説明

水性の微粒子分散組成物

【課題】 耐候性の高い無機微粒子が水性媒質中で安定に分散した微粒子分散組成物を提供すること。
【解決手段】 表面が親水性の無機微粒子が水性媒質中に分散した組成物において、上記無機微粒子が界面活性剤で処理されており、かつ少なくとも親水性ブロックと疎水性ブロックとを含有するポリビニルエーテル構造のブロック共重合体で被覆されていることを特徴とする水性の微粒子分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクや塗料に用いられる水性の微粒子分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子が媒質中に分散した組成物は、各種インクや塗料の材料として広く用いられている。利用目的によって様々な粒子が選択され、例えば、インクジェットプリンター用インクやペンキなどのように着色を目的とする場合には各種有機顔料やカーボンブラック、金属酸化物などが、また、磁気記録媒体用の磁性塗料には磁性酸化鉄や金属鉄が、紫外線防止や光触媒性塗装には芳香族化合物や酸化チタンなどが用いられる。
【0003】
これらの内、有機系の材料は光やオゾンに対する耐久性に劣る面があり、例えば、有機顔料は染料に比べて高い耐候性を有してはいるが、直射日光などの過酷な環境下での耐候性は十分とはいえない。一方、分散媒質としては、速乾性が求められる場合には有機系の溶剤が用いられるが、環境や安全面の配慮から、水系の媒質が多くなってきている。従って、高い耐候性を有する実用的なインクや塗料に用いる原料として、無機系粒子を水性媒質に安定に分散させた分散組成物が望まれる。
【0004】
無機系粒子は、カーボンブラックなどを除いて一般に親水性である。従って、通常はそのままでも水性媒質に対する親和性は高いが、比重が大きいことから、単に混合しただけでは安定な分散組成物は得られない。そこで、水性媒質への親和性をさらに高めることと、粒子同士が直接接触して凝集するのを防ぐことを目的に、各種高分子分散剤による分散安定化が試みられている。特に疎水部と親水部を有するブロック共重合体は、水中で、親水部と疎水部が層をなすカプセルを形成しやすく、粒子の被覆に適している。
【0005】
例えば、特許文献1や特許文献2では、アクリル酸エステルなどをモノマーとするブロック共重合体を用いて顔料を分散させており、特許文献3では親水部を持つ樹脂に疎水性ポリマーを伸長させる手法が開示されている。また、特許文献4では、反応性の分散剤を顔料表面に付着させて分散させた後に、その分散剤から疎水部、次いで親水部を重合により伸長させる手法が示されている。これらの方法により各種粒子の分散が可能とされているが、いずれの例においても、主に対象としているのは有機顔料およびカーボンブラックであり、元々親水性の表面を持つ無機系粒子に対する効果は、用いている高分子分散剤の構造から見ても、十分とはいい難い。
【特許文献1】特開2003−49110公報
【特許文献2】特開2003−246958公報
【特許文献3】特開2003−246804公報
【特許文献4】特開2003−128976公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況に鑑み、本発明は、耐候性の高い無機微粒子が水性媒質中で安定に分散した微粒子分散組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明によって解決される。すなわち、本発明は、表面が親水性の無機微粒子が水性媒質中に分散した組成物において、上記無機微粒子が界面活性剤で処理されており、かつ少なくとも親水性ブロックと疎水性ブロックとを含有するポリビニルエーテル構造のブロック共重合体で被覆されていることを特徴とする水性の微粒子分散組成物を提供する。
【0008】
上記本発明においては、前記界面活性剤の親水性部分が前記微粒子の表面に接し、疎水性部分が外側に位置し、前記ブロック共重合体の疎水性ブロックが上記界面活性剤の疎水性部分に接し、かつ前記ブロック共重合体の親水性ブロックが水性媒体側に位置していることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記無機微粒子を非水媒質中に添加し、界面活性剤を加えて分散処理を施し、次いでこれに前記ブロック共重合体を添加して分散処理を行なった後、水を主成分とする水性媒質を添加する工程を含むことを特徴とする前記本発明の水性の微粒子分散組成物の製造方法を提供する。
【0010】
前記微粒子としては、金属または金属化合物が好ましく、前記微粒子分散組成物はインクジェットプリンター用インクの着色剤として有用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面が親水性の無機微粒子を界面活性剤で処理することで無機微粒子の表面を疎水化し、これを疎水性ブロックと親水性ブロックを含有するブロック共重合体でカプセル化すれば、疎水性ブロックが微粒子側に、親水性ブロックが媒質側に配置されたカプセルが形成されて、安定な分散が可能になる。ポリビニルエーテル構造のブロック共重合体はこの分散安定化効果が顕著であり、主鎖がC−C結合のみで構成されているために共重合体自身の強度も高い。従って本発明によれば、耐候性の高い無機微粒子が水性媒質中で安定に分散した微粒子分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用するブロック共重合体は、微粒子分散組成物中では微粒子を安定に分散させる分散剤として働き、インクやペンキとして紙などの媒体に付与された後は、媒体に対して微粒子を定着させる作用をするものである。
本発明で使用するブロック共重合体は、それぞれ少なくとも1種類の親水性ブロック(A、A’)および疎水性ブロック(B、B’)を有する。
