説明

水性抗菌洗浄剤

【課題】 抗菌洗浄対象物、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に付着した汚れを洗浄するとともに、除菌洗浄後にもさらに抗菌効果を残存させることのできる抗菌洗浄剤を提供する。
【解決手段】 有機系抗菌防黴剤1〜100質量部、防錆剤10〜100質量部、界面活性剤10〜100質量部及び水溶性有機溶剤50〜300質量部の範囲の割合で配合した組成を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌洗浄対象物、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に付着した汚れを洗浄するとともに、除菌洗浄後にもさらに抗菌効果を残存させる水性抗菌洗浄剤及びそれを充填したミスト型抗菌洗浄製品、例えばエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエアコン等の除菌、洗浄の薬剤としては、ムース状、直噴状のエアゾールタイプやガン噴きタイプ等があり、施用方法も性能レベルも様々である。
ムース状タイプは、例えばエアコンに施用すると、薬剤が泡状となってつぶれずにエアコン回路内に効率よく広がるため、エバポレータ部のみならず、その周辺機器にも薬剤を行き渡らせることができるが、外気導入口やブロアモーターファン等の内気吸入口より施用する場合には、モーターの電気駆動部にまで泡が侵入したり、ファン吹出し口にまで泡が達するため、ショート等の電気系統のトラブルを起こさせ、駆動が停止する原因となったり、吹き出した泡が室内に漂い汚染の原因になったりするなどの問題がある。
エアゾールタイプは、噴射塗布される個所が細かくなるため、汚染部全面を十分に処理しようとすると、塗布作業時間が長くなり、薬剤も多量に使用しなくてはならないという問題がある。
ガン噴きタイプとしては、例えばエバポレータ部の洗浄兼防菌処理を行う薬剤やそれを用いた処理方法などが知られているが(特許文献1参照)、これも、エアコン回路内のエバポレータ部等の狭い空間の隙間部を直接洗浄処理する場合、薬剤が発泡し、上記と同様に電気系統のトラブルや室内飛散による汚染の原因となるという問題がある。
【0003】
また、水性洗浄剤は、一般に、汚染物の洗浄処理時、汚染箇所に繁殖して悪臭を発生する微生物に対する除菌剤を含有しているが、その除菌作用は一時的であり、組成成分も水溶性であるため、処理後の抗菌持続効果に乏しいという問題がある。
そこで、水溶性樹脂等の皮膜形成剤を用いることも考えられなくはないが、そうした場合形成された皮膜部に徐々に埃等の汚れが付着し、それにまた微生物の繁殖が起こり、処理薬剤本来の効果を発揮させるのが困難になることが懸念される。
【0004】
【特許文献1】特開平9−108311号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような事情に鑑み、抗菌洗浄対象物、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に付着した汚れを洗浄するとともに、除菌洗浄後にもさらに抗菌効果を残存させることのできる抗菌洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記した好ましい特性を有する水性抗菌洗浄剤を開発するために種々研究を重ねた結果、特定の組成成分(特に特定の界面活性剤及び水溶性溶剤)を組合せてなるものが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)有機系抗菌防黴剤1〜100質量部、防錆剤10〜100質量部、界面活性剤10〜100質量部及び水溶性有機溶剤50〜300質量部の範囲の割合で配合した組成を有することを特徴とする水性抗菌洗浄剤。
(2)有機系抗菌防黴剤0.1〜10.0質量%、防錆剤1.0〜10質量%、界面活性剤1〜10質量%及び水溶性有機溶剤5〜30質量%を含有することを特徴とする水性抗菌洗浄剤。
(3)水希釈施用時に有機系抗菌防黴剤が析出して塗布面に残存、定着し、施用後に水洗したのちにも抗菌性が残存する前記(1)又は(2)記載の水性抗菌洗浄剤。
(4)水希釈施用時に防錆剤が析出して発泡性が抑制される前記(1)、(2)又は(3)記載の水性抗菌洗浄剤。
(5)pHが中性或いは弱酸性である前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤。
(6)吐出圧で施用される前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤。
(7)吐出圧がエア圧である前記(6)記載の水性抗菌洗浄剤。
(8)前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤を充填してなるミスト型抗菌洗浄製品。
【0008】
