説明

水性ポリウレタン樹脂

【課題】プラスチック基材と、そのプラスチック基材に積層されるコート層とに間に、良好な密着性を付与することのできる、水性ポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】まず、ポリオール化合物およびアニオン性基活性水素基併有化合物と、ポリイソシアネート化合物とを、当量比(NCO/活性水素基)が1を超える割合で配合し、次いで、活性水素基含有アクリレート化合物を配合して反応させることにより、イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を有するウレタンプレポリマーを合成する。次いで、アニオン性基を中和して水に分散させた後、ウレタンプレポリマーをアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物を含む鎖伸長剤と鎖伸長反応させて、本発明の水性ポリウレタン樹脂の水分散液を得る。本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチック用プライマー、とりわけ、光学プラスチックレンズ用プライマーとして好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂、詳しくは、プラスチック用プライマー、より詳しくは、光学プラスチックレンズ用プライマーに、好適に用いられる水性ポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタン樹脂は、種々の産業分野において、プライマーとして用いられている。
例えば、光学プラスチックレンズの分野においては、ポリウレタン樹脂は、レンズ基材の表面にハードコート層を形成するときに、それらレンズ基材の表面とハードコート層との間の密着性を向上させるためのプライマーとして用いられている。
【0003】
また、近年、光学プラスチックレンズの分野においては、屋外では着色してサングラスとして機能し、屋内では退色して透明な眼鏡として機能するフォトクロミックレンズを、レンズ基材の表面にフォトクロミックコート層を形成することにより、製造することが知られており、レンズ基材の表面とフォトクロミックコート層との間の密着性を向上させるために、ポリウレタン樹脂をプライマーとして用いることが検討されている。
【0004】
例えば、レンズ基材の表面とフォトクロミックコート層との間のプライマーとして、湿気硬化性ポリウレタン樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開第2004/078476A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、湿気硬化性ポリウレタン樹脂は、レンズ基材などの基材に対する密着性は良好である一方、それに積層されるハードコート層やフォトクロミックコート層などのコート層に対する濡れ性が不良であり、コート層が湿気硬化性ポリウレタン樹脂をはじいて、密着不良を生じるという不具合がある。
本発明の目的は、プラスチック基材と、そのプラスチック基材に積層されるコート層との間に、良好な密着性を付与することのできる、水性ポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物およびアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、得られることを特徴としている。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物および活性水素基含有アクリレート化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を有するウレタンプレポリマーを合成し、ウレタンプレポリマーと、少なくともアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物とを反応させることにより、得られることが好適である。
【0007】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂において、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物は、下記一般式(1)で示される化合物であることが好適である。
一般式(1):
【0008】
【化3】

【0009】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R3およびR4は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好適である。
【0010】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネート化合物は、下記一般式(2)で示される化合物を含んでいることが好適であり、かかる場合において、80〜160℃でイソシアネート基を再生することが好適である。
一般式(2):
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数6〜13の2価の炭化水素基を示す。nは、1〜10の整数を示す。)
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチック用プライマーとして用いられることが好適であり、とりわけ、光学プラスチックレンズ用プライマーとして用いられることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水性ポリウレタン樹脂によれば、プラスチック基材と、そのプラスチック基材に積層されるコート層との間に、良好な密着性を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチック用プライマーとして、好適に用いることができる。
とりわけ、本発明の水性ポリウレタン樹脂によれば、プラスチックレンズ基材と、それに積層されるハードコート層やフォトクロミックコート層などのコート層との間に、良好な密着性を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、光学プラスチックレンズ用プライマーとして、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、活性水素基含有成分として、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物およびアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物を含み、ポリイソシアネート成分として、ポリイソシアネート化合物を含み、それら活性水素基含有成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより、得ることができる。
