説明

水分付加装置及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、記録材の搬送速度が速くなってもカール及び波打ちの低減に必要な水分を記録材に対して付与することができる画像形成装置を提供すること。
提供すること。
【解決手段】熱を加えてトナー像が定着されたシートを搬送ローラの正逆回転によりスイッチバックさせて搬送する搬送路と、前記搬送ローラの正転時における前記搬送ローラの搬送方向上流の前記搬送路内の所定の水分付加位置でシートに水分を付加する水分付加手段と、トナー像が定着されて前記水分付加位置に搬送されたシートに対して水分付加が行われ、シートの搬送方向上流端が前記所定の水分付加位置を通過した後の前記搬送ローラの逆回転によりスイッチバックされたシートに対して水分付加が行われるよう前記水分付加手段を制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの波打ちまたはカールを抑制するために、シートに水分または水溶液を付加する水分付加装置及び前記水分付加装置を備えた電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置においては、像担持体としての感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像装置により現像することで可視画像化(これをトナー像と呼ぶ)を行う。そのトナー像をシートに対し静電気力を用いて転写し、シートに転写したトナー像を定着装置にて加熱、加圧することによりシートに定着させ、シートに画像を形成している。
【0003】
前記画像形成装置内の定着装置では、熱ローラ定着方式が一般的に多く採用されている。熱ローラ定着方式の定着装置では、内部にヒータを有する定着ローラと、定着ローラに対し圧力を持って回転可能に接する加圧ローラとで、定着ニップを形成し、トナー像が転写されたシートが定着ニップを通過することでシートに対してトナー像の定着を行う。
【0004】
熱ローラ方式の定着装置は、ハロゲンヒータ等を熱源として定着ローラを加熱させ、所定の温度に維持させた定着ローラに、ゴム等から成る弾性層を有する加圧ローラを回転可能に圧接することから形成される定着ニップにシートを導入させ挟持搬送する。これによってシートの表面の未定着トナー像を熱定着させる。
【0005】
この工程において、熱と圧力をほぼ同時にトナー像の転写されたシートに付加するので、加圧された状態でシートの内部の水分が蒸発する。
【0006】
この時に起こるシートの内部の水分量変化とシートにかかるストレスとにより、シートが湾曲する「カール」と呼ばれる現象や、シートがうねるような形状となる「波打ち」と呼ばれる現象が発生する。
【0007】
ここでシートとして最も一般的に用いられるシート状の紙を繊維レベルで見てみる。紙は短い繊維どうしが絡み合って構成されており、かつ繊維内部または繊維どうしの間には水分が含まれている。さらに繊維と水は水素結合を生じた状態で平衡状態に有るため、平滑性を保っている。
【0008】
しかし、定着工程において紙に熱と圧力がほぼ同時に加わると、圧力により繊維どうしにずれが生じ、その状態で熱が加わり水分が蒸発すると、繊維どうしでさらなる水素結合が生じ変形する。この紙を放置していると環境から吸湿し、繊維どうしの水素結合が再び切り離され元の状態に戻ろうとする。しかし、紙の一部の繊維間には水分が入っていかず、それにより紙の変形が維持される。変形のパターンは前述したカールと波打ちがあり、カールは紙の表裏の伸縮差により発生し、波打ちは紙の中央部と端部での伸縮差により発生する。
【0009】
この問題に対する解決策が特許文献1に開示されている。特許文献1には、電子写真方式を用いた画像形成装置の定着工程で、シートから水分が失われることによるカール及びエッジの波打ちを防ぐために使用される装置及びシステムが記載されている。
【0010】
特許文献1に記載されている装置とは、シートの片面又は両面に制御された量の水分を付加する装置である。この装置は、シートの両面に配置され、液体を貯蔵するためのリザーバを有するウォータージェットと、ほぼ円筒形外表面を有する一対の圧力ロールとを備えている。そして、円筒形外表面の間にニップを定めるように前記一対の圧力ロールはその軸に沿って互いに位置合わせされている。この装置は、更に、シートが円筒形外表面の間に形成されるニップに入る前に、通過する各シートの選択された部分にウォータージェットから付加される水分を制御する制御装置も備えている。
【0011】
シートとして紙を用いた場合、定着工程にて熱と圧力により水分を奪われた紙に上記装置により再び水分を付加することにより、失われた水分を補充し、前述したカール及び波打ちを低減させている。紙の水分が増えると紙自体のヤング率が低下し、こわさが小さくなり、波打ちが低減する。また、繊維どうしの隙間に水分が入ることにより、定着装置で一度水素結合した繊維どうしの結合を再び切り離させ、波打ちが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-167317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、画像形成装置の高生産性を実現するために、高速化が進み、記録紙の搬送速度の高速化が求められている。しかし、シートに対して水分が進入していく速度は一定であるため、シートの搬送速度が速くなるとシート自身が水分補給装置を通過する時間が短くなる。