説明

水加熱容器

【課題】フック部材の不完全閉じ状態を判別し易い水加熱容器を提供する。
【解決手段】フック部材8が、蓋体200を閉じ位置に位置させたときに容器本体100の径方向に前後進自在で且つ前進方向に付勢された状態で、蓋体200に設けられ、フック部材8の後下がり傾斜状の下面8sが容器本体100に当接した状態から、蓋体200が下向きに移動されて閉じ位置に位置されるに伴って、フック部材8の前端部8Afが嵌まり込んで蓋体200を閉じ位置に保持する凹部25が、容器本体100に設けられ、フック部材8の前端部8Afが、最前端8tよりも後退した後退部8rを有する形状に構成され、凹部25を形成する凹部形成部材12に、フック部材8の前端部8Afが凹部25に嵌まり込んだ状態で、フック部材8の前端部8Afにおける後退部8rのみを当接させてフック部材8の前進を阻止する前進阻止受け部36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記蓋体を前記閉じ位置で前記容器本体の開口部に位置させたときに前記容器本体の径方向に前後進自在で且つ前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、前記フック部材の前端部の下面が、後方側ほど上面から遠ざかる形態の後ろ下がり傾斜状に構成され、前記フック部材の前記後下がり傾斜状の下面が前記容器本体に当接した状態から、前記蓋体が下向きに移動されて前記閉じ位置に位置されるに伴って、前記フック部材の前端部が嵌まり込んで前記蓋体を前記閉じ位置に保持する凹部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる水加熱容器は、フック部材の後下がり傾斜状の下面が容器本体に当接するように、蓋体を容器本体の開口部に位置させた状態から、その蓋体を閉じ位置に向けて下方に移動させることにより、フック部材をその前進方向に向く付勢力に抗して後退させつつ凹部の上縁部を乗り越えさせて、フック部材の前端部を凹部に嵌め込み、それによって、蓋体を閉じ位置に保持させるものである。
ちなみに、このような水加熱容器の具体例としては、例えば、電気ケトル、電気ポット、加湿器、炊飯器等が挙げられる。
【0003】
フック部材は、蓋体の側周面から突出する状態で設けられており、蓋体を閉じ位置に向けて下方に移動させることにより、蓋体が容器本体の開口部に嵌まり込み、それに伴って、フック部材が凹部に嵌まり込むように構成されている。
又、フック部材の前端部の下面が後下がり傾斜状に形成されており、蓋体を閉じ位置に向けて下方に移動させるときに、フック部材を容器本体における凹部の上方の部材に当接させて付勢力に抗してスムーズに後退させると共に、スムーズに凹部の上縁部を乗り越えさせて凹部に嵌め込ませることが可能に構成されている。なお、フック部材の前端部の下面が後下がり傾斜状に形成されることにより、フック部材の前端は、後述する半掛かり状態となることを防止するために、ある程度尖った状態となっている。
【0004】
ところで、凹部は、容器本体における開口縁の内側等に設けられるものであるが、蓋体が閉じ位置で容器本体に保持されているときに、凹部やその凹部に嵌め込まれているフック部材が外部から見えないようにして外観性を向上するために、凹部を容器本体の外周側に貫通しないように(即ち、外周側に底を有する有底状に)設けることになる。
一方、フック部材を、凹部に嵌まり込んだ状態で最前端が凹部の底部に当接するように設けると、フック部材の凹部への嵌め込み(蓋体の完全閉止)が繰り返されるのに伴って、凹部の底部に衝突するフック部材の最前端が磨耗して、その最前端面が拡がる。このように、フック部材の最前端面が上下方向で拡がった面となると、フック部材の最前端(最前端面)が、蓋体を下方に移動させるときに凹部の上方の部材や凹部の上縁部に引っ掛かり易くなり、これら凹部の上方の部材や凹部の上縁部に引っ掛かって釣合った状態(以下、半掛かり状態と記載する場合がある)となり易くなる。従って、容器本体の開口部が蓋体にて適切に閉じられない状態が起こり易くなり、このような状態で、万が一水加熱容器を誤って転倒させた場合は、蓋体が開いてしまう虞がある。
【0005】
そこで、従来では、フック部材が凹部に嵌まり込むときに、フック部材の最前端が凹部の底部に衝突しないようにすべく、フック部材の前端部が凹部に嵌まり込むときに、その最前端が凹部の底部に達する手前で前進を阻止すべくフック部材を受け止める前進阻止受け部が、蓋体に設けられていた(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3220565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水加熱容器では、フック部材が凹部に嵌まり込むときにフック部材の最前端が凹部の底部に衝突しないようにするための前進阻止受け部が、蓋体に設けられている結果、蓋体に設けられたフック部材は前進阻止受け部により常に受け止められて、フック部材がその可動範囲における最前部に位置する状態では、蓋体の側周面からのフック部材の突出長さが常に短くならざるを得ない。
即ち、フック部材が凹部に嵌まり込んだとき(蓋体が閉じ位置にあるとき)、及び、フック部材が凹部に嵌め込まれずに凹部の上方に位置する状態で、蓋体が容器本体の開口部に載置されたときの何れの場合でも、フック部材が蓋体に設けられた前進阻止受け部により受け止められる。また、フック部材が凹部に嵌まり込んだとき(蓋体が閉じ位置にあるとき)は、フック部材の最前端が凹部の底部に衝突しない。このため、フック部材がその可動範囲における最前部に位置する状態では、フック部材の最前端は、凹部の上方において凹部の底部に相当する位置よりも当然に蓋体の径方向内方側に位置することになる。従って、フック部材が凹部に嵌め込まれずに凹部の上方に位置する状態で、蓋体が容器本体の開口部に載置されたときにおけるフック部材の突出長さを、フック部材が凹部に嵌まり込んだとき(蓋体が閉じ位置にあるとき)におけるフック部材の突出長さよりも長くすることはできず、蓋体の側周面からのフック部材の突出長さが常に短くなる。
【0008】
従って、従来の水加熱容器では、フック部材の後下がり状の下面が容器本体における凹部の上方の部材に受け止められた状態で、蓋体が容器本体の開口部に載置された状態では、フック部材が蓋体の側周面から突出する突出長さが短くなるので、蓋体の外周部と容器本体の開口部の縁部との隙間が狭くなり、蓋体により容器本体の開口部が確実に閉じられていない状態(以下、不完全閉じ状態と称する場合がある)となっていても、使用者は、当該隙間を視認し難く不完全閉じ状態を判別し難い。
