説明

水処理システム

【課題】酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、スライムに起因する濾過膜の閉塞を抑制することができる水処理システムを提供すること。
【解決手段】水処理システム1は、酸化剤を含む原水W1が流通する原水ラインL1と、原水ラインL1に接続され、原水W1から酸化剤を除去する酸化剤除去手段3と、原水ラインL1の下流側の端部に設けられ、原水W1を濾過膜により透過水W2と濃縮水W3とに分離する膜分離手段4と、濾過膜を殺菌する場合に、原水W1から酸化剤を除去する処理を一時的に制限するように酸化剤除去手段3を制御する酸化剤除去処理制御手段6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤を含む原水を濾過膜により透過水と濃縮水とに分離する水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶存塩類等の不純物を含む原水を、濾過膜により透過水と濃縮水とに分離する水処理システムが知られている。このような水処理システムにおいては、原水が流通する原水ラインや上記濾過膜において細菌等の微生物が繁殖することを防止するために、予め原水に次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤が添加され、殺菌が行われている。
【0003】
しかし、原水中にこのような酸化剤(残留塩素)が含まれていると、濾過膜は、この酸化剤により酸化されて濾過能力が早期に劣化してしまう虞がある。
これに対して、原水が濾過膜に導入される前に原水中の酸化剤を除去し、濃縮水において酸化剤の濃度が検出されないように監視しながら、透過水を製造する水処理システムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−57076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の水処理システムは、殺菌能力を有する酸化剤を原水から除去した状態で運転される。そのため、原水の水質によっては、濾過膜において雑菌が繁殖してスライムが形成され、このスライムにより濾過膜が閉塞されて水処理ができなくなる、という問題があった。
【0006】
本発明は、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、スライムに起因する濾過膜の閉塞を抑制することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化剤を含む原水が流通する原水ラインと、前記原水ラインに接続され、原水から酸化剤を除去する酸化剤除去手段と、前記原水ラインの下流側の端部に設けられ、原水を濾過膜により透過水と濃縮水とに分離する膜分離手段と、前記濾過膜を殺菌する場合に、原水から酸化剤を除去する処理を一時的に制限するように前記酸化剤除去手段を制御する酸化剤除去処理制御手段と、を備える水処理システムに関する。
【0008】
また、前記酸化剤除去手段は、酸化剤を含む原水に還元剤を添加する還元剤添加装置であり、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記還元剤添加装置による原水への還元剤の添加を一時的に停止する還元剤添加制御装置であることが好ましい。
【0009】
また、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記濾過膜の一次側の表面に原水を流すことにより該濾過膜を洗浄するフラッシングの実施期間に、原水への還元剤の添加を停止することが好ましい。
【0010】
また、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記フラッシングの実施開始時から所定時間、原水への還元剤の添加を停止し、その後、前記フラッシングの実施終了まで原水へ還元剤を添加することが好ましい。
【0011】
また、前記酸化剤除去手段は、前記原水ラインに設けられ、原水に含まれる有機成分及び酸化剤を活性炭により吸着して除去する活性炭濾過処理装置であり、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記原水ラインにおける前記活性炭濾過処理装置の上流側と下流側とを接続するバイパスラインと、該バイパスラインを開閉するバイパス弁と、該バイパス弁の開閉を制御するバイパス弁制御装置と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記濾過膜の一次側の表面に原水を流すことにより該濾過膜を洗浄するフラッシングの実施期間に、前記バイパス弁を開放することが好ましい。
【0013】
また、前記酸化剤除去処理制御手段は、前記フラッシングの実施開始時から所定時間、前記バイパス弁を開放し、その後、前記フラッシングの実施終了まで前記バイパス弁を閉鎖することが好ましい。
【0014】
また、前記原水ラインにおける前記酸化剤除去手段の下流側又は前記膜分離手段に、酸化剤を添加する酸化剤添加手段を更に備えることが好ましい。
【0015】
また、前記濾過膜は、逆浸透膜、限外濾過膜及び精密濾過膜のいずれか一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、スライムに起因する濾過膜の閉塞を抑制することができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の水処理システム1を示す構成図である。
【図2】還元剤添加ポンプ3bの制御方法を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態の還元剤添加ポンプ3bの制御方法を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態の水処理システム1Aを示す構成図である。