そのため、前述したカール及び波打ちの低減に必要な量の水分をシートに対して与えることができないという問題がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、シートの搬送速度が速くなってもカール及び波打ちの低減に必要な水分をシートに対して付与することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、トナー像が形成されたシートに熱を加えてシートにトナー像を定着させる定着手段と、正逆回転可能な搬送ローラを有し、前記定着手段から搬送されたシートを前記搬送ローラの正逆回転により往復させて搬送する搬送路と、前記搬送ローラの正転時における前記搬送ローラの搬送方向上流の前記搬送路内の所定の水分付加位置でシートに水分を付加する水分付加手段と、前記定着手段から前記水分付加位置に搬送されたシートに対して水分付加が行われ、シートの搬送方向上流端が前記所定の水分付加位置を通過した後の前記搬送ローラの逆回転により反転されたシートに対して水分付加が行われるよう前記水分付加手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明は、正逆回転可能な搬送ローラを有し、熱を加えてトナー像が定着されたシートを前記搬送ローラの正逆回転によりスイッチバックさせて搬送する搬送路と、前記搬送ローラの正転時における前記搬送ローラの搬送方向上流の前記搬送路内の所定の水分付加位置でシートに水分を付加する水分付加手段と、トナー像が定着されて前記水分付加位置に搬送されたシートに対して水分付加が行われ、シートの搬送方向上流端が前記所定の水分付加位置を通過した後の前記搬送ローラの逆回転によりスイッチバックされたシートに対して水分付加が行われるよう前記水分付加手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送路に対するシートの搬入時と搬出時に水分付加を行うため、シートの搬送速度が速くなっても、カール及び波打ちの低減に必要な水分をシートに対して付加することができる。また、水分を二回に分けてシートに付加するため、シートに付加する水分のムラを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】定着装置からスイッチバックパスへのシートの搬送経路の断面図
【図2】画像形成装置の概略断面図
【図3】(a)(b)はスイッチバックパスの模式断面図
【図4】(a)(b)(c)は紙の水分量と時間の経過との関係の実験結果を表す表図
【図5】(a)(b)はシートが定着装置から水分付加装置を通過するまでのタイミングチャート図
【図6】スイッチバック動作と水分付加装置の動作の流れを示すフローチャート図
【図7】潮解性物質の水分活性値を表したグラフ図
【図8】界面活性剤を含む水溶液とシートの膨張率を調べたグラフ図
【図9】図1を矢印Y方向から見た切替部材周辺の部分平面図
【図10】水分付加装置をオプションとして画像形成装置本体とシート処理装置の間に装着した構成を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第一の実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例としてフルカラー中間転写方式の画像形成装置を模式的に示す断面図である。
【0021】
図2に示す画像形成装置の装置本体100は、画像形成手段として、例えばY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色に対応する画像形成部200Y,200M,200C,200Kを直列に配置して構成されている。すなわち、可視像化までのプロセスを各色で並列処理するタンデム方式が採用された画像形成装置である。
【0022】
以下、Y,M,C,Kの4つの画像形成部を符号200で代表させて説明するものとし、関連する次の各プロセス手段についても同様とする。また、Y,M,C,K各色の画像形成部の配列順序はそれに限定されない。
【0023】
なお、フルカラー中間転写方式の画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置の場合でも実施形態として可能である。
【0024】
まず、トナー像形成までの流れを、図2を用いて説明する。
【0025】
各画像形成部200では、以下の各プロセス手段が備わっている。Y,M,C,K各色に対応して表面に静電潜像を担持する像担持体120と、一次帯電装置121と、露光装置122と、そして現像装置123を有している。一次帯電装置121は対応する像担持体120の表面を設定された電位の帯電バイアス電圧を印加して一様に帯電する。その像担持体120の表面に露光装置122によって露光して静電潜像を形成する。静電潜像は、現像装置123によって現像され、トナー画像として可視画像化される。
【0026】
像担持体120の表面に形成して担持された各トナー画像は、一次転写装置124によって無端状ベルトから成る中間転写体125上に順次重ねて一次転写される。そして、Y,M,C,K全色が一次転写された中間転写体125上のトナー画像は、二次転写装置126によってシートの上に一括して二次転写される。
【0027】
次に、給送から定着までのシートの搬送経路の概略を、図2を用いて説明する。
【0028】
給送カセット131内にセットされたシートPは、装置本体100のコピーボタン等の指令により動作を開始する。給送カセット131内のシートPは、給送ローラ141により選択的に給送され、分離ローラ対142により分離され、一枚だけ給送される。シートは複数の搬送ローラによりレジストローラ対143に搬送される。シートPはレジストローラ対143により二次転写装置126に対するアライメントなどを補正され、二次転写装置126にてシートにトナー像を転写するタイミングを調整して搬送される。シート上には二次転写装置126にてトナー像を転写されたシートPは定着装置151へと搬送される。
【0029】
図1に示すように、定着装置(定着手段)151では、定着ニップ部にてシートを挟持して未定着のトナー画像に熱と圧を加えることで定着させる。定着装置151内には、ハロゲンヒータ201、そのハロゲンヒータ201により加熱される定着ローラ202、定着ローラ202に加圧され定着ニップを形成する加圧ローラ203がある。
【0030】
ここでは、定着ローラ202の材質は、ハイテンション鋼製のローラにPFAチューブをコーティングし、外径が40.3mmとなっている。定着ローラ202はハロゲンヒータ201により約180℃に加熱され、その温度は接触式のサーミスタにより一定になるように制御される。
【0031】
ここでは、シートの速度は、二次転写装置から定着装置までは500mm/sである。定着ローラ202は定着モータ(図示せず)により定着ローラ202の周速度が500mm/sとなるように回転させられる。
【0032】