【0009】
一方、上述のような前進阻止受け部を省略して、フック部材が凹部に嵌まり込むときにフック部材の最前端が凹部の底部に衝突するようにすると、蓋体が容器本体の開口部に載置された状態において、フック部材が蓋体の側周面から突出する突出長さを長くすることが可能となる。しかしながら、上述したように、フック部材の最前端が磨耗し易くなるので、半掛かり状態になり易く、不完全閉じ状態を判別し難い。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フック部材の前端が尖った状態を確保しながら、フック部材の不完全閉じ状態を判別し易い水加熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る水加熱容器は、上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記蓋体を前記閉じ位置で前記容器本体の開口部に位置させたときに前記容器本体の径方向に前後進自在で且つ前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、前記フック部材の前端部の下面が、後方側ほど上面から遠ざかる形態の後ろ下がり傾斜状に構成され、前記フック部材の前記後下がり傾斜状の下面が前記容器本体に当接した状態から、前記蓋体が下向きに移動されて前記閉じ位置に位置されるに伴って、前記フック部材の前端部が嵌まり込んで前記蓋体を前記閉じ位置に保持する凹部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器であって
その特徴構成は、前記フック部材の前端部が、最前端よりも後退した後退部を有する形状に構成され、
前記凹部を形成する凹部形成部材に、前記フック部材の前端部が前記凹部に嵌まり込んだ状態で、前記フック部材の前端部における前記後退部のみを当接させて前記フック部材の前進を阻止する前進阻止受け部が設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、フック部材の前端部が凹部に嵌まり込むと、フック部材の前端部における後退部のみが前進阻止受け部に当接することにより、フック部材の最前端が凹部の底部に衝突することなくフック部材の前進が阻止されるので、凹部へのフック部材の嵌め込みが繰り返されても、フック部材の最前端の磨耗を抑制することができる。これにより、フック部材の最前端を尖った状態に維持することができ、フック部材の後下がり傾斜状の下面が容器本体における凹部の上方の部材に当接するように、蓋体を容器本体の開口部に位置させた状態(以下、フリー状態という場合がある)から、蓋体を嵌め込み位置(閉じ位置)に向けて下方に移動させるときに、フック部材の最前端が凹部の上方の部材や凹部の上縁部に引っ掛かる半掛かり状態による不完全閉じ状態の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
加えて、フック部材の前端部における後退部のみを受け止める前進阻止受け部は、容器本体の凹部形成部材に設けられているので、フック部材が、フリー状態において蓋体の側周面から突出する突出長さを、嵌め込み位置(閉じ位置)における突出長さよりも長くすることができる。即ち、フック部材の後退部が容器本体の前進阻止受け部に当接した状態の嵌め込み位置(閉じ位置)におけるフック部材の最前端は、凹部の底部に相当する位置よりも径方向内方側に位置することとなる。一方で、フリー状態では、フック部材の後退部が容器本体の前進阻止受け部に当接しないので、フック部材の最前端は、凹部の底部に相当する位置よりも径方向外方に位置することが可能となる。これにより、フック部材におけるフリー状態での蓋体の側周面からの突出長さが長くなり、フリー状態では、蓋体の外周部と容器本体の開口部の縁部との隙間を大きくすることが可能となる。従って、不完全閉じ状態による隙間は比較的大きくなるので、当該隙間を使用者が容易に視認でき、不完全閉じ状態を判別し易いようにすることができる。
よって、フック部材の前端が尖った状態を確保しながら、フック部材の不完全閉じ状態を判別し易い水加熱容器を提供することができるようになった。
【0014】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記凹部形成部材が、前記容器本体の開口部の縁部を形成する口縁部材にて構成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、容器本体の開口部の縁部を形成する口縁部材に、凹部が設けられるので、蓋体を容器本体の開口部から離間させると、容器本体の開口部の略全体が開放されることになる。
従って、内容器への湯水等の供給や、内容器内の洗浄を行い易いようにすることができた。
【0016】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記後退部が、前記フック部材の幅方向両側に振り分けて1対設けられ、
前記前進阻止受け部が、前記1対の後退部に対応して、一対設けられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、フック部材の先端部における幅方向両側の1対の後退部が一対の前進阻止受け部により受け止められるので、フック部材は、その最前端が凹部の底部に衝突しない状態の適切な姿勢で確実に凹部内に保持される。
従って、フック部材の最前端の磨耗を的確に抑制することができるので、半掛かり状態による不完全閉じ状態の発生をより効果的に抑制することができるようになった。
【0018】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記後退部及び前記前進阻止受け部夫々が、互いに面接触する状態で当接するように、面状に構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、フック部材が凹部に嵌まり込むときに、フック部材の後退部と前進阻止受け部とが面接触する状態で当接するので、後退部と前進阻止受け部との当接を確実なものとすることができる。