【0015】
本発明において、ポリオール化合物は、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であって、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオール(以下、マクロポリオールとする。)が挙げられる。
低分子量ポリオールは、例えば、数平均分子量60〜400のポリオール化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン−1,2−ジオール(炭素数17〜20)、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの低分子量トリオール、例えば、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの4つ以上のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0016】
また、これら低分子量ポリオールは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、低分子量ジオールおよび/または低分子量トリオールが挙げられ、より好ましくは、低分子量ジオールおよび低分子量トリオールの併用が挙げられる。
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。

ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレンオキサイド、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加反応により得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類の開環重合により得られる、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上と、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどとの反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類の開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0018】
アクリルポリオールとしては、例えば、分子内に1つ以上のヒドロキシル基を有する重合性単量体と、これに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。ヒドロキシル基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。また、これらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。そして、アクリルポリオールは、これら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることにより得ることができる。
【0019】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとの反応により得られるエポキシポリオールが挙げられる。
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有天然油などが挙げられる。
【0020】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0021】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ボリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。 これらマクロポリオールは、数平均分子量が、例えば、200〜8000、好ましくは300〜5000であり、ヒドロキシル基当量が、例えば、80〜5000、好ましくは、100〜3000である。
また、これらマクロポリオールは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0022】
ポリオール化合物は、上記した低分子量ポリオールおよびマクロポリオールから、1種または2種以上が適宜選択される。低分子量ポリオールおよびマクロポリオールを、それぞれ単独で用いることもでき、また、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールを併用することもできる。好ましくは、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールを併用する。低分子量ポリオールおよびマクロポリオールを併用する場合には、それらの割合は、例えば、マクロポリオール100重量部に対して、低分子量ポリオールが、例えば、0.5〜200重量部、好ましくは、1〜100重量部である。
【0023】
本発明において、アニオン性基活性水素基併有化合物は、例えば、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基などのアニオン性基を1つ以上有し、かつ、イソシアネート基と反応し得る、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素基を2つ以上有する化合物であって、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。
【0024】
より具体的には、カルボキシル基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。
【0025】
また、スルホニル基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
また、リン酸基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0026】
また、ベタイン構造含有基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物などが挙げられる。
さらに、アニオン性基活性水素基併有化合物として、アニオン性基活性水素基併有化合物に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドが付加されているアルキレンオキサイド変性体を挙げることもできる。
【0027】
また、これらアニオン性基活性水素基併有化合物は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、カルボキシル基を有するアニオン性基活性水素基併有化合物が挙げられる。
また、アニオン性基活性水素基併有化合物は、ポリオール化合物100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部の割合で配合される。