【図5】バイパス弁8の制御方法を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第4実施形態のバイパス弁8の制御方法を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第5実施形態の水処理システム1Bを示す構成図である。
【図8】本発明の第6実施形態の水処理システム1Cを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の水処理システム1を示す構成図である。図1に示す第1実施形態の水処理システム1によって浄化する原水W1には、細菌等の微生物を殺菌するための次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤(殺菌成分)が含まれている。水処理システム1は、この酸化剤を含む原水W1を、濾過膜により透過水W2と濃縮水W3とに分離するものである。
【0019】
図1に示すように、水処理システム1は、原水ラインL1と、原水ポンプ2と、酸化剤除去手段としての還元剤添加装置3と、膜分離手段としての逆浸透膜装置4と、透過水W2が流通する処理水ラインL2と、濃縮水W3が流通する濃縮水ラインL3と、透過水W2を貯留する処理水タンク5と、酸化剤除去処理制御手段としての制御装置6と、を主体に構成される。
なお、本明細書でいう「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。逆浸透膜装置4によって製造された透過水W2のことを「処理水」ともいう。
以下、水処理システム1の各部について詳しく説明する。
【0020】
原水ラインL1には、酸化剤を含む原水W1が流通する。原水ポンプ2は、この原水ラインL1に設けられる。原水ポンプ2は、原水ラインL1の上流側から供給される原水W1を逆浸透膜装置4に向けて送出する。原水ポンプ2は、制御装置6(後述)と電気的に接続される。原水ポンプ2は、制御装置6(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0021】
還元剤添加装置3は、原水ラインL1における原水ポンプ2よりも下流側の添加点J1に接続される。還元剤添加装置3は、酸化剤を含む原水W1に還元剤を添加する。還元剤添加装置3は、還元剤貯留部3aと、還元剤添加ポンプ3bと、を備える。
還元剤貯留部3aは、還元剤を貯留する。還元剤としては、例えば、重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。重亜硫酸ナトリウムは、原水W1中に残留する酸化剤としての次亜塩素酸イオンを塩化物イオンに還元することにより、原水W1から酸化剤を除去する。
【0022】
還元剤添加ポンプ3bは、還元剤貯留部3aに貯留された還元剤を、原水ラインL1の添加点J1から原水W1に送出し、添加する。還元剤添加ポンプ3bは、制御装置6(後述)と電気的に接続される。還元剤添加ポンプ3bは、制御装置6(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0023】
逆浸透膜装置4は、原水ラインL1の下流側の端部に設けられる。逆浸透膜装置4は、原水W1を、濾過膜としての逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)により、純度の高い透過水W2と、不純物を多く含む濃縮水W3とに分離する。逆浸透膜装置4は、上流側に設けられる加圧ポンプ4aと、下流側に設けられるRO膜モジュール4bと、を備える。
【0024】
加圧ポンプ4aは、原水ラインL1から供給される原水W1を加圧し、RO膜モジュール4bに送出する。RO膜モジュール4bは、溶存塩類等の不純物を除去する多数のRO膜(図示せず)を備える。RO膜は、分子量が数十程度のものを濾過可能な膜であり、低ファウリング膜として構成される。RO膜モジュール4bは、ベッセルと称される筐体(図示せず)に収納される。
【0025】
また、逆浸透膜装置4は、RO膜の一次側の表面に沿って原水W1を流す(接触させる)ことにより、RO膜を洗浄することができるように構成される。以下、このRO膜の洗浄を「フラッシング」という。フラッシングは、給水を停止する場合や透過流束が低下した場合等、予め設定された時期(時刻)又はRO膜の汚濁度に基づいて実施が必要と判断される時期に実施される。RO膜の汚濁度は、例えば、RO膜の一次側と二次側の差圧を差圧計(図示せず)で計測することにより求められる。
【0026】
逆浸透膜装置4には、処理水ラインL2及び濃縮水ラインL3が接続される。処理水ラインL2には、逆浸透膜装置4で製造された透過水W2が流通する。処理水ラインL2の下流側の端部は、処理水タンク5に接続される。濃縮水ラインL3には、逆浸透膜装置4で製造された濃縮水W3が流通する。濃縮水ラインL3は、濃縮水W3を系外に排出(ブロー)する。この濃縮水W3のブローは、例えば、フラッシングを実施する場合等に行われる。処理水タンク5は、処理水ラインL2の下流側の端部に設けられる。処理水タンク5は、逆浸透膜装置4により製造された透過水W2を貯留する。
【0027】
なお、図示例を省略するが、上述した原水ラインL1、処理水ラインL2及び濃縮水ラインL3には、原水W1、透過水W2又は濃縮水W3を送出するポンプや、ライン(流路)を開閉するバルブ等が適宜設けられる。これらのポンプやバルブ等も、制御装置6と電気的に接続され、制御装置6によって運転や開閉を制御される。
【0028】
制御装置6は、還元剤添加装置3の還元剤添加ポンプ3bと電気的に接続される。制御装置6は、還元剤添加ポンプ3bの運転(駆動及び停止)を制御し、還元剤添加制御装置として機能する。この制御装置6によれば、原水W1への還元剤の添加を一時的に停止することができる。
