説明

水処理装置及び潜熱回収熱源機

【課題】 触媒微粒子を用いた水処理により反応活性を飛躍的に高めつつ、接触反応後に触媒微粒子を処理済水から分離・回収可能としかつそのまま再利用可能とすることができ、しかもそれらを容易かつ迅速に実現し得る水処理装置及びこれを備えた潜熱回収熱源機を提供する。
【解決手段】 処理槽2に被処理水を導入し、触媒微粒子と軟磁性粉とを投入して循環ポンプ72を作動させる。撹拌されて懸濁液状態となって循環し、触媒反応の進行により水処理する。水処理後、電磁石6をONしてカラム5の内壁面との間に磁界を発生させて、磁性粉を吸着・積層させて濾過層11を形成し、濾過層に触媒微粒子9を捕捉して分離する。清澄な処理済水を導出した後に新たな被処理水を導入し、電磁石をOFFして吸着した磁性粉や捕捉した触媒微粒子を解放して、被処理水に混入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非磁性の触媒微粒子を用いて水処理の飛躍的な効率化を図りつつも、水処理後にはその非磁性の触媒微粒子を処理済水から容易かつ迅速に分離・濾過して再利用し得る水処理装置及びこれを備えた潜熱回収熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置として、流路を横切る支持材上に磁性粉体を成層させて濾過層を形成し、この濾過層に通すことにより被処理水中の細菌や汚れ等を濾過して分離するものが知られている(例えば特許文献1,2又は3参照)。このものでは、上記濾過層を逆洗する際に、磁性粉体を磁石に吸着させて保持しておくようにすることにより、濾過層から細菌や汚れ等のみを逆洗・分離し得るようにしている。
【0003】
又、強磁性体で形成した多孔質ボールを励磁して磁化させた状態でタンク内に浮遊させ、マグネタイト等の鉄系酸化物を含む被処理水をタンク内に供給し、鉄系酸化物を多孔質ボールに吸着させて被処理水から磁気分離させるものも提案されている(例えば特許文献4参照)。このものでは、鉄系酸化物を吸着した多孔質ボールを排出管を通して洗浄槽に導出し、洗浄槽内で消磁させて鉄系酸化物を多孔質ボールから分離させるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−90124号公報
【特許文献2】特開平11−128627号公報
【特許文献3】特開2000−153104号公報
【特許文献4】特開平11−300120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の如き濾過層を用いて濾過し得る物質を対象にして、その物質が含まれた被処理水を濾過層に通すことによりその物質を直接的に濾過・分離するという水処理ではなくて、被処理水を触媒と接触させて改質反応もしくは分解反応を生じさせることにより被処理水に含まれる有害な化合物等を無害な化合物等に改質・分解して浄化するというような水処理においては、触媒との接触による反応活性を高める上で、触媒自身をより小さく、究極的には微粒子化して表面積の増大化を図ることが考えられる。つまり、触媒の反応活性はその比表面積に大きく依存し、例えば1μm程度の直径の触媒微粒子にすると極めて大きい比表面積となり、高い反応活性が得られることになると考えられている。
【0006】
ところが、触媒微粒子を水処理に用いる場合には、ペレット等の造粒化した触媒と比べると、接触反応させた後の取扱い又は排水処理が格段に困難となると考えられる。例えば、触媒微粒子を被処理水に混入して懸濁液になった状態で接触反応を進行させた後、処理済水を排水させるには、処理済水を触媒微粒子と共に懸濁液状態のままで排水するか、フィルタ材により触媒微粒子を捕集した上で排水するかが考えられるが、懸濁液状態での排水は好ましくなく、又、フィルタを用いた捕集では新たに被処理水を導入した際に再度触媒微粒子を新たに投入又は混入させたりフィルタを交換したりする必要があるというように、触媒微粒子の繰り返しの利用は現実的ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、触媒微粒子を用いた水処理により反応活性を飛躍的に高めつつ、接触反応後にその触媒微粒子を処理済水から分離・回収可能としかつそのまま再利用可能とすることができ、しかもそれらを容易かつ迅速に実現し得る水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明に係る水処理装置では、被処理水を処理する処理槽と、この処理槽に被処理水を導入する導入手段と、上記処理槽において処理された後の処理済水を処理槽から導出する導出手段とを備えることとする。