【0013】
ブロック共重合体における各ブロックの配置は特に限定されないが、無機微粒子の分散性を高める観点からは親水性ブロックがポリマー鎖の末端にあるものが好ましい。例えば、AB型、ABA’型(AとA’は同じでも異なっていてもよい)、AA’B型、BB’A型(BとB’は同じでも異なっていてもよい)などが挙げられる。また、A、A’、B、B’はホモポリマー、またはコポリマーのブロックである。
【0014】
本発明で使用するブロック共重合体は、ビニルエーテル系モノマーのホモポリマーまたはコポリマーからなる親水性ブロックと、ビニルエーテル系モノマーのホモポリマーまたはコポリマーからなる疎水性ブロックを含むブロック共重合体である。
【0015】
これらのポリマーは、例えば、下記一般式(1)で示される繰り返し単位構造を有することが好ましい。
−(CH2−CH(OR1))− (1)
上記の一般式(1)において、R1は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。また、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。R1の炭素数は1〜18が好ましい。
【0016】
また、R1は、−(CH(R2)−CH(R3)−O)p−R4若しくは−(CH2m−(O)n−R4で表される基でもよい。この場合、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R4は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2、−CH2−COOR5などを表し、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子と置換されていてもよい。R4の炭素数は1〜18が好ましい。R5は水素、またはアルキル基である。pは1〜18が好ましく、mは1〜36が好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0017】
1およびR4において、アルキル基またはアルケニル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、リノレイルなどであり、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキセニルなどである。
【0018】
下記に、上記で説明した繰り返し単位を含むモノマー(I−a〜I−o)およびポリマー(II−a〜II−e)の構造を例示するが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されるものではない。
【0019】

【0020】

【0021】
また、これらポリビニルエーテルは、それを他の高分子にグラフト結合させたものを使用してもよいし、他の繰り返し単位構造と共重合されたものを使用してもよい。また、各ブロックともビニルエーテル系モノマーとそれ以外のモノマーとの共重合体も含まれる。
【0022】
ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによるカチオンリビング重合による方法(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年 417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロック共重合体、グラフト共重合体、グラジュエーション共重合体などの様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2系、HCl/SnCl4系などで行うこともできる。
【0023】
また、前記ブロック共重合体は2種以上の親水性ブロックを含有していることが好ましく、そのうち一つのブロック中にアニオン性基を含有する繰り返し単位を有していることが好ましい。
【0024】
本発明におけるこれらのブロック共重合体の量は、微粒子の質量に対して10〜80質量%、さらには20〜70質量%が好ましい。ブロック共重合体の量が10質量%未満では微粒子の被覆が不十分になり分散安定性が低下し、一方、ブロック共重合体の量が80質量%を超えると、着色性などの微粒子の機能が十分に発現されにくくなる。
【0025】
本発明で用いる無機微粒子としては、金属微粒子、および酸化物、窒化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩などの金属化合物微粒子が適用できる。金属微粒子としては、鉄、ニッケル、アルミニウム銅、金、白金、亜鉛、およびこれらの合金などの微粒子が挙げられ、金属化合物微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの微粒子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
これらの微粒子の形状は特に限定されない。微粒子の大きさは、分散安定性および微粒子としての機能発現の面から、1μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
【0027】
これらの微粒子の分散組成物全質量に占める割合は用途に応じて適当に選択すればよいが、0.1〜30質量%、さらには1〜20質量%であることが好ましい。微粒子の量が0.1質量%未満では機能発現には不十分であり、微粒子の量が30質量%を超えると、微粒子の凝集や、粘度増加による操作性の低下が起こりやすくなる。
【0028】