【0029】
また、制御装置6は、原水ポンプ2、逆浸透膜装置4の加圧ポンプ4a及びその他の図示しないポンプやバルブ等と電気的に接続される。制御装置6は、これらの原水ポンプ2等の運転を制御し、図示しないバルブ等の開閉を制御する。
【0030】
なお、図示を省略するが、逆浸透膜装置4の上流側には、通常、原水W1に含まれる懸濁物質を濾材の篩効果により捕捉して除去可能な濾過処理装置が設けられる。濾過処理装置は、原水W1中の除去対象物質に応じて種々選択される。濾過処理装置としては、例えば、砂濾過装置や除鉄除マンガン装置を挙げることができる。
【0031】
砂濾過装置は、原水W1に含まれる微粒子等の懸濁物質を濾材により捕捉して除去する。除鉄除マンガン装置は、原水W1に含まれる微粒子等の懸濁物質と共に、溶存鉄及び溶存マンガンを濾材により捕捉して除去する。これらの濾過処理装置において原水W1の前処理が行われる場合に、原水ラインL1における還元剤の添加点J1の上流側において、前記次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤が添加される。
【0032】
次に、水処理システム1の動作について図1及び図2を参照しながら説明する。図2は、還元剤添加ポンプ3bの制御方法を示すタイムチャートである。図2には、逆浸透膜装置4の動作状態を併せて示してある。図2において、符号T1,T2,T3は、時刻を示す。時刻T1は、逆浸透膜装置4(水処理システム1)が給水を開始する時刻であり、かつ、還元剤添加ポンプ3bが運転を開始する時刻である。時刻T2は、フラッシングを開始する時刻であり、かつ、逆浸透膜装置4が給水を終了する時刻である。また、本実施形態においては、時刻T2は、還元剤添加ポンプ3bの運転を停止する時刻である。時刻T3は、フラッシングを終了する時刻であり、かつ、逆浸透膜装置4が給水待機状態となる時刻である。
【0033】
先ず、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌しない通常運転時の制御方法について説明する。図2に示すように、時刻T1において、水処理システム1(逆浸透膜装置4)に対して給水要求がなされると、制御装置6は、原水ポンプ2及び還元剤添加ポンプ3bを駆動(運転)する。すると、酸化剤を含む原水W1は、逆浸透膜装置4に向けて原水ラインL1を流通する。
【0034】
原水ラインL1を流通する原水W1には、還元剤添加ポンプ3bの駆動によって還元剤貯留部3aから、例えば、還元剤としての重亜硫酸ナトリウムが添加される。重亜硫酸ナトリウムは、原水W1中に残留する酸化剤としての次亜塩素酸イオンを、塩化物イオンに還元する。これにより、RO膜を劣化させる酸化剤が、原水W1から除去される。
【0035】
そして、酸化剤が除去された原水W1は、逆浸透膜装置4に導入される。原水W1は、逆浸透膜装置4のRO膜により、透過水W2と濃縮水W3とに分離される。これにより、溶存塩類等の不純物が除去された透過水W2が製造される。上述したように、RO膜に導入される原水W1は、酸化剤が除去されている。そのため、この酸化剤の酸化作用によるRO膜の劣化が抑制される。
【0036】
逆浸透膜装置4により製造された透過水W2は、処理水ラインL2を介して処理水タンク5に導入され、処理水タンク5に貯留される。処理水タンク5に貯留された処理水W2は、需要先(図示せず)に配給される。また、逆浸透膜装置4により製造された濃縮水W3は、濃縮水ラインL3を流通して系外に排出される。
【0037】
次に、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌する場合の制御方法について説明する。本実施形態におけるRO膜の殺菌は、原水W1に含まれる次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤の殺菌作用を利用する。つまり、制御装置6が、酸化剤を含む原水W1に対して、還元剤の添加(還元剤添加ポンプ3bの運転)を一時的に停止することで、原水W1からの酸化剤の除去を一時的に停止する。これにより、酸化剤を含む原水W1(殺菌能力を有する原水W1)がRO膜に供給され、酸化剤の殺菌作用によりRO膜が殺菌される。
【0038】
具体的には、図2に示すように、RO膜の殺菌は、逆浸透膜装置4のフラッシングの実施期間(時刻T2から時刻T3)に対応して行われる。制御装置6は、フラッシングの実施開始の時刻T2に還元剤添加ポンプ3bの運転を停止し、その後、フラッシングの実施終了の時刻T3までこの運転停止状態を継続する。これにより、酸化剤を含む原水W1が、フラッシングの実施時の洗浄水としてRO膜に供給され、RO膜の一次側の表面に接触する。そのため、RO膜は、原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用により殺菌される。従って、RO膜の一次側の表面での雑菌の繁殖が抑制され、スライムの形成が抑制される。
【0039】
また、図2に示すように、フラッシングの実施期間(時刻T2から時刻T3の期間)には、制御装置6は、逆浸透膜装置4による給水を停止する。そして、給水が待機(停止)状態となった場合は、制御装置6により、還元剤添加ポンプ3bの運転も停止される。本実施形態においては、時刻T3以降にも、還元剤添加ポンプ3bの運転停止状態が継続される。水処理システム1に対して再び給水要求がなされた場合は、前記制御が繰り返される。
【0040】
以上に説明した第1実施形態の水処理システム1によれば、以下に示す各効果が奏される。
第1実施形態の水処理システム1は、酸化剤を含む原水W1に還元剤を添加する還元剤添加装置3と、原水W1をRO膜により透過水W2と濃縮水W3とに分離する逆浸透膜装置4と、RO膜を殺菌する場合に、還元剤添加装置3による原水W1への還元剤の添加を一時的に停止するように還元剤添加ポンプ3bを制御する制御装置6と、を備える。
