説明

水分を含んだ野菜スラリー中や果実スラリー中の成分を体内に取り込む方法及びそれに使用する袋。

【課題】 野菜や果実には多様な成分が含まれている。これらの成分は野菜や果実を経口から摂取することにより口内吸収、腸内吸収により人の体内に取り込んでいる。野菜や果実成分を肌である皮膚より吸収できれば、皮膚への直接の栄養補給、経口摂取ではなく皮膚からの体内への栄養補給、経口摂取の困難なときに皮膚からある程度の栄養補給の実施が可能になる。
【解決手段】 本発明は、野菜や果実の体への新たな補給方法を提案するために、水分を多量含んだ野菜スラリーや果実スラリーを作成する。このスラリーを大きな開口部を持つ袋や容器に入れ、これに手や足を30分間程度つける。スラリーを肌に直接接触させることで、皮膚からの成分吸収が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含んだ野菜スラリー及び果実スラリーを人の肌である皮膚に接触させて、野菜スラリー及び果実スラリー中に含まれる成分を人の体内に取り込むことの方法および手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬草固体を直接皮膚に貼り付け、あるいは薬草のスラリーを布に塗布した後に皮膚に貼り付けて薬効成分を体内に吸収させる方法が古来より用いられてきている。
また喘息や麻酔をそれぞれの薬効成分を含んだパッチを用いて皮膚に貼り付け、パッチに固定したペーストより薬効成分を肌より吸収させ、薬効成分を体内に取り込む手段が特許特開平11−335282号公報(特許文献1)で提案している。
また、特開平−7−196480号公報(特許文献2)では皮膚表面に塗布された外用塗布薬剤や化粧料等に含まれる薬効成分、有効成分などの経皮吸収を高めることのできる、閉塞効果に優れた皮膚被覆材を提案されている。
これらの方法は、薬効成分を肌より取り込む方法を提案しているものの、古くからの習慣で実施されており、薬草の薬効成分が体にどのように吸収されていることについては、明確に示されてこなかった。
薬草でなく、食品成分である野菜や果実から肌を通して野菜成分や果実成分を取り込む試みはこれまでなされておらず、特開2001−178410号公報(特許文献3)、同2003−259795号公報、(特許文献4)および同2005−198634号公報(特許文献5)のように口から吸収するものばかりであった。
本発明は、食品の野菜や果実をスラリー化することにより、肌から野菜成分や果実成分を取り込むことを実現する。
【0003】
【特許文献1】特開平11−335282号公報
【特許文献2】特開平7−196480号公報
【特許文献3】特開2001−178410号公報
【特許文献4】特開2003−259795号公報
【特許文献5】特開2005−198634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
野菜や果実には多様な成分が含まれている。これらの成分は野菜や果実を経口から摂取することにより口内吸収、腸内吸収により人の体内に取り込んでいる。野菜や果実成分を肌より吸収できれば、皮膚への直接の栄養補給、経口摂取ではなく皮膚からの体内への栄養補給、経口摂取の困難なときに皮膚からある程度の栄養補給の実施が可能になる。
また、野菜や果実には美容効果の期待できる成分(ビタミンC等)も多く含まれている。野菜や果実の成分は経口で吸収された場合、肝臓の代謝を経て血管を通り各器官へ輸送される。つまり効果を求めたい部分(例えば顔のしわ等)にのみ作用するわけではない。野菜や果実成分が皮膚から吸収できれば、効果を求めたい部分から直接作用させることが可能となる。
本発明は野菜や果実をスラリー化して皮膚に接触しやすくし、スラリー中に含まれる成分を肌から吸収させることにより、体内へ野菜や果実成分を補給する。またスラリーを乾燥化した後も、加水により本効果は期待できるため、浸漬、塗布、ゲル化、濃厚溶液化などの方法で利用できる。
本発明は野菜や果実の成分を体内へ補給する新たな方法と手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、野菜や果実の体への新たな補給方法を提案するために、水分を多量含んだ野菜スラリーや果実スラリーを作成する。ついでこのスラリーを肌に直接接触させることで、皮膚からの成分吸収が可能となる。
【0006】
実施分析例に従って説明する。
実施例1について説明する。
キャベツにはビタミンCをはじめ様々な機能性成分が含まれている。キャベツスラリーから皮膚へのビタミンCおよび他の成分の吸収の具体例を以下に示す。
キャベツをミキサーにてスラリー化し、直径15cm、高さ25cmのプラスチック容器内に約700g入れた。このプラスチック容器を循環式恒温槽内に入れて40℃に加温した。野菜スラリー中への浸漬実施の効果を判定するために次の手順を行った。まず両手を温度38〜40℃の流水にて1分間洗浄した後、右手をスラリーに30分間浸たした。また左手は清浄の状態に保持した。右手から野菜スラリーの成分が体内に吸収され、この体内に吸収された野菜成分が左手の皮膚表面から汗とともにまたは直接拍出してくるのを調べた。野菜成分としてはビタミンC及びその他成分を対象として、左手の皮膚表面から得られる成分の測定はガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)にて実施した。実施の様子を図1の写真に示した。なお写真はスラリーを袋に入れて用いた例を示しており、水温は約38度に保っている。
【0007】
実施例1にけるサンプリング工程を詳しく記述する。サンプリングはスラリーにつけた反対側の手、すなわち左手を用いて実施した。まず、手を流水により洗浄(1分間)し、キャベツスラリーに右手をつけている間、左手をかざして清浄状態に保った。次いで霧吹き(1%アルコール水溶液)により指に霧を吹き付け、汗や皮膚表面から出てきた成分の捕集を実施した。左手を清浄に保った時間は35分間(スラリー浸漬時間30分と皮膚表面からの採集前の5分間)であった。このサンプル採集を浸漬直後とした。浸漬後1時間、及び浸漬後2時間とは30分間の浸漬時間終了時を起点とした。
サンプリングは一指し指、及び中指の第二間接より先端部の皮膚表面から集めた。噴霧により得られた溶液(約体積 0.5ミリリットル)は、1.5ミリリットル容量の小型樹脂製容器に入れ、これを真空遠心乾燥機 (60℃ で保温)で4〜8時間にわたり乾燥し、乾固した。次いで誘導化試薬(N,O−ビス(トリエチルシリル)トリフロロアセトアミド)50マイクロリットルを小型樹脂製容器に加えて、乾固された野菜成分と前記誘導化試薬と反応させた。反応は冷蔵庫で一夜おき反応させた。得られた試料用液をGC/MSで測定した。
【0008】
ガスクロマトグラフ/質量分析器による測定結果を表1及び図2に示した。表1はビタミンCを詳しく調べ、ビタミンCのGC/MSにより得られたピーク面積のカウントを示した。その結果、浸漬前と比較してほぼ倍のビタミンCが浸漬していない手から拍出されていることが分かった。このことから、キャベツスラリー中に含まれるビタミンCが手の表面から吸収され、体内を循環したことが示唆される。
【表1】