加圧ローラ203は、32mmの鋼製のローラに約3mm厚のシリコンゴムを貼り付けその外側をPFAチューブで覆い、外径は38mmである。その加圧ローラ203はバネにより定着ローラ202に対し約100Kgの加圧力で加圧を行い、定着ローラ202の回転に従動して回転を行い、定着ニップに挟持されたシートを搬送すると同時にシートに載ったトナー像をシートに温度と圧力で定着する。
【0033】
シートは定着ローラ202から分離爪204により剥離され、内排出ローラ対205で搬送されることで定着装置外に排出される。
【0034】
次に、定着装置を通過した後のシートの流れを図1及び図2を用いて説明する。ここでは、定着装置を通過した後の一面目画像形成終了のシートの表裏を反転して排出するフェイスダウン排出、及びシートの表裏面(両面)に画像を形成して排出するため二面目画像形成に向かう両面画像形成の搬送経路について順に説明する。
【0035】
(フェイスダウン排出の場合)
シートの装置本体からの排出時、一面目画像形成終了のシートが排出トレイ182上で画像面が下になるように排出する場合をフェイスダウン排出と呼ぶ。
【0036】
シートは定着ニップによりシートへのトナー像定着完了後、内排出ローラ対205により定着装置151の外に排出される。切替部材161の位置が図2の状態のままであり、シートは搬送経路172へと進入する。すなわち、シートは、第1のスイッチバックパス(スイッチバック搬送路)へと進入する。なお、第1のスイッチバックパスは、排出するシートを反転させる搬送路であり、後述する反転切替部材162と正逆回転可能な反転ローラ対209が配設される。
【0037】
第1のスイッチバックパスに搬入されたシートは、自身の剛性でバネによりガイド206(図1参照)側に付勢された反転切替部材162を回転中心162aに回動させるように押しのけ、正回転する反転ローラ対209により矢印m方向に搬送される。
【0038】
シートは、さらに第2のスイッチバックパスに進入する。第2のスイッチバックパスは、両面画像形成されるシートを反転させるための搬送路であり、後述する両面切替部材164と正逆回転可能な両面ローラ対210により構成される。第2のスイッチバックパスに進入したシートは、再びバネにて付勢された両面切替部材164をシート自身の剛性で回動させるように押しのけ、反転ローラ対209と両面ローラ対210の二つの搬送ローラ対により矢印m方向に搬送される。
【0039】
そして、反転切替部材162の端部162bからシートの後端が所定量(ここでは10mm)進行した位置で、反転ローラ対209、両面ローラ対210は一旦回転を停止する。この位置に第1の水分付加手段である水分付加装置107a,107bを配置している。
【0040】
水分付加装置107a,107bは、前記定着装置151を通過したシートに水分を付加するための水分付加手段である。水分付加装置107a,107bは、第1のスイッチバックパスに設けられている。水分付加装置107a,107bは、シートの搬送経路を挟んでシートの表裏側にそれぞれ配置されており、シートの両面もしくは片面に水分を付加できるように設けられている。詳しい構成及び動作については後述する。
【0041】
一旦回転を停止した反転ローラ対209、両面ローラ対210は、その後、逆回転を行い、前記矢印m方向とは反対方向である矢印n方向にシートの反転を行う。シートは再び反転切替部材162を通過する。このとき、バネによりガイド206に付勢されている反転切替部材162は、その端部162bがガイド206に設けられた段差に進入している。このため、シートは反転切替部材162の端部162bに引っかかることなく搬送経路173に案内される。搬送経路173に案内されたシートは、反転排出ローラ対231(図2参照)により外排出ローラ対181(図1参照)へと導かれる。その後、シートは外排出ローラ対181により排出トレイ182上に画像面を下にした状態で排出され、積載される。
【0042】
(両面画像形成の場合)
一面目画像形成終了のシートは定着ニップによりシートへのトナー像定着完了後、内排出ローラ対205により定着装置151の外に排出され、切替部材161により搬送経路172へと案内される。その後、シートが反転ローラ対209、両面ローラ対210で搬送されるまでは、フェイスダウン排出の場合と同一である。
【0043】
両面画像形成の場合は、シートを反転ローラ対209より下流側の搬送経路174の奥まで進入させる。具体的には、両面ローラ対210により、シートの後端が両面切替部材164から所定量(ここでは10mm)進行した位置まで搬送する。ここで反転ローラ対209、両面ローラ対210は一旦回転を停止する。この位置に第2の水分付加手段である水分付加装置107c,107dを配置している。
【0044】
水分付加装置107c,107dは、前記水分付加装置107a,107bと同様に、前記定着装置151を通過したシートに水分を付加するための水分付加手段である。水分付加装置107c,107dは、第2のスイッチバックパスに設けられている。水分付加装置107c,107dは、シートの搬送路を挟んでシートの表裏側にそれぞれ配置されており、シートの両面もしくは片面に水分を付加できるように設けられている。詳しい構成及び動作については後述する。
【0045】
一旦回転を停止した反転ローラ対209、両面ローラ対210は、その後、逆回転を行い、前記矢印m方向とは反対方向にシートを逆搬送する。すると、シートはバネに付勢された両面切替部材164により搬送経路175へと案内される。このとき、両面切替部材164はバネにより付勢されて図1に示す位置にある。このときの両面切替部材164の端部と搬送経路を構成するガイドとの関係は、前述した反転切替部材162とガイド206の関係と同様である。このため、シートは両面切替部材164の端部に引っかかることなく搬送経路175に案内される。搬送経路175に案内されたシートは、表裏が反転された状態となって、再び転写部へと搬送される。
【0046】
転写部に搬送された後のプロセスは、前述した一面目画像形成終了のシートの搬送と同一のプロセスを経てシートの二面目に画像形成して両面画像形成を完了する。両面画像形成を完了したシートは、フェイスアップ排出の搬送経路171を通過して、外排出ローラ対181により装置本体外の排出トレイ182上に排出され、積載される。
【0047】
(スイッチバックパスに設けた水分付加装置の説明)
