説明

水性組成物を用いた金属表面のコーティング方法、及びこの組成物

本発明は、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む組成物を用いて、金属表面をコーティングする方法であって、前記組成物が、本質的にa)シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンから選択される、少なくとも1つの化合物、及びb)チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素を含む化合物から選択される、少なくとも2つの化合物、及び任意にc)ランタノイドを含む、元素周期表の第1〜3及び5〜8副族、及び第2主族の金属のカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物、d)モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物、及び/又はe)pHに影響を及ぼす、少なくとも1つの物質、及びf)水、及びg)任意に少なくとも1つの有機溶媒からなる方法に関する。更に本発明は相応する水性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシラン及び/又は関連化合物、及び少なくとも2つの他の成分を含む水性組成物を用いた金属表面のコーティング方法に関する。更に、本発明は、対応する水性組成物、及び本発明の方法によりコーティングされた基体の使用に関する。
【0002】
これまでに、金属表面、特に、少なくとも1つの金属材料で製造されている部品、コイル又はコイル部分、又はラッカー塗装前の金属表面の前処理のために最も一般に用いられている方法は、一方では、クロム(VI)化合物、任意に種々の添加剤と一緒の使用であり、他方では、リン酸塩、例えば、亜鉛/マンガン/リン酸ニッケル、任意に種々の添加剤と一緒の使用である。
【0003】
特に、クロム酸塩又はニッケルを用いる方法に関連する毒物学的及び生態学的危険のため、金属基体についての表面技術の全ての分野における、これらの方法の代替法が、長年にわたって求められてきている。しかし、多くの用途において、クロム酸塩フリー又はニッケルフリーの方法が、完全に100%の性能スペクトルを満たさず、所望の安全性をもたらさないことが、繰り返し発見されてきた。従って、可能な限り、クロム酸塩含有量又はニッケル含有量を最小化し、Cr6+をCr3+に置換するための試みがなされてきた。高品質のリン酸塩処理法が、特に自動車産業において、例えば、高いレベルで自動車の耐食性の品質を維持する、ラッカー塗装前の自動車の車体の前処理のために、用いられている。亜鉛/マンガン/リン酸ニッケル処理法は、この目的のために従来より用いられている。長年の研究及び開発にもかかわらず、品質の限界を宣告することなしに、ニッケルフリーのリン酸塩化のための試みは、ヨーロッパにおいて、鋼の金属表面、亜鉛めっき鋼、及びアルミニウム又はアルミニウム合金が、通常、同じ溶液中で前処理される車体においてしばしば要求されるような、複数金属の用途について、不成功であることが示された。しかし、ニッケル含有量が比較的低くなったとしても、今や、予測可能な近い将来についてのより大きな毒物学の問題として分類され、他の化学的方法を用いて、同等の耐食性を達成することができるかどうかの疑問が発生している。
例えば、シロキサン/ポリシロキサンが豊富な耐食性コーティングの製造のための水性組成物中のシラン/シラノールの使用が、原理上は知られている。簡単にするため、今後は、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンは、あくまでシランとしてのみしばしば言及される。それらのコーティング自体は実験されたが、主にシランを含み、更に溶媒を加えた水性組成物を用いた、ある種のコーティング方法は、塗布することが困難である。これらのコーティングが、必ずしも顕著な性質を有して形成されるとは限らない。更に、金属基体上の非常に薄い、透明のシランコーティングの肉眼又は視覚補助具を用いた適切な特性、及びそれらの欠点が問題になる場合がある。形成された、シロキサン−及び/又はポリシロキサンが豊富なコーティングの耐食性能及びラッカー接着性は、しばしば高いが、常に高いとは限らない。いくつかのケースにおいては、適当な用途であっても、特定の用途については十分に高くない。高いプロセス安全性、及び特に、耐食性及びラッカー接着性に関して製造されたコーティングの高い品質をもたらす、少なくとも1つのシランを用いた、他の方法が必要である。
【0004】
また、シラン含有水性組成物の製剤においては、少量又は大量の、有機モノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選択される、少なくとも1つの構成要素を加えることが有利である。このような組成物に加えられるシランのタイプ及び量は、あるケースにおいて、結果のために決定的に重要である。しかし、通常は、加えられるシランの量は、全固体含有量のたったの5質量%までであり、それらは、接着促進作用、特に、金属基体とラッカーとの間、及び任意に顔料と有機ラッカー成分との間において有効であるカップリング剤として機能し、あるケースにおいては、副次的効果としてわずかな架橋作用も生じ得る。主として、きわめて少量のシランが熱硬化性樹脂系に加えられる。
同日に特許庁に出願された、同様の手段についての他の2つの特許出願は、特に水性組成物に関し、更に水性組成物に加え、コーティングの前、最中及び後の工程、溶液挙動、層形成、特に実施例及び比較例において判定された、層の特性及び効果に関して、明らかに本明細書に含まれる。同様に、優先権の権利が発生する前記特許出願は、また、明らかに後の特許出願に含まれる。
【0005】
EP 1 017 880 B1から、部分的に加水分解されたアミノシラン及びフッ素含有酸を、1:2〜2:1の混合比で含む水性組成物の使用が知られている。この酸は、好ましくはフルオロチタン酸である。それをもって製造されたコーティングは良好であるが、自動車の製造において、特に複数金属の用途において用いられる、亜鉛/マンガン/リン酸ニッケルをベースとする非常に高品質のリン酸塩コーティングと同じように、高品質の耐食性コーティングについての必須条件を満たしていない。前記刊行物は、数種の酸の併用が有利であることを指摘していない。
【0006】
従って、本発明の目的は、そのコーティングが環境に優しい化学組成物を有し、高い耐食性を保証し、複数金属の用途、例えば、同じ溶液中で処理又は前処理される、鋼及び亜鉛が豊富な金属表面、及び任意にアルミニウムが豊富な金属表面においても適している水性組成物を提供することである。また、本発明の目的は、自動車の製造において車体をコーティングするのに適した水性組成物を提供することである。
【0007】
少なくとも2つの錯フッ化物、特に、フルオロチタン酸及びフルオロジルコニウム酸の併用が、コーティングの品質を特別に上昇させることを見出した。
まだ完全に乾燥してなく、それ故十分に実質的に縮合されていない、新たに塗布されたシランをベースとするコーティングを洗浄することが可能であることのみならず、この方法で製造され、洗浄されたコーティングが、水性溶液の化学組成物とはある程度無関係に、良好な耐食性及び良好なラッカー接着性を有するので、この方法の順序が有利でさえあることを見出した。これは、まだ十分に実質的に乾燥してない、新たに塗布されたシランをベースとするコーティングの洗浄が、容易及び頻繁に層の質の機能障害をもたらすか、コーティングの一部、しばしば全ての除去さえもたらすという、以前の経験とは矛盾する。
また、現在、この状態で洗浄もされる、まだ完全に乾燥してなく、それ故十分に実質的に縮合されていない、新たに塗布されたシランをベースとするコーティングに、ラッカー、ラッカー状コーティング、プライマー又は接着剤を塗布することが可能であり、有利であることを見出した。このような方法で製造され、洗浄されたコーティングでさえ、水性溶液の化学組成物とはある程度無関係に、良好な耐食性及び良好なラッカー接着性を有するので、このような組成物のシランをベースとする未乾燥フィルムへの応用は有利である。
前記目的は、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む組成物を用いて、金属表面をコーティングする方法であって、
前記組成物が、本質的に
a)シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンから選択される、少なくとも1つの化合物、及び
b)チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素を含む化合物から選択される、少なくとも2つの化合物、及び任意に
c)ランタノイドを含む、元素周期表の第1〜3及び5〜8副族、及び第2主族の金属のカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物、
d)モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物、及び/又は
e)pHに影響を及ぼす、少なくとも1つの物質、及び
f)水、及び
g)任意に少なくとも1つの有機溶媒
からなる方法によって達成される。
また、前記目的は、本質的に、
a)シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンから選択される、少なくとも1つの化合物、及び
