説明

水分センサ

【課題】高いセンシング精度を実現した、成人用オムツや人工透析用シートに採用される水分センサの提供。
【解決手段】この水分センサー22は、5層構造を有する。水分センサー22は、メインシート31と、このメインシート31の上下に貼り付けられたサブシート32及び防水シート33とを備える。メインシート31に電極36、37が印刷されている。電極36、37は、水性カーボンインクからなる。メインシート31とサブシート32との間に導電性接着剤34が介在している。この導電性接着剤34は、乾燥時に電気的絶縁性を示し、吸水時に導電性を示す。防水シート33は、汎用の接着剤35によりメインシート31に貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成人用おむつや人工透析用シートに搭載される水分センサーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
痴呆症状が現れた成人は、介護が必要となる。たとえば、排泄補助のためにオムツ(成人用)が使用されることがある。従来のオムツは、排尿等を検出するための水分センサーを備えており、介護者が被介護者の排泄の有無を認知することができるようになっている。また、人工透析の処置は長時間を要するが、痴呆症状が現れた患者は、処置中に自ら針を抜いてしまい、腕から出血することがある。このため、人工透析の際には患者の腕の下に人工透析用シートが配設され、これに上記水分センサーが設けられ、漏れた血液が検出されるようになっている。
【0003】
図5は、介護が必要な成人が着用する従来のオムツの斜視図である。
【0004】
このオムツ1に排尿を検知する水分センサー2が内蔵されている。水分センサー2は、細長のシート状に形成されており、これに報知装置3が取り付けられている。報知装置3は、水分センサー2が尿を検出したときに、警告音を発するようになっている。これにより、介護者等は、被介護者の排尿及びオムツ1の取替時期を把握することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図6は、従来のオムツの平面図である。
【0006】
同図が示すように、水分センサー2は、オムツ1の略中央部に配置されている。水分センサー2は、尿を検知するための一対の電極4、5を備えており、通常は、一対の電極4、5間が電気的に絶縁されている。ただし、この一対の電極4、5は、排尿によって電気的に接続され、導通状態となる。報知装置3は、この電極4、5に接続されるコネクタ6を備えている。そして、このコネクタ6は、一対の電極4、5間に架け渡すように水分センサー2に取り付けられる。排尿により一対の電極4、5が電気的に接続されると、報知装置3は、コネクタ6を介して一対の電極4、5間の導通を検知し、警告音を発する。
【0007】
図7は、従来の水分センサーの具体的構造を模式的に示す図である。図8は、この水分センサーの断面構造を模式的に示す図である。
【0008】
上記水分センサー2は、6層構造である。水分センサー2は、防水フィルム7、和紙8、電極9、10及び和紙11を備えている。この電極9、10は、帯状に裁断されたアルミ箔からなる。防水フィルム7は、和紙8の下面にノリ(化学ノリ)12によって接着されている。和紙8の上面に電極9、10が接着されている。接着剤としてパラフィン(不図示)が採用される。和紙8と和紙11との間に導電性接着剤13が介在されており、この導電性接着剤13に電極9、10が埋設されている。この導電性接着剤13は、本願出願人が保有する特許権に係る特許公報(特許第3274130号公報)に開示されており、乾燥状態では絶縁性を示し、水分を吸収したときに導電性を示すものである。
【0009】
たとえば和紙11上に排尿された場合は、尿の水分が和紙11を通過して導電性接着剤13に至る。これにより、当該導電性接着剤13が導電性を示し、電極9及び電極10間が導通され、水分センサー2が排尿を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−55074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電極9、10は、シート状に形成されたアルミ箔が前述のように帯状に裁断されることにより構成される。ただし、このような工程で電極9、10が形成されるためには、生産技術上、アルミ箔の周面(表裏面)に所要の防錆処理が必要となる。アルミ箔周面が剥出状態であれば、原料としてのシート状アルミ箔が腐食するおそれがあるからである。
【0012】
