説明

水性化粧料

【課題】酸化チタンの経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性、塗布性能に優れたネイルアートなどの美爪料、皮膚彩色用などに好適な水性化粧料を提供する。
【解決手段】少なくとも、酸化チタン5〜30質量%と、有機顔料と、アルカリ可溶型アクリル樹脂と、水とを含有することを特徴とする水性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン、有機顔料を含有する水性化粧料に関し、更に詳しくは、酸化チタンの経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性、塗布性能に優れたネイルアートなどの美爪料、皮膚彩色用などに好適な水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、隠ぺい力に優れた酸化チタンを含有する水性化粧料として、数多くのものが知られている。
この水性化粧料に含有される酸化チタンは、長期間静置されると、沈降し、ハードケークを形成する。このハードケークは、撹拌等による再分散は容易ではないという課題があった。
【0003】
従来において、保存時の顔料分散性がよい皮膚彩色用化粧料として、少なくとも水、酸化チタンを含む顔料、樹脂を含有する皮膚彩色用化粧料であって、樹脂としてスチレン‐アクリル酸共重合体、スチレン‐マレイン酸共重合体、スチレン‐アクリル酸アルキル共重合体、スチレン‐マレイン酸アルキル共重合体よりなる群より選ばれた少なくとも一種の樹脂とアンモニア、アミン類などの塩基を含み、更に粘土系無機増粘剤、無機微粒子増粘剤、多糖類増粘剤より選ばれた少なくとも一種の増粘剤を含んでなる皮膚彩色用化粧料(例えば、本出願人の特許文献1参照)が知られている。
【0004】
また、酸化チタンなどの粉体をポリオキシエチレン鎖を有するシリル化剤で親水化処理した粉体と、アクリル系ポリマーエマルジョンとを配合することにより、分散性などが良好となる水系美爪料(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの特許文献1,2に記載の皮膚彩色用化粧料や水系美爪料などの水性化粧料においても、未だ長期間静置されると、沈降し、ハードケークを形成することがあり、撹拌等による再分散は容易ではないというのが現状である。
更に、酸化チタンを含有する水性化粧料をペンタイプの塗布具に収容する場合、ペン先が乾燥してしまうため、特に、有機顔料が配合されている水性化粧料においては、その有機顔料が凝集・固化することにより、よりケークを硬化させる課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−157329号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平9−110642号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性、塗布性能に優れた水性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、少なくとも、特定量の酸化チタンと、有機顔料と、特定物性のアクリル樹脂と、水とを含有することにより、上記目的の水性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) 少なくとも、酸化チタン5〜30質量%と、有機顔料と、アルカリ可溶型アクリル樹脂と、水とを含有することを特徴とする水性化粧料。
(2) 表面をアルミナで被覆されている酸化チタンを含有することを特徴とする上記(1)記載の水性化粧料。
(3) 酸化チタンに対するアルカリ可溶型アクリル樹脂の質量比が、0.01〜1であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の水性化粧料。
(4) アルカリ可溶型アクリル樹脂が(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水性化粧料。
(5) 水性化粧料の25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において、ずり速度3.83s−1の粘度が150mPa・s以下であり、ずり速度383s−1の粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の水性化粧料。
(6) 少なくとも、液体貯蔵部と塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体貯蔵部に収容されることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の水性化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性、塗布性能に優れたネイルアートなどの美爪料、皮膚彩色用などに好適な水性化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の水性化粧料を収容する塗布具の一例を示す部分縦断面図と左側面図である。
【図2】(a)塗布体の一例を示す側面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【図3】本発明の水性化粧料を収容する塗布具の他例を示す部分縦断面図と左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水性化粧料は、酸化チタン5〜30質量%と、有機顔料と、アルカリ可溶型アクリル樹脂と、水とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いる酸化チタンは、皮膚や爪などに塗布した場合に、優れた隠ぺい力を発揮するものであり、水性化粧料に通常用いられている酸化チタンであれば、特に限定されるものでないが、表面活性制御の点から、好ましくは、アルミナ処理が施された酸化チタンを用いることが望ましい。
用いることができる酸化チタンとしては、例えば、市販のA−100,W−100(以上、石原産業社製)、JR,JA−1(以上、テイカ社製)などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)を用いることができ、また、アルミナ処理が施された酸化チタンとしては、例えば、市販のCR50、CR60、CR67、PF737、R680(以上、石原産業社製)、R900、(以上、デユポン社製)などの少なくとも1種を用いることができる。
