説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】 排水・廃液・地下水等の処理水からアルミナを主成分とする多孔質吸着剤を用いて有害物質を吸着除去する方法および装置において、吸着剤の吸着能力を高めることで、処理に必要な吸着剤量を大幅に削減させることを課題とする。
【解決手段】 アルミナを主成分とする多孔質吸着剤を充填したフィルターと、前記フィルターへの通水を制御する通水制御手段とを有し、前記通水制御手段は、前記フィルターへ一定時間通水させた後に5秒以上停止させる通水パターンを繰り返すように制御するものである水処理装置を用いて、通水工程と停止工程とを交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水・廃液中・地下水などから有害物質を除去処理する水処理方法及び水処理装置に関し、特に吸着剤を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含有する有害物質の濃度が高い、排水・廃液・地下水などから有害物質を除去するには、有害物質の種類に対応した凝集剤を用いて処理する一次排水処理装置と、一次処理では十分に除去できなかった低濃度の有害物質を、その種類に応じたキレート樹脂などで吸着除去する二次排水処理を行うことが一般的である。しかし、この方法では、一次処理において凝集剤を機能させるために酸性の排水等をアルカリ性に調整する必要があるため凝集剤のみならず大量のアルカリ性薬剤が必要となり、また、凝集剤により沈殿した多量の有害物質含有汚泥が副生成物として発生することが問題となっていた。
これを解決する方法として、下記特許文献1には、凝集剤やキレート樹脂などを使わずに、活性アルミナ及び二酸化ケイ素を主成分とするセラミック系の吸着剤を用いて、排水・廃液のpH値を2〜4に希釈した後に、有害物質を吸着除去処理する方法が示されている。
この方法によると、薬剤をほとんど用いることがなく、また有害物質が含有する汚泥も発生することがない。
【特許文献1】特開2004−314054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載の方法では、吸着剤を扁平なカートリッジ内に充填してカラム内に配置し、このカラムに上下方向から排水等の処理水を連続通水することにより、吸着剤と処理水とが多く接触するように流動させることで、有害物質を吸着剤に吸着させるように構成されている。
しかし、この方法では吸着剤表面全体がすぐに処理水中の有害物質濃度とほぼ等しくなってしまい、吸着剤表面の平衡濃度作用により、順次注入される同一の有害物質濃度をもつ処理水に対しては有害物質をほとんど吸着しないという現象が生じていた。即ち、従来の方式では連続的に処理が必要とされる排水・廃液等の有害物質吸着除去の連続的な処理ができなかった。
【0004】
具体例を挙げると、従来の方法では、2kgの吸着剤で20ppmのフッ素を含有する排水を連続通水すると18l目の排水量で吸着能力が飽和し(濃度平衡)、排水基準(8ppm)を超えてしまった(後述する図7参照)。一方、一般的に連続して排水される工業用排水・廃液の処理量は、日量30t(30,000l)は少なくともあるので、20ppmのフッ素を含有する排水を30t処理すると仮定すると、従来の方法で飽和しない吸着剤の重さをは約3300kgとなる。これから、現在吸着剤の購入単価は約1,500円/kgであるため、一日当たり約500万円のランニングコストが排水量30t/日の事業所でかかることとなり、凝集沈殿処理法等による排水処理コストの50倍〜100倍程度のランニングコストが発生するため、アルミナを主成分とした吸着剤を用いる処理方法の実施は現実的ではない。
【0005】
本発明は、このような問題を鑑み、排水・廃液・地下水等の処理水からアルミナを主成分とする多孔質吸着剤を用いて有害物質を吸着除去する方法および装置において、吸着剤の吸着能力を高めることで、処理に必要な吸着剤量を大幅に削減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、浄化処理を行う処理水をアルミナを主成分とする多孔質吸着剤を充填したフィルター内に一定時間通水させる通水工程と、通水工程の後に5秒以上通水を停止する停止工程とを交互に繰り返す水処理方法である。
請求項2に記載の発明は、前記水処理方法において、前記フィルターを複数並列に配置するとともに、各フィルターに対し前記通水工程と停止工程とを交互に繰り返すとともに、すべてのフィルターの停止工程が重なることがないように通水のタイミングが設定されるものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水処理方法において、前記フィルターは、2組に分けられ、いずれか一方の組が通水工程を行っている間は、いずれか他方の組は停止工程となり、いずれか一方の組が停止工程を行っている間は、いずれか他方の組は通水工程となるように通水タイミングが設定されるものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の水処理方法において、前記通水タイミングは3分以上の時間間隔で各組の通水工程と停止工程とが交互に入れ替わるよう設定されるものである。