【0041】
そのため、原水W1から酸化剤を除去する還元処理を一時的に停止することができ、酸化剤を含む原水W1(殺菌能力を有する原水W1)を、逆浸透膜装置4のRO膜に導入することができる。これにより、RO膜は、必要な時だけ、酸化剤の酸化作用によって殺菌され、スライムの形成が抑制される。従って、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、スライムに起因するRO膜の閉塞(RO膜の詰まりによる透過水量の低下等)を抑制することができる。
【0042】
ところで、酸化剤の酸化作用によってRO膜が殺菌されるものの、RO膜が、この酸化剤の酸化作用によって、ある程度劣化することも考えられる。
しかし、本実施形態の水処理システム1は、酸化剤によるRO膜の酸化劣化の抑制よりも、スライム形成の抑制を優先する。そのため、原水W1の水質により、RO膜においてスライムの形成量が多く、RO膜が、酸化剤の酸化により劣化するよりも、スライムの形成により先に閉塞する可能性が高い場合等において、RO膜の閉塞を回避することができる。そのため、結果として、RO膜の寿命を延ばすことができる。
【0043】
また、第1実施形態の水処理システム1においては、制御装置6は、フラッシングの実施期間に、原水W1への還元剤の添加を停止する。そのため、給水を停止している期間を利用してRO膜を殺菌することができる。従って、給水需要量が多い場合に、給水量を確保することができる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0045】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態の水処理システムは、前記第1実施形態の水処理システム1と同様の構成を備えているが、第1実施形態の水処理システム1とは、還元剤添加ポンプ3bの制御方法が異なる。そのため、前記第1実施形態の水処理システム1を示す図1を参照し、第2実施形態における還元剤添加ポンプ3bの制御方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態の還元剤添加ポンプ3bの制御方法を示すタイムチャートである。図3には、逆浸透膜装置4の動作状態を併せて示してある。
【0046】
図3において、符号T1からT4は、時刻を示す。逆浸透膜装置4の動作においては、時刻T1から時刻T3は、前記第1実施形態の図2に示した場合と同様である。還元剤添加ポンプ3bの動作においては、時刻T4は、還元剤添加ポンプ3bの運転を開始する時刻である。また、本実施形態における時刻T3は、還元剤添加ポンプ3bの運転を停止する時刻でもある。
【0047】
逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌しない通常運転時の制御方法は、前記第1実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0048】
RO膜の殺菌を行う場合は、図3に示すように、逆浸透膜装置4のフラッシングの実施時期に対応して行われる。制御装置6は、フラッシングの実施開始の時刻T2に還元剤添加ポンプ3bの運転を停止し、その後、時刻T4までの所定時間、この運転停止状態を継続する。これにより、酸化剤を含む原水W1が、フラッシングの実施時の洗浄水としてRO膜に導入され、RO膜の一次側の表面に接触する。そのため、RO膜は、原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用により殺菌される。
【0049】
そして、制御装置6は、時刻T4に還元剤添加ポンプ3bの運転を再開し、時刻T3に還元剤添加ポンプ3bの運転を停止する。つまり、時刻T4から時刻T3までの期間においては、原水W1に含まれる酸化剤は、還元剤添加ポンプ3bから添加(送出)される還元剤によって還元される。そのため、原水W1から酸化剤が除去される。従って、時刻T4から時刻T3までの期間においては、酸化剤が除去された原水W1が、フラッシングの実施時の洗浄水としてRO膜に導入され、RO膜の一次側の表面に接触する。
【0050】
これにより、上記ベッセルにおいては、酸化剤が除去された原水W1が、残存するようになる。そのため、給水待機時間が長くなった場合であっても、RO膜は、酸化剤を含む原水W1に長時間曝されることがない。従って、酸化剤の酸化作用によってRO膜が劣化することが抑制される。
【0051】
以上に説明した第2実施形態の水処理システムによれば、前記第1実施形態の水処理システムと同様の効果が奏されると共に、以下に示す各効果が奏される。
第2実施形態の水処理システムにおいては、制御装置6は、フラッシングの実施開始時から所定時間(時刻T2から時刻T4まで)、原水W1への還元剤の添加を停止する。
【0052】
前記第1実施形態の水処理システム1(図1参照)においては、フラッシングの実施終了時である時刻T3から、逆浸透膜装置4による給水が待機状態となる。そのため、還元剤添加ポンプ3bの運転は、時刻T3以降も停止されたままである。従って、酸化剤を含む原水W1が、時刻T3以降も上記ベッセル中に残存することとなり、給水待機時間が想定以上に長くなった場合には、酸化剤の酸化作用によってRO膜が劣化する虞がある。
【0053】
しかし、第2実施形態の水処理システムにおいては、RO膜が所定時間殺菌された後は、原水W1から酸化剤が除去されるので、RO膜は、酸化剤に曝されなくなる。そのため、給水待機時間が長くなった場合であっても、酸化剤の酸化作用によってRO膜が劣化することを抑制することができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
