説明

水分散体及び水性塗料組成物

【課題】 貯蔵安定性に優れ、かつワキの発生がなく仕上り性が良好な塗膜を提供できる水分散体を見出し、該水分散体した水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】
特定の分散用樹脂(A)及びベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)が水性媒体中に分散されてなる水分散体であって、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)を0.1〜400質量部含有する水分散体。
分散樹脂(A):構成する単量体の合計質量に対して、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)を3〜98質量%、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)を2〜97質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)を0〜20質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)を0〜95質量%の混合物をラジカル重合反応することによって得られた樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れた水分散体に関するものであり、さらには該水分散体を用いて、ワキの発生がなく仕上り性が良好な塗膜を提供できる水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗り塗料、中塗り塗料、及び上塗り塗料から形成される複層塗膜により被覆されている。
【0003】
一方、従来の塗料は有機溶剤を用いた塗料が主流であったが、健康や環境への影響の懸念から、自動車用塗料(例えば、中塗り塗料、着色ベース塗料)においても
揮発性有機化合物の低減(低VOC化)が求められ、水性塗料が主流となってきている。
しかし、水性塗料による塗膜は硬化中に水が突沸して、いわゆる「ワキ」が発生し易く、この現象は15〜40μmの膜厚において認められることがあり、仕上り性低下の原因となっている。
【0004】
従来、特許文献1には、ポリエステル樹脂、水性アミノ樹脂、ポリエーテルポリオールを主成分としアルキルエーテル化ベンゾインを配合する水性中塗り塗料が開示されている。
また、特許文献2には、酸価が10〜100mgKOH/g、水酸基価が20〜300mgKOH/gで、且つ数平均分子量が800〜10,000のポリエステル樹脂、水性アミノ樹脂、線状低分子量ポリエステルジオールを主成分としアルキルエーテル化ベンゾインを配合する水性中塗り塗料が開示されている。
【0005】
他に、特許文献3には、被塗物表面に、中塗り塗料、ベース塗料、及びクリヤ塗料を順次ウェットオンウェット方式で塗装した後、焼き付け処理を行い各塗膜を硬化させる3コート1ベーク方式の塗膜形成方法において、該中塗り塗料、ベース塗料、及びクリヤ塗料の少なくとも一つにベンゾイン又はベンゾイン誘導体及びビニル系重合物を添加することを特徴とする方法が開示されている。さらに、製造例1には、中塗り塗料に対し、ベンゾイン0.4部をディスパー撹拌しながら配合して、中塗り塗料を得たとあるように、塗料中にベンゾインをそのまま配合している。
【0006】
しかし特許文献1〜3に記載の水性塗料組成物の製造条件ではベンゾインの分散が不十分なため、ブツや肌荒れなど塗膜の仕上り性を損うことがあった。また、添加したベンゾインが樹脂成分との相溶性が十分でない為に、ワキへの効果も十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−41572号公報
【特許文献2】特開平4−93374号公報
【特許文献3】特開2002−113414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れた水分散体を提供することである。また、塗料安定性に優れ、かつワキの発生がなく仕上り性が良好な塗膜を提供できる水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の分散用樹脂(A)及びベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)が水性媒体中に分散されてなる水分散体であって、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)を0.1〜400質量部含有する水分散体を用いることによって、上記の目的を達成することできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.下記特徴の分散用樹脂(A)及びベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)が水性媒体中に分散されてなる水分散体であって、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)を0.1〜400質量部含有する水分散体、
分散樹脂(A):構成する単量体の合計質量に対して、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)を3〜98質量%、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)を2〜97質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)を0〜20質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)を0〜95質量%の混合物をラジカル重合反応することによって得られた樹脂
2.水分散体が、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、アミン化合物(C)を20質量部未満含有する1項に記載の水分散体、
3.水分散体が、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、界面活性剤を100質量部未満含有する1項又は2項に記載の水分散体、
4.水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)、硬化剤(E)、並びに1〜3項のいずれか1項に記載の水分散体を含有する水性塗料組成物、
5.水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)の固形分合計100質量部に対し、水分散体の固形分で0.1〜50質量部含有する4項に記載の水性塗料組成物、
6.自動車用の中塗り塗料又は着色ベース塗料である4項又は5項に記載の水性塗料組成物、
7.4〜6項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装して得られた塗装物品、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水分散体は、例えば、40℃以上に加温されてその後5℃以下に貯蔵するような厳しい条件下であっても貯蔵安定性に優れる。さらに、該水分散体を含有した水性塗料組成物中のベンゾイン又はベンゾインの誘導体は、凝集ブツ等を生じることがない為、仕上り性に優れた塗膜が得られる。さらに、塗装時のワキ発生限界膜厚を向上することできる。
【0012】
本発明の水性塗料組成物を自動車用の水性中塗り塗料や着色ベース塗料に用いた場合、塗膜上にワキ、ブツなどの塗膜欠陥を生じることなく、仕上り性に優れる複層塗膜を得ることができる。このことから塗装ラインにおいては塗膜欠陥の補修にかかる手間や費用、さらにはワキ対策で行っている予備加熱の軽減に繋がり、省エネルギー化に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水分散体及び水性塗料組成物について、詳細に説明する。
[水分散体]
分散用樹脂(A)及びベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)が水性媒体中に分散されてなる水分散体である。
【0014】
分散用樹脂(A)
分散用樹脂(A)は、構成する単量体の合計に対して、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)をラジカル重合反応することによって得られる樹脂である。
【0015】
ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)
ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)は、(以下、「ラジカル重合性不飽和単量体(a1)」と略することがある)例えば、(メタ)アクリル酸とモノまたはポリアルキレンまたはそのモノエーテル誘導体とのエステル化物であり、
