説明

水分散型粘着剤組成物および粘着シート

【課題】粗面接着性が高く、他の特性とのバランスにも優れた粘着シートの製造その他の用途に有用な水分散型粘着剤組成物、及び粘着シートの提供。
【解決手段】アクリル系ポリマーpAと、Mwが1×10〜50×10であってガラス転移温度が−15℃以下のアクリル系ポリマーpAとを100:6〜35の質量比で含む水分散型粘着剤組成物、及びその水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層21,22を有する粘着シート1。pAはC1−18アルキル(メタ)アクリレートM1を主体とする。pAは、その構成モノマーとして、C1−18アルキル(メタ)アクリレートM1と、官能基含有モノマーM2とを少なくとも含む共重合組成を有する。pA100g当たりに含まれるモノマーM2由来の官能基数は、0.12molより大きく、且つ0.50mol以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系溶媒にアクリル系ポリマーが分散した粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)組成物および該粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
主たる分散媒または溶媒として水性溶媒を用いた水性粘着剤組成物は、有機溶媒を媒体とする溶剤型粘着剤組成物と比べ、環境への負荷を低減する観点から望ましい。このため、粘着シートを製造する際も、溶剤型粘着剤組成物の使用量を低減し、水性粘着剤組成物を主体として粘着剤層を形成することが望ましい。かかる水性粘着剤組成物としては、例えば、水性媒体中に粘着成分としてのアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物(例えば、粘着成分が水性媒体に分散したエマルション型の粘着剤組成物)等が知られている。水分散型アクリル系粘着剤に関する技術文献として特許文献1および2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−18689号公報
【特許文献2】特開昭56−8476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水性粘着剤組成物を主体として形成された粘着剤層を有する粘着シートは、溶剤型粘着剤組成物を用いた粘着シートと比べ、発泡体のように表面に微細な凹凸(主として気泡に起因する)を有する被着体(例えば、ポリウレタンフォーム等)に対する接着性(粗面接着性)が不足しがちであった。また、かかる粘着シートにおいて、粗面接着性と他の特性(保持力、端末剥がれ防止性、耐反撥性等)とをバランスよく実現することは困難であった。
【0005】
本発明の主要な目的は、粗面接着性が高く、他の特性とのバランスにも優れた粘着シートの製造その他の用途に有用な水分散型粘着剤組成物を提供することである。関連する他の目的は、かかる水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される水分散型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーpAと、アクリル系ポリマーpAとを、質量比(pA:pA)100:6〜100:35で含む。上記ポリマーpAは、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートM1を主モノマー(主たるモノマー成分;全モノマー成分の50質量%以上を占めるモノマー)として含む。上記ポリマーpAは、重量平均分子量Mw(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく、標準ポリスチレン基準の重量平均分子量をいう。)が1×10〜50×10である。上記ポリマーpAは、ガラス転移温度(Tg)が−15℃以下である。上記ポリマーpAは、該ポリマーを構成するモノマーとして、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートM1と、官能基含有モノマーM2とを少なくとも含む共重合組成を有する。上記ポリマーpAに含まれる上記モノマーM2由来の官能基数Nは、当該ポリマーpA100g当たり、0.12molより大きく且つ0.50mol以下である。
【0007】
なお、以下の説明において、炭素原子数がa〜bの範囲であることを「Ca−b」と表記することがある。例えば、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートを「C1−18アルキル(メタ)アクリレート」と表記することがある。
【0008】
かかる水分散型粘着剤組成物は、2種類のポリマーpA,pAを上記所定の割合で含み、且つポリマーpAの重量平均分子量Mwが1×10〜50×10と比較的小さく、さらにはポリマーpA100g当たりに含まれる上記モノマーM2由来の官能基数N(mol/100g)が0.12<N≦0.50を満たすので、該組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートは、表面に凹凸を有する難接着性の被着体(例えば、ウレタンフォーム等の発泡体)に貼り付けられる場合においても、該被着体に対して良好な接着性(接着信頼性)を発揮し得る。また、上記粘着シートは水性粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備えるので環境衛生上好ましい。また、該粘着シートは、十分な保持力、端末剥がれ防止性、および耐反撥性を兼ね備えたものであり得る。
【0009】
上記モノマーM2としては、カルボキシル基含有モノマーの少なくとも一種を好ましく採用し得る。かかる共重合組成のポリマーpAを含む粘着剤組成物によると、より優れた性能を示す粘着シートが実現され得る。M2の好適例として、アクリル酸およびアクリル酸ダイマーが挙げられる。これらの一方を含んでもよく両方を含んでもよい。
【0010】
上記ポリマーpAは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量Mw(GPCに基づく、標準ポリスチレン基準の重量平均分子量をいう。)が30×10〜100×10であることが好ましい。かかるMwのポリマーpAを含む粘着剤組成物によると、より優れた性能を示す粘着シートが実現され得る。
【0011】
好ましい一態様では、上記ポリマーpAが、2−エチルヘキシルアクリレートを少なくとも50質量%(典型的には50〜99質量%)含む共重合組成を有し、上記ポリマーpAが、ブチルアクリレートを少なくとも50質量%(典型的には50〜95質量%)含む共重合組成を有する。かかる態様によると、より優れた性能を示す粘着シートが実現され得る。
【0012】
好ましい一態様では、上記粘着剤組成物は、ポリマーpA100質量部に対し、5〜40質量部の粘着付与剤をさらに含む。かかる粘着剤組成物によると、より良好な粘着特性を示す粘着シート(例えば、粗面接着性、保持力、端末剥がれ防止性および耐反撥性のうち一または二以上の特性がさらに改善された粘着シート)が実現され得る。特に好ましい粘着付与剤としてロジン系樹脂が例示される。
【0013】
好ましい一態様では、上記水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤のゲル分率(酢酸エチル不溶分の質量割合)が20〜55%である。かかる粘着剤組成物によると、性能バランスのより優れた粘着シートが実現され得る。
【0014】
本発明によるとまた、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートが提供される。かかる粘着シートは、優れた粗面接着性を有し、且つ保持力、端末剥がれ防止性、耐反撥性ともに良好なものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図4】粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図5】粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図6】粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図7】耐反撥性試験の方法を示す説明図である。
【図8】耐反撥性試験の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の説明において、同様の作用を奏する部材または部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0017】
ここに開示される粘着剤組成物は、水性溶媒中に2種類のアクリル系ポリマーpA,pAを含む水分散液(典型的には水性エマルション)である。これらpA,pAの合計量は、上記粘着剤組成物に含まれる不揮発分(粘着剤層形成成分、以下「粘着剤」ともいう。)のうち40質量%以上を占めることが好ましく、50質量%以上を占めることがより好ましい。粘着剤に占めるアクリル系ポリマーの質量割合が少なすぎると、粘着特性のバランスが崩れやすくなることがある。pA,pAの合計量が粘着剤に占める割合は、実質的に100質量%であってもよいが、典型的には95質量%以下であり、通常は90質量%以下(例えば85質量%以下)とすることが好ましい。粘着剤に占めるアクリル系ポリマーの質量割合が多すぎると、粘着特性のバランスが崩れやすくなることがあり得る。
【0018】
ポリマーpAとポリマーpAとの配合比(pA:pA)は、質量基準で100:6〜100:35(好ましくは100:8〜100:35、例えば100:10〜100:30)程度とする。pAに対するpAの量が少なすぎると、十分な粗面接着性が実現されない場合がある。pAの量が多すぎると、保持力や端末剥がれ防止性が低くなる場合がある。
【0019】
ここに開示される粘着剤組成物は、ポリマーpAを構成する官能基含有モノマーM2由来の官能基数Nが、該ポリマーpA100g当たり、0.12molより大きく且つ0.50mol以下(例えば、0.13mol〜0.47mol)であることを特徴とする。Nが小さすぎると、該粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートにおいて、十分な粗面接着性が得られない場合がある。さらには、耐反撥性が低下する場合がある。Nが大きすぎると、端末剥がれ防止性が低下傾向となる場合がある。また、低温特性(例えば、低温環境下における粗面接着性、タック等)が低下しやすくなる場合がある。後述する耐反撥性の観点からは、Nが0.15mol〜0.40mol(例えば0.16mol〜0.37mol)であることが好適である。
【0020】
なお、N(mol/100g)は、ポリマーpAを構成する全てのモノマーの総量をW(g)、官能基含有モノマーM2の配合量をWM2Y(g)、該モノマーM2の分子量をMW(M2Y)(g/mol)、該モノマーM2の一分子中に含まれる官能基数をnとしたとき、以下の式(I)によって算出することができる。ここで、上記nに寄与する官能基の例としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、グリシジル基、マレイミド基、イタコンイミド基、スクシンイミド基、スルホン酸基、リン酸基、イソシアネート基、アルコキシ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0021】
【数1】

【0022】
