説明

水性分散液およびその製造方法

【課題】オレフィン系熱可塑性樹脂の種類に制限がなく、未乳化物が少なく、貯蔵安定性および化学的安定性に優れ、耐水性に優れる塗膜を形成できるオレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液およびその製造方法を提供する。
【解決手段】オレフィン系熱可塑性樹脂(A)と、(A)100質量部に対して1〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、(A)100質量部に対して1〜15質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程と、引き続き溶融混練を行いながら(A)100質量部に対して1〜30質量部の水を前記溶融混練物に注入し、固形分が水に分散した水性分散体を得る工程と、水性分散体を水で希釈して水性分散液を得る工程とを有する製造方法によって水性分散液を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液は、物品に、付着性、耐食性、ガスバリヤ性、耐チッピング性、耐ヒールマーク性等の特性を付与するために、接着剤、塗料等として用いられている。具体的には、防湿剤、皮膜形成剤、コーティング剤、繊維処理剤、ヒートシール剤、バインダー、プライマー等として用いられている。また、水性分散液によって前記特性が付与された物品としては、塗装物品、被覆物品、積層体、インク、化粧品、粘着製品等が挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液としては、架橋またはグラフト重合によって水性分散液中のオレフィン系熱可塑性樹脂を改質したもの用いられている。
【0003】
オレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液の製造方法としては、下記の方法が知られている。
(1)乳化重合法により、水性媒体中でラジカル重合性の単量体を重合して、水性分散液を得る方法。
(2)ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂と水溶性高分子とからなる混練物を水中に分散させる方法(特許文献1)。
(3)ポリオレフィンとカルボキシル基含有ポリオレフィンとを溶融混練した後、水または塩基性物質含有水溶液を供給し、転相させて水性分散体を得る方法(特許文献2、3)。
【0004】
(1)の方法では、比較的に小さな平均粒子径で、直接に水性分散液が得られるので、有利な方法であるが、単量体の重合性の問題から、製造できるオレフィン系熱可塑性樹脂の種類が限定される。そのため、得られる水性分散液の用途が限定される。
一方で、(2)、(3)の方法によれば、オレフィン系熱可塑性樹脂の種類の限定なく各種の水性分散液を製造できる。
しかしながら、得られる水性分散液に未乳化物が多い、水性分散液の貯蔵安定性および化学的安定性が悪い、得られる塗膜の耐水性が不充分である、といった問題がある。そのため、得られる水性分散液は、実用に耐えられるものではない。
【特許文献1】特開昭51−12835号公報
【特許文献2】特公平7−8933号公報
【特許文献3】特公平7−96647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の目的は、オレフィン系熱可塑性樹脂の種類に制限がなく、未乳化物が少なく、貯蔵安定性および化学的安定性に優れ、耐水性に優れる塗膜を形成できるオレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水性分散液の製造方法は、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)と、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜15質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程と、引き続き溶融混練を行いながら、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜30質量部の水を、溶融混練温度における水の飽和蒸気圧よりも高い圧力下で前記溶融混練物に注入し、固形分が水に分散した水性分散体を得る工程と、水性分散体を水で希釈して水性分散液を得る工程とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の水性分散液は、本発明の水性分散液の製造方法で得られたものである。
本発明の水性分散液は、固形分濃度が30〜60質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液は、オレフィン系熱可塑性樹脂の種類に制限がなく、未乳化物が少なく、貯蔵安定性および化学的安定性に優れ、耐水性に優れる塗膜を形成できる。
本発明のオレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液の製造方法によれば、オレフィン系熱可塑性樹脂の種類に制限がなく、未乳化物が少なく、貯蔵安定性および化学的安定性に優れ、耐水性に優れる塗膜を形成できるオレフィン系熱可塑性樹脂の水性分散液を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<水性分散液の製造方法>
本発明の水性分散液は、下記の工程を経て製造される。
(a)オレフィン系熱可塑性樹脂(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、α−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程。
(b)引き続き溶融混練を行いながら、前記溶融混練物に水を注入し、固形分が水に分散した水性分散体を得る工程。
(c)水性分散体を水で希釈して水性分散液を得る工程。
【0010】
(a)工程:
オレフィン系熱可塑性樹脂(A)は、α−オレフィンに由来する構成単位を有する重合体であり、通常は、水中への分散性に欠ける。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0011】
