説明

水処理装置

【課題】使用者の事情などに応じて、浄水器などに備えられた自動吐水機能の作動状態のオンオフを切り替えることができる水処理装置の提供。
【解決手段】原水を処理する処理剤を内部に収めたカートリッジを有する水処理手段と、水処理手段に前記原水を供給する給水管と、水処理手段により処理された処理水を吐水する吐水管42と、給水管を開閉する開閉弁と、開閉弁の開閉を手動で制御することによって吐水管42からの吐水と止水とを切り替える接触式スイッチ43と、カートリッジ内に滞留する滞留水を吐水管42より定期的に自動吐出する自動吐水手段とを備えた水処理装置であって、自動吐水手段の作動状態をオンオフするオンオフ設定機構を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上水道などの原水を処理する浄水器やアルカリイオン整水器などの水処理手段を備えた水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば浄水器には、原水中の残留塩素、トリハロメタンなどを除去する濾材や、細菌、不純物などを取り除く中空糸膜フィルタを備えたカートリッジ式の浄水手段が内蔵されている場合が多い。
このような浄水器がしばらく使用されず、浄水が排出されない状態が例えば数日間以上続くと、浄水手段に滞留した水、すなわち滞留水に雑菌などが繁殖して、不衛生になる場合があった。そのため、例えば特許文献1などには、一定時間、浄水器が使用されなかった場合には、浄水器に原水を供給する原水供給路中の開閉弁を定期的かつ一次的に自動開放して、浄水器中の滞留水を吐出して更新する自動吐水機能について開示されている。
【特許文献1】特許第3109991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような機能を備えた水処理装置では、例えば浄水器の使用者が旅行などで長期間不在である場合でも、定期的に開閉弁が自動開放して滞留水が吐出される。そのため、例えば何らかの原因によりシンクの排水管に詰まりが生じてしまった場合などには、吐出された滞留水がシンクから溢れ出てトラブルを引き起こすことなどが懸念された。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、使用者の事情などに応じて、自動吐水機能の作動状態のオンオフを切り替えることのできる水処理装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水処理装置は、原水を処理する処理剤を内部に収めたカートリッジを有する水処理手段と、該水処理手段に前記原水を供給する給水管と、前記水処理手段により処理された処理水を吐水する吐水管と、前記給水管を開閉する開閉弁と、該開閉弁の開閉を手動で制御することによって前記吐水管からの吐水と止水とを切り替える操作手段と、前記カートリッジ内に滞留する滞留水を前記吐水管より定期的に自動吐出する自動吐水手段とを備えた水処理装置であって、前記自動吐水手段の作動状態をオンオフするオンオフ設定機構を有する。
前記オンオフ設定機構は、前記オンオフを自動で変更するプログラムがさらに組み込まれたものであることが好ましい。
前記プログラムとしては、前記自動吐水手段の作動状態がオンの場合に、前記操作手段により手動吐水されることなく、あらかじめ決められた回数だけ自動吐水した後には、前記自動吐水手段の作動状態をオフにするものが好適に例示できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、使用者の事情などに応じて、自動吐水機能の作動状態のオンオフを切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の水処理装置の一実施形態を示す概略構成図、図2は図1の水処理装置が具備する専用水栓10の縦断面図、図3は専用水栓10の要部を示した概略斜視図、図4は図2のI−I’線に沿う横断面図、図5は図2のII−II’線に沿う横断面図、図6は本発明の水処理装置の他の一実施形態に備えられた専用水栓の縦断面図、図7は図6のIII−III’線に沿う横断面図である。
以下、本発明について、水処理手段として浄水手段を備えた水処理装置を例に挙げて説明する。
【0008】