上記処理槽として、上記被処理水と接触することにより被処理水を処理する非磁性の触媒微粒子と、磁性微粒子と、これらの触媒微粒子及び磁性微粒子が混合されて懸濁液の状態にされた上記被処理水が一側から他側に流されるように区画形成された流路と、この流路の途中に設置された電磁石とを備えるものとし、上記電磁石に通電されて上記流路を横切るように磁界が形成され、形成された磁界により上記磁性微粒子が吸着されて積層して、触媒微粒子を捕捉して分離する濾過層が形成される構成とする(請求項1)。
【0009】
この第1の発明の場合、比表面積の極めて大きく反応活性の高い触媒微粒子を用いて被処理水の触媒反応処理を極めて高い処理効率で実施することが可能となる。又、触媒微粒子を用いて被処理水への混入により懸濁液状態にし得るため、ペレット等の造粒化した触媒の場合と比べ、かなり強い程度での撹拌が可能となって、接触反応を促進し得ることが可能となる。加えて、水処理後には、電磁石をON作動させて流路内に磁界を発生させるだけで、懸濁液状態の被処理水に浮遊している磁性微粒子により濾過層が形成され、この濾過層に触媒微粒子が捕捉されることになる一方、電磁石をOFFにすれば上記の濾過層も解消されることになる。従って、水処理後には、非磁性の触媒微粒子を迅速かつ容易に処理済水と分離させることが可能となる上に、分離させた触媒微粒子を次の水処理に繰り返し使用することが可能となる。
【0010】
上記第1の発明においては、次の如くさらに特定事項を追加したり、より具体化したりすることができる。第1としては、上記水処理装置における処理槽に、上記流路に対し繰り返し循環させる循環手段を備えるようにすることができる(請求項2)。このようにすることにより、電磁石への磁性微粒子の吸着・積層が循環により繰り返し行われ、濾過層の形成や、濾過層による触媒微粒子の捕捉がより確実に行われるようになる。
【0011】
第2としては、上記濾過層として、磁界により吸着される磁性微粒子に加えて、吸着された磁性微粒子により捕捉される触媒微粒子も濾過層を構成する一部にして形成される構成とすることができる(請求項3)。この場合、磁性微粒子のみならず、形成過程にある濾過層に捕捉された触媒微粒子をも取り込んで以後の触媒微粒子を捕捉する濾過層を形成することができ、触媒微粒子をして濾過性能の増進に寄与させることが可能となる。
【0012】
第3としては、上記磁性微粒子を軟磁性体により形成することができる(請求項4)。このようにすることにより、電磁石の磁界を解消させれば、磁性微粒子の磁気も即座に解消させて吸着から解放させることが可能となり、これにより、磁性微粒子のみならず捕捉されていた触媒微粒子も被処理水に対し即座に分散して浮遊した状態に戻すことが可能となる。つまり、触媒微粒子や磁性微粒子を再利用し得る状態に即座に戻すことが可能となる。
【0013】
第4としては、上記触媒微粒子として二酸化マンガン触媒の粉末により構成し、ホルムアルデヒドを含有する被処理水を処理対象にして上記ホルムアルデヒドを酸化分解反応により除去する構成とすることができる(請求項5)。このようにすることにより、ホルムアルデヒドを含有した被処理水からホルムアルデヒドを除去する水処理を、接触反応効率よく、しかも上述の作用を得つつ行うことが可能となる。
【0014】
又、第2の発明に係る潜熱回収熱源機では、上記の請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水処理装置と、燃焼排ガスから潜熱を回収するための二次熱交換器とを備え、この二次熱交換器と水処理装置とを、二次熱交換器において潜熱回収により発生する排ガスドレン水を被処理水として上記水処理装置において水処理するように接続するようにした(請求項6)。この第2の発明の場合、排ガスドレン水の処理において、第1の発明の水処理装置による作用を得て効率よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、請求項1〜請求項5のいずれかの水処理装置によれば、比表面積の極めて大きく反応活性の高い触媒微粒子を用いて被処理水の触媒反応処理を極めて高い処理効率で実施することができ、又、触媒微粒子を用いて被処理水への混入により懸濁液状態にし得るため、ペレット等の造粒化した触媒の場合と比べ、かなり強い程度での撹拌が可能となって、接触反応を促進させることができるようになる。加えて、水処理後には、電磁石をON作動させて流路内に磁界を発生させるだけで、懸濁液状態の被処理水に浮遊している磁性微粒子により濾過層を形成することができ、この濾過層により触媒微粒子を捕捉することができる一方、電磁石をOFFにすれば上記の濾過層も解消することができるようになる。従って、水処理後には、非磁性の触媒微粒子を迅速かつ容易に処理済水と分離させることができる上に、分離させた触媒微粒子を次の水処理に繰り返し使用することができるようになる。