微粒子表面を改質する界面活性剤は、用いる粒子の種類に応じて選択すればよく、アルキルスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン界面活性剤などが用いられる。特に、アルキルスルホン酸塩などのスルホン酸塩が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの界面活性剤は単独で用いても、複数種類を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明で使用可能な界面活性剤は、HLBが1〜12の範囲のものが好ましく、3〜10が特に好ましい。さらに、界面活性剤の添加量は、微粒子分散組成物全体に対して0.01〜5質量%が好ましい。界面活性剤の量が0.01質量%以下では粒子の表面改質が不十分になり、ブロック共重合体による被覆が不完全になる。一方、界面活性剤の量が5質量%を超えると、微粒子分散組成物の表面張力が下がって分散液が泡立ちやすくなるなどの弊害が生じる。また、界面活性剤の量は無機微粒子の量に対して1〜30質量%が好ましい。
【0030】
本発明の微粒子分散組成物の主な液媒質は水であるが、その他の水溶性の有機物を含んでもよい。これらの有機物は、分散組成物を保管した際に器壁での固化を防止したり、低温時の凍結を防いだりする効果があり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、チオジグリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどのジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール類などが好適に用いられる。
【0031】
また、本発明の微粒子分散組成物には、前記成分以外にも、例えば、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種添加剤を加えてもよい。
【0032】
本発明の微粒子分散組成物は、例えば、以下のようにして製造できる。
表面が親水性である無機微粒子を非水媒質中に添加し、界面活性剤を加えて超音波印加やビーズミル、ボールミルなどの分散機を用いた分散処理を施す。この処理により界面活性剤の親水性部分は無機微粒子の表面に付着し、界面活性剤の疎水性部分は非水媒質側に位置する。これに、前記ブロック共重合体または非水溶媒に溶解させたブロック共重合体を添加し、さらに分散処理を行なって均一に混合する。この処理によってブロック共重合体の疎水性ブロックは上記界面活性剤の疎水性部分に接し、ブロック共重合体の親水性ブロックは水性媒質側に位置する。次に、水を主成分とする水性媒質を添加して系を水性に転じることで、ブロック共重合体の疎水性ブロックが無機微粒子側に、親水性ブロックが水性媒質側に向いたカプセルが形成される。最後に、必要に応じて初めの非水媒質を留去することで、水性の微粒子分散体が得られる。この方法で使用する非水媒質としてはジメチルホルムアミドなどの公知の親水性有機溶媒が使用できる。
【0033】
本発明の微粒子分散組成物は、様々な用途に適用可能である。例えば、微粒子として磁性酸化鉄などを用いれば、磁気記録媒体用の磁性塗料を製造でき、酸化チタンを用いれば、紫外線吸収塗料を製造できる。また、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛などの無機顔料を用いることで、無機系の着色塗料を製造することも可能である。
【0034】
本発明の微粒子分散組成物の最も好適な利用形態の一つは、インクにエネルギーを与えて飛翔させて記録するインクジェットプリンター用のインクであり、特に、四酸化三鉄やチタンブラックを分散させた黒色顔料インクに好適である。エネルギーとしては熱エネルギーや力学的エネルギーを用いることができるが、特に熱エネルギーを用いる方法が好ましい。
インクジェット記録用のプリンターとしては、A4サイズ紙を主に用いる一般家庭用のプリンターや、名刺やカードを印刷対象とするプリンター、或いは業務用の大型プリンターなどに適用できるが、特に高い画像堅牢性が求められ多量のインクを使用する大型機に好適に用いられる。
【0035】
本発明のインクで記録する被記録媒体としては、特別なコーティングを施していない普通紙、少なくとも一方の面にインクを受容する層をコーティングしたいわゆるインクジェット専用紙、ハガキや名刺用紙、ラベル用紙、ダンボール紙、インクジェット用フィルムなどが挙げられる。
インクジェットプリンター用インクは、本発明の微粒子分散組成物を適当な濃度に水で希釈し、所定の水溶性有機物や、その他必要に応じて界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種添加剤を加えることで製造できる。
【0036】
インクジェットプリンター用インクにおける微粒子の割合は0.1〜20質量%、さらには1〜10質量%であることが好ましい。微粒子の量が0.1質量%未満では印字画像に十分な濃度が得られず、微粒子の量が20質量%を超えると、画像濃度が大きく増加することがない反面、ノズルにおける目詰まりなどの吐出安定性の低下を招く。
【0037】
インクに添加する水溶性有機物は、インクジェットプリンターのノズル部分での乾燥によるインクの固化を防止する働きをするもので、具体的には、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、チオジグリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどのジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、ウレア、β−ジヒドロキシエチルウレア、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0038】