また、後退部と前進阻止受け部とが面接触する状態で衝突するので、フック部材が凹部に嵌まり込むときに比較的大きな衝突音が発生し、その衝突音により使用者は蓋体が容器本体に適切に保持されたことを認識し易くなる。
【0020】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記フック部材又は前記蓋体の外周部を形成する蓋カバーに、半掛かり状態表示部が設けられ、
前記フック部材が前記凹部形成部材の前進阻止受け部に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、前記フック部材が前記嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢との間で、前記蓋カバーと前記フック部材との干渉状態の違いにより、前記半掛かり状態表示部が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、半掛かり状態表示部により、フック部材が嵌め込み位置(閉じ位置)に位置する嵌め込み姿勢にあるときと、嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢にあるときとを的確に区別して判別することができる。
つまり、フック部材が嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢にあるときは、フック部材が半掛かり状態となっている虞があるので、不完全閉じ状態表示部により、半掛かり状態を的確に認識することができる。
従って、フック部材が半掛かり状態による不完全閉じ状態を使用者が的確に認識することができるようになった。
【0022】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記フック部材又は前記蓋体の外周部を形成する蓋カバーに、フリー状態表示部が設けられ、
前記フック部材が前記凹部形成部材の前進阻止受け部に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、前記フック部材が前記嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢との間で、前記蓋カバーと前記フック部材との干渉状態の違いにより、前記フリー状態表示部が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、フリー状態表示部により、フック部材が嵌め込み位置(閉じ位置)に位置する嵌め込み姿勢にあるときと、フック部材が嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢にあるときとを的確に区別して判別することができる。
つまり、フック部材が嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢にあるときは、フック部材がフリー状態になっているので、フリー状態表示部により、フリー状態を的確に認識することができる。
従って、フック部材がフリー状態になっていることによる不完全閉じ状態を使用者が的確に認識することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電気ケトルの外観を示す斜視図
【図2】ケトル本体が電源プレートから持ち上げられた状態での電気ケトルの斜視図
【図3】電気ケトルの縦断側面図
【図4】ケトル本体が電源プレートから持ち上げられた状態での電気ケトルの下部の縦断側面図
【図5】蓋体を容器本体から分離した状態でのケトル本体の斜視図
【図6】蓋カバーを省略した状態でのケトル本体の斜視図
【図7】蓋カバーが設けられた状態での図6のVII−VII矢視図
【図8】蓋カバーが設けられた状態での図6のVII−VII矢視図
【図9】蓋カバーが設けられた状態での図6のIX−IX矢視図
【図10】フック部材が嵌め込み姿勢にある状態を説明する図
【図11】フック部材が嵌め込み姿勢にある状態でのケトル本体の要部の横断面図
【図12】フック部材が半掛かり状態にある状態を説明する図
【図13】フック部材がフリー状態にある状態を説明する図
【図14】別実施形態に係るフック部材、凹部及び前進阻止受け部を示す要部の横断面図
【図15】別実施形態に係るフック部材、凹部及び前進阻止受け部を示す要部の横断面図
【図16】別実施形態に係るフック部材、凹部及び前進阻止受け部を示す要部の横断面図
【図17】別実施形態に係るフック部材が半掛かり状態にある状態でのケトル本体の要部の縦断側面図
【図18】別実施形態に係るフック部材がフリー状態にある状態でのケトル本体の要部の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明を水加熱容器の一例としての電気ケトルに適用した場合の実施形態を説明する。
図1〜図3に示すように、電気ケトルは、電源プレートPとその電源プレートPに載置自在なケトル本体Kとを備えて構成されている。
ケトル本体Kの内部には、湯水を貯留する内容器1が設けられ、ケトル本体Kの外周部には、ケトル本体Kを持ち上げるための把手2が設けられ、並びに、ケトル本体Kの外周部の上部側には、内容器1内の湯水を注ぐ注ぎ口3が設けられている。把手2及び注ぎ口3は、ケトル本体Kの上部の中心に対して互いに反対側に振り分けて設けられている。
図5にも示すように、ケトル本体Kは、内部に前記内容器1を有して上部が開口した概ね有底円筒状の容器本体100と、その容器本体100の開口部を開閉自在な概ね円盤状の蓋体200とを備えて構成されている。そして、蓋体200は、容器本体100の開口部に対して着脱自在で、その開口部に嵌めこまれた状態で容器本体100に装着されることにより、その開口部を閉じるように構成されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、ケトル本体Kには、内容器1内の湯水を加熱する電気ヒータ4が備えられ、外部から供給される電力を電気ヒータ4に供給する受電機構5が底面の中央部に位置する状態で備えられ、並びに、図1及び図2に示すように、操作盤6が側周面の下部に位置する状態で備えられている。ちなみに、図示を省略するが、操作盤6には、電気ヒータ4への通電の開始及び停止を指令する運転スイッチ等が備えられている。
図2〜図4に示すように、電源プレートPには、電源コード(図示省略)を通して供給される電力を外部に出力する給電機構7が上面の中央部に位置する状態で備えられている。
