説明

水性ゲル組成物及び保冷剤

【課題】低温条件下においても、柔軟性および保形性に優れ、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)にも優れた保冷剤を構成するのに有用な水性ゲル組成物を提供する。
【解決手段】水性ゲル組成物を、ノニオン性の水溶性セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシアルキルセルロースなど)と、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体(例えば、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体)と、多価アルコール類(C2−6アルカンジオール、ジC2−4アルカンジオール、C3−6アルカントリオールなど)と、水とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性および保形性に優れ、保冷剤などに有用な水性ゲル組成物(又は水性ゲル又は水性ゲル状物)および前記水性ゲル組成物で構成された保冷剤(又は冷却剤又は冷却媒体)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゲル状の保冷剤が種々の分野で使用されている。このような保冷剤は、ゲル状物が密封袋やプラスチック容器などに充填されて使用されている。そして、このようなゲル状物のゲルの形成には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、デンプン、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの水溶性高分子が使用される。
【0003】
このような保冷剤は、冷却、凍結して使用されているが、凍結により硬く固形化し、接触面積が小さくなるため、局部保冷効果が十分でないなどの欠点があった。また、近年では、人体や対象物への使用感、適合性(フィット感)も保冷剤の重要な要素となってきている。このため、保冷剤に低温柔軟性を付与する試みがなされている。
【0004】
例えば、特公平1−43795号公報(特許文献1)には、油性媒体40〜70重量%と水性媒体60〜30重量%からなる油中水滴型エマルションに、水に不溶の吸水性高分子(デンプン、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等に架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、ナトリウムトリメタホスフェート等で架橋したもの、また、デンプン−ポリアクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−(メタ)アクリル酸共重合体の塩類、ポリビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体等)を適量配合した保冷用熱媒体が開示されている。この文献には、油中水滴型エマルションに水に不溶の吸水性高分子を適量混合した場合には柔軟安定性が著しく向上すると記載されている。しかし、この文献の熱媒体では、冷凍により一部が固化してザラメ状となるため、依然として低温柔軟性が不十分である。また、前記熱媒体では、流動パラフィンなどの油性媒体が必要である。
【0005】
また、特許第2934045号公報(特許文献2)には、特定の平均置換度および粘度を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に、3価以上の金属の塩の水溶液を特定の割合で混合してゲル状物を作り、これに食添油を特定量添加してゲルをザラメ雪状にし、次いで界面活性剤および凝固点降下剤(食塩、塩化カルシウム等の塩類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等)を特定量添加して攪拌混合してゲル状組成物を得る柔軟性保冷用組成物の製造方法が開示されている。しかし、この文献のゲル状組成物でも、一部がザラメ状となるため低温柔軟性が不十分であり、しかも、食添油が必要である。
【0006】
さらに、特開2003−96238号公報(特許文献3)には、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、エタノールアミン類から選ばれる1種又は2種以上の溶媒と、水溶性セルロースエーテル(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースなど)とを含むゲルが開示されている。この文献には、上記ゲルを用いて得られるゲル状保冷剤組成物は、多価アルコール、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、エタノールアミン類から選ばれる1種又は2種以上の溶媒に、水溶性セルロースエーテルを分散させた後、溶媒の沸点から10〜30℃ほど低い温度に加熱して溶解させ、この溶液に含水吸水性ポリマーを混合して冷却することにより得られるものであり、このゲル状保冷剤組成物は、低温(−30℃)から高温(80℃付近)までゲルの状態を保持し、柔軟性及び形状保持性能に優れるものであると記載されており、前記含水吸水性ポリマーとして、ポリアクリル酸系吸水性ポリマー、ポリビニルアルコール系吸水性ポリマー、ポリアクリルアミド系吸水性ポリマー、ポリオキシエチレン系吸水性ポリマー、デンプン系の吸水性ポリマー、セルロース系吸水性ポリマーなどを例示している。しかし、この文献のゲルでは、ゲルの形成に100℃以上の加熱が必要である。
【0007】