前記第1実施形態の水処理システム1及び前記第2実施形態の水処理システムは、酸化剤除去手段としての還元剤添加装置3及び酸化剤除去処理制御手段としての制御装置6を備えるが、第3実施形態の水処理システム1Aは、この還元剤添加装置3及び制御装置6の代わりに、酸化剤除去手段としての活性炭濾過処理装置7及び酸化剤除去処理制御手段としてのバイパスラインL4、バイパス弁8及び制御装置6Aを備える点が主として異なる。
【0055】
以下に、本発明の第3実施形態の水処理システム1Aについて図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第3実施形態の水処理システム1Aを示す構成図である。
図4に示すように、水処理システム1Aは、原水ラインL1と、原水ポンプ2と、活性炭濾過処理装置7と、逆浸透膜装置4と、処理水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、処理水タンク5と、バイパスラインL4、バイパス弁8及び制御装置6Aと、を主体に構成される。
【0056】
第2実施形態の水処理システム1Aの原水ラインL1、原水ポンプ2、逆浸透膜装置4、処理水ラインL2、濃縮水ラインL3及び処理水タンク5は、第1実施形態の水処理システム1(図1参照)の原水ラインL1、原水ポンプ2、逆浸透膜装置4、処理水ラインL2、濃縮水ラインL3及び処理水タンク5と同様に構成されるので、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0057】
図4に示すように、活性炭濾過処理装置7は、原水ラインL1における原水ポンプ2の下流側に設けられる。活性炭濾過処理装置7は、原水W1に含まれる懸濁物質と共に、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、有機物、色度成分、臭気成分等を、吸着材からなる濾材で除去する。吸着材には、通常、粒子状又は繊維状の活性炭が使用される。
【0058】
バイパスラインL4は、原水ラインL1における活性炭濾過処理装置7の上流側の接続点J2と下流側の接続点J3とを接続する。
バイパス弁8は、バイパスラインL4に設けられ、バイパスラインL4を開閉する。バイパス弁8は、制御装置6A(後述)と電気的に接続される。バイパス弁8は、制御装置6A(後述)によって開閉を制御される。
【0059】
制御装置6Aは、バイパス弁8と電気的に接続される。制御装置6Aは、バイパス弁8の開閉を制御し、バイパス弁制御装置として機能する。この制御装置6Aによれば、バイパス弁8を開放することにより、原水W1の一部をバイパスラインL4に流し、活性炭濾過処理装置7に流通させずに、逆浸透膜装置4に供給することができる。
【0060】
また、制御装置6Aは、原水ポンプ2、逆浸透膜装置4の加圧ポンプ4a及びその他の図示しないポンプやバルブ等と電気的に接続される。制御装置6Aは、これらの原水ポンプ2等の運転及び図示しないバルブ等の開閉を制御する。
【0061】
次に、水処理システム1Aの動作について図4及び図5を参照しながら説明する。図5は、バイパス弁8の制御方法を示すタイムチャートである。図5には、逆浸透膜装置4の動作状態を併せて示してある。
図5において、符号T1からT3は、時刻を示す。逆浸透膜装置4の動作においては、時刻T1から時刻T3は、前記第1実施形態の図2に示した場合と同様である。バイパス弁8の動作においては、時刻T1及び時刻T3は、バイパス弁8を閉鎖する時刻である。時刻T2は、バイパス弁8を開放する時刻である。
【0062】
先ず、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌しない通常運転時の制御方法について図4を参照しながら説明する。この通常運転時には、バイパス弁8は、閉鎖されている。
水処理システム1A(逆浸透膜装置4)に対して給水要求がなされると、制御装置6Aは、原水ポンプ2を駆動(運転)する。すると、酸化剤を含む原水W1は、活性炭濾過処理装置7に導入される。
【0063】
活性炭濾過処理装置7において、原水W1に含まれる酸化剤は、活性炭からなる濾材によって吸着され、除去される。また、原水W1に含まれる懸濁物質、有機物、色度成分、臭気成分等も、上記濾材によって吸着され、除去される。
【0064】
そして、酸化剤が除去された原水W1は、逆浸透膜装置4に供給される。逆浸透膜装置4における動作は、前記第1実施形態の水処理システム1の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0065】
次に、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌する場合の制御方法について図4及び図5を参照しながら説明する。原水W1に含まれる酸化剤の殺菌作用を利用してRO膜を殺菌する点は、前記第1実施形態の場合と同様である。
【0066】
RO膜を殺菌する場合は、図5に示すように、逆浸透膜装置4のフラッシングの実施時期に対応して行われる。制御装置6Aは、閉鎖されているバイパス弁8を、フラッシングの実施開始の時刻T2に開放する。すると、酸化剤を含む原水W1の一部は、接続点J2からバイパスラインL4に導入され、このバイパスラインL4を流通して、接続点J3において原水ラインL1に合流する。バイパスラインL4を流通する原水W1の量は、バイパス弁8の開度を調節することにより、任意に設定される。
【0067】
また、酸化剤を含む残りの原水W1は、バイパスラインL4を流通せずに、活性炭濾過処理装置7に導入される。原水W1に含まれる酸化剤は、活性炭濾過処理装置7の濾材によって吸着され、除去される。
【0068】