【0009】
図2は、被験者の浸漬前、浸漬直後および浸漬から1時間後の野菜成分の拍出状況を示すグラフであり、右手のキャベツスラリーへの浸漬前後における左手の汗及び皮膚表面から捕集された試料のクロマトグラムを示した。図2を見てみると、浸漬前に比べて浸漬後のクロマトグラムでは保持時間17.5分から20分の間に多数のピークが存在している。図2のクロマトグラムより、野菜成分が体内に吸収されて、反対側の手よりその成分の一部が皮膚表面に出ていることが確認された。これらキャベツ由来の複数成分が、ビタミンC同様に手から吸収され、体内循環していることが示唆される。
【0010】
実施例2について説明する。実施例2はバナナスラリーに含まれる糖成分(グルコース)の吸収を実施した。バナナには多くの糖が含まれる。バナナスラリーから皮膚への糖吸収実験を次のように実施した。バナナをミキサーにてスラリー化し、25cm×25cmのポリ袋に約700g入れた。約38℃の温浴中にポリ袋を入れ、約38℃のお湯で1分間洗った右手を30分間スラリー中に入れた。スラリー中の手とは逆の左手の汗を採取し、汗中の糖をGC/MSにて分析を行った。
サンプリングは実施例1と同様に行った。すなわち霧吹きによる方法を用いて、左手より汗成分及び皮膚表面への拍出成分を捕集した。実施例1と同様の誘導化を実施し、GC/MSによりグルコースを定量した。
【0011】
実施例2の測定結果を表2に示した。被験者2名についての実施例を表2に示す。
表2よりグルコースがバナナスラリーから体内へ吸収され、その一部が反対側の手より出ていることが分かる。摂取2時間後では摂取前に比べて10倍以上のグルコースが手の指から出ていることが認められた。
【表2】

【0012】
実施例3について説明する。
実施例3は野菜スラリーを乾燥し、再び水分を加えてスラリーにし、このスラリーを用いて、皮膚吸収を行う方法である。そのために野菜スラリーの水分率について測定した。実施例1及び実施例2の各スラリーの水分率を表2に示した。
【表2】

【0013】
これらの野菜スラリーをフリーズドライにより乾燥させ、スラリー粉末にした。
【0014】
次いでスラリー粉末に再度水を加えたところ、以下の割合でスラリー状に戻った。
加えた水の量を表3に示す。
【表3】