b)チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素を含む少なくとも2つの化合物、及び任意に
c)ランタノイドを含む、元素周期表の第1〜3及び5〜8副族、及び第2主族の金属のカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物、
d)モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物、及び/又は
e)pHに影響を及ぼす、少なくとも1つの物質、及び
f)水、及び
g)任意に少なくとも1つの有機溶媒
からなる、金属表面をコーティングするための水性組成物によって達成される。
本特許出願に優先権の権利を発生させる特許出願DE 102005015575.8の内容、優先権の権利を発生させる、他の関連特許出願DE 102005015573.1、DE102005015576.6及びUS SN 10/985,652の内容、及び優先権の権利を発生させる、最後に言及された3個の特許出願に由来する対応PCT出願の内容、特に、異なる組成物、加えられる異なる化合物、異なる製造工程、製造される異なるコーティング、実施例、比較例及び効果、それらに記載された特性及び実験結果に関しては、明らかに本特許出願に含まれる。
「シラン」なる用語は、本明細書において、シラン、シラノール、シロキサン、ポリシロキサン、及びしばしば「シラン」混合物でもある、それらの反応生成物又は誘導体について用いられる。本特許出願に関しては、「縮合」なる用語は、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンの架橋、更に架橋及び更なる化学反応の全ての形態を意味する。本特許出願に関しては、「コーティング」なる用語は、未乾燥フィルム、乾燥中のフィルム、完全に乾燥したフィルム、高温で乾燥されたフィルム、及び、加熱及び/又は照射によって、更に任意に架橋されているフィルムを含む、水性組成物を用いて形成されたコーティングを意味する。
【0008】
本特許出願に関しては、「本質的に、からなる」の表現は、本発明の水性組成物が、物質a)〜d)及びf)の固体及び活性成分の含有量に基づき、15質量%までの、水性組成物及び/又はコーティングの多種多様の特性を向上することを促進し、要求されることに適合することができる、他の物質を任意に含むことができる意味として理解される。これらの物質には、殺生物剤、及び/又は消泡剤、及び/又は少なくとも1個のアミノ、尿素及び/又はウレイド基、水酸化物、カルボン酸塩、硝酸塩、及びリン含有及び酸素含有化合物、例えば、リン酸塩を有する、ケイ素を含まない化合物から選択される少なくとも1つの物質が含まれる。この表現は、好ましくは、物質a)〜d)及びf)の固体及び活性成分の含有量の15質量%までの、本質的に、水酸化物、酢酸塩及び硝酸塩のみである、他の物質を含む。特に好ましくは、他の物質の含有量は、物質a)〜d)及びf)の固体及び活性成分の含有量の、12質量%まで、10質量%まで、8質量%まで、6質量%まで、4質量%まで2質量%までである。
【0009】
前記水性組成物は、水性溶液、水性懸濁液及び/又はエマルジョンである。水性組成物のpHは、好ましくは1.5より大きく、9より小さく、特に好ましくは2〜7の範囲であり、特に好ましくは2.5〜6.5の範囲であり、特には3〜6の範囲である。
【0010】
特に好ましくは、それによって製造されるコーティングが、より優れたラッカー接着性及び/又は後のラッカー層に対する、より高い親和性を、しばしば示すので、少なくとも1つのシラン、及び/又は、少なくとも1個のアミノ基、尿素基及び/又はウレイド基(イミド基)を有する、少なくとも1つの対応する化合物が水性組成物に加えられる。特に、少なくとも1つのシラン、及び/又は少なくとも1つの前記置換基を有する対応する化合物を用いた場合、縮合は2より低いpH値において非常に急速に開始され得る。シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンの全てのタイプの合計に対する、少なくとも1個のウレイド基を有するアミノシラン、ウレイドシラン及び/又はシラン、及び/又は対応するシラノール、シロキサン及びポリシロキサンの割合は、対応するシラノールとして計算し、高いことが好ましく、特に好ましくは20質量%以上、30質量%以上又は40質量%以上であり、非常に好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上又は80質量%以上であり、場合によっては90質量%、95質量%又は100質量%である。
【0011】
好ましくは、前記水性組成物は、a)対応するシラノールを基準にして計算し、0.005〜80g/Lの範囲のシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサン含有量を有する。この含有量は、特に好ましくは、0.01〜30g/L、非常に好ましくは、0.02〜12g/L、0.02〜8g/L又は0.02〜5g/L、特には、0.05〜3g/L、又は0.08〜2g/L又は0.08〜1g/Lの範囲である。これらの含有量の範囲は、特に溶液組成を意味する。
【0012】
しかし、特に水を用いて希釈することにより、及び任意に少なくとも1つの他の物質を加えることにより、対応する溶液組成物を調製するために濃縮物を用いる場合、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む濃縮物Aを、a)残りの成分の全て又はほとんど全てを含む濃縮物Bから分離し、溶液中でのみ、これらの成分を一緒にすることが好ましい。これは、また、少なくとも1つのシラン、シラノール、シロキサン及び/又はポリシロキサンを部分的又は完全に固体状態で加え、及び/又は分散液又は溶液に加えることを可能にする。a)濃縮物A中のシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンの含有量は、対応するシラノールを基準に計算し、好ましくは0.01〜1000g/Lの範囲である。この含有量の範囲は、特に好ましくは0.02〜200g/L、非常に好ましくは0.05〜120g/L、特には0.1〜60g/Lの範囲である。しかし、濃縮物A又は溶液の濃度範囲における含有量の主要な重要性は、用途によって変化し得る。
【0013】
特に好ましくは、前記組成物は、各ケースにおいて、アクリレート基、アルキルアミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基、アミノアルキル基、無水コハク酸基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシドキシ基、ヒドロキシル基、尿素基、イソシアナト基、メタクリレート基及び/又はウレイド基(イミノ基)から選択される、少なくとも1つの置換基を、少なくとも1つのシラン、シラノール、シロキサン及び/又はポリシロキサンa)を含む。
水性組成物中のシラン、シラノール、シロキサン及び/又はポリシロキサン、又は水性組成物に加えられる少なくともそれらの化合物、又はそれらの少なくともいくつかは、好ましくは水溶性である。本特許出願に関しては、シランは、室温で、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む組成物中で、水中で少なくとも0.05g/L、好ましくは少なくとも0.1g/L、特に好ましくは少なくとも0.2g/L、又は少なくとも0.3g/Lの溶解性を有する場合、水溶性としてみなされる。これは、それぞれの個々のシランがこの最小の溶解性を有しなければならないが、平均して、これらの最小値が達成されることを意味しない。
【0014】
前記水性組成物は、好ましくは、それぞれ、アミノアルキルシラン等の、少なくとも1個のアミノ基を有する、少なくとも1つのアクリロキシシラン、アルコキシシラン、シラン、少なくとも1つのコハク酸基及び/又は無水コハク酸基を有するシラン、ビス(シリル)シラン、グリシドキシシラン、(メタ)アクリラートシラン、ポリ(シリル)シラン、ウレイドシラン又はビニルシラン等の、少なくとも1つのエポキシ基を有するシラン、及び/又は少なくとも1つのシラノール、及び/又は化学組成が、前述したシランのものに対応する、少なくとも1つのシロキサン又はポリシロキサンを、それぞれ含む、フッ化物を含まないシラン及び対応するシラノール/シロキサン/ポリシロキサンから選択される、少なくとも1つのシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む。それは、少なくとも1つのシラン及び/又は(各ケースにおいて)少なくとも1つの、単量体性、二量体性、オリゴマー性、及び/又はポリマー性シラノール、及び/又は(各ケースにおいて)少なくとも1つの単量体性、二量体性、オリゴマー性及び/又はポリマー性シロキサンを含み、オリゴマーは、後述するように、二量体及び三量体を含むことが理解される。特に好ましくは、前記少なくとも1つのシラン又は対応するシラノール/シロキサン/ポリシロキサンは、各ケースにおいて、少なくとも1つのアミノ基、尿素基及び/又はウレイド基を有する。
特に、この組成物は、少なくとも1つのシラン、及び/又は以下の置換基から選択されるか、又はそれらに基づく、少なくとも1つの対応するシラン/シロキサン/ポリシロキサンを含む。
【0015】
(3,4−エポキシアルキル)トリアルコキシシラン、
(3,4−エポキシシクロアルキル)アルキルトリアルコキシシラン、
