説明

水性耐熱塗料組成物及びその塗装方法

本発明は、(A)カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を塩基性化合物で中和し、水性媒体中に分散してなる、該樹脂の水性分散体、(B)無機系着色顔料、及び(C)防錆顔料を含有することを特徴とする水性耐熱塗料組成物、及びその塗装方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性耐熱塗料組成物及びその塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内の各種部品;ディスクブレーキ用部品;マフラー等の金属製自動車部品は、高温に曝される。例えば、ディスクブレーキ用部品であるディスクローターは、高速走行時の急ブレーキ作動時には400℃程度まで温度が上昇する。
【0003】
上記金属製自動車部品には、通常、耐食性と外観を向上させるため、耐熱塗料が塗装されている。近年、耐熱塗料の分野においては、環境汚染、作業環境の悪化等の問題を解消するため、有機溶剤型塗料から、水性塗料への転換が要望されている。また、塗装時の省スペース、省エネルギー、作業効率向上等のため、塗膜加熱乾燥工程の低温化及び短時間化が要望されている。
【0004】
特開平7−26166号は、水ガラス及び二酸化ケイ素を含有する水性耐熱塗料を開示している。しかし、この塗料には、金属基材に塗装後、直ちに加熱乾燥すると塗膜中の水が突沸して塗膜にフクレを生じるため、先ず塗膜の水を室温で乾燥させた後、高温で加熱乾燥することが必要であるので、加熱乾燥に長時間を要するという問題がある。また、化成処理をしていない無処理鋼板等に塗装した場合には、塗膜の耐食性が劣るという問題もある。
【0005】
特開2002−284993号は、ポリアミドイミド樹脂を含有する水性耐熱塗料を開示している。しかし、この塗料には、金属基材に塗装後、硬化させる場合に、400℃程度という高温に加熱する必要があり、多大の熱エネルギーを要するという問題がある。
【0006】
また、特開平7−247434号は、水分散性シリコーン樹脂を含有する水性耐熱塗料を開示している。しかし、この塗料には、金属基材に塗装後、室温で乾燥させた後、250℃程度で加熱硬化することが必要であり、特に厚みがある熱容量の大きな金属基材の場合には多大の熱エネルギーを要するという問題がある。また、化成処理をしていない無処理鋼板等に塗装した場合には、塗膜の耐食性が劣るという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、金属基材上に、耐熱性、塗膜硬度、付着性、耐食性等の塗膜性能に優れた硬化塗膜を形成でき、かつ塗膜加熱乾燥工程の低温化及び短時間化を図ることができる水性耐熱塗料組成物、及びその塗装方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の記載により明らかにされるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記従来技術の諸問題を解決するため鋭意研究を行なった。その結果、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体を樹脂成分とする水性塗料組成物は、乾燥性に優れること、厚みがある熱容量の大きな金属基材に対しても、従来よりも低温且つ短時間で、付着性等の良好な塗膜を形成できることを見出した。更に、当該組成物に無機系着色顔料及び防錆顔料を含有させることにより、化成処理をしていない鋼鉄製、鋳鉄製等の金属基材に、優れた耐食性と外観を有する塗膜を形成できること、400℃以上の熱にも十分耐える耐熱性塗膜が得られること等を見出した。
【0010】
本発明は、上記の諸知見に基づいて、完成されたものである。
【0011】
本発明は、以下の水性耐熱塗料組成物及びその塗装方法を提供するものである。
【0012】
1.(A)カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を塩基性化合物で中和し、水性媒体中に分散してなる、該樹脂の水性分散体、
(B)無機系着色顔料、及び
(C)防錆顔料を含有することを特徴とする水性耐熱塗料組成物。
【0013】
2.カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)とをエステル化反応して得られる樹脂である上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0014】
3.カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させて得られる樹脂である上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0015】
4.無機系着色顔料(B)が、二酸化マンガンである上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0016】
5.防錆顔料(C)が、トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料である上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0017】
6.トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料が、酸化マグネシウム又は酸化亜鉛で表面処理されたトリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料である上記項5に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0018】
7.無機系着色顔料(B)及び防錆顔料(C)の合計配合割合が、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、5〜100重量部である上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0019】
8.さらに、レゾール型フェノール樹脂(D)を含有する上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0020】
9.レゾール型フェノール樹脂(D)が、数平均分子量200〜2,000、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数0.3〜4.0個のものである上記項8に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0021】
10.レゾール型フェノール樹脂(D)の配合割合が、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜30重量部である上記項8に記載の水性耐熱塗料組成物。
【0022】