請求項5に記載の発明は、前記水処理方法において、前記フィルターは最大内径に対して長さが8倍以上に設定されるものである。
請求項6に記載の発明は、前記水処理方法において、前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられるものである。
【0008】
請求項7に記載の発明は、前記水処理方法において、前記停止工程にある前記フィルター内の処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させる処理水保持工程を含むものである。
請求項8に記載の発明は、前記水処理方法において、前記停止工程にある前記フィルターを冷却する冷却工程を含むものである。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の水処理方法において、前記冷却工程は、前記フィルターに冷却水を通水するものである。
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の水処理方法において、前記冷却工程は、前記フィルターに冷却空気を通すものである。
請求項11に記載の発明は、請求項1から6及び8のいずれかの水処理方法において、前記停止工程にある前記フィルターに酸性溶液を通す酸性溶液注入工程を有するものである。
【0009】
請求項12に記載の発明は、アルミナを主成分とする多孔質吸着剤を充填したフィルターと、前記フィルターへの通水を制御する通水制御手段とを有し、前記通水制御手段は、前記フィルターへ一定時間通水させた後に5秒以上停止させる通水パターンを繰り返すように制御するものである水処理装置である。
請求項13に記載の発明は、前記水処理装置において、前記フィルターは複数並列に配列されるものであって、前記通水制御手段は、すべてのフィルターが同時に通水を停止することがないように制御するものである。
請求項14に記載の発明は、前記フィルターは2組に分かれるものであって、請求項12に記載の水処理装置において、前記通水制御手段は、2組のフィルターに交互に通水と、通水の停止を繰り返すものである。
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載の水処理装置において、前記通水制御手段は、3分以上の時間間隔で通水と、通水の停止を繰り返すものである。
【0010】
請求項16に記載の発明は、前記水処理装置において、前記フィルターは最大内径に対して長さが8倍以上に設定されるものである。
請求項17に記載の発明は、前記水処理装置において、前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられるものである。
請求項18に記載の発明は、請求項16に記載の水処理装置において、前記バッファタンクは柱状に形成され、前記フィルターは前記バッファタンクを取り巻くように管体を螺旋状に巻いた形状に形成されるものである。
【0011】
請求項19に記載の発明は、前記水処理装置において、前記フィルター内において処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させる処理水保持手段を有する請求項12から18のいずれか1項に記載の水処理装置。
請求項20に記載の発明は、前記水処理装置において、前記フィルターを冷却する冷却手段を有するものである。
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載の水処理装置において、前記冷却手段は、冷却水を貯めた冷却水タンクと前記フィルターの通水口もしくは排水口との間に設けられるバルブと、前記バルブを制御するバルブ制御装置とからなるものである。
請求項22に記載の発明は、請求項20に記載の水処理装置において、前記冷却手段は、前記フィルターの通水口もしくは排水口に接続される冷却空気を送り込む冷却空気送風器と、冷却空気送風器を制御する送風制御装置とからなるものである。
請求項23に記載の発明は、請求項11から21のいずれかの水処理装置において、前記フィルターに酸性溶液を通す酸性溶液注入手段を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により本発明は、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、一定時間の通水工程により吸着剤の外表面近傍の高まった有害物質の濃度が、短時間の停止工程によって有害物質が吸着剤内部へと浸透していく結果低下するので、吸着剤濃度の飽和がほとんど起こらない。このように吸着剤の能力を内部まで十分活用することにより、アルミナを主成分とする多孔質吸着剤の処理能力を飛躍的に向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、フィルターを複数並列に配置して各フィルターに通水工程と停止工程を行わせる場合に、すべてのフィルターの停止工程が重ならないようにすることで、常にいずれかのフィルターを通して連続通水処理が可能となる。