本実施形態の水処理装置は、図1に示すように、原水部Aと浄水部Bとを備えて構成され、原水部Aは、原水吐出口21を有する一般水栓20と、止水栓1から一般水栓20に原水を供給する給水路aとを備えている。一方、浄水部Bは、浄水吐出口11を有する専用水栓10と、浄水手段(水処理手段)が着脱可能に装着された浄水器7と、前記給水路aの途中から該浄水器7に原水を供給する給水管5と、浄水器7から専用水栓10へ浄水(処理水)を送る浄水管6を備えている。図中符号2は給水路aの途中に設けられた分岐栓を示す。
本実施形態において、一般水栓20および専用水栓10は、基台である流し台30上に取り付けられており、その他の部材は流し台30の下に収容されている。給水管5および浄水管6は屈撓曲自在なフレキシブル管で構成されており、配管取り回し上の便宜が図られている。
【0009】
浄水器7内に着脱可能に装着された浄水手段は、例えば、原水中の残留塩素や総トリハロメタンなどを除去、吸着する濾材と、一般細菌や不純物を取り除く中空糸膜等とからなる処理剤を内部に収めた浄水カートリッジ等であるが、このような有害成分を除去する本来の濾過機能の他、水を美味しくしたり健康上でよいとされる成分を放出したりする機能をさらに有していてもよい。
【0010】
給水管5には、浄水器7に供給される原水の流量を一定に制御する定流量弁3が設けられている。また該定流量弁3と浄水器7との間の給水管5には、該給水管5を開閉する電磁弁(開閉弁)を備えた制御装置4が設けられている。
【0011】
専用水栓10は、図2および図3に示すように、柱状(外観視)の水栓本体41と、この水栓本体41に装着され、水栓本体41の周面から伸びて設けられた吐水管42とを有して構成されている。吐水管42は、処理水を吐出する管部42aと、水栓本体41の軸線Pを中心として周方向に回動可能な管状ケーシング部42bとからなり、管部42aの基端部が管状ケーシング部42bに通水可能に接続している。浄水手段で処理された浄水は、浄水管6を経て水栓本体41の内部に導入された後、管部42aの先端の浄水吐出口11から吐出される。
また、この水処理装置は、電磁弁の開閉を手動で制御することによって浄水吐出口11からの吐水と止水とを切り替える操作手段を備え、この例の操作手段は、水栓本体41の上面部に設けられたタクトスイッチ(登録商標)などの接触式スイッチ43である。この接触式スイッチ43を押して作動させると、制御装置4の電磁弁に電気信号が送られ、これによって電磁弁の開閉が制御されるようになっている。電磁弁が閉じられているとき浄水吐出口11は止水状態にあり、電磁弁が開放されると浄水吐出口11は吐水状態となる。
【0012】
本実施形態の水処理装置は、該水処理装置の使用時間を管理する管理手段を有している。この例の管理手段は、浄水手段の交換時期を判定するために、使用時間として、電磁弁の開放時間の積算値、すなわち、浄水の吐出時間の積算値と、浄水手段の使用期間、すなわち、新しい浄水手段を使用し始めてからの経過時間とを採用しており、これら使用時間を測定する管理手段として、電磁弁の開放時間の積算値をカウントする装置(以下、開放時間カウンタという。)と、浄水手段の使用期間をカウントする装置(以下、使用時間カウンタという。)とが制御装置4に内蔵されている。
【0013】
また、この例の制御装置4の管理手段は、開放時間の積算値のしきい値と、浄水手段の使用期間のしきい値とを予め設定できるようになっており、いずれか一方がそのしきい値を超えた場合には、それを報知する報知手段を備えている。この例では、報知手段として、浄水手段の交換時期を知らせるカートリッジ交換サイン13が、専用水栓10の水栓本体41の上面部に設けられ、制御装置4と電気的に接続されている。よって、上記いずれか一方がそのしきい値を超えた場合には、カートリッジ交換サイン13に信号が送られるように構成されている。また、この例では、さらに報知手段として、飲用に適した水であることを知らせる清水サイン16も水栓本体41の上面部に設けられている。該清水サイン16は、通常は電磁弁が開放状態になると直ちに点灯し、閉状態になると直ちに消灯し、浄水が吐水されている間は点灯が継続されるようになっている。そして電磁弁の閉状態の継続時間が所定時間に達した後に、接触式スイッチ43を作動させて電磁弁を開放状態にすると、吐水開始から一定時間が経過した後に清水サイン16が点灯するように構成されている。すなわち、浄水手段や浄水管6等の内部に滞留していた水が浄水吐出口11から排出された後に点灯して、飲用に適した水であることを知らせるようになっている。
【0014】
また、本実施形態の水処理装置は、浄水手段に滞留する滞留水を定期的に自動吐出する自動吐水手段を備えている。
