説明

水性ポリウレタン樹脂、親水性樹脂およびフィルム

【課題】優れた透湿性と耐水性とを兼ね備えるとともに、機械物性に優れ、柔軟な風合いを得ることができるフィルムを得ることができる、水性ポリウレタン樹脂、その水性ポリウレタン樹脂(第1水性樹脂)および第2水性樹脂を含む親水性樹脂、その親水性樹脂から得られるフィルムを提供すること。
【解決手段】芳香環および脂環を含有しないかまたは芳香環または脂環を1つ含有する複数環不含ポリイソシアネートを50質量%以上含有するポリイソシアネート、ポリオキシエチレンポリオール、および、水酸基またはイソシアネート基を分子末端に2つ以上有しポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、水を含む鎖伸長剤とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の60モル%以上が、水で鎖伸長されている水性ポリウレタン樹脂を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂、その水性ポリウレタン樹脂(第1水性樹脂)および第2水性樹脂を含む親水性樹脂、および、その親水性樹脂から得られるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維には、雨水を遮断する一方、発汗などの湿気(水蒸気)を通過させるために、透湿防水加工することが知られており、このような透湿防水加工のためのコーティング剤として、透湿性樹脂を用いることが、知られている。
【0003】
例えば、1,3-(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ポリエチレングリコールと、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールとを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得て、そのイソシアネート基末端プレポリマーを水分散した後、そのプレポリマーと、アミン類(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノアルコールなど)とを反応させることにより水性ポリウレタン樹脂を得ること、さらには、その水性ポリウレタン樹脂を含む親水性樹脂を得ることが、提案されている(例えば、特許文献1(実施例16〜18)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2009/072561A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される親水性樹脂は、透湿性に優れるものの、そのエチレンオキサイド含量が高い(50質量%以上など)場合には、耐水性に劣る場合がある。
【0006】
また、このような親水性樹脂からフィルムを得る場合などには、そのフィルムの引張強度や伸び率などの機械物性の向上や、フィルムの初期モジュラスを低くし、柔軟な風合いを得ることが求められている。
【0007】
本発明の目的は、優れた透湿性と耐水性とを兼ね備えるとともに、機械物性に優れ、柔軟な風合いのフィルムを得ることができる、水性ポリウレタン樹脂、その水性ポリウレタン樹脂(第1水性樹脂)および第2水性樹脂を含む親水性樹脂、その親水性樹脂から得られるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、芳香環および脂環を含有しないか、または、芳香環または脂環を1つ含有する複数環不含ポリイソシアネートを、50質量%以上含有するポリイソシアネート、ポリオキシエチレンポリオール、および、水酸基またはイソシアネート基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物を、少なくとも反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、水を含む鎖伸長剤との反応により得られる水性ポリウレタン樹脂であって、イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の60モル%以上が、水で鎖伸長されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、固形分濃度30質量%の水分散液における粘度が、5000mPa・s未満であることが好適である。
【0010】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、ポリオキシエチレン基が、50〜90質量%含有されていることが好適である。
【0011】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、ポリオキシエチレンポリオールの数平均分子量が、600〜6000であることが好適である。
【0012】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物において、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が、600〜6000であることが好適である。
【0013】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物は、ウレア基、ウレタン基およびアロファネート基から選択される少なくとも1種の化学結合を有していることが好適である。
【0014】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、親水性改質剤であることが好適である。
【0015】
また、本発明の親水性樹脂は、第1水性樹脂として、上記の水性ポリウレタン樹脂を含有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の親水性樹脂は、第2水性樹脂を含有することが好適である。
【0017】
また、本発明の親水性樹脂は、水分散性のイソシアネート硬化剤を含有することが好適である。
【0018】
また、本発明の親水性樹脂では、第2水性樹脂は、原料として、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種の疎水性マクロポリオールを含み、疎水性マクロポリオールが、第2水性樹脂の原料総量に対して50質量%以上含まれていることが好適である。
【0019】
また、本発明の親水性樹脂では、第2水性樹脂は、原料として、さらに、カルボン酸基含有ポリオールを含んでいることが好適である。
【0020】
また、本発明の親水性樹脂では、イソシアネート硬化剤が、イソシアネートがブロック剤によりブロックされているブロックイソシアネートであることが好適である。
【0021】
また、本発明の親水性樹脂では、ブロックイソシアネートが、外部乳化剤により水分散されていることが好適である。
【0022】
また、本発明の親水性樹脂では、ブロックイソシアネートにおいて、イソシアネートが、芳香環を1つ含有するポリイソシアネートまたはその変性体であることが好適である。
【0023】
また、本発明の親水性樹脂では、ブロックイソシアネートにおいて、ブロック剤が、3,5−ジメチルピラゾールであることが好適である。
【0024】
また、本発明の親水性樹脂は、透湿防水加工のためのコーティング剤であることが好適である。
【0025】
また、本発明のフィルムは、上記の親水性樹脂から得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂では、イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の60モル%以上が、水で鎖伸長されているため、このような水性ポリウレタン樹脂が含まれる、本発明の親水性樹脂は、エチレンオキサイド含量が高い(50質量%以上など)場合にも、優れた透湿性および耐水性を兼ね備えることができる。
【0027】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂が含まれる、本発明の親水性樹脂は、機械物性に優れるとともに、柔軟な風合いを備えるフィルムを得ることができる。
【0028】
そのため、本発明の親水性樹脂は、透湿防水加工のためのコーティング剤として、好適に用いることができる。
【0029】
そして、本発明の親水性樹脂から得られる、本発明のフィルムは、優れた透湿防水性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得ることができ、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート、ポリオキシエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物を、少なくとも反応させることにより、得ることができる。
【0031】
本発明において、ポリイソシアネートは、複数環不含ポリイソシアネートを、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上、より好ましくは、60質量%以上含有する。複数環不含ポリイソシアネートの配合割合が上記下限未満であると、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させたときに、水分散液の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下する場合や、ゲル化して、水性ポリウレタン樹脂の水分散液を得ることが困難となる場合がある。また、複数環不含ポリイソシアネートの配合割合が上記下限未満であると、得られる塗膜が硬くなり、風合いを損ねる場合がある。
【0032】
複数環不含ポリイソシアネートは、1分子内において、芳香環および脂環を含有しないか、または、芳香環または脂環を1つ含有するポリイソシアネートであって、例えば、芳香環および脂環を含有しない脂肪族ジイソシアネート、例えば、芳香環を1つ含有する単芳香環含有ジイソシアネート、例えば、脂環を1つ含有する単脂環含有ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(略号:HDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0034】
単芳香環含有ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(略号:TDI)、4,4´−トルイジンジイソシアネート、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(略号:XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