【0028】
また、アニオン性基活性水素基併有化合物は、特に制限されないが、後述するウレタンプレポリマー100gあたり、アニオン性基が、例えば、10〜100ミリ当量、好ましくは、15〜60ミリ当量となる割合で配合される。
ウレタンプレポリマー100gあたりアニオン性基 を15ミリ当量以上とすることにより、ウレタンプレポリマーの水分散時に、安定性を向上させることができる。また、ウレタンプレポリマー100gあたりアニオン性基を60ミリ当量以下とすることにより、より経済的な製造を実現することができ、また、水性ポリウレタン樹脂の親水性を好適な範囲に保持することができる。
【0029】
本発明において、活性水素基含有アクリレート化合物は、1つ以上、好ましくは、1つのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物(アクリレート化合物および/またはメタアクリレート化合物であって、以下、(メタ)アクリレートとする。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタアクリロイル基を示す。)であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。これら活性水素基含有アクリレート化合物は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
また、活性水素基含有アクリレート化合物は、ポリオール化合物100重量部に対して、例えば、0.4〜25重量部、好ましくは、0.8〜15重量部の割合で配合される。
本発明において、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物は、1つ以上、好ましくは、1〜3つのアルコキシシリル基を有し、かつ、2つ以上、好ましくは、2つのアミノ基を有する化合物である。アルコキシシリル基において、Si原子に結合するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
【0031】
また、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物のアミン価は、好ましくは、300〜700KOHmg/gであり、さらに好ましくは、400〜550KOHmg/gである。
このようなアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、例えば、下記一般式(1)で示される。
一般式(1):
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R3およびR4は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
上記一般式(1)において、R1およびR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。また、R3およびR4としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられる。
【0034】
アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物として、より具体的には、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N´-ビス〔a-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0035】
これらアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
また、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物は、ポリオール化合物100重量部に対して、例えば、0.5〜30重量部、好ましくは、1〜10重量部の割合で配合される。
【0036】
本発明において、ポリイソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0037】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
また、ポリイソシアネート化合物としては、上記した各種ポリイソシアネート化合物の多量体(例えば、二量体、三量体など)や、例えば、上記した各種ポリイソシアネート化合物あるいはその多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、アルコールまたは上記した低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、さらには、上記した低分子量ポリオールとの反応により生成するポリオール変性体などが挙げられる。
【0040】
これらポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネート、より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0041】
さらに、ポリイソシアネート化合物は、好ましくは、ウレチジオン結合によるポリイソシアネート化合物の重合体(ポリイソシアネート化合物のウレチジオン重合体)であって、下記一般式(2)で示される化合物を含んでいる。
一般式(2):
【0042】
【化6】

【0043】
(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数6〜13の2価の炭化水素基を示す。nは、1〜10の整数を示す。)
上記一般式(2)において、R5およびR6としては、炭素数6〜13の、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、芳香族の2価の炭化水素基であって、例えば、上記したポリイソシアネート化合物の残基(すなわち、上記したポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基(2価の炭化水素基))であって、例えば、HDI残基、IPDI残基、H12MDI残基、HXDI残基、NBDI残基、XDI残基、TMXDI残基、MDI残基、TDI残基、TODI残基、NDI残基などが挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネート化合物のウレチジオン重合体として、より具体的には、例えば、HDIのウレチジオン重合体、IPDIのウレチジオン重合、H12MDIのウレチジオン重合体、HXDIのウレチジオン重合体、NBDIのウレチジオン重合体、XDIのウレチジオン重合体、TMXDIのウレチジオン重合体、MDIのウレチジオン重合体、TDIのウレチジオン重合体、TODIのウレチジオン重合体、NDIのウレチジオン重合体などが挙げられる。好ましくは、HDIのウレチジオン重合体、IPDIのウレチジオン重合、H12MDIのウレチジオン重合体、HXDIのウレチジオン重合体、NBDIのウレチジオン重合体が挙げられる。
