説明

水回り用樹脂成形体

【課題】
凹凸のある部材の外観を維持しつつ、水回り用樹脂部材としての必要な物性である、耐水性を両立させることが難しかった。
【解決手段】
本発明によれば、凹凸のある部材を、完全もしくは一端を除いて透明樹脂で埋包したことを特徴とする水回り用樹脂成形体を提供する。また、本発明によれば、前記水回り用樹脂成形体が板状であることを特徴とする水回り用樹脂成形体を提供する。このような構成により、耐水性と凹凸部材の外観とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台、キッチン、手洗い場等に用いられる水回り用樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水回り用樹脂成形体のように外観が重要な成形体において、様々な意匠を有する樹脂成形体が提案されている。
例えば、木質化粧板の表面に射出成形により透明樹脂層を形成することによりリアルな木目柄を有する複合成形品の製法(特許文献1)や、透明な外観を持つ樹脂成形物(特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開平5−131487
【特許文献2】特開2004−269645
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の技術では、凹凸のある部材の外観を維持しつつ、水回り用樹脂部材としての必要な物性である、耐水性を両立させることが難しかった。
【0004】
そこで、上記課題を解決するために本発明では、耐水性と凹凸部材の外観とを備えた水回り樹脂成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上記課題を解決すべく、
凹凸のある不透明な部材を、完全に、もしくはその一端を除いて、透明樹脂で埋包した水回り用樹脂成形体を提供する。
また、前記水回り用樹脂成形体が板状であることを特徴とする水回り用樹脂成形体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐水性と凹凸部材の外観とを備えた水回り樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0008】
本発明の一形態は、
凹凸のある不透明な部材を、完全に、もしくはその一端を除いて、透明樹脂で埋包した水回り用樹脂成形体を提供する。
【0009】
木材やタイルなどの凹凸のある部材を水回りで用いる場合、清掃がしにくく、また、部材上に物を安定しておくことができない。また、木材やタイルなどの部材は、水に触れるところでは、木材やタイル目地の吸湿性によりそのままでは腐食や汚れの沁み込みが懸念される。そのため、凹凸のある部材を透明樹脂で埋包することで、凹凸のある部材の意匠性を保持しつつ、表面は平らとなり、耐水性が確保される。
このとき、完全または一端を除いて透明樹脂で埋包することで、埋包された端面からの水の浸入を防止し、水回りに使用できる。埋包されていない端面においては、壁等の他部材との接合部等とし、水との接触のない部分とする。
【0010】
本発明において、凹凸のある不透明な部材は、木材、タイル、複数のタイルを所定間隔をあけて敷設してなる板状材、およびそれらを模った樹脂部材などが挙げられ、好ましくは板状である。これらの部材は、ASTMD1003に準拠し、2mm厚の成形体において550nmを含む光源による全光線透過率が50%未満の不透明部材である。
【0011】
ここでいう、一端とは、板状あるいは立体形状部材の小口面の一面、あるいはその一部、角、等のことである。
また、ここでいう埋包とは、凹凸のある部材の少なくとも上記一端を除く全面が、露出せずに透明樹脂に包まれている状態を示す。次に示すもので特に限定されるものではないが、具体的に図示すると、図1および図2のように、凹凸のある部材の全面が露出せずに透明樹脂に包まれていたり、図3〜図6のように、凹凸のある部材の小口面の一部を除く面が露出せずに透明樹脂に包まれていたり、図7および図8のように、凹凸のある部材の小口面の一辺を除く面が露出せずに透明樹脂に包まれていたり、図9および図10のように、凹凸のある部材の一つの角を除く面が露出せずに透明樹脂に包まれている状態等を示す。
【0012】
ここで、透明樹脂は、埋包した凹凸部材の外観が著しく損なわれないような透明性を有している必要がある。ASTMD1003に準拠し、2mm厚の成形体において550nmを含む光源による全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
また、透明樹脂としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。これにより、透明樹脂を2回以上に分けて形成させても、1回目に作製した部分と2回目に作製した部分との継ぎ目がなくなり、一体となった透明樹脂が得られる。また、凹凸のある部材に透明樹脂を含浸させてから使用することができるため、凹凸のある部材と透明樹脂との密着性を向上させることができる。