単脂環含有ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、略号:IPDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(略号:HXDI)などが挙げられる。
【0036】
また、ポリイソシアネートとして、例えば、上記した複数環不含ポリイソシアネート(すなわち、脂肪族ジイソシアネート、単芳香環含有ジイソシアネートおよび単脂環含有ジイソシアネート)の多量体(例えば、二量体、三量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体など)、五量体、七量体など)、アロファネート変性体(例えば、複数環不含ポリイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、複数環不含ポリイソシアネートと低分子量ポリオール(後述)または高分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体など)、ビウレット変性体(例えば、複数環不含ポリイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、複数環不含ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン(例えば、複数環不含ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(複数環不含ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)などを使用することもできる。
【0037】
複数環不含ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。強度、黄変および風合いの観点から、好ましくは、単脂環含有ジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、IPDI、HXDIが挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネートとして、複数環不含ポリイソシアネートを上記割合で含有していれば、複数環含有ポリイソシアネートを併用することもできる。
【0039】
複数環含有ポリイソシアネートは、1分子内において、芳香環および/または脂環を2つ以上含有するポリイソシアネートであって、例えば、芳香環を2つ以上含有する複数芳香環含有ジイソシアネート、例えば、脂環を2つ以上含有する複数脂環含有ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
複数芳香環含有ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(略号:MDI)、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
複数脂環含有ジイソシアネートとしては、例えば、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(略号:H12MDI)、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
【0042】
さらに、例えば、上記した複数環含有ポリイソシアネート(すなわち、複数芳香環含有ジイソシアネートおよび複数脂環含有ジイソシアネート)の多量体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン、カルボジイミド変性体などを使用することもできる。
【0043】
複数環含有ジイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0044】
本発明において、ポリオキシエチレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオール(後述)を開始剤とするエチレンオキサイドの付加重合により得ることができる。好ましくは、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0045】
ポリオキシエチレンポリオールの数平均分子量は、例えば、600〜6000、好ましくは、600〜3000である。
【0046】
なお、水性ポリウレタン樹脂の各原料の数平均分子量は、原料の水酸基当量(JIS K 1557−1(2007)から求められる。)および官能基数から算出することができる。
【0047】
また、ポリオキシエチレンポリオールは、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物、および、必要により配合される、後述するポリプロピレンポリエチレングリコールなどのオキシエチレン基を含む高分子量ポリオールとの総量において、水性ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基が、例えば、50〜90質量%、好ましくは、55〜85質量%、より好ましくは、60〜85質量%、さらに好ましくは、60〜80質量%となるように、配合される。水性ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基を上記範囲とすることで、フィルムの透湿性の向上を図ることができる。
【0048】
また、水性ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基を上記範囲にできれば、ポリオキシエチレンポリオールとともに、高分子量ポリオールや低分子量ポリオールを併用することができる。
【0049】
高分子量ポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレンポリオール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンポリエチレングリコール(ポリプロピレンオキサイドおよびポリエチレンオキサイドのランダムまたはブロック共重合体)など)、ポリオキシブチレンポリオール(例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アルキレン(エチレンおよび/またはブチレン)アジペート、ポリカプロラクトンポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール(例えば、ポリカーボネートジオールなど)などが挙げられる。
【0050】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400〜6000であり、その配合割合は、水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、0.5〜15質量%である。
【0051】
低分子量ポリオールは、数平均分子量400未満のポリオールであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジメチロールヘプタン(ブチルエチルプロパンジオール)、1,12−ヒドロキシステアリルアルコール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(トリメチロールプロパン)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの低分子量トリオールなどが挙げられる。
【0052】
また、低分子量ポリオールとしては、上記のポリオール以外に、例えば、ダイマーアルコール、水添ダイマーアルコール(例えば、ダイマー酸の還元により得られるダイマーアルコールなど)なども含まれる。
【0053】
低分子量ポリオールの配合割合は、水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、0.01〜5質量%である。
【0054】
本発明において、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物は、水酸基またはイソシアネート基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有する化合物であり、例えば、水酸基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール、例えば、イソシアネート基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜20のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを合成し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1〜20のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
【0056】
なお、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの調製において、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、好ましくは、メトキシエチレングリコールが挙げられ、ジイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI)が挙げられ、ジアルカノールアミンとして、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0057】
このようにして得られるポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、ウレタン基およびウレア基を有し、次式(1)で示される。
【0058】
【化1】

【0059】
(式中、Xは、ジイソシアネート残基(ジイソシアネートのイソシアネート基以外の部分)、Xは、炭素数1〜20のアルキル基、Xは、炭素数1〜20のアルキレン基、nは、13〜140の整数を示す。)
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの配合割合は、水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、5〜40質量%である。
