説明

水性ゲル状組成物及びこれを含有する水性ゲル状化粧料。

【課題】 従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状組成物及びこれを含有する水性ゲル状化粧料を提供する。
【解決手段】 鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成される自己造膜性を有する葉状シリカ2次粒子及び次の成分(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1種以上のゲル化促進成分を含有させゲル化させた水性ゲル状組成物を使用する。当該水性ゲル状組成物を配合することにより、使用感の良好な水性ゲル状化粧料が提供される。
(a)水性媒体可溶性のノニオン性界面活性剤、
(b)水性媒体可溶性の両性界面活性剤、
(c)水性媒体可溶性のカチオン性界面活性剤、及び
(d)水性媒体可溶性の酸

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲル状組成物及びこれを含有する水性ゲル状化粧料に関する。より詳しくは、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状組成物及びこれを含有する水性ゲル状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲル状組成物とは、ゲル化剤を配合し増粘された水性組成物であり、使用時に適度な粘性を有しているため塗布しやすく、塗布後の乾燥塗膜は、その水性であることに由来し、ごわつかず、みずみずしさ、さっぱり感があるので、これを配合してクリーム、透明ジェル等の基礎化粧料、化粧下地、クリームファンデーション等のメークアップ化粧料、ヘアセットジェル等頭髪用化粧料の分野等広範な用途において好適に使用されている。
【0003】
従来、このような水性ゲル状組成物や化粧料のゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリピニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のアクリル酸系又はポリビニル系高分子化合物、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム等のセルロース系高分子化合物、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、ローカストビーンガム、デキストラン、カードラン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等の天然水溶性高分子化合物、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイト等の粘土鉱物が汎用されている。
【0004】
しかしながら、カルボキシビニルポリマー等からなるゲル化剤においては、無機顔料の凝集が起こるなどの物性的問題があった。一方、セルロース系高分子化合物、天然水溶性高分子化合物、及び粘土鉱物の場合は、配合量が少ないと十分なゲルが得られず増粘性が不十分であり、十分なゲルにするため多量に配合した場合は、本来の使用感が大きく損なわれる等の問題があった。また、長期保管した場合、粘土鉱物等の増粘剤は水性溶媒から相分離を生じやすく、かかるゲル状組成物は長期的な保存安定性が不十分であった(特許文献1〜3参照)。
また、水性ゲル状組成物の安定性や増粘性を向上させるために、当該組成物にフィラーとしてシリカ粉末等の微粒子を添加することも公知である(特許文献4〜5参照。)。
【0005】
本発明者らは、先に、鱗片状シリカの薄片1次粒子が3次元的に凝集した、シリカ3次凝集体粒子を特定の条件下で解砕して得られる新規物質である葉状シリカ2次粒子は、当該鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成されるものであり、また、その特異な形状に起因して、強い自己造膜性を有するものであることを見いだした。
【0006】
そして、当該葉状シリカ2次粒子を、フィラーとして化粧料組成物(以下単に「化粧料」という。)に配合した場合は、その葉状の粒子形態及び造膜性能に基づく作用効果により、当該化粧料は、化粧持続性が向上し、かつ、化粧皮膜の酸素透過性が高く、塗布時の良好な伸び、塗布数時間後にあっても、厚ぼったくなく、しっとりし、べたつかず、つっぱらない等の好ましい感触を有する化粧料であることを開示している(特許文献6参照。)。しかしながら、当該葉状シリカ2次粒子は、あくまでフィラーとして使用されているものであった。
【0007】
【特許文献1】特開平2002−187814号公報(特許請求の範囲(請求項1〜4))
【特許文献2】特開2000−355518号公報(特許請求の範囲(請求項1〜2))
【特許文献3】特開2004−137225号公報(特許請求の範囲(請求項1〜5))
【特許文献4】特開2000−119158号公報(特許請求の範囲(請求項1)、〔0010〕〜〔0015〕)
【特許文献5】特開2002−220315号公報(特許請求の範囲(請求項1〜6)、〔0010〕〜〔0011〕)
【特許文献6】特開2004−168667号公報(特許請求の範囲(請求項1〜6)、〔0118〕〜〔0141〕)
【0008】
