℃で水分調整し乾燥して粉体化し、これを1mmのメッシュフィルタとバキュームで選り分けることによって粉体形成する。そして粉体加工されたトップ粒度1mm以下のブライオゾーア化石に無機中性凝集剤を、汚染状態の割合に応じて(通常、約9:1の割合)混合して形成する。
【0040】
凝集沈降剤供給装置20は、凝集沈降剤7の粉体を定量送給できるように構成すればよい。例えば、一形態としては、図3に示すように、凝集沈降剤7を充填するホッパ22と、ホッパ22内を挿通するとともに凝集沈降剤7を送給するオーガスクリュー23と、オーガスクリュー23の一端に配置されるとともにオーガスクリュー23を回転駆動するモータ24とを備えている。モータ24は、水流の流れの速度を常時感知する図示しない制御装置によってその出力が指令され、凝集沈降剤7の供給量を調整する。オーガスクリュー23にはその外周面に螺旋羽根25が形成され、さらにオーガスクリュー23の先端には前述の供給パイプ21が接続されている。そして、オーガスクリュー23の回転により、螺旋羽根25上に移動された凝集沈降剤7がエジェクタ13の二次流供給口134に達し、パイプ15を通って水流の給入側3付近及び排出側5付近の水中内に送給される。
【0041】
エア噴射装置30は、ただ単にコンプレッサを設置して、空気を送給するようにしてもよく、また、真空ポンプを使用して噴射するように構成してもよく、さらには、マイクロバブル発生装置あるいは特開2003−334548公報に記載されているナノバブル発生装置を利用して発生した気泡を送給するようにしてもよい。いずれも、エア噴射装置30に接続した供給パイプ31にエジェクタ13を接続して、凝集沈降剤供給装置20から供給された凝集沈降剤7と混合させた上で水中内に噴き出すようにする。
【0042】
勿論、凝集沈降剤供給装置20から接続された供給パイプ21と、エア噴射装置30から接続された供給パイプ31とをエジェクタ13で混合することなく、それぞれ別々に、水流の給入側3付近と排出側5付近に配管して、バブルカーテンを形成するようにしてもよい。
【0043】
ナノバブル発生装置は、水の電気分解を行うとともに超音波発生装置を作用することにより、ナノバブルを発生させる部屋を有し、蒸留水を流入して一部を分解ガス化する工程とその液体中で超音波を印加する工程を含んで構成されている。そして、このように発生したナノバブルは、水中で表面張力により数十気圧となり、この気泡が崩壊するときには数十気圧の空気をジェットとして生じることができる。また、気泡の表面は活性が高く、100nm程度の気泡は通常観測される数mm程度の気泡に比べて同じ体積に対して表面積が数万倍大きく洗浄速度が大きいことが知られている。
【0044】
このナノバブル発生装置から供給パイプ31を接続してエジェクタ13の駆動流供給口131に接続することによって、凝集沈降剤7と混合させて水中内に噴射することとなる。
【0045】
次に、上記のように構成された水処理システムの作用について説明する。
【0046】
水浄化処理装置10を、湖沼1の水流給入側3付近及び排出側付近に設置した後、水浄化処理装置10を作動させる。この際、水流の流れの速さが、図示しない制御装置に検出され、その検出された流速に基づいて凝集沈降剤供給装置20のモータ24が適宜回転駆動される。
【0047】
ホッパ22には、ブライオゾーアを主体とした凝集沈降剤7が貯溜されていて、モータ24の駆動で回転するオーガスクリュー23のスクリュー部25によって、凝集沈降剤7が供給パイプ21内をエジェクタ13に向かって送給される。この供給量は、水の流れの速度を検出することによって、図示しない制御装置で適宜に設定することができる。
【0048】
一方、エア噴射装置(又はナノバブル発生装置)30は、エア(又はナノ気泡)をエジェクタ13に向けて噴射する。エジェクタ13内では、負圧の発生により凝集沈降剤7とエア(又はナノ気泡)8が、混合室133内で混合され、混合した状態でパイプ15を通って、水流(湖沼1)の給入側3付近又は排出側5付近の水中内に噴射される。
【0049】