【0045】
また、ポリイソシアネート化合物のウレチジオン重合体は、ポリイソシアネート化合物100重量部に対して、例えば、1〜90重量部、好ましくは、5〜80重量部の割合で含まれる。
ポリイソシアネート化合物のウレチジオン重合体を配合すれば、得られた水性ポリウレタン樹脂を80〜160℃に加熱することによって、ウレチジオン結合を解裂させて、イソシアネート基を再生することができる。そのため、水性ポリウレタン樹脂を加熱硬化させることができる。
【0046】
そして、活性水素基含有成分(すなわち、少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物およびアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物)と、ポリイソシアネート成分(すなわち、ポリイソシアネート化合物)とを反応させて、本発明のポリウレタン樹脂を合成するには、ワンショット法やプレポリマー法など、特に制限されないが、好ましくは、プレポリマー法により合成する。
【0047】
プレポリマー法では、まず、ポリオール化合物およびアニオン性基活性水素基併有化合物と、ポリイソシアネート化合物とを、活性水素基(ヒドロキシル基およびアミノ基)に対するイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1を超える割合、好ましくは、1.1〜2.5となる割合で配合して、これらを、イソシアネート基の含有量がNCO%で1〜12%、好ましくは、2〜10%となるまで反応させた後、次いで、活性水素基含有アクリレート化合物を、活性水素基に対する残存するイソシアネート基の当量比(残存NCO/活性水素基)が、2〜25となる割合、好ましくは、3〜15となる割合で配合して、さらに反応させる。
【0048】
これにより、まず、ポリオール化合物およびアニオン性基活性水素基併有化合物と、ポリイソシアネート化合物との反応により、イソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーが合成され、次いで、活性水素基含有アクリレート化合物が配合されると、そのウレタンプレポリマーのイソシアネート基の4〜50モル%、好ましくは、5〜30モル%が、活性水素基含有アクリレート化合物と反応して、イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を分子末端に有するウレタンプレポリマーが合成される。
【0049】
このウレタンプレポリマーは、分子末端100モル%に対して、50〜96モル%、好ましくは、70〜95モル%のイソシアネート基と、4〜50モル%、好ましくは、5〜30モル%の(メタ)アクリロイル基とを有する、自己乳化型ウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量が、NCO%で、例えば、2〜10%、好ましくは、1〜8%である。
【0050】
また、ウレタンプレポリマーの平均官能基数は、例えば、1.1〜3.5、好ましくは、1.5〜2.5であり、その数平均分子量は、例えば、700〜10000、好ましくは、1000〜6000である。
このようなウレタンプレポリマーの合成は、常圧下、また必要により窒素雰囲気下、その反応温度が、例えば、40〜120℃、好ましくは、50〜100℃に設定され、その反応時間が、例えば、2〜20時間、好ましくは、4〜15時間に設定される。
【0051】
また、このウレタンプレポリマーの合成では、必要により、反応溶媒を使用したり、反応触媒を添加することができる。
反応溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む溶媒である、例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのカルビトール類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。反応溶媒の使用量は、適宜決定される。
【0052】
反応触媒としては、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒が挙げられる。反応溶媒の添加量は、適宜決定される。
さらに、このウレタンプレポリマーの合成後には、得られるウレタンプレポリマーから遊離の(未反応の)ポリイソシアネート化合物を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段によって、除去することもできる。
【0053】
その後、この方法では、ウレタンプレポリマーを、そのアニオン性基を中和した後に、水に分散させる。
アニオン性基の中和は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ塩、さらには、アンモニアなどから選択される中和剤を、ウレタンプレポリマーに添加して、アニオン性基の塩を形成させる。
【0054】
中和剤の添加量は、アニオン性基1当量あたり、例えば、0.4〜1.2当量、好ましくは、0.6〜1.0当量である。
ウレタンプレポリマーを水に分散させるには、例えば、ウレタンプレポリマーを撹拌しつつ、これに対して徐々に水を添加するか、あるいは、水を攪拌しつつ、これに対して徐々にウレタンプレポリマーを添加する。これにより、ウレタンプレポリマーの水分散液が調製される。なお、攪拌は、好ましくは、ホモミキサーなどを用いて、高剪断が付与されるように混合する。
【0055】
水の添加量は、所望する水性ポリウレタン樹脂の水分散液の固形分重量により適宜決定されるが、例えば、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、20〜1000重量部の範囲である。
なお、アニオン性基の中和は、ウレタンプレポリマーの合成前、合成後、または後述する鎖伸長反応後のいずれの段階でもすることもできるが、ウレタンプレポリマーの合成後(水分散前)にすれば、ウレタンプレポリマーの水中での安定性を向上させることができる。
【0056】
そして、このウレタンプレポリマーの水分散後に、ウレタンプレポリマーと、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物とを反応させる。
この反応は、ウレタンプレポリマーを、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物と反応させて鎖伸長する鎖伸長反応であって、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物は、ウレタンプレポリマーを鎖伸長するための、鎖伸長剤として用いられる。
【0057】