ところが、本発明者らが、さらに当該優れたフィラーである葉状シリカ2次粒子の特性について詳細に検討を進めていく過程で、極めて興味深い現象を見いだした。すなわち当該葉状シリカ2次粒子に、酸及び特定の界面活性剤を作用させたところ、容易に水性ゲルを形成しうるという予想外の特性を有することを発見したのである。これは、当該葉状シリカ2次粒子とゲル化促進成分である界面活性剤とから新規な水性ゲル組成物、若しくは、水性ゲル形成システムが形成できることを意味する。本発明はかかる知見に基づいてなされるに至ったものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状組成物及びこれを含有する水性ゲル状化粧料等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従えば、以下の水性ゲル状組成物及びこれを含有するゲル状化粧料が提供される。
【0011】
〔1〕
鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成される自己造膜性を有する葉状シリカ2次粒子及び次の成分(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1種以上のゲル化促進成分を、水性媒体に含有させゲル化させてなることを特徴とする水性ゲル状組成物。
(a)水性媒体可溶性のノニオン性界面活性剤、
(b)水性媒体可溶性の両性界面活性剤、
(c)水性媒体可溶性のカチオン性界面活性剤、及び
(d)水性媒体可溶性の酸
【0012】
〔2〕
前記葉状シリカ2次粒子と前記(a)〜(c)から選択される界面活性剤との比が質量比で1:0.001〜1:3である〔1〕項に記載の水性ゲル状組成物。
【0013】
〔3〕
前記葉状シリカ2次粒子と前記(d)酸との比が質量比で1:0.001〜1:10である〔1〕項に記載の水性ゲル状組成物。
【0014】
〔4〕
前記(d)の酸が有機酸である〔1〕項又は〔3〕項に記載の水性ゲル状組成物。
【0015】
〔5〕
水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の相と、前記(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む相からなる〔1〕項〜〔4〕項のいずれかに記載の2液型水性ゲル状組成物。
【0016】
〔6〕
〔1〕項〜〔4〕項のいずれかに記載の水性ゲル状組成物を含有する水性ゲル状化粧料。
【0017】
〔7〕
水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の相と、前記(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む相からなる〔5〕項に記載の2液型水性ゲル状組成物を含有する2液体水性ゲル状化粧料。
【発明の効果】
【0018】
以下に詳述するように、本発明によれば、従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状組成物が提供される。また、当該水性ゲル組成物を含有せしめることにより、同様に従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状化粧料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性ゲル組成物は、水性媒体に、自己造膜性を有する葉状シリカ2次粒子と、及び次の成分(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1種以上のゲル化促進成分を含有させた水性ゲル状組成物である。
(a)水性媒体可溶性のノニオン性界面活性剤、
(b)水性媒体可溶性の両性界面活性剤、
(c)水性媒体可溶性のカチオン性界面活性剤、及び
(d)水性媒体可溶性の酸
【0020】
なお、ここで水性媒体としたのは、純粋の水のみならず、水を主体とし、これにメタノール、エタノール、イソプロパノール等の水可溶性の溶剤を適宜溶解している水をも包含する趣旨である。したがって、本発明において「水性ゲル状組成物又は水性ゲル状化粧料」とはこのような水性媒体に葉状シリカ2次粒子が分散しており、かつ、当該水性媒体にノニオン性界面活性剤等が溶解しているものをいう。
【0021】
本発明の最大の特徴は、ゲル化組成物の主成分として、葉状シリカ2次粒子を使用することである。
当該葉状シリカ粒子2次粒子は、薄片1次粒子を基本構成単位とし、当該1次粒子同士が、互いに面間が平行的に配向して複数枚重なって形成される葉状シリカから実質的になる、積層構造の粒子形態を有する葉状シリカである。
【0022】
この薄片1次粒子は、きわめて薄い鱗片状シリカであって、その厚さが0.001〜0.1μmのものである。かかる薄片1次粒子は、互いに面間が平行的に配向して1枚または複数枚重なった葉状シリカ2次粒子を形成するが、当該2次粒子の厚さは、0.001〜3μm、好ましくは0.005〜2μmであり、厚さに対する葉状シリカ2次粒子(板)の最長長さの比(アスペクト比)は、少なくとも10、好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上のものであり、厚さに対する葉状シリカ2次粒子(板)の最小長さの比は、少なくとも2、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上を有するような鱗片状のシリカである。なお、当該2次粒子は、融着することもなく互いに独立に存在している。
【0023】
また、葉状シリカ2次粒子の平均粒子径は、0.001〜30μm、好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μm程度である。また、比表面積は、10〜1000m2/g、好ましくは20〜500m2/g、さらに好ましくは30〜500m2/gである。また、シラノール基は1000〜10000μmol/g、好ましくは2000〜9000μmol/g、さらに好ましくは3000〜8000μmol/gである。