このような物質は、水溶性であれば固体でも液体でもよい。また、水が蒸発するような条件下でもインク中に残留することが要求されるので、沸点が水よりも高いことが望ましく、120℃以上であることが望ましいが、ブロック共重合体との相互作用があるために単独の場合よりも蒸発しにくくなることから、必ずしも高沸点物質には限定されない。これらの有機物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの有機物のインク中に占める割合としては、インク全質量に対して5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の具体的な実施例について説明する。ただし本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。尚、以下の記載で「部」とあるものは全て質量基準である。
【0040】
(1)AB型ジブロック共重合体(P−1)の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、2−エトキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11ミリリットルを加え、系内温度が0℃になったところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、ジブロック共重合体のA成分を合成した。
【0041】
分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、B成分である4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル10ミリモルを添加することでB成分の合成を行った。重合反応の停止は、0.3質量%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行なった。得られたジブロック共重合体の同定には、核磁気共鳴吸収測定装置(NMR、ブルカー・バイオスピン社製DPX400)およびGPCを用い、いずれも目的物質が合成できていることを示す結果を得た。得られたジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で20,000、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は1.2であった。このジブロック共重合体のB成分のエステル部分は、後にアルカリを添加することで加水分解し、カルボン酸型に変換することができる。
【0042】
(2)ABC型トリブロック共重合体(P−2)の合成:
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、1−イソブトキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、およびトルエン11ミリリットルを加え、系内温度が0℃になったところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、トリブロック共重合体のA成分を合成した。
【0043】
分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、B成分である2−メトキシエチルビニルエーテル12ミリモルを添加することで合成を行い、上記と同様にGPCを用いてモニタリングしてB成分の重合の完了を確認した。次いでC成分である4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチル10ミリモルを添加して合成を行い、重合反応の停止は、系内に0.3質量%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行なった。得られたトリブロック共重合体の同定には、核磁気共鳴吸収測定装置(NMR、ブルカー・バイオスピン社製DPX400)およびGPCを用い、いずれも目的物質が合成できていることを示す結果を得た。
【0044】
得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は標準ポリスチレン換算で30,000、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は1.3であった。
このトリブロック共重合体のC成分のエステル部分は5倍当量の水酸化ナトリウム水溶液とメタノール混合溶媒中で加水分解し、溶媒を留去し、カルボン酸型のポリマーを得た。
【0045】
実施例1
四酸化三鉄粒子(平均粒子径100nm)10部と、ドデシル硫酸ナトリウム(HLB8.3)2部をN,N−ジメチルホルムアミド88部に投入し、超音波を印加して均一に分散させた。これにジブロック共重合体(P−1)10部をN,N−ジメチルホルムアミド90部に溶解させた液を添加し、さらに超音波を印加して分散させた。その後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液180部とメタノール100部の混合液を加えてP−1のエステル部分を加水分解し、透析によって余分なナトリウムを除去した。ロータリーエバポレーターによりN,N−ジメチルホルムアミドとメタノールを留去し、さらに水を加えて、固形分10質量%の微粒子分散組成物を得た。
【0046】
実施例2
四酸化三鉄粒子の代わりにチタンブラック(平均粒子径80nm)を用いて、実施例1と同様にして微粒子分散組成物を得た。
【0047】
実施例3