3−アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、
3−グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、
3−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、
3−(トリアルコキシシリル)アルキルサクシノシラン、
4−アミノジアルキルアルキルトリアルコキシシラン、
4−アミノジアルキルアルキルアルキルジアルコキシシラン、
アミノアルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン、
アミノアルキルアミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、
アミノアルキルトリアルコキシシラン、
ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、
ビス(トリアルコキシシリル)エタン、
γ−アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、
γ−アミノアルキルトリアルコキシシラン、
γ−メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、
(γ−トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、
γ−ウレイドアルキルトリアルコキシシラン、
N−2−アミノアルキル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、
N−(3−トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン、
N−アルキルアミノイソアルキルトリアルコキシシラン、
N−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、
N−β−(アミノアルキル)−γ−アミノアルキルトリアルコキシシラン、
N−(γ−トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、
N−フェニルアミノアルキルトリアルコキシシラン、
ポリ(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシラン、
トリス(3−トリアルコキシシリル)アルキルイソシアヌレート、
ウレイドアルキルトリアルコキシシラン、及び
ビニルアセトキシシラン。
【0016】
特に好ましくは、この組成物は、少なくとも1つのシラン、及び/又は以下の置換基から選択されるか、又はそれらに基づく、少なくとも1つの対応するシラン/シロキサン/ポリシロキサンを含む。
【0017】
(3,4−エポキシブチル)トリエトキシシラン、
(3,4−エポキシブチル)トリメトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルシラントリオール、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシノシラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、
アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
アミノプロピルトリアルコキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、
ビス−1,2−(トリエトキシシリル)エタン、
ビス−1,2−(トリメトキシシリル)エタン、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、
ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、
γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、
γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、
γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、
N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−2−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−2−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、
N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(γ−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(γ−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(γ−トリエトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
N−(γ−トリメトキシシリルプロピル)ジメチレントリアミン、
ポリ(アミノアルキル)エチルジアルコキシシラン、
ポリ(アミノアルキル)メチルジアルコキシシラン、
トリス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、
トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、
ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、及び
ビニルトリアセトキシシラン。
【0018】
特定の実施態様においては、前記水性組成物は、任意に、少なくとも1つのフッ素含有基を有する、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む。シラン化合物を選択することによって、所望の目的に従った親水性/疎水性を調節することも可能である。
【0019】
好ましくは、水性組成物のある実施態様においては、少なくとも1つの、部分的に加水分解された、及び/又は少なくとも部分的に縮合されたシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンが加えられる。特に、水性組成物と混合した時、少なくとも1つの、既に、前加水分解され、前縮合された、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを加えることが可能である。このような添加は特に好ましい。
【0020】
ある実施態様においては、少なくとも1つの、少なくとも広範に、及び/又は完全に加水分解され、及び/又は少なくとも広範に、及び/又は完全に縮合された、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを水性組成物に加えることができる。多くの実施態様においては、加水分解されていないシランは、金属表面に少なくとも部分的に加水分解されたシラン/シラノールよりも、良好に接着しない。多くの実施態様においては、広範に加水分解され、縮合されていないか、又はわずかに縮合された、シラン/シラノール/シロキサンは、金属表面に、少なくとも部分的に加水分解され、広範に縮合された、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンよりも、著しく良好に接着する。多くの実施態様においては、完全に加水分解され、広範に縮合された、シラノール/シロキサン/ポリシロキサンは、金属表面に化学的に結合するようになる傾向をわずかに示す。
【0021】
ある実施態様においては、シラン/シラノールを少量含むか、又は含まない、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンの合計が20又は40質量%未満の、少なくとも1つのシロキサン及び/又はポリシロキサンを、シラン/シラノールに加え、及び/又は代替え物として水性組成物に加えることができる。シロキサン又はポリシロキサンは、好ましくは短鎖であり、好ましくはロールコーター処置を用いて塗布される。次いで、これは、任意に疎水性を強化し、ブランク耐食性を向上させることによって、コーティングに影響を及ぼす。
【0022】
好ましくは、前記水性組成物は、少なくとも2つ又は少なくとも3つのチタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素化合物を含み、それは、これらの化合物が、それらのカチオン及び/又はアニオンと異なる化合物とすることが可能である。前記水性組成物、特に溶液組成物は、好ましくは、少なくとも1つの錯フッ化物b)及び特に好ましくは、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素の錯フッ化物から選択される、少なくとも2つの錯フッ化物を含む。好ましくは、それらの相違は、単に、錯体のタイプのみによるものではない。前記水性組成物、特に溶液組成物は、好ましくは、対応する金属の合計として計算し、0.01〜50g/Lの範囲の含有量の、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素化合物から選択される化合物b)を有する。この含有量は、特に好ましくは0.1〜30g/L、更に好ましくは0.3〜15g/L、特には0.5〜5g/Lの範囲である。一方、濃縮物、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない、濃縮物B中のチタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素化合物の含有量は、好ましくは、対応する金属の合計として計算し、1〜300g/Lの範囲であることができる。この含有量は、特に好ましくは2〜250g/L、更に特に好ましくは3〜200g/L、特には5〜150g/Lの範囲である。前記組成物は、好ましくはリン酸アルミニウム、硫酸チタン、硝酸ジルコニウム及び/又は塩化ジルコニウムを含まない。
