説明

水処理装置

【課題】 被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置において、槽本体の内部を区画する仕切り板を、接着剤を用いて槽本体側に確実に取り付けるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 水処理装置の下部槽120において、特に仕切り板130の接合面及び下部槽120側の被接合面の各々に、交差状に連続する第1延在面122,131及び第2延在面123,132を設け、仕切り板130が接合位置にあるとき、これら第1延在面122,131及び第2延在面123,132にわたって接着剤溜り領域が形成されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置に係り、詳しくは槽本体に槽内を区画する仕切り板の取り付け技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、槽内を区画する仕切り板を備えた浄化槽が開示されている。この浄化槽は、槽内を区画する仕切り板を槽本体に固定するのに接着剤を用いる構成とされ、特には、槽本体の内壁のうち仕切り板のフランジ面に対向する単一の水平面に接着剤保持用の溝を設け、この溝に接着剤を保持することによって槽本体に仕切り板を固定しようとするものである。
【特許文献1】特開2004−18033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の水処理装置の設計に際しては、槽本体と仕切り板との間の取り付け構造を更に工夫することによって、仕切り板を接着剤を用いて槽本体側により確実に取り付け、これにより槽本体と仕切り板との接合部分における漏水防止を図る要請がある。更に、仕切り板を槽本体側に取り付ける際に、槽本体側に塗布した接着剤が仕切り板によって掻き取られるのを抑えることによって、接着剤量の適正化を図る要請がある。
そこで、本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置において、槽本体の内部を区画する仕切り板を、接着剤を用いて槽本体側に確実に取り付けるのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水をはじめ、各種の被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置に適用され得る技術である。
【0005】
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの水処理装置である。請求項1に記載のこの水処理装置は、槽本体に被処理水の処理を行う水処理機構を収容する装置として構成される。ここでいう「水処理機構」は、各種の被処理水の処理を行うための機構であり、典型的には固液分離処理部、生物処理部、貯留処理部、移送処理部、消毒処理部等を適宜組み合わせることによって構成される。槽本体は、典型的には平面視が略長方形となる椀状の上部槽及び下部槽からなり、これら上部槽及び下部槽の接合フランジ面同士を重ね合わせて接合することによって形成されるフランジ接合式の構成になっている。
【0006】
本発明の槽本体は、仕切り板及び被接合面を少なくとも備える。仕切り板は、槽内を区画する平板状の部材として構成される。槽本体が上部槽及び下部槽からなる場合には、上部槽及び下部槽の少なくとも一方に対し、この仕切り板を1または複数設けることができる。被接合面は、槽内の側壁部において仕切り板の接合面が接着剤を介して接合される被着面として構成される。この被接合面は、槽本体自体に設けられてもよいし、或いは槽本体に取り付けられたブラケット等の別部材に設けられてもよい。接着剤は、接合面及び被接合面の材質に応じて適宜選択することができる。一例として接合面及び被接合面がFRP(ガラス繊維樹脂)材料やジシクロペンタジエン含有の樹脂材料によって構成される場合には、接着剤として一液または二液のポリウレタン系接着剤やポリエステル系接着剤を用いるのが好ましい。
【0007】
本発明の槽本体では、特に、接合面及び被接合面の各々は、交差状に連続(連接)する第1延在面及び第2延在面を有するとともに、仕切り板が接合位置にあるとき、少なくとも第1延在面及び第2延在面にわたって接着剤溜り領域を形成するように構成される。すなわち、この接着剤溜り領域は、仕切り板側の接合面において第1延在面及び第2延在面にわたって形成され、且つ槽本体側の被接合面において第1延在面及び第2延在面にわたって形成されるようになっている。ここでいう「交差状に連続する第1延在面及び第2延在面」の構成に関しては、連続する第1延在面及び第2延在面によって単一の水平面が形成される以外の態様、すなわち第1延在面と第2延在面が交差する角度が180度となる以外の態様を広く包含する。また、本構成では、第1延在面に関する法線とび第2延在面に関する法線が交差するということもできる。このとき、第1延在面及び第2延在面の各々は、水平面として構成されてもよいし或いは曲面として形成されてもよい。