つまり、バイパス弁8が開放されると、接続点J3の下流側の原水ラインL1には、酸化剤が除去されていない原水W1と、酸化剤が除去された原水W1とが混合して流通する。そのため、酸化剤を含む原水W1が、逆浸透膜装置4に導入される。逆浸透膜装置4のRO膜は、この原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用によって殺菌される。これにより、RO膜での雑菌の繁殖が抑制され、スライムの形成が抑制される。そして、フラッシングの実施終了の時刻T3になると、バイパス弁8を閉鎖し、RO膜の殺菌を終了する。
【0069】
以上に説明した第3実施形態の水処理システム1Aによれば、以下に示す各効果が奏される。
第3実施形態の水処理システム1Aは、酸化剤除去手段としての活性炭濾過処理装置7と、逆浸透膜装置4と、酸化剤除去処理制御手段としてのバイパスラインL4、バイパス弁8及び制御装置6Aと、を備える。
【0070】
そのため、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌する場合、制御装置6Aは、バイパスラインL4のバイパス弁8を開放することにより、酸化剤を含む原水W1の一部を、活性炭濾過処理装置7に流通させることなく、RO膜に供給することができる。これにより、原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用により、RO膜での雑菌の繁殖を必要な時だけ抑制することができる。従って、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、スライムの形成を抑制することができ、スライムに起因するRO膜の閉塞を抑制することができる。
【0071】
また、第3実施形態の水処理システム1Aにおいては、制御装置6Aは、フラッシングの実施期間にバイパス弁8を開放する。そのため、給水を停止している期間を利用してRO膜を殺菌することができる。従って、給水需要量が多い場合に、給水量を確保することができる。
【0072】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態の水処理システムは、前記第3実施形態の水処理システム1Aと同様の構成を備えているが、第3実施形態の水処理システム1Aとは、バイパス弁8の制御方法が異なる。そのため、前記第3実施形態の水処理システム1Aを示す図4を参照し、第4実施形態におけるバイパス弁8の制御方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の第4実施形態のバイパス弁8の制御方法を示すタイムチャートである。図6には、逆浸透膜装置4の動作状態を併せて示してある。
【0073】
図6において、符号T1からT4は、時刻を示す。逆浸透膜装置4の動作においては、時刻T1から時刻T3は、前記第1実施形態の図2に示した場合と同様である。バイパス弁8の動作においては、時刻T1及び時刻T4は、バイパス弁8を閉鎖する時刻である。時刻T2は、バイパス弁8を開放する時刻である。
【0074】
逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌しない通常運転時の制御方法は、前記第3実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0075】
RO膜の殺菌を行う場合は、図6に示すように、逆浸透膜装置4のフラッシングの実施時期に対応して行われる。フラッシングの実施が開始される時刻T2までは、バイパス弁8は、閉鎖されている。
制御装置6Aは、フラッシングの実施開始の時刻T2にバイパス弁8を開放し、その後、時刻T4までの所定時間、この開放状態を継続する。これにより、酸化剤を含む原水W1の一部は、接続点J2からバイパスラインL4に導入され、このバイパスラインL4を流通して、接続点J3において原水ラインL1に合流する。
【0076】
そして、酸化剤を含む原水W1が、フラッシングの実施時の洗浄水としてRO膜に導入され、RO膜の一次側の表面に接触する。そのため、RO膜は、原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用により殺菌される。従って、RO膜での雑菌の繁殖が抑制され、スライムの形成が抑制される。
【0077】
また、酸化剤を含む残りの原水W1は、バイパスラインL4を流通せずに、活性炭濾過処理装置7に導入される。原水W1に含まれる酸化剤は、活性炭濾過処理装置7の濾材によって吸着され、除去される。なお、バイパス弁8は、時刻T4に閉鎖されるが、フラッシングの実施終了の時刻T3以降も閉鎖したままとされる。
【0078】
以上に説明した第4実施形態の水処理システムによれば、前記第3実施形態の水処理システム1Aと比較して、以下に示す効果が奏される。
第4実施形態の水処理システムにおいては、制御装置6Aは、フラッシングの実施開始時から所定時間(時刻T2から時刻T4まで)、バイパス弁8を開放し、その後はバイパス弁8を閉鎖する。
【0079】
前記第3実施形態の水処理システム1Aにおいては、フラッシングの実施終了時である時刻T3まで、バイパス弁8が開放されている。従って、酸化剤を含む一部の原水W1は、バイパスラインL4を介して逆浸透膜装置4に導入される。そのため、酸化剤を含む原水W1は、時刻T3以降も上記ベッセル中に残存することとなり、給水待機時間が想定以上に長くなった場合には、酸化剤の酸化作用によってRO膜が劣化する虞がある。
【0080】
しかし、第4実施形態の水処理システムにおいては、上述したように、時刻T2から時刻T4においてバイパス弁8が開放されることにより、RO膜が所定時間殺菌される。また、時刻T4以降はバイパス弁8が閉鎖されることにより、活性炭濾過処理装置7の濾材によって原水W1から酸化剤が除去される。そのため、RO膜は、酸化剤に曝されなくなる。従って、給水待機時間が長くなった場合であっても、酸化剤の酸化作用によってRO膜が劣化することを抑制することができる。