この例の自動吐水手段は、接触式スイッチ43が押されて電磁弁が閉じられ、浄水吐出口11が止水状態になった時点を基準として、時間の計測を開始するタイマーを制御装置4に備えている。そして、このタイマーには、あらかじめ時間(作動間隔)Tを設定できるようになっていて、タイマーが時間を計測し始めてから時間Tに到達するまでの間に、接触式スイッチ43が1度も押されず電磁弁が開放されなかった場合、すなわち、手動吐水されなかった場合には、タイマーから電磁弁に電気信号が送られ、電磁弁が一次的に開放されるようになっている。それにより、浄水手段に滞留する滞留水は自動吐出され、浄水手段には新たな原水が導入される。一方、タイマーが時間を計測し始めてから時間Tに到達するまでの間に、接触式スイッチ43が押された場合には、通常どおり電磁弁は開放され浄水吐出口11から吐水される。そして、タイマーによる時間の計測は、ここで一旦リセットされ、その後接触式スイッチ43が押されて止水状態となった時点を基準として再開される。
また、制御装置4には、このように電磁弁を一次的に開放する際の開放継続時間も設定できるようになっていて、設定された開放継続時間だけ、電磁弁が一次的に開放されるようになっている。例えば、時間Tを48時間、開放継続時間を2分間と設定した際には、48時間にわたって接触スイッチ43が押されなかった場合に、電磁弁が2分間だけ開放されることとなる。
【0015】
また、この水処理装置は、タイマーと電磁弁との電気的な接続のオンオフを切り替えることで、自動吐水手段の作動状態をオン(起動)またはオフ(停止)に設定できるオンオフ設定機構をさらに備えている。よって、例えば、この水処理装置の使用者が旅行などで長期間不在になる際など、定期的な自動吐出の機能を停止させたい場合には、オンオフ設定機構を作動させて、自動吐水手段の作動状態をオフにすることができる。それにより、使用者の不在中、例えば何らかの原因によりシンクの排水管に詰まりが生じてしまった場合などに、吐出された滞留水がシンクから溢れ出てトラブルを引き起こすなどの懸念を排除できる。そして、使用者の帰宅後には、オンオフ設定機構を作動させて、自動吐水手段の作動状態をオンにすることにより、いつでも衛生的な浄水が得られるように設定することができる。
【0016】
そしてこの例では、水栓本体41の頭頂部における外壁部分、すなわち、後述の上部ケーシング45aが水栓本体41の周方向に回動可能なマグネットスイッチとされ、水栓本体41の上面部に設けられた接触式スイッチ43を押して作動させ、この作動と同時又はこの作動の前後一定時間内に行われる上部ケーシング45aの回動の感知によって、オンオフ設定機構が作動して、自動吐水手段の作動状態をオンオフできるように構成されている。
なお、本明細書において「作動の前後一定時間内」とは、接触式スイッチ43を作動させた時点を基準として、本願発明による水処理装置の大きさや用途などに応じて適宜設定されるものである。例えば、本願発明による水処理装置が、家庭のキッチンにおいて用いられる水栓一体型の浄水装置または整水装置などの形態である場合、利用者の感覚的な利便性を考慮して、接触式スイッチ43を作動させた時点を基準として、その前と後のそれぞれにおいて5〜30秒間以内の範囲のいずれかに設定されることが好ましい。
【0017】
具体的には、この例の水栓本体41は、図2に示すように、管状で上端および下端が開口し、内部が長さ方向に貫通する内部空間44aになっている内部ケーシング44と、該内部ケーシング44の外側に、内部ケーシング44と液密に設けられた管状の外部ケーシング45とを備えている。外部ケーシング45は、水栓本体41の頭頂部において外壁をなし、水栓本体41の軸線Pを中心として周方向に回動可能な上部ケーシング45aと、管状ケーシング部42bを介して上部ケーシング45aよりも下方に位置し、内部ケーシング44に固定された下部ケーシング45bとからなっている。
【0018】
上部ケーシング45aは、筒部46aと筒部46aの上端に液密に嵌め込まれた蓋部46bとを備えて構成され、筒部46aが内部ケーシング44の上端に螺合することで、内部ケーシング44に着脱可能に取り付けられている。蓋部46bは、水栓本体41の上面部を構成し、ここに接触式スイッチ43が設けられている。
そして、上部ケーシング45a内には、ホールIC47aが設置された基盤47が固定され、上部ケーシング45aを回動させると、ホールIC47aも同伴して回動するようになっており、一方、内部ケーシング44の上端の内側には、マグネット48が固定されている。よって、上部ケーシング45aを回動させることによって、ホールIC47aはマグネット48による磁界領域内を出たり入ったりし、その際の電気信号が基盤47から図示略の信号配線を通って、制御装置4に送られるようになっている。また、この基盤47からは、接触式スイッチ43を押した際の電気信号も制御装置4に送られるようなっている。