図3を用いて、水分付加装置について説明する。前述したように水分付加装置は、シートをその表裏を反転させるためにスイッチバック搬送するスイッチバックパス内(搬送路内)に設けられている。スイッチバックパスは、正逆回転可能な搬送ローラを有し、トナー像が定着されて水分付加装置に搬送されたシートを前記搬送ローラの正逆回転により往復させて搬送する。図3はスイッチバックパスに設けられた水分付加装置の模式図である。
【0048】
なお、第1の水分付加装置107a,107bと第2の水分付加装置107c,107dの構成は同様であるため、ここでは、第2のスイッチバックパスに設けられた水分付加装置107c,107dを例示して説明する。
【0049】
図3(a)はシートが第2のスイッチバックパスに進入し、シートの先端が水分付加装置の水分付加位置に到達した状態を示す。ここで、水分付加装置の水分付加位置とは、第1の水分付加装置107a,107bと第2の水分付加装置107c,107dがそれぞれ備えている各噴霧ノズル113a,113bの位置を指す。
【0050】
シートPは反転センサ221によりその先端が検知される。反転センサ221は、シートの端部を検知するシート検知手段である。ここでは反転センサ221は反射式のものを用いている。反転センサ221にて検知されてから装置本体内にあるコントローラ(制御手段)230のタイマーがスタートする。すなわち、反転センサ221の検知信号に基づいて装置本体内に設けた制御手段としてのコントローラ230が、スイッチバックパスへのシートの搬入とスイッチバックパスからのシートの搬出を判断し、水分付加装置107c,107dの動作を制御している。
【0051】
シートは先述したように反転ローラ対209により矢印m方向に搬送される。バネにて付勢された両面切替部材164をシート自身の剛性により矢印a方向に回動させる。そして、シートPは第2のスイッチバックパスへ搬入され、水分付加装置107c,107dへと搬送される。先のタイマーのカウントによりシートPが水分付加装置208の水分付加位置に到達する時間を計測し、シートPの先端が水分付加装置107c,107dの水分付加位置に到達する時間に合わせてシートPに対して水分の付加(水の噴霧)が開始される。
【0052】
図3(b)はシートがさらに搬送されて両面ローラ対210に到達し、シートの後端が水分付加装置の水分付加位置に到達した状態を示す。
【0053】
第2のスイッチバックパスへ搬入されたシートPの後端(搬送方向上流端)が水分付加装置107c,107dの水分付加位置(図3(b)に示す位置)を所定量通過すると、反転ローラ対209と両面ローラ対210の回転は一旦停止する。その後、両面ローラ対210は逆回転を開始し、シートを矢印m方向とは反対方向である矢印n方向に逆搬送を行う。この時点では、両面切替部材164はバネの付勢により矢印b方向に回動して図4に示す位置(実線位置)に戻っている。そのため、シートは第2のスイッチバックパスから搬出されて両面切替部材164により搬送経路175へと搬送され、シートはその表裏が逆転される。
【0054】
シートPに対する水分付加装置107c,107dからの水分付加(水の噴霧)は、シートの端部が水分付加装置の水分付加位置を通過するまで行われつづける。図5はその様子をタイミングチャートで表したものである。図6はその動作の流れをフローチャートで表したものである。
【0055】
図5及び図6に示すように、ステップS301でシートの先端を反転センサで検知し、ステップS302で反転センサからの信号をコントローラが受け取り、タイマーTaをスタートさせる。ステップS303でタイマーTaが所定時間t2を経過したら、ステップS304で水分付加装置を作動させる。これにより、スイッチバックパスに搬入されたシートに対して水分付加装置から一回目の水分付加が行われる。
【0056】
そして、ステップS305でシートの後端を反転センサで検知し、ステップS306で反転センサからの信号をコントローラが受け取り、タイマーTb,Tcをスタートさせる。ステップS307でタイマーTbが所定時間t3を経過したら、ステップS308でローラ対209,210を一旦停止し、ステップS309で逆回転を開始する。すなわち、前述したように、前記シートの後端が水分付加装置の水分付加位置を通過したタイミングに合わせて両面ローラ対210の逆回転を開始する。これにより、スイッチバックパスから搬出されるシートに対して水分付加装置から二回目の水分付加が行われる。
【0057】
そして、ステップS310でタイマーTcが所定時間t3を経過したら、ステップS311で水分付加装置を停止し、終了する。このようにしてシートに2回水分を付加する動作を完了する。
【0058】
図5は縦軸に定着ローラから各部材位置までの距離を示し、横軸に定着ローラから各部材位置までの時間を示している。図5ではA4サイズのシートが定着ローラから水分付加装置の水分付加位置を通過終了するまでとしている。
【0059】
図5(a)はシートPが図3にて矢印m方向に進行している状態を表しており、実線がシートの先端、破線が同一シートの後端を表している。ここでは、A4サイズのシートであるため、その距離は210mmとなる。そして図5に示す実線及び破線の傾きがシートの搬送速度となり、その速度は定着部では500mm/sである。
【0060】
反転センサにてシートの先端を検知することにより、シートの後端が定着ニップを抜けるまでの時間がわかる。所定の時間経過後、反転ローラ対の搬送速度を500〜750mm/s増速を行い、この次に来るシートとの間隔を確保し、シートを両面切替部材で衝突しないようにしている。
【0061】
また、シートの先端が反転センサに検知されてから所定の時間後にシートが水分付加装置の水分付加位置に到達するので、そのタイミングで水分付加装置から水を噴霧(水分を付加)する。シートは水分付加装置から水を噴霧した状態で搬送を続け、シートの後端が水分付加装置の水分付加位置を通過するまで搬送する(図5に示す破線が水分付加装置と交わる位置)。これらのタイミングは反転センサにて検知後、コントローラにより制御される。
【0062】