さらにまた、特開2006−232724号公報(特許文献4)には、(A)少なくとも1つの不飽和部分と酸無水物部分とから構成される繰り返し単位と、少なくとも1つの不飽和部分と前記酸無水物部分に対応する酸化合物部分とから構成される繰り返し単位とを含むポリマー(例えば、炭素数3〜24のアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体、炭素数3〜24のアルキルビニルエーテル/無水イタコン酸/イタコン酸から構成される共重合体など)と、(B)多価アルコールとを含有するゲル組成物であって、(A)ポリマーが、酸無水物部分と該酸無水物部分に対応する酸化合物部分とを、モル比にして15/85〜85/15なる割合で含むことを特徴とする前記ゲル組成物が開示されている。この文献には、前記ゲル組成物には、使用する多価アルコールに溶解または膨潤する高分子、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸などを添加してもよいことが記載されている。そして、実施例9では、これらの高分子のうち、ヒドロキシプロピルセルロースを使用したことが記載されている。なお、この文献のゲル組成物では、水を実質的に含まない(ポリマーに対して1%程度)ポリマーを使用する必要があることが記載されている。
【特許文献1】特公平1−43795号公報(特許請求の範囲、第1頁右欄第22〜24行、第2頁左欄第8〜17行、第2頁左欄第39〜42行)
【特許文献2】特許第2934045号公報(特許請求の範囲、段落番号[0012])
【特許文献3】特開2003−96238号公報(特許請求の範囲、段落番号[0010]、[0023]〜[0029])
【特許文献4】特開2006−232724号公報(特許請求の範囲、段落番号[0018]、[0042])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、低温条件下においても、柔軟性および保形性に優れている水性ゲル組成物および前記ゲル組成物で構成された保冷剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)に優れた保冷剤を構成するのに有用な水性ゲル組成物および前記ゲル組成物で構成された保冷剤を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、冷却部位の形状にかかわらず、保冷(又は冷却)に対する即効性を発揮できる保冷剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とを組み合わせた水性ゲル組成物では、低温(例えば、−30℃程度)から常温(例えば、15〜30℃)において、優れた柔軟性や保形性を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の水性ゲル組成物は、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分(又はモノマー又は単量体)とする重合体と、多価アルコール類と、水とで構成されている。このような水性ゲル組成物において、前記ノニオン性の水溶性セルロースエーテルは、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルアルキルセルロースから選択された少なくとも1種であってもよい。特に、前記ノニオン性の水溶性セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロースであってもよい。
【0013】
また、前記水性ゲル組成物において、前記不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体は、例えば、不飽和ジカルボン酸無水物(特に、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物)を重合成分とする重合体であってもよい。前記不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体は、代表的には、無水マレイン酸系共重合体(特に、アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などのビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体)であってもよい。
【0014】
本発明の水性ゲル組成物において、多価アルコール類は、例えば、C2−6アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなど)、ジC2−4アルカンジオール(例えば、ジエチレングリコールなど)、およびC3−6アルカントリオール(例えば、グリセリンなど)から選択された少なくとも1種であってもよい。
【0015】
前記水性ゲル組成物において、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=85/15〜15/85程度であってもよく、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の総量の割合は、水性ゲル組成物全体に対して15重量%以下であってもよく、また、水の割合はノニオン性の水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の総量1重量部に対して0.5〜20重量部程度であってもよい。
【0016】
また、前記水性ゲル組成物において、水の割合は、水性ゲル組成物全体に対して15〜80重量%程度であってもよい。さらに、前記水性ゲル組成物において、多価アルコール類と水との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=85/15〜25/75程度であってもよい。
【0017】