下記一般式(1)で示されるものが包含される。
【0016】
【化1】

【0017】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、C1〜C20アルキル基、アリール基(例えばフェニル基)又はアラルキル(好ましくはベンジル基)を表し、mは2〜5の整数であり、nは1〜20の整数である)。
【0018】
このようなラジカル重合性不飽和単量体(a1)の具体例としては、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレン(メタ)アクリレート、エトキシエチレン(メタ)アクリレート、ブトキシエチレン(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシエチレン(メタ)アクリレート、エトキシプロピレン(メタ)アクリレート、エトキシジエチレン(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレン(メタ)アクリレート、ドデシルオキシジエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレン(メタ)アクリレート、ベンジルオキシ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。ラジカル重合性不飽和単量体(a1)の重量平均分子量は、一般に100〜5,000、好ましくは150〜1,500の範囲がよい。
【0019】
本明細書において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した保持時間(保持容量)をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。数平均分子量は、その重量平均分子量から計算によって求めた値である。
【0020】
窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)
窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)には、例えば、含窒素複素環を有する不飽和単量体(1)及び(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体(2)が挙げられる。具体的に、上記含窒素複素環を有する不飽和単量体(1)は、1〜3個の環窒素原子を含む単環又は多環の複素環がビニル基に結合した単量体を包含し、特に下記に示す単量体を挙げることができる。
【0021】
(i)ビニルピロリドン類:例えば、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニル−3−ピロリドンなど。
(ii)ビニルピリジン類;例えば、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなど。
(iii)ビニルイミダゾール類;例えば、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾールなど。
(iv)ビニルカルバゾール類;例えば、N−ビニルカルバゾールなど。
(v)ビニルキノリン類;例えば、2−ビニルキノリンなど。
(vi)ビニルピペリジン類;例えば、3−ビニルピペリジン、N−メチル−3−ビニルピペリジンなど。
(vii)N−(メタ)アクリロイルピリジンなど。上記した含窒素複素環を有するビニル単量体の中でも好適なものは、ビニルピロリドン類、ビニルイミダゾール類及びビニルカルバゾール類が挙げられる。
一方、(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体(2)には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが包含される。
【0022】
また、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが包含される。以上、述べた窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)は、それぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上組合せて使用することができる。
【0023】
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0024】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)
その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)は、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)以外のラジカル重合性不飽和単量体であり、特に制限がなく所望の塗膜性能に応じて広く選択することができる。
例えば(a)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル:例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル等;(b)ビニル芳香族化合物:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン;(c)ポリオレフィン系化合物:例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン;(d)水酸基含有不飽和単量体:例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びこれ以外にプラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(以上、ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)などの水酸基含有不飽和単量体等;(e)その他:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、などが挙げられる。
これらのその他のラジカル不飽和単量体(a4)は、それぞれ単独で用いてもよく、或いは2種又はそれ以上組合せて使用することができる。
【0025】
分散用樹脂(A)は、以上に述べたポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)を、それ自体既知のラジカル重合法に従い、例えば、重合開始剤の存在下に、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で、50℃〜300℃、好ましくは60℃〜250℃の温度において、有機溶剤中で、1時間〜24時間、好ましくは2時間〜10時間ラジカル共重合させることによって製造することができる。
【0026】
その際の各重合性不飽和単量体の使用割合は、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)の合計量を基準にして、以下のとおりとすることができる。
ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1):3〜98質量%、好ましくは10〜85質量%、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2):2〜97質量%、好ましくは3〜90質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3):0〜20質量%、好ましくは2〜18質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)を0〜95質量%、好ましくは5〜83質量%である。
【0027】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどがあげられる。また、ラジカル重合反応に用いうる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤等があげられる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。かくして得られる分散用樹脂(A)は、重量平均分子量が500〜150,000、好ましくは1,000〜60,000が望ましい。酸価は0〜60mgKOH/g、好ましくは1〜50mgKOH/g、アミン価は0〜80mgKOH/g、好ましくは1〜60mgKOH/g範囲内の範囲が望ましい。
【0028】
ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)
ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)の具体例は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−へキシルエーテル、ベンゾインn−オクチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも工業的な入手容易性や塗料安定性の観点から、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルが好ましい。
【0029】
ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)の使用量は、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)を0.1〜400質量部、好ましくは10〜300質量部、さらに好ましくは50〜250質量部である。この範囲を外れると、ベンゾイン又はベンゾイン誘導体の分散性が低下するので好ましくない。
なお本発明の水分散体は、分散用樹脂(A)に、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)と、必要に応じて、脂環式アミノ化合物とアミノアルコールから選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(C)、界面活性剤、増粘剤、有機溶剤、表面調製剤等を加えて分散して得ることができる。
【0030】
アミン化合物(C)
本発明の水分散体中に、アミン化合物(C)を加えることによって、良好な分散安定性を得ることができる。アミン化合物(C)は、具体的に、トリエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−n−ジブチルアミン、ジ−i−ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、モノブチルアミン、N−オクチルアミン等の脂肪族アミノ化合物、N,N−ジメチルベンジルアミン等の環式アミノ化合物;モノエタノールアミン、エチルアミノエタノール、ジメチルエタノールアミン、N−メタンエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノ−2−プロパノール、イソプロピルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ドデシルベンゼンスルホン酸ジイソプロパノールアミン塩等のアミノアルコール;が挙げられる。これらのアミン化合物(C)の中でも、アミノアルコールが特に好ましい。
【0031】
アミン化合物(C)は、沸点、80〜180℃、好ましくは100〜160℃、分子量60〜460、好ましくは75〜145がよい。上記アミン化合物(C)の使用割合は、分散用樹脂(A)の固形分100質量部に対して、アミン化合物(C)が20質量部未満、好ましくは0.1〜10質量部が、水性塗料の製造時に本発明の水分散体を配合した時の樹脂等の凝集によるブツ発生を緩和する為にも望ましい。
【0032】
上記理由としては、水分散体中にアミン化合物(C)を配合することによって、分散用樹脂(A)とベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)がより安定した状態となり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)同志の凝集等を緩和できるものと考える。
【0033】
界面活性剤
また、必要に応じて加えることができる界面活性剤は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系のいずれでもよい。ノニオン系界面活性剤を使用する場合には、HLBが8以上、好ましくは約10〜約20の範囲内がよい。上記HLBは、分子中の親水基と親油基との釣り合いを示す、Hydrophile−Lipophile Balanceの略である。本明細書においてHLBは次の方法で求めたものである。乳化剤が多価アルコ−ルと脂肪酸エステルの場合は、HLB=20(1−S/A)の式、明瞭なケン化価が求めにくい場合は、HLB=(E+P)/5の式、親水基としてポリオキシエチレン基のみを含む場合は、HLB=E/5の式で求めた。上記各式において、Sはエステルのケン化価、Aは脂肪酸の酸価、Pは多価アルコ−ル重量分布、Eはオキシエチレン基の重量分布を示す。
【0034】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステルポリオキシアルキレングリコール、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0035】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベダインが挙げられる。
界面活性剤の使用割合は、分散用樹脂(A)の固形分100質量部に対して、界面活性剤が100質量部未満、好ましくは1〜50質量部が、耐水性等の塗膜性能を低下させない為にも望ましい。
【0036】
なお水分散体の製造は、分散手段として、例えば、シェーカー、ボールミル、ペブルミル、サンドミル、遊星ボールミル、ホモジナイザーなどを用い、平均粒子径が20μm以下、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは1〜7μmの平均粒子径となるように分散することが、水性塗料組成物に添加した時の塗料安定性や耐ワキ性に優れる為に好ましい。なお「平均粒子径」は、UPA−EX250(日機装株式会社製、商品名、粒度分布測定装置、動的光散乱法・レーザードップラー法(UPA法))を用いて測定した。次いで、前記の水分散体を使用した水性塗料組成物について述べる。
【0037】
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物における前記水分散体の含有量は、以下の水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)の固形分合計100質量部に対して、水分散体の固形分で0.1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは2〜35質量部となる量を含有することが、水性塗料組成物の安定性と耐ワキ性の向上の為に必要である。
【0038】
水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)
水酸基及びカルボキシル基含有樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などをあげることができる。
特に、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂は、水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂等を用いるのが好ましい。これらの水酸基及びカルボキシル基含有樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって合成することができる。
該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物である。該多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。また、これらの多塩基酸の無水物等も使用することができる。
【0039】
また、該多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物である。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール;2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などを挙げることができる。
【0040】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステルなどのモノエポキシ化合物を、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基と反応させることにより、ポリエステル樹脂に導入しても良い。高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステルとしては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば「カージュラE10P」(商品名、HEXIONスペシャリティケミカルズ社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などを挙げることができる。