しかし、このような防錆処理が施されることにより良好な導電性を示す部分は裁断面のみとなり、電極9、10の導電性が阻害されることは否めない。さらに、前述のように、電極9、10はパラフィンを介して和紙8に接着されているが、このパラフィンは疎水性を示すことから、電極9、10が撥水性を帯びてしまう。そして、このような事情から、水分センサー2が設計上の感度を発揮することができないという問題があった。
【0013】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであって、高いセンシング精度を実現した、成人用オムツや人工透析用シートに採用される水分センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明に係る水分センサーは、吸水性を有する第1シートと、第1シートの上面に所定距離を隔てて並設された一対の帯状電極と、乾燥時に絶縁性を示すと共に吸水時に導電性を示す導電性接着剤を介して上記一対の帯状電極を挟み込むように第1シートの上面に接着された第2シートとを備える。上記一対の帯状電極は、水溶性カーボンインクからなる。
【0015】
上記帯状電極は、水溶性カーボンインクからなるので、当該帯状電極は、耐腐食性に優れる。このため、一対の帯状電極は、特に表面防錆処理等が施されることなく剥き出し状態で第1シートの上面に配置され得る。したがって、各帯状電極の導電性が妨げられることがなく、第1シートに付着した水分が導電性接着剤に達することにより、当該導電性接着剤が導電性を発揮し、直ちに各帯状電極間が導通する。
【0016】
(2) 上記一対の帯状電極は、上記水溶性カーボンインクを用いたシルク印刷により形成されるのが好ましい。
【0017】
この構成では、一対の帯状電極が簡単に且つ安価に形成される。
【0018】
(3) 上記第1シートの下面に撥水性シートが重ね合わされているのが好ましい。さらに、当該撥水性シートの上記帯状電極に対応する位置に、蛍光塗料が付されていてもよい。
【0019】
この構成では、撥水性シートが設けられているので、水分が第1シートを通過することがない。このため、たとえば当該水分センサーが成人用オムツや人工透析用シートに採用された場合に、着用者の衣類やシーツが汚れることが防止される。また、成人用オムツや人工透析用シートは定期的に交換されるものであるが、これらの交換時には上記帯状電極に対してコネクタが着脱される。この作業は夜間に行われることもあり、その場合、介護者は、帯状電極の位置が確認しずらい。しかし、この構成では、上記帯状電極に対応する位置に蛍光塗料が付されているので、介護者は帯状電極の位置が確認しやすく、成人用オムツや人工透析用シートの交換作用が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐腐食性に優れた水溶性カーボンインクにより帯状電極が形成されているので、当該帯状電極に表面防錆処理等が施される必要はない。したがって、当該帯状電極の導電性が妨げられることがなく、高いセンシング精度が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る水分センサが搭載された成人用オムツの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る水分センサが搭載された成人用オムツの平面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る水分センサの構造を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の変形例に係る水分センサの構造を示す模式図である。
【図5】図5は、介護が必要な成人が着用する従来のオムツの斜視図である。
【図6】図6は、従来のオムツの平面図である。
【図7】図7は、従来の水分センサーの具体的構造を模式的に示す図である。
【図8】図8は、従来の水分センサーの断面構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
[概略構成]
【0024】
図1が示すように、この成人用オムツ20は、例えば介護が必要な痴呆症状が現れた成人によって使用される。介護者は、この成人用オムツ20を定期的に取り替えるが、成人用オムツの取り替えは、排尿等の後に直ちに行われるべきである。排尿等の時期は、従来から排尿報知装置21によって介護者に知らされるようになっている。排尿報知装置21は、排尿等の時期をブザー等で報知するが、排尿等の有無は、成人用オムツ20に搭載された水分センサー22によって検知される。排尿放置装置21は、水分センサー22と接続するためのコネクタ23を備えている。
【0025】
[オムツ本体]
【0026】