ポリマーpAに含まれる官能基数が上記所望の範囲にあることによってここに開示される効果が奏される理由は明確ではないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、粘着剤の弾性率が低くなると、該粘着剤が粗面の微細な凹凸等に沿って変形しやすくなる傾向にある。したがって、粘着剤の弾性率を低くすることは、粗面接着性を向上させる有効な手段となり得る。弾性率を低下させる手法の一つとして、低分子量のポリマーを配合する手法が考えられる。しかし、かかる低分子量ポリマーの配合は、粘着剤の凝集性や耐反撥性を低下させる要因ともなり得る。このため、単に低分子量ポリマーを配合することによっては、粗面接着性と他の特性とを高レベルで両立させることは困難であった。ここに開示される技術では、低分子量ポリマーとして、所定の官能基数Nを満たす量の官能基含有モノマー(典型的にはカルボキシル基含有モノマー)が共重合されたポリマーpAを用いる。かかるポリマーpAによると、単に粘着剤の弾性率を下げるだけではなく、官能基とウレタン等の発泡体およびポリマーpAとの相互作用によって、粗面接着性をより効果的に向上させることができる。このことによって、粗面接着性と他の特性(例えば、保持力(凝集性)、端末剥がれ防止性および耐反撥性のうち一つまたは二つ以上の特性)との両立が、より高度なレベルで実現され得るものと考えられる。
【0023】
以下、ポリマーpAについて、より詳しく説明する。このポリマーpAは、典型的には、C1−18アルキル(メタ)アクリレート(モノマーM1)を主体とする。該ポリマーpAを構成するモノマーの総量(以下「全モノマー成分」ということもある。)のうちC1−18アルキル(メタ)アクリレート(モノマーM1)の占める割合(共重合割合)は、典型的には50質量%以上であり、例えば60質量%以上(典型的には60〜99.9質量%)であり得る。好ましい一態様では、モノマーM1の含有割合が全モノマー成分の70質量%以上(典型的には70〜99.9質量%)であり、例えば80質量%以上(典型的には80〜99.9質量%)である。また、モノマーM1の含有割合が全モノマー成分の90質量%以上(典型的には90〜99質量%)であってもよい。かかるアクリル系ポリマーは、所定のモノマー原料を重合(典型的にはエマルション重合)することにより合成され得る。通常、上記モノマー原料におけるモノマー組成は、該モノマー原料を重合して得られるアクリル系ポリマーの共重合組成(共重合割合)に概ね対応する。
【0024】
なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0025】
モノマーM1としては、以下の式(II)で表わされるC1−18アルキル(メタ)アクリレートから選択される一種または二種以上を用いることができる。
CH=C(R)COOR (II)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、RはC1−18のアルキル基である。)
【0026】
1−18アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0027】
ここに開示される技術の一態様では、ポリマーpAを構成する全モノマー成分のうち70質量%以上(典型的には70〜99.9質量%)がC2−14アルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくはC2−10アルキル(メタ)アクリレート(例えばC4−10アルキルアクリレート)である。例えば、ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の一方または両方を、合計で、全モノマー成分の70質量%以上(典型的には70〜99質量%)、より好ましくは80質量%以上(典型的には80〜98質量%)含有するモノマー組成を好ましく採用することができる。BAおよび2EHAを組み合わせて用いる場合、それらの使用比率は特に制限されない。好ましい一態様では、モノマーM1が、実質的に、BAおよび2EHAの一方または両方からなる。
【0028】
ポリマーpAには、一種または二種以上の官能基含有モノマーM2が共重合されていることが好ましい。かかる官能基含有モノマーM2の共重合割合は、合計で、全モノマー成分の12質量%以下(典型的には0.1〜12質量%、例えば0.5〜12質量%)とすることが好ましく、通常は10質量%以下(典型的には0.5〜10質量%;例えば、1〜8質量%)とすることがより好ましい。官能基含有モノマーの使用量が少なすぎると、凝集力(保持力)が不足しやすくなることがあり得る。官能基含有モノマーの使用量が多すぎると、凝集力が高くなりすぎて粘着特性(例えば接着力)が低下傾向となることがあり得る。
【0029】
上記官能基含有モノマーとしては、一分子内にラジカル重合性官能基(典型的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基)と他の官能基とをそれぞれ少なくとも一つ有する種々のモノマーを好ましく用いることができる。
【0030】
かかる官能基含有モノマーの代表例として、カルボキシル基含有モノマーおよびその酸無水物が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロキシエチルフタル酸等の不飽和ジカルボン酸モノエステル;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;2−メタクリロキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロキシエチルピロメリット酸等の不飽和トリカルボン酸モノエステル;カルボキシエチルアクリレート(β−カルボキシエチルアクリレート等)、カルボキシペンチルアクリレート等のカルボキシアルキルアクリレート;アクリル酸の二量体(ダイマー)や三量体(トリマー)等のアクリル酸オリゴマー;無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;等が挙げられる。
【0031】
官能基含有モノマーの他の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカルボン酸アミド等のアミド基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド基含有モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド基含有モノマー;N−(メタ)アクリロキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェイト等のリン酸基含有モノマー;2−メタクリロキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;等が挙げられる。
【0032】
官能基含有モノマーのさらに他の例として、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーやシリコーン系ビニルモノマー等のアルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。
【0033】
シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルプロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルプロピルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロキシアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシラン;等が挙げられる。
【0034】
シリコーン系ビニルモノマーの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランやビニルジアルキルアルコキシシラン;ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシラン;これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシラン;等が挙げられる。
【0035】
このような官能基含有モノマーのうち、ポリマーpAの構成成分として用いられる官能基含有モノマーM2としては、例えば、カルボキシル基を有するモノマーまたはその酸無水物から選択される一種または二種以上を好ましく用いることができる。官能基含有モノマーM2の実質的に全部がカルボキシル基含有モノマーであってもよい。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、AAおよびMAAが例示される。これらの一方を単独で用いてもよく、AAとMAAとを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、ポリマーpAにAAおよびMAAが共重合されている。かかる共重合組成のアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物によると、より耐反撥性に優れた粘着シートが実現され得る。AAとMAAとの質量比(AA:MAA)は、例えば凡そ1:10〜10:1の範囲とすることができ、通常は凡そ1:4〜4:1(例えば1:2〜2:1)の範囲とすることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーを共重合させる場合、その共重合量(複数種類のカルボキシル基含有モノマーを用いる場合にはそれらの合計量)は、全モノマー成分の例えば12質量%以下(典型的には0.1〜12質量%、例えば0.5〜12質量%)とすることが適当であり、通常は10質量%以下(典型的には0.5〜10質量%、例えば0.5〜5質量%程度)とすることが適当である。
【0037】
ここに開示される技術の他の好ましい一態様では、ポリマーpAを構成する官能基含有モノマーM2が、アルコキシシリル基含有モノマーを含む。このことによってポリマー鎖にアルコキシシリル基が導入され、それ同士の反応により架橋構造を形成することができる。このようなアルコキシシリル基含有モノマーを共重合させることは、粗面接着性と凝集力(保持力)とをより高レベルで両立可能な粘着シートを実現する上で有利な手法となり得る。アルコキシシリル基含有モノマーを共重合させる場合、その共重合量(複数種類のアルコキシシリル基含有モノマーを用いる場合にはそれらの合計量)は、全モノマー成分の例えば0.2質量%以下(典型的には0.001〜0.2質量%)とすることが適当であり、通常は0.1質量%以下(典型的には0.005〜0.1質量%、例えば0.01〜0.05質量%)とすることが適当である。
【0038】
好ましい一態様では、ポリマーpAにおける官能基含有モノマーM2が、カルボキシル基を有するモノマーまたはその酸無水物から選択される一種または二種以上と、アルコキシシリル基含有モノマーから選択される一種または二種以上とを少なくとも含む。官能基含有モノマーM2の実質的に全部が、AAおよびMAAの一方または両方と、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとからなるポリマーpAであってもよい。
【0039】
ポリマーpAには、上述したモノマー以外に、任意成分として、モノマーM1と共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)M3が共重合されていてもよい。かかる共重合性モノマーとしては、例えば、炭素原子数が19以上のアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族不飽和モノマー;シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルコールの(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のビニル基含有複素環化合物;塩化ビニル、フッ化アルキル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有モノマー;等が挙げられる。