本発明には、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とを混合し、前記水性ゲル組成物を製造する方法も含まれる。この方法は、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の溶液(特に、水溶液)を調製する工程を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の水性ゲル組成物は、低温における柔軟性や保形性に優れているため、保冷剤に好適である。そのため、本発明には、前記ゲル組成物で構成された保冷剤も含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水性ゲル組成物は、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とを組み合わせて構成されているため、低温条件下においても、柔軟性および保形性において優れている。そのため、本発明のゲル組成物は、保冷剤に好適に適用できる。特に、本発明のゲル組成物は、前記のような特定の構成により、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)においても優れた保冷剤を構成するのに有用である。さらに、本発明の保冷剤は、前記のように低温における柔軟性(低温柔軟性)や保形性に優れており、冷却部位の形状にかかわらず、保冷(又は冷却)に対する即効性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[水性ゲル組成物]
本発明の水性ゲル組成物(単に、ゲル組成物、ゲルなどという場合がある)は、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とで構成されている。
【0021】
(水溶性セルロースエーテル)
ノニオン性の水溶性セルロースエーテル(単にセルロースエーテルなどということがある)としては、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース、好ましくはC1−2アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース、好ましくはヒドロキシC2−3アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルC1−4アルキルセルロース、好ましくはヒドロキシC2−3アルキルC1−2アルキルセルロース)などが挙げられる。なお、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどにおいて、「ヒドロキシアルキル」とは、セルロースのヒドロキシル基を構成する水素原子が、1つのヒドロキシアルキル基(モノヒドロキシアルキル基)に置換した基のみならず、2以上のヒドロキシアルキル基(例えば、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基など)が置換した基も含まれる。すなわち、「ヒドロキシアルキル」とは、基−[(RO)−R−OH](式中、Rはアルキレン基、nは0以上の整数を示す)を意味する。
【0022】
これらのセルロースエーテルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0023】
これらのセルロースエーテルのうち、低温柔軟性、保形性、取扱性などのバランスにおいても優れている点で、特に、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。なお、本発明では、水溶性セルロースエーテルの中でも、特に、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルを使用する。このようなセルロースエーテルを使用することにより、他の水溶性セルロースエーテル(カルボキシアルキルセルロース又はその塩など)に比べて、低温柔軟性や保形性において十分なゲルを得ることができる。
【0024】
セルロースエーテル(例えば、ノニオン性の水溶性セルロースエーテル)の平均置換度(又は平均エーテル化度、(DS)、例えば、ヒドロキシアルキル基などの平均置換度)は、例えば、0.4〜3、好ましくは0.6〜2.5、さらに好ましくは0.8〜2.3程度であってもよい。特に、ヒドロキシアルキルセルロースの平均置換度は、0.5〜3、好ましくは0.8〜2、さらに好ましくは1〜1.5程度であってもよい。なお、「平均置換度」とは、セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基に対する置換度(置換割合)の平均であり、最大値は3である。
【0025】
なお、ヒドロキシアルキルセルロースの平均置換モル数[又はヒドロキシアルキルセルロースのグルコース単位1モルあたりに含まれるオキシアルキレン単位の平均モル数]は、例えば、1〜3モル、好ましくは1.2〜2.8モル、さらに好ましくは1.5〜2.5モル程度であってもよい。
【0026】
セルロースエーテルの2重量%水溶液(イオン交換水溶液)粘度は、B型粘度計を用いて、60rpmおよび25℃の条件下で測定したとき、例えば、10〜100000mPa・s、好ましくは300〜70000mPa・s、さらに好ましくは1000〜50000mPa・s程度であってもよい。
【0027】
(不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体)
不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体(単に、不飽和ポリカルボン酸系重合体などということがある)は、不飽和ポリカルボン酸成分を少なくとも重合成分(又はモノマー)とする重合体である。このような重合体には、不飽和ポリカルボン酸成分の単独又は共重合体、不飽和ポリカルボン酸成分と他の共重合性単量体との共重合体などが含まれる。
【0028】
不飽和ポリカルボン酸成分としては、不飽和ポリカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸無水物などが含まれる。代表的な不飽和ポリカルボン酸成分としては、例えば、不飽和ジカルボン酸成分(例えば、(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸などのC4−10不飽和ジカルボン酸又はその無水物)などが挙げられる。これらの不飽和ポリカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、不飽和ポリカルボン酸とは、不飽和基と複数のカルボキシル基を有する化合物を意味し、不飽和ポリカルボン酸には、不飽和基と1つのカルボキシル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸など)は含まれない。
【0029】
