説明

水分率センサを用いた有機物発酵システム

【課題】有機物処理機の発酵槽内の水分率を検知することで良好な発酵処理が可能となる。
【解決手段】基部2にヒータ3が埋め込まれている。基部2にはフランジ4が取り付けられ、このフランジ4の取り付け穴5を介して有機物処理機の発酵槽に装着できる。フランジ4には断熱材を装着して熱が発酵槽側面等の金属部へ逃げることの防護策を講じることができる。温度検出部6が先端近辺にある温度センサ7が基部2に取り付けられ、熱伝導部8の先端部の温度が測定できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生ゴミ、食品残渣、畜糞等の有機物を発酵槽に投入し堆肥を生成する装置の内容物の水分率測定法および水分率センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機物処理機では撹拌や送気を一定のリズムで行っていることが多いが、投入量が一定しないこと、大気中の湿度が季節によって変動すること、槽内の発酵菌の相が変移することなどがあり、一定のリズムでは発酵状態が思わしくなく発酵不良をおこし処理能力が低下する、腐敗状態になる、または乾燥しすぎになるなどの問題点があった。このような状態にならないように、水分率センサを装備し、槽内内容物の水分率により運転モードを変更するものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、水分率センサに関しても検出のばらつきを少なくしたものが考案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−316131
【特許文献2】特開平11−253915
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の方法は発酵槽内の水分率を水分率センサでモニタしながら、水分率が高いときは撹拌量を増やす、送気量を増加させる、送気温度を上げるなどで水の蒸散量を増やすような運転モードに、また水分率が少ないときは蒸散量を少なくし乾燥を防ぐ運転モードに変更できるようになっている。
【0004】
しかし水分率センサが水分率を必ずしも確実に測定できないため発酵状況を制御することができないことがあった。
【0005】
有機物処理機で現在利用されている水分率センサの水分率測定の原理は、水分率センサの温度検出器とヒータ部が離れた位置にあり水分率が高いと水分によりヒータから熱検出器までの熱伝導中に熱が水分に奪われるため温度上昇が鈍く、逆に水分率が低いときは温度上昇率が速いことを利用したものである。しかし生ゴミ処理機など有機物処理機の槽内の内容物は均一な性状をしていないことが多くあり、極端なときはこぶし大程度の塊状になることあるいは内容物が壁面にこびりつく状態も起こりうる。
【0006】
塊状になる場合は水分率が高いときに撹拌によって高水分率の内容物が練られ団子状になることを意味する。この場合、塊状になった内容物相互間は空間で占められており、水分率センサの熱伝導部の長さが塊状径に対して短い場合は熱伝導部に接触する内容物の部分が塊状部である場合と空間部である場合とでは検出される水分率が大きく異なることが起こりうる。空間部が接触した場合は内容物が実際は高水分率であるに反し、逆に乾燥した数値を示すこととなる。
【0007】
水分率センサは発酵槽の側面あるいは底面に設置されることが多く、壁面にこびりつく状態になった場合は水分率センサが壁面にこびりつき乾燥したものの水分率を測定することになり内容物の大部分を占める発酵槽中心部にある内容物の正確な水分率測定ができないことが発生しうる。
【0008】
また水分率センサを発酵槽の側面あるいは底面に取り付ける場合、熱が側面や底面の金属に逃げる割合が大きく内容物の水分率が正確に測定できないことも発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような問題点を解決するため本発明の水分率センサは基部と熱伝導部で構成され基部に埋め込められたヒータで加熱がおこなわれ、熱が熱伝導部を伝熱して熱伝達部先端の温度検出器に達しその温度上昇具合で内容物の水分率を測定できるようになっている。熱伝導部の長さは槽内内容物が塊状になった場合の塊状径より長くしてあり、槽内にこびりつきができていても内容物の主要部に接触できるような長さを確保してある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水分率センサを生ゴミ処理機などの有機物処理機に設置し、水分率を正確にモニタして運転モード、撹拌時間、送気量などを水分率にあわせて変更することにより安定した有機物の分解がおこなわれ、腐敗臭などの悪臭の発生が少ない処理システムが構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0011】