なお、本発明に云う葉状シリカ2次粒子の厚さ及び長さは、特に断らないかぎり、その2次粒子についての平均値を意味する。
【0024】
本発明における、葉状シリカ2次粒子は、その形態に起因してきわめて特異な自己造膜性を有し、常温においても容易に強固なシリカ皮膜を形成する。当該葉状シリカ2次粒子の水分散液は、これをガラス基体上等に塗布し、常温で乾燥すると、皮膜形成剤や造膜助剤等を使用することなしに硬化し、容易に強靱な塗膜が形成される。この塗膜は、極めて強固であり、容易には剥離することはない。
【0025】
(葉状シリカ2次粒子の調製)
本発明で用いる葉状シリカ2次粒子は、物質としては所謂シリカ−X、シリカ−Yとして知られているものであり、すでに述べたように、微小な鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が並行的に配向し、複数枚重なって葉状の形状をなしている粒子である。
【0026】
葉状シリカ2次粒子は、活性ケイ酸、シリカゾル、エアロジル、シリカヒドロゲル、シリカゲル(シリカキセロゲル)等を出発物質として、これらをアルカリ金属の存在下で水熱処理する方法により、まず、葉状シリカ2次粒子がさらに3次元的に不規則に重なり合って形成されたシリカ3次凝集体粒子(3次粒子)を生成させ、次いで各種の解砕処理や乾燥等の後処理を行うことによって、当該3次粒子を解砕し、葉状シリカ2次粒子を得るという方法により調製することができる。3次粒子を経ずして直接2次粒子を製造することは、現在のところ困難である。
【0027】
また、葉状シリカ2次粒子の形態は、当該対象とする水性ゲル状組成物又は化粧料の種類に応じて、水スラリー状、粉体状、有機媒体スラリー状のいずれかの形態を選択して配合されるが、好ましくは、水スラリー状又は粉体状のものであり、特に好ましくは後記実施例に示すように、葉状シリカ2次粒子が水中に分散した、水スラリー状のシリカ2次粒子を使用することである。
【0028】
上記シリカヒドロゲル等の出発物質の水熱処理は、オートクレーブ等の加熱圧力容器中で加熱することにより行われ、シリカ3次凝集体粒子が得られるが、当該シリカ−Xやシリカ−Y等の単一相を短時間で得るため、温度範囲としては好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは160〜200℃が用いられる。必要な水熱処理の時間は、水熱処理の温度や種晶の添加の有無等により変わりうるが、通常、3〜50時間、好ましくは、5〜40時間程度である。
【0029】
かくして水スラリー状で得られたシリカ3次凝集体粒子を、ベルトフィルター等の固液分離・水洗装置を用いて水洗・固液分離して、さらに水でリパルプし、SiO2 濃度1〜30質量%の水スラリーとし、これを湿式粉砕装置(解砕装置)、例えば湿式ビーズミル、湿式ボールミル、薄膜旋回型高速ミキサーに供給して、シリカ3次凝集体粒子を解砕処理して葉状シリカ2次粒子の水スラリーを得ることができる。ここで、湿式ビーズミルとしては、直径0.2〜1.0mmのアルミナ又はジルコニア等の媒体ビーズを用いることが特に望ましい。
【0030】
水性ゲル状組成物又は化粧料に配合する場合の水スラリーとしての葉状シリカ2次粒子は、水中に1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の濃度で分散した水スラリーであることが望ましい。
【0031】
なお、水スラリー状の葉状シリカ2次粒子としては、上記のようにして調製することができるが、その他、市販のものを適宜使用してもよい。例えば、市販の葉状シリカ2次粒子分散液としては、サンラブリーLFS−HN−010(平均粒径:0.11μm、比表面積371.6m2/g、シラノール基:7544μmol/g)、サンラブリーLFS−HN−020(平均粒径:0.18μm、比表面積206.8m2/g、シラノール基:4856μmol/g)、サンラブリーLFS−HN−050(平均粒径:0.52μm、比表面積152.2m2/g、シラノール基:4611μmol/g)、サンラブリーLFS−HN−150(平均粒径:1.5μm、比表面積72.7m2/g、シラノール基:4133μmol/g)、サンラブリーLFS−C(平均粒径:0.54μm、比表面積143.6m2/g、シラノール基:4133μmol/g)(以上洞海化学工業社製)が好ましいものとして挙げられる。
【0032】
なお、葉状シリカ2次粒子は、必ずしも水スラリー状だけでなく、当該水スラリーを乾燥し粉体としたものでもよい。この乾燥は、希薄スラリーからの噴霧乾燥などによって調製することができる。また、市販のものとして、サンラブリーC(平均粒径:5.25μm、比表面積66.8m2/g、シラノール基:3647μmol/g)(洞海化学工業社製))等が好ましいものとして挙げられる。
【0033】
(水性媒体可溶性の界面活性剤)
本発明で葉状シリカ2次粒子のゲル化促進成分として使用する水性媒体可溶性の界面活性剤としては、特に限定するものではなく、例えば、
【0034】
(a)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンアルキレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン性界面活性剤;
【0035】
(b)スルホベタイン型、アルキルベタイン型、アミドプロピルベタイン型、イミダゾリニウムベタイン型、レシチン及び水添レスチン、リゾレシチン、水添リゾレシチン等の両性界面活性剤;
【0036】