【0019】
このようなマグネットスイッチにおけるホールIC47aの動きについて、図4を用いて具体的に説明する。なお、図4には、ホールIC47aの位置と磁界領域(図4中、破線で囲まれた領域)Mの位置も示している。
自動吐水手段の作動状態をオンオフする必要がない、いわゆる通常時には、図4(a)に示すように、マグネットによる磁界領域M内にホールIC47aが入るように、上部ケーシング45aは内部ケーシング44に装着されている。一方、自動吐水手段の作動状態をオンオフする必要が生じた場合には、図4(b)に示すように、上部ケーシング45aをこの例では時計回りに90°(=α)回動させることによって、磁界領域M内からホールIC47aが外れ、電気信号が制御装置4に送られ、オンオフが可能な設定可能モードとなるように構成されている。
このように上部ケーシング45aを回動させて設定可能モードとした後に、一定時間内に接触式スイッチ43を押すことにより、オンオフ設定機構が作動して自動吐水手段の作動状態をオンまたはオフに設定することができる。
【0020】
なお、この例では、通常時(図4(a))から設定可能モード時(図4(b))に切り替える際には、上部ケーシング45aを時計回りに90°回動させているが、ホールIC47aが磁界領域Mから外れさえすればよく、その限りにおいては時計回りに90°以上回動させてもよいし、必ずしも90°まで回動させなくてもよい。
さらにこの例では、ホールIC47aが磁界領域M内から外れている際を設定可能モード時とし、磁界領域M内に存在する場合を通常時としているが、反対に、磁界領域M内に存在する場合を設定可能モード時とし、磁界領域Mから外れた際を通常時としてもよい。
また、この例では、先に上部ケーシング45aを回動させて磁界領域M内からホールICを外すことによって設定可能モードとした後、一定時間内に接触式スイッチ43を押すことによって、オンオフ設定機構を作動させて自動吐水手段の作動状態をオンオフできる構成としているが、接触式スイッチ43の作動並びに当該作動と同時又は前後一定時間内に行われる上部ケーシング45aの回動を感知することによりオンオフ設定機構を作動させる限り、この形態に限定されない。例えば、先に接触式スイッチ43を、操作手段を作動させる際の押し時間よりも長い時間押すこと(例えば3秒以上等。)、すなわち、長押しすることによって、電磁弁を開閉する電気信号ではなく、設定可能モードとする電気信号が制御装置4に送られるように設定しておく。そうすることによって、まず、接触式スイッチ43を所定時間以上、長押しして設定可能モードとし、その後、一定時間内に上部ケーシング45aを回動させることによって、直ちにオンオフ設定機構が作動して自動吐水手段の作動状態のオンオフが設定できるように構成することもできる。
【0021】
なお、内部ケーシング44の内部空間44a内には、内部ケーシング44を長さ方向に貫通する図示略の配線部材が収容され、この配線部材内に、基盤47と制御装置4とを電気的に接続する信号配線や、基盤47と図示略の電源とを電気的に接続する電力配線等が含まれる。
【0022】
図4中(c)は、上部ケーシング45aを内部ケーシング44に取り付けたり取り外したりする場合のホールIC47aと磁界領域Mとの位置関係を示したものである。上部ケーシング45aを通常時(図4(a))から反時計周りに45°(=β)回動させ、ホールIC47aと磁界領域Mとを図4中(c)に示す位置関係にすることによって、上部ケーシング45aを容易に着脱することができる。よって、上部ケーシング45aの蓋部46bに設けられている接触式スイッチ43が、一定の作動回数を経た場合には新品に交換する必要があるものの場合には、上部ケーシング45aを容易に取り外して、その蓋部46bに設けられた接触式スイッチ43の交換作業をすることができる。
【0023】
次に、管状ケーシング部42b、内部ケーシング44などの構成について説明する。図2に示すように、管状ケーシング部42bは、斜め上方に開口する管状の突出部42cを有し、突出部42cの開口は管部42aと液密に接続され、管部42aと管状ケーシング部42bの内部とが連通している。