図2に示すように、エジェクタ13に一端が接続されたパイプ15は、湖沼1の底部を這わせるように配管されるとともに、他端を上方に向けた状態で水中内に配置される。パイプ15における湖沼1の底部に配管された延設部151には、多数の排出孔152が形成され、エアで噴射された凝集沈降剤7が気泡とともに排出孔152からバブル状となって上昇する。噴射された凝集沈降剤7とエア(又はナノ気泡)8は、バブル状となって多数の排出孔152から噴出され、底部から水面に向かって上昇する。これが連続に行われることによって、水流の給入側3付近と排出側5付近はバブルカーテン化する。パイプ15の本数は、湖沼1内の水流の程度によって、何本でも設置することができる。
【0050】
水流の給入側3でバブルカーテン化された状態では水流の給入側3を一部塞ぎ、排出側5でバブルカーテン化された状態では水流の排出側5の一部を塞ぐことになるから、水流の給入側3と水流の排出側5の間は大きな器を形成することとなる。そして水流の給入側3は上流となり排出側5は下流となっていることから、水流は、器内で、給入側3から排出側5に向かって連続して流れていることとなる。
【0051】
従って、ブライオゾーアを含んだ凝集沈降剤7は、器として形成された湖沼1内で攪拌されとともに底部に沈降する。底部に沈降した凝集沈降剤7は、底部に溜まっている汚泥やヘドロ上に溜まり、ヘドロの重金属や切削水あるいは廃油(以下、汚泥物という)を吸着してphを中性化する。つまり、ブライオゾーアは、浮遊する冨栄養化物を吸着して沈降させ、光合成菌を活性化させる。さらに、殺菌効果が嫌気性菌を死滅させ、好気性菌を活性化させることによってメタンガスの発生を止める。そして酸素を発生させてヘドロ等を分解するとともに、脱臭効果によって悪臭をなくすことができる。従って、ヘドロは、汚泥物が大幅に害の少ない物質に変化して砂地と分離できることから、湖沼1内の水質改善が行われることとなる。
【0052】
また、水浄化処理装置10を、給入側3付近又は排出側5付近のいずれか一方だけに設置しても、凝集沈降剤7の流れる側において水質改善を図ることができる。
【0053】
なお、小さな湖沼では、水の交換が少ないことから、汚濁物質が蓄積しやすい。そのため、水中ポンプを併用し、人工的に水流を作り出すようにしてもよい。これによって、水流を効率的に循環させることができる。
【0054】
第2の形態の水処理システムは、河川の水質改善に対して行うものである。
【0055】
第2の形態では、第1の形態で使用された水浄化処理装置10を河川の周りに設置する。例えば、図4〜6に示すように、水浄化処理範囲を河川40の上流側に設置されている第1の橋41と下流側に設置されている第2の橋42との間に設定する。第1の橋41付近と第2の橋42付近にそれぞれ水浄化処理装置10、10を設置し、水浄化処理装置10、10からそれぞれ延設するパイプ15、15を、橋桁43を利用して第1の橋41、第2の橋42の下の水中内に配管する。つまり、パイプ15の一部を橋桁43の側部あるいは下部に止着して川の底部に這うように配管すれば、パイプ15を安定して配管できるとともに、水浄化処理装置10の全体的な設備軽減化を図ることができる。
【0056】
水浄化処理装置10からパイプ15を通って河川の水中内に凝集沈降剤7を排出して、バブルカーテンを形成する作用は、第1の形態の湖沼1で述べたとおりであるから説明を省略する。
【0057】
なお、この場合においても、図示しない制御装置では、水流の流れによってオーガスクリューの回転速度を適宜制御して、適度の凝集沈降剤を供給し、エア噴射装置(又はナノバブル発生装置)からエア(又はナノ気泡)を噴射して混合液としてバブルカーテンを形成する。そして凝集沈降剤を底部に沈降させて、ヘドロを大幅に外の少ない物質に変化させることになる。
【0058】
また、水浄化処理装置10を、第1の橋41付近又は第2の橋42付近のいずれか一方だけに設置しても、凝集沈降剤7の流れる側において水質改善を図ることができる。
【0059】
第3の形態の水処理システムは、内湾又は内海における養殖場において行うものである。この形態においては、図示するものではないが、通常、養殖される養殖物は網の枠で囲まれていて、潮の干満によって流れが変わる。その潮の流れの上流側(給入側付近)と下流側(排出側付近)に水浄化処理装置を設置する。水浄化処理装置が設置された給入側付近と排出側付近の水中内にブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤を噴きつけ、第1の形態で説明した作用でバブルカーテンを発生させる。網の枠で囲まれていた養殖場はブライオゾーアを主体とする凝集沈降剤が行き渡ることによって浄化されることから、養殖されている養殖物が活性化されて品質の高い養殖物が生産される。