【0060】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜20のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により、未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを合成し、次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジイソシアネートとをアロファネート化反応させることにより、得ることができる。
【0061】
なお、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートの調製において、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、好ましくは、メトキシエチレングリコールが挙げられ、ジイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI)が挙げられる。
【0062】
このようにして得られるポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートは、例えば、ウレタン基およびアロファネート基を有し、次式(2)で示される。
【0063】
【化2】

【0064】
(式中、XおよびXは、互いに同一または相異なって、ジイソシアネート残基(ジイソシアネートのイソシアネート基以外の部分)、Xは、炭素数1〜20のアルキル基、nは、13〜140の整数を示す。)
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートの配合割合は、水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、5〜40質量%である。
【0065】
また、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物において、ポリオキシエチレン基は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60〜90質量%含有されており、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600〜6000、好ましくは、600〜3000、さらに好ましくは、800〜2500である。
【0066】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物において、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が上記下限未満であると、水性ポリウレタン樹脂の水分散性の低下を生じる場合があり、一方、上記上限を超過しても、やはり、水性ポリウレタン樹脂の水分散性の低下を生じる場合がある。
【0067】
そして、ポリイソシアネート、ポリオール成分(必須成分として、ポリオキシエチレンポリオールが含まれ、任意成分として、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールが含まれる。)、および、ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物を、反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。
【0068】
この反応では、上記成分を、水酸基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)において、1を越える割合、好ましくは、1.1〜10の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記成分を反応させる。
【0069】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0070】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0071】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0072】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0073】
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂を得るには、次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、水(分散媒)中で分散させて反応させる。
【0074】
本発明において、鎖伸長剤は、必須成分として、水(分散媒としての水を含む。)を含んでおり、また、必要により、任意成分として、ポリアミンなどを含むことができる。
【0075】
ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン類、第1級アミノ基または第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(以下、アミノ基含有アルコキシシリル化合物とする。)などが挙げられる。
【0076】
ポリアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミンなどのジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのトリアミン類、テトラアミン類およびペンタアミン類などが挙げられる。
【0077】
アミノ基含有アルコキシシリル化合物としては、例えは、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0078】
これらポリアミンは、単独使用または併用することができ、好ましくは、ポリアミン類が挙げられる。
【0079】
さらに、鎖伸長剤には、モノアミンを併用することができる。モノアミンを併用することによって、得られる水性ポリウレタン樹脂の粘度を低くすることができる。
【0080】
モノアミンとしては、例えば、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンなどのアルキルアミン、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのモノアミノアルコールなどが挙げられる。
【0081】
これらモノアミンは、単独使用または併用することができ、好ましくは、モノアミノアルコールが挙げられる。モノアミンを併用する場合の配合割合は、水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、0.01〜1質量%である。
【0082】
さらに、鎖伸長剤には、上記した低分子量ポリオールを併用することができる。低分子量ポリオールは、その目的および用途により、適宜の配合割合で用いられる。
【0083】
そして、本発明において、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応では、イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の、60モル%以上、好ましくは、65モル%以上、より好ましくは、70モル%以上が、水で鎖伸長される。
【0084】
水で鎖伸長されるイソシアネート基の割合が上記下限未満であると、得られる塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0085】
なお、鎖伸長剤が、水および任意成分(ポリアミン、モノアミン、低分子量ポリオールなど)を含有する場合には、通常、まず、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対して、任意成分の活性水素基が反応し、その後、残余のイソシアネート基に対して、水(分散媒としての水を含む。)が反応する。
【0086】
すなわち、水で鎖伸長されるイソシアネート基の割合は、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する、任意成分の活性水素基が反応した後の、残余のイソシアネート基の割合として、求めることができる。
【0087】
より具体的には、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基のモル数から、任意成分で鎖伸長されるイソシアネート基のモル数(任意成分に含まれる活性水素のモル数)を差し引き、その残余のイソシアネート基のモル数を、水で鎖伸長されるイソシアネート基のモル数とする。これにより、水で鎖伸長されるイソシアネート基の割合を、求めることができる。
【0088】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、必要により任意成分を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0089】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水20〜500質量部の割合において、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマー中に水を添加する。
【0090】
任意成分が併用される場合には、任意成分を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.4以下、好ましくは、0.35以下の割合となるように、滴下する。
【0091】
その後、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。これによって、本発明の水性ポリウレタン樹脂を、水分散液(固形分濃度が、例えば、10〜60質量%、好ましくは、15〜50質量%の水分散液、さらに好ましくは、20〜45質量%の水分散液)として得ることができる。
【0092】
なお、上記とは逆に、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、必要により任意成分を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0093】
なお、反応終了後、イソシアネート基末端プレポリマーが溶液重合により得られている場合には、有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより、除去する。
【0094】