(c)ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、エチル硫酸ラノリン脂肪酸、アミノプロピルジメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤が使用可能なものとして例示される。
【0037】
上記例示した界面活性剤はいずれも好適に使用可能であるが、なかでも、(a)水性媒体可溶性のノニオン性界面活性剤及び(b)水性媒体可溶性の両性界面活性剤は、特にゲル化能が高く、最も好ましい。
【0038】
本発明の水性ゲル状組成物における、これら界面活性剤の葉状シリカ2次粒子に対する配合量は、ゲル化能の面から葉状シリカ2次粒子と界面活性剤の質量比で1:0.001〜1:3であることが好ましく、さらに好ましくは、葉状シリカ2次粒子と界面活性剤の質量比は1:0.01〜1:1である。
【0039】
質量比がこれよりあまり小さい場合は、充分にゲル化を促進することができず、また、質量比がこれよりあまり過大の場合は、それ以上のゲル化促進効果が認められず、経済的にも無意味である。
【0040】
(水性媒体可溶性の酸)
本発明において、葉状シリカ2次粒子のゲル化促進成分として使用する水性媒体可溶性の酸としては、特に限定するものではなく、公知のものが好適に使用可能であり、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;
【0041】
クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、コウジ酸、フィチン酸、アコニット酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、グリセロリン酸、グルコン酸、オキサロ酢酸、グリセリン酸、ニコチン酸、アジピン酸、フタル酸、グリコール酸、オキシ酪酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸が好ましいものとして例示される。
【0042】
上記した酸のうち、特に化粧品分野で使用することを考慮すると、人体に対する安全性や刺激性等の面から有機酸の配合が特に好ましい。
本発明の水性ゲル状組成物における、これら酸の葉状シリカ2次粒子に対する配合量は、ゲル化能の面から葉状シリカ2次粒子と酸の質量比で1:0.001〜1:10であることが好ましく、さらに好ましくは葉状シリカ2次粒子と界面活性剤の質量比は1:0.01〜1:3である。質量比がこれよりあまり過小の場合は、充分にゲル化を促進することができず、また、質量比がこれよりあまり過大の場合はそれ以上の効果がゲル化促進効果が認められず、経済的にも意味がない。
【0043】
(水性ゲル状組成物の調製)
本発明においては、水性媒体に、上記した葉状シリカ2次粒子と当該水性媒体可溶性の界面活性剤や酸を添加して混合することにより、当該葉状シリカ2次粒子は容易にゲル化し、水性ゲル状組成物を得ることができる。
【0044】
これらの混合順序としては、任意であるが、一つの好ましい水性ゲル状組成物の調製方法としては、水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の液相と、(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む液相を別々に調製、準備しておき、使用時にこの両者を混合してゲル化せしめるものである。これが、2液型水性ゲル状組成物として使用する態様である。
【0045】
当該ゲル状組成物における、固体成分である葉状シリカ2次粒子の量は、使用目的に応じて、広範囲に変更可能であるが、通常は0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
本発明の水性ゲル状組成物は、ゲル状化粧品用途又は皮膚貼附薬剤等の医薬品用途に好適に使用可能であり、特に化粧品用途に好適に使用される。
【0046】
(水性ゲル状化粧料)
上記した水性ゲル状組成物に対し、種々の化粧料成分を配合することにより、各種の水性ゲル状化粧料を得ることができる。なお、ここにいう「水性ゲル状化粧料」には、いわゆる「水性ゲル状化粧料下地」も含まれる。また、本発明における「水性ゲル状化粧料」はしばしば「水性ジェル状化粧料」と称されているものをも包含する。
【0047】
すなわち、かくして調製される、本発明のゲル状化粧料は、以下に限定されるものではないが、例えば、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧料;サンスクリーンクリーム等の日焼け止め化粧料;アンダーメークアップ、リキッドファンデーション、チークカラー、アイシャドウ、マスカラ、口紅等のメークアップ化粧料;シャンプー、リンス、クレンジングクリーム、洗顔フォーム、液状洗顔料等の洗浄用化粧料;ヘアワックス等の毛髪用化粧料;浴用剤等の浴用化粧料などとして調製することができる。
【0048】
当該水性ゲル状化粧料等における、固体成分である葉状シリカ2次粒子の量は、使用目的に応じて、広範囲に変更可能であるが、通常は0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜70質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。葉状シリカ2次粒子の量がこれよりあまり少ないと十分なゲル状の化粧料が得られず、これよりあまり過大であると、肌への塗布時にギシギシした感触になり、使用感への影響が大きく、化粧品組成物として相応しくない。
【0049】