【0060】
なお、このバブルカーテンは、養殖場における潮の干満による潮の流れの給入側付近又は排出側付近の水中内のいずれか一方だけに形成しても、ブライオゾーアによる水浄化処理が行われ、環境汚染を改善することができる。そして、この潮の流れを検出して、凝集沈降剤の供給量やエア噴射装置の流体の噴射速度等を制御装置によって制御することとなる。
【0061】
第4の形態の水処理システムは、図7に示すように、下水処理場50に適用する。汚れた水が、下水処理場50に流入されると、まず、沈砂池51において、汚水に含まれている砂を沈めるとともに、大きなゴミはスクリーンで除去される。次に、最初沈殿池52で細かい汚れを、時間をかけて沈めた後、反応タンク53において、反応タンク53内に、微生物の入った活性汚泥を加えるとともに空気を吹き込むことによって、微生物が汚濁を栄養分として繁殖、吸収し、活性汚泥が沈みやすい塊となって最終処理槽の最初沈殿池52に送られる。
【0062】
反応タンク53で形成された活性汚泥の塊は、最終沈殿池54で沈められる。この際、最終沈殿池54の付近に、水浄化処理装置10が設置されていて、水浄化処理装置10から供給された凝集沈降剤7が、最終沈殿池54の給入側(又は排出側)付近の底部に配管されたパイプ15から噴出され、バブルカーテンを形成している。バブルカーテンによって放出されたブライオゾーア主体の凝集沈降剤7は、浮遊汚濁を吸着させて急速沈降するため、上澄みされた水は短時間で浄化され、処理時間を大幅に短縮することができ、著しく処理効率が向上できる。最終沈殿池54で上澄みされて浄化された水は、消毒槽55で消毒されて放流口56から河川57に放流される。
【0063】
従って、下水処理場では、本装置10を採用することによって処理施設を増設しなくても、河川に浮遊する冨栄養化物を放出することなく処理能力が向上され、施設における処理費用の軽減につなげることができる。
【0064】
第5の形態の水処理システムは、図8に示すように、浄水場60に適用される。
【0065】
水浄化処理装置10は、浄水場60の取水口61付近に設置され、取水口61の給入側付近の水中内に、水浄化処理装置10から延設されたパイプ15が底部を這うように配管されている。上述のように、パイプ15の排出孔から凝集沈降剤が空気とともに噴出されてバブルカーテンを形成している。
【0066】
川から流れてきた水は、取水口61で汚泥物が中和されて、浄化された水が取水場62に流入される。取水場62では、中和された汚泥物や砂が除去され、浄化された水が浄水場60内に流入される。浄水場60では、薬品投入工程、塩素注入工程、ろ過工程等を経て浄水を各家庭に送ることとなる。凝集沈降剤7に含まれるブライオゾーアは、殺菌効果と光合成菌を活性させる効果を有していることから、消毒に用いる塩素使用量を大幅に軽減し、脱臭効果によって塩素臭を軽減し、浄水場60の処理効率を向上することができる。
【0067】
上述のように、実施形態の水浄化処理システム10は、ブライオゾーアを含んだ凝集沈降剤7を、水流の上流の一部と下流の一部に形成するバブルカーテン内全体に行き渡らせて、底部に沈降させることによって、底部に溜まっているヘドロ内の重金属や切削油、あるいは工場廃油等の汚泥物を吸着する。これによって、汚泥物をph中性化することができることから、底部に溜まっていたヘドロを大幅に外の少ない物質に変化させることとなる。よって水質改善を効率よく行うことができる。
【0068】
しかも、バブルカーテンを形成する手段が、凝集沈降剤供給装置20とエア噴射装置(又はナノバブル発生装置)30とを備えて、エジェクタ13で混合させた後、水中に噴射させるものであるから、大幅な装置を必要とすることなく設置スペースを縮小できるとともに、設備費用も安くすることができる。
【0069】
また、特にナノバブル発生装置でナノ気泡を発生させて凝集沈降剤と混合することによって、形成するバブルカーテンを長期間にわたって維持することができるとともに、ナノ気泡自体でも洗浄して水質改善に役立つことができる。
【0070】
なお、上述の水処理システムは、上記に示した各形態以外でも、水流が存在している所では、すべてに適用することができる。
【0071】