これらの不飽和ポリカルボン酸成分のうち、α,β−不飽和ジカルボン酸成分(例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸無水物)が好ましく、特に、無水マレイン酸が好ましい。
【0030】
共重合性単量体としては、例えば、オレフィン系単量体[例えば、アルケン(エチレン、プロピレン、イソブテン、ブテン、ペンテンなどのC2−10アルケン、好ましくはC2−4アルケンなど)、環状オレフィン(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどのシクロアルケン、ノルボルネンなどの架橋環式オレフィンなど)など]、ジエン系単量体(例えば、ブタジエンなどのアルカジエン、シクロペンタジエンなどのシクロアルカジエン)、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル、好ましくは(メタ)アクリル酸C1−4アルキルエステルなど)など]、不飽和モノカルボン酸[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸など]、スチレン系単量体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)、不飽和ニトリル類(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、ハロゲン系単量体(例えば、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル)、カルボン酸ビニル系単量体(例えば、酢酸ビニルなど)、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸(例えば、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸など)などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0031】
これらの共重合性単量体のうち、特に、ビニルエーテルが好ましい。ビニルエーテルとしては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなどのC1−20アルキル−ビニルエーテル、好ましくはC1−10アルキル−ビニルエーテル、さらに好ましくはC1−6アルキル−ビニルエーテル)、シクロアルキルビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテルなどのC5−10シクロアルキル−ビニルエーテルなど)、ポリオールのモノビニルエーテル[例えば、ヒドロキシアルキルビニルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどのヒドロキシC1−20アルキル−ビニルエーテル、好ましくはヒドロキシC1−10アルキル−ビニルエーテル、さらに好ましくはヒドロキシC1−6アルキル−ビニルエーテル)など]、ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテルなどのポリC2−4アルキレングリコールモノビニルエーテル)など]などが含まれる。これらのビニルエーテルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
好ましいビニルエーテルには、アルキルビニルエーテル(例えば、C1−4アルキル−ビニルエーテル、特にメチルビニルエーテル)が含まれる。
【0033】
なお、不飽和ポリカルボン酸系重合体が、不飽和ポリカルボン酸無水物を重合成分とする重合体である場合、ポリマー中の酸無水物単位(例えば、無水マレイン酸単位)は、一部又は全部において、開環又は加水分解していてもよい(すなわち、遊離のカルボキシル基に変換されていてもよい)。なお、本発明の水性ゲル組成物は、水を含んでいるため、原料として用いる不飽和カルボン酸系重合体が酸無水物単位を有していても、組成物中においては、通常、酸無水物単位のすべてが開環している場合が多い。この点で、本発明の水性ゲル組成物と、水を実質的に含まず、特定割合の酸無水物単位を必要とするポリマーを必須とする前記特許文献4に記載のゲル組成物とは、構成において大きく異なる。本発明では、水を含む構成であっても、低温における保形性および柔軟性を付与できる。
【0034】
また、前記不飽和ポリカルボン酸系重合体が、カルボキシル基(酸無水物の開環に由来するカルボキシル基など)を有している場合、カルボキシル基の一部が、誘導体化(例えば、エステル化やアミド化)されていてもよい。
【0035】
さらに、このようなカルボキシル基は、塩[例えば、金属塩(例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属塩)、アミン塩など]を形成していてもよい。本発明の水性ゲル組成物では、塩を形成していない不飽和ポリカルボン酸系重合体を使用しても、確実に保形性や粘着性に優れたゲルを得ることができる。
【0036】
代表的な不飽和ポリカルボン酸系重合体には、不飽和ポリカルボン酸成分と共重合性単量体との共重合体(例えば、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などの無水マレイン酸と共重合性単量体との共重合体)などが含まれる。
【0037】
好ましい不飽和ポリカルボン酸系重合体には、不飽和ジカルボン酸無水物(特に、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物)を重合成分とする重合体が含まれ、特に、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(特に、アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体)などの無水マレイン酸系共重合体が含まれる。
【0038】
不飽和ポリカルボン酸系重合体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0039】