請求項3に記載の発明は、フィルターを2組に分けて交互に通水工程と停止工程を入れ替えることで簡易な制御を行うことができる。
請求項4に記載の発明は、3分間隔で通水工程と停止工程を入れ替えることで、十分な有害物質処理と吸着剤の回復を図ることができ、より吸着剤の処理能力を高めることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、フィルターの形状を最大内径に対して長さが8倍以上と長いものとすることで、充填される吸着剤は多重に重なって配置されることとなる。これにより、通水時には、まず、通水口近傍の吸着剤表面から有害物質濃度が飽和し、順次通水方向に飽和していくので、従来のように吸着剤を拡散して処理する場合は直ぐに全体の吸着剤表面が飽和することに比較して、長時間にわたって徐々に飽和していくこととなり容易に飽和しないので、それだけ吸着剤の処理能力が高くなる。
請求項6に記載の発明は、前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられることで、停止工程によりフィルターへの注水が停止していても処理水をバッファタンクに溜めることで連続的に処理水を流すことが可能となる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、停止工程中にある処理水の移動を停止又は流速を低下させることで、吸着剤の内部にまで十分に有害物質を浸透させることができ、吸着剤の処理能力を向上させることができる。
請求項8に記載の発明は、停止工程中にフィルターを冷却することで発熱していた吸着剤が冷やされ、吸着剤の処理能力をさらに向上させることができる。
請求項9に記載の発明は、冷却工程としてフィルターに冷却水を通水することで、吸着剤の冷却に加えて吸着剤表面を洗浄することができ、これによっても吸着剤の処理能力を高めることができる。
請求項10に記載の発明は、冷却工程としてフィルターに冷却空気を通すものであり、吸着剤の冷却に加えて吸着剤表面を乾燥させることができ、これによっても吸着剤の処理能力を高めることができる。
請求項11に記載の発明は、停止工程中にフィルターに酸性溶液を通すことで、有害物質が最も吸着している吸着剤表面を剥離させ、吸着剤の処理能力をさらに向上させることができる。
【0015】
請求項12に記載の発明は、やはり、一定時間の通水により吸着剤の外表面近傍の高まった有害物質の濃度を、通水の停止によって有害物質を吸着剤内部へと浸透させることで低下させ、吸着剤の処理能力を向上させることができる。
請求項13に記載の発明は、フィルターを複数並列に配置して通水制御手段により各フィルターに通水と通水停止を、すべてのフィルターの停止が重ならないように行わせることで、いずれかのフィルターを通して連続通水処理が可能となる。
請求項14に記載の発明は、2組のフィルターを交互に通水工程と停止工程を入れ替えるように制御することで簡易な制御を行うことができる。
請求項15に記載の発明は、3分間隔で通水と通水停止を繰り返すようにすることで、十分な有害物質処理と吸着剤の回復を図ることができ、吸着剤の処理能力の向上を図ることができる。
【0016】
請求項16に記載の発明は、フィルターの形状を最大内径に対して長さが8倍以上と長いものとすることで、充填される吸着剤は多重に重なって配置されることとなり、長時間にわたって通水口側から徐々に飽和していくこととなり全体として飽和に達しにくいことから、それだけ吸着剤の処理能力を向上させることができる。
請求項17に記載の発明は、前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられることで、フィルターへの注水が停止していても処理水をバッファタンクに溜めることで連続的に処理水を流すことが可能となる。
請求項18に記載の発明は、前記フィルターがバッファタンクを取り巻くように管体を螺旋状に巻いた形状で形成されることで装置をコンパクトにまとめることができる。
【0017】
請求項19に記載の発明は、通水の停止中に処理水保持手段によりフィルター内において処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させることにより、吸着剤の内部にまで十分に有害物質を浸透させることができ、吸着剤の処理能力を向上させることができる。
請求項20に記載の発明は、前記フィルターを冷却手段により冷却することで発熱していた吸着剤が冷やされ、吸着剤の処理能力をさらに向上させることができる。
請求項21に記載の発明は、冷却手段をバルブとバルブ制御手段とから構成することにより、バルブを空けてフィルターに冷却水を通水することで、吸着剤を冷却するとともに吸着剤表面を洗浄することができ、これによっても吸着剤の処理能力を高めることができる。