本発明の水性抗菌洗浄剤(以下、これを本剤ということもある)に用いられる抗菌防黴剤としては、洗浄対象素材に対して悪影響がなく、人体への安全性、効果の持続性等の点で優れるものが好ましい。
かかる抗菌防黴剤としては、低濃度で種々の細菌、カビ等に対して広く効果を発揮し、また、洗浄処理時、水洗によるすすぎ洗浄を行っても残存し、抗菌効果を発揮しうるものが好ましく、このようなものとしては、例えば水に難溶性のもの、中でも界面活性剤、水溶性有機溶剤により水に可溶化されるものの希釈等により界面活性剤、水溶性有機溶剤の濃度が低下すると水中に析出しやすくなるものや、水に難溶性ではないものの洗浄対象素材(例えば金属、樹脂等)の表面に吸着しやすいものなどが挙げられ、具体的にはパラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール、1,2‐ベンズイソチアゾリン‐3‐オン、N‐n‐ブチル‐1,2‐ベンズイソチアゾリン‐3‐オン、2,4,4´‐トリクロロ‐2´‐ヒドロキシ‐ジフェニルエーテル、3,4,4´‐トリクロロカルバニリド、2‐イソプロピル‐5‐メチルフェノール、2‐イソプロピル‐5‐メチルフェノール、3‐メチル‐4‐イソプロピルフェノール、Na‐オマジン、Zn‐オマジン、2,2´‐ジチオ‐ビス‐(ピリジン‐1‐オキシド)、グリセリン脂肪酸エステル、ブチル‐p‐ヒドロキシベンゾエート、エチル‐p‐ヒドロキシベンゾエート、メチル‐p‐ヒドロキシベンゾエート、プロピル‐p‐ヒドロキシベンゾエート、2‐ベンジル‐4‐クロロフェノール、N‐(フルオロジクロロメチルチオ)‐フタルイミド等が好適に用いられる。
これらの抗菌防黴剤は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用することもできる。
【0009】
また、本発明の水性抗菌洗浄剤においては、被処理素材、中でも金属素材等に対する安定性、耐食性を良好にするために防錆剤が配合される。
防錆剤としては、ジカルボン酸系やベンゾトリアゾール系のもの、その他ジシクロヘキシルアンモニウムニトラート、p‐tert‐ブチル安息香酸やその塩、イビット(朝日化学工業社製、腐食抑制剤)などが挙げられ、中でも粘稠なもの、とりわけ粘稠なジカルボン酸系のものは、その析出時に洗浄対象素材の表面に付着して残存しやすくなり、ひいては有機系抗菌防黴剤も洗浄対象素材の表面に残存しやすくなるのを助長するので好ましく、さらにジカルボン酸系の塩は通常悪臭源となるアンモニアやアミン類等の含窒素化合物と反応することによっても消臭効果が発揮されることになるので好ましい。
本発明の水性抗菌洗浄剤は、一般的には原液として供され、実際にこれを使用する際には、水で希釈されるので、その使用時に界面活性剤や溶剤の可溶化能が低下して防錆剤が析出するようになることにより、析出防錆剤、特にジカルボン酸系防錆剤はそれ自体の作用として抑泡性を備えているため、その希釈液にて洗浄処理を行う場合には、発泡性が抑えられ、泡発生による洗浄部以外の部材への悪影響や残存泡の風による飛散トラブル等を抑止することが可能になる。
【0010】
このジカルボン酸系の防錆剤の例としては、炭素数が6〜30、好ましくは8〜25のもの、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1‐,9‐ノナメチレンジカルボン酸、1‐,10‐デカメチレンジカルボン酸、1‐,11‐ウンデカメチレンジカルボン酸、1‐,12‐ドデカメチレンジカルボン酸のような飽和脂肪族ジカルボン酸やその塩、アルケニルコハク酸やその塩(ここでアルケニル基はC10〜20のものである)、中でもアゼライン酸、セバシン酸、1‐,9‐ノナメチレンジカルボン酸、1‐,10‐デカメチレンジカルボン酸やその塩が挙げられ、市販品としてはダイアシッド1550(ハリマ化成社製)、IPU−22(岡村製油社製)、DSA、PDSA−DA、PDSA−DB、サンヒビター102(以上、三洋化成社製)等がある。このようなカルボン酸系塩としては、アミン等で中和塩として水に溶解させるようにしたものが好ましい。
これらの防錆剤は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0011】
また、本発明の水性抗菌洗浄剤においては、上記の各有効成分を水性媒体中に安定に溶解し、例えば、前記有機系抗菌防黴剤や消臭効果も発揮する上記ジカルボン酸系防錆剤については水に難溶性のものが多いのを、そのようなものも水性媒体中に可溶化させ、本剤を施用した時に、十分な所期の効果を発揮せしめるために界面活性剤が配合される。
界面活性剤としては、可溶化能に優れた非イオン系のものが好ましく、さらにはこのようなものの中でも水溶性のやや低いもの、特にHLBが8〜11のものが好ましい。それは水溶性が高すぎると水洗すすぎ時に有機系抗菌防黴剤や防錆剤を流出させるおそれがあるからである。