不飽和ポリカルボン酸系重合体(ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)の重量平均分子量は、例えば、100000以上(例えば、200000〜3000000程度)、好ましくは500000〜2700000、さらに好ましくは1000000〜2500000程度であってもよい。上記範囲の分子量を有する不飽和ポリカルボン酸系重合体を使用すると、少量で効率よくゲルを得ることができる。
【0040】
(多価アルコール類)
多価アルコール類としては、多価アルコール、多価アルコール誘導体(例えば、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、アミノアルコールなど)などが含まれる。
【0041】
多価アルコール(又はポリオール)としては、ジオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−8アルカンジオール、さらに好ましくはC2−6アルカンジオール、特にC2−4アルカンジオールなど)、ポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールなど)など]、トリオール[アルカントリオール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのC3−10アルカントリオール、好ましくはC3−6アルカントリオール、さらに好ましくはC3−4アルカントリオールなど)など]、4以上のヒドロキシル基を有するポリオール[例えば、4以上のヒドロキシル基を有するアルカンポリオール(エリスリトール、グルシトールなど)、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール(前記アルカントリオールなど)の多量体(例えば、ジグリセリン、トリグリセリンなどのポリグリセリン)など]など}などが挙げられる。
【0042】
多価アルコールエーテルとしては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのC2−4アルキレングリコールアルキルエーテル、好ましくはC2−3アルキレングリコールC1−4アルキルエーテルなど)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジC2−3アルキレングリコールC1−4アルキルエーテル)などの前記例示の多価アルコールのエーテルが挙げられる。
【0043】
多価アルコールエステルとしては、例えば、アルキレングリコールモノ脂肪酸エステル[例えば、エチレングリコールモノ低級脂肪酸エステル(例えば、エチレングリコールモノアセテートなどのエチレングリコールC1−4脂肪酸エステルなど)などのC2−4アルキレングリコール低級脂肪酸エステル(C1−4脂肪酸エステルなど)など]、グリセリン低級脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテートなどのC1−4脂肪酸エステルなど)などの前記例示の多価アルコールのエステルが挙げられる。また、アミノアルコールとしては、例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのC2−6アルカノールアミンなど)などが挙げられる。
【0044】
これらの多価アルコール類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0045】
好ましい多価アルコール類には、C2−6アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなど)、ジC2−4アルカンジオール(ジエチレングリコールなど)、C3−6アルカントリオール(グリセリンなど)などが含まれる。
【0046】
(各成分の割合)
本発明の水性ゲル組成物において、水溶性セルロースエーテルの割合は、例えば、水性ゲル組成物全体(例えば、水溶性セルロースエーテル、不飽和ポリカルボン酸系重合体、多価アルコール類および水の総量)に対して、0.01〜12重量%、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜8重量%(例えば、0.5〜7.5重量%)、特に1〜7重量%(例えば、1.5〜6重量%)程度であってもよい。
【0047】
また、前記水性ゲル組成物において、不飽和ポリカルボン酸系重合体の割合は、例えば、水性ゲル組成物全体に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.2〜7重量%(例えば、0.5〜6重量%)、特に0.7〜5.5重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。
【0048】
さらに、前記水性ゲル組成物において、水溶性セルロースエーテルと不飽和ポリカルボン酸系重合体との割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)、好ましくは85/15〜15/85(例えば、82/18〜30/70)、さらに好ましくは80/20〜40/60(例えば、75/25〜45/55)程度であってもよく、通常85/15〜50/50(例えば、80/20〜55/45)程度であってもよい。
【0049】
なお、本発明の水性ゲル組成物において、水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸系重合体の総量の割合は、例えば、水性ゲル組成物全体に対して、例えば、20重量%以下(例えば、0.1〜18重量%程度)、好ましくは15重量%以下(例えば、0.3〜12重量%程度)、さらに好ましくは0.5〜10重量%程度であってもよく、通常1〜12重量%(例えば、2〜11重量%、好ましくは3〜10重量%)であってもよい。
【0050】