【0014】
これらの酸化チタンの含有量は、水性化粧料全量に対して、5〜30質量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、8〜25%とすることが望ましい。
この酸化チタンの含有量が5%未満であると、塗膜の隠ぺい性に乏しく、一方、30%を超えると、水性化粧料の粘度が不安定になり、好ましくない。
【0015】
本発明に用いる有機顔料は、色材として用いるものであり、水性化粧料の有機顔料として通常使用されているものであれば、特に限定されない。
例えば、青色1号Alレーキ、赤色202号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、青色201号、青色204号、青色404号、黄色401号、黄色205号、黄色4号Alレーキ、黄色203号Alレーキ、赤色104号Alレーキなどの有機顔料から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、水性化粧料に用いられている有機顔料であれば、特に限定されるものでない。
【0016】
これらの有機顔料の含有量は、発色性、好適な粘性、塗布体を備えた水性化粧料塗布具でのスムーズな吐出性などの点から、水性化粧料全量に対して、0.05〜15%が好ましく、更に好ましくは、0.1〜10%が望ましい。
この有機顔料の含有量が0.05%未満であると、良好な発色が得られず、一方、15%を超えると、粘度が高くなり、流出性が低下したり、凝集などを起こしやすくなり、好ましくない。
【0017】
本発明に用いるアルカリ可溶型アクリル樹脂は、水性化粧料中での酸化チタン等の分散剤として機能すると共に、塗布後は固着樹脂として機能するものであり、具体的には、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体、アクリル酸アルキル共重合体などの少なくとも1種が挙げられ、更に詳しくは、組成中にカルボキシル基がありアルカリ側で水に溶解される。
なお、本発明では、アルカリ可溶型アクリル樹脂が溶解するまで、pH調整剤等により好適に調整される。pH調整剤には、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、L−アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を用いることができ、特に好ましいものは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールである。また、上記アルカリ可溶型アクリル樹脂は、アルカリ側で一度溶解すれば、pH7.0付近までは安定(溶解)性を有するものである。
【0018】
アルカリ可溶型アクリル樹脂として市販品では、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体であるAMPHOMER V−42(アクゾノーベル社製)、アクリル酸アルキル共重合体であるLuvimer 100P(BASF社製)、アクリル酸アルキル共重合体エマルションであるDERMACRYL AQF(アクゾノーベル社製)などを用いることができる。
好ましくは、酸化チタンの分散性を更に良好とする点などから、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体の使用が望ましい。
【0019】
これらのアルカリ可溶型アクリル樹脂の含有量は、酸化チタンの分散安定性、固着性などの点から、水性化粧料全量に対して、固形分換算で0.05〜30%が好ましく、更に好ましくは、0.1〜20%が望ましい。
このアルカリ可溶型アクリル樹脂の含有量が0.05%未満であると、十分な顔料分散能が得られず、一方、30%を超えると、経時安定性に影響するようになり、好ましくない。
【0020】
本発明では、酸化チタンの好適な分散剤としてアルカリ可溶型アクリル樹脂を用いるものであるが、更に好ましくは、酸化チタンに対するアルカリ可溶型アクリル樹脂の質量比が、酸化チタン1に対して、0.01〜1、特に好ましくは、0.04〜0.8とすることが望ましい。
この質量比が0.01未満であると、本発明の更なる効果を発揮することができず、1を超えても、上記アルカリ可溶型アクリル樹脂の含有量の上限を超えない限り、問題ない。
【0021】
本発明において、仕上がり性の向上、塗布具のペン先などの塗布体の保湿性の向上の点から、好ましくは、水溶性有機溶剤を含有することが望ましい。
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の水に可溶なグリコール類が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、水性化粧料全量に対して、1〜20%、好ましくは、8
〜15%の範囲で使用される。
この水溶性有機溶剤(水に可溶なグルコール類)の含有量が1%未満であると、水溶性有機溶剤を含有せしめる効果を発揮できず、一方、20%を越えると、酸化チタン等の好適な分散に悪影響を及ぼすことがある。
【0022】
本発明の水性化粧料は、上記酸化チタン、有機顔料、アルカリ可溶型アクリル樹脂などを含有するものであるが、更に、速乾性のためにエタノールなどを含有することができ、更にまた、本発明の効果を損なわない範囲で、液体化粧料に通常使用されるキレート剤、増粘剤(キサンタンガムなどの天然多糖類等)、水溶性高分子、表面張力低下のため各種界面活性剤、防菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料などを適宜量含有することができる。
【0023】
用いることができる防菌剤としては、パラベン類、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。なお、本発明の防菌剤には防腐剤を含むものであり、防腐剤であるパラベン類としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル等を用いることができる。
【0024】
本発明の水性化粧料には、上記各成分が含有されると共に、残部は水(精製水、イオン交換水、蒸留水等)で調製され、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において、ずり速度3.83s−1の粘度が150mPa・s以下であり、ずり速度383s−1の粘度が20mPa・s以下であることが望ましい。