この非イオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミンエチレンオキシド付加物、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル(脂肪酸ポリオキシエチレンメチルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルアミンオキシド等を挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0012】
また、本発明の水性抗菌洗浄剤においては、上記の各有効成分の安定溶解の補助、施用後の乾燥促進、低温保管時における安定化等のために水溶性有機溶剤が配合される。
水溶性有機溶剤としては、前記各成分を溶解し、これを水中に分散させる作用をするもの、中でも、界面活性剤の用量を洗浄性や溶解性向上のために多くすると、発泡性が増大してしまうので、溶解性の補助のため、可溶化能に優れたものが好ましく、このようなものしては、アルコール溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられ、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3‐メチル‐1,3‐ブタンジオール、2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール、tert‐ブタノール等が挙げられ、中でも安定性を考慮すればアルコール、中でもイソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、エチレングリコールブチルエーテル、3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明の水性抗菌洗浄剤は、さらに水を含有し、その量は使用目的等に応じ、適宜変動させればよいが、好ましくは上記各成分の合計量に対し、残量を占めるようにするのがよい。
【0014】
本発明の水性抗菌洗浄剤には、必要に応じ、適宜、消臭性を高めるために消臭剤を配合してもよい。
消臭剤としては、雑多な臭気、タバコ臭、カビ臭、また被処理素材部品より発生する樹脂臭等に有効で幅広い効果を有するもの、例えば天然抽出物や、空気中に含まれるアンモニア等のタバコ煙や汗等の成分、メチルメルカプタンやトリメチルアミン等の腐敗臭等の悪臭原因物質と反応する有機酸類等が挙げられる。
この天然抽出物としては、例えばお茶、竹、柿やドクダミ、イチョウ、クロマツ、キリ、ヒイラギ、モクセイ、ライラック、キンモクセイ、レンギヨウ等の薬草由来のものなどが、また、有機酸類としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、リシノール酸やそれらの塩などがそれぞれ挙げられ、該塩としてはナトリウム塩等のアルカリ金属塩、リシノール酸亜鉛などの亜鉛塩等が挙げられる。
消臭剤としては、その他、更に除菌性も有する抗菌消臭剤を用いてもよい。
抗菌消臭剤としては、銀イオンが好ましく、これを含有する物質として水溶性銀化合物である酢酸銀、硝酸銀、炭酸銀、銀錯体などが挙げられる。
これらの消臭剤は、単独で用いてもよいし、また2種以上を併用することもできる。
【0015】
本発明の水性抗菌洗浄剤として好ましくは、防錆剤にジカルボン酸やその塩を用い、pHを中性或いは弱酸性、好ましくはpH5〜7、中でもpH6〜7に調製したものが好ましい。
【0016】
本発明の水性抗菌洗浄剤において、各組成成分間の配合割合については、有機系抗菌防黴剤1〜100質量部、防錆剤10〜100質量部、界面活性剤10〜100質量部及び水溶性有機溶剤50〜300質量部の範囲、中でも特に有機系抗菌防黴剤3〜20質量部、防錆剤20〜60質量部、界面活性剤20〜60質量部及び水溶性有機溶剤80〜250質量部の範囲とするのが適当である。
【0017】
このような配合組成の水性抗菌洗浄剤において、有機系抗菌防黴剤の配合割合が過少であるとその添加効果が不十分となるし、また過多であると被処理素材に悪影響を及ぼすおそれがあり、また安定性も悪くなる。
また、防錆剤の配合割合が過少であると被処理素材に対する保護効果が不十分となるし、また過多であると溶解しにくく、分離し易くなる。
界面活性剤の配合割合が過少であると安定性が損なわれ、分離し易くなり、洗浄力が低下するし、また過多であるとエアコン素材樹脂表面等の被処理素材表面に対して悪影響を与えるおそれがある。
水溶性有機溶剤の配合割合が過少であると安定性が十分ではなく、分離し易くなるし、また過多であるとエアコン素材樹脂表面等の被処理素材表面に対して悪影響を与えるおそれがあり、施用時に引火爆発濃度内に達するおそれがあり、電気系統のトラブル等による危険性がある。
任意成分である消臭剤が配合される場合には、その配合割合が過少であるとその添加効果が不十分となるし、また過多であると被処理素材に塗布した場合、被処理素材によっては表面に結晶の析出を生じ、不具合を生じるおそれがある。
