説明

水処理用微生物担体集合体

【課題】浄水槽への投入時に水処理用微生物担体が飛散することなく、作業性が良好で、さらには梱包容積を小さくすることができ、しかも水処理用微生物担体は吸水性が高く、処理水内に速やかに水没する水処理用微生物担体集合体の提供を目的とする。
【解決手段】連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体11を圧縮した状態で集合し、前記圧縮及び集合状態をバインダーにより固定して水処理用微生物担体集合体とし、前記バインダーによる前記圧縮及び集合状態が水により解除されて、前記水処理用微生物担体が分離し復元するようにした。前記バインダーは、カルボキシメチルセルロースや低分子の酸の金属塩が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理用微生物担体集合体に関し、特には浄水槽に投入されることにより集合が解除されて水処理用微生物担体に分離する水処理用微生物担体集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質ポリウレタン発泡体をキュービック形状のチップとした水処理用微生物担体が、微生物による汚水処理用に広く知られている。
【0003】
しかし、軟質ポリウレタン発泡体は、そのままでは吸水し難いことから、水処理用微生物担体が処理水中に分散し難くなって、汚水処理効率が低くなる問題がある。そこで、吸水性を高める処理を軟質ポリウレタン発泡体の表面に施すことが行われている。ところが、水処理用微生物担体と処理水との接触効率を高めるために水処理用微生物担体を小さくすると、吸水性を高める処理を施す表面が小さくなって、処理が難しくなり、処理作業に手間取るようになる。
【0004】
また、軟質ポリウレタン発泡体のチップからなる水処理用微生物担体は、浄水槽に投入する際に周囲に飛散し易く、周囲を汚す問題がある。さらに、軟質ポリウレタン発泡体チップからなる水処理用微生物担体は嵩張るため、梱包容積が大きくなり、輸送や保管に場所を取る問題がある。そこで、水溶性合成樹脂を一部または全部に用いた収容袋に、軟質ポリウレタン発泡体チップからなる水処理用微生物担体を圧縮して収容し、袋ごと浄水槽に投入することが提案されている。これによれば、浄水槽へ投入する際に水処理用微生物担体が飛散するのを防止でき、しかも梱包容積を小さくすることが可能である。しかし、軟質ポリウレタンフォームからなる水処理用微生物担体自体が吸水し難いことに変わりないため、水処理用微生物担体が完全に吸水するまでに、かなりの時間を必要とし、水面に浮かんだ状態がしばらく続き、本来の水処理効率を得るのに時間がかかる問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−89803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、浄水槽への投入時に水処理用微生物担体が飛散することなく、作業性が良好で、さらには梱包容積を小さくすることができ、しかも水処理用微生物担体の吸水性が高く、水処理用微生物担体が処理水内に速やかに水没することのできる水処理用微生物担体集合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体が圧縮された状態で集合し、前記圧縮及び集合状態がバインダーにより固定されていると共に、前記バインダーが水の付与により前記圧縮及び集合状態を解除するものからなることを特徴とする水処理用微生物担体集合体に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記水処理用微生物担体集合体が水に投入されることにより、前記バインダーによる前記圧縮及び集合状態が水分で解除されて、前記水処理用微生物担体が分離復元可能とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記水処理用微生物担体のセル内に前記バインダーが付着していることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記バインダーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記バインダーが、低分子の酸の金属塩であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体が、軟質ポリウレタン発泡体であることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか一項において、前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体が除膜されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水処理用微生物担体集合体は、水処理用微生物担体が圧縮された状態で集合し前記圧縮及び集合状態がバインダーにより固定され、前記バインダーが水の付与により前記圧縮及び集合状態を解除するものからなるため、非圧縮の水処理用微生物担体を梱包するのと比べて梱包容積を小さくすることができる。