11.金属基材上に、上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物を塗装し、加熱乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成することを特徴とする塗装方法。
【0023】
12.加熱乾燥を、電磁誘導加熱により行う上記項11に記載の塗装方法。
【0024】
13.金属基材が、ディスクブレーキ部品である上記項11に記載の塗装方法。
【0025】
14.電磁誘導加熱により、金属基材を加熱後、該基材上に上記項1に記載の水性耐熱塗料組成物を塗装し、余熱により乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成することを特徴とする塗装方法。
【0026】
15.金属基材が、ディスクブレーキ部品である上記項14に記載の塗装方法。
【0027】
16.上記項11に記載の塗装方法により、金属基材上に耐熱性乾燥塗膜が形成された塗装物品。
【0028】
17.金属基材が、ディスクブレーキ部品である上記項16に記載の塗装物品。
【0029】
18.上記項14に記載の塗装方法により、金属基材上に耐熱性乾燥塗膜が形成された塗装物品。
【0030】
19.金属基材が、ディスクブレーキ部品である上記項18に記載の塗装物品。
【0031】
水性耐熱塗料組成物
本発明の水性耐熱塗料組成物は、(A)カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体、(B)無機系着色顔料、及び(C)防錆顔料を含有する組成物である。
【0032】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)
(A)成分の水性分散体は、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を、塩基性化合物で中和し、水性媒体中に分散することによって、得られるものである。
【0033】
上記カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂としては、例えば、(I)ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)とをエステル化反応させて得られる樹脂、(II)ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させて得られる樹脂等を用いるのが好ましい。
【0034】
上記樹脂(I)の製造において、該エポキシ樹脂(a)と該アクリル樹脂(b)とを、例えば有機溶剤溶液中でエステル化触媒の存在下に加熱することで、容易にエステル化反応を行なうことができる。
【0035】
上記樹脂(II)の製造において、例えば有機溶剤中でラジカル重合開始剤の存在下に、該エポキシ樹脂(a)に上記重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させて合成することができる。
【0036】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、(i)数平均分子量が5,000程度以上になるまで縮合させてなる樹脂;(ii)エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて数平均分子量が300〜1,500程度の低分子量エポキシ樹脂とし、更にこのエポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させて得られる樹脂;(i)、(ii)又は上記低分子量エポキシ樹脂に、二塩基酸を反応させて得られるエポキシエステル樹脂などをあげることができる。
【0037】
上記ビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[慣用名ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[慣用名ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができる。これらの中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFを使用するのが好ましい。上記ビスフェノール類は1種単独で、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0038】
前記エポキシエステル樹脂の製造に用いられる二塩基酸としては、一般式
HOOC−(CH−COOH(式中、nは1〜12の整数である。)で表される化合物が好ましい。具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などを例示できる。
【0039】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製の「エピコート1007」(商品名、エポキシ当量約1,700、数平均分子量約2,900)、「エピコート1009」(商品名、エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)、「エピコート1010」(商品名、エポキシ当量約4,500、数平均分子量約5,500);チバガイギー社製の「アラルダイトAER6099」(商品名、エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800);三井化学(株)製の「エポミックR−309」(商品名、エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)などを挙げることができる。
【0040】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、数平均分子量が2,000〜35,000程度、エポキシ当量が1,000〜12,000程度であることが、得られる塗膜の硬度、耐食性などの向上の点から好ましい。数平均分子量が4,000〜30,000であり、エポキシ当量が3,000〜10,000の範囲であることが、より好ましい。
【0041】
上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(b)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとからなるモノマー成分を共重合して得られる樹脂である。
【0042】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などを挙げることができる。なかでも、メタクリル酸が好ましい。該モノマーは1種単独で、又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0043】