請求項22に記載の発明は、冷却手段として冷却空気送風器と送風機制御手段とから構成することにより、冷却空気送風器によりフィルターに冷却空気を通すことで、吸着剤の冷却に加えて吸着剤表面を乾燥させることができ、これによっても吸着剤の処理能力を高めることができる。
請求項23に記載の発明は、酸性溶液注入手段によりにフィルターに酸性溶液を通すことで、有害物質が最も吸着している吸着剤表面を剥離させ、吸着剤の処理能力をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に実施形態1に係る水処理装置Xの構造を表す模式図を示す。水処理装置Xは、フィルター10、バッファタンク20、ポンプ30、配管40、制御装置100とから構成される。バッファタンク20は中空の円柱体であり、フィルター10はバッファタンク10の外周に沿うように管体を螺旋状に巻いた形状をしている。
図2(a)にバッファタンク20とフィルター10の斜視図を示す。バッファタンクには底面に外部に連通する底部連通部21が、側部底面近傍に外部に連通する側部連通部22が設けられている。
フィルター10は合成樹脂素材を螺旋形状に形成した外部ケース11内に粒径1〜5mm程度のアルミナ(Al)を主成分とし二酸化ケイ素等を含有するセラミック系の多孔質構造をもつ吸着剤12を封入したものである。図2(b)にフィルター10の拡大一部破断斜視図を示す。図に示すように、外部ケース11内には吸着剤12が充填されていおり、結果として吸着剤12は多層構造をもって外部ケース11内に配されることとなる。外部ケース11の長さは仕様に応じて種々のものが採用できるが、十分な吸着剤の多層構造を実現するためには、少なくとも内径の最大値の8倍以上の長さを有することが望ましい。
【0019】
配管40は、浄化処理を行う処理水をバッファタンク20の底部連通部21に導く第1配管41、バッファタンク20の側部連通部22とフィルター10の上部通水口とを接続する第2配管42、ファイルター10の下部排水口を図示しない排水槽へ導く第3配管43とから構成される。第2配管42にはポンプ30と電磁弁42aが設けられている。
制御部100は、プログラムに従ってポンプ30と電磁弁42aとを制御するものであり、公知のマイコンにより構成される。具体的には、ポンプ30によってフィルター10の容量分を処理水が送り出される所定時間の間、通水工程として電磁弁42aを開放し、ポンプ30を作動させ、その後、停止工程として約5秒、ポンプ30を停止させるとともに、電磁弁42aを閉じることを1サイクルとして、処理水量に応じて複数サイクル繰り返すように設定されている。所定時間はフィルター10の容量が大きくなればなるほど大きくなるものであり、数十リットルの容量を有する場合は100秒以上になるので、5秒程度の停止時間を設けても大きなロスにはならない。
【0020】
次に、このような構成を有する水処理装置Xの動作について説明する。なお、配管41には図示しないポンプによって処理水が送られてくるようになっているものとし、また、このポンプの吐出し量は、ポンプ30の吐き出し量よりやや少なく、かつ、停止工程で溜まるバッファタンク20の処理水が通水工程の処理時間ではなくならない程度に設定されているものとする。以下の動作は制御部100により行われる。まず、最初の動作時には、電磁弁42aを閉じてバッファタンク20に所定量の処理水を溜めるようにする。次に、通水工程として電磁弁42aを開放するとともに、前記所定時間だけポンプ30を駆動させる。その後、停止工程として5秒間ポンプを停止させるとともに電磁弁42aを閉じる。この状態において、フィルター20内の処理水は静止状態となる。即ち、ポンプ30及び電磁弁40aは、フィルター内において処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させる処理水保持手段を構成する。そして、再び、電磁弁42aを開いてポンプ30を作動させる通水工程に移行すると、浄化処理された処理水が配管43から図示しない排水タンクへ排出される。以下、通水工程と停止工程とが所定の処理量に達するまで交互に行われる。
【0021】
このように停止処理中にフィルター10内の処理水の移動を停止させる処理水保持工程を設けることでアルミナを主成分とする吸着剤の能力を大きく向上させることができる。図3に処理水保持工程を設ける場合と設けない場合の比較実験結果を表すグラフを示す。この比較実験は、前記吸着剤12を所定長さのフィルター11に充填させて、フッ素濃度40mg/l程度の処理水を処理水保持工程を設けずに連続通水した場合と、5秒間の処理水保持工程を設けた場合における処理水量と浄化処理後のフッ素濃度の関係を計測したものである。図に示すように、連続通水した場合には通水量は約8lで浄化処理後の処理水は排水基準である8mg/lに達したが、停止工程を設けた場合には8lの通水量では浄化処理後のフッ素濃度は4.8mg/lと約半分であった。グラフの傾きも停止工程を設けることで緩やかになることから、5秒の処理水保持工程を設けることで約2倍の処理能力の向上があると推測することができる。
【0022】