また、前記背景技術の項で説明した収容袋に水処理用微生物担体を収容する場合は、袋内の水処理用微生物担体間に隙間を生じやすいのに対し、本発明の水処理用微生物担体集合体は水処理用微生物担体間に隙間を生じにくいため、収容袋に水処理用微生物担体を収容するのと比べて梱包容積を小さくすることができる。そのため、輸送や保管に場所を取らず、非圧縮の場合と同一のスペースでより多くの数量を輸送及び保管できるので、輸送費用及び保管費用を減らすことができる。さらに、水処理用微生物担体集合体は、浄水槽へ投入されると、バインダーが浄水槽の水と接触して溶解し、それにより前記水処理用微生物担体の圧縮及び集合状態が解除され、前記水処理用微生物担体が分離して復元し、浄水槽に分散する。そのため、浄水槽へ水処理用微生物担体集合体を投入する際には水処理用微生物担体が飛散することがなく、作業性がよい。
【0015】
しかも、本発明によれば、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体の表面及びセル内にバインダーが付着して水処理用微生物担体の圧縮及び集合状態が固定されているため、水処理用微生物担体が水に投入されるまで前記圧縮及び集合状態を確実に維持することができる。さらに、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体の表面及びセル内にカルボキシメチルセルロースが付着して水処理用微生物担体の圧縮及び集合状態が固定されている場合には、カルボキシメチルセルロースが水溶性であるため、カルボキシメチルセルロースの存在により水処理用微生物担体の吸水性を向上させることができる。この吸水性向上により、浄水槽に水処理用微生物担体集合体が投入された際に、水処理用微生物担体が水面下に沈むまでの時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る水処理用微生物担体集合体を示す図、図2は浄水槽への投入による水処理用微生物担体集合体の分解を示す模式図である。
【0017】
図1に示す水処理用微生物担体集合体10は、複数の水処理用微生物担体11が圧縮された状態で集合し前記圧縮及び集合状態がバインダーにより固定されたものであって、前記バインダーが水の付与(水との接触)により前記圧縮及び集合状態を解除するものからなり、図2のように、浄水槽21に投入されて水22と接触すると、バインダーによる圧縮及び集合状態の固定が解除されて水処理用微生物担体11が分離し、復元するものである。
【0018】
水処理用微生物担体11は、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体を、所用のサイズのチップとしたものからなる。前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体としては、特に限定されず、例えば軟質ポリウレタン発泡体やポリオレフィン系樹脂発泡体を挙げることができる。特に軟質ポリウレタン発泡体は、耐摩耗性に優れ、安価で入手が容易なことから好ましい。さらに、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体は、除膜されたものが好ましい。除膜されたものは、セル膜が公知の爆破法や溶解法などで除去されて、三次元網状骨格となっているため、水が内部に浸透し易く、水処理用微生物担体が水中に分散するまでの時間を短縮することができる。また、連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体は、嵩密度が20〜70kg/mであるのが好ましい。嵩密度が低くなると水処理用微生物担体11の耐久性が低下し、一方、嵩密度が高くなると水処理用微生物担体11のセルサイズ(気孔)が小さくなって、吸水性が低下するようになると共に、水処理用微生物担体集合体10の製造時に、水処理用微生物担体11の圧縮が難しくなる。水処理用微生物担体11のサイズは、適宜とされるが、通常2mm〜25mmとされる。また、水処理用微生物担体11の形状は適宜の立体とされるが、通常は立方体とされることが多い。
【0019】
水処理用微生物担体集合体10における水処理用微生物担体11は、非圧縮状態の体積の10〜70%に圧縮されているのが好ましい。圧縮程度が低いと水処理用微生物担体集合体10が嵩張るため、水処理用微生物担体集合体10の輸送や保管に多くのスペースが必要になり、一方、圧縮程度が高いと水処理用微生物担体集合体10の製造時における圧縮が困難となる。
【0020】
バインダーは、乾燥によって接着し、水の付与(水との接触)により接着を解除するものであれば、制限なく使用することができる。前記バインダーとしては、水溶性バインダー、低分子の酸の金属塩、非イオン界面活性剤を挙げることができる。前記低分子の酸の金属塩及び非イオン界面活性剤としては、常温で固体、軟化点または融点が80℃以上のものが好ましい。前記バインダーの具体例として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニルアセトアミド(PNVA)、メチルセルロース(MC)、グアパック(GP)、ガラクトース、マンノース、ガムロジン系不均化ロジンカリウム塩及びガムロジン系不均化ロジンナトリウム塩、合成ガムであるアラビアゴム、アルギン酸塩、カラゲーナン、ペクチン及び植物性ガム類、中国産ガムロジン(脂松香)やガムテレピン油及び、これらの誘導体(重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン)、さらにこれらのエステル等を挙げることができる。