なお、2液型水性ゲル状組成物の場合と同様に、水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の液相と、(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む液相を別々に調製、準備しておき、使用時にこの両者を混合してゲル化せしめる形態の2液型水性ゲル状化粧料として提供することもできる。
【0050】
(化粧料配合成分)
本発明のゲル状化粧料(又は化粧料下地)には、必要に応じて、化粧料や、さらには医薬部外品に通常添加される成分、例えば油剤、他の界面活性剤、洗浄剤、増泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、無機顔料、有機顔料、美白剤、生理活性成分、抗炎症剤、動植物エキス、香料、金属封鎖剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤等の添加剤成分を配合することができる。
【0051】
(顔料)
本発明の大きな効果として、後記実施例に示されているように、水性ゲル状組成物または化粧料の配合成分として常用される顔料が凝集しないことが挙げられる。
念のため本発明の水性ゲル組成物や化粧料として好適に配合される顔料を例示しておく。
【0052】
具体的には、以下のものが例示される。
すなわち、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックスパウダー、ナイロンパウダー、シリコンパウダー、ポリエチレンパウダー、アクリルパウダー、微結晶性セルロース、ウレタンパウダー、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機及び有機の白色顔料;
【0053】
酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青等の着色顔料、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料;
【0054】
アルミニウムパウダー、カッパーパウダー;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色401号及び青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の無機粉体;有機粉体、無機着色顔料、金属粉末顔料、有機着色顔料;等が挙げられる。
【0055】
(ゲル化メカニズム)
本発明において、葉状シリカ2次粒子が特定の界面活性剤の作用でゲル化が促進される詳細な機構はもちろん明確にすることはできないが、本発明者らは、一応以下の様であろうと推測している。
【0056】
本発明における葉状シリカ2次粒子が水中に分散している場合、当該粒子の分散や凝集、これに伴うサスペンションの増粘やゲル化は、粒子表面の電気二重層による静電気的反発力による斥力とファン・デル・ワールス引力の微妙なバランスに支配されると想定する。本発明における分散系においては、ファン・デル・ワールス引力は不変と考えることができるので、電気二重層を薄くして反発力による斥力を小さくし、引力による凝集をさせればゲル化が引き起こされる。
【0057】
葉状シリカ2次粒子を形成する鱗片状シリカ薄片粒子表面は、水中で例えば周知の粘土状鉱物と同様に負に帯電しているとすれば、そのアナロジーに従って、粒子表面近傍にカチオンを吸着するが、その分布は、当該粒子を取り巻きながら、遠方にまで広がる電気二重層を形成し、これが粒子間反発を起こしてファン・デル・ワールス引力に勝って分散安定化していると考えてよい。
【0058】
かかるアナロジーモデルによれば、酸性領域では、そのカチオンが増えるので、カチオン分布層が圧縮され電気二重層が薄く小さくなるため、粒子間が接近し、凝集が生じることになる。また、同様にして、分散系の電解質濃度が高められることでも凝集が引き起こされる。さらに、葉状2次粒子のような、アスペクト比の高い扁平な粒子は、酸性領域では端面と中央部での電気的分極が起こり、正の端面が負の中央部に吸着され、この吸着が連鎖して行き、いわゆるカードハウス構造と呼ばれる非常に嵩高い凝集状態が引き起こされる。以上のごとき凝集要因が重なり電気二重層の減少による接近とカードハウス凝集が、サスペンション系全体に及ぶことで急激なゲル化を伴うと想定されるのである。
【0059】
本発明においては、この葉状シリカ2次粒子の分散液中に導入される界面活性剤は、上記のごとき凝集メカニズムを主として再現し、または補助する役割を奏しているものと推定される。すなわち、ノニオン性界面活性剤は、粒子間凝集の形成の中で、異なる粒子間に親水性末端が吸着され、それぞれの粒子が三次元に絡み合うための架橋剤となり、更に酸と併用することでカードハウス構造を形成するための補強剤として作用するのであろう。
【0060】
一方、両性界面活性剤は電解質濃度を高めることにより、またカチオン性界面活性剤は、水中のカチオン濃度を自らが高め、電気二重層を薄くさせることにより、上記の凝集を進める一助となると推定される。
おそらく上記のような複数の要因からなる粒子凝集のメカニズムにより、葉状シリカ2次粒子と特定の界面活性剤等からなる、本発明における水性ゲル状組成物及びこれを含む水性ゲル状化粧料のベースとなるゲル化システムが完成されるものと推定される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。なお、%とあるものは、とくに断りなき限り、質量%である。
【0062】
〔実施例1〕(水性ゲル状組成物)
(1)葉状シリカ2次粒子としては、その水スラリー(シリカ固形分が13〜14%の分散液)(洞海化学工業社製、サンラブリーLFS−C、平均粒径:0.54μm、比表面積:143.6m2/g、シラノール基4133μmol/g、防腐剤配合タイプ)40.00部を使用した。