シートの後端が水分付加装置の水分付加位置を通過すると、反転ローラ対と両面ローラ対はシートの矢印m方向への搬送を一旦停止する。その後、反転ローラ対と両面ローラ対は逆回転を開始して、矢印n方向への搬送を開始して、両面切替部材164によりシートを搬送経路175の方向へ搬送し、両面画像形成用の搬送経路へ導く。図5(b)ではシートが搬送経路175に進行した状態を示し、矢印m方向に搬送していたときのシートの後端が今度は先端となるので破線と実線が逆となって表れている。
【0063】
従来例のように定着ローラ直後に水分付加装置を配置した場合の水分付加時間をT1とすると、A4サイズのシート(搬送方向の長さが210mm)を500mm/sの搬送速度で搬送すると、水分付加時間T1は0.42秒となる。ところが本実施形態のように、シートのスイッチバックパスに水分付加装置を配置すると、シートがスイッチバックパスに搬入される時間T1とスイッチバックパスから搬出される時間T2をあわせた時間、シートに対して水分付加を行うことができる。この時間T1+T2はスイッチバック搬送のため搬送速度を従来の搬送速度より速い速度(ここでは750mm/s)としているが、A4サイズのシートが通過するのに0.28秒の倍の時間となるので、トータル0.56秒となる。このため、本実施形態では、シートの搬送速度が従来に比べて速くなっているにもかかわらず、シートに対して長い時間、水分付加を行うことができる。
【0064】
また、一度に大量の水を付加してもシートが水分を吸収しきれず、少量の水分を2回に分けて付加する方がシートの水分吸収効率が高いので、シートへの水分付加によるカール及び波打ちの低減効果がより高まる。
【0065】
さらに、二度にわたり水分を付加することはシートに付加した水分のムラ(水分が多い所と少ない所の差)を無くす効果があり、前述のカール及び波打ちのさらなる低減を図り、成果物である出力紙を良好な状態にすることが可能である。一面目画像形成されたシートは定着工程を経て、水分が失われているため、二面目画像形成に向かう前に失われた水分を付与して波打ち状態を解消することは、良好な二面目画像形成をする上で有効である。
【0066】
本実施形態では、水分付加装置として噴霧ノズルを使用している。図3(a)及び図3(b)に示す水分付加装置の説明をする。水分付加装置107c,107dは、シートの搬送経路を挟んでシートの表裏側に配置されている(水分付加装置107a,107bも同様である)。
【0067】
各水分付加装置107c,107dは、シートに水分としての溶液109を噴霧するための噴霧ノズル113a,113bを備えている。また、水分付加装置107c,107dは、各噴霧ノズル113a,113bに圧縮空気を供給するためのコンプレッサ111を備えている。ここでは、1つのコンプレッサ111で2つの噴霧ノズルに圧縮空気を供給する構成を例示しているが、それぞれにコンプレッサを設けた構成としても良い。
【0068】
各水分付加装置107c,107dは、それぞれ、噴霧ノズル113a,113bに溶液109を供給するためのタンク110a,110bを備えている。さらに、タンク110a,110bからの溶液109を噴霧ノズル113a,113bに供給するためのチューブ108a,108b、溶液109の供給の開閉を行うバルブ112d,112e、を備えている。さらに、水分付加装置107c,107dは、コンプレッサ111からの圧縮空気を各噴霧ノズル113a,113bに供給するためのチューブ108c、圧縮空気の供給の開閉を行うバルブ112a〜112c、を備えている。
【0069】
このようにスイッチバックパスに水分付加装置107c,107dを設け、水分付加装置107c,107dの噴霧ノズル113a,113bからシートPに溶液109を噴霧する。噴霧ノズル113a,113bからの水分付加はシートの画像状況等に応じてシート103の両面もしくは片面に水分を付加する。
【0070】
本実施形態においては噴霧ノズルを用いているが、シートに水分を付加する機構はウォータージェット機構や塗布ローラを用いたものなど他にも多数あり、本発明の水分付加装置を噴霧ノズルに限定するものではない。
【0071】
なお、第1のスイッチバックパス(反転切替部材162と反転ローラ対209の間)に配置した水分付加装置107a,107bのシーケンスも両面画像形成時と同一であるため、説明は省略する。片面のみ画像形成されたシートについても、第1のスイッチバックパスからフェイスダウン排出される際に、水分付加装置107a,107bの水分付加位置において両面画像形成時と同様の水分付加構成、シーケンスにより2回にわたり水分を付加される。両面画像形成時と同様に、少量の水分を2回に分けて付加することによりシートの水分吸収効率が高まり、シートへの水分付加によるカール及び波打ちの低減効果がより高まる。
【0072】
〔第二の実施形態〕
図10は、水分付加装置1002をオプションとして画像形成装置本体100とシート処理装置1004の間に装着した構成を示す。
【0073】
画像形成装置本体100の外排出ローラ181により排出されるシートは水分付加装置1002の搬入口1001からシート処理装置1004に搬送される。
【0074】
水分付加装置1002には水分付加手段としての水分付加装置107が設けられており、この水分付加装置107を用いて、シートの反転中に水分付加を行う。本実施の形態において、画像形成装置本体100内のスイッチバックパスは、シートの反転を行うものであり、水分付加装置は設けられていない。
【0075】
シート反転中の水分付加構成、シーケンスについては第一の実施形態にて説明した機構、制御と同一であるため、ここでの説明は省略する。スイッチバック部には第一の実施形態と同様に噴霧ノズル(水分付加位置)が反転ローラ1003の正転時の反転ローラ1003の上流に配置されている。この噴霧ノズルも第一の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0076】
シート処理装置1004は画像形成装置本体100から排出されるシートを高速、かつ大量に処理を行う。そのため、定着装置を通過して水分が失われたシートがそのまま搬送されてシートにカール及び波打ちが発生した状態でシート束として処理されると、各シートが不揃いのまま処理されてしまう可能性がある。しかし、画像形成装置本体100とシート処理装置1004の間に装着された水分付加装置1002により、シートに水分を与えることで、カール及び波打ちを低減させることができる。これらのシートを束にして処理することで、良好なシート処理が実現できる。