上記により得られる水性ポリウレタン樹脂においては、水性ポリウレタン樹脂(つまり、水分散液の固形分)中には、ポリオキシエチレン基が、50〜90質量%、好ましくは、50〜85質量%、より好ましくは、55〜85質量%、さらに好ましくは、60〜80質量%含まれている。ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基の割合が、上記下限未満であると、フィルムの透湿性が低下する場合があり、上記上限を超過すると、フィルムの強度が低下する場合がある。
【0095】
そして、このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂では、固形分濃度30質量%の水分散液として調製される場合の粘度が、25℃において、5000mPa・s未満、好ましくは、4500mPa・s未満、より好ましくは、4000mPa・s未満、通常、1000以上である。
【0096】
なお、粘度は、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117−1(1999)に準拠して測定することができる。
【0097】
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、それに含まれるポリオキシエチレンポリオールおよびポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物が、すべてノニオン性であるため、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂およびノニオン性樹脂のいずれの樹脂に混合しても、安定した水分散を確保することができる。さらに、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、比較的低粘度であり、ハンドリング性の向上を図ることができる。さらにまた、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、ポリイソシアネートとして、複数環不含ポリイソシアネートを50質量%以上含有するので、柔軟な風合いを得ることができる。
【0098】
そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、高い親水性から優れた水膨潤性を示し、安定性が高く、他の水性樹脂との相溶性に優れる。そして、この水性ポリウレタン樹脂を、親水性改質剤として、他の水性樹脂に配合すれば、その水性樹脂の透水性、透湿性、保水性、水膨潤性、帯電防止性などの親水性を、顕著に改質することができる。
【0099】
さらに、本発明のポリウレタン樹脂では、イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の60モル%以上が、水で鎖伸長されているため、このような水性ポリウレタン樹脂を、他の水性樹脂に配合すると、その水性樹脂は、エチレンオキサイド含量が高い(50質量%以上など)場合にも、優れた透湿性および耐水性を兼ね備えることができる。
【0100】
そのため、この水性ポリウレタン樹脂(後述する第2水性樹脂と区別するため、以下、第1水性樹脂と称する場合がある。)を、透湿防水性に優れる親水性樹脂として用いることができる。
【0101】
また、このような親水性樹脂には、さらに、上記の水性ポリウレタン樹脂の、他の水性樹脂(以下、第2水性樹脂と称する。)を配合することができる。
【0102】
第2水性樹脂としては、特に制限されないが、任意の割合で配合できるように、例えば、第2水性樹脂のエマルションや水溶液として調製されており、具体的には、酢酸ビニルエマルション、アクリルエマルション、ポリウレタンエマルション、ポリエステルエマルション、ポリオレフィンエマルションなどの水性エマルションや、その他、ポリビニルアルコール水溶液やポリビニルピロリドン水溶液、ポリビニルアセタール水溶液などの合成樹脂水溶液、例えば、デンプン、ゼラチンなどの天然高分子水溶液などが挙げられる。
【0103】
第2水性樹脂としては、好ましくは、第1水性樹脂と比較して疎水性の高い水性ポリウレタン樹脂(以下、第2水性ポリウレタン樹脂とする。)が挙げられる。
【0104】
そのような第2水性ポリウレタン樹脂は、例えば、原料として、ポリイソシアネート、疎水性マクロポリオール、および、親水性基含有活性化合物を、少なくとも反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、次いで、そのイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させることにより、得ることができる。
【0105】
ポリイソシアネートとしては、上記した複数環不含ポリイソシアネートおよび複数環含有ポリイソシアネートの両方を、特に制限なく用いることができる。好ましくは、複数環含有ポリイソシアネート、さらに好ましくは、複数脂環含有ジイソシアネートが挙げられる。
【0106】
疎水性マクロポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシポリアルキレンポリオールなどが挙げられる。
【0107】
ポリエステルポリオールは、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上と、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバチン酸、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸またはその誘導体との反応により生成するポリエステルポリオール、例えば、ε―カプロラクトンなどの開環重合により生成するポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。
【0108】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより生成するポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0109】
アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、プロピレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類を、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、開環付加重合させることにより生成するポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。例えば、ポリオキシプロピレンポリオールやポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。好ましくは、アルキレン基の炭素数が3〜7のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数3〜6のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
【0110】
疎水性マクロポリオールは、単独使用または併用することができる。
【0111】
これら疎水性マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、300〜10000、好ましくは、500〜5000である。
【0112】
また、疎水性マクロポリオールは、好ましくは、第2水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上含まれるように配合する。疎水性マクロポリオールが、50質量%以上含まれることにより、親水性樹脂の機械強度を向上させることができる。
【0113】
なお、第2水性ポリウレタン樹脂の合成においては、疎水性マクロポリオールとともに、上記した親水性マクロポリオールや低分子量ポリオールを、原料として併用することもできる。親水性マクロポリオールを併用する場合には、その配合割合は、第2水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、0.01〜10質量%であり、また、低分子量ポリオールを併用する場合には、その配合割合は、第2水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、例えば、0.01〜5質量%である。
【0114】
親水性基含有活性化合物としては、例えば、ノニオン性基含有活性化合物、イオン性基含有活性化合物が挙げられる。
【0115】
ノニオン性基含有活性化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、上記したポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物などが挙げられる。なお、ノニオン性基含有活性化合物において、ノニオン性基、すなわち、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600〜6000である。
【0116】
イオン性基含有活性化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基や、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する化合物、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する化合物(カルボン酸基含有ポリオール)が挙げられる。
【0117】
カルボン酸基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が挙げられる。
【0118】
これら親水性基含有活性化合物は、単独使用または併用することができ、好ましくは、イオン性基含有活性化合物、より好ましくは、カルボン酸基含有ポリオールが挙げられる。
【0119】
親水性基含有活性化合物がカルボン酸基含有ポリオールであれば、耐水性に優れた塗膜を得ることができる。
【0120】
また、親水性基含有活性化合物の配合割合は、第2水性ポリウレタン樹脂の原料総量(仕込み総量)に対して、ノニオン性基含有活性化合物の場合、例えば、5〜25質量%であり、イオン性基含有活性化合物の場合、1.5〜8質量%である。
【0121】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを得るには、上記成分を、水酸基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)において、1を超える割合、好ましくは、1.05〜4.0の割合で配合し、上記と同様の方法により、上記成分を反応させる。