また、本発明において、接着剤溜り領域は、仕切り板側の第1延在面及び第2延在面や、槽本体側の第1延在面及び第2延在面に予め形成された凹み形状によって構成されてもよいし、或いは仕切り板を接合位置(取り付け位置)にセットすることによってはじめて形成される構成であってもよい。
また、本発明では、仕切り板側の接合面及び槽本体側の被接合面の各々において、少なくとも第1延在面及び第2延在面にわたって接着剤溜り領域が形成されればよく、これら第1延在面及び第2延在面に加え、更に別の延在面にわたって接着剤溜り領域が形成される構成であってもよい。
【0008】
請求項1に記載の水処理装置のこのような構成によれば、接着剤のための接着剤溜り領域を、仕切り板側の接合面と槽本体側の被接合面の両面において、交差状に連続する第1延在面及び第2延在面にわたって形成させることによって、接着剤溜り領域の断面形状が直線状ではなく折れ曲がり形状、曲線状、段差状などの連続的な形状となる。このような形状の接着剤溜り領域に保持された接着剤は、仕切り板に作用する種々の方向に関する応力に対して剥離しにくい構成とされる。特には、第1延在面及び第2延在面の広範囲にわたって連続状に接着剤溜り領域を形成させることによって、この接着剤溜り領域に保持された接着剤が局所的な応力に対しても剥離しにくい。従って、仕切り板は槽本体側に確実に接合されることとなり、槽本体と仕切り板との接合部分における漏水防止を図ることが可能となる。
【0009】
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項2に記載のこの水処理装置では、請求項1に記載の仕切り板は、その接合に際し槽本体側の被接合面に沿った差し込み方向に向けて槽内へと差し込まれる構成になっている。このような構成においては、槽本体側の被接合面に接着剤を塗布した後、仕切り板を接合するべく差し込み方向に向けて槽内へと差し込む方法を用いることができる。そして、本発明では、接着剤用の接着剤溜り領域は、仕切り板の差し込み方向に沿って長手状に延在する構成とされる。
【0010】
請求項2に記載の水処理装置のこのような構成によれば、接着溜り領域を仕切り板の差し込み方向に沿って長手状に延在させることによって、仕切り板を槽内へと差し込む際に、この仕切り板によって接着剤溜り領域の接着剤が掻き取られるのを極力抑えることが可能となる。従って、接着剤の掻き取りを考慮して槽本体側の被接合面に余分に接着剤を塗布する必要がなく、或いは余分に塗布する接着剤量を抑えることができ、これによって接着剤量の適正化を図ることが可能となる。
【0011】
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項3に記載のこの水処理装置では、請求項1または請求項2に記載の槽本体は、接合面と被接合面との対向間隔が相対的に異なる複数の領域を備えるとともに、これら複数の領域のうち、接合時における接着剤厚みに見合う対向間隔を有する領域を用いて接着剤溜り領域を形成する構成とされる。一例として、接合面と被接合面の少なくとも一方に凹み部を設け、この凹み部を用いて接着剤溜り領域を形成することができる。このとき、接合面側の板厚や被接合面側の板厚を減肉化させることによって凹み部を形成させてもよいし、或いは当該板厚は変えずに接合面側や被接合面側の壁面自体を凹ませることによって凹み部を形成させてもよい。
【0012】
請求項3に記載の水処理装置のこのような構成によれば、仕切り板を槽内へと差し込む際に、この仕切り板によって接着剤溜り領域の接着剤が掻き取られるのを、より確実に抑えることが可能となる。また、このような構成によれば、接着剤の掻き取りを考慮して仕切り板の差し込み角度を、槽本体側の被接合面に対し傾斜させる必要がなく、仕切り板の差し込み作業に自由度を付与し作業円滑化を図ることが可能となる。特に、接着剤溜り領域の大きさ(対向間隔や容量)を、所望の接着剤厚みや接着剤量に見合った大きさに設定することによって、必要な接着剤量を確保することができ、接着剤量の更なる適正化を図ることが可能となる。
【0013】
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項4に記載のこの水処理装置では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の槽本体は、仕切り板が接合位置にあるとき、当該仕切り板と槽本体側の被接合面とが係合する係合部を備え、この係合部における係合によって当該仕切り板の位置決めがなされる構成とされる。一例として、槽本体側の被接合面に突部を設け、仕切り板が接合位置にあるとき、この突部が係合部において仕切り板に当接するように構成することができる。
【0014】
請求項4に記載の水処理装置のこのような構成によれば、仕切り板を槽本体側に取り付ける際に、槽本体側に対し仕切り板の位置決めを行うことができ、仕切り板の差し込み作業の更なる円滑化を図ることが可能となる。
【0015】