【0016】
特に、請求項2によれば、電磁石への磁性微粒子の吸着・積層を循環により繰り返し行うことができ、濾過層の形成や、濾過層による触媒微粒子の捕捉をより確実に行うことができるようになる。
【0017】
請求項3によれば、磁性微粒子のみならず、形成過程にある濾過層に捕捉された触媒微粒子をも取り込んで以後の触媒微粒子を捕捉する濾過層を形成することができ、触媒微粒子をして濾過性能の増進に寄与させることができる。
【0018】
請求項4によれば、電磁石の磁界を解消させれば、磁性微粒子の磁気も即座に解消させて吸着から解放させることができ、これにより、磁性微粒子のみならず捕捉されていた触媒微粒子も被処理水に対し即座に分散して浮遊した状態に戻すことができるようになる。従って、触媒微粒子や磁性微粒子を再利用し得る状態に即座に戻すことができ、濾過層により分離させた触媒微粒子を次の水処理に繰り返し使用することができるようになる。
【0019】
請求項5によれば、ホルムアルデヒドを含有した被処理水からホルムアルデヒドを除去する水処理を、二酸化マンガン触媒の粉末により接触反応効率よく、しかも上述の効果を得つつ行うことができるようになる。
【0020】
又、請求項6の潜熱回収熱源機によれば、請求項1〜請求項5のいずれかの水処理装置による効果を、二次熱交換器において潜熱回収により発生する排ガスドレン水を被処理水とする水処理において、得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る水処理装置1を原理的に示したものである。同図中の符号2は処理槽、3はこの処理槽2に対し被処理水を開閉可能に導入する導入手段、4は処理槽2から処理済水を開閉可能に導出する導出手段、5は処理槽2に建て込まれたカラム、6はこのカラム内に配設された電磁石、7は処理槽2内の被処理水をカラム5内を通過するように循環させる循環手段、8は磁性微粒子としての磁性粉、9は非磁性の触媒微粒子、10は水処理装置1他の作動を制御するコントローラである。上記カラム5が、区画形成された流路を構成する。
【0023】
処理槽2は、例えば1回分の水処理(バッチ処理)に対応する被処理水量を貯留するに十分な内容積を有する容器であり、上方位置には被処理水を内部に導入し得るように導入管31の下流端311が開口されている。又、底部位置には導出管41の上流端が接続されている。そして、処理槽2内の一側位置(図1の右側位置)には円筒状のカラム5が上下に延びるように配設されている。このカラム5は、その下端開口51と処理槽2の底面21との間に、被処理水が流通し得るように所定の隙間を開けて配設され、下端側位置に電磁石6が配設されている。
【0024】
導入手段3は、上記の導入管31と、下流端付近に介装された開閉体32とを備えて構成されている。又、導出手段4は上記の導出管41と、処理槽2近傍位置に介装された開閉体42とを備えて構成されている。上記の開閉体32,42は例えば電磁開閉切換弁等により構成され、いずれもコントローラ10により作動制御されて開閉切換が行われるようになっている。開閉体32は通常は閉状態に維持され、被処理水が導入されるときに開状態に切換制御されるようになっている。又、開閉体42も通常は閉状態に維持され、水処理後の処理済水が導出されるときに開状態に切換制御されるようになっている。
【0025】
電磁石6はカラム5の中心軸位置に沿って配設され、カラム5の内周壁面52と電磁石6の外周面との間には所定幅のドーナッツ状空間53が区画形成されるようになっている。このドーナッツ状空間53には、後述の濾過層を構成するフェライトケーキが形成されるようになっている。この電磁石6は、コントローラ10により作動制御され、水処理の各工程の進行に伴い電磁石6のON(励磁)・OFF(消磁)の切換えが行われるようになっている。
【0026】