これは、アルミナを主成分とする吸着剤12は、多孔質で大きな比表面積をもつが、連続通水による吸着は、一般的に吸着剤12表面における平衡吸着反応であり、処理水の有害物質濃度と吸着剤12表面の濃度が等しくなれば吸着反応は生じなくなるという現象が生じていることが原因であると考えられる。これに対し、一時的に通水が休止する処理水保持工程を設ける場合、処理水の流動がほぼ静止する間に、多孔質吸着剤12の内部の細孔内に有害物質が浸透していく現象を起こる結果、吸着能力が高まるものと考えられる。この浸透のための時間として最低5秒程度が必要となる。このように、5秒以上の処理水保持工程を設けることで吸着剤12の内部での吸着作用効果が得られ多孔質で大きな比表面積をもつ吸着剤12の本来の能力を十分に発揮することができる。
【0023】
さらに、フィルターを長尺の構造にすることによってもアルミナ(Al2O3)を主成分とする吸着剤12の能力を高めることができる。図4にフィルターの長さごとに処理能力を比較した実験結果を表すグラフを示す。この比較実験は、前記吸着剤12を1m、2m、3mの異なる長さのフィルター10に充填させて、フッ素濃度40mg/l程度の処理水を連続通水した場合の通水量と浄化処理後のフッ素濃度との関係を計測したものである。図からわかるように排水基準値である8mg/lを越えるのが1mの場合は約18l、2mの場合は約75l、3mの場合は約160lとなり、1mから約2倍の2mの場合は処理能力は約4倍以上、3倍の3mの場合は処理能力は約9倍以上となる。吸着剤の量は長さに比例した分のみしか増加しないので、明らかに長尺のフィルターを用いることで吸着剤の能力が高くなっていることがわかる。図5に、フィルター10を3mとした場合と、これから推定されるフィルター10を6mとした場合の通水量と浄化処理後のフッ酸濃度の関係を表すグラフを示す。なお、このグラフには、従来の攪拌型のカラムによる吸着剤の吸着処理による通水推量と処理水のフッ酸濃度の関係も示されている。このように、フィルター長を長くすればそれだけ処理能力が高まり、排水基準値の8mlに達する通水量は、6mの場合で約650l以上、12mの場合は1,400l、18mの場合なら6,000l以上(約6t以上)となると推定される。なお、従来の攪拌型による吸着はフィルター1mを連続通水した場合の吸着能力とほぼ同じであり、フィルターを長尺にすることにより従来の吸着処理よりも大幅に吸着剤の処理能力を高めることができることがわかる。そして、上述したように、停止工程を設けることにより約2倍の処理能力の向上が見込めることから、本発明に係る水処理装置は吸着剤を大量に消費することなく飛躍的に処理能力の向上を図ることができる。
【0024】
(実施形態2)
図6に実施形態2に係る水処理装置Yの構造を模式的に表す模式図を示す。水処理装置Yは、フィルター10A、10B、バッファタンク20A、20B、ポンプ30、配管40、酸性溶液注水部50、制御装置110とから構成される。
フィルター10A、10B、バッファタンク20A、20B及びポンプ30の構成は実施形態1に係る水処理装置Xのフィルター10、バッファタンク20、ポンプ30と同じであるので説明は省略する。
配管40は、浄化処理を行う処理水をバッファタンク20A、20Bのそれぞれの底部連通部21に導く第1配管41Aと、バッファタンク20A、20Bのそれぞれの側部連通部22と、フィルター10A、10Bのそれぞれの上部通水口とを接続する第2配管42Aと、フィルター10A、10Bの下部排水口を図示しない排水槽へ導く第3配管43Aとから構成される。第2配管42Aは、バッファタンク20A、20Bのそれぞれの側部連通部22からの流路を結ぶ三方電磁弁42Abが設けられ、三方電磁弁から出る流路にポンプ30が設けられる。さらに、ポンプ30からの流路は二股に分かれてフィルター10A、10Bのそれぞれの上部通水口に流入する。この二股に分かれた流路の途中にもそれぞれ三方電磁弁42Ac、42Adが設けられる。
【0025】
酸性溶液注水部50は、pH4未満の酸性溶液を溜める酸性溶液槽52と、酸性溶液槽52と前記電磁弁42Ac、42Adに接続する配管54と、配管54の途中に設けられるポンプ51と、電磁弁53とから構成される。
制御装置110はポンプ30、51、電磁弁42Ab、42Ac、42Ad、53をプログラムに従って制御するものであって、公知のマイコンにより構成される。具体的には、まず、電磁弁42Ab、42Ac、42Adを約3分ごとに切り替えることにより、フィルター10Aとフィルター10Bに処理水を交互に通水させる。そして、フィルター10A、フィルター10Bの通水が行われていない側に対して、ポンプ51、電磁弁53を作動させることにより酸性溶液を注入させる。
【0026】