【0122】
なお、イオン性基含有活性化合物が配合される場合には、反応後、中和剤(例えば、アニオン性基の場合には、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミンなどの3級アミンなど)を添加して、イオン性基を中和する。
【0123】
なお、イソシアネート基末端プレポリマーは、親水性基含有活性化合物を配合せずに、例えば、ポリイソシアネート、疎水性マクロポリオール、および、必要により低分子量ポリオールを反応させた後、乳化剤を添加することにより、調製することもできる。
【0124】
その後、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、上記と同様の方法により、水中で反応させて、第2水性ポリウレタン樹脂を得る。
【0125】
鎖伸長剤としては、例えば、上記した鎖伸長剤と同様のものを例示することができ、好ましくは、ポリアミン類が挙げられる。
【0126】
これによって、第2水性ポリウレタン樹脂を、水分散液(固形分濃度が、例えば、10〜60質量%、好ましくは、20〜50質量%の水分散液)として得ることができる。
【0127】
また、第2水性樹脂は、それをキャスティングしたとき(例えば、幅10mm、厚さ0.1mmでキャスティングしたとき)の機械強度として、引張り強度が、例えば、6MPa以上、さらには、8MPa以上、とりわけ、10MPa以上であり、伸び率が、例えば、200%以上、さらには、300%以上、とりわけ、400%以上であることが好適である。また、同様にキャスティングしたときの水膨潤率が、例えば、20%以下、さらには、10%以下、とりわけ、5%以下であることが好適である。
【0128】
そして、このような第2水性樹脂に、上記した水性ポリウレタン樹脂を第1水性樹脂として配合することにより、透湿防水性および機械強度に優れる親水性樹脂を得ることができる。
【0129】
第1水性樹脂と第2水性樹脂との配合割合は、例えば、第1水性樹脂(第1水性樹脂の水分散液の固形分)および第2水性樹脂(第2水性樹脂の水分散液の固形分)の総量に対して、第1水性樹脂が、例えば、10〜80質量%、好ましくは、15〜70質量%である。第1水性樹脂の配合割合が、10質量%未満であると、キャスティングして得られるフィルムの透湿性能が低下する場合があり、80質量%を超過すると、キャスティングして得られるフィルムの強度が低下する場合や、耐水性に劣る場合がある。
【0130】
また、親水性樹脂(必須成分として第1水性樹脂を含み、任意成分として第2水性樹脂を含む。)には、さらに、硬化剤を配合することができる。
【0131】
硬化剤を配合することにより、親水性樹脂の耐水性の向上を図ることができる。
【0132】
硬化剤としては、例えば、イソシアネート硬化剤などが挙げられ、より具体的には、水分散性のブロックイソシアネート硬化剤、水分散性の非ブロックイソシアネート硬化剤などが挙げられる。好ましくは、水分散性のブロックイソシアネート硬化剤が挙げられる。
【0133】
水分散性のブロックイソシアネート硬化剤としては、例えば、外部乳化剤により水分散されたブロックイソシアネートや、例えば、内部乳化可能なブロックイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、外部乳化剤により水分散されたブロックイソシアネートが挙げられる。
【0134】
内部乳化可能なブロックイソシアネート(例えば、上記の片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールおよびイソシアネートを、イソシアネートのイソシアネート基が片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して過剰となる割合でウレタン化反応させて得られる上記ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートおよび/またはポリオキシエチレン鎖含有ポリイソシアネートを、ブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネートなど)では、キャスティングして得られる塗膜の外観に劣る場合がある。
【0135】
一方、外部乳化剤により水分散されたブロックイソシアネートによれば、キャスティングして得られる塗膜の外観を良好とすることができる。
【0136】
このような外部乳化剤により水分散されたブロックイソシアネートにおいて、イソシアネートとしては、例えば、複数環含有ポリイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、単芳香環含有ジイソシアネート、単脂環含有ジイソシアネート、および、それらの変性体などが挙げられ、好ましくは、単芳香環含有ジイソシアネート(芳香環を1つ含有するポリイソシアネート)またはその変性体が挙げられる。
【0137】
ブロックイソシアネートにおいて、イソシアネートが単芳香環含有ジイソシアネート(芳香環を1つ含有するポリイソシアネート)またはその変性体であれば、親水性樹脂の耐水性を良好とすることができる。
【0138】
また、ブロックイソシアネートにおいて、ブロック剤としては、熱処理により、イソシアネートから解離するブロック剤であれば、特に制限されず、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
【0139】
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−エチルヘキシルオキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
【0140】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ピリジノール、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオールなどが挙げられる。
【0141】
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどなどが挙げられる。
【0142】
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、または、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸などなどが挙げられる。
【0143】
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
【0144】
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
【0145】
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
【0146】
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
【0147】
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0148】
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
【0149】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0150】
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどが挙げられる。
【0151】
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0152】
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0153】
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0154】
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
【0155】
また、ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
【0156】
これらブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0157】
ブロック剤として、好ましくは、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、より好ましくは、ピラゾール系化合物、さらに好ましくは、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0158】
ブロック剤が3,5−ジメチルピラゾールであれば、親水性樹脂の耐水性を良好とすることができる。
【0159】
外部乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルなど)、アルキル硫酸金属塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸金属塩などの界面活性剤などが挙げられる。
【0160】
これら外部乳化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0161】
外部乳化剤として、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。
【0162】
このような水分散性のイソシアネート硬化剤は、例えば、公知の方法により、水分散液として調製され、親水性樹脂に配合される。
【0163】
水分散性イソシアネート硬化剤の配合割合は、親水性樹脂における水性樹脂の固形分(すなわち、第1水性樹脂の水分散液の固形分と、必要により配合される第2水性樹脂の水分散液の固形分)との総量100質量部に対して、水分散性のイソシアネート硬化剤が、固形分換算で、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、1〜15質量部である。
【0164】
親水性樹脂が、上記割合で水分散性のイソシアネート硬化剤を含有すると、耐水性や機械強度が良好となる。
【0165】
また、親水性樹脂には、さらに、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの相溶化剤を配合することもできる。
【0166】