循環手段7は、循環配管71と、この循環配管71に介装された循環ポンプ72とを備えて構成されている。循環配管71の上流端711は処理槽2の他側位置(図1の左側位置)の底面21近くの所定レベル位置に開口し、下流端712はカラム5内に上から差し込まれてカラム5の上端開口54近傍位置で開口するように配設されている。そして、循環ポンプ72がON作動されると、処理槽2内に設定水位SLまで貯留された懸濁液状態(後述)の被処理水を循環配管71の上流端711から吸い込み、この被処理水を下流端712からカラム5の上端側に吐出してカラム5内のドーナッツ状空間53を通って処理槽2の底面21側に戻すというように、処理槽2内の被処理水が上記のカラム5内のドーナッツ空間53を通るように循環されるようになっている。加えて、この循環作動により、処理槽2内の被処理水が撹拌されることになる。この撹拌は循環配管71の下流端712からカラム5内の設定水位SLの被処理水に吐出されることにより、さらにその撹拌作用が強化されることになる。上記の循環ポンプ72はコントローラ10により作動制御されてON・OFF切換えされるようになっている。
【0027】
磁性粉8は、被処理水中に混入されることにより被処理水中に浮遊状態で分散される程度の微粒子(例えば直径が1〜10μm程度の微粒子)とされた軟磁性体であり、電磁石6のON作動により生じる磁界により磁石となって電磁石6の外周面に吸着・積層される結果、上記のドーナッツ空間53に濾過層を形成する一方、電磁石6のOFF作動により磁界が無くなれば磁気を即座に失って電磁石6から脱離・分散して再び浮遊状態に戻るようになっている。このような磁性粉8としては、例えばフェライト粉末、マグネタイトの粉末、鉄粉、ニッケル粉末、クロム粉末あるいはネオジウム等の希土類の粉末を用いることができ、特に軟磁性のソフトフェライト粉末を用いるのが好ましい。なお、磁性微粒子としての磁性粉8は、厳密な意味での軟磁性体ではなくても、軟磁性体に近い挙動を示すものであれば本発明に適用することも可能である。
【0028】
又、触媒微粒子9は、被処理水との接触反応により被処理水に含まれる有害化合物を分解等して被処理水を改質処理するためのものであって、非磁性のものである。加えて、触媒微粒子9は、磁性粉8と同様に被処理水中に混入されることにより被処理水中に浮遊状態で分散される程度の微粒子(例えば直径が1μm程度の微粒子)とされている。触媒微粒子と、この触媒微粒子により水処理される被処理水との組み合わせを例示すると、第1例としては、二酸化マンガン触媒を微粒子状態にした触媒微粒子を用いて被処理水に含まれるホルムアルデヒドを酸化分解反応により除去するものが挙げられる。このような被処理水としては、例えば、後述の給湯装置で生成される排ガスドレン水、病院もしくは医療研究機関での防腐処理に使用されたホルムアルデヒド水溶液を含む排水、皮革産業で排出されるホルムアルデヒド含有の排水、養殖水槽等で殺菌用に使用されたホルムアルデヒド水溶液の排水、あるいは、石油化学工場からのホルムアルデヒド含有排水等が挙げられる。第2例としては、酸化チタン等の光触媒を微粒子状態にした触媒微粒子により有機排水や、要殺菌処理水を被処理水として分解処理するものが挙げられる。さらに、第3例としては、白金触媒を微粒子状態にした触媒微粒子により有機排水等を被処理水として分解処理するものが挙げられる。
【0029】
磁性粉8と、触媒微粒子9とについて、さらに説明すると、これら双方の微粒子は、初回の水処理開始の際に空の処理槽2内に乾燥状態で、又は、双方の微粒子を水に溶解させた状態で、予め投入しておくか、あるいは、処理槽2内に被処理水を導入した後に投入する。いずれの場合でも、処理槽2に対し導入手段3により導入される被処理水中に磁性粉8及び触媒微粒子9が浮遊状態で分散され、この結果、被処理水に対し磁性粉8及び触媒微粒子9が混合された状態の懸濁液になる。このような磁性粉8及び触媒微粒子9は、いずれも完全に同一形状ではなくて一定範囲の粒径分布を有したものである。つまり、磁性粉8又は触媒微粒子9の直径は例えば1μmというときの「1μm」は平均粒子径を指している。そして、この懸濁液が循環ポンプ72のON作動によりカラム5を通して循環されている状態で電磁石6がON切換されて磁界が作用すると、例えばソフトフェライト粉末の磁性粉8の内でも大径のものが先に電磁石6の外周面に吸着され、次に、より小径のものが順次その外周側に吸着され、遂にはドーナッツ状空間53を埋めて上下方向に連続する多孔質の濾過層(フェライトケーキ)が形成されることになる。この過程で、その濾過層に、触媒微粒子9が大径のものから小径のものへと順に捕捉されることになり、大径から小径の触媒微粒子9が順に捕捉されるに従い、この捕捉された触媒微粒子9が濾過層の一部を構成して濾過層の形成・発達がより促進されることになり、その濾過機能のより増進が図られるようになっている。上記濾過層は、水を透過させる程度の連続した空隙を備える一方、触媒微粒子9より小さくて触媒微粒子9を捕捉し得る程度の空隙を備えたものとして形成されることになる。このような濾過層形成のために、例えば、触媒微粒子9の平均粒子径が磁性粉8の粒径分布内にあり、かつ、磁性粉8が触媒微粒子9の最小粒子径以上の大きさを有するようにサイズ設定される。