また、水性媒体可溶性の界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤(ポリソルベート80)1.00部を使用した。
【0063】
(2)ノニオン性界面活性剤を、精製水59.00部に溶解させ、さらにサンラブリーLFS−C40.00部を加えて撹拌下に混合したところ、ゲル化し、水性ゲル状組成物が生成された。B型粘度計(TV−10M型;東機産業株式会社製)により、このゲル状組成物の粘度を測定し、ゲル化形成能の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、ゲル化形成能の評価は、後記する比較例1又は比較例4のブランクの粘度(ゲル化促進成分を添加しない葉状シリカ2次粒子スラリーの粘度)と比較して、著しい粘度上昇が認められたものをゲル化生成と判断した。なお、表1には、ゲル状組成物の組成(処方)と粘度、粘度の測定条件及びゲル化の有無とをまとめて示した。
【0064】
〔実施例2〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の界面活性剤であるノニオン性界面活性剤として、ポリソルベート80の代わりに、PEG−40水添ヒマシ油1.00部を使用するほかは、実施例1と同一の試験を行った。結果をまとめて表1に示した。得られた水性ゲル状組成物においては、比較例1と比較してさらに著しい粘度上昇が認められた。
【0065】
〔実施例3〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の界面活性剤としてカチオン性界面活性剤であるラウラミドプロヒルベタイン(30%水溶液)3.30部を使用し、精製水56.70部を使用するほかは、実施例1と同一の試験を行った。結果をまとめて表1に示した。得られた水性ゲル状組成物においては、比較例1と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0066】
〔実施例4〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の界面活性剤としてカチオン性界面活性剤であるセトリモニウムクロリド(30%水溶液)3.30部を使用し、精製水56.70部を使用するほかは、実施例1と同一の試験を行った。結果をまとめて表1に示した。得られた水性ゲル状組成物においては、比較例1と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0067】
〔比較例1〕
ゲル化促進成分を添加しないほかは、実施例1と実質的に同一の試験を行った。葉状シリカ2次粒子の水スラリーは、全くゲル化は認められない。結果をまとめて表1に示した。
【0068】
〔比較例2〕
界面活性剤として水媒体に不溶のノニオン性界面活性剤であるイソステアリン酸ポリグリセリル−2の1.00部を使用するほかは、実施例1と同一の試験を行った。葉状シリカ2次粒子の水スラリーは、イソステアリン酸ポリグリセリル−2添加によっては、全くゲル化しなかった。結果をまとめて表1に示した。
【0069】
〔比較例3〕
界面活性剤としてアニオン性界面活剤であるラウレス硫酸ナトリウム(25%水溶液)の4.00部を使用するほかは、実施例1と実質的に同一の試験を行った。葉状シリカ2次粒子の水スラリーは、アニオン性界面活剤であるラウレス硫酸ナトリウム添加によっては、全くゲル化しなかった。結果をまとめて表1に示した。
【0070】
【表1】

【0071】
〔実施例5〕(水性ゲル状組成物)
(1)葉状シリカ2次粒子としては、実施例1で使用したその水スラリー(シリカ固形分が13〜14%の分散液)(洞海化学工業社製、サンラブリーLFS−C、防腐剤配合タイプ)60.00部を使用した。
また、水性媒体可溶性の酸として、クエン酸10.00部を使用した。
【0072】
(2)クエン酸10.00部を、精製水30.00部に溶解させ、さらにサンラブリーLFS−C60.00部を加えて撹拌下に混合したところ、ゲル化し水性ゲル状組成物が生成された。実施例1と同様にしてB型粘度計(TV−10M型;東機産業株式会社製)により、このゲル状組成物の粘度を測定し、ゲル化形成能の評価を行った。結果を表2に示す。得られた水性ゲル状組成物においては、比較例4と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0073】
なお、ゲル化形成能の評価は、比較例1又は比較例4のブランクの粘度(ゲル化促進成分を添加しない葉状シリカ2次粒子スラリーの粘度)と比較して、著しい粘度上昇が認められたものをゲル化生成と判断した。なお、表2には、ゲル状組成物の組成(処方)と粘度、粘度の測定条件及びゲル化の有無とをまとめて示した。
【0074】
〔実施例6〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の酸として、クエン酸5.00部を使用し、精製水35.00部を使用するほかは、実施例5と同様の実験を行った。結果を表2にまとめて示した。
得られた水性ゲル状組成物においては、比較例4と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0075】
〔実施例7〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の酸として、クエン酸に代えてグリコール酸10.00部を使用するほかは、実施例5と同様の実験を行った。結果を表2にまとめて示した。
得られた水性ゲル状組成物においては、比較例4と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0076】