【0040】
さらに他の使用可能な共重合性モノマーとして、一分子内にラジカル重合性官能基(典型的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基)を二つ以上有する多官能性モノマーが挙げられる。かかる多官能性モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。多官能性モノマーの他の例として、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0041】
ポリマーpAにおける共重合性モノマーM3の共重合割合は、合計で、全モノマー成分の39.5質量%以下(典型的には30質量%以下、例えば20質量%以下)とすることが適当であり、通常は10質量%以下(例えば5質量%以下)とすることが好ましい。共重合性モノマーM3を実質的に含有しない(例えば、M3の共重合割合が0.5質量%未満の)共重合組成であってもよい。
【0042】
かかるモノマーを重合させてポリマーpAを形成する方法としては、公知または慣用の重合方法を採用することができ、なかでもエマルション重合法を好ましく用いることができる。かかる方法によって得られるポリマーpAの水性エマルションは、そのまま水分散型粘着剤組成物の形成に使用することができる。エマルション重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマーの一部または全部(典型的には全部)をあらかじめ水(典型的には、水とともに適当量の乳化剤が使用される。)と混合して乳化し、その乳化液(モノマーエマルション)を反応容器内に一括、連続あるいは分割して供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
【0043】
重合時に用いる重合開始剤は、重合方法の種類に応じて、公知または慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、エマルション重合法において、アゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0044】
重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物(過酸化水素水等)とアスコルビン酸との組み合わせ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等が挙げられる。
【0045】
このような重合開始剤は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、例えば、pAの合成に用いられる全モノマー成分100質量部に対して0.005〜1質量部(典型的には0.01〜1質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0046】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、n−ラウリルメルカプタン、tert−ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでもn−ラウリルメルカプタンの使用が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、pAの合成に用いられる全モノマー成分100質量部に対して、例えば凡そ0.001〜0.5質量部程度とすることができる。この使用量が凡そ0.02〜0.05質量部程度であってもよい。
【0047】
かかるエマルション重合によると、アクリル系ポリマーpAが水に分散したエマルション形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術におけるポリマーpAの水性エマルションとしては、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施したものを好ましく用いることができる。あるいは、エマルション重合方法以外の重合方法(例えば、溶液重合、光重合、バルク重合等)を利用してポリマーpAを合成し、該ポリマーを水に分散させて調製されたポリマーpAの水性エマルションを用いてもよい。上記後処理には、例えば、塩基(アンモニア水等)や酸によってエマルションの液相のpHを7〜9程度(例えば7〜8程度)に調整する操作等が含まれ得る。
【0048】
ポリマーpAの水性エマルションの調製には、必要に応じて乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれも使用可能である。通常は、アニオン系またはノニオン系の乳化剤の使用が好ましい。このような乳化剤は、例えば、モノマー原料をエマルション重合させてポリマーpAを合成する際や、他の方法で得られたアクリル系ポリマーpAを水に分散させる際等に好ましく使用することができる。アニオン系乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が例示される。ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が例示される。また、これらのアニオン系またはノニオン系乳化剤にラジカル重合性基(プロぺニル基等)が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。あるいは、かかるラジカル重合性基を有しない乳化剤のみを使用してもよい。
【0049】
このような乳化剤は、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量は、アクリル系ポリマーをエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であればよく、特に制限されない。通常は、アクリル系ポリマー100質量部当たり、固形分基準で例えば0.2〜10質量部(好ましくは0.5〜5質量部)程度の範囲から選択することが適当である。
【0050】
ポリマーpAは、そのTHF可溶分の重量平均分子量Mwが、凡そ30×10〜100×10の範囲にあることが好ましい。Mwが小さすぎると、得られる粘着剤層の凝集力が低下傾向となることがあり得る。また、ポリマーpAのマトリックスに低分子量のポリマーpAがドメインを形成した構造が実現されにくくなって、粗面接着性が低下することがあり得る。
【0051】
ポリマーpAの重量平均分子量Mwとしては、以下の方法に従って測定された値を採用するものとする。
<ポリマーpAのMwを測定する方法>
測定対象たるアクリル系ポリマーpAのサンプルを23℃にてTHF中に7日間浸漬してTHF可溶分を溶出させる。THF不溶分を濾過によって除去し、得られた濾液を必要に応じて濃縮あるいはTHFで希釈して、THF可溶分を0.1〜0.3質量%程度の濃度で含むTHF溶液を調製する。このTHF溶液を平均孔径が0.45μmのフィルターで濾過して得られた濾液につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置により標準ポリスチレン基準の重量平均分子量Mwを求める。GPC装置としては、例えば、東ソー株式会社製の型式「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgel GMH−H(S))またはこれに準ずる精度の装置を使用することができる。上記アクリル系ポリマーpAのサンプルとしては、エマルション重合により得られたポリマーpAを乾燥(例えば、130℃で2時間程度乾燥)させたものを用いるとよい。
【0052】
次に、ポリマーpAについて、より詳しく説明する。このポリマーpAは、比較的低分子量の(具体的には、重量平均分子量Mwが凡そ1×10〜50×10の範囲にある)アクリル系ポリマーであって、C1−18アルキル(メタ)アクリレートM1と、官能基含有モノマーM2とを含む共重合組成を有する。ポリマーpAのMwは、1.5×10〜9×10程度が好ましく、より好ましくは2×10〜8×10程度、さらに好ましくは2×10〜5×10程度である。ポリマーpAのMwが小さすぎると、得られる粘着剤層の凝集力が低下する場合がある。Mwが大きすぎると、粗面接着性が十分に向上されない場合がある。
【0053】
アクリル系ポリマーpAの重量平均分子量Mwとしては、以下の方法に従って測定された値を採用するものとする。
<ポリマーpAのMwを測定する方法>
測定対象たるアクリル系ポリマーpAを10mM−LiBr+10mMリン酸/DMF(希釈液)中に0.1〜0.3質量%程度(例えば0.2質量%)の濃度で含む測定用溶液を調製する。このTHF溶液を平均孔径0.45μmのフィルターで濾過した濾液につき、GPC装置により標準ポリスチレン基準の重量平均分子量Mwを求める。GPC装置としては、例えば、東ソー株式会社製の型式「HLC−8120GPC」またはこれに準ずる精度の装置を使用することができる。具体的には、後述する実施例に記載のMw測定条件を適用してポリマーpAのMwを測定することができる。なお、ポリマーpAを溶液重合により合成した場合、上記測定用溶液としては、例えば、重合反応液(典型的には、ポリマーpAを20質量%以上の濃度で含む溶液)を上記希釈液で希釈して調製したものを用いることができる。また、ポリマーpAの一部がTHFに溶解しない場合には、ポリマーpAの場合と同様に、ポリマーpAを23℃にてTHF中に7日間浸漬して抽出した可溶分について標準ポリスチレン基準の重量平均分子量Mwを求めるものとする。
【0054】
ここに開示される技術におけるポリマーpAとしては、Tgが−15℃以下(典型的には−70℃〜−15℃、好ましくは−60℃〜−15℃、例えば−50℃〜−20℃程度)のものを好ましく採用することができる。ポリマーpAのTgが高すぎると、粗面接着力を向上させる効果が不足しがちである。
【0055】
ここでTgとは、ポリマーpAを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
シクロヘキシルメタクリレート 66℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 130℃
【0056】
後述する実施例において例1〜例21に係るアクリル系ポリマーの合成に使用した官能基含有モノマーのうち上記以外のものについては、ホモポリマーのTgとして以下の値を用いるものとする。
PAM200(商品名) 0℃
M5600(商品名) 12℃
M5300(商品名) −35℃
【0057】
さらに、上記以外のモノマーであってホモポリマーのTgが公知資料に記載されていないモノマーについては、以下の方法で求められた値をホモポリマーのTgとして採用するものとする。すなわち、対象となるモノマーを溶液重合して重量平均分子量5×10〜10×10のホモポリマーを合成し、得られたホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延乾燥させて試験サンプルを作製する。この試験サンプルにつき、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社の示差走査熱量計(DSC)、型式「DSC6220」を用いて、10℃/分の昇温速度で−80℃から280℃まで温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、初期の吸熱開始温度を当該ホモポリマーのTgとする。
【0058】
ポリマーpAを構成する全モノマー成分に占めるM1の割合は、例えば30質量%以上とすることができ、通常は50質量%以上とすることが適当である。好ましい一態様では、M1の割合が60〜95質量%程度(より好ましくは70〜95質量%程度、例えば70〜92質量%程度)である。M1の量が少なすぎると、粘着特性のバランスが崩れやすくなることがあり得る。
【0059】