【0030】
以下、図2〜図4を参照しつつ、水処理装置を用いた水処理の各工程について説明する。この水処理方法は処理槽2の容積に対応する量の被処理水毎のバッチ処理により行われる。簡単に工程分けすると、今回のバッチ処理分の被処理水の導入(開閉体32の開閉切換)、触媒反応(循環ポンプ72のON作動)、触媒分離(電磁石6のON作動)、処理済水の導出(開閉体42の開閉切換)、次のバッチ処理分の被処理水の導入、触媒脱離(電磁石6のOFF作動)、そして、上記の触媒反応以降の各工程を繰り返すものである。
【0031】
被処理水の導入工程P1として、導出手段4の開閉体42を閉状態に維持したまま、まず、導入手段3の開閉体32を開切換して導入管31から被処理水を処理槽2内に設定水位SLまで導入して開閉体32を閉状態に戻す。次に、触媒反応工程P2として、電磁石6への通電をOFFにした状態で、循環ポンプ72をON作動して懸濁液状態の被処理水を循環させる。この循環作動により処理槽2内の被処理水は撹拌されて、被処理水は、予め又は後に投入された磁性粉8や触媒微粒子9が被処理水中に浮遊した懸濁液状態となる。被処理水が撹拌されつつ循環する間に触媒微粒子9が被処理水全体にわたって分散して接触反応が進行する。触媒微粒子9が二酸化マンガン触媒であって、被処理水がホルムアルデヒド含有のものであれば、そのホルムアルデヒドの酸化分解反応が進行して無害化処理される(以上、図2上半部参照)。設定水位SLに対応する量の被処理水と触媒微粒子9との関係から接触反応による水処理が完了するであろう時間値として設定された所定時間が経過すれば、触媒反応工程P2を終了して触媒分離工程に移る。
【0032】
触媒分離工程P3では、循環ポンプ72のON作動状態を維持して循環を継続させつつ、電磁石6をON作動させる。すると、循環している被処理水に含まれる磁性粉8が電磁石6の外周面に吸着・積層し、吸着・積層した磁性粉8がドーナッツ状空間53(図1参照)を埋めて濾過層11を形成することになる。上記の触媒反応工程により処理された処理済水は濾過層11を通過するものの、それに含まれる触媒微粒子9は濾過層11に捕捉されて処理済水から分離されることになる(以上、図2下半部参照)。この濾過層11の形成及び触媒微粒子の捕捉は循環により順次進行し、所定時間経過により懸濁液が循環している状態から、処理済水と、磁性粉8及び触媒微粒子9とが互いに分離されて清澄な処理済水のみが循環している状態に変化する(図3上半部参照)。
【0033】
次に、処理済水の導出工程P4に移り(図3下半部参照)、電磁石6はON作動状態のまま循環ポンプ72をOFFにして循環を停止させて、導出手段4の開閉体42を開変換する。これにより、処理槽2内の処理済水が導出管41を通して導出され、ついには処理槽2内が空になる。以上で初回のバッチ処理が終了し、次回のバッチ処理に移行する。
【0034】
次回のバッチ処理では、上記と同様に処理水の導入工程P1を実施して、処理槽2内に設定水位SLまで新たな被処理水を導入する。この導入工程P1が終了するまでの間、電磁石6はON作動状態のままとされ、これにより、磁性粉8による濾過層11は形成された状態に維持され、これに捕捉された触媒微粒子9も捕捉された状態に維持されている。そして、導入工程P1の後、触媒脱離工程P5を行う。触媒脱離工程P5では、電磁石6をOFF状態にすることにより磁界を取り去って濾過層11を分解(崩壊)させる。これにより、磁性粉8は元の微粒子状態に戻り、触媒微粒子9も捕捉された状態から解放されることになる。そして、引き続いて又は電磁石6のOFF作動と同期して循環ポンプ72をON作動させて触媒反応工程P2を開始させる。これにより、循環が開始され、この循環に伴う撹拌によって上記の磁性粉8や触媒微粒子9が被処理水中に分散されて浮遊状態となり、触媒反応が進行することになる。以後、上記の触媒分離工程P3、処理済水の導出工程P4、その次のバッチ処理分の被処理水の導入工程P1、触媒脱離工程P5、触媒反応工程P2が順に繰り返されることになる。