このような本発明の水性ポリウレタン樹脂が含まれる、本発明の親水性樹脂は、機械物性に優れるとともに、柔軟な風合いを備え、さらには、優れた透湿性と耐水性とを兼ね備えるフィルムを得ることができる。そのため、本発明の親水性樹脂は、透湿防水加工のためのコーティング剤として、好適に用いることができる。
【0167】
そして、本発明の親水性樹脂は、キャスティングすることにより、優れた透湿防水性能を有するフィルムとして得ることができる。なお、フィルムは、微多孔質または無孔質のいずれのフィルムとしてでも、キャスティングすることができる。
【0168】
特に、基布に本発明の親水性樹脂からなるフィルムを積層することにより、基布を透湿防水加工することができ、例えば、衣料などに用いられる透湿防水素材を得ることができる。
【0169】
基布としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、綿などの繊維からなる織物、編物、不織布などが挙げられる。
【0170】
基布に親水性樹脂からなるフィルムを積層する方法としては、例えば、ラミネート法、ダイレクトコート法などの方法が用いられ、その用途によって適宜選択される。
【0171】
ラミネート法では、例えば、親水性樹脂を離型紙などの表面に塗布して熱処理し、フィルムを形成した後、例えば、フィルムから離型紙を剥離し、布帛に接着剤などを介して積層する方法が挙げられる。
【0172】
ダイレクトコート法では、基布表面に、通常のコーティング法、例えば、ナイフコーターなどを用いて、直接塗布し、フィルムを形成および積層する方法が挙げられる。
【0173】
そして、これにより、基布の表面が、親水性樹脂からなる透湿防水性を有するフィルムによって被覆され、それによって、基布の表面が、透湿防水加工される。透湿防水加工された基布は、透湿防水素材として、衣料などに用いられる。
【0174】
なお、透湿防水性とは、フィルムが、雨やその他の水を遮断するが、湿気(水蒸気)を通過させる性能であり、例えば、衣料に用いられる透湿防水素材では、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出し、かつ、雨が衣服内に浸入することを防止する性能である。
【0175】
また、本発明の親水性樹脂は、基布への追従性能、耐磨耗性能、耐破れ性能などを十分に確保する必要がある。そのため、本発明の親水性樹脂のキャスティングしたフィルムの機械強度としては、引張り強度が、例えば、3MPa以上、さらには、4MPa以上、さらには、6MPa以上が好適であり、伸び率が、例えば、200%以上、さらには、300%以上、さらには、400%以上が好適である。
【0176】
さらに、本発明の親水性樹脂の透湿性能としては、キャスティング後のフィルムの厚み0.02mmにおいて、透湿性試験A−1法(JIS L1099(2006)に準拠)における透湿性能が、3000(g/m・24hrs)以上、好ましくは、4000(g/m・24hrs)以上であることが好適である。
【0177】
なお、水性ポリウレタン樹脂、第2水性ポリウレタン樹脂、および、親水性樹脂には、上記した本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、硬化触媒や種々の添加剤、例えば、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、タック防止剤などを適宜配合することができる。
【0178】
また、タック防止剤としては、無機粉末が挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素粉末などが挙げられる。
【0179】
各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
【0180】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂および親水性樹脂は、上記した衣料分野に限らず、例えば、自動車、電子機器、建材、人工皮革、フィルム処理などの各種産業分野に、広く用いることができる。
【実施例】
【0181】
以下に、調製例、合成例、実施例および比較例を参照して、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、実施例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
【0182】
調製例1(ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAの合成)
温度計、窒素ガス導入管および攪拌機を備えた反応器中で、窒素ガスを導入しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネート700、三井化学社製)627.1部、50℃に加温した数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール(MPEG−1000、東邦化学社製)372.9部を仕込み、80℃で6時間反応させた。所定のイソシアネート基含有量に到達した後、スミス式薄膜蒸留器にて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得た。このポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートの計算上の数平均分子量は、1168であった。
【0183】
次いで、温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で、室温下、窒素ガスを導入しながら、ジエタノールアミン83.9部を仕込んだ。冷却しながら、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネート916.1部を添加し、60℃で3時間反応させた。赤外スペクトルにて尿素結合の生成を確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAを得た。このポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAは、78.5質量%のポリオキシエチレン基を含有し、その計算上の数平均分子量は、1275であった。
【0184】
実施例1(水性ポリウレタン樹脂Aの合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート600、三井化学製)93.8部と、数平均分子量1000のポリエチレングリコール(商品名:PEG−1000、東邦化学社製)357.8部と、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA38.4部と、アセトニトリル210部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応温度を73〜77℃に調整して、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート末端プレポリマーを得た。
【0185】
次に、この4つ口フラスコ中に、予め25℃に調整した水1041部を徐々に添加して攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散し、そのまま25〜30℃で3時間攪拌して、水で鎖伸長した。その後、減圧下でアセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂Aの水分散液を調製した。
【0186】
得られた水性ポリウレタン樹脂Aについて、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基における水伸長の割合(モル%)、水分散液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、および配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))を表1に示す。
【0187】
また、得られた水性ポリウレタン樹脂Aを、固形分濃度30質量%の水分散液として調製し、その25℃における粘度を、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117−1(1999)に準拠して測定した。その値を同じく表1に示す。
【0188】
実施例2〜6および比較例1〜3(水性ポリウレタン樹脂B〜Iの合成)
下記の表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、水性ポリウレタン樹脂Bの水分散液(実施例2)、水性ポリウレタン樹脂Cの水分散液(実施例3)、水性ポリウレタン樹脂Dの水分散液(実施例4)、水性ポリウレタン樹脂Eの水分散液(実施例5)、水性ポリウレタン樹脂Fの水分散液(実施例6)、水性ポリウレタン樹脂Gの水分散液(比較例1)、水性ポリウレタン樹脂Hの水分散液(比較例2)、および、水性ポリウレタン樹脂Iの水分散液(比較例3)を、それぞれ調製した。
【0189】
また、実施例1と同様に、得られた水性ポリウレタン樹脂B〜Iについて、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基における水伸長の割合(モル%)、水分散液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、および配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))を表1に示す。
【0190】
また、得られた水性ポリウレタン樹脂B〜Iを、固形分濃度30質量%の水分散液として調製し、その25℃における粘度を、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117−1(1999)に準拠して測定した。その値を同じく表1に示す。
【0191】
なお、水性ポリウレタン樹脂Gの水分散液(比較例1)については、固形分濃度30質量%の水分散液として調製すると、非常に粘度が高くなりハンドリングが困難であったため、その粘度を、固形分濃度27.5質量%として測定した。
【0192】
【表1】

【0193】
なお、表1中の略号は、下記の通りである。
XDI:1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名タケネート600、三井化学社製
IPDI:イソホロンジイソシアネート、商品名VESTANAT IPDI エボニック社製