図面を用いて本発明の水分率センサと有機物処理機に設置した場合を以下説明する。図1は水分率センサ本体1を示したもので基部2にヒータ3が埋め込まれている。図ではヒータ3が2本取り付けられた装置を示しているが2本に限定されるものではない。基部2にはフランジ4が取り付けられ、このフランジ4の取り付け穴5を介して有機物処理機の発酵槽に装着できる。図面には示してないがフランジ4には断熱材を装着して熱が発酵槽側面等の金属部へ逃げることの防護策を講じることができる。温度検出部6が先端近辺にある温度センサ7が基部2に取り付けられ、熱伝導部8の先端部の温度が測定できるようになっている。図は温度センサ7として熱電対タイプのものを図示してあるがその種類を特定するものではない。
【0012】
図2は水分率センサ本体1が発酵槽の側面9に設置され水分率検出物である槽内内容物10に接したところを示したものである。図2では発酵が良好に行われ槽内内容物10は塊状にならず、粒子の小さい均質である状態を示しており、このような場合は水分率センサ1の熱伝導部8に均一に槽内内容物10が接触する。槽内内容物10の水分率が高い場合、ヒータ3で発生した熱が熱伝導路8をつたわり温度センサ7の温度検出部6へ到達する間に大きな熱が奪われる。それに比べ水分率が少ない場合は内容物への熱の奪われ方が少ない。ヒータ3へ通電する前の温度と一定時間後の温度差により槽内内容物10の水分率が測定可能である。
【0013】
図3は現在一般に使われている熱伝達式水分率測定器11を発酵槽の側面9に装着した断面図を示す。この水分率測定器は本発明と同様にヒータ12と温度センサ13を装備しているが小型化されているため熱伝達部14が小さいのが特徴である。
【0014】
しかし図4に示すように、現在一般に使われている熱伝達式水分率測定器11を発酵槽の側面9に装着したもので発酵槽内の内容物がこびりつき15になったものあるいは塊状16になった場合は熱伝達部14が内容物の主要部に達しないため水分率は常時乾燥状態を示し、水分率の実態とかけ離れたものとなる。またこびりつきにはならなくとも塊状16になった場合は熱伝達部14に塊状16が直接接触することはあまりなく、空気が接触することになり、その結果実際の水分率と違い乾燥状態を示すこととなる。
【0015】
これに対し図5は本発明の請求項1に記載の水分率センサ1を発酵槽の側面9に装着したもので発酵槽内の内容物がこびりつき15あるいは塊状16になった状態を示している。こびりつき15の厚さは有機物処理機の発酵槽の大きさにより異なるが最大限100ミリ程度であり熱伝達部8の長さを100ミリ以上にすることで内容物主要部の水分率が測定可能である。内容物が塊状16になった場合は熱伝達部に塊状部分だけでなく空気が接触する部分がある程度発生するが図3に示す現在一般に使われている熱伝達式水分率測定器11を発酵槽の側面9に装着したものに較べ実態に近い水分率を示す。取り付けは水分率センサ1を発酵槽の側面9に垂直よりすこし斜めにして内容物の抵抗を防ぐようにしているが特に取り付け方法を規定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の水分率センサを用いた有機物発酵システムは生ゴミ処理、畜糞処理などに利用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明の水分率センサの一部断面を示す全体図
【図2】 本発明の水分率センサを有機物発酵槽に装着した様子を示す全体図
【図3】 現在一般に使用されている水分率センサの有機物発酵槽に装着した様子を示す全体図
【図4】 有機物発酵槽内容物が塊状やこびりつきになった状態の有機物発酵槽に現在一般に使用されている水分率センサを装着した様子を示す模式図
【図5】 有機物発酵槽内容物が塊状やこびりつきになった状態の有機物発酵槽に本発明の水分率センサを装着した様子を示す模式図
【符号の説明】
【0018】
3 ヒータ
6 熱検出部
8 熱伝導部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部にヒータを設け棒状の突起部の先端近くに温度検知部を設け槽内の被検出物の性状に左右されず水分率を測定できる水分率センサ
【請求項2】
請求項1に記載した水分率センサを装備し発酵槽内の水分率を測定し水分率に応じて運転方法を調節できる有機物処理機

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−162580(P2006−162580A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382244(P2004−382244)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000177058)三友工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】