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項5に記載のこの水処理装置では、請求項1〜4のいずれかに記載の槽本体は、その側壁面が内周側へと凹んだコルゲート部を備え、当該コルゲート部の表面形状を用いて被接合面が構成される。このコルゲート部によって槽本体の側壁面に形成される波型形状は、いわゆる「コルゲート形状」と称呼される補強構造を構成する。
【0016】
請求項5に記載の水処理装置のこのような構成によれば、仕切り板の取り付けに関与する槽本体側の被接合面を、既存のコルゲート部の表面形状を用いて兼用化することができ、槽本体の構成に関し合理化が図られる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置において、特に仕切り板の接合面及び槽本体側の被接合面の各々に、交差状に連続する第1延在面及び第2延在面を少なくとも設け、仕切り板が接合位置にあるとき、第1延在面及び第2延在面にわたって接着剤溜り領域が形成されるように構成することによって、仕切り板を接着剤を用いて槽本体側に確実に取り付けることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭や工場から排出される排水を、被処理水として処理する水処理装置の構成について説明するものである。
【0019】
本発明における「水処理装置」の一実施の形態である水処理装置100の外観が図1に示される。この水処理装置100は、「浄化槽」或いは「排水処理槽」ともいう。図1に示すように、本実施の形態の水処理装置100は、概括的に見て、槽本体101の内部に水処理機構102を収容する構成を有する。なお、水処理機構102は、被処理水に対し各種の処理を行う構成を有し、特に図示しないものの、固液分離処理部、生物処理部、貯留処理部、移送処理部、消毒処理部等を適宜組み合わせた構成になっている。この水処理機構102が、本発明における「水処理機構」に相当する。
【0020】
本発明における「槽本体」としての槽本体101は、上部槽(「上槽」ともいう)110及び下部槽(「下槽」ともいう)120を備える。
上部槽110は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、下部槽120の上部に配置される槽である。この上部槽110は、流入部103、放流部104、マンホール105を少なくとも備える。一方、下部槽120は、平面視が略長方形となる椀状の槽であり、上部槽110の下部に配置される槽である。上部槽110の接合フランジ110aの接合フランジ面と、下部槽120の接合フランジ120aの接合フランジ面とを互いに重ね合わせた状態で接合することによって、フランジ接合式の槽本体101が形成される。
また、上部槽110の長辺側の側壁面には、当該側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部111が設けられ、下部槽120の長辺側の側壁面には、当該側壁面が内周側へと凹んだ複数のコルゲート部121が設けられている。これらコルゲート部111,121によって側壁面に形成される波型形状は、いわゆる「コルゲート形状」と称呼される補強構造を構成する。
【0021】
ここで、槽本体101の下部槽120内の具体的な構成を、図2〜図4を参照しながら説明する。図2には図1中の下部槽120の平面図が示され、図3には図2中の下部槽120においてA領域を拡大した図が示される。また、図4は、本実施の形態の下部槽120に対し仕切り板130を取り付ける様子を示す斜視図である。
【0022】
図2に示すように、下部槽120の槽内において、側壁120bに形成されるコルゲート部121の内方に仕切り板130が設置される。この仕切り板130は、槽内を区画するべく短辺方向に沿って延在する平板状の部材として構成される。この仕切り板130が、本発明における「仕切り板」に相当する。
【0023】
この仕切り板130の取り付け部分である図2中のA領域の構成に関しては、図3に示すように、下部槽120の側壁120bの内周側に、交差状に連続(連接)する第1延在面122及び第2延在面123が形成される。これら第1延在面122及び第2延在面123は、側壁120bの内周面に仕切り板130の接合面が接合される際の被接合面(被着面)とされ、交差状に連続(連接)する第1延在面131及び第2延在面132に対向状に配置される。下部槽120側のこれら第1延在面122及び第2延在面123が、本発明における「被接合面」及び「第1延在面及び第2延在面」を構成する。これに対し、仕切り板130側の第1延在面131及び第2延在面132は、仕切り板130の接合面(「フランジ面」ともいう)となり、本発明における「接合面」及び「第1延在面及び第2延在面」を構成する。第1延在面122,131及び第2延在面123,132の各々は、水平面として構成されてもよいし或いは曲面として形成されてもよい。
【0024】
下部槽120側の第1延在面122は、側壁120bの延在方向に沿って形成される面として構成され、仕切り板130側の第1延在面131に概ね倣った形状とされる。また、下部槽120側の第2延在面123は、コルゲート部121の一部を構成する傾斜状の面として構成され、仕切り板130側の第2延在面132に概ね倣った形状とされる。このように、本実施の形態では、下部槽120側の被接合面を、コルゲート部121の表面形状を用いて構成している。