また、この鎖伸長反応においては、必要により、鎖伸長剤として、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物以外の、他のアミン類、ヒドラジン類(他のアミン類、ヒドラジン類は、活性水素基含有成分に含まれる。)を併用することもできる。そのような他のアミン類、ヒドラジン類としては、例えば、エチルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、ジブチルアミンなどのモノアミン類、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミン類、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコール類、例えば、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジンおよびその誘導体などが挙げられる。このような他のアミン類、ヒドラジン類は、例えば、ケチミン、ケタジンまたはアミン塩のように、アミノ基がマスクされた形態のものも含まれる。
【0058】
なお、これら併用する他のアミン類、ヒドラジン類は、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、ジアミン類、アミノアルコール類、ヒドラジン類が挙げられる。また、併用する他のアミン類、ヒドラジン類は、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物100重量部に対して、例えば、1000重量部以下、好ましくは、5〜700重量部の範囲で併用される。
【0059】
そして、鎖伸長反応は、ウレタンプレポリマーの水分散液に、鎖伸長剤(アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物、および、必要により他のアミン類、ヒドラジン類)を、配合する。鎖伸長剤の配合割合は、鎖伸長剤のアミノ基に対するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の当量比(NCO基/アミノ基)が、1を超える割合、好ましくは、1.1〜20となる割合である。
【0060】
この鎖伸長反応は、より具体的には、ウレタンプレポリマーの水分散液を攪拌しつつ、これに対して速やかに(つまり、イソシアネート基と水との反応が進まないうちに)、鎖伸長剤を滴下する。攪拌は、好ましくは、ホモミキサーなどを用いて、高剪断が付与されるように混合する。滴下される鎖伸長剤は、予め水で希釈してアミン水溶液として調製しておくこともできる。
【0061】
この鎖伸長反応は、常圧下、また必要により窒素雰囲気下、その反応温度が、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水との反応を抑制するために、例えば、5〜30℃、好ましくは、5〜25℃に設定され、その反応時間が、例えば、0.5〜10時間、好ましくは、1〜5時間に設定される。
また、鎖伸長剤の滴下終了後には、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。これによって、本発明の水性ポリウレタン樹脂を、水分散液として調製することができる。なお、水性ポリウレタン樹脂の水分散液のpHは、通常7〜9程度である。
【0062】
このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂の水分散液は、その固形分が、例えば、5〜60重量%、好ましくは、10〜50重量%となるように調製される。
なお、ウレタンプレポリマーの合成において、反応溶媒が使用されている場合には、ウレタンプレポリマーの反応終了後、または、鎖伸長反応の終了後に、反応溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより留去する。
【0063】
なお、本発明の水性ポリウレタン樹脂、または、その水分散液には、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
【0064】
そして、このようにして得られる本発明の水性ポリウレタン樹脂は、種々の産業分野において、各種部材間の密着性および接着性に優れるため、例えば、プライマーや接着剤として用いることができる。例えば、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチックに対する密着性および接着性に優れるため、プラスチック用プライマーやプラスチック用接着剤として用いることができる。
【0065】
さらに、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチック基材と、そのプラスチック基材に積層されるコート層との間に、良好な密着性を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチック用プライマーとして、好適に用いることができる。
とりわけ、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、プラスチックレンズ基材と、それに積層されるハードコート層やフォトクロミックコート層などのコート層との間に、良好な密着性を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、光学プラスチックレンズ用プライマーとして、好適に用いることができる。
【0066】
本発明の水性ポリウレタン樹脂を、光学プラスチックレンズ用プライマーとして用いる場合において、プラスチックレンズ基材は、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの熱可塑性樹脂レンズ基材、例えば、多官能(メタ)アクリル系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、チオエポキシ系樹脂などの架橋性樹脂レンズ基材などが挙げられる。
【0067】
また、コート層を形成するためのコーティング剤として、例えば、ウレタン系コーティング剤、アクリル系コーティング剤、アクリルアミド系コーティング剤などが挙げられる。
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂を、光学プラスチックレンズ用プライマーとして用いる場合には、例えば、まず、プラスチックレンズ基材の表面に、例えば、デッピング、スピンコーティング、ディップスピンコーティングなどの公知の塗布方法によって、本発明の水性ポリウレタン樹脂の水分散液を、例えば、0.1〜200g/m、好ましくは、0.2〜150g/mの塗布量で塗布し、その後、例えば、20〜180℃、好ましくは、40〜160℃で乾燥することにより、成膜する。次いで、成膜された水性ポリウレタン樹脂の表面に、コーティング剤を、例えば、10〜500g/m、好ましくは、20〜250g/mの塗布量で塗布し、その後、これを硬化させる。
【0068】