オレフィン系熱可塑性樹脂(A)としては、ポリオレフィン、エチレンとビニル化合物との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエンとの共重合体等が挙げられる。
【0012】
ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンのランダムまたはブロック共重合体が挙げられる。
α−オレフィンの単独重合体としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
α−オレフィンのランダムまたはブロック共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−エチレン3元共重合体、通常「ブロックPP」と呼ばれるポリエチレン部分を持つポリプロピレン等が挙げられる。
【0013】
エチレンとビニル化合物との共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0014】
α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエンとの共重合体としては、エチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン3元共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン3元共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン3元共重合体、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエン3元共重合体等が挙げられる。
【0015】
オレフィン系熱可塑性樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。オレフィン系熱可塑性樹脂(A)としては、α−オレフィンの単独重合体または共重合体が好ましい。
【0016】
酸変性ポリオレフィン(B)としては、下記のものが挙げられる。
(B−1)オレフィン系熱可塑性樹脂(A)に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルをグラフト重合させたグラフト重合体。
(B−2)前記α−オレフィンと、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルと、必要に応じて前記ビニル化合物とのランダム共重合体。
【0017】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、前記不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル、前記不飽和カルボン酸のジアルキルエステル等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0018】
酸変性ポリオレフィン(B)の粘度法による平均分子量は、1000〜15000が好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、10〜100mgKOH/gが好ましく、30〜80mgKOH/gがより好ましい。
【0019】
酸変性ポリオレフィン(B)の量は、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部であり、5〜15質量部が好ましい。酸変性ポリオレフィン(B)の量がこの範囲にあれば、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)が充分に分散でき、得られる水性分散液の貯蔵安定性が良好となる。
【0020】
α−オレフィンスルホン酸塩(C)は、炭素数が12〜20のα−オレフィン混合物(1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等、各々の異性体の混合物)に、無水硫酸を反応させた後、加水分解することにより得られるものであり、各種アルケニルスルホン酸塩、2−ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、3−ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、ジスルホネート等の混合物である。
【0021】
α−オレフィンスルホン酸塩(C)の量は、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜15質量部であり、2〜8質量部が好ましい。α−オレフィンスルホン酸塩(C)の量が1質量部以上であれば、水性分散体が得られる。α−オレフィンスルホン酸塩(C)の量が2質量部以上であれば、得られる水性分散体の貯蔵安定性が良好となり、得られる塗膜の耐水性が良好となる。α−オレフィンスルホン酸塩(C)の量が15質量部以下であれば、得られる塗膜の耐水性が良好となる。α−オレフィンスルホン酸塩(C)の量が8質量部以下であれば、得られる塗膜の耐水性がさらに良好となる。
【0022】
溶融混練に用いる装置としては、回分式では加圧ニーダーが、連続式では二軸スクリュー押出機等が挙げられる。
溶融混練温度は、140〜250℃が現実的であるが、高温ほど急上昇する水蒸気圧に装置の機密が耐え得る限りにおいては、より高温でも可能である。
【0023】
(b)工程:
前記溶融混練物に液体の水を注入し、さらに溶融混練を続けると、いわゆる転相が起こり、固形分が水に分散した水性分散体が得られる。
水の量は、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜30質量部であり、2〜20質量部がより好ましい。水の量がこの範囲であれば、転相が起こって良好な分散状態の水性分散体が得られる。
【0024】
水の注入は、溶融混練温度における水の飽和蒸気圧よりも高い圧力下で行う。該圧力下で水の注入を行うことにより、水が沸騰しない状態にて水の注入を行うことができる。例えば、溶融混練を200℃で行う場合、水の注入は、200℃における水の飽和蒸気圧(15.5MPa)よりも高い圧力下で行う。
溶融混練に用いる装置としては、(a)工程と同じ装置を用いればよい。
溶融混練の温度は、(a)工程と同じ温度であればよい。
【0025】
(c)工程:
(b)工程で得られる水性分散体は、固形分が水に分散したものであるが、水が少量であるため、通常は固体状である。 該水性分散体を水で希釈することによって、固形分が水に分散した液状の水性分散液が得られる。
得られる水性分散液の固形分濃度は、水性分散液(100質量%)中、30〜60質量%が好ましい。
【0026】
<水性分散液>
本発明の製造方法によって製造された希釈後の水性分散液の固形分濃度は、水性分散液(100質量%)中、30〜60質量%が好ましい。
水性分散液の固形分濃度が30質量以上であれば、静置した際に分離し難くなり、貯蔵安定性が良好となる。水性分散液の水性分散液の固形分濃度が60質量%以下であれば、適度な粘度となり、また、均一な水性分散液が得られる。
【0027】
本発明の水性分散液は、必要に応じて、分散剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等の公知の副資材を含んでいてもよい。
【0028】
以上説明した本発明の水性分散液およびその製造方法にあっては、界面活性剤としてα−オレフィンスルホン酸塩(C)を用いているため、未乳化物が少なく、貯蔵安定性および化学的安定性に優れ、耐水性に優れる塗膜を形成できる。
また、本発明の水性分散液およびその製造方法にあっては、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)を、いわゆる後乳化法によって水に分散させているため、乳化重合法のようにオレフィン系熱可塑性樹脂の種類が限定されることはない。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(オレフィン系熱可塑性樹脂(A))
(A−1):エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体(EPDM)(三井化学社製、「タフマー TP−3180」、エチレン単位の含有量70質量%、ムーニー粘度9(ML1+4 、125℃))。
(A−2):プロピレン−ブテン−エチレン3元共重合体(デグサ社製、「VESTPLAST 891」、190℃粘度80000〜150000mPa・s)。
(A−3):エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、「EVAFLEX 210」、MFR(190℃)400g/10min,酢酸ビニル単位の含有量28質量%)。
【0030】
(酸変性ポリオレフィン(B))
(B−1):酸変性ポリエチレンワックス(三井化学社製、「三井ハイワックス2203A」、酸価30mg/g、粘度法による平均分子量2700)。
【0031】
(α−オレフィンスルホン酸塩(C))
(C−1):α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬社製、「ネオゲンAO−90」)。
(C−2):α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン社製、「リポランPB−800」)。
【0032】
(他の界面活性剤)
(C’−3):ドデシルベンセンスルホン酸ナトリウム(花王社製、「ネオペレックスNo.6」)。
【0033】
〔実施例1〕
(A−1)100質量部と(B−1)4質量部と(C−1)4質量部とを、それぞれ定量フィーダーを経て二軸スクリュー押出機へ供給し、200℃で溶融混練し、溶融混練物108質量部とした。
【0034】
引き続き200℃で溶融混練しながら、二軸スクリュー押出機の中間部に設置した注入ノズルから、純水5質量部を1.8MPaで前記溶融混練物に注入した。引き続き200℃で溶融混練し、転相によって水性分散体とした。
水性分散体をジャケット付きのスタキックミキサーへ導き、水の沸点以下まで冷却した。スタキックミキサーより取り出した固体状の水性分散体を90℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%の水性分散液を得た。この水性分散液について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(固形分濃度)
固形分濃度とは、水性分散液中に含まれる不揮発成分の質量%であり、測定は、メトラートレド社製ハロゲン水分計にて135℃で実施した。
【0036】
(未乳化物の量)
未乳化物量は、水性分散液(固形分質量X)を#100メッシュのステンレス製金網でろ過し、メッシュ上の残留分を水洗、乾燥して残留分の固形分質量Yを測定し、下記式により求めた。
未乳化物の量(質量%)=Y/X×100。
【0037】
(貯蔵安定性)
密閉ガラス容器にて、水性分散液を50℃で1ヶ月保存した後、水性分散液の外観を観察し、下記基準で評価した。
○:保存前と比較して、外観に変化が見られない。
△:表面に凝集物の薄い膜が生成する等、外観に変化が見られ、かつ#100メッシュのステンレス製金網でろ過、水洗した後にメッシュ上に何も残らない。
×:表面に凝集物の薄い膜が生成する等、外観に変化が見られ、かつ#100メッシュのステンレス製金網でろ過、水洗した後にメッシュ上に凝集物が残留する。
【0038】
(化学的安定性)
水性分散液の固形分20gに対して、5質量%塩化カルシウム溶液を静かに滴下した後、水性分散液を観察し、下記基準で評価した。
○:5質量%塩化カルシウム溶液を1g以上滴下しても、凝集物が発生しない。
△:5質量%塩化カルシウム溶液を1gまで滴下する間に、凝集物が発生する。
×:5質量%塩化カルシウム溶液を1滴滴下しただけで、直ちに塩化カルシウム溶液の周辺に凝集物が発生する。
【0039】
(耐水性)
ガラス板に水性分散液を、膜厚が10μmになるように塗布し、熱風乾燥機にて80℃で30分間乾燥した。得られた塗装板を室温で一日放置した後、40℃の温水中に10日間浸漬し、塗装板を観察し、下記基準で評価した。
○:塗装板の外観に変化がない。
△:塗装板の表面に粗さが感じられる。
×:塗装板の表面に膨れ等、明確な変化がある。
【0040】
〔実施例2、3〕
(B−1)の量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例4、5〕
注入する純水の量を表1に示す量に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例6〕
水性分散液の固形分濃度が65質量%となるように、水性分散体を分散させる温水の量を57.5質量部に調整した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