【0041】
水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、50〜200mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは80〜150mgKOH/gの範囲内である。また、水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の酸価は、5〜100mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは20〜70mgKOH/gの範囲内である。水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、250〜4,000であるのが好ましく、300〜3,500であるのがより好ましく、300〜3,000であるのが更に好ましい。水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、アルキッド樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂であってもよい。
【0042】
水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂
水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂は、常法に従い、例えば、ラジカル重合性単量体を共重合することによって合成することができる。水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂としては、溶液重合法により合成される樹脂を用いることが好ましい。この重合反応に使用する有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール系、ジプロピレングリコール系等の親水性有機溶剤を使用するのが好ましい。
【0043】
上記ラジカル重合性単量体としては、公知のものを使用でき、例えば、水酸基含有ラジカル重合性単量体、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体及びその他のラジカル重合性単量体を使用することができる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
【0044】
水酸基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0045】
カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0046】
その他のラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシランなどを挙げることができる。
【0047】
水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の水酸基価は、10〜200mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは60〜180mgKOH/gの範囲内である。
また、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は、10〜100mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは25〜60mgKOH/gの範囲内である。
【0048】
水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の数平均分子量は、1,000〜4,000であるのが好ましく、1,000〜3,000であるのがより好ましい。水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂は、ウレタン変性したアクリル樹脂であってもよい。
【0049】
硬化剤(E)
一方、硬化剤は、メラミン樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物、非ブロックポリイソシアネートなどを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、硬化性や塗膜性能の面からメラミン樹脂やブロックポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0050】
メラミン樹脂
メラミン樹脂としては、具体的には、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物又は縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物等を挙げることができる。メチロールメラミンのアルキルエーテル化は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のモノアルコールを用いて、公知の方法により行うことができる。
【0051】
メラミン樹脂としては、市販品を用いることができる。市販されている商品名として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製の「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル212」、「サイメル251」、「サイメル254」、「マイコート776」;モンサント社製の「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」;住友化学社製の「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」;三井化学社製の「ユーバン20SB」、「ユーバン20SE−60」、「ユーバン28−60」などを挙げることができる。
【0052】
メラミン樹脂は、トリアジン単核体含有率が35質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましく、45質量%以上であるものが更に好ましい。また、塗料組成物の貯蔵安定性、塗膜の平滑性等に優れる観点から、メトキシ基/ブトキシ基のモル比率が100/0〜60/40mol%程度であるメチル化メラミン樹脂、メトキシ基の比率が高いメチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂であるのが好ましい。メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂において、メトキシ基/ブトキシ基のモル比率は、100/0〜70/30mol%程度であるのがより好ましい。
【0053】
特に好ましいメラミン樹脂として、トリアジン単核体含有率が35質量%以上であり、且つ、メトキシ基/ブトキシ基のモル比率が100/0〜70/30mol%であるメチル化メラミン樹脂、メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂であるものを挙げることができる。
【0054】
かかるメラミン樹脂としては、市販品を用いることができる。市販されている商品名として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製の「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル212」、「サイメル251」、「マイコート212」、「マイコート776」等を挙げることができる。メラミン樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
また、硬化剤(E)として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;これらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0056】
ブロックポリイソシアネート化合物
ブロックポリイソシアネート化合物は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物のすべてのイソシアネート基をブロック剤で封鎖した化合物である。
【0057】
ポリイソシアネート化合物及びブロック剤としては、前記ウレタン変性ポリエステル樹脂の説明で例示した、1分子中に封鎖されていない遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であるポリイソシアネート化合物及び遊離のイソシアネート基を封鎖する化合物であるブロック剤を使用できる。
【0058】