これにより、本発明の水性ポリウレタン樹脂を、光学プラスチックレンズ用プライマーとして用いて、プラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート層やフォトクロミックコート層などのコート層を、良好な密着性をもって、形成することができる。
しかも、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、ハードコート層やフォトクロミックコート層などのコート層に対する濡れ性が良好であるため、コート層によってはじかれることがなく、その結果、プラスチックレンズ基材とコート層との間の優れた密着性を確保することができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されることはない。
実施例1(プライマーAの合成)
攪拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、UH−CARB200(ポリカーボネートジオール平均分子量2000、宇部興産社製)205.6g、トリエチレングリコール15.4g、ジメチロールプロピオン酸11.2g、トリメチロールプロパン1.8g、アセトニトリル145.0gを仕込んだ。
【0070】
その後、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン91.1gを4つ口フラスコに添加して、75℃で6時間反応させた。反応液のイソシアネート含有量(NCO%)が2.9モル%となった後、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.8g、オクチル酸第一錫0.017gを4つ口フラスコに添加して、70℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た(NCO%=2.45%)。
【0071】
この反応液を40℃に冷却した後、トリエチルアミン8.3gにて中和し、イオン交換水650gを徐々に添加して水分散させた。
次いで、ヒドラジン一水和物4.9gとKBM602(N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学社製)6.8gをイオン交換水46.8gで溶解したアミン水溶液を、ウレタンプレポリマーの水分散液に添加して鎖延長反応させた。さらに、アセトニトリルを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂の水分散液であるプライマーAを得た。
【0072】
このプライマーAの皮膜物性を測定したところ、100%モジュラス6.5MPa、破断強度45MPa、破断伸び370%、ガラス転移温度62℃であった。
実施例2(プライマーBの合成)
攪拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、PTG2000SN(ポリテトラメチレンエーテルグリコール平均分子量2000、保土ヶ谷化学社製)201.5g、トリエチレングリコール15.1g、ジメチロールプロピオン酸11.0g、トリメチロールプロパン1.8g、アセトニトリル145.1gを仕込んだ。
【0073】
その後、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン81.2g、D−195N(ヘキサメチレンジイソシアネートのウレチジオン重合体、三井化学ポリウレタン社製)15.0gを4つ口フラスコに添加して、75℃で6時間反応させた。反応液のイソシアネート含有量(NCO%)が2.9モル%となった後、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.7g、オクチル酸第一錫0.017gを4つ口フラスコに添加して、70℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た(NCO%=2.40%)。
【0074】
この反応液を40℃に冷却した後、トリエチルアミン8.1gにて中和し、イオン交換水650gを徐々に添加して水分散させた。
次いで、ヒドラジン一水和物4.9gとKBM602(N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学社製)6.7gをイオン交換水46.4gで溶解したアミン水溶液を、ウレタンプレポリマーの水分散液に添加して鎖延長反応させた。さらに、アセトニトリルを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂の水分散液であるプライマーBを得た。
【0075】
このプライマーBの皮膜物性を測定したところ、100%モジュラス3.1MPa、破断強度26MPa、破断伸び450%、ガラス転移温度36℃であった。
比較例1(プライマーCの合成)
攪拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、PTG2000SN(ポリテトラメチレンエーテルグリコール平均分子量2000、保土ヶ谷化学社製)213.5g、トリエチレングリコール16.0g、ジメチロールプロピオン酸11.7g、アセトニトリル144.5gを仕込んだ。
【0076】
その後、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン87.5gを4つ口フラスコに添加して、75℃で6時間反応させた。次いで、オクチル酸第一錫0.017gを添加して、70℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た(NCO%=2.67%)。
この反応液を40℃に冷却した後、トリエチルアミン8.6gにて中和し、イオン交換水650gを徐々に添加して水分散させた。
【0077】
次いで、ヒドラジン一水和物5.4gとKBM602(N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学社製)7.4gをイオン交換水51.2gで溶解したアミン水溶液を、ウレタンプレポリマーの水分散液に添加して鎖延長反応させた。さらに、アセトニトリルを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂の水分散液であるプライマーCを得た。
【0078】
このプライマーCの皮膜物性を測定したところ、100%モジュラス3.1MPa、破断強度36MPa、破断伸び550%、ガラス転移温度20℃であった。
比較例2(プライマーDの合成)
攪拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、PTG2000SN(ポリテトラメチレンエーテルグリコール平均分子量2000、保土ヶ谷化学社製)152.9g、ネオペンチルグリコール15.9g、ジメチロールプロピオン酸26.7g、アセトニトリル145.6gを仕込んだ。
【0079】