【0025】
仕切り板130が図3に示す取り付け位置に配置された状態では、第1延在面131と側壁120b側の第1延在面122とが僅かの空間を介して対向状に配置され、また第2延在面132と側壁120b側の第2延在面123とが僅かの空間を介して対向状に配置されるように構成されている。すなわち、第1延在面131と第1延在面122との対向箇所に第1空間部141が形成され、また第2延在面132と第2延在面123との対向箇所に第2空間部142が形成される。これら第1空間部141及び第2空間部142は、下部槽120に対し仕切り板130を接合する接合用接着剤が介在する(保持される)接着剤溜り領域として構成され、本発明における「接着剤溜り領域」に相当する。本実施の形態において、この接着剤溜り領域は、仕切り板130を接合する際の差し込み方向(後述する)に沿って長手状に延在するようになっている。
【0026】
なお、これら第1空間部141及び第2空間部142からなる接着剤溜り領域の容積は、下部槽120に対する仕切り板130の所望の接合力が得られるように、接合用接着剤の種類などに基づいて適宜設定される。また、下部槽120及び仕切り板130を、FRP(ガラス繊維樹脂)材料やジシクロペンタジエン含有の樹脂材料によって構成する場合には、接着剤として一液または二液のポリウレタン系接着剤やポリエステル系接着剤を用いることができる。
【0027】
また、本実施の形態では、下部槽120の側壁120bの内周側に、第1延在面122に隣接する突部(凸状部)124が設けられている。仕切り板130が図3に示す取り付け位置(「接合位置」ともいう)に配置された状態では、この突部124に仕切り板130の先端部130aが当接(係合)することによって、下部槽120側に対する仕切り板130の位置決めがなされ、仕切り板130の突部124側への移動が規制されるように構成されている。下部槽120側の突部124と仕切り板130の先端部130aとによって、本発明における「仕切り板と被接合面とが係合する係合部」が構成される。なお、このような係合構造にかえて、凹部と凸部とが互いに嵌合する構造や、下部槽120側に仕切り板130が引っ掛かる構造等を用いて、下部槽120側に対する仕切り板130の位置決めを行うこともできる。
【0028】
ここで、下部槽120に対し仕切り板130を接合する接合手順を説明する。
この接合手順として、まず図3中の第1延在面122及び第2延在面123に接合用接着剤を塗布する。そして、図4に示すように、下部槽120の槽上方(開口部分)から仕切り板130を下方(差し込み方向)に向けて差し込むように挿入する。そして、突部124に仕切り板130の先端部130aが当接することによって、下部槽120側に対する仕切り板130の位置決めを行う。これにより、仕切り板130を接合位置にセットすることによってはじめて、下部槽120側の第1延在面122及び第2延在面123と、仕切り板130側の第1延在面131及び第2延在面132との間の対向領域に、第1空間部141及び第2空間部142からなる接着剤溜り領域が形成されることとなる。この態様が、本発明における「接合面及び被接合面の各々は、交差状に連続する第1延在面及び第2延在面を有するとともに、仕切り板が接合位置にあるとき、少なくとも第1延在面及び第2延在面にわたって接着剤溜り領域を形成する。」との態様に相当する。
【0029】
このとき、本実施の形態では、断面形状が折れ曲がり形状とされた接着剤溜り領域に保持された接着剤によって、仕切り板130が下部槽120側に接合されることとなるが、このような形状の接着剤溜り領域に保持された接着剤は、仕切り板130に作用する種々の方向に関する応力に対して剥離しにくい。特には、第1延在面122,131及び第2延在面123,132の広範囲にわたって連続状に接着剤溜り領域を形成させることによって、この接着剤溜り領域に保持された接着剤が局所的な応力に対しても剥離しにくい。従って、仕切り板130は下部槽120側に確実に接合されることとなり、接合部分における漏水防止を図ることが可能となる。
一般に、FRP(ガラス繊維樹脂)材料やジシクロペンタジエン含有の樹脂材料によって構成された接合対象は、接着剤による接合安定性が低い接合対象として知られているが、接着剤溜り領域を広範囲にわたって形成させる本発明は、このような接合対象に対する接合安定性を高めるのに特に効果的である。もちろん、本発明は、接合安定性が高い接合対象に対しても同様に有効であり、この場合には更なる高い接合安定性が付与されることとなる。
【0030】
また、本実施の形態では、この接着剤溜り領域が、仕切り板130の差し込み方向に沿って長手状に形成されるため、下部槽120側の第1延在面122及び第2延在面123に予め塗布された接合用接着剤が、仕切り板130によって必要以上に掻き取られるのを防止することができる。従って、接着剤の掻き取りを考慮して下部槽120側の第1延在面122及び第2延在面123に余分に接着剤を塗布する必要がなく、或いは余分に塗布する接着剤量を抑えることができ、これによって接着剤量の適正化を図ることが可能となる。