【0077】
今までシートに対して水分として水を付加することで、シートのカール及び波打ちの低減効果を説明してきた。しかし、シートに対して付加する水分はこれに限定されるものではない。
【0078】
例えば、噴霧する溶液(水分)として、空気中の水分を取り込む潮解性物質を含む水溶液とすることで、シートへの浸透性がさらに向上する。潮解性物質を含むことで紙の繊維の間に溶液が入り込み易くなり、繊維どうしの水素結合を切り離させる効果も高まり、紙のカール及び波打ちを軽減することができる。あるいは、親水基と疎水基を持つ界面活性剤を含む水溶液とすることで、シートへの浸透性が向上するとともにシートの積載時の上下での張り付きを軽減することができる。以下、詳しく説明する。
【0079】
図3(a)及び図3(b)で説明した水分付加装置(溶液噴霧装置)を用いて、電子写真画像形成装置の通紙直後のシートに水のみを噴霧し、シートに付加する水分量を変化させたときのシートの波打ち量を測定した。
【0080】
シートとして紙=キヤノン製CLC80g、サイズA3、すき目CDとし、画像はシートにトナー像のまったく無い画像(白ベタ)、片面通紙とした。成果物として得られたシートの放置環境は温度約23℃、湿度約40%とした。このとき、電子写真画像形成装置における定着ローラ202の温度は180℃で、その周速度は500mm/secとした。
【0081】
その結果を図4(a)に示す。シートが電子写真画像形成装置を通過直後に水を噴霧しないものに比べ、水分付加装置を用いて通紙直後に水を噴霧したものは波打ち高さが低減する。シートへの水の付加量を増加させていくと、水分付加直後は水分量が多い方がシートとしての紙の波打ちが低減する傾向にあるが、48時間後の紙の水分量が放置環境と平衡状態になると、噴霧量が多ければそれだけ波打ちが大きくなる傾向にある。これは均一に噴霧した水分が時間をかけて不均一に蒸発したためだと考えられる。
【0082】
この結果より噴霧直後の水分量を保持することができれば、波打ちが低下したままの状態を維持すると考えられる。
【0083】
そこで、前述したように、噴霧する水分として、空気中の水分を取り込む潮解性物質を含む水溶液を用いる。潮解性物質は空気中の水分を取り込んで水溶液となり、この水溶液の濃度が一定の値に達するまで水を吸収しつづける性質を有する。潮解性物質を水と混ぜて水溶液にし、シートに噴霧することによって、水分を付加してシートのカール及び波打ちを低減しつつ、付加した水分をシート内に維持する役割を果たす。
【0084】
潮解性物質の例を図7に示す。潮解性物質は水分活性値を用いてその保水力を評価する。水分活性値が小さいと保水効果が大きくなる。図7において、水分活性値Awが0.6以下の潮解性物質が特にシートにおける波打ち及びカールの抑制に効果がある。前記水分活性値0.6以下の潮解性物質としては、以下のようなものがある。塩化マグネシウム、L−カルニチン、N−メチルグリシン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BtEAC)、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BtMAC)、塩化コリンなどである。
【0085】
前記潮解性物質をシートに付加し水分量の変化を調べた結果を図4(b)に示す。ここでは、潮解性物質として塩化コリン50%水溶液を図3に示す水分付加装置にてシートに付加した。その結果、24時間放置後の水分量は、塩化コリン50%水溶液を付加しないものに対して前記潮解性物質である塩化コリン50%水溶液を付加したものの方が大きいことがわかる。よって、潮解性物質が水分をシートの内部に保持していることがわかる。
【0086】
同様に、前述したように、噴霧する水分として、親水基と疎水基を持つ界面活性剤を含む水溶液を用いてもよい。この界面活性剤を含む水溶液をシートに噴霧して、シートへの溶液の浸透性が向上すると、繊維の間に溶液が入り込み易くなり、繊維どうしの水素結合を切り離させる効果も高まり、シートのカール及び波打ちをより軽減することができる。
【0087】
溶液を噴霧するだけでは水滴がシートの表面に残ってしまい、多数のシートの積載時に上下で張り付きが生じるおそれがある。そのため、溶液に界面活性剤を混入することで浸透性を高め、表面の水滴をすばやくシートの内部に吸収させることにより積載性を改善することができる。
【0088】
前記界面活性剤として非イオン性界面活性剤アセチレングリコールを用いた。図8は前記界面活性剤を1%含む水溶液と水のみをシートに塗布したときのシートの伸縮を測定したものである。シートは水分が入ると膨張するので、膨張の速度が大きいと浸透性が高いと判断できる。図8より前記界面活性剤を含む水溶液の浸透性が水のみより高いことがわかる。
【0089】
通紙直後のシートに図3に示す水分付加装置を用いて前記潮解性物質を含む水溶液を噴霧して波打ちの高さを測定した。シートを20枚積載させたときの波打ち高さを測定した。噴霧直後と48時間後に測定を行い、その変化をみた。成果物として得られたシートの放置環境は温度約23℃、湿度約40%とした。このとき、電子写真画像形成装置における定着ローラの温度は180℃で、周速度は500mm/secとした。よって、水分付加装置を通過するシートの速度は500mm/secである。噴霧溶液は前記潮解性物質を有する塩化コリン50%水溶液と、潮解性を有しさらに繊維間の水素結合を切り離す作用を有するN−メチルモルホリン−N−オキシドの50%水溶液を用いた。前記N−メチルモルホリン−N−オキシドはアミンオキシドからなる化合物群に属している。
【0090】
その結果を図4(c)に示す。これより前記潮解性物質を含む水溶液を噴霧することでシートの波打ちが低減し、さらに48時間後も波打ちは悪化せず低いままの状態を保っていた。水分量に関して、シートに噴霧しない場合は、通紙直後は4.4%、48時間放置すると5.5%となる。これに対し、塩化コリン50%水溶液をシートに噴霧した場合は、噴霧直後は7.7%、48時間後は6.0%となり、N−メチルモルホリン−N−オキシドの50%水溶液をシートに噴霧した場合は、噴霧直後は6.5%、48時間後は5.8%となる。この結果から、前記潮解性物質を含む水溶液を噴霧した場合、シートの水分量を保持できていることがわかり、波打ちの高さも低減した。さらにシートの繊維間の水素結合を切り離す作用を有する潮解性物質を含む溶液は波打ちの低減効果が大きいことがわかった。