12MDI:4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、商品名デスモジュールW、バイエル社製
PEG−1000:数平均分子量1000のポリエチレングリコール、東邦化学社製
POE側鎖ポリオールA:ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA
トリエチレングリコール:和光純薬社製
エチレンジアミン:和光純薬社製
モノエタノールアミン:和光純薬社製
ジエタノールアミン:和光純薬社製
アミノアルコールEA:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、日本乳化剤社製
合成例1(第2水性ポリウレタン樹脂Aの合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名:デスモジュールW、バイエル社製)89.3部と、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTHF−2000、BASFジャパン社製)234.2部と、ジメチロールヘプタン(商品名:ブチルエチルプロパンジオール、協和発酵ケミカル社製)6.6部と、ジメチロールプロピオン酸(商品名:Bis−MPA、パーストープ社製)11.4部と、アセトニトリル150部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応温度を73〜77℃に調整して、7時間で反応率99%以上まで反応させた。
【0194】
次いで、アセトン200部を仕込み、均一になるまで攪拌しながら30℃まで冷却し、トリエチルアミン8.6部を加えて、十分に攪拌して中和し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0195】
次に、この4つ口フラスコ中に、予め25℃に調整した水1099部を徐々に添加して攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散した。
【0196】
その後、イソホロンジアミン16.2部を加え、25〜30℃にて3時間攪拌した。その後、減圧下でアセトニトリル、アセトン、および水の一部を除去することにより、第2水性ポリウレタン樹脂Aの水分散液を調製した。
【0197】
得られた水性ポリウレタン樹脂Aについて、水分散液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、および、配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))を表2に示す。
【0198】
合成例2〜5(第2水性ポリウレタン樹脂B〜Eの合成)
下記の表2に示す配合処方に基づいて、合成例1と同様の方法により、第2水性ポリウレタン樹脂Bの水分散液(合成例2)、第2水性ポリウレタン樹脂Cの水分散液(合成例3)、第2水性ポリウレタン樹脂Dの水分散液(合成例4)、および、第2水性ポリウレタン樹脂Eの水分散液(合成例5)を、それぞれ調製した。
【0199】
また、合成例1と同様に、得られた第2水性ポリウレタン樹脂B〜Eについて、水分散液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、および、配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))を表2に示す。
【0200】
合成例6(第2水性ポリウレタン樹脂Fの合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名:デスモジュールW、バイエル社製)78.5部と、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTHF−2000、BASFジャパン社製)208.5部と、エチレングリコール4.9部と、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA33.1部、アセトニトリル139部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応温度を73〜77℃に調整して、7時間で反応率99%以上まで反応させた。
【0201】
次いで、アセトン186部を仕込み、均一になるまで攪拌しながら30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0202】
次に、この4つ口フラスコ中に、予め25℃に調整した水965部を徐々に添加して攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散した。
【0203】
その後、イソホロンジアミン13.8部を加え、25〜30℃にて3時間攪拌した。その後、減圧下でアセトニトリル、アセトン、および水の一部を除去することにより、第2水性ポリウレタン樹脂Fの水分散液を調製した。
【0204】
また、合成例1と同様に、得られた水性ポリウレタン樹脂Fについて、水分散液の固形分(質量%)、粘度(mPa・s/25℃)、および、配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))を表2に示す。
【0205】
【表2】

【0206】
なお、表2中の略号は、下記の通りである。
12MDI:4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、商品名デスモジュールW、バイエル社製
PTHF2000:数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、BASFジャパン社製
ジメチロールヘプタン:ブチルエチルプロパンジオール、協和発酵ケミカル社製
ソバモール908:水添ダイマーアルコール(ダイマー酸の還元により得られるダイマー脂肪族アルコール、コグニスジャパン社製
ネオペンチルグリコール:三菱瓦斯化学社製
トリメチロールプロパン:三菱瓦斯化学社製
エチレングリコール:和光純薬社製
2,2−ジメチロールプロピオン酸:Bis−MPA、パーストープ社製
POE側鎖ポリオールA:ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA
トリエチルアミン:和光純薬社製
イソホロンジアミン:和光純薬社製
1,6−ヘキサメチレンジアミン:HMD(ヘキサメチレンジアミン)、インビスタジャパン社製
調製例2(硬化剤Aの調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を取り付けた4つ口フラスコを窒素置換した後、タケネートD−110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分75質量%、三井化学社製)341部と、メチルエチルケトン64.7部とを仕込み、攪拌し、タケネートD−110Nをメチルエチルケトンに溶解させた。
【0207】
次いで、内温を50〜60℃に保ち、攪拌しながら、3,5−ジメチルピラゾール(大塚化学社製)94.3部を1時間かけて添加した。
【0208】
その後、内温50℃で1時間攪拌し、3,5−ジメチルピラゾールの固体が完全に溶解したことを確認した後、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)でイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、ブロックイソシアネートを得た。
【0209】
このブロックイソシアネート500部をホモミキサーで攪拌(回転数4000rpm)しながら、ノナール912A(ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、固形分100質量%、東邦化学社製)17.5部を30分かけて添加、次いでエマルゲンA−500(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、固形分100質量%、花王社製)の25質量%水溶液70部を30分かけて添加、次いでルノックス100(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、固形分60質量%、東邦化学社製)の固形分10質量%水溶液を35.0部を30分かけて添加、次いで水666部を30分かけて添加し、乳化させた。
【0210】
その後、消泡剤(BYK−022、ビックケミー社製)0.2部を添加し、回転数1000rpmで1時間攪拌し、その後、減圧下において有機溶剤および水の一部を除去することにより、固形分40質量%の硬化剤Aを得た。
【0211】
調製例3、5〜7(硬化剤B、D、E、Fの調製)
下記の表3に示す配合処方に基づいて、調製例2と同様の方法により、硬化剤B(調製例3)、硬化剤D(調製例5)、硬化剤E(調製例6)および硬化剤F(調製例7)を、固形分40質量%の水分散体としてそれぞれ調製した。
【0212】
調製例4(硬化剤Cの調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管を取り付けた4つ口フラスコを窒素置換した後、タケネートD−110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分75質量%、三井化学社製)293.8部と、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名メトキシPEG−1000、東邦化学社製)56.3部とを仕込み、74℃で3時間反応させた。次いで、メチルエチルケトン76.5部を仕込み、攪拌し、内温を50〜60℃に保ち、攪拌しながら、3,5−ジメチルピラゾール(大塚化学社製)73.4部を1時間かけて添加した。
【0213】
その後、内温50℃で1時間攪拌し、3,5−ジメチルピラゾールの固体が完全に溶解したことを確認した後、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)でイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、ブロックイソシアネートを得た。
【0214】
このブロックイソシアネート500部をホモミキサーで攪拌(回転数4000rpm)しながら、水650部を30分かけて添加し、乳化させた。
【0215】
その後、消泡剤(BYK−022、ビックケミー社製)0.2部を添加し、回転数1000rpmで1時間攪拌し、その後、減圧下において有機溶剤および水の一部を除去することにより、固形分40質量%の硬化剤Cを得た。
【0216】