【0023】
好ましくは、前記組成物は少なくとも1つの錯フッ化物を含み、錯フッ化物の含有量は、MeFとして対応する金属錯フッ化物の合計として計算し、特に0.01〜100g/Lの範囲である。この含有量は、好ましくは0.03〜70g/L、特に好ましくは0.06〜40g/L、更に特に好ましくは1〜10g/Lの範囲である。錯フッ化物は、MeF及び/又はMeFとして存在することができるが、他の状態又は中間状態として存在することもできる。有利には、多くの実施態様において、少なくとも1つのチタン錯フッ化物、及び少なくとも1つのジルコニウム錯フッ化物が同時に存在する。本明細書の多くのケースにおいては、少なくとも1つのMeF錯体及び少なくとも1つのMeF錯体が、特に、TiF錯体及びZrF錯体が、組成物中に同時に存在し得ることが有利である。本明細書において、濃縮物中における錯フッ化物のこれらの割合を調節し、このような方法で、それらを溶液に移動することが有利である。一方、それらの化合物の含有量は、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中の、MeFの合計として計算し、0.05〜500g/Lの範囲であり得ることが好ましい。この含有量は、特に好ましくは0.05〜300g/L、更に特に好ましくは0.05〜150g/L、特には、0.05〜50g/Lの範囲である。
意外にも、個々の錯フッ化物は、併用した時にお互いに不利な影響を及ぼさないが、予期しない肯定的な強化効果を示す。錯フッ化物に基づく、それらの添加は、明らかに、同様な、又は一致する方法において作用する。意外にも、チタン及びジルコニウムをベースとする錯フッ化物の併用は、チタンのみ、又はジルコニウムのみをベースとする錯フッ化物よりも用いられる場合、得られる結果は、常に、これらのたった1個の添加のケースよりも顕著に良好である。チタン又はジルコニウムをベースとする錯フッ化物は、ほとんど、酸化物及び/又は水酸化物として表面上に蒸着される。
意外にも、今や錯フッ化物を用いた場合、単一の水性組成物を用いることで良好な複数の金属処理が唯一の可能になり、少なくとも2つの異なる錯フッ化物、例えば、チタン及びジルコニウムをベースとするフッ化物を用いた場合、単一の水性溶液を用いることで、非常に良好な複数の金属書処理が唯一の可能になることが確立された。非常に多種多様の実験において、用いられた錯フッ化物は、個々には、独立的にどのような他の追加をしたかにかかわらず、これら2つの錯フッ化物の併用についてと同等の結果を与えなかった。
少なくとも1つの錯フッ化物への代替え又は追加として、他のタイプのチタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素化合物、例えば、少なくとも1つのヒドロキシカルボネート、及び/又は少なくとも1つの他の水溶性又は水にやや溶けにくい化合物、例えば、少なくとも1つのホウ酸塩及び/又は少なくとも1つのカルボン酸塩を加えることも可能である。
しかし、水性組成物に加えられる、唯一の錯フッ化物としての六フッ化ケイ素の添加は、他の錯フッ化物の添加よりも、種々の、時々顕著に乏しい効果を有することが今や示された。
【0024】
好ましくは、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀及び亜鉛からなる群から選択される、特に好ましくは、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、銅及び亜鉛から選択される、唯一のタイプのカチオン又は対応する化合物が、カチオン及び/又は対応する化合物c)として選択され、微量は除外される。
【0025】
一方、鉄及び亜鉛カチオン、及びその結果、寄与を上昇することが可能な、対応する化合物の溶液中にも存在する、特に、金属表面からこのようなイオンを溶解するための酸性組成物の場合、溶液の挙動、層形成又は層の特性について、広い範囲の含有量の全体で有害な効果を及ぼさないことが、意外にも示された。
【0026】
好ましくは、水性組成物、特に溶液組成物は、金属の合計として計算し、0.01〜20g/Lの含有量の、カチオン及び/又は対応する化合物c)を有する。この含有量は、特に好ましくは0.03〜15g/L、非常に好ましくは0.06〜10g/L、特には0.1〜6g/Lである。一方、例えばシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中のこれらの化合物の含有量は、金属の合計として計算し、1〜240g/Lであり得ることが好ましい。この含有量は、特に好ましくは2〜180g/L、非常に好ましくは3〜140g/L、特には、5〜100g/Lの範囲である。
【0027】
前記組成物は、好ましくは、少なくとも1つの、セリウム、クロム、鉄、カルシウム、コバルト、銅、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、タンタル、イットリウム、亜鉛、スズ及び他のランタノイドのカチオンから選択されるタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物を含む。好ましくは、水性組成物中に存在する全てのカチオンが、水性組成物によって金属表面から溶出されるのみならず、少なくとも部分的又は均一に広範に水性組成物に加えられるとは限らない。従って、新しく調製された溶液は、金属材料との反応から解放されるか形成されるか、又は溶液中の反応物から形成されるのみである、特定のカチオン又は組成物を含まない。
意外にも、マンガンイオン又は少なくとも1つのマンガン化合物の添加は、部分的に有利であると思われる。明らかにマンガンでない化合物又はほとんどマンガンを含まない化合物が金属表面に蒸着されるが、この添加は、明らかにシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンの蒸着を促進し、その結果、コーティングの性能を有意に向上させる。おそらく酸化物及び/又は水酸化物としてこの添加が、チタン及び/又はジルコニウム化合物の金属表面上の蒸着を促進し、それによって、コーティングの性能を顕著に向上させるので、予想外に、マグネシウムイオン又は少なくとも1つのマグネシウム化合物の添加も、有利であると思われる。マグネシウム及びマンガンの混合した添加は、いくつかのケースにおいて、コーティングを更に向上させた。対照的に、たった0.02g/Lの銅イオンの添加は、有意な影響を示さない。カルシウムイオン含有量が増加した場合、錯フッ化物が、フッ化カルシウムの形成によって不安定化しないことを確実にするために注意すべきである。
【0028】
好ましくは、前記組成物は、アルカリ土類金属イオンから選択される、対応する化合物として計算し、0.01〜50g/Lの範囲、特に好ましくは0.03〜35g/L、非常に好ましくは0.06〜20g/Lの範囲、特には、0.1〜8g/Lの範囲の含有量の、少なくとも1つのタイプのカチオン及び/又は対応する化合物を有する。アルカリ土類金属イオン又は対応する化合物は、しばしば耐食性を増加させるのに、特に有利である、チタン及び/又はジルコニウムをベースとする化合物の蒸着の強化を促進することができる。一方、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中のそれらの化合物の含有量は、例えば、対応する化合物の合計として計算し、好ましくは0.1〜100g/Lの範囲であり、特に好ましくは0.3〜80g/L、非常に好ましくは0.6〜60g/Lであり、特には、0.5〜30g/Lの範囲である。
【0029】
好ましくは、前記組成物は、特に、金属の合計として計算し、0.01〜20g/Lの範囲の、鉄、コバルト、マグネシウム、マンガン、ニッケル、イットリウム、亜鉛及びランタノイドから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物c)を含む。この含有量は、特に好ましくは0.03〜15g/L、非常に好ましくは0.06〜10g/L、特には、0.1〜6g/Lの範囲である。一方、特にシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中のそれらの化合物の含有量は、好ましくは、金属の合計として計算し、1〜240g/Lの範囲であり得る。この含有量は、特に好ましくは、2〜180g/L、非常に好ましくは3〜140g/L、特には、5〜100g/Lの範囲である。
【0030】
好ましくは、前記組成物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物d)、特に、アクリル、エポキシド及び/又はウレタンをベースとする少なくとも1つの化合物を含む。本明細書においては、加えて、又は代替え物として、少なくとも1つのシリル基を有する、少なくとも1つの有機化合物を用いることができる。ある実施態様においては、OH基、アミン基、カルボキシレート基、イソシアネート基及び/又はイソシアヌレート基を高い含有量で有する、このような有機化合物を用いることが好ましい。