【0018】
本発明の水性抗菌洗浄剤を原液として供する場合、各組成成分の配合量については、有機系抗菌防黴剤0.1〜10質量%、防錆剤1〜10質量%、界面活性剤1〜10質量%及び水溶性有機溶剤5〜30質量%の範囲、中でも特に有機系抗菌防黴剤0.1〜6質量%、防錆剤2〜8質量%、界面活性剤2〜8質量%及び水溶性有機溶剤8〜25質量%の範囲とするのが適当である。
このように原液として供される水性抗菌洗浄剤は、実際に洗浄処理に用いる場合、水で希釈され、通常、希釈倍率は3〜100倍、好ましくは5〜20倍程度とするのがよい。
【0019】
本発明の水性抗菌洗浄剤は、吐出圧、例えばエアー圧で施用するのが好ましく、用いられる流体としては、好ましくは気体、或いは施用に際し気体となるもの、例えばエアー、ジメチルエーテル、LPG、LNG、圧縮窒素ガス、圧縮炭酸ガス、圧縮亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、中でも水性抗菌洗浄剤を容器に充填してなるミスト型抗菌洗浄製品として供される。
エアーを流体として用いる場合、該抗菌をミストにして散布するには、トリガースプレー型やディスペンサー型製品か、或いはエアー圧を1MPaを超えない加圧下とするガン吹き型やエアゾール型製品等として供することが好ましい。
【0020】
本発明の水性抗菌洗浄剤の施用の至適形態は、エアー圧で噴射させるものであって、それにより、上記溶剤に組成成分を析出させることなく、安定に溶解させ、かつ液剤をより細かい霧状に噴出させることができ、中でもおおよそ0.1〜10μm程度の微粒子として噴霧させるのが好ましい。
その際、上記抗菌洗浄剤と噴射剤の配合割合はそれぞれ90〜70質量部と10〜30質量部の範囲で選ぶのが好ましい。噴射剤の配合割合が10質量部未満ではそれ自体が量的に不足してエアゾールとしての十分な圧力を確保できず、またそのために液剤を細かい霧状に噴出させにくくなるし、また30質量部を超えてもエアゾールとしての圧力が上がりすぎて高温時に破裂するおそれがあり、しかも溶剤に対する組成成分の溶解性が低下する。
【0021】
本発明の水性抗菌洗浄剤の施用方法としては、抗菌洗浄対象物、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に、該抗菌洗浄剤を適宜水で希釈して、噴霧等の施用処理を行う方法などが挙げられる。
特に、エアコンの空気回路内、中でもエバポレータ部の表面には、大きな塵等ではなく、カビの胞子やバクテリア、タバコのヤニ、カーボン等の比較的微粒子の汚れが主に付着しており、これらを効率的に除去する場合、上記の除菌・洗浄成分を含有したミストを均一に噴霧する方法が好適である。
抗菌洗浄処理後は、抗菌洗浄対象物に金属部分、例えばエバポレータ部のフィン等があっても、防錆剤の作用により金属部分の錆の発生が防止され、前記抗菌防黴剤の付着による悪影響が抑止される。
また、本剤のエアコンへの施用処理の場合、本剤塗布部は親水性が強く、結露が起こってもそれらが水玉になりにくいことから、これら水玉が凍ることで起こるフィンの目詰まりやそれによる冷却効率の悪化を生じにくい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水性抗菌洗浄剤は、抗菌洗浄対象物、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に付着した汚れを洗浄するとともに、除菌洗浄後にもさらに抗菌効果を残存させうるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
各例の試料の評価は以下に示す方法で行った。各成分の配合量は質量%である。
【0024】
(1)安定性:
試料を、各組成成分をよく混合して調製し、これを4℃で冷蔵して1週間放置した後、その安定性を次の評価基準で目視判定した。
○:液が透明で、析出物の浮遊又は沈殿がない。
×:液が白濁しており、析出物の浮遊又は沈殿がある。
【0025】
(2)防菌性:
感性ディスク用培地をシャーレに分注して固化させた後、大腸菌(Escherichia Coli)を塗布して直径90mmの測定用平板を作成し、その上に、試料を浸みこませた、直径8mm、厚さ1.5mmの紙製ディスクを置いて、30℃で24時間培養した後、阻止円の直径の大きさにより次の評価基準で判定した。
○:20mm以上
△:10mm以上20mm未満
×:10mm未満
【0026】
(3)防カビ性:
ポテトデキストロース寒天培地をシャーレに分注して固化させた後、黒カビ(Aspergillus Niger)を塗布して直径90mmの測定用平板を作成し、その上に、試料を浸みこませた、直径8mm、厚さ1.5mmの紙製ディスクを置いて、25℃で24時間培養した後、阻止円の直径の大きさにより次の評価基準で判定した。
○:20mm以上
△:10mm以上20mm未満
×:10mm未満
【0027】
(4)消臭性:
悪臭源(0.5%アンモニア‐エタノール溶液0.2cc)に対し、蒸留水を0.1cc加え、5L容デシケーター中にて30分放置後、ガステック社製ガス検知管にて濃度測定を行ないコントロールとした。
また、蒸留水の代わりに各試料を0.1ccづつ加えて、上記と同様に濃度測定を行ない、コントロールとの差の割合を消臭率として求め、その数値を次の評価基準で判定した。
○:消臭率70%以上
△:消臭率30%以上70%未満
×:消臭率30%未満
【0028】
(5)洗浄性:
JIS試験用粉体1,5種、JIS試験用粉体1,7種、カーボンブラック、牛脂及びイソプロピルアルコールをそれぞれ8:2:0.1:1:9の比率で混合し、アルミ板(その質量をAとする)上に塗布して50℃で4時間乾燥させたのち、その質量(これをBとする)を測定した。この人工汚染板を固定し、その直前5cm離して固定したガンを用いて洗浄し、50℃で4時間乾燥させたのち、その質量(これをCとする)を測定した。
次の数式
洗浄率(%)=(C−A)×100/(B−A)
により洗浄率を求め、以下の評価基準で判定した。
○:洗浄率35%以上
△:洗浄率20%以上35%未満
×:洗浄率20%未満
【0029】
(6)抑泡性:
JIS K3362に準拠したロスマイルス試験法により、試料の試験直後の泡立ちの高さを求め、次の評価基準で判定した。
○:50mm未満
△:50mm以上150mm未満
×:150mm以上
【実施例1】
【0030】
表1に示す配合処方(質量%)により試料を調製し、該試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【実施例2】
【0031】
表1に示す配合処方(質量%)により試料を調製し、該試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【実施例3】
【0032】
表1に示す配合処方(質量%)により試料を調製し、該試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【実施例4】
【0033】
表1に示す配合処方(質量%)により試料を調製し、該試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【実施例5】
【0034】
表1に示す配合処方(質量%)により試料を調製し、該試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【0035】
比較例1〜3
表1に示す配合処方(質量%)により各比較例の試料を調製し、これらの試料について上記評価方法により判定した。
その結果を表2に示す。
【0036】
【表1】

表中、IPU−22は岡村製油社製ジカルボン酸である。
【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の水性抗菌洗浄剤は、抗菌洗浄対象、例えばエアコンのエバポレータ部や、自動車等の車両の車室内等のような微生物汚染を伴う多湿な室内の汚染部等に付着した汚れを洗浄するとともに、除菌洗浄後にもさらに抗菌効果を残存させる作業に好適に利用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系抗菌防黴剤1〜100質量部、防錆剤10〜100質量部、界面活性剤10〜100質量部及び水溶性有機溶剤50〜300質量部の範囲の割合で配合した組成を有することを特徴とする水性抗菌洗浄剤。
【請求項2】
有機系抗菌防黴剤0.1〜10.0質量%、防錆剤1.0〜10質量%、界面活性剤1〜10質量%及び水溶性有機溶剤5〜30質量%を含有することを特徴とする水性抗菌洗浄剤。
【請求項3】
水希釈施用時に有機系抗菌防黴剤が析出して塗布面に残存、定着し、施用後に水洗したのちにも抗菌性が残存する請求項1又は2記載の水性抗菌洗浄剤。
【請求項4】
水希釈施用時に防錆剤が析出して発泡性が抑制される請求項1、2又は3記載の水性抗菌洗浄剤。
【請求項5】
pHが中性或いは弱酸性である請求項1ないし4のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤。
【請求項6】
吐出圧で施用される請求項1ないし5のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤。
【請求項7】
吐出圧がエア圧である請求項6記載の水性抗菌洗浄剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の水性抗菌洗浄剤を充填してなるミスト型抗菌洗浄製品。

【公開番号】特開2006−193664(P2006−193664A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8323(P2005−8323)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】