モノマーM1としてのC1−18アルキル(メタ)アクリレートには、ポリマーpAの調製において使用し得るモノマーM1として例示したC1−18アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはC2−14アルキル(メタ)アクリレート、例えばC2−10アルキル(メタ)アクリレート)と同様のモノマーを使用することができる。かかるC1−18アルキル(メタ)アクリレートは、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
ポリマーpAを構成する全モノマー成分に占めるM2の割合は、該ポリマーpA100g当たりに含まれるM2由来の官能基数(典型的には、カルボキシル基の数)Nがここに開示される好ましい数値範囲となるように適宜選択することができる。M2の割合は、典型的には、全モノマー成分の5〜40質量%程度(好ましくは7〜37質量%程度、例えば7〜35質量%程度)であり得る。M2の量が少なすぎると、当該ポリマーpAを含有する水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートにおいて、粗面接着性、耐反撥性、保持力、端末剥がれ防止性の少なくとも一つが不十分なことがある。M2の量が多すぎると、十分な粗面接着性が実現されない場合がある。
【0061】
ここに開示される技術の一態様では、ポリマーpAを構成する全モノマー成分のうち70〜95質量%(例えば70〜92質量%)がC2−14アルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくはC2−10アルキル(メタ)アクリレート(例えばC4−10アルキルアクリレート)である。好ましい一態様では、モノマーM1が、実質的に、BAおよび2EHAの一方または両方からなる。BAと2EHAとの使用比率は特に制限されない。
【0062】
ポリマーpAの副構成成分たる官能基含有モノマーM2としては、ポリマーpAの調製に使用し得るモノマーM2として例示したものと同様の官能基含有モノマーを使用することができる。このような官能基含有モノマーは、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
好ましい一態様では、モノマーM2が、少なくともカルボキシル基含有モノマーを含む。例えば、ポリマーpAの調製に使用し得るモノマーM2として例示したカルボキシル基含有モノマーのうち、モノマーM2として、アクリル酸、メタクリル酸およびアクリル酸オリゴマー(典型的には二量体)等を好ましく使用し得る。なかでも好ましいカルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸およびアクリル酸ダイマー(例えば、東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM5600」またはその相当品)が例示される。これらカルボキシル基含有不飽和化合物は、一種のみを単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。
【0064】
好ましい一態様では、モノマーM2の実質的に全部がカルボキシル基含有モノマーである。例えば、モノマーM2がアクリル酸およびアクリル酸オリゴマー(典型的にはアクリル酸ダイマー)の一方または両方を含むポリマーpAを好ましく採用し得る。この場合において、ポリマーpAに含まれるカルボキシル基含有モノマーM2由来の官能基数Nは、当該ポリマーpA100g当たり、0.12molより大きく且つ0.50mol以下(典型的には0.13mol〜0.47mol)とすることができ、0.15mol〜0.40mol(例えば0.16mol〜0.37mol)であってもよい。カルボキシル基含有モノマーM2由来の官能基数Nが小さすぎると、十分な粗面接着性向上効果が得られ難くなったり、耐反撥性が不足しやすくなったりすることがあり得る。Nが大きすぎると、端末剥がれ防止性が低下傾向となったり、低温特性が低下しやすくなったりすることがあり得る。また、重合中の発熱量が多くなり、上述した好ましい範囲のMwを有するポリマーpAを製造するための温度管理の負担が大きくなる場合があり得る。
【0065】
ポリマーpAには、上述したモノマー以外に、任意成分として、モノマーM1と共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)M3が共重合されていてもよい。かかる共重合性モノマーとしては、ポリマーpAの調製に使用し得るモノマーM3として例示したものと同様の共重合性モノマーを使用することができる。このような官能基含有モノマーは、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
ポリマーpAにおける共重合性モノマーM3の共重合割合は、合計で、全モノマー成分の35質量%以下(典型的には30質量%以下、例えば20質量%以下)とすることが適当であり、通常は10質量%以下(例えば5質量%以下)とすることが好ましい。共重合性モノマーM3を実質的に含有しない(例えば、M3の共重合割合が0.5質量%未満の)共重合組成であってもよい。
【0067】
これらモノマーを重合(典型的には、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合)させてポリマーpAを形成する方法としては、公知または慣用の重合方法(エマルション重合、バルク重合(塊状重合)、光重合、溶液重合等)を用いることができる。環境負荷低減等の観点から好ましい重合方法として、エマルション重合およびバルク重合が挙げられる。エマルション重合によると、ポリマーpAがエマルションの形態で得られ、かかる形態のpAはポリマーpAの水性エマルションとの混合が容易であるので好ましい。また、溶液重合にはポリマーpAの分子量を精度よく調整しやすいという長所がある。
重合を行う際のモノマー供給方法としては、上述した一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。モノマーの一部または全部(典型的には全部)をあらかじめ溶媒に溶解または分散させ、その溶液を反応容器内に一括、連続あるいは分割して供給してもよい。重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。重合時間(反応時間)は、例えば1〜12時間(典型的には4〜12時間)とすることができる。
【0068】
重合開始剤としては、公知または慣用の重合開始剤を特に制限なく使用することができ、例えば上述した重合開始剤を適宜選択して使用することができる。重合開始剤は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、所望のMwを有するポリマーpAが得られるように適宜調節することができる。例えば、ポリマーpAの合成に用いられる全モノマー成分100質量部に対して0.01〜10質量部(典型的には0.05〜5質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0069】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、n−ラウリルメルカプタン、tert−ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでもtert−ラウリルメルカプタンの使用が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、所望のMwを有するポリマーpAが得られるように適宜調節することができる。特に限定するものではないが、pAの合成に用いられる全モノマー成分100質量部に対する連鎖移動剤の使用量を、例えば0.1〜30質量部程度とすることができる。この使用量が1〜30質量部程度であってもよく、5〜30質量部(例えば10〜30質量部)程度であってもよい。
【0070】
なお、このようにして合成されたアクリル系ポリマーpAを反応容器から取り出すにあたっては、内容物の粘度を低下させて取出しを容易とするために、該反応容器中に適当な有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等)を少量添加してもよい。この手法は、例えば、アクリル系ポリマーpAの合成をバルク重合により行う場合に好ましく採用され得る。
かかる重合によって得られたアクリル系ポリマーpAは、必要に応じて適当な後処理を施した後、上記ポリマーpAの水性エマルションに添加することができる。これによりpAとpAとを含む水性エマルションを調製することができる。例えば、バルク重合や光重合等により揮発分を実質的に含まない形態のポリマーpAが得られた場合には、(1)該ポリマーpAをそのままpAの水性エマルションに添加して攪拌混合する方法のほか、(2)該ポリマーpAを水と乳化剤ともに強く攪拌してpAの水性エマルションを調製する後処理を行い、これをpAの水性エマルションに添加する方法等を採用することができる。また、ポリマーpAを溶液重合により合成した場合や上述のようにバルク重合後に内容物の取出しを容易とする等の目的で少量の有機溶剤を添加した場合等、有機溶剤を含む形態のpAが得られた場合には、有機溶剤を含む形態のpAが得られた場合には、(3)該ポリマーpAをそのままpAの水性エマルションに添加して攪拌混合する方法のほか、(4)該ポリマーpAを水と乳化剤ともに強く攪拌してpAの水性エマルションを調製する後処理を行い、これをpAの水性エマルションに添加する方法、(5)上記(4)で調製したpAの水性エマルションに対し、該エマルションを減圧して有機溶剤を除去する後処理をさらに行い、これをpAの水性エマルションに添加する方法等を採用することができる。エマルション重合によりポリマーpAを得た場合には、これをそのままpAの水性エマルションに添加する方法を好ましく採用することができる。
【0071】
ここに開示される技術の一態様では、ポリマーpAにおけるC2−18アルキル(メタ)アクリレートの共重合割合が60〜99.5質量%であり、ポリマーpAにおけるC2−18アルキル(メタ)アクリレートの共重合割合が60〜95質量%である。そして、ポリマーpAを構成するC2−18アルキル(メタ)アクリレートの組成から算出される溶解度パラメータをSPとし、ポリマーpAを構成するC2−18アルキル(メタ)アクリレートの組成から算出される溶解度パラメータをSPとしたとき、SPとSPとの差の絶対値として定義される溶解度差ΔSP(すなわち、ΔSP=|SP−SP|)が0.25(cal/cm1/2以上(約0.5(J/cm1/2以上)である。かかる態様によると、粗面接着性と他の特性とをより高度なレベルで両立させ得る。
【0072】
上記SP,SPとしては、Fedors式 :
SP=(E/v)1/2=(ΣΔe/ΣΔv1/2
ここで、Eは蒸発エネルギー、vはモル体積、Δeは各原子または原子団の蒸発エネルギー、Δvは各原子または原子団のモル体積である;を用いて算出される値を採用するものとする。2種以上のC2−18アルキル(メタ)アクリレートを含む共重合組成のアクリル系ポリマーについては、各C2−18アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーのSP値に、該C2−18アルキル(メタ)アクリレートのモル分率(すなわち、当該C2−18アルキル(メタ)アクリレートのモル数が全C2−18アルキル(メタ)アクリレートの合計モル数に占める割合)を乗じ、それらの値を合計することにより、そのアクリル系ポリマーを構成するC2−18アルキル(メタ)アクリレートについてのSP値を算出することができる。
【0073】