【0031】
好ましくは、前記組成物は、加えられた固体として計算し、0.01〜200g/Lの範囲の、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物d)を含む。この含有量は、特に好ましくは、0.03〜120g/L、非常に好ましくは0.06〜60g/L、特には、0.1〜20g/Lの範囲である。ある実施態様においては、このような有機化合物は、コーティングの形成を均質化することを促進することができる。これらの化合物は、これらの化合物無しで形成された、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンをベースとするコーティングと比較し、更に緻密で、高密で、更に化学的耐性及び/又は更に耐水性のコーティングの形成に寄与し得る。また、有機化合物の選択によって、所望の目的に従い、親水性/疎水性を調節することができる。しかし、より強い疎水性が、粉体コーティングの場合に特に確立されるが、特に水をベースとするラッカーにおいて必要とされる結合のため、強い疎水性コーティングは、ある用途においては問題がある。少なくとも1つの有機化合物を加えて用いる場合、特定の機能性を有する化合物との組み合わせが特に有利であり、具体例は、アミン/ジアミン/ポリアミン/尿素/イミン/ジイミン/ポリイミン又はそれらの誘導体をベースとする化合物、キャップイソシアネート/イソシアヌレート/メラミン化合物、及びカルボキシル及び/又はヒドロキシル基、例えば、カルボキシレートを有する化合物、長鎖糖状化合物、例えば、(合成)デンプン、セルロース、単糖類、長鎖アルコール及び/又はそれらの誘導体である。加えられる、前記長鎖アルコールは、特に、ブタンジオール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等の、4〜20C原子を有するもの、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルグリコールプロピルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル等のエチレングリコールエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、又はプロピレングリコールフェニルエーテル等のプロピレングリコールエーテル、トリメチルペンタンジオールジイソブチレート、ポリテトラヒドロフラン、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールである。
【0032】
対応するシラノールを基準に計算した、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンをベースとする化合物と前記組成物中の加えられた固体として計算した有機ポリマーをベースとする化合物との質量比は、好ましくは1:0.05〜1:3、特に好ましくは1:0.1〜1:2、非常に好ましくは1:0.2〜1:1の範囲である。ある実施態様においては、この比は、好ましくは、1:0.05〜1:30、特に好ましくは1:0.1〜1:2、非常に好ましくは1:0.2〜1:20、特には、1:0.25〜1:12、1:0.3〜1:8又は1:0.35〜1:5の範囲である。
意外にも、有機ポリマー及び/又はコポリマーの添加は、特に、鉄及び鋼における耐食性を顕著に向上させ、より高いプロセス安全性及び一定の良好なコーティング特性に特に有利である。
【0033】
例えば、シランの加水分解用触媒として酢酸を加えることができる。溶液のpHを、例えば、アンモニア/水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物及び/又はモノエタノールアミン等のアミンをベースとする化合物を用いて、上昇させることができるが、溶液のpHは、好ましくは、酢酸、ヒドロキシ酢酸及び/又は硝酸を用いて低下させる。このような添加は、pHに影響を及ぼす物質を含む。
前記組成物は、対応する化合物の合計として計算し、好ましくは0.01〜10g/Lの範囲の、少なくとも1つのアミノ、尿素及び/又はウレイド基を有する化合物、特に、アミン/ジアミン/ポリアミン/尿素/イミン/ジイミン/ポリアミン化合物及びそれらの誘導体を任意に有する。この含有量は、特に好ましくは0.03〜7g/L、非常に好ましくは0.06〜4g/L、特には、0.1〜1g/Lの範囲である。アミノグアニジン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び/又はアルキル基を有する、分岐尿素誘導体等の少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。アミノグアニジンの添加は、例えば、本発明のコーティングの性能を顕著に向上させる。
【0034】
一方、前記組成物は、また、ニトログアニジンを含んでいてもよい。意外にも、ニトログアニジンの前記水性組成物への添加が本発明のコーティングを非常に均一な外観とし、コーティング品質をかなり向上させることがわかった。これは、サンドブラストした鉄又は鋼表面等の「敏感な」金属表面上で、特に非常にポジティブな効果を有する。ニトログアニジンの添加は、本発明のコーティングの性能を著しく向上させる。
鋼表面の含有は、特に、鋼表面のさびやすい傾向を顕著に減少させる。予想外に、本発明の水性組成物への過酸化水素の添加は、コーティングされた基体の光学的品質を向上させることがわかった。
任意に、前記組成物は、また、リン含有化合物、特に、オキシアニオン及び/又は対応する化合物として含むが、リン化アルミニウムは好ましくない。この含有量は、特に好ましくは0.05〜8g/L、非常に好ましくは0.1〜5g/L特には、0.2〜2g/Lの範囲である。これらの化合物は、少なくとも1つのオルトリン酸塩、少なくとも1つのオリゴマー性及び/又はポリマー性リン酸塩、及び/又は少なくとも1つのホスホン酸塩であり得る。前記少なくとも1つのオルトリン酸塩及び/又はそれらの塩及び/又はそれらのエステルは、例えば、少なくとも1つのアルカリ金属リン酸塩、少なくとも1つの鉄を含有するオルトリン酸塩、マンガン及び/又は亜鉛、及び/又は少なくとも1つのそれらの塩及び/又はエステルであり得る。加える代わりに、各ケースにおいて、少なくとも1つのメタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、三リン酸塩及び/又はそれらの塩及び/又はそのエステルを加えることも可能である。ホスホン酸塩として、例えば、少なくとも1つのアルキルジホスホン酸、及び/又はその塩及び/又はそのエステル等の、少なくとも1つのホスホン酸を加えることができる。今や、意外なことに、本発明の水性組成物へのオルトリン酸塩の添加が、コーティング、特に電気亜鉛めっきした基体の品質を顕著に向上させることがわかった。物質のこのグループのリン含有化合物は界面活性剤ではない。
【0035】
前記水性組成物は、任意に、例えば、酢酸イオン、酪酸イオン、クエン酸イオン、ギ酸イオン、フマル酸イオン、グリコール酸イオン、ヒドロキシ酢酸イオン、乳酸イオン、ラウリン酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、シュウ酸イオン、プロピオン酸イオン、ステアリン酸イオン及び酒石酸イオン等のカルボン酸イオン、及び/又は少なくとも1つの対応する解離していない、及び/又は部分的にのみ解離している化合物から選択される少なくとも1つのタイプのアニオンを含む。
【0036】
好ましくは、前記組成物は、対応する化合物の合計として計算し、0.01〜3g/Lの範囲の、カルボン酸塩及び/又はカルボン酸塩化合物を有する。この含有量は、特に好ましくは0.05〜1.5g/L、非常に好ましくは0.1〜0.8g/L、特には0.15〜0.6g/Lの範囲である。特に好ましくは、各ケースにおいて、少なくとも1つのクエン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩及び/又は酒石酸塩を、カルボン酸塩として加えることができる。少なくとも1つのカルボン酸塩の添加は、カチオンが錯化し、それを溶液中で更に容易に維持することを促進し、それによって、溶液の安定性及び可制御性を向上させることを可能にする。意外なことに、いくつかのケースにおいて、金属表面へのシランの結合は、カルボン酸塩の含有によって促進及び向上することがわかった。
【0037】
前記組成物は、また、任意に硝酸塩を含む。硝酸塩含有量は、好ましくは、対応する化合物の合計として計算し、0.01〜2g/Lの範囲である。この含有量は、特に好ましくは0.03〜1.2g/L、非常に好ましくは0.06〜0.8g/L、特には、0.1〜0.5g/Lの範囲である。硝酸塩は、コーティング、特に鋼上での形成を均一化することを促進する。亜硝酸塩は、通常、部分的にのみ硝酸塩に変換し得る。硝酸塩は、特に、アルカリ金属硝酸塩、硝酸アンモニウム、重金属硝酸塩、亜硝酸及び/又は対応する有機化合物として加えることができる。硝酸塩は、特に鋼及び鉄表面上で、錆やすい傾向を顕著に減少することができる。硝酸塩は、任意に、欠陥のないコーティング、及び/又は例外的に任意に認識できるマークのない、均一なコーティングの形成に寄与し得る。
【0038】