【0021】
特には、常温でゲル化し、水処理用微生物担体集合体10の製造時における乾燥に際して、耐熱及び耐久性のあるカルボキシメチルセルロース(CMC)や、常温で固体、融点が80℃以上の低分子の酸の金属塩、例えば前記ガムロジン系不均化ロジンカリウム塩及びガムロジン系不均化ロジンナトリウム塩等が好ましい。前記カルボキシメチルセルロースは生分解するため、水処理用微生物担体11のセル内に残った場合に、汚泥分解する微生物がカルボキシメチルセルロースを分解することによってさらに活性化し、汚泥処理能力の増大を期待することができる。一方、常温で固体、軟化点または融点が80℃以上の低分子の酸の金属塩は、取り扱い、保管、輸送などの環境条件を考慮して選択されている。80℃より低い場合、環境条件によってはバインダーの融解が生じ、水処理用微生物担体集合体の崩壊がおこるおそれがある。なお、乾燥に際して耐熱及び耐久性を備えていないバインダーでは、乾燥時に変質して不溶性となり、浄水槽に水処理用微生物担体集合体10を投入した際にバインダーが分解(接着解除)しなかったり、水処理用微生物担体集合体10の輸送時に接着強度が低下して水処理用微生物担体11が水処理用微生物担体集合体10から脱落したりする。また、コーンスターチや澱粉糊をバインダーとして使用した場合、乾燥時の加熱によってコーンスターチや澱粉糊がグルテンに変質して不溶性となるため、バインダーが水に溶けず、水処理用微生物担体集合体10の水処理用微生物担体11が分解、分散することがなかった。
【0022】
バインダーとしてカルボキシメチルセルロースを用いる場合、カルボキシメチルセルロースは、メチル化率が0.6〜1.4、より好ましくは水による良好な分解性を得るため0.6〜0.8のものである。また、水処理用微生物担体集合体10を製造する際のカルボキシメチルセルロースは、2%濃度の水溶液の粘度が10Pas〜1000Pasのものが好ましく、より好ましくは浄水槽内の水に残留した場合の影響を考慮すると10Pas〜100Pasのものである。さらに、水処理用微生物担体集合体10を製造する際のバインダー水溶液の濃度は、0.5%〜5%が好ましい。濃度が低いと水処理用微生物担体集合体10が取り扱い時に崩れ易くなり、一方、濃度が高いと、水処理用微生物担体集合体10が水により分解し難くなることから、濃度は0.5%〜3%がより好ましい。
【0023】
前記水処理用微生物担体集合体10の製造方法は、圧縮工程、浸漬工程、圧縮繰り返し工程、乾燥工程からなる。
【0024】
圧縮工程では、前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体チップからなる水処理用微生物担体11の所要量を圧縮する。その際の圧縮は、非圧縮状態における体積の10〜70%の体積に圧縮するのが好ましい。その際の圧縮が大の場合には圧縮を行うために加える圧力が大きくなりすぎて圧縮が困難となり、一方圧縮が少なすぎる場合には、その後の圧縮繰り返し工程でバインダー水溶液を、水処理用微生物担体11の内部まで含浸させにくくなる。前記圧縮方法の具体的な一例として、図3に示すように一方(図では上方)が開口した網かご31に所要量の水処理用微生物担体11を収容し、前記網かご31の開口部に蓋体33をはめて蓋体33をプレス装置等により網かご31内に押し込むことによって網かご31内の水処理用微生物担体11を圧縮する方法を挙げる。前記蓋体33は、網状のものや小孔を形成した板状体でもよい。なお、前記網目や小孔は前記水処理用微生物担体11が圧縮時に通り抜けない大きさとされる。また圧縮状態で蓋体33を固定するには、図4に示すように、トグルクランプ40を用いて行うことができる。
【0025】
浸漬工程では、前記水処理用微生物担体11を圧縮した状態の網かご31を、前記バインダー水溶液に浸漬する。このとき、前記網かご11内の水処理用微生物担体11が、完全にバインダー水溶液の液面より下方位置となるようにされる。なお、バインダー水溶液充填前の容器内に前記網かご31を配置して前記圧縮工程を行い、その状態で前記容器内にバインダー水溶液を充填して、この浸漬工程を行ってもよい。例えば、前記網かご31を容器の内底面に配置し、上方に位置するプレス装置の昇降部材に前記蓋体33を係止し、前記蓋体33をプレス装置で網かご31内の所要位置に押し込むことにより前記水処理用微生物担体11を圧縮して前記圧縮工程を行い、次いで前記容器内にバインダー水溶液を充填して前記浸漬工程を行ってもよい。
【0026】