〔実施例7〕
(C−1)を(C−2)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
〔実施例8〕
(A−1)を(A−2)に変更し、(B−1)、(C−1)および注入する純水の量を表2に示す量に変更し、溶融混練温度を190℃に変更し、純水の注入時の圧力を1.5MPaに変更し、水性分散液の固形分濃度が25質量%となるように、水性分散体を分散させる温水の量を336質量部に調整した以外は、実施例1と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
〔実施例9〕
水性分散液の固形分濃度が45質量%となるように、水性分散体を分散させる温水の量を135質量部に調整した以外は、実施例8と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
〔実施例10〕
(B−1)、(C−1)および注入する純水の量を表2に示す量に変更した以外は、実施例9と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
〔実施例11〕
(A−1)を(A−3)に変更し、(B−1)および注入する純水の量を表3に示す量に変更し、溶融混練温度を190℃に変更し、純水の注入時の圧力を1.5MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表3に示す。
【0048】
〔実施例12〕
(C−1)を(C−2)に変更し、(C−2)および注入する純水の量を表3に示す量に変更した以外は、実施例11と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表3に示す。
【0049】
〔実施例13〕
注入する純水の量を表3に示す量に変更した以外は、実施例11と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表3に示す。
【0050】
〔実施例14〕
(C−1)および注入する純水の量を表3に示す量に変更した以外は、実施例11と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表3に示す。
【0051】
〔比較例1〕
(C−1)を(C’−3)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表4に示す。未乳化物が多く、貯蔵安定性、化学的安定性、塗膜の耐水性ともに劣るものとなった。
【0052】
〔比較例2〕
(B−1)の量を表4に示す量(25質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表4に示す。未乳化物が多く、貯蔵安定性、化学的安定性、塗膜の耐水性ともに劣るものとなった。
【0053】
〔比較例3〕
(B−1)の量を表4に示す量(0.5質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得ようとしたが、水性分散液は得られなかった。
【0054】
〔比較例4〕
(C−1)の量を表4に示す量(20質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表4に示す。未乳化物が多く、貯蔵安定性、化学的安定性、塗膜の耐水性ともに劣るものとなった。
【0055】
〔比較例5〕
(C−1)の量を表5に示す量(0.5質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得ようとしたが、水性分散液は得られなかった。
【0056】
〔比較例6〕
注入する純水の量を表5に示す量(33質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得ようとしたが、水性分散液は得られなかった。
【0057】
〔比較例7〕
注入する純水の量を表5に示す量(0.5質量部)に変更した以外は、実施例2と同様にして水性分散液を得ようとしたが、水性分散液は得られなかった。
【0058】
〔比較例8〕
(C−1)を(C’−3)に変更した以外は、実施例9と同様にして水性分散液を得て、評価を行った。結果を表5に示す。未乳化物が多く、貯蔵安定性、化学的安定性、塗膜の耐水性ともに劣るものとなった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の水性分散液は、オレフィン系熱可塑性樹脂を用いた接着剤、塗料等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系熱可塑性樹脂(A)と、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部の酸変性ポリオレフィン(B)と、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜15質量部のα−オレフィンスルホン酸塩(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程と、
引き続き溶融混練を行いながら、オレフィン系熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して1〜30質量部の水を、溶融混練温度における水の飽和蒸気圧よりも高い圧力下で前記溶融混練物に注入し、固形分が水に分散した水性分散体を得る工程と、
水性分散体を水で希釈して水性分散液を得る工程とを有する、水性分散液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水性分散液の製造方法で得られた、水性分散液。
【請求項3】
固形分濃度が、30〜60質量%である、請求項2に記載の水性分散液。

【公開番号】特開2008−38055(P2008−38055A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215590(P2006−215590)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(502163421)ユーエムジー・エービーエス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】