前記組成物は、任意に、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン及び対応する化合物、特に、カリウム及び/又はナトリウムイオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、又は少なくとも1つの対応する化合物を含む。
【0039】
前記組成物は、任意に、F-として計算し、0.001〜3g/Lの範囲の遊離のフッ化物含有量を有する。この含有量は、好ましくは0.01〜1g/L、特に好ましくは0.02〜0.5g/L、非常に好ましくは0.1g/L以下の範囲である。その後、溶液は多くの実施態様において安定化され得るので、多くの実施態様において、溶液中で低い遊離のフッ化物含有量を有することが有利であることが確定された。過剰に高い遊離のフッ化物含有量は、しばしば、カチオンの蒸着率に有害な影響を及ぼし得る。更に、解離していない、及び/又は錯体化していないフッ化物は、また、多くのケースにおいて、特に0.001〜0.3g/Lの範囲であってもよい。一方、濃縮物中のそれらの化合物の含有量は、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中の、MeFの合計として計算し、0.05〜5g/Lの範囲であり得ることが好ましい。この含有量は、特に好ましくは0.02〜3g/L、非常に好ましくは0.01〜2g/L、特には、0.005〜1g/Lの範囲である。このような添加は、フッ化水素酸及び/又はその塩の形態で実施される。
前記組成物は、任意に、錯フッ化物を含むことなく、F-として計算し、少なくとも1つのフッ化物含有化合物及び/又はフッ化物アニオン含有量を有し、特に好ましくは0.001〜12g/L、非常に好ましくは0.005〜8g/L、特には、0.01〜3g/Lの範囲の、アルカリ金属フッ化物、アンモニウムフッ化物及び/又はフッ化水素酸からの少なくとも1つのフッ化物を含む。フッ化物イオン又は対応する化合物は、例えば、少なくとも1つのジルコニウム化合物が必要に応じて増加又は減少することができるように、金属表面における金属イオンの蒸着を制御することを促進することができる。一方、濃縮物におけるこれらの化合物の含有量、例えば、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含まない濃縮物B中の、対応する化合物の合計として計算し、好ましくは0.1〜100g/Lの範囲である。この含有量は、特に好ましくは0.3〜80g/L、非常に好ましくは0.6〜60g/L、特には、1〜30g/Lの範囲である。F-として計算した、遊離のフッ化物の合計に対する、関連する金属の合計として計算した、錯フッ化物の合計の質量比は、好ましくは1:1より大きく、特に好ましくは3:1より大きく、非常に好ましくは5:1より大きく、特には、10:1より大きい。
【0040】
本発明の方法によれば、前記水性組成物は、任意に、アルコキシド、炭酸塩、キレート、界面活性剤及び添加剤から選択される少なくとも1つの化合物、例えば、殺生剤及び/又は消泡剤を含むことができる。
前述した添加は、標準的には、本発明の水性組成物中で、成分a)、b)及び溶媒からなる、本発明の水性塩基組成物の良好な特性を更に向上することを促進するという、有益な効果を有する。それらの添加は、標準的には、チタン化合物を単独で、又はジルコニウム化合物を単独で、又はそれらを組み合わせて用いた場合、同じ様式で作用する。しかし、意外にも、特に、錯フッ化物として、少なくとも1つのチタン化合物と、少なくとも1つのジルコニウム化合物との組み合わせが、特に、それらを用いて製造されたコーティングの特性を有意に向上することがわかった。意外にも、異なる添加物は、その結果、モジュラーシステム中のように機能して、特定のコーティングの最適化への多大な貢献をする。車体の前処置において、及び異なる金属製品又は組み立て部品の処置又は前処置において発生するような特定のケースにおいては、いわゆる複数金属混合物が用いられ、種々の添加剤を含む組成物が、特定の複数金属混合物及びその特性及び要求性を特に最適化するので、本発明の水性組成物が非常に適している。
例えば、車体又は異なる金属製品の場合のように、本発明の方法を用いて、異なる金属材料の混合物が同じ溶液中で水性コーティングによってコーティングされ得る。ここで、例えば、鋳鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、亜鉛及び亜鉛合金から選択される金属表面を有する基体の所望の混合物を同時にコーティングすることができ、及び/又は連続して本発明により、基体を、金属で少なくとも部分的にコーティングすること、及び/又は少なくとも1つの金属材料から少なくとも部分的に構成することが可能である。
【0041】
少なくとも1つの他の成分及び/又は微量の他の物質は存在しないから、1000g/Lの残りは、水、又は水及びエタノール、メタノール、イソプロパノール又はジメチルホルムアミド(DMF)等の少なくとも1つの有機溶媒からなる。好ましくは、ほとんどの実施態様においては、有機溶媒の含有量は、特に低く、又は0である。存在する少なくとも1つのシランの加水分解のため、エタノール及び/又はメタノールが含有すると思われる。任意の有機溶媒を加えることは特に好ましくない。
【0042】
前記組成物は、好ましくは、例えば、SiO等の酸化物の形態で加えられる、全てのタイプの粒子、又は0.02μmを超える平均直径を有する粒子が存在しない、又は実質的に存在しないことが好ましい。
【0043】
前記組成物は、好ましくは、カルシウム等の水硬化剤が少ないか、実質的に含まないか、多くを含まないか、1g/Lを超えた含有量を含まないことが好ましい。前記水性組成物は、鉛、カドミウム、クロム酸塩、コバルト、ニッケル及び/又は他の毒性重金属を含まないか、少ないことが好ましい。好ましくは、金属表面から溶け出した少なくとも1つの重金属が、混入し得る(例えば、他の水溶液から、及び/又は不純物として発生し得る)が、このような物質を慎重に加えないようにする。特定の環境下で腐食に寄与し得るので、前記組成物は、臭化物、塩化物及びヨウ化物が少ないか、実質的に含まない、又は完全に含まないことが好ましい。
【0044】
本発明によって製造されるコーティングの層厚みは、好ましくは、0.005〜0.3μm、特に好ましくは0.01〜0.25μm、非常に好ましくは0.02〜0.2μmの範囲であり、しばしば、約0.04μm、約0.06μm、約0.08μm、約0.1μm、約0.12μm、約0.14μm、約0.16μm又は約0.18μmである。有機モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及び/又はブロックコポリマーを含むコーティングは、しばしば、それらを含まないか、ほとんど含まないものよりもいくぶん厚い。
【0045】
好ましくは、前記組成物は、元素チタンとして計算し、1〜200mg/m2の範囲のチタニウム及び/又はジルコニウム含有量のみに基づく層質量を有するコーティングを形成する。この層質量は、特に好ましくは5〜150mg/m2、非常に好ましくは8〜120mg/m2の範囲であり、特には、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100又は約110mg/m2である。
【0046】
好ましくは、前記組成物は、対応する、広範に縮合したポリシロキサンとして計算し、0.2〜1000mg/m2の範囲の、シロキサン/ポリシロキサンのみに基づく層質量を有するコーティングを形成する。この層質量は、特に好ましくは2〜200mg/m2、非常に好ましくは5〜150mg/m2の範囲であり、特には、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130又は約140mg/m2である。
【0047】
必要に応じて、本発明の水性組成物を用いて製造されたコーティングを、その後、少なくとも1つのプライマー、ラッカー又は接着剤及び/又はラッカー状有機組成物を用いてコーティングすることができ、任意に、少なくとも1つの、これらの他のコーティングは、加熱及び/又は照射によって硬化される。
【0048】
本発明の方法によってコーティングされた金属基体は、自動車産業、鉄道車両、宇宙産業、装置工学、機械工学、建築工業、家具製造産業、中央分離帯、照明器具、外形、外壁又は金属製品の製造、車体又は車体の一部、個々の部品又は予め組み立てられた/接続した要素の製造、好ましくは、自動車又は航空産業、又は電気製品又は装置、特に家庭用品、制御装置、試験装置又は構造成分の製造において用いることができる。
【0049】
マンガンの添加は、意外にも著しい有利を示した。明らかに全く又はほとんどマンガン化合物は金属表面に蒸着されないが、その添加は、金属表面上のシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンの蒸着を大いに促進する。ニトログアニジンを添加した場合、意外にも、コーティングされた金属シート、特に、サンドブラストされた鉄又は鋼表面等の感応性表面の光学的特性は非常に均一である。予想外に、亜硝酸塩の添加は、鋼基体の錆止め傾向が顕著に減少した。意外にも、有意な肯定的な効果を有するとして本特許出願において言及された全ての添加が、本発明のコーティングの改良において追加の効果を有することがわかった。モジュラーシステムと同じ方法によるいくつかの添加剤の選択は、種々の特性、特に複数の金属システムの種々の特性、更に最適化を可能にする。