圧縮繰り返し工程では、前記水処理用微生物担体11の圧縮を一旦緩和し、その後再び圧縮する圧縮緩和と圧縮の繰り返しを所要回数行い、これによって水処理用微生物担体11内に強制的にバインダー水溶液を含浸させてセル内に付着させる。そして最終的に非圧縮状態における体積の10〜70%に圧縮した状態とする。なお、前記圧縮緩和状態は、前記水処理用微生物担体11を、非圧縮状態における体積の40〜80%にするのが好ましい。圧縮を緩和する程度が少ないと、バインダー水溶液が水処理用微生物担体11内に含浸し難く、一方、圧縮を緩和する程度が大きいとその後の圧縮量が大になるため、水処理用微生物担体11に強度低下を生じるおそれがある。この際の圧縮及び圧縮緩和は、前記蓋体33を網かご31内で前進後退させることにより行うことができる。具体的な方法として、前記網かご31をバインダー水溶液収容容器内の底面に位置させ、網かご31の上方に配置したプレス装置の昇降部材に前記蓋体33を係止し、プレス装置の昇降部材を上下させることにより行う方法を挙げることができる。
【0027】
乾燥工程では、前記圧縮状態のまま前記バインダー水溶液から前記水処理用微生物担体11を取り出し、乾燥させることにより前記バインダーの接着力で水処理用微生物担体11の圧縮状態と集合状態を固定し、前記水処理用微生物担体集合体10を得る。前記網かご31を使用する場合には、前記圧縮繰り返し工程終了時の圧縮状態で前記蓋体33の位置を前記トグルクランプ40により固定し、その状態で前記バインダー水溶液から網かご31ごと取り出して乾燥装置で加熱することにより水処理用微生物担体集合体10を形成し、その後に前記網かご31から水処理用微生物担体集合体10を取り出す。なお、前記圧縮繰り返し工程後に、バインダー水溶液を容器から排出し、次いで加熱装置の熱風を前記容器内の網かご31に吹きつけて乾燥を行い、その後網かご31から水処理用微生物担体集合体10を取り出すようにしてもよい。前記乾燥時の温度は、水分を加熱蒸散させることのできる温度とされ、通常は70〜110℃とされる。
【実施例】
【0028】
・実施例1
縦×横×高さ=3×3×3mmに粉砕された軟質ポリウレタン発泡体からなる水処理用微生物担体(株式会社イノアックコーポレーション製、品番;AQ−3、除膜品、嵩密度;50kg/m)の0.02kgを、図5に示すような円筒形状(内径100mm、高さ100mm)からなる0.785リットル容積のステンレス製網かご45の底部に配置された網状底板49上に投入した。前記網かご45内への水処理用微生物担体の投入により、網かご45は上端まで水処理用微生物担体で一杯になった。次に、網かご45の上方の開口部に網状蓋体51を被せ、プレス装置53により網状蓋体51を網かご45内に押し込んで網状蓋体51を網状底板49から20mmの高さにし、前記水処理用微生物担体を網状底板49と網状蓋体51間で圧縮した。これにより、水処理用微生物担体は、非圧縮状態の体積に対して20%の体積に圧縮され、その状態で維持される。なお、前記網かご45や前記網状底板49及び網状蓋体51の網目は2mmである。また、前記プレス装置53は、前記網かご45の上端に突設された係合部47に解除可能に係合する被係合部54が形成されたプレート55と、前記プレート55の中央に該プレート55を貫通して螺着され、回転により昇降可能とされたねじ部材57と、前記ねじ部材57の下端に設けられた蓋体押圧部59と、ねじ部材57の上端に設けられた回転用把持部61とよりなる。前記プレス装置53は、前記プレート55の被係合部54を網状かご45の係合部47に係合させて網状かご45に取り付け、その状態で前記ねじ部材57を一方向へ回転させて下降させることにより、前記蓋体押圧部59が網状蓋体51を下方へ押して前記水処理用微生物担体を前記網状底板49と網状蓋体51間で圧縮し、一方、前記ねじ部材57を逆方向へ回転させることにより前記蓋体押圧部59を上昇させ、前記水処理用微生物担体の圧縮を緩和あるいは解除することができる。
【0029】
次に、前記水処理用微生物担体を圧縮している網かごを、容積3リットルの容器に予め充填した濃度2%のカルボキシメチルセルロース水溶液(メチル化率;0.6〜0.8、2%濃度の粘度が100〜200Pas)に完全に浸漬させた。
【0030】
前記網かごをカルボキシメチルセルロース水溶液に浸漬した状態で、前記プレス装置53のねじ部材57を前記下降時とは反対方向へ回転させて、前記水処理用微生物担体が非圧縮状態時の体積の50%となるように前記網状底板49からの距離が50mmの位置まで網状蓋体51を上昇させ、その後、再び前記ねじ部材57を下降させる方向へ回転させて前記水処理用微生物担体が非圧縮状態の体積の20%となるように、前記網状蓋体51を前記網状底板49から20mmの位置まで下降させた。その状態で、網かご45をカルボキシメチルセルロース水溶液から取り出し、乾燥庫に保管して90℃で24時間加熱乾燥し、その後、水処理用微生物担体の圧縮状態及び集合状態が固定された実施例の水処理用微生物担体集合体を、網かご45から取り出した。
【0031】
このようにして得られた実施例1の水処理用微生物担体集合体は、直径100mm、高さ20mm、体積157cmであり、梱包容積は0.2リットルであった。この水処理用微生物担体集合体を水槽に投入したところ、20〜45分で完全に水処理用微生物担体に分離し、しかも分離した水処理用微生物担体は全て水面下にあった。