熱硬化性の透明樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル等を使用することができる。また、必要に応じて、硬化触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、透明性を失わない程度に充填材や顔料、等を配合することができる。
【0013】
本発明における樹脂成形体の作製方法としては、特に限定されるものではないが、透明樹脂の一部を作製し、そこに凹凸のある部材を設置した後、透明樹脂の残りの部分を作製する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0015】
(実施例)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸96重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩2重量部を混合し、配合物を得た。
ガラス型内に前記配合物を注型し、90℃で2時間加熱硬化させることで、120mm四方で厚さ12mmの板を得た。
この得られた板上に、木を薄く削りだした100mm四方の天然木シートを中心に設置し、その上からさらに前記配合物を注型した。90℃で2時間加熱硬化させることで、120mm四方で厚さ15mmの成形体を得た。
本実施例の成形体を正面視した模式図は図1と、断面の模式図は図2と同様であった。得られた成形体は、天然木シート2が完全に樹脂1の中に埋包されていた。
【0016】
(比較例)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸96重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩2重量部を混合し、配合物を得た。
ガラス型内に前記配合物を注型し、90℃で2時間加熱硬化させることで、120mm四方で厚さ12mmの板を得た。
この得られた板上に、木を薄く削りだした120mm四方の天然木シートを中心に設置し、その上からさらに前記配合物を注型した。90℃で2時間加熱硬化させることで、120mm四方で厚さ15mmの成形体を得た。
得られた成形体を正面視した模式図を図11に、断面の模式図を図12に、それぞれ示す。得られた成形体は、木口面四辺全てに天然木シートが露出していた。
【0017】
(評価方法)
(1)意匠性
得られた成形体を目視で外観評価を行った。
【0018】
(2)耐水性
成形体を、水性インクで染めた70℃の温水中に24時間浸漬し、外観評価を行った。
【0019】
(評価結果)
評価結果を説明する。
本発明の実施例においては、天然木が透明層の中に埋包された、深みのある外観を呈しており意匠性に優れていた。また、耐水性についても、全く異常が見られず、埋包したエポキシ樹脂によって保護されていた。一方、比較例においては、外観こそ同様の意匠性を有していたが、耐水性において、木口端面からインクの浸透による着色が見られ、水回りで実用に耐えるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における成形体の一態様を正面視した模式図である。
【図2】図1に示した成形体を、図1中の直線3で切断した断面を示した模式図である。
【図3】本発明における成形体の一態様を正面視した模式図である。
【図4】図3に示した成形体の、図3中の直線4にあたる小口面を示した模式図である。
【図5】本発明における成形体の一態様を正面視した模式図である。
【図6】図5に示した成形体の、図3中の直線4にあたる小口面を示した模式図である。
【図7】本発明における成形体の一態様を正面視した模式図である。
【図8】図7に示した成形体の、図3中の直線4にあたる小口面を示した模式図である。
【図9】本発明における成形体の一態様を正面視した模式図である。
【図10】図9に示した成形体の、図3中の直線4にあたる小口面を示した模式図である。
【図11】比較例の成形体を正面視した模式図である。
【図12】比較例の成形体の、図11中の直線4にあたる小口面を示した模式図である。
【符号の説明】
【0021】
1 : 透明樹脂
2 : 天然木シート
3 : 切断面
4 : 小口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のある不透明な部材を、完全に、もしくはその一端を除いて、透明樹脂で埋包したことを特徴とする水回り用樹脂成形体。
【請求項2】
前記水回り用樹脂成形体が板状であることを特徴とする請求項1記載の水回り用樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−291964(P2009−291964A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145187(P2008−145187)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】