意外にも、今や、錯フッ化物を用いた場合に、単一の水性組成物を用いた良好な複数の金属の処理のみが可能であり、少なくとも2つの異なる錯フッ化物、例えば、チタン及びジルコニウムをベースとするものを用いた場合、単一の水性組成物を用いた、非常に良好な複数の金属の処理のみが可能であることがわかった。非常に多種多様の実験において、個々に用いられる錯フッ化物について得られる結果は、独立的にどのような他の添加をしたかにかかわらず、2つの錯フッ化物の併用について得られた結果ほど良好でなかった。
【0050】
シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む、水性組成物の品質における、このような大きな上昇の可能性は予測することができなかった。しかし、意外にも、全ての試験における質のレベルにおける特徴的な上昇は、また、シラン、及びチタンをベースとする、又はジルコニウムをベースとする錯フッ化物をベースとする水性組成物を用いた場合に見られた(比較例CE3及びCE4を参照)。
ラッカー接着力を試験した場合、鋼上でさえ、1又は2の、石小片耐衝撃性(stone chip resistance)スコアが得られたことは更なる驚くべきことであった。鋼は、シラン及び1つのチタンをベースとする、又はジルコニウムをベースとする錯フッ化物をベースとする水性組成物について、特に、耐食性に関して最も問題のあることが示される(実施例、E2を参照)。
【0051】
アルミニウム及びアルミニウム合金のケースにおいては、経験はCASS試験が問題があることを示すが、これは、また、本発明の組成物により予想されるより顕著に良好であると判明する。
【0052】
実施例及び比較例
以下に記述する本発明の実施例(E)及び比較例(CE)は、本発明の主題を詳細に説明することを意図している。
【0053】
水性溶液組成物を、既に前加水分解されたシランを用いて、第1表に従い、混合物として調製する。それらは、それぞれ、主に1つのシラン、及び任意に少量の少なくとも1つの他の同様のシランをも有し(ここでは、単純化の目的のため、シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンよりもシランの用語を再び用いる)、通常、これらの種々の化合物(時々、多数の同様の化合物)がコーティングの形成を終了し、同様に、しばしばコーティング中に同様の化合物が存在している。シランによっては、用いられるシランが、前加水分解されている形態で既に存在していない場合、前加水分解工程は、激しく撹拌しながら室温で数日かかることがある。過剰の水の中にシランをいれ、任意に酢酸で触媒することによって、シランの前加水分解を実施する。pHの調整の目的のみのために、いくつかの実施態様においてのみ酢酸を加える。ある実施態様においては、酢酸は、加水分解触媒として既に存在している。加水分解においてエタノールが形成されるが、添加はしない。生成された混合物を新しく用いる。
【0054】
次いで、各試験について、水性アルカリ洗浄剤で予め洗浄し、工業水、次いで脱塩水ですすいだ、少なくとも3枚の両面に鋼溶融亜鉛めっきされた、又は電気亜鉛めっきされた冷延鋼板、アルミニウム合金Al6016、又はGalvaneal(登録商標、鋼上のZnFe層)を、噴霧、浸漬又はロールコーター処理により、25℃で第1表における適当な前処理液体と、両面を接触させる。次いで、この方法で処理されたシートを、90℃PMTで乾燥し、次いで、陰極自動車ディップラッカー(cathodic automobile dip lacquer、CDL)を用いて塗装した。次いで、これらのシートを完全な市販の自動車用ラッカーシステム(充填材、被覆されたラッカー、透明ラッカー;CDLを含む積層の全体の厚みは約105μm)を用いて供給し、それらの耐食性及びラッカー接着性を試験した。処置溶液の組成及び特性、及びコーティングの特性を第1表に並べた。
【0055】
有機官能性シランAは、アミノ官能性トリアルコキシシランであり、分子あたり1個のアミノ基を有する。本明細書で用いられる全てのシランのように、それは、水溶液中で、広範囲又はほとんど完全に加水分解された形態である。有機官能性シランBは、分子あたり1個の末端アミノ基及び1個のウレイド基を有する。非官能性シランCは、ビス−トリアルコキシシランであり、対応する加水分解された分子は、2個のケイ素原子上に6個までのOH基を有する。ポリシロキサンDは、末端OH基と共に、相対的に短鎖の分子を有する。それは、コーティングを疎水性にする。
アルミニウム、ケイ素、チタン又はジルコニウムの錯フッ化物は、MeF6錯体の形態で広範に用いられるが、ホウ素の錯フッ化物は、MeF4錯体の形態で広範に用いられる。特定の錯フッ化物溶液に、金属マンガンとしてマンガンを加え、その中で溶解する。この溶液を、水性組成物と混合する。錯フッ化物を用いない場合、硝酸マンガンを加える。硝酸銅(II)として銅を加え、硝酸マグネシウムとしてマグネシウムを加える。鉄及び亜鉛を硝酸塩として混合する。それ自体の硝酸塩を、硝酸ナトリウム又は硝酸として加えることが好ましい。エポキシポリマーAは、OH-及びイソシアネート基を含み、従って、後に、100℃を超える温度で化学的に架橋することができる。エポキシポリマーBも、OH-及びイソシアネート基を含み、従って、同様に、後に、100℃を超える温度で化学的に架橋することができる。本発明の組成物を選択して用いる場合、ポリマーBはポリマーAよりも安定である。シリル化されたエポキシポリマーCは、少量のOH-及びイソシアネート基を有し、従って、後に、100℃を超える温度で化学的に架橋することができる。
【0056】
水性組成物−濃縮物及び/又は溶液中に存在するシランは、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及び/又は加水分解反応、縮合反応及び/又は他の反応による他の成分との反応生成物である。乾燥、又は任意にコーティングの硬化の際、反応は、特に溶液中で、特に70℃を超える温度で実施される。全ての濃縮物及び溶液は、変化又は沈殿せずに、1週間安定であることを示した。エタノールは加えない。組成物中のエタノール含有量は、化学反応にのみ由来した。
【0057】
大部分の実施例及び比較例においては、少なくとも1つの錯フッ化物、及び他のケースにおいては酸が存在する場合、pHをアンモニアを用いて調整する。全ての溶液は良好な溶液品質を有し、常に良好な安定性を有する。溶液中に沈殿はない。シラン含有溶液を用いたコーティング工程の後、最初にコーティングを脱塩水で一度簡単に洗浄する。次いで、コーティングされたシートを、オーブン中で120℃で5分間乾燥する。干渉色のため、鋼上のコーティングのみが、視覚的に有意に試験することができ、コーティングの均質性の評価を可能にする。いずれかの錯フッ化物を含有しないコーティングは非常に不均質である。意外にも、チタン錯フッ化物及びジルコニウム錯フッ化物を用いたコーティングは、これらの錯フッ化物の1つのみを適用した場合よりも、顕著に均質を示した。ニトログアニジン、硝酸塩又は亜硝酸塩の添加も、同様に、コーティングの均質性を向上させる。いくつかのケースにおいては、層の厚みは、これらの物質の濃度によって増加する。
【0058】
第1表:
シランの場合には、固体含有量又は加水分解されたシランの質量に基づく、g/Lで表した溶液組成;残りの含有量は、水及び、通常は非常に少量のエタノール;データ処理及びコーティングの特性
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
短期間の使用の間、全ての溶液組成物は安定であり、塗布するのに良好であるように思われる。沈殿及び色の変化はない。噴霧、浸漬又はロールコーター処理等の、処理条件に起因し得る、別々の実施例及び比較例の間に、挙動、視覚的印象、又は試験結果において相違はない。形成されたフィルムは透明であり、ほとんど全てが広範囲に均質である。それらは、コーティングを着色しない。金属表面の構造、光沢及び色は、コーティングによってほんのわずかに変化するように思われる。チタン及び/又はジルコニウム錯フッ化物が存在する場合、特に、鋼表面に虹色の層が形成される。いくつかのシランの組み合わせは、いままでのところ、耐食性において有意な向上を示さないが、これは無視することができない。更に、H3AlF6の含有量は、水性組成物中における、対応する反応のため、アルミニウムが豊富な金属表面上に見られた。しかし、意外にも、水性組成物中の2又は3つの錯フッ化物の組み合わせは非常に有益であることが示される。
【0067】
塗布のタイプによっても決まり、最初は特定の実験において変化する、このようにして生成されたコーティングの層厚みは、0.01〜0.16μmの範囲であり、通常は0.02〜0.12μmの範囲であり、しばしば0.08μm以下であり、有機ポリマーを加えた場合よりも顕著に大きかった。
【0068】
BMW仕様書GS 90011に従い、5%NaCl溶液中で40時間保存した後に、DIN EN ISO 2409によるクロスカット試験を記録した耐食性は、0〜5の範囲であり、0は最良の値を表す。塩噴霧試験、汗水試験及び乾燥間隔の間の腐食ストレスに変わる、VDA試験シート621−415による10サイクルを超える、塩噴霧/濃縮水中交互変化試験において、外へ向かうスクラッチからの一方の側において剥離を測定し、mmで報告し、剥離は、理想的に可能な限り小さい。DIN 55996−1による、石小片耐衝撃性試験において、コーティングされた金属シートを、前述した、10サイクルを超えるVDA交互変換試験の後に屑鉄にさらした。損傷の実態を0〜5のスコアによって特徴付け、0は最良の結果を表す。DIN 50021 SSによる塩噴霧試験において、コーティングされたシートを、1008時間に至るまで、霧化した、腐食塩化ナトリウム溶液にさらす。次いで、外へ向かうスクラッチ(スクラッチは金属表面に至る丸たがねで製造されている)から剥離をmmで測定する。剥離は可能な限り小さいことが理想的である。DIN 50021CASSによるCASS試験において、アルミニウム合金で製造されたコーティングシートを、504時間に至るまで、霧化した、特殊な腐食性大気にさらす。次いで、外へ向かうスクラッチから剥離をmmで測定し、理想的には剥離は可能な限り小さい。