【0031】
なお、第1空間部141及び第2空間部142からなる接着剤溜り領域を、下部槽120側の第1延在面122及び第2延在面123や、仕切り板130側の第1延在面131及び第2延在面132に予め設けられた凹み形状によって構成することもできる。本構成の一例が図5に示される。図5には、別の実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関し、コルゲート部121及び仕切り板130の断面形状が示される。
【0032】
図5に示す実施の形態では、仕切り板130の板厚を減肉化させることで、仕切り板130側の第2延在面132に凹み部133を設けている。この凹み部133は、下部槽120側の第2延在面123と仕切り板130側の第2延在面132との対向間隔が相対的に大きい領域として構成され、第1空間部141及び第2空間部142からなる接着剤溜り領域が、この凹み部133を用いて形成されるようになっている。本実施の形態では、この凹み部133における対向間隔が、接合時における所望の接着剤厚みに見合う対向間隔となるように設定している。この構成が、本発明における「接合面と被接合面との対向間隔が相対的に異なる複数の領域を備えるとともに、これら複数の領域のうち、接合時における接着剤厚みに見合う対向間隔を有する領域を用いて接着剤溜り領域を形成する」との態様に相当する。
【0033】
このような構成によれば、仕切り板130を下部槽120内へと差し込む際に、この仕切り板130によって接着剤溜り領域の接着剤が掻き取られるのを、より確実に抑えることが可能となる。また、このような構成によれば、接着剤の掻き取りを考慮して仕切り板130の差し込み角度を傾斜させる必要がなく真上からそのまま差し込むことができるため、仕切り板130の差し込み作業に自由度を付与し作業円滑化を図ることが可能となる。特に、仕切り板130側の第2延在面132に形成した凹み部133の大きさ(対向間隔や容量)を、所望の接着剤厚みや接着剤量に見合った大きさに設定することによって、必要な接着剤量を確保することができ、接着剤量の更なる適正化を図ることが可能となる。
【0034】
なお、図5に示す実施の形態に関し、凹み部133と同様の凹み形状を、下部槽120側と仕切り板130側の少なくとも一方に適宜設けることができる。
また、図5に示す実施の形態に関し、凹み部133のような凹み形状は、下部槽120側の板厚や仕切り板130側の板厚を減肉化させることによって形成させることもできるし、或いは当該板厚は変えずに壁面自体を凹ませることによって形成させることもできる。
【0035】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0036】
図3を用いて説明した、本実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関しては、図6〜図8に示す別の実施の形態を作用することもできる。
【0037】
図6に示す実施の形態では、下部槽120側の第2延在面123において、仕切り板130側の第2延在面132に当接するスペーサー突起123aを設ける構成とされ、図7に示す実施の形態では、仕切り板130側の第2延在面132において、下部槽120側の第2延在面123に当接するスペーサー突起132aを設ける構成とされる。これらスペーサー突起123a及びスペーサー突起132aは、いずれも第1空間部141及び第2空間部142からなる接着剤溜り領域の一部を区画するとともに、下部槽120に対する仕切り板130の位置決め機能を有する。特に、これらスペーサー突起123a及びスペーサー突起132aにおける当接構造と、突部124における当接構造との相乗効果によって、下部槽120側に対する仕切り板130の位置決め効果が高まる。なお、これらスペーサー突起123a及びスペーサー突起132aの両方を設置した構成を採用することもできる。
【0038】
また、図8に示す実施の形態では、下部槽120側の第2延在面123を構成するのに、図3,図5〜図7に示す実施の形態のようにコルゲート形状を用いるのにかえて、仕切り板130の側壁120bの内方に立設する立設部(リブ状部)125を用いることとしている。このような構成によっても、図3に示す実施の形態と同様の特徴によって、仕切り板130を下部槽120側に確実に接合することができ、また接着剤量の適正化を図ることが可能となる。なお、図8に示す実施の形態において、仕切り板130側の第2延在面132に設けたスペーサー突起132aにかえて、図6中のスペーサー突起123aと同様の構成を適宜用いることもできる。
【0039】
上記実施の形態では、接着剤溜り領域が第1延在面及び第2延在面にわたって形成される場合について記載したが、本発明では、これら第1延在面及び第2延在面に加え更に別の延在面にわたって接着剤溜り領域が形成されるように構成することもできる。
また、本発明では、少なくとも第1延在面及び第2延在面にわたって形成される接着剤溜り領域の断面形状が、直線状以外の各種の形状、例えば折れ曲がり状、曲線状、段差状などの形状となるように構成することができる。要するに、連続する第1延在面及び第2延在面によって単一の水平面が形成される以外の態様、すなわち第1延在面と第2延在面が交差する角度が180度となる以外の態様であれば、接着剤溜り領域の断面形状は種々変更可能である。