【0081】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態の水処理システム1Bについて、図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の第5実施形態の水処理システム1Bを示す構成図である。
図7に示すように、本発明の第5実施形態の水処理システム1Bは、前記第1実施形態の水処理システム1(図1参照)の構成に加えて、原水W1に酸化剤を添加する酸化剤添加手段としての酸化剤添加装置10を備える。また、第5実施形態の水処理システム1Bは、制御装置6Bを備える。水処理システム1Bのその他の構成は、前記第1実施形態の水処理システム1の構成と同様であるので、重複説明を省略する。
【0082】
図7に示すように、酸化剤添加装置10は、原水ラインL1における還元剤添加装置3の下流側の添加点J4に接続される。添加点J4は、逆浸透膜装置4よりも上流側に配置される。酸化剤の添加点J4の位置は、還元剤の添加点J1の下流側であって、この添加点J1にできるだけ近いことが好ましい。これは、次の理由による。
【0083】
添加点J1の下流においては、添加点J1から添加される還元剤の還元作用により、原水W1に含まれる酸化剤が除去され、原水W1の殺菌能力が除去される。そのため、原水ラインL1における添加点J1の下流側において、雑菌の繁殖をできるだけ抑制する必要があるからである。
【0084】
酸化剤添加装置10は、原水ラインL1を流通する原水W1に酸化剤を添加する。酸化剤添加装置10は、酸化剤貯留部10aと、酸化剤添加ポンプ10bと、を備える。
酸化剤貯留部10aは、酸化剤を貯留する。酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。
【0085】
酸化剤添加ポンプ10bは、酸化剤貯留部10aに貯留された酸化剤を、原水ラインL1の添加点J4から原水W1に送出し、添加する。酸化剤添加ポンプ10bは、制御装置6B(後述)と電気的に接続される。酸化剤添加ポンプ10bは、制御装置6B(後述)によって運転(駆動及び停止)を制御される。
【0086】
制御装置6Bは、前記第1実施形態の水処理システム1の制御装置6(図1参照)と同様の機能を有する。また、制御装置6Bは、酸化剤添加装置10の酸化剤添加ポンプ10bと電気的に接続される。制御装置6Bは、酸化剤添加ポンプ10bの運転(駆動及び停止)を制御する。
【0087】
次に、逆浸透膜装置4のRO膜を殺菌する場合の制御方法について図7を参照しながら説明する。原水W1に含まれる酸化剤の殺菌作用を利用してRO膜を殺菌する点は、前記第1実施形態の場合と同様である。
しかし、前記第1実施形態の場合のように、原水W1に含まれている酸化剤の殺菌作用をそのまま利用するだけでは、殺菌能力が足りず、RO膜を十分に殺菌できない場合がある。
そこで、本実施形態においては、酸化剤添加装置10によって所定量の酸化剤を原水W1に添加し、原水W1の殺菌能力を強化するようにした。
【0088】
具体的には、RO膜の殺菌は、前記第1実施形態の場合と同様に、逆浸透膜装置4のフラッシングの実施期間において行われる。制御装置6Bは、フラッシングの実施期間において、還元剤添加ポンプ3bの運転を停止すると共に、酸化剤添加ポンプ10bを運転する。酸化剤を含む原水W1に対して、還元剤の添加(還元剤添加ポンプ3bの運転)を一時的に停止することで、原水W1中の酸化剤を還元処理により除去しないようにする。これにより、酸化剤を含んだままの原水W1が、原水ラインL1における添加点J1の下流側に一時的に流通する。
【0089】
そして、制御装置6Bは、この原水W1に対して、酸化剤添加装置10の酸化剤添加ポンプ10bにより所定量の酸化剤を添加する。これにより、原水W1における酸化剤の含有量は増加する。そのため、原水W1の殺菌能力が強化される。このように殺菌能力が強化された原水W1が、フラッシングの実施時に洗浄水としてRO膜に供給され、RO膜の一次側の表面に接触すると、RO膜は、原水W1に含まれる酸化剤の酸化作用により十分に殺菌される。従って、RO膜での雑菌の繁殖が抑制され、スライムの形成が抑制される。
【0090】
以上に説明した第5実施形態の水処理システム1Bによれば、以下に示す各効果が奏される。
第5実施形態の水処理システム1Bは、前記第1実施形態の水処理システム1の構成に加えて、原水ラインL1における還元剤添加装置3の下流側の添加点J4に酸化剤を添加する酸化剤添加装置10を備える。そのため、酸化剤添加装置10により原水W1に所定量の酸化剤を添加することにより、原水W1における酸化剤の含有量を増加することができ、原水W1の殺菌能力を必要な時だけ強化することができる。従って、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、必要な時だけRO膜を十分に殺菌してRO膜での雑菌の繁殖を抑制することができ、スライムの形成を抑制することができる。
【0091】
〔第6実施形態〕
以下、本発明の第6実施形態の水処理システム1Cについて、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の第6実施形態の水処理システム1Cを示す構成図である。
図6に示すように、本発明の第6実施形態の水処理システム1Cは、逆浸透膜装置4の内部の添加点J5において、酸化剤添加装置10により酸化剤を添加するように構成される。添加点J5は、例えば、逆浸透膜装置4における加圧ポンプ4aの下流側かつRO膜モジュール4bの上流側に配置される。
水処理システム1Cのその他の構成及び制御方法は、前記第5実施形態の水処理システム1Bの構成及び制御方法と同様であるので、重複説明を省略する。
【0092】
以上に説明した第6実施形態の水処理システム1Cによれば、以下に示す各効果が奏される。