上記ずり速度3.83s−1の粘度が150mPa・sを越えると、また、ずり速度383s−1の粘度が20mPa・sを越えると、追従性が低下し、好ましくない。
なお、上記各ずり速度における粘度を満足させるためには、水性化粧料に含有せしめる酸化チタン、有機顔料、アルカリ可溶型アクリル樹脂などを上記各含有量の範囲で好適に組み合わせることにより調製することができる。また、増粘剤(天然多糖類、鉱物系等)等を適宜用いて調整することができる。
【0025】
本発明の水性化粧料は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
【0026】
このように構成される本発明の水性化粧料では、少なくとも、酸化チタン、有機顔料、アルカリ可溶型アクリル樹脂とを含有することにより、水中に安定に酸化チタンを分散させ、所定の物性を有するように調整してあるので、酸化チタンの沈降があってもハードケークを生じ難く、軽く攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性、塗布性能に優れたネイルアートなどの美爪料、皮膚彩色用などに好適な水性化粧料が得られるものとなる。
本発明では、酸化チタン等の分散剤としてアルカリ可溶型アクリル樹脂を含有せしめることにより、従来のスチレン−アクリル系樹脂等より、優れた分散性能を発揮するものである。これは、スチレン基が存在しないことで、ソフトケークを形成できるためと推察される。
更に、本発明では、酸化チタンを含有する水性化粧料を後述するペンタイプの塗布具に収容される場合であっても、ペン先が乾燥してしまうため、特に、有機顔料が配合されている水性化粧料においても、その有機顔料が凝集・固化することがない、従来にない水性化粧料が得られるものとなる。
【0027】
このように構成される本発明の水性化粧料は、ペンタイプの液体塗布具、具体的には、少なくとも、液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体貯蔵部に収容され、使用に供することができるものとなる。
【0028】
本発明の水性化粧料を収容する水性化粧料内蔵塗布具としては、例えば、図1に示すように、上記構成の水性化粧料(本実施形態では水系美爪料)が内蔵される液体貯蔵部11と、毛細管力を有する塗布体20とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部11から前記塗布体20へと水性化粧料Hが輸送される塗布具Aを用いることができる。
【0029】
この塗布具Aを詳述すると、塗布具本体10の内部が液体貯蔵部11となるものであり、塗布具本体10の前方に、弁座12、弁棒13、コイルバネからなるスプリング部材14、バネ受け15を有する弁機構16が設けられると共に、上記塗布体20は塗布具本体10の前方に取り付けられる先軸部材17内に摺動可能に保持されるものである。なお、図示符号18はSUS製の攪拌ボールであり、30はキャップ体である。
【0030】
毛細管力を備えた塗布体20としては、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えたものが望ましい。塗布体20を詳述すると、塗布体20の後端部22は弁棒13の先端に当接するものであり、管状の内筒21は断面放射状内部溝の水性化粧料が通過する化粧料通路23を軸線方向に連続して有するものである。この塗布体20は、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂から構成されるものであり、水性化粧料を塗布体20内の通路23に導入する孔23a,23bを後端部22と塗布体側面部24とに形成するものである。図示符号26a,26bは、水性化粧料を塗布体20内の通路23に導入する先端側面と後端側面である。
この塗布体20を押圧すると、弁機構16が開口し、水系美爪料Hが塗布体20の通路23に導入されて、円錐状かつ放射線状にスリットを備えた塗布先25に供給されて使用に供されるものとなる。
【0031】
本発明の水性化粧料内蔵塗布具の使用態様としては、図1に示す塗布具Aの塗布体20を押圧すると、液体貯蔵部11から本発明の水性化粧料Hが塗布体20へ輸送されるので、爪の上に直接線や模様を描くか、または、予め爪の上に塗布したニトロセルロース、樹脂、酢酸エステル類等からなる、ネイルエナメルの塗膜の上に描き、その後、透明のネイルエナメルを重ねて仕上げることにより完成する。
【0032】
また、本発明の水性化粧料内蔵塗布具では、上記特性の水性化粧料が内蔵される液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へと水性化粧料が輸送されるものであって、上記塗布体は毛細管力を備えた塗布体とすることにより、使用性に優れ、爪や皮膚等の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性に優れた水性化粧料内蔵塗布具が提供されるものとなる。
更に、毛細管力を備えた塗布体20を、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えた構造とすることにより、更に使用性に優れ、爪等の上で、更に美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性にきわめて優れた水性化粧料内蔵塗布具とすることができる。ところで、前記の毛細管力を備えた塗布体20は、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えた構造とする他に、前記水性化粧料の流入する開口部を複数設けた構造とすることもできる。通常は前記塗布先の反対側の端の開口部のみ(本形態では導入孔23a,23b)であるが、更に塗布体側面を切削等により管状の内筒側面の一部を開放して開口部を形成させることも可能である。このような構成とすることにより、前記の酸化チタンや顔料等による目詰まり発生時における流路確保が可能である他、水の蒸発等により前記水性化粧料の粘度上昇が発生する等の事故が起きた場合にも、滞りなく前記水性化粧料が流入することができる。
【0033】
また、図3に示すように、前記液体貯蔵部11から、前記塗布体20に至る、前記水性化粧料の流路内に、更に連続気泡多孔質体(例えば、スポンジ素材)19を設けた水性化粧料内蔵塗布具Bとしてもよいものである。