【0091】
また、N−エチルモルホリン−N−オキシドにもN−メチルモルホリン−N−オキシドと同等の波打ち及びカール抑制作用を有している。アミンオキシド(amine oxide)、あるいはアミン−N−オキシドとは、一般構造式が、R3N+−O−(別表記として、R3N=O、R3N→O)と表される化合物群のことである。アミンオキシドの N→O 半極性結合の双極子モーメントは高いイオン化傾向を示す。この塩類に似た特性によりアミンオキシドは水やアルコールに容易に溶け、N→O 結合の酸素電子は弱い負電荷をもっているので水素と結合する傾向がある。この水素結合の傾向はアミンオシドの吸湿性にあらわれる。
【0092】
前述の実験より前記潮解性物質を含む水溶液のシートへの付加は、シートの波打ちを抑制する効果があることを確認できた。
【0093】
また、定着装置通過前のシートに対して図3に示す水分付加装置を用いて前記溶液を噴霧し、その後、定着装置により熱と圧力が加わった場合のシートの波打ち及びカールの抑制効果を確認した。
【0094】
これは本実施形態のように同一装置本体内で両面画像形成を完了させる場合に非常に有効である。両面画像形成の場合、装置本体内で水分を付加しても2面目の画像形成を行う際、再び定着装置を通過する。その時、シートからの水分の蒸発が起こり、一旦付加した水分が失われ、シートのカール及び波打ちの低減の効果が減ってしまうことがある。
【0095】
しかし、シートに潮解性物質を含む水溶液を付加すると、先に述べたように、シートには一旦水分が減ったとしても潮解性が残っている。このため、再びシートの水分量が平衡状態となるまで水分調整を行うことが可能である。これにより、シートのカール及び波打ちを低減する効果がある。
【0096】
コート紙等、シート表面にコーティングが施されているシートに両面画像形成する場合、図3でいうと、水分付加装置107c,107dのうち、一方の水分付加装置107dからだけの水分付加を行うことがある。すなわち、水分を吸収しにくいシート表面を有するシートに両面画像形成する場合、シートの1面目の画像面側の水分付加装置107dからだけ水分付加を行うことがある。1面目の画像面の対向面側(水分付加装置107c側)は2面目の印刷を行う際、再びトナー像が載る面に水分が残っていると転写不良を起こすことがあるからである。逆に、コート紙に比べて水分吸収性の高いシートに片面画像形成した後にフェイスダウン排出する際に、1面目がカラーの全面画像形成面であった場合には水分を吸収しにくいので、1面目の画像面の対向面側に水分付加を行う。
【0097】
図9は図1を矢印Y方向から見た図であり、画像形成装置において定着装置から両面切替部材までを外側の搬送機構を外した状態を示している。反転切替部材に配置された水分付加装置107a,水分付加装置107cは両面切替部材164の近傍に3個ずつ配置してシートの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)に応じて水分を噴射する。なお、図9において、反転切替部材は外ガイドに付いているので見えない。
【0098】
水分付加装置107aの搬送方向下流側に配置した反転ローラ対209、及び、水分付加装置107cの搬送方向下流側に配置した両面ローラ対210は、シートの搬送方向と直交する幅方向の全域(シートの全幅)に接触する構成となっている。シートに水分を付加した後、これらの搬送ローラがシート全幅に接触しない、幅方向に接触部(ローラ部)が分割された搬送ローラであると、シートの水分が完全に乾き切っていないうちに接触することがあり、ローラ跡が発生するのを防止するためのものである。また、シートの幅方向の全域に接触することによりシートに付加された水分を均一化してムラを防止することができる。
【0099】
さらに、両面切替部材164は、シートとの接触部が図9に示すように複数のリブから構成されている。これもシートに付加した水分が完全に乾き切る前に面状のガイド等に接触して、その水分の影響でシートがガイドに貼り付きシートが搬送不良となるのを防止するためのものである。
【0100】
上述したように、本実施形態によれば、スイッチバックパスに対するシートの搬入時と搬出時に水分付加装置によりシートに水分付加を行うため、シートの搬送速度が速くなっても、カール及び波打ちの低減に必要な水分をシートに対して付加することができる。また、水分を二回に分けてシートに付加するため、シートに付加する水分のムラを防止することもできる。
【0101】
また、水の代わりに、潮解性物質を含む水溶液をシートに付加することで、付加した水分の蒸発を防ぐことができ、シートのカール及び波打ちの低減が持続する。潮解性物質は、前述したように、空気中の水分を取り込んで水溶液となる物質のことであり、大気の水蒸気圧と水溶液の水蒸気圧が平衡状態となったとき水分の吸収は止まる。
【0102】
また、水の代わりに、繊維と水素結合し繊維どうしの水素結合を抑制する非揮発性物質を含む溶液をシートに付加することで、前記溶液が繊維間に入り込み、シートの乾燥にかかわらず繊維間の水素結合を生じさせない。これにより、シートのカール及び波打ちの低減を維持し続けることが可能となる。
【0103】
前記非揮発性物質を含む溶液は界面活性剤を含む。前記界面活性剤は、親水基と、疎水基を持つことを特徴とする物質で、表面張力を弱める作用を有する。前記界面活性剤を混入することで浸透性が高まると繊維の間に溶液が入り込み易くなり、繊維どうしの水素結合を切り離させる効果も高まり、シートのカール及び波打ちを軽減し、積載性が改善する。
【0104】
また、水分付加装置の近傍に配置された搬送ローラ対を、シートの搬送方向と直交する幅方向の全域(シートの全幅)に接触する構成とすることで、付加した水分が完全に乾ききっていないシートにローラ跡がつくのを防止できる。
【0105】
さらに、両面切替部材のシートとの接触部を複数のリブで構成することで、シートに付加した水分の影響でシートがガイドに貼り付き、搬送不良となるのを防止することができる。
【0106】