そして、ケトル本体Kを電源プレートPに載置した給電姿勢において、受電機構5と給電機構7とが導通状態に接続されて、給電機構7から受電機構5を介して電気ヒータ4に給電されて、内容器1内の湯水が加熱されるように構成されている。
又、把手2を把持してケトル本体Kを持ち上げて注ぎ口3が下向きになるように傾けることにより、内容器1内の湯水を注ぎ口3から注ぐことになる。
【0027】
図1及び図2に示すように、ケトル本体Kの蓋体200には、蓋体200を容器本体100の開口部を閉じる閉じ位置に保持する一対のフック部材8、注ぎ口3からの内容器1内の湯水の流出を許容するか否かに切り換えるための弁操作具9、及び、内容器1で発生する蒸気を放出するための蒸気口10等が設けられている。
【0028】
次に、図3〜図9に基づいて、ケトル本体Kについて説明を加える。
尚、図6は、蓋体200の蓋カバー16(詳細は後述する)を省略した状態でのケトル本体Kの斜視図であり、図7及び図8は、蓋カバー16を設けた状態での図6におけるVII−VII矢視図であり、図9は、蓋カバー16を設けた状態での図6におけるIX−IX矢視図である。
【0029】
図3に示すように、容器本体100は、概ね、有底円筒状の外郭部材11の口縁部に口縁部材12を嵌め込むと共に、その口縁部材12に有底円筒状の前記内容器1を吊り下げ支持して構成され、更に、中空状の前記把手2が口縁部材12と外郭部材11とに跨って取り付けられている。
図3及び図4に示すように、前記電気ヒータ4は、内容器1の底面に当接する状態で設けられている。
外郭部材11の底部の中心部には、その底面から引っ込んだ状態で、前記給電機構7を嵌め込むことが可能な円状の給電機構嵌め込み用凹部13が設けられ、その給電機構嵌め込み用凹部13内に前記受電機構5が設けられている。
その受電機構5は、ピン状の中心電極5aと、その中心電極5aの外周部に設けられた外側電極5bと、その外側電極5bの外周部に設けられたアース用電極(図示省略)とを備えて構成されている。ちなみに、中心電極5aと外側電極5bは、後述する給電機構7の中心穴7Aと環状穴7Bに夫々設けられた給電用の中心電極7a、外側電極7bに接続されて、それらの電極から供給される電力を受ける受電用の電極であり、アース用電極は、後述する給電機構のアース用電極に接続される。
【0030】
図3、図7及び図8に示すように、口縁部材12における把手2の上端部の取付部には、蓋体200に設けられた蒸気検知用通路22(詳細は後述する)を通して内容器1から導かれる蒸気を検知する蒸気検知センサ14が設けられている。
図示を省略するが、外郭部材11の底部と内容器1の底部との間の空間には、制御部が設けられている。この制御部は、操作盤6からの指令や蒸気検知センサ14の検出情報に基づく電気ヒータ4への通電の制御等を行うように構成されている。
【0031】
図3、図5、図7及び図9に示すように、蓋体200は、蓋本体部材15、その蓋本体部材15の上方の蓋カバー16、蓋本体部材15の下方の内蓋板17、及び、その内蓋板17の外周部のシール材18等を一体的に組み付けて構成されている。
容器本体100の口縁部材12には、前記注ぎ口3の下方部分を構成する溝状部12mが形成され、蓋体200の蓋本体部材15には、前記注ぎ口3の上方部分を構成する庇部15eが設けられている。
そして、口縁部材12の溝状部12mの上方を蓋本体部材15の庇部15eが覆う状態となる蓋体装着用の相対位置関係で、蓋体200を容器本体100の開口部に装着すると、口縁部材12の溝状部12mと蓋本体部材15の庇部15eにより、筒状の注ぎ口3が形成されることになる。
【0032】
図7及び図8に示すように、内蓋板17には複数の孔17hが形成され、蓋体200における蓋本体部材15と内蓋板17との間には、内蓋板17に形成された複数の孔17hを通して容器本体100の内容器1に連通する容器連通空間19が形成されている。
そして、蓋本体部材15には、基端が容器連通空間19に臨み且つ先端が注ぎ口3内に延びる注ぎ用通路20、及び、基端が容器連通空間19に臨み且つ先端が蓋体200の上面部にまで延びる蒸気放出用通路21が形成され、その蒸気放出用通路21の先端開口部が前記蒸気口10として機能する。
図1及び図5にも示すように、蒸気口10は、蓋体200の上面における注ぎ口3と把手2を結ぶ線上における把手2の側に偏った位置に開口されている。
又、図7及び図8にて示すように、蓋本体部材15には、蒸気放出用通路21から分岐する前記蒸気検知用通路22が形成され、図5にも示すように、その蒸気検知用通路22は、その先端が、蓋体200が容器本体100に装着された状態で、蓋本体部材15の側周部において口縁部材12における把手2の取付部に対向する箇所に開口するように形成されている。
【0033】
詳細な図示を省略するが、図3、図7及び図8に示すように、蒸気放出用通路21における蒸気検知用通路22の分岐箇所よりも上流側の部分には、電気ケトルが転倒すると蒸気放出用通路21を閉じるように移動すべく、2個の錘体23が設けられている。
従って、電気ケトルが転倒しても、2個の錘体23が蒸気放出用通路21を閉じるように移動するので、内容器1内の湯水が蒸気口10や蒸気検知用通路22の先端開口から漏出するのが防止される。
【0034】
前記蒸気検知センサ14は、蓋体200が容器本体100に装着された状態で、蓋体200の蒸気検知用通路22の先端開口部に臨むように、口縁部材12に取り付けられている。
電気ヒータ4による加熱により内容器1内の水が沸騰して蒸気が発生すると、その蒸気が蒸気放出用通路21を通して蒸気口10に導かれてその蒸気口10から放出されると共に、蒸気放出用通路21及び蒸気検知用通路22により蒸気検知センサ14に導かれる。
そして、前記制御部は、蒸気検知センサ14が蒸気を感知すると、電気ヒータ4への通電を遮断するように構成されている。
【0035】
図5、図6及び図9に示すように、一対のフック部材8の夫々は、蓋体200を閉じ位置で容器本体100の開口部に位置させたときに容器本体100の径方向に前後進自在で且つコイルバネ24により前進方向(蓋体200の径方向外方側、即ち、容器本体100の径方向外方側)に付勢された状態で設けられている。
又、各フック部材8の前端部8Afの下面8sが、後方側ほど上面から遠ざかる形態の後ろ下がり傾斜状に構成されている。