本発明の水性ゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、例えば、水性ゲル組成物全体に対して、10重量%以上(例えば、12〜90重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、15重量%以上(例えば、18〜85重量%程度)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜80重量%程度)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、35〜75重量%程度)であってもよく、通常30〜70重量%(例えば、40〜60重量%)程度であってもよい。また、多価アルコール類の割合は、水溶性セルロースエーテル1重量部に対して、例えば、0.5〜70重量部(例えば、1〜50重量部)、好ましくは2〜40重量部(例えば、3〜30重量部)、さらに好ましくは4〜25重量部(例えば、5〜20重量部)、特に7〜18重量部(例えば、8〜15重量部)程度であってもよい。さらに、多価アルコール類の割合は、不飽和ポリカルボン酸系重合体1重量部に対して、例えば、1〜80重量部、好ましくは2〜70重量部(例えば、3〜60重量部)、さらに好ましくは5〜50重量部(例えば、8〜40重量部)、特に10〜35重量部(例えば、15〜30重量部)程度であってもよい。
【0051】
なお、多価アルコール類の割合は、水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸系重合体の総量1重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部、特に2〜10重量部程度であってもよい。
【0052】
そして、本発明の水性ゲル組成物は水を含んでいる。このような水と、水溶性セルロースエーテル、不飽和ポリカルボン酸系重合体および多価アルコール類とを組み合わせることにより、低温における柔軟性および保形性に優れたゲル組成物を調製することができる。
【0053】
前記水性ゲル組成物において、水の割合は、水性ゲル組成物全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、12〜90重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、15重量%以上(例えば、15〜80重量%程度)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜75重量%程度)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、35〜70重量%程度)であってもよく、通常30〜60重量%(例えば、35〜50重量%)程度であってもよい。
【0054】
また、水の割合は、水溶性セルロースエーテル1重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部、特に4〜15重量部(例えば、5〜12重量部)程度であってもよい。また、水の割合は、不飽和ポリカルボン酸系重合体1重量部に対して、例えば、2〜80重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは15〜70重量部、特に18〜60重量部(例えば、20〜50重量部)程度であってもよい。
【0055】
なお、水の割合は、水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸系重合体の総量1重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部、特に2〜10重量部程度であってもよい。
【0056】
また、前記水性ゲル組成物において、多価アルコール類と水との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=95/5〜8/92(例えば、90/10〜10/90)の範囲から選択でき、例えば、95/5〜15/85(例えば、90/10〜20/80)、好ましくは85/15〜25/75(例えば、80/20〜30/70)、さらに好ましくは75/25〜35/65(例えば、70/30〜40/60)であってもよい。
【0057】
本発明の水性ゲル組成物は、本発明の効果を損なわない程度であれば、用途などに応じて、さらに、添加剤[例えば、界面活性剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)、pH調整剤(酸など)、香料、消臭剤、防臭剤、防黴剤、殺菌剤、忌避剤など]、前記水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸系重合体でない水溶性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなど)、セメント類、無機水酸化物(水酸化アルミナ、水酸化マグネシウムなど)、粘土材料(ベントナイト、タルク、カオリンなど)、水性媒体(メタノールなどの低級アルコール類)、非水性媒体(又は油性媒体、例えば、流動パラフィンなどの鉱油、植物油など)などの他の成分を含んでいてもよい。これらの他の成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
なお、本発明の水性ゲル組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、中和剤[詳細には、不飽和ポリカルボン酸系重合体に対する中和剤、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)、アミン類(例えば、メチルアミン、モノ乃至トリエタノールアミンなどの水溶性アミンなど)]及び/又は架橋剤[例えば、カルシウム化合物(水酸化カルシウムなど)、アルミニウム化合物(水酸化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウムなど)などの多価金属化合物など]を含んでいてもよい。なお、架橋剤は、中和剤として作用する場合もある。
【0059】
本発明の水性ゲル組成物は、このような中和剤及び架橋剤を含んでいなくても(又は実質的に含んでいなくても)確実にゲルを形成できる。そのため、本発明では、中和剤や架橋剤の影響を受けることなく、効率よく粘着性および保形性に優れたゲルを得ることができる。