車体の亜鉛/マンガン/リン酸ニッケル化の開発が数十年かかたことを考えると、今日製造されている、このタイプのリン酸塩層は非常に高い品質である。それにもかかわらず、予想に反して、たとえ、大きな努力が必要であったとしても、たったの数年間用いられた水性シラン含有組成物によるシラン含有コーティングを用いた、同様の高い品質特性を達成することは可能であった。
【0069】
車体部品における他の実験は、CDL溶液の電気化学的条件が異なる種類のコーティングにわずかに適合性であるかもしれないが、そうでなければ、実験室の実験で得られた最高の特性が車体部品で再現できることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含む組成物を用いて、金属表面をコーティングする方法であって、
前記組成物が、本質的に
a)シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンから選択される、少なくとも1つの化合物、及び
b)チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素を含む化合物から選択される、少なくとも2つの化合物、及び任意に
c)ランタノイドを含む、元素周期表の第1〜3及び5〜8副族、及び第2主族の金属のカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物、
d)モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物、及び/又は
e)pHに影響を及ぼす、少なくとも1つの物質、及び
f)水、及び
g)任意に少なくとも1つの有機溶媒
からなる方法。
【請求項2】
前記組成物のpHが1.5より大きく、9より小さいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、対応するシラノールを基準に計算し、0.005〜80g/Lの範囲のシラン/シラノール/シロキサン/ポリシロキサンa)の含有量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、いずれの場合にも、少なくとも1個のアミノ基、尿素基及び/又はウレイド基を有する、少なくとも1つのシラン及び/又は対応するシラノール/シロキサン/ポリシロキサンを含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素を含む化合物から選択される、少なくとも1つの化合物をb)、対応する金属の合計として計算し、0.01〜50g/Lの範囲の含有量を有することを特徴とする。請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及びホウ素の錯フッ化物から選択される、少なくとも1つの錯フッ化物b)を含むことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1つの錯フッ化物を、MeFとして計算した、対応する金属錯フッ化物の合計として計算し、0.01〜100g/Lの範囲の含有量であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも2つの異なる錯フッ化物、特には2つの異なるカチオンの錯フッ化物、特に好ましくは、チタン及びジルコニウムの錯フッ化物を含むことを特徴とする、請求項5又は6記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、セリウム、クロム、鉄、カルシウム、コバルト、銅、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、タンタル、イットリウム、亜鉛、スズ及び他のランタノイドのカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオンc)を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、金属の合計として計算し、0.01〜20g/Lの範囲のカチオン及び対応する化合物c)の含有量を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、加えた固体として計算し、0.01〜200g/Lの範囲の有機化合物d)の含有量を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも1つのリン含有及び酸素含有化合物を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、カルボン酸イオンから選択される少なくとも1つのタイプのアニオン、及び/又は少なくとも1つの対応する、解離していない、及び/又は部分的にのみ解離している化合物を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を含むことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、アルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンから選択される少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物を含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、F-として計算し、0.001〜3g/Lの範囲の遊離のフッ化物含有量を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1つのフッ化物含有化合物及び/又はフッ化物アニオンを含むことを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
異なる金属材料の混合物が、同じ溶液中で水性コーティングを用いてコーティングされることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、チタンとして計算し、1〜200mg/m2の範囲のチタン及び/又はジルコニウム含有量のみに基づく層質量を有するコーティングを形成することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、対応する広範囲に縮合したポリシロキサンとして計算し、0.2〜1000mg/m2の範囲のシロキサン/ポリシロキサンのみに基づく層質量を有するコーティングを形成することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
水性組成物を用いて製造されるコーティングを、次いで少なくとも1つのプライマー、ラッカー又は接着剤、及び/又はラッカー状有機組成物でコーティングし、少なくとも1つのこれらの他のコーティングが、任意に加熱及び/又は照射によって硬化されることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
金属表面をコーティングするための水性組成物であって、本質的に、
a)シラン、シラノール、シロキサン及びポリシロキサンから選択される、少なくとも1つの化合物、及び
b)チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム及び/又はホウ素を含む化合物から選択される、少なくとも2つの化合物、及び任意に
c)ランタノイドを含む、元素周期表の第1〜3及び5〜8副族、及び第2主族の金属のカチオンから選択される、少なくとも1つのタイプのカチオン、及び/又は少なくとも1つの対応する化合物、
d)モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、少なくとも1つの有機化合物、及び/又は
e)pHに影響を及ぼす、少なくとも1つの物質、及び
f)水、及び
g)任意に少なくとも1つの有機溶媒
からなることを特徴とする、金属表面をコーティングするための水性組成物。
【請求項23】
自動車産業、鉄道車両、航空産業及び宇宙産業、装置工学、機械工学、建築工業、家具製造産業、中央分離帯、照明器具、外形、外壁又は金属製品の製造、車体又は車体の一部、個々の部品又は予め組み立てられた/接続した要素の製造、好ましくは、自動車又は航空産業、又は電気製品又は装置、特に家庭用品、制御装置、試験装置又は構造成分の製造における、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法によってコーティングされた金属基体の使用。

【公表番号】特表2008−519680(P2008−519680A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540562(P2007−540562)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011954
【国際公開番号】WO2006/050917
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】