次に、以上のような構成を有する水処理装置Yの動作について説明する。なお、やはり配管41Aには図示しないポンプによって処理水が送られてくるようになっているものとする。以下の動作は制御部110により行われる。まず、最初は三方電磁弁42Abを閉じることでバッファタンク20A、20Bにある程度の処理水を溜める。その後、電磁弁42Abを作動させて、例えばバッファタンク20Aに連なる流路がポンプ30に連通するようにし、ポンプ30を作動させる。同時に三方電磁弁42Acを作動させてポンプ30と、フィルター20Aの上部通水口とが連通するようにする。また、三方電磁弁42Adを作動させてフィルター20Bと酸性溶液注入部50の配管54とを連通するようにしておく。これにより、処理水はフィルター20Aのみに通水され、フィルター20Bには何も通水されない。この状態で3分作動したら、三方電磁弁42Abを切り替えてバッファタンク20Bに連なる流路がポンプ30に連通するようにするとともに、三方電磁弁42Acを作動させてフィルター20Aと酸性溶液注入部50の配管54とを連通するようにし、さらに、三方電磁弁42Adを作動させてバッファタンク20Bに連なる流路がポンプ30に連通するようにする。これにより、今度は、処理水はフィルター20Bにのみに通水されることとなる。さらに、一度処理水が通ったフィルター20Aには、酸性溶液注入部50の電磁弁53を開くとともにポンプ51を作動させることで、酸性溶液を注入する。この状態で3分作動させたら、再び、フィルター20Aに処理水を注水するようにするとともに、フィルター20Bには酸性溶液を注入するようにする。以下、3分ごとに処理水の通水と酸性溶液の注入がフィルター20A、20Bに交互に繰り返されることとなる。この動作は、所定の処理水量に達するまで行われる。
【0027】
このように交互に一方を通水工程とし一方を停止工程とするようにすると、処理水の通水を止める必要が無く完全な連続処理が可能となるだけでなく、吸着剤12の処理能力も向上させることができる。図7に交互にフィルターに通水させる場合におけるサイクル時間ごとの処理能力を比較した実験結果を表すグラフを示す。この実験は、2本のフィルターにフッ素濃度40mg/l程度の処理水をサイクル時間を3分、5分、10分としてときの処理水の通水量と、浄化処理後のフッ素濃度との関係を計測したものである。なお、図の中で点線で表しているのは単純に連続注水した場合の予測直線である。図に示されるように、交互にフィルターを通水すると、一時的に処理能力が高くなり、グラフがジクザグに推移することがわかった。この効果は3分を臨界値として現れ、5分を越えると処理能力の向上度合いは小さくなる。このことから、フィルターの容積にあわせて3分以上、望ましくは5分以上のサイクルを持って交互に通水することで、吸着剤の処理能力を高めることができると考えられる。
【0028】
さらに、停止工程中にフィルターに酸性溶液を通すことで吸着剤の処理能力はさらに高められる。図8に交互にフィルターに通水させ、かつ、停止工程時のフィルターに酸性溶液を注入した場合における処理能力を表すグラフを示す。これは、2mのフィルター10A、10Bで3分サイクルにて交互にフッ素濃度40mg/l程度の処理水の通水を行うとともに、通水が行われていないフィルターには酸性溶液を流した場合における通水量と浄化処理後のフッ素濃度との関係を示している。なお、点線で表しているのは単純に連続注水した場合の予測直線である。この予測直線は図4の試験結果にほぼ合致する。図で示すとおり、交互処理をしつつ停止工程時に酸性溶液を通すと、吸着剤の処理能力は定期的に急激に回復し、平均して水平に近いジグザグの曲線となる。この結果、連続通水の場合は約70lで排水基準値の8mg/lに達するが、交互処理をしつつ停止工程時に酸性溶液を通す場合は3倍の通水量でも8mg/lに達することは無く、4倍以上の処理能力の向上があるものと推測できる。
これは、吸着剤12には表面近傍側ほど有害物質の吸着量が多く、飽和状態に近くなっているが、pH4未満の酸性溶液をフィルターに通すことで吸着剤12の表面近傍部分を剥離させて、吸着剤12の上層部分の濃度が濃い部分を取り除き、吸着剤12表面の有害物質濃度を低下させることにより吸着剤の能力が回復するためであると考えられる。
さらに、吸着剤は吸着反応をすることで発熱を起こすが、酸性溶液を通すことでこの発熱した吸着剤が冷やされ、これによっても吸着剤の能力が回復すると考えられる。この点において、酸性溶液注入部50は冷却水を通水する冷却手段としても機能する。
【0029】
以上のように本実施形態にかかる水処理装置Yは、交互に2組のフィルターに通水を行うともに、停止工程にある側のフィルターには酸性溶液を通すことで、交互停止による吸着剤の機能向上に加えて酸性溶液による吸着剤の表面剥離及び冷却により、飛躍的に吸着剤の機能を向上させることが可能となる。
また、実施形態1で説明したように、フィルターの長さを長くすることで、この効果はさらに向上する。即ち、18mのフィルターを連続通水する場合、6t程度の処理水の浄化が可能であると推測されたが、交互処理と酸性溶液の注入によりさらに4倍以上の処理能力の向上が推測できる。そして、実施形態1で実施した処理水保持工程を併用すれば、さらに2倍の処理能力の向上が見込めるので、合わせて6tの8倍、即ち48トンの処理水の浄化が可能になる。これは、連続的に排水が流れてくる一般的な事業所で想定される、フッ素濃度20mg/lの排水量30t/日に対しても十分に対応できる量である。この場合、内径40mm、長さ18mのフィルターには約23kgの吸着剤12を充填でき、これを並列に2本並べると約46kgの吸着剤で足りることとなる。従来の方式で20mg/lのフッ素を含有する排水を30t/日で処理する場合、一日あたり約3300kgの吸着剤が必要であることを考えると、この方法により、ランニングコストを従来の方式の70分の1程度に低減することが可能であることになる。