また、この例では、管状ケーシング部42bは内部ケーシング44に固定されておらず、すでに述べたとおり、水栓本体41の周方向に軸線Pを中心として回動可能とされている。具体的には、吐水管42には回動限定機構が設けられており、その回動の範囲は周方向の一部、この例では、軸線Pを中心とした際に中心角120°の範囲内とされている。よって、管状ケーシング部42bを回動させることによって、管部42a先端の浄水吐出口11もこの範囲内で移動し、吐水の位置を変えられるようになっている。
【0024】
このように吐水管42の管状ケーシング部42bの回動の範囲を限定する回動限定機構としては、図示は略すが、管状ケーシング部42bの上端部においては、該管状ケーシング部42bの内周面に突起が形成されている。一方、この突起と係合する溝部が、内部ケーシング44の外周面に、軸線Pを中心とした際に中心角120°の範囲内に形成されている。よって、管状ケーシング部42bを回動させると、突起は溝部内を溝部の長さ方向に沿って移動するが、その移動の範囲は中心角120°の範囲内に限定される。それに伴って、管状ケーシング42bの回動も中心角120°の範囲内に限定されるようになっている。
このように管状ケーシング部42bの周方向における回動の範囲を一部に限定する回動限定機構として、管状ケーシング部42bの内周面に突起が設けられ、これに係合する溝部が内部ケーシング44の外周面に形成されていると、例えば使用者から見て奥の方に吐水管42の管部42aが回り込み、シンクの周囲の天板部に吐水してしまうことなどが防げる点で好適である。
【0025】
内部ケーシング44の外壁は、内部ケーシング44の上部および下部では略円筒状であり、管状ケーシング部42bの突出部42cの近傍では、図5に示すように断面略半円状になっている。あわせて、内部ケーシング44の外面と管状ケーシング部42bの内面との間には、断面略半円状であって、管部42aと連通した貯水部44bが設けられている。このように貯水部44bを設けると、管部42aから吐出される水を一旦該貯水部44bに溜めておき、一定量となった時点で管部42aから吐出させることができる。その結果、吐水圧を適度に調整することができる。
貯水部44bの底面44cをなす内部ケーシング44には、管状の継ぎ手49が液密に挿入されている。該継ぎ手49の下端は浄水管6に接続されており、上端は貯水部44bに開放されている。すなわち、貯水部44bは該継ぎ手49を介して、水栓本体41の内部に貫装された浄水管6と連通している。図中符号50はOリングを示す。
【0026】
内部ケーシング44の下端は、流し台30に固定された環状部材51のナット部52に螺合されており、内部ケーシング44の下部、環状部材51の上部、およびナット部52の外面を一体的に覆うように金属製の補強部材53が設けられている。そして、補強部材53の外側に下部ケーシング45bが設けられている。補強部材53と下部ケーシング45bとの接合部はOリング54で液密にシールされている。また下部ケーシング45bの下端部、内部ケーシング44の下端部および該補強部材53の下端部は、いずれも、図示略のボルトによって環状部材51に固定されている。
【0027】
以上説明したように、このような水処理装置によれば、自動吐水手段の作動状態をオンオフするオンオフ設定機構を有しているため、使用者の事情などに応じて、自動吐水機能の作動状態のオンオフを切り替えることができる。
なお、以上の説明では、上部ケーシング45aが水栓本体41の周方向に回動可能なマグネットスイッチとされ、水栓本体41の上面部に設けられた接触式スイッチ43を押して作動させ、この作動と同時又はこの作動の前後一定時間内に行われる上部ケーシング45aの回動の感知によって、オンオフ設定機構が作動する場合について例示したが、例えば、接触式スイッチ43を押して作動させ、この作動と同時又はこの作動の前後一定時間内に行われる吐水管42の回動の感知によって、オンオフ設定機構が作動して自動吐水手段の作動状態をオンオフできるようにしてもよい。
【0028】
その場合には、図2中に示したマグネット48を設ける代わりに、図6および図7に示すように、管状ケーシング部42bの上端の内周面に、マグネットを具備する突起(以下マグネット突起という。)58を1つ設け、吐水管42を回動させると、このマグネット突起58も同伴して回動するようにする。一方、内部ケーシング44の上端近傍の外周面には、このマグネット突起58と係合する溝部Dを周方向の一部(この例では、軸線を中心とした際に中心角γが略120°となる範囲内)に形成し、この溝部Dの長さ方向(周方向)の一端に、基盤47と電気的に接続したホールIC47aを設置する。