その後、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン124.7gを4つ口フラスコに添加して、75℃で6時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た(NCO%=3.86%)。
この反応液を40℃に冷却した後、トリエチルアミン19.7gにて中和し、イオン交換水650gを徐々に添加して水分散させた。
【0080】
次いで、ヒドラジン一水和物10.2gをイオン交換水40.8gで溶解したアミン水溶液を、ウレタンプレポリマーの水分散液に添加して鎖延長反応させた。さらに、アセトニトリルを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂の水分散液であるプライマーDを得た。
このプライマーDの皮膜物性を測定したところ、100%モジュラス19MPa、破断強度60MPa、破断伸び480%、ガラス転移温度90℃であった。
【0081】
比較例3(プライマーEの合成)
タケネートM-402P(湿気硬化型ポリイソシアネート、三井化学ポリウレタン社製)50重量部と、酢酸ブチル50重量部と混合して、プライマーEを得た。
評価例
1)ハードコート材Aの調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート47重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート45重量部およびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部を混合した後、これに、ダロキュアー1173(光重合開始剤、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)を3重量部添加してハードコート材Aを得た。
2)評価実験
プライマーA〜Eを、PMMA板に、乾燥後厚みが10μmとなるようアプリケータにて塗布し、その後、90℃で10分間乾燥させて成膜した。
【0082】
次いで、PMMA板の上に成膜されたプライマーの上に、ハードコート材Aを、厚み40μとなるようにアプリケータにて塗布し、その後、塗布されたハードコート材Aに対して、高圧水銀灯紫外線照射装置で照射量500mJ/cmとなるように紫外線照射して、ハードコート材Aを光硬化させることにより、ハードコート層を形成した。
このようにして得たPMMA板の積層皮膜の密着性を、クロスカット法により評価した。また、プライマー層に対するハードコート層の濡れ性について、目視で評価した。その結果を表1に示す。
【0083】
なお、プライマーを用いずに、上記と同様の方法により、PMMA板にハードコート層を形成したものの評価を、表1に併せて示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1において、クロスカット法(密着性)および濡れ性の評価基準を以下に示す。
クロスカット法評価基準:
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1:カットの交差点において塗膜の小さな剥がれある。しかし、クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って部分的または全面的に大きな剥がれを生じており、および/または目のいろいろな部分が部分的または全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って部分的または全面的に大きな剥がれを生じており、および/または数ヶ所の目が部分的または全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
5:剥がれの程度が4を超えている。
濡れ性評価基準:
○:はじきなく良好。
×:はじきが見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物およびアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物と、
ポリイソシアネート化合物と
を反応させることにより、得られることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
少なくとも、ポリオール化合物、アニオン性基活性水素基併有化合物および活性水素基含有アクリレート化合物と、ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、イソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を有するウレタンプレポリマーを合成し、
ウレタンプレポリマーと、少なくともアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物とを反応させることにより、得られることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂。
一般式(1):
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R3およびR4は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
【請求項4】
ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンからなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
ポリイソシアネート化合物が、下記一般式(2)で示される化合物を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
一般式(2):
【化2】

(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数6〜13の2価の炭化水素基を示す。nは、1〜10の整数を示す。)
【請求項6】
80〜160℃で、イソシアネート基を再生することを特徴とする、請求項5に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
プラスチック用プライマーとして、用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
光学プラスチックレンズ用プライマーとして、用いられることを特徴とする、請求項7に記載の水性ポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2008−7665(P2008−7665A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180690(P2006−180690)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】