四酸化三鉄粒子(平均粒子径100nm)10部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(HLB5.9)2部をN,N−ジメチルホルムアミド88部に投入し、超音波を印加して均一に分散させた。これにトリブロック共重合体(P−2)10部をN,N−ジメチルホルムアミド90部に溶解させた液を添加し、さらに超音波を印加して分散させた。その後、超音波を印加しながらイオン交換水180部を徐々に滴下し、ロータリーエバポレーターによりN,N−ジメチルホルムアミドを留去した。最後にイオン交換水を加えて、固形分10質量%の微粒子分散組成物を得た。
【0048】
実施例4
四酸化三鉄粒子(平均粒子径100nm)10部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部、N,N−ジメチルホルムアミド2部を加え、ニーダー混練機を用いて2時間混練した。得られた混合物を、トリブロック共重合体(P−2)10部をN,N−ジメチルホルムアミド176部に溶解させた溶液に投入し、ボールミルにより24時間混合して、均一に分散させた。これにイオン交換水180部を加え、さらにボールミルで1時間混合した後に液を取り出し、ロータリーエバポレーターによりN,N−ジメチルホルムアミドを留去し、さらに水を添加して、固形分10質量%の微粒子分散組成物を得た。
【0049】
実施例5
実施例3の微粒子分散組成物10部に、グリセリン2部、ジエチレングリコール2部、イソプロパノール1部を加えてインクを調製した。
【0050】
実施例6
実施例4の微粒子分散組成物10部に、グリセリン2部、ジエチレングリコール2部、イソプロパノール1部を加えてインクを調製した。
【0051】
比較例1
四酸化三鉄粒子(平均粒子径100nm)1部とポリアクリル酸−マレイン酸共重合体(数平均分子量15,000)1部を水18部に投入し、超音波を印加して分散させ、固形分10質量%の微粒子分散組成物を得た。
【0052】
比較例2
四酸化三鉄粒子の代わりにチタンブラック(平均粒子径80nm)を用いて、比較例1と同様にして微粒子分散組成物を得た。
【0053】
比較例3
比較例1の微粒子分散組成物10部に、グリセリン2部、ジエチレングリコール2部、イソプロパノール1部を加えてインクを調製した。
【0054】
(評価)
分散安定性:
実施例1〜4と比較例1、2の微粒子分散組成物について、調製直後の平均粒子径と、60℃で1週間保管した後の平均粒子径を、大塚電子社製PAR−III動的光散乱測定装置を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0055】

【0056】
インクジェットプリンター用インクの吐出性:
実施例5、6および比較例3の水性インクを、熱エネルギーを付与することによってインクを吐出させるインクジェット記録装置BJF−660(キヤノン製)にそれぞれ搭載して、光沢紙SP101(キヤノン製)に印字を行なった。次に、それぞれのインクをインクジェット記録装置に搭載したまま1週間保持し、同様に印字試験を行い比較した。その結果は表2の通りであった。
【0057】

【0058】
*1:吐出特性
常温下で100%ベタ画像を印字し1分間休止した後、再度100%ベタ画像を印字した画像を下記の評価基準で評価した。
◎:白スジが全くなく、正常に印字されていた。
○:僅かに白スジが見られた。
△:画像全体に白スジが見られた。
×:画像がほとんど印字されていなかった。
【0059】
*2:色調
常温下で100%ベタ画像を印字し、色彩の鮮鋭度を目視で4段階評価した。 ◎:色調が理想的である。
○:概ね良好であるが、詳細に観察すると、色彩にややくすみが見られる。 △:容易に認識できる色彩のくすみがある。
×:完全に濁った色調である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明によれば、耐候性の高い無機微粒子が水性媒質中で安定に分散した微粒子分散組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が親水性の無機微粒子が水性媒質中に分散した組成物において、上記無機微粒子が界面活性剤で処理されており、かつ少なくとも親水性ブロックと疎水性ブロックとを含有するポリビニルエーテル構造のブロック共重合体で被覆されていることを特徴とする水性の微粒子分散組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤の親水性部分が前記微粒子の表面に接し、疎水性部分が外側に位置し、前記ブロック共重合体の疎水性ブロックが上記界面活性剤の疎水性部分に接し、かつ前記ブロック共重合体の親水性ブロックが水性媒体側に位置している請求項1に記載の水性の微粒子分散組成物。
【請求項3】
前記微粒子が、金属または金属化合物である請求項1に記載の水性の微粒子分散組成物。
【請求項4】
前記無機微粒子を非水媒質中に添加し、界面活性剤を加えて分散処理を施し、次いでこれにブロック共重合体を添加して分散処理を行なった後、水を主成分とする水性媒質を添加する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の水性の微粒子分散組成物の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子分散組成物を用いたことを特徴とするインクジェットプリンター用インク。

【公開番号】特開2006−152026(P2006−152026A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340708(P2004−340708)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】