また、装置自体の構成も、従来の方法のように攪拌手段、pH調整手段、排水・廃液手段等の構成要素を必要とせず、比較的簡単な構成で実現することができるので、装置事態のコストも低減できるとともに、簡易な構成によりメンテナンス等も簡易に行うことができる。
【0030】
なお、上記実施形態では酸性溶液注入部50が冷却手段を兼ねていたが、冷却手段としては酸性溶液注入部50に代えて、水道水などに接続される電磁弁55の開閉によりフィルター10A、10Bに冷却水に注入することで、フィルター10A、10B内の吸着剤を冷却し、洗浄させるような構成を取ることができる。さらに冷却手段としてエアーポンプでフィルター10A、10B内に空気を通すことで、フィルター10A、10B内の吸着剤を冷却し、乾燥させるような構成を取ることも可能である。これらの構成によっても、実験により通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係は、それぞれ図8に示すものとほぼ近似したジグザグの曲線をもって推移することがわかっている。また、このような冷却手段を設けなくても、フィルターへの注水を止めるとともに、処理水をフィルターから自然に落下させることで、フィルター内に自然に周囲の空気が流入して、冷却、乾燥の効果が奏されることも考慮することができる。
【0031】
また、図9に示すように、フィルター10の長さを長くするために螺旋状の単位フィルター10p、10pを直列に繋いだ長尺フィルター10Wを用いることもできる。なお、図9では、バッファタンク20p、20p・・・の前段にもさらに、予備バッファタンク20fが設けられている。
また、実施形態1に係る水処理装置Xでは酸性溶液注水部や冷却手段が設けられていないが、停止時間を長くする場合には、酸性溶液注水部や冷却手段を設けることも可能である。
さらに、実施形態2に係る水処理装置Yでは、並列に2つフィルターを配列したが、3つ以上のフィルターを配列するようにしてもよい。この場合、すべてのフィルターが同時に停止工程とならないように制御することが望ましい。
そして、上記実施形態では、主として有害物質としてフッ素を取り上げているが、アルミナを主成分とした多孔質吸着剤では除去できる有害物質はこれに限られず、六価クロム・ニッケル・銅等の重金属有害物やリン・シアン・砒素・窒素などの有害物も吸着除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1に係る水処理装置の構成を模式的に示す模式図である。
【図2】フィルター及びバッファタンクを示す斜視図である。
【図3】フィルターに連続通水する場合と処理水保持工程を設ける場合の通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】フィルターの長さを代えて連続通水する場合の通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係を示すグラフ図である。
【図5】フィルターの長さを3m、6mとした場合および従来方式の場合の通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係を示すグラフ図である。
【図6】実施形態2に係る水処理装置の構成を模式的に示す模式図である。
【図7】交互にフィルターに通水させる場合におけるサイクル時間ごとの通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係を示すグラフ図である。
【図8】交互にフィルターに通水させ、かつ、停止工程時のフィルターに酸性溶液を注入した場合における通水量と浄化処理後の有害物質濃度との関係を示すグラフ図である。
【図9】螺旋部分を直列に並べたフィルターを用いた水処理装置の構成を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0033】
10、10A、10B、10w フィルター
20、20A、20B、20p バッファタンク
30 ポンプ
40 配管
50 酸性溶液注入部
55 電磁弁(冷却水用)
56 エアーポンプ
100、110、120 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化処理を行う処理水をアルミナを主成分とする多孔質吸着剤を充填したフィルター内に一定時間通水させる通水工程と、通水工程の後に5秒以上通水を停止する停止工程と
を交互に繰り返す水処理方法。
【請求項2】