容器本体100には、フック部材8の後下がり傾斜状の下面8sが容器本体100に当接した状態から、蓋体200が下向きに移動されて閉じ位置に位置されるに伴って、フック部材8の前端部8Afが嵌まり込んで蓋体200を閉じ位置に保持する凹部25が設けられている。
一対のフック部材8は、蓋体200の中心に対して互いに反対側に振り分けて一対設けられ、凹部25も、各フック部材8にそれぞれ対応するように一対設けられている。
【0036】
図5、図6及び図9に示すように、各フック部材8は、側面視形状が概ねL字状である。以下、側面視形状がL字状のフック部材8において、横方向に沿う辺部に相当する部分を嵌め込み用辺部8Aと称し、上下方向に沿う辺部に相当する部分を操作用辺部8Bと称する場合がある。
そして、一対のフック部材8の夫々は、嵌め込み用辺部8Aの前端が蓋体200の径方向外方を向き、その嵌め込み用辺部8Aの前端が蓋本体部材15の側周面から突出する状態で、コイルバネ24により蓋体200の径方向外方に向けて付勢されて蓋本体部材15に設けられている。
【0037】
図5及び図9に示すように、前記の各凹部25は、容器本体100の口縁部材12に、蓋体200の径方向外方側の端部、即ち、外径側の底部25bが閉じられた有底状に形成され、各凹部25の上縁部には、口縁部材12の内方側に突出する形態で庇26が設けられている。この庇26の上面26sは、先端側(フック部材8の後方側に相当する)ほど下方に位置する形態(以下、前下がり状と記載する場合がある)の傾斜状に形成されている。
【0038】
図3、図7及び図8に示すように、蓋体200には、弁体27の上下動により注ぎ口3からの内容器1内の湯水の流出を許容する開き状態と阻止する閉じ状態とに切り換え自在な弁機構Vが設けられている。
更に、蓋体200には、支点周りに揺動して弁体27を作用点9wにて上下動させて弁機構Vを開き状態と閉じ状態とに切り換える前記弁操作具9が、蓋体200が容器本体100の開口部に嵌め込まれた状態で、力点に相当する操作部9hが把手2の上方に位置するように設けられている。
【0039】
図7及び図8に示すように、弁機構Vは、蓋本体部材15により形成される弁ケース28と、その弁ケース28に上下動自在に保持された前記弁体27と、その弁体27を上方側に付勢することにより弁座29に押し付けるコイルバネ30等を備えて構成されている。
つまり、図7に示すように、弁体27を下方側に押し下げる力が作用しない状態では、コイルバネ30の付勢力により弁体27が弁座29に押し付けられる状態に保持されることになり、弁機構Vが注ぎ用通路20を閉じる閉じ状態に保持されることになる。
【0040】
図6〜図8に示すように、前記弁操作具9は、把手2の側の力点側てこ部材91と弁機構Vの側の作用点側てこ部材92とを、一方が揺動するのに伴って他方が揺動するように、把手2と弁機構Vとの間において端部同士を連結した状態で設けて構成されている。
そして、力点側てこ部材91が、把手側の端部を力点に相当する操作部9hとして把手2の上方に位置させた状態で、長手方向の中間部を支点P1として水平方向の軸心周りに揺動自在に設けられ、作用点側てこ部材92が、その把手側の端部が力点側てこ部材91の弁機構側の端部に連結されて、力点側てこ部材91の上下方向揺動に連動して上下方向に揺動するのに伴って、弁体27を上下動させて弁機構Vを開き状態と閉じ状態とに切り換えるように設けられている。
具体的には、作用点側てこ部材92が、その弁機構側の端部が弁体27の上方に位置する状態で、弁機構Vと把手側の端部との間を支点P2として水平方向の軸心周りに揺動自在に設けられている。つまり、作用点側てこ部材92において弁体27の上端部に当接する部分が作用点9wとなる。
【0041】
つまり、力点側てこ部材91をその把手側の端部の操作部9hを押し下げる方向に揺動させると、その揺動に連動して、作用点側てこ部材92がその弁機構側の端部が下がる方向に揺動することになる。そして、図6〜図8に示すように、作用点側てこ部材92をその弁機構側の端部が上方に移動する方向に揺動するように、換言すれば、力点側てこ部材91をその把手側の端部の操作部9hが上方に移動する方向に揺動するように付勢するバネ部材31が設けられている。
【0042】
又、図6〜図8に示すように、力点側てこ部材91の弁機構側の部分、及び、作用点側てこ部材92の把手側の部分夫々が二股状に構成されて、力点側てこ部材91の二股状の部分と作用点側てこ部材92の二股状の部分とが、蒸気口10の両側部を囲む状態で連結されている。
【0043】
そして、図8に示すように、バネ部材31の付勢力に抗して力点側てこ部材91の把手側の端部の操作部9hを押し下げると、作用点側てこ部材92がその弁機構側の端部の作用点9wが下がる方向に揺動して、その作用点9wにより弁体27がコイルバネ30の付勢力に抗して押し下げられることになり、弁機構Vが注ぎ用通路20を開く開き状態に切り換えられる。
【0044】
図5、図7及び図9に示すように、蓋体200の蓋カバー16には、一対のフック部材8夫々を移動操作するための一対のフック操作用開口32、力点側てこ部材91の把手側の部分を突出させるためのてこ操作用開口33、及び、蓋本体部材15の蒸気口10を臨ませるための蒸気口用開口34が形成されている。
そして、蓋カバー16の蒸気口用開口34には、複数のスリットが形成された蒸気口キャップ35が嵌め込まれている。
【0045】
図2〜図4に示すように、給電機構7は、外観形状が概略円柱状に構成されて、電源プレートPの上面の中央にその上面から突出するように設けられている。
給電機構7は、図3及び図4に示すように、中心穴7Aと、その中心穴7Aと同心に設けられた環状穴7Bとを備え、これら穴7A,7Bに夫々設けられる中心電極7a、外側電極7bと、給電機構7の円柱状外周部位の周方向一部に設けられるアース用電極(図示省略)とを備えて構成されている。
そして、ケトル本体Kが電源プレートP上に給電姿勢で載置されると、給電機構7がケトル本体K底部の給電機構嵌め込み用凹部13内に嵌り込んで、給電機構7と受電機構5の互いの電極が電気的に接続されて給電が可能となる。
【0046】
次に、図5、図9〜図13に基づいて、本発明による特徴構成について説明する。
尚、図10において、(a)は、蓋体200におけるフック部材8周辺の平面図であり、(b)は(a)のXb−Xb矢視図であり、(c)は(a)のXc−Xc矢視図である。又、図12において、(a)は、蓋体200におけるフック部材8周辺の平面図であり、(b)は(a)のXIIb−XIIb矢視図である。又、図13において、(a)は、蓋体200におけるフック部材8周辺の平面図であり、(b)は、(a)のXIIIb−XIIIb矢視図である。