また、ブロック剤として、1分子中に1個以上のヒドロキシル基及び1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸を使用することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸などをあげることができる。ヒドロキシカルボン酸でブロックされたブロックポリイソシアネート化合物は、原料のヒドロキシカルボン酸に由来するカルボキシル基を有しており、該カルボキシル基の親水性に基づいて、水分散性が良好である点から、好ましい。ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応は公知の方法で行なうことができる。
【0059】
ブロックポリイソシアネート化合物の数平均分子量は、250〜4,000であるのが好ましく、300〜3,000であるのがより好ましく、300〜2,500であるのが更に好ましい。
【0060】
本発明の水性塗料組成物において、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)との割合は、両者の合計固形分100質量部に基づいて、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂が50〜90質量部、好ましくは60〜85質量部、硬化剤が10〜50質量部、好ましくは15〜40質量部である。
【0061】
また、水性塗料組成物には、必要に応じて、公知の顔料成分を使用することができる。そのような顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウムフレーク、雲母フレークなどの光輝性顔料などを挙げることができる。
【0062】
これらの顔料成分の配合割合は、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)の合計100質量部に対して、2〜200質量部が好ましく、30〜170質量部がより好ましく、50〜150質量部が更に好ましい。
上記の顔料成分の中に、厚さ0.1〜2μm、より好ましいは0.2〜1.5μmで、その長手方向寸法1〜100μm、好ましくは2〜20μmであるうろこのような薄く平らな形状の偏平状顔料がある。具体的には、例えば、タルク、アルミニウムフレーク、雲母フレークなどである。
【0063】
このような偏平状顔料の含有量は、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)の合計100質量部に対して、2〜30質量部、好ましくは5〜20質量部であることが望ましい。この範囲内で該粒子を含有する場合には、該粒子が塗膜面に対して平行に配向する効果により、塗膜の平滑性を向上させることができる。
【0064】
本発明の水性塗料組成物においては、更に必要に応じて、有機溶剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、ウレタン化反応促進用触媒(例えば、有機錫化合物など)、基体樹脂の水酸基とメラミン樹脂との反応促進用触媒(例えば、酸触媒)、消泡剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤などを適宜配合することができる。
【0065】
本発明の水性塗料組成物の調製方法は、限定されるものではなく、例えば、以下に述べる方法(1)〜方法(4)により行うことができる。
方法(1):水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)、硬化剤(E)、水分散体及び場合によりその他の添加剤を一緒にし、十分に混ぜ合わせて中和剤を添加して分散して得られたエマルションに、顔料分散ぺーストを配合する方法。
方法(2):予め水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)を中和し、硬化剤(E)、水分散体及び場合によりその他の添加剤を一緒にし、十分に混ぜ合わせて分散して得られたエマルションに、顔料分散ぺーストを配合する方法。
方法(3):水分散体、顔料成分や触媒、その他の添加剤及び水を加え分散して顔料分散ペーストを調製し、その顔料分散ペーストに、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)、硬化剤(E)及び場合によりその他の添加剤を一緒にし十分に混ぜ合わせて中和剤を添加し、分散して得られた水分散体を配合する方法。
方法(4):あらかじめ作製した水性塗料組成物の中に、水分散体を配合する方法、が挙げられる。
【0066】
上記の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン化合物;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン化合物;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミン化合物等を挙げることができる。これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物、ポリモノアミン化合物を使用するのが好ましい。
【0067】
本発明の水性塗料組成物は、通常、塗装するに際して、必要に応じて脱イオン水で希釈して、例えば、フォードカップNo.4を用いて、20℃で測定して、好ましくは30〜120秒間、より好ましくは35〜90秒間の粘度に調整する。この場合、固形分濃度は35〜65質量%であるのが好ましく、40〜60質量%であるのがより好ましい。
【0068】
本発明の水性塗料組成物は、公知の方法、例えば、エアースプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装などにより塗装することができる。塗装の際、静電印加することもできる。
塗装膜厚は、特に制限されるものではないが、通常、硬化塗膜で10〜45μm、好ましくは20〜40μmが適している。塗膜の硬化は、通常、110〜180℃、好ましくは130〜170℃で、10〜40分間加熱することにより行うことができる。
以上述べた本発明の水性塗料組成物は、塗料安定性に優れ、かつ耐ワキ性が良好であり仕上り性に優れた塗膜を形成することができる。
【0069】
上記、水性塗料組成物の被塗物としては、特に制限されるものではなく、例えば、自動車、二輪車等の各種自動車車体、家電製品、鋼製家具、厨房器具などを挙げることができる。また、これら被塗物を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;プラスチック基材等であってもよい。また、被塗物としては、上記車体や金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0070】
本発明の水性塗料組成物は、上記の被塗物に、電着塗膜、中塗り塗膜、次いで上塗り塗膜を形成して塗膜を形成する方法における自動車塗料用の中塗り塗料又は上塗着色ベース塗料として有用である。
【0071】
上記の塗膜形成方法において、本発明の水性塗料組成物を用いた場合、水分散体を未添加の水性塗料組成物に比べて、ワキ発生限界膜厚を通常2μm以上、好ましくはワキ膜厚を3μm以上、さらに好ましくは4μm以上向上することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0073】
分散用樹脂の製造
製造例1 分散剤No.1の製造(実施例用)
反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル300部を入れ加熱して120℃にした。次に、以下に示す割合の2種類の「混合物1」と「混合物2」を、反応容器にそれぞれ別々に約2時間かけて滴下した。反応は窒素注入下で行った。
「混合物1」
ブレンマーPE−350(注1) 113部
N−ビニルピロリドン 40部
アクリル酸 11部
メタクリル酸メチル 86部
「混合物2」
アゾビスジメチルバレロニトリル 18部
エチレングリコールモノブチルエーテル 50部
次いで、反応温度を120℃に保ち、反応溶液をかきまぜながら、上記の混合物を滴下した。滴下終了1時間後にアゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応容器に加え、さらに2時間後、アゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応を行った。反応終了後未反応の単量体とエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧蒸留し、酸価36.5mgKOH/gの共重合体溶液が得られた。さらにこの共重合体をトリエチルアミンで中和し(1当量中和)、水を加えて固形分40%の分散剤No.1を得た。