かかるΔSP特性を有する水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、ポリマーpAおよびポリマーpAが互いに相溶性に乏しいことから、比較的高い分子量を有するポリマーpAのマトリックスに低分子量のポリマーpAがドメインを形成した構造をとりやすい。このため、低分子量のポリマーpAが粘着シートの表面(粘着面)に偏在しがちである。これにより、ポリマーpAを配合することによる上述の効果(すなわち、単に粘着剤の弾性率を下げるだけではなく、官能基とウレタン等の発泡体およびポリマーpAとの相互作用によって粗面接着性をより効果的に向上させる効果)がよりよく発揮され得る。したがって、粗面接着性と他の特性とをより高レベルで両立させ得る。
【0074】
好ましい一態様では、ΔSPが0.30(cal/cm1/2以上(約0.6(J/cm1/2以上)である。ΔSPの上限は特に限定されないが、通常は0.70(cal/cm1/2以下(約1.4(J/cm1/2以下)が適当であり、典型的には0.60(cal/cm1/2以下(約1.2(J/cm1/2以下)である。好ましい一態様では、ΔSPが0.50(cal/cm1/2以下(約1.0(J/cm1/2以下)である。また、SPとSPとは、どちらが大きくてもよいが、例えばSP<SPである態様を好ましく採用することができる。
【0075】
SP値の計算に使用する各原子または原子団の蒸発エネルギー、モル体積等の値としては、日本接着学会誌,Vol.22,No.10(1986),p566等に記載される値を用いればよい。各種アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーのSP値は、例えば、ブチルアクリレートのホモポリマーが9.77(cal/cm1/2、2−エチルヘキシルアクリレートのホモポリマーが9.22(cal/cm1/2、エチルアクリレートのホモポリマーが10.20(cal/cm1/2、ラウリルアクリレートのホモポリマーが9.15(cal/cm1/2、イソオクチルアクリレートのホモポリマーが9.22(cal/cm1/2である。なお、SP値の単位としては通常(cal/cm1/2が用いられるが、これに2.045を乗じることによって、SP値の単位を、SI単位である(J/cm1/2に変換することができる。
【0076】
ポリマーpAとしては、SPが9.1〜10.0(典型的には9.2〜9.8、例えば9.3〜9.7)(cal/cm1/2の範囲にあるものを好ましく採用し得る。ポリマーpAとしては、SPが9.1〜10.0(典型的には9.2〜9.8)(cal/cm1/2の範囲にあって、かつΔSPが0.25(cal/cm1/2以上であるものを好ましく採用し得る。SP<SPである態様では、例えば、SPが9.2〜9.5(好ましくは9.3〜9.5)(cal/cm1/2の範囲にあり、SPが9.5〜9.8(典型的には9.6〜9.8)(cal/cm1/2の範囲にあって、かつΔSPが0.25(cal/cm1/2以上となるように、モノマーM1およびモノマーM1の組成を決定することが好ましい。
【0077】
好ましい一態様では、上記ポリマーpAが、2−エチルヘキシルアクリレートを少なくとも50質量%(典型的には50〜99質量%)含む共重合組成を有し、上記ポリマーpAが、ブチルアクリレートを少なくとも50質量%(典型的には50〜95質量%)含む共重合組成を有する。かかる態様によると、SP−SPが0.25(cal/cm1/2以上であるポリマーpA,pAを容易に実現することができる。なお、例えば、モノマーM1の30質量%がBAであり、70質量%が2EHAである場合、BAのモル分率は0.38、2EHAのモル分率は0.62であるので、ポリマーpAのSP値(SP)は、9.77×0.38+9.22×0.62=9.43(cal/cm1/2と算出される。
【0078】
上記粘着剤組成物には、必要に応じて、一般的な架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から選択される架橋剤が添加されたもの(後添加、すなわちアクリル系ポリマーの合成後に該架橋剤が添加されたもの)であってもよい。かかる架橋剤は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用し得る。あるいは、このような架橋剤の後添加が実質的に行われていない粘着剤組成物であってもよい。例えば、アクリル系ポリマーpA,pAの一方または両方(典型的には、ポリマーpAのみ)にアルコキシシリル基含有モノマーが共重合されている場合において、後添加の架橋剤を実質的に使用しない構成を好ましく採用し得る。これら架橋剤は、例えば、アクリル系ポリマーpA,pAの合計量100質量部に対して、例えば0.01〜10質量部の割合で添加することができる。
【0079】
ここに開示される水分散型粘着剤組成物は、粘着付与剤をさらに含み得る。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される一種または二種以上を使用することができる。なかでもロジン系樹脂の使用が好ましい。粘着付与剤の市販品としては、荒川化学工業(株)製の商品名「スーパーエステルE−865」(軟化点160℃)、「スーパーエステルE−865NT」(軟化点160℃)、「スーパーエステルE−650NT」(軟化点160℃)、「タマノルE−100」(軟化点150℃)、「タマノルE−200」(軟化点150℃)、「タマノル803L」(軟化点145〜160℃)、「ペンセルD−160」(軟化点150℃)、「ペンセルKK」(軟化点165℃)、ヤスハラケミカル(株)製の「YSポリスターSシリーズ」、「YSポリスターTシリーズ」、「マイティエースGシリーズ」等が挙げられるが、これらに限定されない。このような粘着付与剤は一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。高温環境下における凝集性を高めるという観点等からは、例えば軟化点が140℃以上の粘着付与剤が好ましい。軟化点が凡そ160℃以上またはそれ以上の粘着付与剤を用いることにより、より優れた特性の(例えば、凝集性と他の特性(粗面接着性、端末剥がれ防止性等)とをより高度なレベルで両立させた)粘着剤層が形成され得る。粘着付与剤の添加態様は特に限定されない。典型的には、該粘着付与剤が水に分散された水分散液(粘着付与剤エマルション)の形態で添加する。
【0080】
粘着付与剤の使用量は、アクリル系ポリマーpA100質量部に対して、例えば5質量部以上とすることができ、通常は10質量部以上(例えば15質量部以上)とすることにより良好な効果が得られる。他の粘着特性(例えば、耐反撥性および保持力の一方または両方)とのバランスの観点からは、粘着付与剤の使用量を40質量部以下とすることが適当であり、通常は30質量部以下(例えば25質量部以下)とすることが好ましい。粘着付与剤の量が少なすぎると、得られる粘着シートの耐反撥性、保持力、端末剥がれ防止性の少なくともいずれかが低下する場合がある。粘着付与剤の量が多すぎると、粗面接着性が低下する場合がある。
【0081】
上記粘着剤組成物は、ポリマーpA,pA以外のポリマー成分をさらに含有してもよい。かかるポリマー成分としては、ゴムまたはエラストマーの性質をもつポリマーが例示される。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ポリイソブチレン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS),アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリビニルアルキルエーテル(例えば、ポリビニルイソブチルエーテル)等が挙げられる。これらポリマー成分は、一種を単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。このようなポリマー成分は、例えば、該ポリマー成分が水に分散したエマルションの形態で、他の成分と混合することができる。該重合体成分の含有量(配合割合)は、不揮発分(固形分)基準で、アクリル系重合体100質量部に対して、通常50質量部以下(例えば5〜50質量部)とすることが適当である。かかる重合体成分の配合割合を5質量部以下としてもよく、該重合体成分を実質的に含有しない組成の粘着剤組成物であってもよい。
【0082】
ここに開示される粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、その粘着剤のゲル分率が例えば凡そ20〜55%程度(例えば25%以上40%未満、典型的には30%以上40%未満)であることが好ましい。かかるゲル分率を有する粘着剤(架橋剤を含む組成では架橋後の粘着剤)が形成されるように、モノマー組成、粘着剤組成物におけるモノマー成分の重合率、形成される共重合体の分子量、粘着剤層の形成条件(乾燥条件、光照射条件等)、架橋剤の種類および使用量等の条件を適宜設定するとよい。粘着剤のゲル分率が低すぎると、保持力や端末剥がれ防止性が不足しがちとなり得る。一方、ゲル分率が高すぎると、粘着力やタックが低下し、粗面接着性が不足がちとなり得る。
ここで「粘着剤のゲル分率」とは、次の方法により測定される値をいう。該ゲル分率は、粘着剤のうち酢酸エチル不溶分の質量割合として把握され得る。
【0083】
<ゲル分率測定方法>
粘着剤サンプル(質量Wg1)を平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(質量Wg2)で巾着状に包み、口をタコ糸(質量Wg3)で縛る。この包みを酢酸エチル50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間保持して粘着剤層中のゾル成分のみを上記膜外に溶出させた後、上記包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、該包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの質量(Wg4)を測定する。粘着剤のゲル分率Fは、各値を以下の式に代入することにより求められる。
ゲル分率F=[(Wg4−Wg2−Wg3)/Wg1]×100%
【0084】
なお、上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜としては、日東電工株式会社から入手可能な商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用することが望ましい。
【0085】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0086】
本発明により提供される粘着シートは、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える。かかる粘着剤層を基材(支持体)の片面または両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナー(剥離面を備える基材としても把握され得る。)に保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本発明により提供される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0087】
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1〜図6に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。このうち図1,図2は、両面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図1に示す粘着シート1は、基材10の各面(いずれも非剥離性)に粘着剤層21,22がそれぞれ設けられ、それらの粘着剤層が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す粘着シート2は、基材10の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22が設けられ、それらのうち一方の粘着剤層21が、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有している。この種の粘着シート2は、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層22を剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、粘着剤層22もまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