【0047】
図5、図9〜図11に示すように、本発明では、フック部材8の前端部8Afが、最前端8tよりも後退した後退部8rを有する形状に構成され、凹部25を形成する凹部形成部材としての口縁部材12に、フック部材8の前端部8Afが凹部25に嵌まり込んだ状態で、フック部材8の前端部8Afにおける後退部8rのみを当接させてフック部材8の前進を阻止する前進阻止受け部36が設けられている。ここで、フック部材8の前端部8Afとは、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aにおける径方向外方側である前端側の部分に相当し、フック部材8の最前端8tとは、フック部材8の前端部8Afにおける最も前方の縁に相当する。
この実施形態では、後退部8rが、フック部材8の幅方向両側に振り分けて一対設けられ、前進阻止受け部36が、1対の後退部8rに対応して、一対設けられている。
又、後退部8r及び前進阻止受け部36夫々が、互いに面接触する状態で当接するように、上下方向に沿う面状に構成されている。
【0048】
図10、図12及び図13に示すように、各フック部材8は、嵌め込み用辺部8Aの上面における蓋体200の径方向外方側の部分、及び、操作用辺部8Bの上面における蓋体200の径方向内方側の部分が蓋カバー16に覆われた状態で、フック操作用開口32から外部に臨むように設けられている。
図13に示すように、蓋体200が容器本体100に対して閉じ位置よりも上方に位置して、フック部材8が凹部25に嵌め込まれていない状態では、フック部材8はフック操作用開口32における蓋体200の径方向外方側の口縁部にて受け止められて前進が阻止される状態(以下、フリー状態と称する場合がある)となっている。
そして、フック部材8がフリー状態で、蓋体200が前記蓋体装着用の相対位置関係で容器本体100の開口部に載置されると、フック部材8の最前端8tは、凹部25の上方において凹部25の底部25bに相当する位置よりも外方側に位置している。
【0049】
又、図10に示すように、蓋体200が容器本体100に対して閉じ位置に保持されて、フック部材8が凹部25に適切に嵌め込まれた状態(以下、嵌め込み姿勢と称する場合がある)では、フック部材8の前端部8Afの後退部8rが前進阻止受け部36に受け止められることにより、フック部材8はフリー状態におけるよりも蓋体200の径方向内方側に位置することになる。即ち、フック部材8は、フリー状態では、フック操作用開口32における蓋体200の径方向外方側の口縁部にて受け止められて前進が阻止され、一方で、嵌め込み姿勢では、フック部材8の前端部8Afの後退部8rが前進阻止受け部36に受け止められ、それぞれ異なる部材により前進が阻止される構成となっている。
又、図12に示すように、蓋体200が容器本体100に対して閉じ位置に保持されずに、フック部材8の最前端8tが庇26の先端に引っ掛かって釣合っている状態(以下、半掛かり状態と称する場合がある)では、フック部材8は嵌め込み姿勢におけるよりも蓋体200の径方向内方側に位置することになる。
【0050】
そして、図10及び図13に示すように、フック部材8の操作用辺部8Bの上面部には、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときには蓋カバー16に覆われ且つフック部材8がフリー状態にあるときは露出する位置に位置させて、フリー状態表示シート37が貼着されている。
又、図10及び図12に示すように、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの上面部には、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときには蓋カバー16に覆われ且つフック部材8が半掛かり状態にあるときは露出する位置に位置させて、半掛かり状態表示シート38が貼着されている。
【0051】
つまり、フック部材8に、半掛かり状態表示部としての半掛かり状態表示シート38が設けられ、フック部材8が口縁部材12の前進阻止受け部36に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、フック部材8が前記嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢との間で、蓋カバー16とフック部材8との干渉状態の違いにより、半掛かり状態表示シート38が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されていることになる。
又、フック部材8に、フリー状態表示部としてのフリー状態表示シート37が設けられ、フック部材8が口縁部材12の前進阻止受け部36に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、フック部材8が前記嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢との間で、蓋カバー16とフック部材8との干渉状態の違いにより、フリー状態表示シート37が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されていることになる。
【0052】
次に、蓋体200を容器本体100に装着したり、容器本体100から取り外すときの手順について、説明を加える。
蓋体200を容器本体100に装着するときは、一対のフック部材8がフリー状態となっている状態で、蓋体200を前記蓋体装着用の相対位置関係で容器本体100の開口部に載置する。すると、一対のフック部材8夫々の前端部8Afにおける後下がり傾斜状の下面8sが一対の凹部25夫々の庇26における前下がり傾斜状の上面26sと略平行状態となってその上面26sに当接する状態となる。
このように、一対のフック部材8がフリー状態になっている状態で、蓋体200を容器本体100の開口部に載置していると、フリー状態表示シート37が外部から見える状態となっているので、使用者は、フック部材8がフリー状態であり、蓋体200により容器本体100が適切に閉じられていない不完全閉じ状態であることを的確に認識することができる。