【0015】
表3に記した戻水はスラリー状にするために加える水のことであり、戻水を加えることによりスラリーになったときの水分率を戻水率として示している。
粉末やゲル状等にスラリーを加工する場合も、表3のように再度水を加えることが必要である。
実施例1のような野菜スラリー状になり、水分率はまだ低いが野菜スラリー状になっており、野菜成分の皮膚吸収は期待できる。
【0016】
実施例4を説明する。
野菜スラリー成分の皮膚吸収は皮膚との浸透圧によるものと考えられることからスラリーの水分率は成分の吸収率に大きく影響するものと考えられる。野菜スラリーの水分を幾分減少させて浸透圧を生体の浸透圧に等しくすることも可能である。
【0017】
実施例5を説明する。
野菜スラリーの皮膚吸収を迅速に図るために、野菜スラリーの水分率を、乾燥処理を少し加えることにより減少させ、浸透圧を上げて皮膚吸収を迅速に行わせることも可能である。
【0018】
実施例6を説明する。
足を野菜スラリーに30分間浸したところ、人の体内への野菜スラリー成分が吸収されることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
野菜や果物の成分を体内に吸収させる新たな本発明方法の実施の最良の形態として、次のような手段が望ましい。すなわち、ミキサーにて野菜や果物をスラリー化してスラリーを得る。このスラリーを、開口部を持つ袋や箱に入れ、手がスラリー中に挿入できるようにする。野菜スラリーや果物スラリーの温度は体温近傍が望ましいので、38℃前後に保つ。このスラリーの中へ手や足を浸漬する。短時間でも効果が望めるが、30分間前後が望ましい。この間に野菜や果物の成分が接触した皮膚を経由して、体内に吸収され、栄養が体内に補給される。
【0020】
またミキサーにて野菜や果物をスラリー化してスラリーを得た後、これを乾燥し固形化する。固形化は運搬や保存するのに便利である。固形化したものにスラリーに戻すために戻水を加えてスラリーを得る。このスラリーを大きな開口部を持つ容器に入れて皮膚に接触させて、栄養分の吸収を図る。容器の深さが数ミリの浅いものでも、容器素材に柔軟性をもたせて用いることができるので、適度に皮膚に接触させることガ可能であり適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、水分を含んだ野菜スラリー及び果実スラリーを人の皮膚に接触させて、野菜スラリー及び果実スラリー中に含まれる成分を人の体内に取り込むことの方法および手段に関するものである。本発明は野菜や果実の成分を体内へ補給する新たな方法と手段を提供するものである。
この新たな野菜や果物の成分の栄養補給は、健常人における肌の手入れや穏やかな栄養補給方法有効である。疾病を持つ患者さんへの新たな栄養補給方法として、適用できる。すなわち経口摂取が困難な疾病を有している患者さんへの適用は有効である。
【0022】
野菜や果物の有効利用として、産業上利用できる。カット野菜を生産するときに多量の製品に出来ない部分が発生する。これらは、従来は廃棄されていたが、本発明により有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 袋の中の野菜スラリーへの手の浸漬による接触を行っている写真である。
【図2】 野菜スラリーへの右手の浸漬に伴う、左手からの野菜成分の拍出状況について、ガスクロマトグラフ/質量分析計による分析結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含んだ野菜スラリーや果実スラリーを人の肌である皮膚に接触させて、野菜スラリーや果実スラリーに含まれる成分を人の体内に取り込む方法。
【請求項2】
水分を含んだ野菜スラリーや果実スラリーを、人の細胞と等しい浸透圧になるように調整した請求項1記載の水分を含んだ野菜スラリー中及び果実スラリー中の成分を体内に取り込む方法。
【請求項3】
水分を含んだ野菜スラリー中や果実スラリーを袋に入れ、その中に手や足、腕を浸漬し、一定時間保持して野菜スラリーや果実スラリー成分を人の身体に取り込むようにした請求項1及び請求項2記載の水分を含んだ野菜スラリー中及び果実スラリー中の成分を体内に取り込む方法。
【請求項4】
野菜スラリーや果実スラリーを乾燥し、これを固形に仕上げて、使用前に水分を加えて水分を含んだスラリー状にした請求項1記載の野菜スラリーや果実スラリーに含まれる成分を人の体内に取り込む方法。
【請求項5】
水分を含んだ野菜スラリー中や果実スラリーを大きな開口部を有し、該開口部内に人の腹部あるいは背中が位置し、該スラリー中の成分を体内に取り込むようにした水分を含んだ野菜スラリー中や果実スラリー中の成分を体内に取り込むための袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−77107(P2010−77107A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274910(P2008−274910)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(504253980)有限会社ピコデバイス (11)
【出願人】(393005141)デザイナーフーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】