(注1)ブレンマーPE−350:日本油脂社製、商品名、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)相当。
【0074】
製造例2 分散剤No.2の製造(実施例用)
反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル200部を入れ加熱して120℃にした。次に、以下に示す割合の2種類の「混合物1」と「混合物2」を、反応容器にそれぞれ別々に約2時間かけて滴下した。反応は窒素注入下で行った。
「混合物1」
メタクリル酸メチル 50部
アクリル酸n−ブチル 20部
アクリル酸ヒドロキシエチル 5部
ブレンマーPE−100(注2) 20部
メタクリル酸ジメチルアミノエチル 5部
「混合物2」
アゾビスジメチルバレロニトリル 18部
エチレングリコールモノブチルエーテル 50部
次いで、反応温度を120℃に保ち、反応溶液をかきまぜながら、上記の混合物を滴下した。滴下終了1時間後にアゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応容器に加え、さらに2時間後、アゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応を行った。反応終了後未反応の単量体とエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧蒸留し、アミン価17.7mgKOH/gの共重合体溶液が得られた。さらにこの共重合体をトリエチルアミンで中和し(1当量中和)、水を加えて固形分40%の分散剤No.2を得た。
(注2)ブレンマーPE−100:日本油脂社製、商品名、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)相当。
【0075】
製造例3 分散剤No.3の製造(比較例用)
反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル60部を入れ加熱して120℃にした。次に、以下に示す割合の2種類の「混合物1」と「混合物2」を、反応容器にそれぞれ別々に約2時間かけて滴下した。反応は窒素注入下で行った。
「混合物1」
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 13部
2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド 5部
2−エチルへキシルアクリレート 20部
メタクリル酸メチル 31部
アクリル酸n−ブチル 20部
スチレン 5部
メタクリル酸 6部
「混合物2」
アゾビスジメチルバレロニトリル 2部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 35部
次いで、反応温度を120℃に保ち、反応溶液をかきまぜながら、上記の混合物を滴下した。滴下終了1時間後にアゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応容器に加え、さらに2時間後、アゾビスイソブチロニトリル2.5部を反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応溶液に加え、その後2時間120℃に保ったまま反応を行った。反応終了後未反応の単量体とエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧蒸留し、酸価39mgKOH/gの共重合体溶液が得られた。さらにこの共重合体をトリエチルアミンで中和し(1当量中和)、水を加えて固形分40%の分散剤No.3を得た。
【0076】
製造例4 分散剤No.4の製造(比較例用)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、エチレングリ
コールモノブチルエーテル58部を加え窒素気流中で117℃に昇温した。117℃に達した後、RMA−450M(注3)10部、メタクリル酸メチル19部、メタクリル酸n−ブチル22部、イソボルニルアクリレート40部、ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸4部、及びアゾビスイソブチロニトリル0.3部の混合物を3時間かけて滴下した。単量体槽をエチレングリコールモノブチルエーテル11.5部で洗浄し反応溶液に合一した。単量体滴下終了後、さらに30分間反応させた後に、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部とエチレングリコールモノブチルエーテル11.5部からなる溶液を1時間にわたって滴下し、さらに30分間撹拌した後に70℃まで冷却して、酸価31mgKOH/gの共重合体を得た。得られた共重合体をトリエチルアミンで中和し(1当量中和)、水を加えて固形分40%の分散剤No.4を得た。
(注3)RMA−450M:日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)相当。
水分散体の製造
実施例1
シェーカーに、分散剤No.1を25部(固形分10部)、ベンゾイン20部(固形分20部)、水21.7部を配合して混合物を3時間分散して、固形分45%の水分散体No.1を得た。水分散体No.1の平均粒子径は12μmであった。
【0077】
実施例2〜9、比較例1〜3
表1の配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、水分散体No.2〜No.12を得た。各水分散体の平均粒子径を併せて表中に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(注4)AMP−95:ダウケミカル社製、商品名、2−アミノ−2−メチルプロパノール
(注5)アミノアルコールMMA:日本乳化剤、商品名、N−エチルエタノールアミン
(注6)ノイゲンTDX−50:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ノニオン系界面活性剤。
【0080】
水分散体の試験
(注7)貯蔵安定性:各々の水分散体500gを蓋付きガラス瓶入れて、40℃にて40日間貯蔵した。貯蔵後の状態を観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎は、攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし
〇は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1時間未満攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
△は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1〜5時間以上攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
×は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、5時間を越えて攪拌しても顔料の凝集ブツが顔料分散ペースト中に残る。
【0081】
【表2】

【0082】
顔料分散ペーストの製造
製造例5 顔料分散ペーストNo.1の製造例
ステンレス容器に脱イオン水142.5部を入れ、ディスパーで攪拌しながらEfka4550(注8)24.0部(固形分12部)、タルク(注10)10部、チタン白(注11)80部に、カーボンブラック(注12)1部を加えて30分後に、混合物をシェーカーにて5時間分散して、顔料分散ペーストNo.1を得た。
【0083】
製造例6〜8 顔料分散ペーストNo.2〜No.4の製造例
表3の配合内容とする以外は、製造例5と同様にして、顔料分散ペーストNo.2〜No.4を得た。
【0084】
【表3】

【0085】
(注8)Efka4550:商品名、BASF社製、分散剤
(注9)DISPER BYK−190:商品名、ビッグケミー社製、分散剤
(注10)タルク:MICRO ACE S−3、日本タルク社製、厚さ0.3〜0.9μm、長手方向寸法5〜10μm
(注11)チタン白:JR−805、テイカ社製、ルチル型チタン白
(注12)カーボンブラック:カーボンMA−100、三菱化学社製。
【0086】
製造例9 水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の製造
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器、水分離器を備えた4つ口フラスコに、
無水フタル酸28.0部、アジピン酸25.7部、ネオペンチルグリコール26.4
部、トリメチロールプロパン22.9部を仕込んだ。次に、内容物を160℃から