成人用オムツ20は、オムツ本体24を備えている。オムツ本体24は、既知の構造である。オムツ本体24は、たとえば不織布等で構成されており、十分な容量の水分吸収材が内臓されている。図2が示すように、オムツ本体24の両側部分25は円弧状に切り欠かれており、端部に固定用テープ27が設けられている。使用者は、オムツ本体24を陰部にあてがって固定用テープ27により固定する。これにより、成人用オムツ20は、レッグホール26(図1参照)が形成された下着形状となり、使用者は、優れた装着感が得られるようになっている。
【0027】
[水分センサ]
【0028】
水分センサー22は、オムツ本体24を構成する不織布の内側に設けられている。水分センサー22は、短冊状に形成されており、図2が示すようにオムツ本体24の長手方向に沿って配置されている。したがって、図1が示すように、使用者が成人用オムツ20を着用したときは、水分センサー22は、股部を覆うように配置される。
【0029】
図3が示すように、水分センサー22は、5層構造を有する。すなわち、水分センサー22は、一対の電極36、37(本発明における「帯状電極」の一例)を備えたメインシート31(本発明における「第1シート」の一例)と、このメインシート31の内側に配置されたサブシート32(本発明における「第2シート」の一例)と、このメインシート31の外側に配置された防水シート33(本発明における「撥水シート」の一例)とを有し、メインシート31とサブシート32との間に導電性接着剤34が介在されると共に、メインンシート31と防水シート33との間に通常の接着剤35が介在されている。上記サブシート32は、成人用オムツ20の内壁面を構成する不織布の直下に配置されており、もし、尿等の水分が当該不織布に付着したならば、当該水分は当該不織布を通過して上記サブシート32に到達する。
【0030】
メインシート31は、細長帯状に形成されており、本実施形態では和紙からなる。メインシート31を構成する材料は和紙に限定される必要はない。要するに、吸水性に富み、水に溶けにくく、乾燥状態において電気絶縁性を有するものであれば紙のほか布等もメインシート31の材料として採用され得る。メインシート31の厚さは、0.3mm〜0.8mm程度に設定される。
【0031】
電極36、37は、水性カーボンインクによって構成されている。電極36、37は、メインシート31の上面38に印刷されている。両電極36、37は、メインシート31の長手方向(すなわち水分センサー22の長手方向)に直交する方向(図3において矢印39の方向)に沿って所定距離だけ隔てて配置されている。両者間の隙間sは、5mm〜25mm程度に設定され得る。各電極36、37の幅wは、2mm〜25mm程度に設定される。本実施形態では、各電極36、37は、水性カーボンインクを用いたシルク印刷により構成される。したがって、各電極36、37の厚さ寸法は、きわめて小さく設定され、その結果、メインシート31の柔軟性が損なわれることがない。なお、水性カーボンインクとしては、親水性カーボンブラックが採用され得る。
【0032】
サブシート32は、メインシート31と同様の細長帯状に形成されており、メインシート31の上面38を完全に覆っている。サブシート32も本実施形態では和紙からなり、その厚さは、0.3mm〜0.8mm程度に設定される。サブシート32を構成する材料も和紙に限定されず、要するに、吸水性に富み、水に溶けにくく、乾燥状態において電気絶縁性を有するものであればよい。
【0033】
導電性接着剤34は、本実施形態では、食塩が混練された水溶性接着剤が採用されている。なお、サブシート32がメインシート31に接着される前に予めサブシート32に食塩水が吸収され、乾燥されてもよい。これにより、一対の電極36、37は、メインシート31及びサブシート32によって挟み込まれ、乾燥時に電気的に絶縁され、導電性接着剤34又はサブシート32が吸水した状態で導通される。
【0034】
導電性接着剤34として、具体的には、たとえば馬鈴薯1質量%以上5質量%以下、食塩15質量%以上21質量%以下及び水が74質量%以上84質量%以下からなる糊が採用され得る。この食塩の量は、常温で水に溶解し得る飽和溶解度付近の量でもよい。この糊は、水、食塩及び馬鈴薯澱粉が混合され、加熱しながら撹拌されることによって生成される。そして、この撹拌生成物が均一な粘稠性を呈すれば、これが冷却されることにより、導電性の糊が製造される。
【0035】
防水シート33は、メインシート31と同様の細長帯状に形成されており、メインシート31の下面を完全に覆っている。防水シート33は、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる。このポリエチレンテレフタレートフィルムは柔軟性に富むので、水分センサー20の柔軟性が損なわれることがない。防水シート33を構成する材料はこれに限定されるものではなく、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等も採用され得る。なお、この防水シート33は、省略されてもよい。