〔実施例8〕(水性ゲル状組成物)
水性媒体可溶性の酸として、グリコール酸5.00部を使用し、精製水35.00部を使用するほかは、実施例5と同様の実験を行った。結果を表2にまとめて示した。
得られた水性ゲル状組成物においては、比較例4と比較して著しい粘度上昇が認められた。
【0077】
〔比較例4〕
ゲル化促進成分である酸を添加せず、精製水40.00部を使用するほかは、実施例5と同一の試験を行った。葉状シリカ2次粒子の水スラリーは、全くゲル化は認められない。結果をまとめて表2に示した。
【0078】
〔比較例5〕
クエン酸の代わりに塩化ナトリウム10.00部を添加するほかは、実施例5と同一の試験を行った。塩化ナトリウムの添加によっては、葉状シリカ2次粒子の水スラリーは、全くゲル化しなかった。結果をまとめて表2に示した。
【0079】
【表2】

【0080】
なお、比較のため、実施例5〜8におけるサンラブリー60.00部を、通常の増粘剤であるカルボマー(カルボキシビニルポリマー)0.60部、及び中和剤であるNaOH0.30部で置き換えたところ、存在するクエン酸やグリコール酸のため、ゲル化を示さなかった。
【0081】
〔実施例9〕(化粧料下地)
(1)実施例2に示した水性ゲル状組成物に準じた組成物を使用した化粧料下地の試験を行った。
すなわち、葉状シリカ2次粒子としては、その水スラリー(シリカ固形分が13〜14%の分散液)(洞海化学工業社製、サンラブリーLFS−C、防腐剤配合タイプ)40.00部、ノニオン性界面活性剤(PEG−40水添ヒマシ油)0.50部を使用して水性ゲル状組成物とした。当該組成物は、著しい粘度上昇が認められ、その増粘性はきわめて高いものであった。
【0082】
(2)この水性ゲル状組成物を主たる組成物とし、これに表3に示した処方の各成分を添加して水性ゲル状化粧料下地を調製した。
【0083】
(3)当該調製した化粧料下地について、以下に示す評価方法により使用感の官能試験及び経時安定性試験を行い、結果を表2に示した
【0084】
(官能試験方法)
女性パネラー(10〜15名)が、上記調製した水性ゲル状化粧料下地を通常の使用方法にて肌に塗布し、「塗布時の伸び」、「塗布後の感触」、「ファンデーションの付き」について、以下の5段階の評点にて評価した。
【0085】

5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い

かくして評価した総得点をパネラーの数で割ったものを評価点とし、下記の判定符号を付して評価した。
【0086】

評価点:
5〜3.5=良い:○
3.5〜2.5=普通:△
2.5以下=悪い:×
【0087】
(経時安定性試験)
上記調製した水性ゲル状化粧料下地を25℃と40℃の恒温槽に、それぞれ1ヶ月間保管した時の両者の状態を目視にて観察し、初期状態と比べ、状態変化(分離、離漿、凝集物のいずれかが認められる)の有無を以下の判定基準に従って評価した。
【0088】

25℃及び40℃とも、初期状態と変化なし:○
25℃の状態は変化ないが、40℃の状態に変化が認められる:△
25℃及び40℃の両条件の状態に変化が認められる: ×
【0089】
〔比較例6〕(化粧料下地)
実施例9に示した化粧料下地において、水性ゲル組成物として葉状シリカ2次粒子を使用せず、通常の増粘剤を使用した試験を行った。
すなわち、増粘剤として、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)0.40部及び中和剤としての水酸化ナトリウム0.20部を使用するほかは、実施例9と同様の試験を行った。結果を官能試験、安定性とともに表3に示した。
【0090】
〔比較例7〕(化粧料下地)
実施例9に示した化粧料下地において、水性ゲル組成物として葉状シリカ2次粒子を使用せず、通常の増粘剤であるセルロースガム3.00部を使用するほかは、実施例9と同様の試験を行った。結果を官能試験、安定性とともに表3に示した。
【0091】
〔比較例8〕(化粧料下地)
実施例9に示した化粧料下地において、水性ゲル組成物として葉状シリカ2次粒子を使用せず、通常の増粘剤である粘土鉱物であるモンモリロナイト4.00部を使用するほかは、実施例9と同様の試験を行った。結果を官能試験、安定性とともに表3に示した。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示されているように、本発明の水性ゲル状組成物を使用する実施例9は、従来の典型的な増粘剤であるカルボマー(カルボキシビニルポリマー)、セルロースガム及びモンモリロナイトを使用する比較例6〜8と対比して充分な増粘性を奏するだけでなく、これを化粧料下地に適用した場合、官能試験において、(1)塗布時の伸び、(2)塗布後の感触及び(3)ファンデーションの付きのすべての点で、満足すべきものと評価された。これに対して、従来の増粘剤の場合は、この評価項目(1)〜(3)のすべてにおいて、良好なものはなかった。
【0094】
また、本発明の水性ゲル状化粧料下地は、一ヶ月間の保存、経時安定性において、比較例のゲル状組成物下地のような配合顔料による凝集物生成(比較例6)や粘土鉱物による相分離(比較例8)など全く生じない極めて安定性の高いものであった。なお、セルロースガム配合の場合(比較例7)は、ゲル組成物の安定性はあるが、官能試験の結果(塗布後の感触、ファンデーションの付き)が極めて不満足なものである。
【0095】
〔実施例10〕(化粧料/クリームファンデーション)
(1)実施例2に示した水性ゲル状組成物に準じた組成物を使用した化粧料の試験を行った。