【0035】
以上の水処理方法の場合、比表面積の極めて大きく反応活性の高い触媒微粒子9を用いて被処理水の触媒反応処理を極めて高い処理効率で実施することができる。加えて、触媒微粒子9を用いて被処理水への混入により懸濁液状態にし得るため、ペレット等の造粒化した触媒の場合には機械的強度が低く、あまり激しい撹拌を加えることはできないのに比べ、かなり強い程度での撹拌が可能となって、接触反応を促進し得ることになる。その一方、処理後には、非磁性の触媒微粒子9を迅速かつ容易に処理済水と分離させることができ、その上に、分離させた触媒微粒子9を次の水処理に繰り返し使用することができるようになる。すなわち、電磁石6をON作動させてドーナッツ状空間に磁界を発生させるだけで、懸濁液状態の被処理水に浮遊している磁性粉8により濾過層11を形成して、この濾過層11に触媒微粒子9を捕捉することができることになる。そして、磁性粉8を軟磁性体で構成することにより、電磁石6をOFFにすれば直ちに磁気を失い電磁石6への吸着力のみならず磁性粉8同士での磁力をも失うことになるため、電磁石6のOFF切換だけで直ちに被処理水中に混入して分散可能となって触媒微粒子として再使用することができるようになる。
【0036】
<第2実施形態>
図5は第1実施形態の水処理装置を備えた潜熱回収熱源機に係る第2実施形態を示す。すなわち、触媒微粒子9として二酸化マンガン触媒の粉末を用い、排ガスドレン水を被処理水として排ガスドレン水に含まれるホルムアルデヒドを触媒微粒子9の酸化分解反応により除去して排ガスドレン水を改質処理し得るようにしたものである。なお、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
上記の潜熱回収熱源機は、給湯機能に加えて、風呂追い焚き機能及び風呂湯張り機能の各機能を併有する複合熱源機型に構成されたものであり、しかも、熱交換缶体において顕熱に加え燃焼排ガスから潜熱をも回収を行うことにより高効率化を図る潜熱回収型に構成されたものである。なお、本発明を実施する上では、少なくとも燃焼排ガスから潜熱を回収するための二次熱交換器125を併設した潜熱回収熱源機であれば上記水処理装置を適用することができる。
【0038】
同図において、符号12は給湯機能を実現するための給湯回路、13は風呂追い焚き機能を実現するための追い焚き回路、14は風呂湯張り機能を実現するための注湯回路であり、又、符号15は潜熱回収用の二次熱交換器125で発生する排ガスドレン水を中和及び改質の各処理を行うドレン水処理回路である。
【0039】
上記給湯回路12は、バーナ121と、このバーナ121の燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換加熱する給湯用の一次熱交換器122とを備え、入水路123から水道水等が給湯用一次熱交換器122において主として加熱され、加熱された後の湯が出湯路124に出湯されるようになっている。この際、上記入水路123からの入水は、一次熱交換器122に入水される前に、排気集合筒内に配設された二次熱交換器125に通されるようになっており、この二次熱交換器125において燃焼排ガスからの潜熱回収により予熱された状態で入水接続路126を通して一次熱交換器122に入水されて主加熱されるようになっている。そして、所定温度まで加熱されて上記出湯路124に出湯された湯が、台所や浴室等の給湯栓127や上記注湯回路14などの所定の給湯箇所に給湯されるようになっている。なお、図例では給湯栓127として1つのみ図示しているが、通常は台所、洗面台、浴室等にそれぞれ配設されて複数ある。上記の一次熱交換器122やこれとフィンを共通にする後述の追い焚き用の一次熱交換器131が顕熱回収用熱交換器を構成し、上記二次熱交換器125が潜熱回収用熱交換器を構成する。又、上記入水路123には入水流量センサや入水温度センサ等が介装され、出湯路には流量制御弁及び給湯温度センサ等が介装されている。
【0040】
上記追い焚き回路13は、上記バーナ121の燃焼ガスの顕熱により循環温水を熱交換加熱する追い焚き用一次熱交換器131と、図示省略の浴槽との間で浴槽水を循環させて追い焚きさせる追い焚き循環路132とを備えている。追い焚き循環路132は、追い焚き用循環ポンプ133の作動により浴槽からの浴槽水が戻り路132bを通して一次熱交換器131に戻され、この一次熱交換器131において追い焚き加熱され、追い焚き加熱後の浴槽湯水が往き路132aを通して浴槽に送られるようになっている。