本形態の水性化粧料内蔵塗布具Bでは、連続気泡多孔質体(例えば、スポンジ素材)19を塗布体20の後方と弁棒13の周囲に設けたものである。この構造の水性化粧料内蔵塗布具Bとすることにより、上記特性の水性化粧料を円滑に効率よく塗布体まで供給することができるものとなる。そして、例えば、図1における弁機構16の必要以上の開放が原因で、前記水性化粧料の過剰量が流出した場合、前記連続気泡多孔質体19によって、その過剰量を一時的に保持することが可能となり、前記塗布体20からのボタ落ちを防止できるものである。
【実施例】
【0034】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1〜10及び比較例1〜4〕
下記表1に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各水性化粧料となる水系美爪料を調製した。
得られた各水系美爪料について、下記評価方法等により、所定のずり速度における粘度測定、ハードケーク試験、追従性、隠ぺい力について評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0036】
〔粘度の測定方法〕
得られた各水性化粧料について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV−30型粘度計のうち、ELD型粘度計またはEMD型粘度計、それぞれ標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度における粘度を測定した。
【0037】
(ハードケーク試験)
ペンタイプ容器(内蔵塗布具)に収容し、遠心分離機H−40F(コクサン社製)にて、遠心分離1000rpm、30minし、これを上下に振り、撹拌ボールが動くまでの回数を計測し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:0〜100未満
△:100以上〜200未満
×:200以上〜
【0038】
(追従性の評価方法)
ペンタイプ容器(内蔵塗布具)に収容した化粧料を吐出し、使用したときの化粧料の流出状態を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:化粧料がかすれることなくスムーズに塗布できる。
△:化粧料がかすれるところがある。
×:化粧料が全くでない。
【0039】
(隠ぺい力の評価方法)
塗布体を使用し、爪に塗布したときの下地の色の隠蔽状態を、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:下地が隠れ、発色が良い。
△:わずかに下地の色が見えるが、発色は良い。
×:下地の色が見え、発色が悪い。
【0040】
【表1】

【0041】
上記表1中の*1〜*8は、以下のとおりである。
*1:アルミナ処理酸化チタン、石原産業社製
*2:味の素社製
*3:アクゾノーベル社製
*4:アクゾノーベル社製
*5:BASF社製
*6:BASF社製
*7:エコガムRD、大日本住友製薬株式会社製
*8:メチルパラベン、エチルパラベン、フェノキシエタノールの混合液
【0042】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10は、本発明の範囲外となる比較例1〜4に較べ、ハードケーク試験結果から酸化チタンの経時沈降安定性に優れ、酸化チタンが沈降してもハードケークを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、化粧料がかすれることなくスムーズに塗布でき、しかも、下地が隠れ、発色も良好となる水性化粧料であることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1は、酸化チタンの含有量が少ないので、隠ぺい力に劣り、比較例2は、酸化チタンに対するアルカリ可溶型アクリル樹脂が不足し、酸化チタンのハードケークを生じる。比較例3及び4では、アルカリ可溶型アクリル樹脂を含有しないので酸化チタンが沈降してハードケークを生じ、再分散も容易でないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0043】
ネイルアートなどの美爪料、皮膚彩色用などに好適な水性化粧料が得られる。
【符号の説明】
【0044】
A 水性化粧料内蔵塗布具
H 水性化粧料(水系美爪料)
10 塗布具本体
11 液体貯蔵部
16 弁機構
17 先軸部材
19 攪拌ボール
20 塗布体
25 塗布先(塗布部)
30 キャップ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸化チタン5〜30質量%と、有機顔料と、アルカリ可溶型アクリル樹脂と、水とを含有することを特徴とする水性化粧料。
【請求項2】
表面をアルミナで被覆されている酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1記載の水性化粧料。
【請求項3】
酸化チタンに対するアルカリ可溶型アクリル樹脂の質量比が、0.01〜1であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性化粧料。
【請求項4】
アルカリ可溶型アクリル樹脂が(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)共重合体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の水性化粧料。
【請求項5】
水性化粧料の25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において、ずり速度3.83s−1の粘度が150mPa・s以下であり、ずり速度383s−1の粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の水性化粧料。
【請求項6】
少なくとも、液体貯蔵部と塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体貯蔵部に収容されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の水性化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−140462(P2011−140462A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1868(P2010−1868)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】