すなわち、葉状シリカ2次粒子としては、その水スラリー(シリカ固形分が15%の分散液)(洞海化学工業社製、サンラブリーLFS−HN−050、平均粒子径0.52μm、比表面積152.2m2/g、シラノール基4611μmol/g)25.0%、ノニオン性界面活性剤(PEG−40水添ヒマシ油)0.5%からなる水性ゲル状組成物をベースとして使用した。
【0096】
(2)この水性ゲル状組成物を主たる組成物とし、これに表4に示した処方の各成分を添加して水性ゲル状化粧料(クリームファンデーション)を調製した。
すなわち、表4の(1)〜(14)までの成分を均一に分散させ、撹拌を行いながら(15)の成分を添加して、クリームファンデーションを調製した。
【0097】
得られたクリームファンデーションは粘度が250,000mPa・s(測定条件:4号ローター、1.5rpm、 60sec)であり、使用し易い粘性を持ち、安定性も良好であり、使用感に関しては皮膚への伸びに優れ、持続性も高いものであった。
【0098】
【表4】

【0099】
〔実施例11〕(2液混合型/角質除去クリーム)
(1)実施例2に示した水性ゲル状組成物に準じた組成物を使用した化粧料の試験を行った。
すなわち、葉状シリカ2次粒子としては、その水スラリー(シリカ固形分が15%の分散液)(洞海化学工業社製、サンラブリーLFS−HN−050、平均粒子径0.52μm、比表面積152.2m2/g、シラノール基4611μmol/g)30.0%、ノニオン性界面活性剤(PEG−40水添ヒマシ油)0.8%及びグリコール酸3.0%からなる水性ゲル状組成物をベースとして使用した。
【0100】
(2)この水性ゲル状組成物を主たる組成物とし、これに表5に示した処方の各成分を以下のように混合して水性ゲル状化粧料(2液混合型/角質除去クリーム)を調製した。
(i)すなわち、まず、表5の第1剤、第2剤を次のようにして調製する。
第1剤:表5の(1)〜(4)までの成分を均一に分散させ、葉状シリカ2次粒子スラリーの均一分散液とする。
第2剤:表5の(1)’〜(5)’までの各成分を均一に溶解し、透明溶液を調製するる。
【0101】
(ii)この第1液と第2液とで、2液混合型の角質除去クリームを構成する。
使用直前に当該第1剤と第2剤を等容量混合することにより、水性ゲル状となるので、これを肌に塗布する。この結果、皮膚の角質が柔らかくなったら、当該クリームを洗い流すことにより、角質が除去されるのである。
【0102】
(3)かくして得られた2液混合型の角質除去クリームは、混合前の、第1剤、第2剤とも、粘性は殆どないが、両者を等量混合すると、急激にゲル化が生じ、その粘度が4,400mPa・s(測定条件:4号ローター、30rpm、60sec)であり、使用し易い粘性を持ち、肌に塗布する際には、たれることがなく、良好な使用性を有していた。
【0103】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状組成物が提供される。
また、本発明の水性ゲル組成物を含有せしめることにより、同様に従来のゲル化剤を使用せずに、長期安定性に優れ、無機顔料を配合しても凝集を生ずることなく、使用感の良好な水性ゲル状化粧料が提供されるのであるから、その産業上の利用可能性はきわめて大きい。なお、この水性ゲル組成物は化粧用途ばかりでなく医薬品用途にも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状シリカの薄片1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、複数枚重なって形成される自己造膜性を有する葉状シリカ2次粒子及び次の成分(a)〜(d)からなる群より選択される少なくとも1種以上のゲル化促進成分を、水性媒体に含有させゲル化させてなることを特徴とする水性ゲル状組成物。
(a)水性媒体可溶性のノニオン性界面活性剤、
(b)水性媒体可溶性の両性界面活性剤、
(c)水性媒体可溶性のカチオン性界面活性剤、及び
(d)水性媒体可溶性の酸
【請求項2】
前記葉状シリカ2次粒子と前記(a)〜(c)から選択される界面活性剤との比が質量比で1:0.001〜1:3である請求項1に記載の水性ゲル状組成物。
【請求項3】
前記葉状シリカ2次粒子と前記(d)酸との比が質量比で1:0.001〜1:10である請求項1に記載の水性ゲル状組成物。
【請求項4】
前記(d)の酸が有機酸である請求項1又は3に記載の水性ゲル状組成物。
【請求項5】
水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の相と、前記(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む相からなる請求項1〜4のいずれかに記載の2液型水性ゲル状組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の水性ゲル状組成物を含有する水性ゲル状化粧料。
【請求項7】
水性スラリー状の葉状シリカ2次粒子の相と、前記(a)〜(c)から選択される水性媒体可溶性の界面活性剤又は(d)酸からなるゲル化促進成分を含む相からなる請求項5に記載の2液型水性ゲル状組成物を含有する2液型水性ゲル状化粧料。

【公開番号】特開2006−143666(P2006−143666A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336940(P2004−336940)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(390005728)旭硝子エスアイテック株式会社 (16)
【出願人】(591119750)岩瀬コスファ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】