又、フリー状態では、フック部材8の後退部8rが容器本体100の前進阻止受け部36に当接しないので、フック部材8の最前端8tは、凹部25の底部25bに相当する位置よりも径方向外方に位置する。これにより、フリー状態では、フック部材8におけるフリー状態での蓋体200の側周面からの突出長さが長くなり、フリー状態のフック部材8の後下がり状の下面8sが容器本体200における凹部25の上方の庇26に受け止められた状態で、蓋体200が容器本体100の開口部に載置された状態では、蓋体200の外周部と容器本体100の開口部の縁部との隙間が広くなるので、使用者は、当該隙間を容易に視認でき、不完全閉じ状態を判別し易い。
【0053】
そして、その状態で、蓋体200を下方に押し下げると、一対のフック部材8夫々が、一対の凹部25夫々の庇26における前下がり傾斜状の上面26sの案内によりコイルバネ24の付勢力に抗して後退させられることになる。
更に、蓋体200を下方に押し下げると、一対のフック部材8が庇26を乗り越えて、コイルバネ24の付勢力により一対の凹部25夫々に嵌まり込み、フック部材8の前端部8Afの一対の後退部8rが一対の前進阻止受け部36に衝突して受け止められて、フック部材8がその最前端8tが凹部25の底部25bと離間した状態で凹部25内に保持され、それによって、蓋体200が閉じ位置で容器本体100に保持される。
【0054】
フック部材8の前端部8Afの1対の後退部8rが一対の前進阻止受け部36に衝突するときには、それらが面接触する状態で衝突して、その衝突音が比較的大きいので、使用者は、その衝突音により、蓋体200が容器本体100に適切に保持されたことを認識し易い。
しかも、このようにフック部材8が凹部25内に適切に嵌まり込むと、半掛かり状態表示シート38及びフリー状態表示シート37が蓋カバー16に覆われて外部から見えない状態となっているので、そのことによっても、使用者は、蓋体200が容器本体100に適切に保持されたことを認識することができる。
【0055】
又、フック部材8の前端部8Afが凹部25に嵌まり込むときには、フック部材8の最前端8tが凹部25の底部25bに衝突しないので、フック部材8の最前端8tの磨耗を抑制することができる。
従って、容器本体100の開口部に載置した蓋体200を下方に押し下げるときに、フック部材8の最前端8tが庇26の先端に引っ掛かって半掛かり状態になるのを効果的に抑制することができる。
又、仮に、容器本体100の開口部に載置した蓋体200を下方に押し下げるときに、フック部材8の最前端8tが庇26の先端に引っ掛かって釣合って、半掛かり状態になっても、半掛かり状態表示シート38が外部から見えるので、使用者は、フック部材8が半掛かり状態になって不完全閉じ状態になっていることを的確に認識することができる。
それにより、使用者は、半掛かり状態を改善して、蓋体200を容器本体100に閉じ位置で保持されるようにすることができる。
【0056】
蓋体200を容器本体100から取り外すときは、一対のフック部材8を両側から挟む状態で把持して互いに近接させると、一対のフック部材8が一対の凹部25の外部に出て開放されるので、そのまま蓋体200を持ち上げると、容器本体100から取り外すことができる。
そして、一対のフック部材8を把持している手を離すと、一対のフック部材8がフリー状態となって、フリー状態表示シート37が外部から見えるようになる。
【0057】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(A) 最前端8tよりも後退した後退部8rを有するフック部材8の前端の形状は、上記の実施形態において説明した形状、即ち、後退部8rがフック部材8の幅方向両側に振り分けて1対設けられた形状に限定されるものではない。
例えば、図14に示すように、後退部8rがフック部材8の幅方向中央に1個設けられた形状でも良い。
又、図15に示すように、後退部8rがフック部材8の幅方向の一端側に1個設けられた形状でも良い。
又、図16に示すように、フック部材8の前端部8Afが概ね半円状となる形状でも良い。この場合は、最前端8tよりも後側の弧状部分が後退部8rとして機能することになる。
【0058】
(B) 半掛かり状態表示シート38は、フック部材8が嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、フック部材8が嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢との間で、蓋カバー16とフック部材8との干渉状態の違いにより外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わる条件で、蓋カバー16に設けても良い。
この場合は、例えば、図17に示すように、蓋カバー16におけるフック部材8の操作用辺部8Bの側面に対向する面に、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときにはフック部材8の操作用辺部8Bに覆われ(図示省略)且つフック部材8が半掛かり状態にあるときは露出する(図17参照)位置に位置させて、半掛かり状態表示シート38を設けても良い。
又、この別実施形態や上記の実施形態では、半掛かり状態表示シート38を、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときに露出されず且つフック部材8が半掛かり状態にあるときは露出されるように設けたが、逆に、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときに露出され且つフック部材8が半掛かり状態にあるときは露出されないように設けても良い。
【0059】
(C) フリー状態表示シート37は、フック部材8が嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、フック部材8が嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢との間で、蓋カバー16とフック部材8との干渉状態の違いにより外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わる条件で、蓋カバー16に設けても良い。
この場合は、例えば、図18に示すように、フック部材8に、その操作用辺部8Bの上面部の前端から蓋カバー16に被さるように後方に延びる覆い部8Cを設ける。