【0040】
また、上記実施の形態では、仕切り板130が下部槽120の被接合面に直接的に接合される場合について記載したが、本発明では、仕切り板130と下部槽120とを、ブラケット等の別部材を介して間接的に接合するように構成することもできる。本構成の場合には、仕切り板の接合面が接合される被接合面は、別部材によって形成される。
【0041】
また、上記実施の形態では、接合に際し下部槽120の槽上方(開口部分)から下方に向けて差し込むように挿入する差し込みタイプの仕切り板130について記載したが、本発明は、仕切り板の差し込み方向や取り付け方向に関わらず、少なくとも第1延在面122,131及び第2延在面123,132にわたって接着剤溜り領域を形成すれば足りる。
【0042】
また、上記実施の形態では、槽本体101を構成する下部槽120に仕切り板130を取り付ける場合について記載したが、上部槽110に仕切り板を取り付ける場合の構成に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明における「水処理装置」の一実施の形態である水処理装置100の外観を示す図である。
【図2】図1中の下部槽120の平面図である。
【図3】図2中の下部槽120においてA領域を拡大した図である。
【図4】本実施の形態の下部槽120に対し仕切り板130を取り付ける様子を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関し、別の実施の形態を示す図である。
【図6】本実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関し、別の実施の形態を示す図である。
【図7】本実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関し、別の実施の形態を示す図である。
【図8】本実施の形態の下部槽120と仕切り板130との接合構造に関し、別の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
100…水処理装置
101…槽本体
102…水処理機構
103…流入部
104…放流部
105…マンホール
110…上部槽
110a,120a…接合フランジ
111,121…コルゲート部
120…下部槽
120b…側壁
122…第1延在面
123…第2延在面
121a,132a…スペーサー突起
124…突部
125…立設部
130…仕切り板
130a…先端部
131…第1延在面
132…第2延在面
133…凹み部
141…第1空間部
142…第2空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の処理を行う水処理機構を槽本体に収容する水処理装置であって、
前記槽本体は、槽内を区画する平板状の仕切り板と、槽内の側壁部において前記仕切り板の接合面が接着剤を介して接合される被接合面とを備え、
前記接合面及び被接合面の各々は、交差状に連続する第1延在面及び第2延在面を有するとともに、前記仕切り板が接合位置にあるとき、少なくとも前記第1延在面及び第2延在面にわたって接着剤溜り領域を形成するように構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記仕切り板は、その接合に際し前記被接合面に沿った差し込み方向に向けて槽内へと差し込まれる構成であり、前記接着剤溜り領域は、当該仕切り板の差し込み方向に沿って長手状に延在することを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記槽本体は、前記接合面と前記被接合面との対向間隔が相対的に異なる複数の領域を備えるとともに、これら複数の領域のうち、接合時における接着剤厚みに見合う対向間隔を有する領域を用いて前記接着剤溜り領域を形成する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記槽本体は、前記仕切り板が接合位置にあるとき、当該仕切り板と前記被接合面とが係合する係合部を備え、この係合部における係合によって当該仕切り板の位置決めがなされる構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理装置であって、
前記槽本体は、その側壁面が内周側へと凹んだコルゲート部を備え、当該コルゲート部の表面形状を用いて前記被接合面が構成されることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−272053(P2006−272053A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91192(P2005−91192)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】