第6実施形態の水処理システム1Cは、前記第1実施形態の水処理システム1の構成に加えて、逆浸透膜装置4の内部の添加点J5に酸化剤を添加する酸化剤添加装置10を備える。そのため、酸化剤添加装置10により原水W1に所定量の酸化剤を添加することにより、原水W1における酸化剤の含有量を増加することができ、必要な時だけ原水W1の殺菌能力を強化することができる。従って、酸化剤による濾過膜の酸化劣化を抑制することができると共に、必要な時だけRO膜を十分に殺菌してRO膜での雑菌の繁殖を抑制することができ、スライムの形成を抑制することができる。
【0093】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記第1実施形態から前記第6実施形態においては、膜分離手段の濾過膜は、逆浸透膜(RO膜)であるものとして説明したが、これに制限されない。例えば、濾過膜は、限外濾過膜(UF膜)や精密濾過膜(MF膜)であってもよい。
【0094】
また、前記第1実施形態及び前記第2実施形態においては、フラッシングの実施期間に、原水W1への還元剤の添加を停止するものとして説明したが、これに制限されない。例えば、給水中に、原水W1への還元剤の添加を停止してもよい。
【0095】
また、前記第6実施形態においては、酸化剤の添加点J5は、逆浸透膜装置4における加圧ポンプ4aの下流側かつRO膜モジュール4bの上流側に位置するものとして説明したが、これに制限されない。例えば、酸化剤の添加点は、逆浸透膜装置4における加圧ポンプ4aの上流側でもよい。
【0096】
また、前記第5実施形態及び前記第6実施形態においては、酸化剤添加装置10により酸化剤を原水W1に添加するものとして説明したが、これに制限されない。例えば、酸化剤を含む水(例えば、残留塩素を含んだ水)を別系統から導入して原水W1に添加するようにしてもよい。また、このような酸化剤を含む水を逆浸透膜装置4の内部に導入し、逆浸透膜装置4の内部で循環させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B,1C 水処理システム
3 還元剤添加装置(酸化剤除去手段)
4 逆浸透膜装置(膜分離手段)
6,6A,6B 制御装置(酸化剤除去処理制御手段)
7 活性炭濾過処理装置(酸化剤除去手段)
8 バイパス弁(酸化剤除去処理制御手段)
10 酸化剤添加装置(酸化剤添加手段)
W1 原水
W2 透過水
W3 濃縮水
L1 原水ライン
L4 バイパスライン(酸化剤除去処理制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む原水が流通する原水ラインと、
前記原水ラインに接続され、原水から酸化剤を除去する酸化剤除去手段と、
前記原水ラインの下流側の端部に設けられ、原水を濾過膜により透過水と濃縮水とに分離する膜分離手段と、
前記濾過膜を殺菌する場合に、原水から酸化剤を除去する処理を一時的に制限するように前記酸化剤除去手段を制御する酸化剤除去処理制御手段と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記酸化剤除去手段は、酸化剤を含む原水に還元剤を添加する還元剤添加装置であり、
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記還元剤添加装置による原水への還元剤の添加を一時的に停止する還元剤添加制御装置である請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記濾過膜の一次側の表面に原水を流すことにより該濾過膜を洗浄するフラッシングの実施期間に、原水への還元剤の添加を停止する請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記フラッシングの実施開始時から所定時間、原水への還元剤の添加を停止し、その後、前記フラッシングの実施終了まで原水へ還元剤を添加する請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記酸化剤除去手段は、前記原水ラインに設けられ、原水に含まれる有機成分及び酸化剤を活性炭により吸着して除去する活性炭濾過処理装置であり、
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記原水ラインにおける前記活性炭濾過処理装置の上流側と下流側とを接続するバイパスラインと、該バイパスラインを開閉するバイパス弁と、該バイパス弁の開閉を制御するバイパス弁制御装置と、を備える請求項1に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記濾過膜の一次側の表面に原水を流すことにより該濾過膜を洗浄するフラッシングの実施期間に、前記バイパス弁を開放する請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記酸化剤除去処理制御手段は、前記フラッシングの実施開始時から所定時間、前記バイパス弁を開放し、その後、前記フラッシングの実施終了まで前記バイパス弁を閉鎖する請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記原水ラインにおける前記酸化剤除去手段の下流側又は前記膜分離手段に、酸化剤を添加する酸化剤添加手段を更に備える請求項1から7のいずれか一つに記載の水処理システム。
【請求項9】
前記濾過膜は、逆浸透膜、限外濾過膜及び精密濾過膜のいずれか一つである請求項1から8のいずれか一つに記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−235235(P2011−235235A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108916(P2010−108916)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】