【0041】
注湯回路14は、給湯回路12の出湯路124から上流端が分岐して下流端が追い焚き循環路132に合流された注湯路141と、開閉切換により注湯の実行と遮断とを切換える注湯電磁弁142とを備えている。この注湯電磁弁142がコントローラ10により開閉制御され、注湯の実行により出湯路124の湯が注湯路141,追い焚き循環路132(戻り路132b)を経て浴槽に注湯されて所定量の湯張りが行われるようになっている。
【0042】
ドレン水処理回路15は、二次熱交換器125において燃焼排ガスが潜熱回収のための熱交換により冷やされて凝縮することにより生じた排ガスドレン水に対し、中和処理及び改質処理を加えた上で機外へ排出するために設置された回路である。すなわち、ドレン水処理回路15は、中和槽151と、第1実施形態で説明した水処理装置1と、逆止弁152とを備えている。
【0043】
中和槽151は内部に中和剤(例えば炭酸カルシウム;図5では図示省略)が充填されたものである。この中和槽151には、二次熱交換器125の下側位置に配設されたドレンパン128により集水・回収された排ガスドレン水が導出管153を通して中和槽151の入口から流入され、流入した排ガスドレン水が下流端の出口まで流される間に中和剤と接触することにより中和処理され、中和処理済みの排ガスドレン水が被処理水として導入管31を通して水処理装置1の処理槽2に供給(導入)されるようになっている。そして、排ガスドレン水中のホルムアルデヒドが除去された後の処理済水が導出管41及び逆止弁152を通して下流側に導出されて排出されるようになっている。
【0044】
以上の第2実施形態の場合、潜熱回収により副産物として生成される排ガスドレン水からホルムアルデヒドを除去して無害化処理した上で排出させることができる。その際、水処理装置1によって、触媒微粒子9による無害化処理の飛躍的な効率化を図ることができる上に、その触媒微粒子9の繰り返しの再利用を迅速かつ容易に実現させることができる、という第1実施形態で説明した通りの作用・効果を得ることができるようになる。
【0045】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、処理対象の被処理水が繊維屑等を含む可能性のある場合には、電磁石6の配設位置よりも循環流の上流側位置においてカラム5を横切るように比較的粗い目のメッシュ部材等を介装させることにより、被処理水に含まれる繊維屑等を捕捉するようにしてもよい。
【0046】
電磁石をカラム5の外壁面の周囲に配設するようにしてもよい。この場合は、電磁石のON作動によりカラム5の内周側に磁界が形成されるようにし、カラム5の内部の流路空間に濾過層を形成させるようにしてもよい。その際、カラム5の内径を調整することにより、濾過層形成の容易化を図るようにしてもよい。
【0047】
電磁石6の代わりに永久磁石を用いることも可能である。この場合には、永久磁石をその磁界がカラム5に対し及ぶ位置と、その磁界がカラム5に及ばない位置との間を相互に位置変換可能に配設するようにすればよい。あるいは、永久磁石を位置変換させる代わりに、永久磁石は固定しておき、電磁シールド部材を位置変換可能に配設することにより永久磁石からの磁界が及んだり及ばないようにしたり切換えられるようにしてもよい。
【0048】
図1は水処理装置の原理を示すものであり、図1の構造に限らず、被処理水の導入手段及び処理済水の導出手段に他に、循環流路と、その途中に介装された電磁石とを構成要素として備えていれば成立する。
【実施例】
【0049】
本発明の水処理装置の効果について確認試験を実施した。用いた試験用の水処理装置は図1に示す水処理装置1を簡略化したものであり、図6に示すようにビーカー内に内径が10mmのカラムを建て込み、ビーカー底面近傍側のカラム内に直径5mmで高さ9mmの円柱形のネオジウム磁石を設置したものを用いた。そして、ポンプの吸い込み側に接続した吸い上げ管を通してビーカー内の懸濁液を吸い上げて、カラムの上端から内部に流下させて循環し得るようにした。
【0050】
試験は次の手順により行った。すなわち、ビーカー内に、蒸留水150mlを入れ、これに対し、非磁性の触媒微粒子として平均粒径1μmの二酸化マンガン触媒を1gと、磁性粉として平均粒径10μmのソフトフェライトを1gとをそれぞれ投入し、混合させて懸濁液の状態にした。この懸濁液状態の被処理水に対し、永久磁石である上記のネオジウム磁石を設置したカラムを建て込み、ポンプの作動を開始して被処理水を循環させて経過状況を観察した。つまり、第1実施形態での触媒分離工程の開始(電磁石6のON作動開始)時点に相当する。この循環状態での触媒分離開始時点の状況を図6(a)に示す。