230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で保持し、生成した縮合水を水分
離器により留去させながら、酸価が3mgKOH/g以下になるまで反応させた。
次に、生成物に無水トリメリット酸6.69部を付加反応させた後、N−ジメチ
ルエタノールアミンをカルボキシル基に対して当量添加して中和してから、脱イオン
水を徐々に加えて水分散することにより、固形分40%の水酸基及びカルボキシル基
含有ポリエステル樹脂の水分散液を得た。得られた水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は137mgKOH/g、酸価は40mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
【0087】
水性塗料の製造
実施例10
製造例5で得られた顔料分散ペースト257.5部(固形分103部)に、実施例1で得た水分散体No.1を6.7部(固形分3.0部)、製造例9で得た40%の水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を187.5部(固形分75部)、サイメル325(注13)31.3部(固形分25部)をディスパーにて攪拌しながら加えて、ジメチルエタノールアミン及び脱イオン水を加えて、粘度をフォードカップNo.4で30秒間(20℃)に調整して水性塗料No.1を得た。
(注13)サイメル325:三井サイテック社製、商品名、イミノ基含有メトキシ変性メラミン樹脂、数平均分子量1,000、固形分80%。
【0088】
実施例11〜19
表4の配合とする以外は、実施例10と同様にして水性塗料No.2〜No.10を得た。
【0089】
【表4】

【0090】
比較例4〜8
表5の配合とする以外は、実施例7と同様にして水性塗料No.11〜No.15を得た。
【0091】
【表5】

着色ベース塗料の製造
製造例10 アクリル樹脂エマルション(AC)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管および滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、アクアロンKH−10(注14)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。
次いで下記の単量体乳化物(1)のうちの全量の1%量および6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りの単量体乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成を行なった。
次いで、下記の単量体乳化物(2)を1時間かけて滴下した。1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
(注14)アクアロンKH−10:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、第一工業製薬株式会社製、有効成分97%。
単量体乳化物(1):脱イオン水42部/アクアロンKH−10 0.72部/メチレンビスアクリルアミド2.1部/スチレン2.8部/メチルメタクリレート16.1部/エチルアクリレート28部/n−ブチルアクリレート21部の乳化物
単量体乳化物(2):脱イオン水18部/アクアロンKH−10 0.31部/過硫酸アンモニウム0.03部/メタクリル酸5.1部/2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部/スチレン3部/メチルメタクリレート6部/エチルアクリレート1.8部/n−ブチルアクリレート9部の乳化物。
【0092】
製造例11 ポリエステル樹脂溶液(PE2)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器および水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部およびアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液(PE2)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、重量平均分子量が6,400であった。
【0093】
製造例12 光輝性顔料分散液(P1)の製造例
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト(商品名「GX−180A」旭化成メタルズ株式会社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注15)8部および2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(P1)を得た。
(注15)リン酸基含有樹脂溶液:スチレン25部/n−ブチルメタクリレート27.5部/分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」大阪有機化学工業株式会社製)20部/4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部/リン酸基含有重合性単量体溶液(注16)15部/2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部を反応して得られた固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液。リン酸基含有樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注16)リン酸基含有重合性単量体溶液:モノブチルリン酸57.5部/グリシジルメタクリレート42.5部を有機溶媒中で反応して得られた、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性単量体溶液。
【0094】
実施例20 着色ベース塗料No.1の製造
製造例10で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例11で得
たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例12で得た光輝性顔料分散液(P1)62部およびサイメル325(注13)37.5部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、実施例1で得た水分散体No.1を20.1部(固形分9.0部)を混合し、2−エチル−1−ヘキサノール、および脱イオン水を加えて、塗料固形分25%の着色ベース塗料No.1を得た。
【0095】
比較例9 着色ベース塗料No.2の製造
製造例10で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例11で得たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例12で得た光輝性顔料分散液(P1)62部およびサイメル325(イミノ基含有メチル化メラミン樹脂、商品名、日本サイテック社製、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−エチル−1−ヘキサノール10部、および脱イオン水を加えて、塗料固形分25%の着色ベース塗料No.2を得た。
上記実施例及び比較例の水性塗料を用いて、下記の試験板を作成し評価基準に従って、試験に供した結果を表6、表7に示す。
【0096】
試験板作成1(耐ワキ性、水性塗料組成物)
以下の工程1〜4によって、耐ワキ性を評価する為の「試験板A」を得た。
工程1:パルボンド#3020(日本パーカライジング株式会社製、商品名、り
ん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板(15cm×45cm)に、エレクロンGT−10LF(関西ペイント株式会社製、商品名、カチオン電着塗料)を電着塗装し、膜厚で20μmの電着塗装板を得た。
工程2:次いで、実施例と比較例で得た各々の水性塗料No.1〜No.15を用い、工程1で得た塗装板に、膜厚が20〜60μmになるように水平状態にて傾斜塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で2分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。次いで、塗装ブースの雰囲気になるように放冷した。