【0088】
図3,図4は、基材レスの両面粘着シートの構成例である。図3に示す粘着シート3は、基材レスの粘着剤層21の両面21A,21Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有する。図4に示す粘着シート4は、基材レスの粘着剤層21の一方の表面(粘着面)21Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有し、これを巻回すると、粘着剤層21の他方の表面(粘着面)21Bが剥離ライナー31の背面に当接することにより、他面21Bもまた剥離ライナー31で保護された構成とできるようになっている。
【0089】
図5,図6は、片面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図5に示す粘着シート5は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられ、その粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31で保護された構成を有する。図6に示す粘着シート6は、基材10の一面10A(非剥離性)に粘着剤層21が設けられた構成を有する。基材10の他面10Bは剥離面となっており、粘着シート6を巻回すると該他面10Bに粘着剤層21が当接して、該粘着剤層の表面(粘着面)21Bが基材の他面10Bで保護されるようになっている。
【0090】
片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートにおいて、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材としては、各種の樹脂フィルム類(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン製フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリ塩化ビニル等)、紙類(クラフト紙、和紙、上質紙等)、各種の繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等の布類(綿布、スフ布等、PE不織布、ビニロン不織布等)、ゴムシート類(天然ゴムシート等)、発泡ポリクロロプレンゴム等の発泡体からなる発泡体シート類(発泡ポリウレタンシート等)、金属箔類(アルミニウム箔等)、これらの複合体等を用いることができる。基材は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には10μm〜500μm(好ましくは10μm〜200μm)である。耐反撥性の観点からは、厚さ10μm〜50μmの基材の使用が有利である。なお、ここでいう「不織布」は、主として粘着テープその他の粘着シートの分野において使用される粘着シート用不織布を指す概念であって、典型的には一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布(いわゆる「紙」と称されることもある。)をいう。
【0091】
上記樹脂フィルム類は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、該基材の粘着剤層が設けられる面には、下塗り剤の塗付、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0092】
粘着剤層の厚みは、例えば5μm〜500μm(好ましくは5μm〜200μm)程度であり得る。ここでいう粘着剤層の厚みは、基材の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着シートの場合、その片面当たりの粘着剤層の厚みをいう。軟質ポリウレタン等の弾性発泡体に貼り付けて使用され得る粘着シートでは、該発泡体に対する良好な粗面接着性を得るために、該発泡体に貼り付けられる粘着剤層の厚みを30μm以上(好ましくは40μm以上)とすることが有利である。一方、他の粘着物性とのバランスや粘着シートの生産性等の観点からは、粘着剤層の厚みを100μm以下とすることが好ましい。ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、後述する特性(A),(B),(C)および(D)の少なくともいずれか(より好ましくは、これらのうちの二つ以上)の特性を満たす。粘着剤層の厚みは、好ましくは凡そ40μm〜100μm(典型的には50μm〜90μm程度、例えば80μm前後)である。例えば、上記厚みの粘着剤層を不織布の両面に設けてなる両面粘着シート、上記厚みの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート、基材の片面に上記厚みの粘着剤層を有する片面粘着シート、等であり得る。
【0093】
剥離ライナーとしては、粘着シートの分野において周知ないし慣用のものを適宜選択して用いることができる。例えば、各種の樹脂フィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体(例えば、紙の両面にオレフィン樹脂がラミネートされた積層構造のシート)等からなる基材の表面に、必要に応じて剥離処理が施された構成の剥離ライナーを好適に用いることができる。
【0094】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、以下の特性(A)を満たす。すなわち、23℃において、自由状態(外力が加わらない状態)における厚さが10mmの軟質ウレタンフォームに粘着シートを、該ウレタンフォームを厚さ2mmに(すなわち、上記自由状態を基準としてその20%の厚みに)圧縮する押圧力にて圧着し、圧着から30分後における180°引き剥がし粘着力(粗面接着性の指標としての、粗面接着力)を測定した場合において、該粘着力が3.0N/20mm以上(より好ましくは3.5N/20mm以上)である;を満たす。上記軟質ウレタンフォームとしては、株式会社イノアックコーポレーションの商品名「ECS」(灰色)(以下、単に「ECSフォーム」ということもある。)を使用する。このECSフォームは、密度22±2kg・m、硬さ(JIS K6400−2(2004)に規定するD法による。)107.9±22.6Nのポリエーテルウレタンフォームである。粗面接着力の上限は特に制限されないが、ECSフォーム自体の強度を考慮すると、通常は10N/20mm以下である。
【0095】
上記粗面接着力は、より具体的には、例えば以下のようにして測定することができる。まず、性能評価の対象となる粘着シートを所定幅の帯状(典型的には短冊状)にカットして試料片を作製する。このとき、上記粘着シートが基材レスまたは基材付きの両面粘着シートの形態である場合には、取扱性向上および粘着シートの補強のために、あらかじめ一方の粘着面に適当な裏打ち材を貼り付けておくことが好ましい。裏打ち材としては、例えば、厚み20μm〜30μm程度(典型的には25μm)のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好ましく採用することができる。試料片の幅(粘着面の幅)は、通常は20mmとすることが好ましいが、異なる幅Xmmの試料片を用いる場合であっても、該試料片を用いて得られた測定結果に20/Xを乗じることにより、その測定結果を幅20mm当たりの粘着力に換算することができる。以下の説明では、20mm幅の試料片を用いるものとする。試料片の長さは、被着体に対する十分な貼付け長さを確保し得るように設定すればよい。通常は、上記貼付け長さ(粘着面の長さ)を20mm以上とすることが適当であり、50mm以上とすることがより好ましい。
【0096】
23℃の環境下において、被着体としての厚さ10mmのECSフォームに上記試料片を、厚さ2mmのスペーサーを介して0.2m/分の速度で該被着体に圧着するようにして貼り付ける。このとき、上記スペーサーは、被着体が過度に圧縮されたり、あるいは圧縮が不足したりすることを防止する役割を果たす。
【0097】
このようにして被着体に貼り付けた試料片を、圧着から30分間23℃の環境下に保持した後、JIS Z 0237(2004)に準拠して、23℃、50%RHの測定環境にて引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力を測定する。この測定は、市販の引張試験機を用いて行うことができる。測定長さ(引き剥がし長さ)は10mm以上とすることが好ましく、20mm以上とすることがより好ましい。異なる試料片を用いて2回以上(より好ましくは3回以上)の測定を行い、それらの測定結果の平均値を採用することが好ましい。なお、引き剥がし開始直後または引き剥がし途中において、粘着シートが被着体との界面で剥離するのではなく、粘着シートとともに被着体の一部が残部から剥がれる剥離態様となった場合には、粗面接着力が少なくとも3.0N/20mm以上であるものと推測することができる。
【0098】
また、軟質ウレタンフォーム等のような弾性発泡体を被着体に貼り合わせる用途に使用され得る粘着シート(典型的には両面粘着シート)には、該発泡体を被着体の表面形状(曲面、段差のある表面等であり得る。)に沿って弾性変形させ、該発泡体が元の形状に戻ろうとする反撥力に抗して該発泡体を上記弾性変形させた形状に保持する性能(耐反撥性、すなわち発泡体の反撥力に耐える性能)が求められる場合がある。このような耐反撥性を有することは、発泡シートを基材(支持体)とする片面粘着シートにおいても好ましい。
【0099】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、以下の特性(B)を満たす。すなわち、厚さ10mmのECSフォームで裏打ちされた幅10mm、長さ50mmの粘着シートを試料片として使用し、該試料片の長手方向の一端から10mmまでの部分を厚さ2mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂板(ABS板)に圧着し、残りの部分をABS板の端から他方の面に折り返して圧着し、これを23℃、50%RHの環境下に24時間保持した後、上記試料片の長手方向の一端がABS板表面から浮いた距離(浮き距離)を測定する耐反撥性試験において、上記浮き距離が3.5mm以下(より好ましくは3.0mm以下、特に好ましくは1.0mm以下)である。
【0100】
上記耐反撥性試験は、より具体的には、例えば以下のようにして実施することができる。まず、粘着シートの背面(性能評価の対象となる粘着面とは反対側の面)に、厚さ10mmのECSフォームを貼り合わせる。上記粘着シートが基材レスまたは基材付きの両面粘着シートの形態である場合には、性能評価の対象となる粘着面とは反対側の粘着面に上記ECSフォームを圧着すればよい。上記粘着シートが片面粘着シートの形態である場合には、適当な両面粘着テープ(例えば、日東電工株式会社の両面粘着テープ、商品名「No.512」)を用いて、上記粘着シートの背面に上記ECSフォームを固定するとよい。このECSフォーム付き粘着シートを幅10mm、長さ50mmの短冊状に裁断して試料片を作製する。この試料片を用いて、後述する実施例に記載の手順に従って耐反撥性試験を実施する。