【0060】
また、特に保冷剤などに用いる場合、本発明の水性ゲル組成物は、柔軟性と保形性を維持できる範囲において、使用温度範囲で凍結と融解の相変化を繰り返す蓄熱成分を含んでいてもよい。これらの他の成分は単独で又は2種以上組み合わせてゲル組成物に含まれていてもよい。なお、本発明のゲル組成物は、界面活性剤を含まない(実質的に含まない)組成物であってもよい。
【0061】
また、本発明の水性ゲル組成物は、油性媒体を含んでいてもよいが、通常、油性媒体を含まない(又は実質的に含まない)のが好ましい。本発明のゲル組成物全体に対する油性媒体の割合は、20重量%以下(例えば、0〜15重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0〜5重量%)、さらに好ましくは1重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)であってもよい。
【0062】
また、本発明の水性ゲル組成物において、ゲル強度は、例えば、100Pa以上(例えば、110〜20000Pa)、好ましくは120〜18000Pa、さらに好ましくは150〜15000Pa程度であってもよい。なお、本発明の水性ゲル組成物は、架橋剤や中和剤を含んでいなくても、十分なゲル強度を有している。
【0063】
(水性ゲル組成物の製造方法)
本発明の水性ゲル組成物は、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸系重合体と、多価アルコール類と、水と(さらに必要に応じて他の成分と)を、混合して調製することができる。このような調製方法は、通常、不飽和ポリカルボン酸系重合体を溶解させる工程(特に不飽和ポリカルボン酸系重合体の水溶液を調製する工程)を含む場合が多い。なお、不飽和ポリカルボン酸系重合体の溶解は、各成分の混合の適当な段階において行うことができる。例えば、不飽和ポリカルボン酸系重合体の水溶液を調製し、この水溶液と他の成分(ノニオン性の水溶性セルロースエーテル、多価アルコール類など)を混合して(又は分散させ)、溶解させることにより、本発明のゲル組成物を調製することができる。
【0064】
なお、各成分の混合は加温下で行ってもよく、常温又は室温下(例えば、15〜30℃程度)で行ってもよい。通常、不飽和ポリカルボン酸系重合体の水溶液と他の成分との混合は、非加熱下(常温又は室温下)で行ってもよい。また、ゲルを確実に形成させるため、各成分を混合した後の混合液を放置又は静置してもよい。このような放置又は静置により、均一かつ透明なゲルを効率よく調製できる場合が多い。
【0065】
放置温度は、常温又は室温(例えば、15〜30℃)〜70℃、好ましくは常温〜50℃程度であってもよい。また、放置時間は、例えば、10分以上(例えば、20分〜24時間程度)、好ましくは30分以上(例えば、1〜20時間程度)、さらに好ましくは1時間以上(例えば、2〜16時間程度)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の水性ゲル組成物は、低温(例えば、−30℃)から常温(例えば、15〜30℃程度)における温度範囲で、柔軟性および保形性において優れている。また、人体などに対する使用感やフィット感においても優れている。そのため、本発明の水性ゲル組成物は、種々の用途、例えば、パップ剤、冷却シート、保冷剤などを構成するのに有用であり、特に、保冷剤に好適である。
【0067】
このような保冷剤は、柔軟性を有する容器(例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂、ゴムなどで形成された容器)と、このような容器に充填された前記ゲル組成物とで構成できる。このような保冷剤は、前記のように柔軟性や保形性において優れているため、冷却部位の形状にかかわらず(例えば、冷却部位が複雑な形状をしていても)冷却に対する即効性に優れている。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
なお、実施例および比較例では、以下の成分を用いた。
【0070】
(水溶性セルロースエーテル)
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製、HEC ダイセル SP600、2重量%水溶液粘度45000mPa・s)
メチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトローズ SM−8000、2重量%水溶液粘度8000mPa・s)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ダウケミカル社製、メトセル10−0073、2重量%水溶液粘度40000mPa・s)
(不飽和ポリカルボン酸系重合体)
メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(ISP社製、GANTREZ AN−169、重量平均分子量2400000)
(ポリカルボン酸系重合体)
ポリアクリル酸(BF GOODRICH社製、Carbopol980)
(多価アルコール類)
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製)
プロピレングリコール(和光純薬工業(株)製)
グリセリン(和光純薬工業(株)製)。
【0071】
(実施例1)
温度80℃の水浴中で、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(PVM/MA)2.5重量部および水42.5重量部を含む水溶液を調製した。この水溶液を室温まで冷却後、攪拌しながら、ヒドロキシエチルセルロース5.0重量部を添加、分散させた。ヒドロキシエチルセルロースが膨潤したところで、グリセリン50.0重量部を添加してさらに攪拌し、水性ゲル組成物を得た。
【0072】
得られた水性ゲル組成物を、ポリエチレン製ポリ袋に充填して温度40℃の条件下で静置し、保冷剤を得た。
【0073】
(実施例2)