前記フィルターを複数並列に配置するとともに、各フィルターに対し前記通水工程と停止工程とを交互に繰り返すとともに、すべてのフィルターの停止工程が重なることがないように通水のタイミングが設定される請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記フィルターは、2組に分けられ、いずれか一方の組が通水工程を行っている間は、いずれか他方の組は停止工程となり、いずれか一方の組が停止工程を行っている間は、いずれか他方の組は通水工程となるように通水タイミングが設定される請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記通水タイミングは3分以上の時間間隔で各組の通水工程と停止工程とが交互に入れ替わるよう設定される請求項3に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記フィルターは最大内径に対して長さが8倍以上に設定されるものである請求項1から4のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記停止工程にある前記フィルター内の処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させる処理水保持工程を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記停止工程にある前記フィルターを冷却する冷却工程を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記冷却工程は、前記フィルターに冷却水を通水するものである請求項8に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記冷却工程は、前記フィルターに冷却空気を通すものである請求項8に記載の水処理方法。
【請求項11】
前記停止工程にある前記フィルターに酸性溶液を通す酸性溶液注入工程を有する請求項1から6及び8のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項12】
アルミナを主成分とする多孔質吸着剤を充填したフィルターと前記フィルターへの通水を制御する通水制御手段とを有し、前記通水制御手段は、前記フィルターへ一定時間通水させた後に5秒以上停止させる通水パターンを繰り返すように制御するものである水処理装置。
【請求項13】
前記フィルターは複数並列に配列されるものであって、前記通水制御手段は、すべてのフィルターが同時に通水が停止することがないように制御する請求項12に記載の水処理装置。
【請求項14】
前記フィルターは2組に分かれるものであって、前記通水制御手段は、2組のフィルターに交互に通水と、通水の停止を繰り返す請求項13に記載の水処理装置。
【請求項15】
前記通水制御手段は、3分以上の時間間隔で通水と、通水の停止を繰り返す請求項14に記載の水処理装置。
【請求項16】
前記フィルターは最大内径に対して長さが8倍以上に設定されるものである請求項12
から15のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項17】
前記フィルターの注水口の前にバッファタンクが設けられる請求項12から16のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項18】
前記バッファタンクは柱状に形成され、前記フィルターは前記バッファタンクを取り巻くように管体を螺旋状に巻いた形状に形成される請求項17に記載の水処理装置。
【請求項19】
前記フィルター内において処理水の移動を停止又は処理水の流速を低下させる処理水保持手段を有する請求項12から18のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項20】
前記フィルターを冷却する冷却手段を有する請求項12から18のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項21】
前記冷却手段は、冷却水を貯めた冷却水タンクと前記フィルターの通水口もしくは排水口との間に設けられるバルブと、前記バルブを制御するバルブ制御装置とからなる請求項20に記載の水処理装置。
【請求項22】
前記冷却手段は、前記フィルターの通水口もしくは排水口に接続される冷却空気を送り込む冷却空気送風器と、冷却空気送風器を制御する送風制御装置とからなる請求項20に記載の水処理装置。
【請求項23】
前記フィルターに酸性溶液を通す酸性溶液注入手段を有する請求項11から21のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−119585(P2008−119585A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305202(P2006−305202)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(505247867)有限会社Jトップサービス (8)
【出願人】(505295237)堺鋼板株式会社 (7)
【Fターム(参考)】