【表3】

【0217】
なお、表3中の略号は、下記の通りである。
D−110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分75質量%、三井化学社製
D−103H:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分75質量%、三井化学社製
D−160N:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、固形分75質量%、三井化学社製
MEOPEG1000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、商品名メトキシPEG−1000、分子量1000、東邦化学社製
3,5−ジメチルピラゾール:大塚化学社製
メチルエチルケトオキシム:メチルエチルケトンオキシム、宇部興産社製
エマルゲンA−500:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 固形分濃度:100質量%、HLB:18.0、花王社製(なお、実施例では4倍希釈し、25質量%水溶液として用いた。)
ノナール912A:ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、固形分濃度:100質量%、HLB:14.3、東邦化学工業社製
ルノックス100:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、固形分濃度60質量%、東邦化学工業社製(なお、実施例では6倍希釈し、10質量%水溶液として用いた。)
消泡剤:BYK−022、ビックケミー社製
実施例7(親水性樹脂Aの調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた容器に、水性ポリウレタン樹脂Aの水分散液(固形分35.1質量%)34部と、第2水性ポリウレタン樹脂Aの水分散液(固形分30.6質量%)の168部を加え、更に、硬化剤Aを、水性ポリウレタン樹脂Aと第2水性ポリウレタン樹脂Aとの総量(水分散液として)に対して2.8質量部の割合で配合し、2000min1で10分間攪拌混合した。その後、減圧下で脱泡し、親水性樹脂Aの水分散液を得た。
【0218】
得られた親水性樹脂Aについて、硬化剤の配合量を除いた、配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))、水分散液の固形分(質量%)および粘度(mPa・s/25℃)を表4に示す。
【0219】
実施例8〜28および比較例4〜6(親水性樹脂B〜Y)
表4〜7に示す配合処方に基づいて、実施例7と同様の方法により、親水性樹脂B〜Yの水分散液を調製した。なお、実施例8〜15、17〜21、23〜27および比較例5においては、水を配合した。また、実施例16および17は硬化剤を配合せず、実施例28は第2水性ポリウレタン樹脂を配合せず、比較例6は水性ポリウレタン樹脂を配合しなかった。
【0220】
得られた親水性樹脂B〜Yについて、硬化剤の配合量を除いた、配合処方に基づく計算上のポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(質量%))、水分散液の固形分(質量%)および粘度(mPa・s/25℃)を表4〜7に示す。
【0221】
【表4】

【0222】
【表5】

【0223】
【表6】

【0224】
【表7】

【0225】
なお、表4〜7においては、硬化剤の配合処方を、水性ポリウレタン樹脂の水分散液における固形分と、第2水性ポリウレタン樹脂の水分散液における固形分との総量100質量部に対する、水分散液の配合量(単位:質量部)として表記している。
【0226】
評価
膜の外観
各実施例および各比較例の親水性樹脂の水分散液を、キャスティングして、120℃において2分間、さらに、170℃において2分間硬化させ、膜厚0.04mmの乾燥透明フィルム(実施例7、16は0.02mmの乾燥透明フィルム)を形成した。このフィルムの外観を以下の基準に従って評価した。その結果を表4〜7に示す。
(評価基準)
「○」:平滑で綺麗な膜が得られた
「△」:表面が均一に荒れた膜が得られた
「×」:表面がまだらに荒れた膜が得られた
耐水性
各実施例および各比較例の親水性樹脂の水分散液を、キャスティングして、120℃において2分間、さらに、170℃において2分間硬化させ、膜厚0.04mmの乾燥透明フィルム(実施例7、16は0.02mmの乾燥透明フィルム)を形成した。その後、このフィルムを水に2分間浸漬し、色の変化を目視により観察し、以下の基準に従ってその耐水性を判定した。その結果を表4〜7に示す。
【0227】
なお、実施例16および17で得られたフィルムは、耐水性試験で、フィルムにしわが発生した(*1)。
(評価基準)
「○」:透明なまま色が殆ど変化しない
「△」:フィルムが青っぽくなり、曇る
「×」:フィルムが濁り、白っぽくなる
透湿性試験(透湿性試験A−1法)
各実施例および各比較例の親水性樹脂の水分散液を、キャスティングして、120℃において2分間、さらに、170℃において2分間硬化させ、膜厚0.02mmの乾燥透明フィルムを形成した。その後、このフィルムを、JIS L1099(2006)A−1法(塩化カルシウム法)に準拠して透湿性を評価した。その結果を表4〜7に示す。
機械強度試験
各実施例および各比較例の親水性樹脂の水分散液を、キャスティングして、120℃において2分間、さらに、170℃において2分間硬化させ、膜厚0.04mmの乾燥透明フィルム(実施例7、16は0.02mmの乾燥透明フィルム)を形成した。その後、このフィルムを1cmの短冊状に切断し、引張速度200mm/分の条件で引張試験し、破断時の応力(破断強度(MPa))、伸び率(破断伸び(%))および100%モジュラス(MPa)を測定した。その結果を表4〜7に示す。
【0228】
なお、比較例6で得られたフィルムは引張と直ぐに破断し、数値化できなかった(*2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環および脂環を含有しないか、または、芳香環または脂環を1つ含有する複数環不含ポリイソシアネートを、50質量%以上含有するポリイソシアネート、
ポリオキシエチレンポリオール、および、
水酸基またはイソシアネート基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物を、
少なくとも反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、
水を含む鎖伸長剤と
の反応により得られる水性ポリウレタン樹脂であって、
イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基の60モル%以上が、水で鎖伸長されていることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
固形分濃度30質量%の水分散液における粘度が、5000mPa・s未満であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
ポリオキシエチレン基が、50〜90質量%含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
ポリオキシエチレンポリオールの数平均分子量が、600〜6000であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物において、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が、600〜6000であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性化合物は、ウレア基、ウレタン基およびアロファネート基から選択される少なくとも1種の化学結合を有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
親水性改質剤であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
第1水性樹脂として、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする、親水性樹脂。
【請求項9】
第2水性樹脂を含有することを特徴とする、請求項8に記載の親水性樹脂。
【請求項10】
水分散性のイソシアネート硬化剤を含有することを特徴とする、請求項8または9に記載の親水性樹脂。
【請求項11】
第2水性樹脂は、原料として、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種の疎水性マクロポリオールを含み、
疎水性マクロポリオールが、第2水性樹脂の原料総量に対して50質量%以上含まれていることを特徴とする、請求項9または10に記載の親水性樹脂。
【請求項12】
第2水性樹脂は、原料として、さらに、カルボン酸基含有ポリオールを含んでいることを特徴とする、請求項11に記載の親水性樹脂。
【請求項13】
イソシアネート硬化剤が、
イソシアネートがブロック剤によりブロックされているブロックイソシアネートであることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の親水性樹脂。
【請求項14】
ブロックイソシアネートが、外部乳化剤により水分散されていることを特徴とする、請求項13に記載の親水性樹脂。
【請求項15】
ブロックイソシアネートにおいて、イソシアネートが、芳香環を1つ含有するポリイソシアネートまたはその変性体であることを特徴とする、請求項13または14に記載の親水性樹脂。
【請求項16】
ブロックイソシアネートにおいて、ブロック剤が、3,5−ジメチルピラゾールであることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の親水性樹脂。
【請求項17】
透湿防水加工のためのコーティング剤であることを特徴とする、請求項8〜16のいずれか一項に記載の親水性樹脂。
【請求項18】
請求項8〜17のいずれか一項に記載の親水性樹脂から得られることを特徴とする、フィルム。

【公開番号】特開2012−77255(P2012−77255A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226173(P2010−226173)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】