工程3:さらにその上に、水性メタリックベースコートWBC713T(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系塗料)を膜厚15μmに塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で1分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。
工程4:次いで、その未硬化塗面にKINO#1200TWクリヤ(関西ペイント社製、商品名、酸・エポキシ硬化型アクリル樹脂系のクリヤ塗料)を膜厚35μmに塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で5分間放置した後、140℃で20分加熱硬化して「試験板A」を得た。
【0097】
試験板作成2(耐ワキ性、着色ベース塗料)
以下の工程1〜4によって、耐ワキ性を評価する為の「試験板B」を得た。
工程1:試験板作成1における工程1と同様である。
工程2:次いで、WP−305(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂硬化系の水性中塗り塗料)を用い、工程1で得た塗装板に、膜厚が35μmになるようにで水平状態にて塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で2分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。次いで、塗装ブースの雰囲気になるように放冷した。
工程3:さらにその上に、着色ベース塗料No.1又は着色ベース塗料No.2
を膜厚が10〜40μmになるように水平状態にて傾斜塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で1分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。
工程4:試験板作成1における工程4と同様にして「試験板B」を得た。
【0098】
試験板作成3(塗料貯蔵後の仕上り性、水性塗料組成物)
工程1:試験板作成1における工程1と同様である。
工程2:次いで、工程1で得た塗装板に、水性塗料No.1〜No.15を膜厚が35μmになるように塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で2分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。次いで、塗装ブースの雰囲気になるように放冷した。
工程3:さらにその上に、水性メタリックベースコートWBC−713T(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系塗料)を膜厚15μmに塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で1分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。
工程4:試験板作成1における工程4と同様にして、「試験板C」を得た。
【0099】
試験板作成4(塗料貯蔵後の仕上り性、着色ベース塗料)
工程1:試験板作成1における工程1と同様である。
工程2:次いで、工程1で得た塗装板に、WP−305(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂硬化系の水性中塗り塗料)を膜厚が35μmになるように塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で2分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。次いで、塗装ブースの雰囲気になるように放冷した。
工程3:さらにその上に、着色ベース塗料No.1又は着色ベース塗料No.2
を膜厚15μmに塗装し、ブース雰囲気(23℃、相対湿度67%)で1分30秒間放置し、その後80℃で3分間予備乾燥した。
工程4:試験板作成1における工程4と同様にして、「試験板D」を得た。
【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
(注17)貯蔵安定性:
実施例と比較例で得た各々の水性塗料No.1〜No.15、及び着色ベース塗料No.1と着色ベース塗料No.2を、1,000gを蓋付きガラス瓶入れて、40℃にて5日間貯蔵した後、さらに5℃にて2日間貯蔵後の状態を観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎は、塗料の沈降もなく、20℃にて攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし
〇は、塗料の沈降がわずかにみられるものの、20℃(室温)にて1時間未満攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
△は、塗料が沈降してケーキ層がみられ、20℃(室温)にて1〜5時間攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
×は、塗料が沈降してケーキ層がみられ、20℃にて5時間を越えて攪拌しても凝集ブツが残る。
【0103】
(注18)耐ワキ性:
前記の「試験板作成1」の試験板Aにて得た試験板にて水性塗料No.1〜No.15のワキ限界膜厚を測定した。前記の「試験板作成2」の試験板Bにて得た試験板にて着色ベース塗料No.1〜No.2のワキ限界膜厚を測定した。
【0104】
(注19)塗料貯蔵後の仕上り性:
前記の「試験板作成3」の試験板C、前記の「試験板作成4」に従って得た試験板D、を以下の評価内容に従って目視評価した。
◎は、問題なく良好
○は、わずかに肌に凹凸があるが問題なし
△は、ブツ又は肌荒れの少なくとも一方の発生が見られる
×は、ブツ又は肌荒れの少なくとも一方の発生が著しい
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、ワキ性に優れた塗膜を提供できる為、工業用製品の塗装に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特徴の分散用樹脂(A)及びベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)が水性媒体中に分散されてなる水分散体であって、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、ベンゾイン又はベンゾインの誘導体(B)を0.1〜400質量部含有する水分散体。
分散樹脂(A):構成する単量体の合計質量に対して、ポリオキシアルキレン鎖を有するラジカル重合性不飽和単量体(a1)を3〜98質量%、窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)を2〜97質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a3)を0〜20質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(a4)を0〜95質量%の混合物をラジカル重合反応することによって得られた樹脂
【請求項2】
水分散体が、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、アミン化合物(C)を20質量部未満含有する請求項1に記載の水分散体。
【請求項3】
水分散体が、分散用樹脂(A)の固形分100質量部あたり、界面活性剤を100質量部未満含有する請求項1又は2に記載の水分散体。
【請求項4】
水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)、硬化剤(E)、並びに請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分散体を含有する水性塗料組成物。
【請求項5】
水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(D)と硬化剤(E)の固形分合計100質量部に対し、水分散体の固形分で0.1〜50質量部含有する請求項4に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
自動車用の中塗り塗料又は着色ベース塗料である請求項4又は5に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装して得られた塗装物品。

【公開番号】特開2012−162636(P2012−162636A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23480(P2011−23480)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】