【0029】
このようにすると、管状ケーシング部42bを回動させた場合、マグネット突起58も溝部D内を溝部Dの長さ方向に沿って中心角γの範囲内で移動する。そして、図7(c)に示すように、溝部Dの一端に設置されたホールIC47aにマグネット突起58が接触すると、電気信号が基盤47から図示略の信号配線を通って制御装置4に送られ、自動吐水手段の作動状態をオンオフできる設定可能モードとなるように構成できる。
【0030】
具体的には、自動吐水手段の作動状態をオンオフする必要がない、いわゆる通常時には、吐水管42を適宜回動させて、例えば図7(a)に示すように、マグネット突起58が溝部Dの他端(ホールIC47aが設置されていない側の端部)に位置するように、または、図7(b)に示すように、溝部Dの両端以外の部分に位置するようにしておく。一方、自動吐水手段の作動状態をオンオフする必要が生じた場合には、図7(c)に示すように、吐水管42を回動させて、マグネット突起58をホールIC47aに接触させることによって、設定モードとすることができる。
このように吐水管42を回動させて設定可能モードした後に、一定時間内に接触式スイッチ43を押すことにより、オンオフ設定機構が作動して、自動吐水手段の作動状態をオンまたはオフに設定することができる。なお、この場合も、先に接触式スイッチ43を長押しするなどし、その後一定時間内に吐水管42を回動させる形態としてもよい。
【0031】
さらに、自動吐水手段の作動状態をオンオフするオンオフ設定機構を作動させる具体的形態は、上述の2例に制限されず、例えば接触式スイッチなどの形態の作動設定スイッチ(オンオフ設定機構)を制御装置4の筐体、水栓本体41の上面部、水栓本体41の外周面、管部42aの周面などのいずれかに別途設ける形態も挙げられる。また、電磁弁開閉用の接触式スイッチ43を作動設定スイッチとして兼用する方法も挙げられる。その場合には、接触式スイッチ43の長押し時間により、接触式スイッチ43から送られる電気信号が電磁弁を開閉する信号ではなく、オンオフ設定機構を作動させて自動吐水手段の作動状態をオンオフする信号であると判別できるように、設定しておくことが好ましい。
しかしながら、先に示した2例のように、上部ケーシング45aを水栓本体41の周方向に回動可能なマグネットスイッチとし、水栓本体41の上面部に設けられた接触式スイッチ43を押す操作と、上部ケーシング45aを回動させる操作とを組み合わせることによって、オンオフ設定機構が作動する形態や、吐水管42を水栓本体41の周方向に回動可能なマグネットスイッチとし、水栓本体41の上面部に設けられた接触式スイッチ43を押す操作と、吐水管42を回動させる操作とを組み合わせることによって、オンオフ設定機構が作動する形態であれば、異なる位置における異なる操作を2つ組み合わせることで、自動吐水手段の作動状態をオンオフできるようにしているため、意に反してオンオフ設定機構を作動させてしまうなどの誤操作が起こりにくい。また、2つの操作は、水栓本体41の上面部に設けられた接触式スイッチ43を押す操作と、上部ケーシング45aまたは吐水管42を回動させる操作であるため、いずれも手元で操作でき、操作性にも優れる。
【0032】
また、接触式スイッチ43は、電磁弁の開閉を制御して管部42aからの吐水と止水とを手動で切り替えるために、水栓本体41に元々設けられているものであるし、上部ケーシング45aは、その蓋部46bに設けられている接触式スイッチ43を適宜新品に交換できるように、回動させることで内部ケーシング44から取り外せるように、元々構成されている。また、吐水管42も、水栓を構成するには元々必要な部材である。
よって、接触式スイッチ43と上部ケーシング45a、または、接触式スイッチ43と吐水管42とをオンオフ設定機構に利用すると、作動設定スイッチを別途新たに設ける必要がない。そのため、コスト面で有利であるうえ、専用水栓10のデザインもスリムかつシンプルに維持でき、デザイン性にも優れる。
なお、接触式スイッチ43としては、押下式スイッチ、感圧式スイッチなどのスイッチを例示することができる。
【0033】
また、この水処理装置のオンオフ設定機構は、自動吐水手段の作動状態を自動でオンオフできるプログラム、すなわち、オンの状態にある自動吐水手段を自動でオフにしたり、オフの状態にある自動吐水手段を自動でオンにしたりできるプログラムがさらに組み込まれたものであることが好ましい。