ヒドロキシエチルセルロース5.0重量部に代えてメチルセルロース5.0重量部を使用し、グリセリン50.0重量部に代えてエチレングリコール50.0重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0074】
(実施例3)
ヒドロキシエチルセルロース5.0重量部に代えてヒドロキシプロピルメチルセルロース5.0重量部を使用し、グリセリン50.0重量部に代えてプロピレングリコール50.0重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0075】
(比較例1)
実施例1において、グリセリンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0076】
(比較例2)
実施例3において、プロピレングリコールを使用しなかったこと以外は実施例3と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0077】
(比較例3)
室温で、42.5重量部の水を攪拌しながら、2.5重量部のポリアクリル酸を添加し、水溶液を調製した。引き続き、得られた水溶液を攪拌しながら、5.0重量部のヒドロキシエチルセルロースを添加し、分散させた。ヒドロキシエチルセルロースが膨潤したところで、エチレングリコール50.0重量部を添加してさらに攪拌し、温度40℃の条件下で静置したが、生成物(ゲル)は崩れ、形状を保持できなかった。
【0078】
そして、実施例および比較例で得られた各保冷剤の柔軟性および保形性を以下のようにして評価した。なお、比較例3で得られた生成物は、形状を保持できなかったため、柔軟性および保形性の評価を行っていない。
【0079】
(柔軟性)
−15℃の家庭用冷凍庫内、および−24℃のストッカー内でそれぞれ24時間静置後、保冷剤を手で押して柔軟性を以下の基準で評価した。
【0080】
○…室温(25℃)の状態と柔軟性に変化がない
△…部分的に室温と同様の柔軟性を有しているが、凍結部分や硬い部分が認められる
×…硬くて変形しない。
【0081】
(保形性)
−15℃の家庭用冷凍庫内、および−24℃のストッカー内でそれぞれ24時間静置後、保冷剤を変形させ、変形の状態および変形後の形状の変化を以下の基準で評価した。
【0082】
○…変形が容易ですぐに変形前の状態に戻る
△…変形しにくい、又は変形しても元の形状に戻らない
×…硬くて変形できない。
【0083】
結果を表に示す。なお、表中、「HEC」とはヒドロキシエチルセルロース、「MC」とはメチルセルロース、「HPMC」とはヒドロキシプロピルメチルセルロース、「PVM/MA」とはメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、「PAA」とはポリアクリル酸を示す。
【0084】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とで構成されている水性ゲル組成物。
【請求項2】
ノニオン性の水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルアルキルセルロースから選択された少なくとも1種である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項3】
不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体が、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物を重合成分とする重合体である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項4】
不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体が、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項5】
多価アルコール類が、C2−6アルカンジオール、ジC2−4アルカンジオール、およびC3−6アルカントリオールから選択された少なくとも1種である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項6】
ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体との割合が、前者/後者(重量比)=85/15〜15/85であり、ノニオン性の水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の総量の割合が、水性ゲル組成物全体に対して15重量%以下であり、水の割合がノニオン性の水溶性セルロースエーテルおよび不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の総量1重量部に対して0.5〜20重量部である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項7】
水の割合が、水性ゲル組成物全体に対して15〜80重量%である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項8】
多価アルコール類と水との割合が、前者/後者(重量比)=85/15〜25/75である請求項1記載の水性ゲル組成物。
【請求項9】
ノニオン性の水溶性セルロースエーテルと、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体と、多価アルコール類と、水とを混合し、請求項1記載の水性ゲル組成物を製造する方法であって、不飽和ポリカルボン酸成分を重合成分とする重合体の水溶液を調製する工程を含む水性ゲル組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の水性ゲル組成物で構成された保冷剤。

【公開番号】特開2008−239773(P2008−239773A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81529(P2007−81529)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】