【0036】
防水シート33をメインシート31に接着する接着剤35は、ウレタン糊その他の汎用の工業用糊が採用され得る。
【0037】
[作用・効果]
【0038】
使用者が成人用オムツ20を着用した状態でたとえば排尿した場合、水分センサー22が排尿を検知し、排尿放置装置21によって排尿が介護者等に報知される。水分センサー22の電極36、37が水溶性カーボンインクから構成されているので、電極36、37は耐腐食性に優れる。このため、従来のように、各電極36、37の表面に防錆処理等が施される必要はなく、各電極36、37は、メインシート31上に剥き出し状態で配置されている。すなわち、各電極36、37の導電性が妨げられることはない。したがって、上記排尿があったときは、メインシート31に付着した水分が導電性接着剤34に達し、当該導電性接着剤34が導電性を発揮すると共に、直ちに電極36、37間が導通することになる。その結果、排尿が迅速且つ確実に検知される。
【0039】
本実施形態では、一対の電極36、37は、前述のように水溶性カーボンインクを用いたシルク印刷により形成される。したがって、電極36、37が簡単に且つ安価に形成されるという利点がある。
【0040】
また、本実施形態では、メインシート31の下面に防水シート33が重ね合わされているので、水分がメインシート31を通過することがない。このため、排尿等があったときでも、使用者の衣服が汚れることはない。
【0041】
[変形例]
【0042】
図4が示すように、この変形例に係る水分センサー42が上記実施形態に係る水分センサー22と異なるところは、防水シート33の下面43に蛍光塗料44、45が塗布されている点である。この蛍光塗料44、45は、防水シート33の下面43に印刷される。蛍光塗料44は、細長帯状に塗布されており、電極36に対向するように配置されている。同様に、蛍光塗料45も細長帯状に塗布されており、電極37に対向するように配置されている。
【0043】
成人用オムツ20は、定期的に交換されるものである。この交換時には、上記電極36、37に対してコネクタ23が着脱される。ところで、成人用オムツ20の交換作業は夜間に行われることもあり、その場合、介護者は、電極36、37の位置が確認しずらいという問題がある。しかし、本変形例では、上記電極36、37に対応する位置に上記蛍光塗料が帯状に塗布されているので、介護者は電極36、37の位置が確認しやすく、当該交換作用が容易になるという利点がある。
【0044】
なお、本実施形態では、水分センサー22、42は、成人用オムツに適用されているが、水分センサー22、42は、人工透析用シート等に搭載されてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
22・・・水分センサー
31・・・メインシート
32・・・サブシート
33・・・防水シート
34・・・導電性接着剤
35・・・接着剤
36・・・電極
37・・・電極
38・・・上面
42・・・水分センサー
43・・・下面
44・・・蛍光塗料
45・・・蛍光塗料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性を有する第1シートと、
第1シートの上面に所定距離を隔てて並設された一対の帯状電極と、
乾燥時に絶縁性を示すと共に吸水時に導電性を示す導電性接着剤を介して上記一対の帯状電極を挟み込むように第1シートの上面に接着された第2シートとを備え、
上記一対の帯状電極は、水溶性カーボンインクからなる水分センサー。
【請求項2】
上記一対の帯状電極は、上記水溶性カーボンインクを用いたシルク印刷により形成される請求項1に記載の水分センサー。
【請求項3】
上記第1シートの下面に撥水性シートが重ね合わされており、当該撥水性シートの上記帯状電極に対応する位置に、蛍光塗料が付されている請求項1又は2に記載の水分センサー。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−75347(P2011−75347A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225800(P2009−225800)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(502361979)株式会社アワジテック (8)
【Fターム(参考)】