なお、前述した実施形態では、画像形成部を4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0107】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。中間転写体を使用し、該中間転写体に各色のトナー像を順次重ねて転写し、該中間転写体に担持されたトナー像をシートに一括して転写する画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、シート担持体を使用し、該シート担持体に担持されたシートに各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0108】
P …記録材
107a,107b …水分付加装置
107c,107d …水分付加装置
109 …溶液
110a,110b …タンク
111 …コンプレッサ
113a,113b …噴霧ノズル
151 …定着装置
161 …切替部材
162 …反転切替部材
164 …両面切替部材
171,172,173,174,175 …搬送経路
181 …外排出ローラ対
182 …排出トレイ
209 …反転ローラ対
210 …両面ローラ対
221 …反転センサ
230 …コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成されたシートに熱を加えてシートにトナー像を定着させる定着手段と、
正逆回転可能な搬送ローラを有し、前記定着手段から搬送されたシートを前記搬送ローラの正逆回転により往復させて搬送する搬送路と、
前記搬送ローラの正転時における前記搬送ローラの搬送方向上流の前記搬送路内の所定の水分付加位置でシートに水分を付加する水分付加手段と、
前記定着手段から前記水分付加位置に搬送されたシートに対して水分付加が行われ、シートの搬送方向上流端が前記所定の水分付加位置を通過した後の前記搬送ローラの逆回転により反転されたシートに対して水分付加が行われるよう前記水分付加手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送路は、排出するシートを反転させる搬送路であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送路は、両面画像形成するシートを反転させる搬送路であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送ローラはシートの搬送方向と直交する幅方向の全域に接触する構成であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送路に備えられ、シートの搬送経路を切り替える切替部材は、シートとの接触部が複数のリブから構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記水分付加手段がシートの搬送経路を挟んでシートの表裏側にそれぞれ配置されており、シートの両面もしくは片面に水分を付加することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記水分付加手段はシートに水分を噴霧する噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記水分付加手段はシートに水分を塗布する塗布ローラを有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
正逆回転可能な搬送ローラを有し、熱を加えてトナー像が定着されたシートを前記搬送ローラの正逆回転によりスイッチバックさせて搬送する搬送路と、
前記搬送ローラの正転時における前記搬送ローラの搬送方向上流の前記搬送路内の所定の水分付加位置でシートに水分を付加する水分付加手段と、
トナー像が定着されて前記水分付加位置に搬送されたシートに対して水分付加が行われ、シートの搬送方向上流端が前記所定の水分付加位置を通過した後の前記搬送ローラの逆回転によりスイッチバックされたシートに対して水分付加が行われるよう前記水分付加手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする水分付加装置。
【請求項10】
前記搬送路は、排出するシートを反転させる搬送路であることを特徴とする請求項9に記載の水分付加装置。
【請求項11】
前記搬送路は、両面画像形成するシートを反転させる搬送路であることを特徴とする請求項9に記載の水分付加装置。
【請求項12】
前記搬送ローラはシートの搬送方向と直交する幅方向の全域に接触する構成であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の水分付加装置。
【請求項13】
前記搬送路に備えられ、シートの搬送経路を切り替える切替部材は、シートとの接触部が複数のリブから構成されていることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の水分付加装置。
【請求項14】
前記水分付加手段がシートの搬送経路を挟んでシートの表裏側にそれぞれ配置されており、シートの両面もしくは片面に水分を付加することを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の水分付加装置。
【請求項15】
前記水分付加手段はシートに水分を噴霧する噴霧ノズルまたはウォータージェット機構を有することを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の水分付加装置。
【請求項16】
前記水分付加手段はシートに水分を塗布する塗布ローラを有することを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の水分付加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256030(P2012−256030A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97043(P2012−97043)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】