さらに、上述の形態の水処理システムでは、凝集沈降剤7を、ブライオゾーアを主体として構成するもので示したが、ブライオゾーアを含まないよく知られた凝集沈降剤だけでも、水中内でバブルカーテン化することによって、水質改善を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一形態による水浄化装置の設置状態を示す簡略図である。
【図2】水流の給入側又は排出側付近でバブルカーテンを形成した状態を示す簡略図である。
【図3】凝集沈降剤供給装置の一形態を示す断面図である。
【図4】本発明の水浄化装置を河川に似かかる橋付近に設置した状態を示す簡略図である。
【図5】図4における橋桁にパイプを配管させた状態を示す簡略図である。
【図6】図5における一部の詳細を示す拡大図である。
【図7】本発明の水処理装置を下水処理場に設置した状態を示す簡略図である。
【図8】本発明の水処理装置を浄水場に設置した状態を示す簡略図である。
【図9】従来の水浄化システムを示す簡略図である。
【符号の説明】
【0073】
1、湖沼
3、給入側
5、排出側
7、凝集沈降剤
8、エア(又はナノ気泡)
10、水浄化処理装置
13、エジェクタ
15、パイプ
151、延設部
152、排出孔
20、凝集沈降剤供給装置
21、供給パイプ
30、エア噴射装置(ナノバブル発生装置)
31、供給パイプ
40、河川
41、第1の橋
42、第2の橋
43、橋桁
50、下水処理場
54、最終沈殿池(最終処理槽)
60、浄水場
61、取水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記水流の給入側付近と排出側付近、あるいは給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記凝集沈降剤が、粉体加工されたブライオゾーアを含むことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記水浄化処理装置が、湖沼の水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理システム。
【請求項4】
前記水浄化処理装置が、河川の水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられ、前記水浄化処理装置の一部が、橋桁に止着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理システム。
【請求項5】
前記水浄化処理装置が、養殖場における潮の干満に対する水流の給入側付近と排出側付近あるいは給入側付近又は排出側付近に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理システム。
【請求項6】
凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、下水処理場における最終処理槽の給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記最終処理槽内の給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とする水処理システム。
【請求項7】
凝集沈降剤を供給する凝集沈降剤供給装置と、水中内に流体を噴射する流体噴射装置と、を有する水浄化処理装置を、浄水場の取水口における給入側付近又は排出側付近に設け、前記凝集沈降剤供給装置から供給された前記凝集沈降剤に、前記流体噴射装置から前記流体を噴射することによって、前記取水口の給入側付近又は排出側付近の水中内にバブルカーテンを形成することを特徴とする水処理システム。
【請求項8】
前記凝集沈降剤が、粉体加工されたブライオゾーアを含むことを特徴とする請求項6又は7記載の水処理システム。
【請求項9】
前記流体噴射装置が、ナノバブルを形成可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−88021(P2006−88021A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275640(P2004−275640)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(504357750)
【Fターム(参考)】