【0032】
・実施例2
実施例1における濃度2%のカルボキシメチルセルロース水溶液に代えて、ガムロジン系不均化ロジンカリウム塩の3%水溶液を用い、前記水処理用微生物担体を圧縮している網かごを、容積3リットルの容器に予め充填した前記ガムロジン系不均化ロジンカリウム塩の3%水溶液に完全に浸漬させた。また、前記網かごをガムロジン系不均化ロジンカリウム塩の3%水溶液に浸漬した状態で、前記プレス装置53のねじ部材57を前記下降時とは反対方向へ回転させて、前記水処理用微生物担体が非圧縮状態時の体積の50%となるように前記網状底板49からの距離が50mmの位置まで網状蓋体51を上昇させ、その後、再び前記ねじ部材57を下降させる方向へ回転させて前記水処理用微生物担体が非圧縮状態の体積の20%となるように、前記網状蓋体51を前記網状底板49から20mmの位置まで下降させた。その状態で、網かご45を前記ガムロジン系不均化ロジンカリウム塩の3%水溶液から取り出し、乾燥庫に保管して100℃で20分加熱乾燥した。その後、水処理用微生物担体の圧縮状態及び集合状態が固定された実施例2の水処理用微生物担体集合体を、網かご45から取り出した。このようにして得られた実施例2の水処理用微生物担体集合体は、直径100mm、高さ20mm、体積157cmであり、梱包容積は0.2リットルであった。この水処理用微生物担体集合体を水槽に投入したところ、20〜45分で完全に水処理用微生物担体に分離し、しかも分離した水処理用微生物担体は全て水面下にあった。
【0033】
また前記実施例と同量の水処理用微生物担体を、バインダーによる圧縮及び集合状態固定を行うことなく、樹脂製シートに包んで段ボール箱で梱包する従来の梱包と比較したところ、本実施例の水処理用微生物担体集合体は従来の40%の梱包容積であった。
【0034】
さらに、バインダーによる圧縮及び集合状態固定が行われていない水処理用微生物担体を水槽に投入したところ水面下に水没するのに6時間45分必要であった。このことから、本実施例では、従来と比べて水面下に水没するのに必要な時間を5〜12%に短縮することができたのがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る水処理用微生物担体集合体を示す図である。
【図2】浄水槽への投入による水処理用微生物担体集合体の分解を示す模式図である。
【図3】水処理用微生物担体の圧縮時の例を示す概略図である。
【図4】網かご内の水処理用微生物単体を圧縮状態にして蓋体を網かごに固定するトグルクランプの例を示す図である。
【図5】実施例において使用した網かご及びプレス装置等の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
10 水処理用微生物担体集合体
11 水処理用微生物担体
31,45 網かご
33,51 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体が圧縮された状態で集合し、前記圧縮及び集合状態がバインダーにより固定されていると共に、前記バインダーが水の付与により前記圧縮及び集合状態を解除するものからなることを特徴とする水処理用微生物担体集合体。
【請求項2】
前記水処理用微生物担体集合体が水に投入されることにより、前記バインダーによる前記圧縮及び集合状態が水分で解除されて、前記水処理用微生物担体が分離復元可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の水処理用微生物担体集合体。
【請求項3】
前記水処理用微生物担体のセル内に前記バインダーが付着していることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理用微生物担体集合体。
【請求項4】
前記バインダーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の水処理用微生物担体集合体。
【請求項5】
前記バインダーが、低分子の酸の金属塩であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の水処理用微生物担体集合体。
【請求項6】
前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体が、軟質ポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の水処理用微生物担体集合体。
【請求項7】
前記連通気泡構造を有する軟質合成樹脂発泡体が除膜されたものであることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の水処理用微生物担体集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−334588(P2006−334588A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245351(P2005−245351)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】