【0101】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、以下の特性(C):後述する実施例に記載の方法で実施される保持力試験において、保持時間が1時間以上である;を満たす。この保持力試験は、2つ以上(より好ましくは3つ以上)の異なる試料片を用いて行い、1時間以内に一つでも試料片が落下した場合には保持力不足(保持時間が1時間未満)と判定するものとする。上記保持試験において1時間後も試料片が保持されており、その1時間後におけるズレ幅(各試料片の平均値)が5mm以下である粘着シートがより好ましく、4mm以下である粘着シートがさらに好ましい。
【0102】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、以下の特性(D):後述する実施例に記載の方法で実施される端末剥がれ防止性試験において、浮き距離(両端の平均値)が5mm以下である;を満たす。上記浮き距離が4mm以下である粘着シートがより好ましく、3mm以下(特に好ましくは2mm以下、例えば1mm以下)である粘着シートがさらに好ましい。
【0103】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0104】
<アクリル系ポリマーエマルションeml1の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水40部を入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、この反応容器に2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社製,商品名「VA−057」)0.1部を投入し、系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションを3時間かけて徐々に滴下した。モノマーエマルションとしては、2EHA70部、BA30部、AA1.5部、MAA2.5部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社,商品名「KBM−503」)0.02部、n−ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)0.033部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部を、イオン交換水30部に添加して乳化したものを使用した。モノマーエマルションの滴下終了後、得られた反応混合物をさらに3時間60℃に保持した。系を常温まで冷却した後、10%アンモニウム水の添加によりpH7.5に調整して、アクリル系ポリマー(pA)の水性エマルション(水分散液)eml1を得た。
このエマルションeml1に含まれるアクリル系ポリマーのゲル分率は40%であった。このゲル分率は、エマルションeml1を130℃で2時間乾燥させたサンプルにつき、上述したゲル分率測定方法を適用することにより求めた。また、上述した方法に従って上記アクリル系ポリマーのTHF可溶分のMwを測定したところ、80×10であった。
【0105】
<例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、BA100部、AA(官能基として、一分子当たり1個のカルボキシル基を有する。)10部、tert―ラウリルメルカプタン23部、AIBN0.2部、酢酸エチル200部を加え、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間攪拌した後、引き続き攪拌しながら60℃に昇温して該温度に3時間、次いで75℃に3時間保持した。このようにして、BAを主モノマーとし、官能基含有モノマーとしてAAが共重合されたアクリル系ポリマー(pA)の溶液を調製した。このアクリル系ポリマー(pA)は、全モノマー成分を100%として、BAを91%、AAを9%含む共重合組成を有する。
固形分基準で、100部のポリマーエマルションeml1に対して、20部の上記アクリル系ポリマー溶液と、20部の粘着付与剤(軟化点170℃の重合ロジンエステル)とを加えて、水分散型粘着剤組成物を得た。これに増粘剤としてのポリアクリル酸(東亞株式会社製,商品名「アロンB−500」)を適宜加えて粘度調整したものを、剥離ライナー(三菱樹脂株式会社製、商品名「ダイヤホイルMRF−38」)の一方の面(剥離面)に付与し、100℃で3分間乾燥させて厚み80μmの粘着剤層を形成し、本例に係る粘着シートを得た。
【0106】
<例2>
AAの量を20部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を調製した。このアクリル系ポリマー(pA)の共重合組成は、BA 83%、AA 17%である。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例3>
AAの量を35部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 74%、AA 26%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例4>
AAの量を50部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 67%、AA 33%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0107】
<例5>
AA10部に代えて東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM5600」(アクリル酸ダイマー;官能基として、一分子当たり1個のカルボキシル基を有する。)30部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 77%、M5600 23%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例6>
M5600の量を40部とした他は例5と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 71%、M5600 29%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例7>
固形分基準で、100部のポリマーエマルションeml1に対し、粘着付与剤として20部(いずれも固形分基準)のロジン系樹脂(荒川工業株式会社製,商品名「KE−802」)を加えて、水分散型粘着剤組成物を得た。この水分散型粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0108】
<例8>
AAを使用しなかった他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液(重合組成;BA 100%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例9>
AA10部に代えて東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM5300」(ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート;官能基として、一分子当たり1個のカルボキシル基を有する。)20部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 83%、M5300 17%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例10>
AA10部に代えてアロニックスM5300 30部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 77%、M5300 23%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0109】
<例11>
AA10部に代えてアロニックスM5300 40部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 71%、M5300 29%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例12>
AA10部に代えてローディア日華株式会社製の商品名「SipomerPAM200」(モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル;官能基として、一分子当たり1個のリン酸基を有する。)20部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 83%、PAM200 17%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例13>
AA10部に代えてSipomerPAM200 30部を用いた他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 77%、PAM200 23%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0110】
<例14>
ポリマーエマルションeml1 100部当たりのアクリル系ポリマー溶液の配合量を20部に代えて5部(いずれも固形分基準)とした他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例15>
ポリマーエマルションeml1 100部当たりのアクリル系ポリマー溶液の配合量を20部に代えて40部(いずれも固形分基準)とした他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例16>
AAの量を20部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液(共重合組成;BA 83%、AA 17%)を用い、且つポリマーエマルションeml1 100部当たりの該ポリマー溶液の配合量を5部(いずれも固形分基準)とした他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例17>
ポリマーエマルションeml1 100部当たりのポリマー溶液の配合量を40部(いずれも固形分基準)とした他は例16と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0111】
<例18>
例1に係るポリマー溶液に代えて例6に係るポリマー溶液を用いた他は例15と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例19>
AAの量を20部とし、tert―ラウリルメルカプタンの量を0.5部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 83%、AA 17%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例20>
BAに代えてエチルアクリレート(EA)を用い、AAの量を11部とし、tert―ラウリルメルカプタンの量を15部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;EA 92%、AA 8%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
<例21>
BA100部に代えてBA83部とスチレン17部とを用い、AA10部に代えてMAA(官能基として、一分子当たり1個のカルボキシル基を有する。)11部を用い、tert―ラウリルメルカプタンの量を3部とした他は例1と同様にして、アクリル系ポリマー(共重合組成;BA 76%、スチレン 16%、MAA 8%)溶液を調製した。このポリマー溶液を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0112】