【0051】
そして、循環が10分間継続した時点では、磁性粉が磁石に吸着されて形成された濾過層(フェライトケーキ)に対し触媒微粒子が粒径の大きいものから順に捕捉されていって懸濁液の懸濁度合が徐々に薄れていき(図6(b)参照)、以後、触媒微粒子の捕捉に伴って濾過精度がより向上していき、それに伴い粒径の小さい触媒微粒子も濾過層に捕捉され、現象的には懸濁度合がどんどん薄れていった。そして、30分経過後の時点では、循環流が透明で清澄な処理済水に変わり、ほぼ全ての触媒微粒子の捕捉が完了したものと認められる状況となった(図6(c)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態の原理的構成を示す断面説明図である。
【図2】導入工程,触媒反応工程から触媒分離工程までの状況を示す説明図である。
【図3】触媒分離工程から導出工程までの状況を示す説明図である。
【図4】次のバッチ分の導入工程から触媒脱離工程及び触媒反応工程までの状況を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す模式図である。
【図6】確認試験の試験結果を示す写真であり、図6(a)は試験開始時点の状況を示す写真、図6(b)は10分経過時点の状況を示す写真、図6(c)は30分経過時点の状況を示す写真である。
【符号の説明】
【0053】
1 水処理装置
2 処理槽
3 導入手段
4 導出手段
5 カラム
6 電磁石
7 循環手段
8 磁性粉
9 触媒微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理する処理槽と、この処理槽に被処理水を導入する導入手段と、上記処理槽において処理された後の処理済水を処理槽から導出する導出手段とを備え、
上記処理槽には、上記被処理水と接触することにより被処理水を処理する非磁性の触媒微粒子と、磁性微粒子と、これらの触媒微粒子及び磁性微粒子が混合されて懸濁液の状態にされた上記被処理水が一側から他側に流されるように区画形成された流路と、この流路の途中に設置された電磁石とが備えられ、
上記電磁石に通電されて上記流路を横切るように磁界が形成され、形成された磁界により上記磁性微粒子が吸着されて積層して、触媒微粒子を捕捉して分離する濾過層が形成されるように構成されている、
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
上記処理槽は、上記流路に対し繰り返し循環させる循環手段を備えている、水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水処理装置であって、
上記濾過層は、磁界により吸着される磁性微粒子に加えて、吸着された磁性微粒子により捕捉される触媒微粒子も濾過層を構成する一部にして形成されるように構成されている、水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水処理装置であって、
上記磁性微粒子は軟磁性体により形成されている、水処理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水処理装置であって、
上記触媒微粒子は、二酸化マンガン触媒の粉末により構成され、ホルムアルデヒドを含有する被処理水を処理対象にして上記ホルムアルデヒドを酸化分解反応により除去するものである、水処理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水処理装置と、燃焼排ガスから潜熱を回収するための二次熱交換器とを備え、
この二次熱交換器と水処理装置とは、二次熱交換器において潜熱回収により発生する排ガスドレン水を被処理水として上記水処理装置において水処理するように接続されている
ことを特徴とする潜熱回収熱源機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−29812(P2010−29812A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196238(P2008−196238)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】