そして、蓋カバー16におけるフック部材8の操作用辺部8Bの上部と覆い部8Cとの間に挿入される部分の上面に、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときには蓋カバー16に覆われ(図示省略)且つフック部材8がフリー状態にあるときは露出する(図18参照)位置に位置させて、フリー状態表示シート37を設けても良い。
又、この別実施形態や上記の実施形態では、フリー状態表示シート37を、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときには露出されず且つフック部材8がフリー状態にあるときは露出されるように設けたが、逆に、フック部材8が嵌め込み姿勢にあるときには露出され且つフック部材8がフリー状態にあるときは露出されないように設けても良い。
【0060】
(D) 上記の実施形態では、蓋体200と容器本体100とを互いに分離した状態に構成したが、蓋体200を、容器本体100に水平方向の軸心周りに揺動自在に支持して、蓋体200を前記軸心周りに揺動させることにより、容器本体100の開口部を開閉するように構成しても良い。
又、フック部材8と凹部25の組み合わせは、一組だけ設けても良い。
【0061】
(E) フック部材8の前端部8Afに後ろ下がり傾斜状の下面8sを設けるに当たって、上記の実施形態では、フック部材8の前端部8Afにおける後退部8rを除いた幅方向の略全長にわたって設けたが、その幅方向の一部に設けても良い。
【0062】
(F) 容器本体100の形状は、上記の実施形態の如き有底円筒状に限定されるものではなく、有底四角筒状、有底多角筒状等、各種の有底筒状の形状を適用することができる。容器本体100の形状が有底四角筒状や有底多角筒状の場合、容器本体100の径方向は、容器本体100の軸心に直交する方向となる。
【0063】
(G) 本発明を適用可能な水加熱容器の具体例としては、上記の実施形態において例示した電気ケトルに限定されるものではなく、例えば、電気ポット、加湿器、炊飯器等でも良い。ちなみに、本発明に係る水加熱容器において、加熱対象の水とは、固形物を含んだ水を含むものであり、例えば、水加熱容器の具体例が炊飯器の場合は、米粒を含んだ水が加熱対象の水となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、フック部材の前端が尖った状態を確保しながら、フック部材の不完全閉じ状態を判別し易い水加熱容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 内容器
8 フック部材
8r 後退部
8s 下面
8t 最前端
8Af 前端部
12 口縁部材(凹部形成部材)
16 蓋カバー
25 凹部
25b 底部
36 前進阻止受け部
37 フリー状態表示シート(フリー状態表示部)
38 半掛かり状態表示シート(半掛かり状態表示部)
100 容器本体
200 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、
その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、
前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記蓋体を前記閉じ位置で前記容器本体の開口部に位置させたときに前記容器本体の径方向に前後進自在で且つ前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、
前記フック部材の前端部の下面が、後方側ほど上面から遠ざかる形態の後ろ下がり傾斜状に構成され、
前記フック部材の前記後下がり傾斜状の下面が前記容器本体に当接した状態から、前記蓋体が下向きに移動されて前記閉じ位置に位置されるに伴って、前記フック部材の前端部が嵌まり込んで前記蓋体を前記閉じ位置に保持する凹部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器であって、
前記フック部材の前端部が、最前端よりも後退した後退部を有する形状に構成され、
前記凹部を形成する凹部形成部材に、前記フック部材の前端部が前記凹部に嵌まり込んだ状態で、前記フック部材の前端部における前記後退部のみを当接させて前記フック部材の前進を阻止する前進阻止受け部が設けられている水加熱容器。
【請求項2】
前記凹部形成部材が、前記容器本体の開口部の縁部を形成する口縁部材にて構成されている請求項1に記載の水加熱容器。
【請求項3】
前記後退部が、前記フック部材の幅方向両側に振り分けて1対設けられ、
前記前進阻止受け部が、前記1対の後退部に対応して、一対設けられている請求項1又は2に記載の水加熱容器。
【請求項4】
前記後退部及び前記前進阻止受け部夫々が、互いに面接触する状態で当接するように、面状に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水加熱容器。
【請求項5】
前記フック部材又は前記蓋体の外周部を形成する蓋カバーに、半掛かり状態表示部が設けられ、
前記フック部材が前記凹部形成部材の前進阻止受け部に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、前記フック部材が前記嵌め込み位置よりも後方に位置する後退姿勢との間で、前記蓋カバーと前記フック部材との干渉状態の違いにより、前記半掛かり状態表示部が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の水加熱容器。
【請求項6】
前記フック部材又は前記蓋体の外周部を形成する蓋カバーに、フリー状態表示部が設けられ、
前記フック部材が前記凹部形成部材の前進阻止受け部に当接して前進が阻止される嵌め込み位置に位置する嵌め込み姿勢と、前記フック部材が前記嵌め込み位置よりも前方に位置する前進姿勢との間で、前記蓋カバーと前記フック部材との干渉状態の違いにより、前記フリー状態表示部が外部に露出される状態と露出されない状態とに切り換わるように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の水加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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