具体例としては、自動吐水手段の作動状態がオンの場合において、接触式スイッチ43の作動により手動吐水されることがなく、あらかじめ決められた回数だけ自動吐水した後には、自動吐水手段の作動状態をオフにするようなプログラムが組み込まれたものであることが好ましい。ここで、このようなプログラムが組み込まれていないと、使用者が旅行などで長期間不在になる際に、オンオフ設定機構で自動吐水手段をオフに設定し忘れた場合、不在中であるにもかかわらず自動吐水手段が作動し続けてしまい、例えば48時間おきに2分間、自動吐水され続けることとなる。その点、自動吐水手段の作動状態がオンの場合における自動吐水の回数の上限が例えば10回に制限されていると、48時間おきに10回だけ自動吐水した後には、自動吐水手段の作動状態がオフになり自動吐水しなくなる。よって、使用者の不在中に自動吐水され続けることによるトラブルの発生を回避することができる。
その他の具体例としては、例えば、自動吐水するために電磁弁を一次的に開放する開放継続時間の合計が、ある一定時間に到達した場合には、自動吐水手段の作動状態がオフになるようなプログラムも例示できる。
【0034】
なお、本実施形態では、水処理手段として浄水カートリッジを備えた浄水手段を例示したが、適当な処理剤を内部に収めた水処理用のカートリッジを有するものであれば、これに限らず他の水処理手段であってもよい。例えば浄水器7に代えてアルカリイオン整水器を用いてもよい。この場合、専用水栓10には2つに分岐した浄水吐出口を設けて、電解槽で電気分解して生成されたアルカリ水と酸性水とを別々に吐出できるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、開閉弁の例として電磁弁を用いて説明したが、単なる開閉弁に代えて、浄水手段により得られた浄水の吐水と、原水の吐水と、止水などの3つの機能を兼ねた流路切換弁や、プラグ弁などを用いてもよい。そして、プラグ弁を用いた場合には、該プラグ弁と接触式スイッチ43とが電気的な配線ではなく、ワイヤで接続されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の水処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の水処理装置が具備する専用水栓の縦断面図である。
【図3】図1の水処理装置が具備する専用水栓の要部を示した概略斜視図である。
【図4】図2のI−I’線に沿う横断面図である。
【図5】図2のII−II’線に沿う横断面図である。
【図6】本発明の水処理装置の他の一実施形態に備えられた専用水栓の縦断面図である。
【図7】図6のIII−III’線に沿う横断面図である
【符号の説明】
【0036】
5:給水管
7:浄水器
10:専用水栓
41:水栓本体
42a:管部
43:接触式スイッチ(操作手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を処理する処理剤を内部に収めたカートリッジを有する水処理手段と、該水処理手段に前記原水を供給する給水管と、前記水処理手段により処理された処理水を吐水する吐水管と、前記給水管を開閉する開閉弁と、該開閉弁の開閉を手動で制御することによって前記吐水管からの吐水と止水とを切り替える操作手段と、前記カートリッジ内に滞留する滞留水を前記吐水管より定期的に自動吐出する自動吐水手段とを備えた水処理装置であって、
前記自動吐水手段の作動状態をオンオフするオンオフ設定機構を有する水処理装置。
【請求項2】
前記オンオフ設定機構は、前記オンオフを自動で変更するプログラムがさらに組み込まれたものである請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記プログラムは、前記自動吐水手段の作動状態がオンの場合に、前記操作手段により手動吐水されることなく、あらかじめ決められた回数だけ自動吐水した後には、前記自動吐水手段の作動状態をオフにするものである請求項2に記載の水処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−51880(P2010−51880A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218365(P2008−218365)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(504346204)三菱レイヨン・クリンスイ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】