例1〜21に係る水分散型粘着剤組成物につき、使用されたポリマー溶液に含まれるアクリル系ポリマー(pAに対応するポリマー)の特性を表1に示す。Tgとしては、上述のように、各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率に基づいてFoxの式から算出される値を記載した。
【0113】
<重量平均分子量Mwの測定>
各例において使用したアクリル系ポリマー溶液に含まれるアクリル系ポリマー(pA)につき、該ポリマーを10mM−LiBr+10mMリン酸/DMF中に0.2%の濃度で含む測定用溶液を調製し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法に従い、下記条件にてポリスチレン校正曲線に基づく重量平均分子量(Mw)を算出した。
装置:TOSOH社製の型式「HLC−8120GPC」
カラム:TSKgel superAWM−H,
TSKgel superAW4000,
TSKgel superAW2500の3本を連結
カラム温度:40℃
流量:0.4mL/分
【0114】
<ゲル分率F
上述した方法に従って、各例に係る粘着剤のゲル分率Fを測定した。
【0115】
<粗面接着性評価>
被着体として、厚さ10mmの軟質ウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーションの商品名「ECS」(灰色))を幅30mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを用意した。
23℃の環境下において、例1〜17において作製した各粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを試料片とした。この試料片から剥離ライナーを剥がし、これを上記被着体に、厚さ2mmのスペーサーを介して、ラミネータを用いて0.2m/分の速度で圧着した。これを23℃に30分間保持した後、JIS Z 0237(2004)に準拠し、引張試験機を用いて、23℃、50%RHの測定環境にて引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(粗面接着力)測定した。測定長さは少なくとも10mm以上とした。各例に係る粘着シートからそれぞれ3つの試料片を作製し、それらを用いた3回の測定結果の平均値を算出した。
【0116】
<耐反撥性試験>
23℃の環境下において、各粘着シートの一方の粘着面を、厚さ10mmの軟質ウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーションの商品名「ECS」(灰色))に、1kgのローラを一往復させて圧着した。これを23℃に1日間保持した後、幅10mm、長さ50mmに裁断して試料片を作製した。
【0117】
図7に示すように、この試料片50の他方の粘着面から剥離ライナーを剥がし、これにより露出した粘着面の長手方向の一端50Aから10mmまでの部分(すなわち、幅10mm、長さ10mmの接着面積)を、厚さ2mmのABS板52の一方の面52Aにおける外縁部に、2kgのローラを一往復させて圧着した。このとき、試料片50の一端50Aから10mmの位置をABS板52の外周端に合わせ、試料片50の残りの部分がABS板52から外方向に垂直に延びるように試料片50を配置した。次いで、図8に示すように、試料片50の残りの部分(幅10mm、長さ40mm)をABS板52の端から他方の面52Bに折り返して貼り合わせた。なお、図8において、符号502は粘着シートを、符号504は該粘着シートの一方の粘着面に圧着されたウレタンフォームを示している。これを23℃、50%RHの環境下に24時間放置した後、試料片50の一端50Aの浮き距離を測定した。各例に係る粘着シートからそれぞれ3つの試料片を作製し、これらの試料片の浮き距離の平均値を算出した。なお、試料片50が面52Aから完全に剥離した場合、表2では「剥離」と示している。
【0118】
<保持力試験>
JIS Z 0237(2004)に準拠して保持力試験を行った。すなわち、23℃の環境下において、各粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅10mmにカットして試料片を作製した。該試料片の他方の粘着面から剥離ライナーを剥がし、これにより露出した粘着面を、被着体としてのフェノール樹脂板に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて貼り付けた。これを40℃の環境下に30分間放置した後、フェノール樹脂板を垂下し、試料片の自由端(下端)に500gの荷重を付与した。上記荷重が付与された状態で40℃の環境下に1時間放置した。最初の貼り付け位置からの試料片のズレ距離(mm)を測定した。各例に係る粘着シートからそれぞれ3つの試料片を作製し、それぞれの試料片に対して当該保持力試験を行った。1時間経過後、3つの試料片のうち一つでも試料片が落下した場合には、保持時間1時間未満と判定した(表2では「落下」と示している。)。それ以外の場合には、3つの試料片につき、それぞれ最初の貼り付け位置からの試料片のズレ距離(mm)を測定し、それらの平均値を算出した。
【0119】
<端末剥がれ防止性評価>
各粘着シートを幅10mm、長さ90mmのサイズにカットし、その粘着面を、同じサイズにカットしたアルミニウム片(厚さ0.4mm,幅10mm,長さ90mm)に貼り付けて試料片を作製した。この試料片の長手方向を、アルミニウム片側が内側となるようにして直径50mmの円柱に巻きつけ、約10秒間押しつけることにより円弧状に反らせた。この試料片から剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面をラミネータでPP板(厚さ2mm)に圧着した。これを23℃、RH50%の環境下に24時間保持した後に、該試料片の長手方向の両端部について、各端部がPP板表面から浮きあがった高さ(PP板表面から試料片端部までの距離)(mm)をそれぞれ測定した。各例に係る粘着シートからそれぞれ3つの試料片を作製し、それらの試料片の両端、合計6箇所についての測定結果の平均値を算出した。その結果(浮き距離)を、端末剥がれ防止性を示す特性値として表2に示した。なお、上記平均値が5mmを超える値であった場合には、表2において「剥離」と表示した。
【0120】
これら評価試験の結果を、pAとpAとの配合比と併せて表2に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
表2に示されるように、pAに相当するポリマーに加えてpAに相当するポリマーを含み、且つNが0.12<N≦0.50を満たす粘着剤組成物を用いてなる例1〜6に係る粘着シートは、いずれも3.5N/20mmを上回る粗面接着力を示し、且つ耐反撥性、保持力、端末剥がれ防止性にも同時に優れていた。
【0124】
一方、pAに相当するポリマーを含まない粘着剤組成物を用いてなる例7の粘着シートは、粗面接着力が0.3N/20mmと極めて低かった。pAに相当するポリマーの代わりに、官能基含有モノマーを構成成分に含まないアクリル系ポリマーを用いてなる例8の粘着シートにおいても、十分な粗面接着力は実現されなかった。また、pAに相当するポリマーとして、0.12<N≦0.50が満たされない低分子量ポリマーを用いてなる例9〜13,21の粘着シートは、いずれも例1〜6に比べて粗面接着性に劣り、中でも例9〜11の粘着シートは、さらに耐反撥性もが低い結果となった。低分子量ポリマーのTgが−15℃よりも高い例21の粘着シートも、また、例1〜6に比べて明らかに粗面接着性の低いものであった。ポリマーpAの配合量が5%未満であった例14,16の粘着シートでは、粗面接着性の向上効果が不十分であった。ポリマーpAの配合量が多すぎる粘着剤組成物を用いてなる例15,17,18の粘着シートでは、保持力および端末剥がれ防止性が低下する結果となった。pAに相当するポリマーとして、十分な量の官能基含有モノマー(AA)を構成成分に含みつつもMwが142000と所望範囲より大きすぎるポリマーが配合された例19の粘着シートでは、十分な粗面接着性が実現されなかった。
【符号の説明】
【0125】
1,2,3,4,5,6:粘着シート
10:基材
10A:基材の表面(非剥離性)
21,22:粘着剤層
21A,21B:粘着面
31,32:剥離ライナー
50:試料片
50A:一端
502:粘着シート
504:ウレタンフォーム
52:ABS板
52A:一方の表面
52B:他方の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒中にアクリル系ポリマーpAとアクリル系ポリマーpAとを含む水分散型粘着剤組成物であって、
前記ポリマーpAと前記ポリマーpAとの質量比は100:6〜100:35であり、
前記ポリマーpAは、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートM1を主モノマーとして含み、
前記ポリマーpAは、重量平均分子量Mwが1×10〜50×10であり、ガラス転移温度が−15℃以下であり、該ポリマーを構成するモノマーとして、アルキル基の炭素原子数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートM1と、官能基含有モノマーM2とを少なくとも含む共重合組成を有し、
前記ポリマーpAに含まれる前記モノマーM2由来の官能基数Nは、当該ポリマーpA100g当たり、0.12molより大きく且つ0.50mol以下である、
水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマーM2は、カルボキシル基含有モノマーの少なくとも一種を含む、請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記モノマーM2は、アクリル酸およびアクリル酸ダイマーの少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリマーpAは、テトラヒドロフラン可溶分の重量平均分子量Mwが30×10〜100×10である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリマーpAは、2−エチルヘキシルアクリレートを少なくとも50質量%含む共重合組成を有し、前記ポリマーpAは、ブチルアクリレートを少なくとも50質量%含む共重合組成を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリマーpA100質量部に対し、5〜40質量部の粘着付与剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着付与剤がロジン系樹脂である、請求項6に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項8】
前記水分散型粘着剤組成物から形成される粘着剤に占める酢酸エチル不溶分の質量割合が20〜55%である、請求項1から7のいずれか一項に記載される水分散型粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載される水分散型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−188513(P2012−188513A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52078(P2011−52078)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】