上記その他の重合性不飽和モノマーは、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なモノマーであればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族系ビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロへキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸2−エチルへキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ラウリル、メタアクリル酸シクロへキシルなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマーなどを挙げることができる。その他の重合性モノマーは、1種単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0044】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、特にスチレン及びアクリル酸エチルの混合物が好ましい。該混合物としては、スチレン/アクリル酸エチルの構成重量比(%)が99.9/0.1〜40/60程度が好ましく、99/1〜50/50程度の範囲がより好ましい。
【0045】
上記アクリル樹脂(b)の原料モノマーの構成比率は、特に制限されない。通常、両者の合計量に基づいて、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが15〜60重量%程度でその他の重合性不飽和モノマーが85〜40重量%程度であることが好ましく、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが20〜50重量%程度でその他の重合性不飽和モノマーが80〜50重量%程度であることがより好ましい。
【0046】
上記アクリル樹脂(b)の調製は、例えば、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを、ラジカル重合開始剤の存在下に有機溶剤中で溶液重合することにより容易に行なうことができる。
【0047】
上記アクリル樹脂(b)は、樹脂酸価が100〜400mgKOH/g程度、数平均分子量が5,000〜100,000程度の範囲であるのが好ましい。
【0048】
前記樹脂(I)を製造するためのエステル化反応において、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との配合割合は、エポキシ基の当量に対して、カルボキシル基の当量が過剰になる範囲で、塗装作業性や塗膜性能に応じて適宜選択すればよい。通常、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との重量比で、前者:後者が、通常、6:4〜9:1、さらには7:3〜9:1の範囲が好ましい。
【0049】
上記エステル化反応は、公知の方法で行なうことができ、例えば、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との均一な有機溶剤溶液中にエステル化触媒を配合し、実質的にエポキシ基の全てが消費されるまで、通常、60〜130℃程度の温度で1〜6時間程度反応させることによって行なうことができる。
【0050】
上記エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどの第3級アミン類;トリフェニルフォスフィンなどの第4級塩化合物などを挙げることができる。なかでも第3級アミン類が好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との反応系における固形分濃度は、反応系の粘度が反応に支障のない範囲内である限り特に限定されない。また、エステル化反応させる際に、エステル化触媒を使用する場合には、その使用量はエポキシ樹脂(a)中のエポキシ基1当量に対して、通常、0.1〜1当量程度の範囲で使用するのがよい。
【0052】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂(A)が、前記樹脂(II)である場合、エポキシ樹脂(a)にグラフト重合させるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分は、前記アクリル樹脂(b)の製造に用いられるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとからなるモノマー成分と同様である。
【0053】
上記樹脂(II)の製造において、エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分との使用割合は特に限定されるものではないが、通常、両者の合計量に基づいて、前者/後者の重量比が、95/5〜70/30の範囲内とするのが好ましい。この場合、重合性不飽和モノマー成分中、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが20〜80重量%程度であるのが好ましい。エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分とのグラフト重合反応において、ラジカル重合開始剤の使用量は、該重合性不飽和モノマー成分100重量部に対して、通常、3〜15重量部程度の範囲内が好ましい。
【0054】
上記グラフト重合反応は、公知の方法で行なうことができ、例えば、80〜150℃程度に加熱されたエポキシ樹脂(a)の有機溶剤溶液中に、ラジカル重合開始剤と重合性不飽和モノマー成分との均一な混合溶液を徐々に添加し、同温度に1〜10時間程度保持することによって行なうことができる。
【0055】
樹脂(I)又は(II)の製造の際に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾイルオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどを挙げることができる。
【0056】
樹脂(I)又は(II)の製造の際に使用される有機溶剤としては、エポキシ樹脂(a)と、アクリル樹脂(b)又はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分とを溶解し、且つ得られるカルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を、中和して、水性分散体とする場合に支障をきたさないものであればよい。
【0057】
上記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤等の親水性溶剤が好ましい。アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロパノール、ブチルアルコール、2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等を挙げることができる。セロソルブ系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどを挙げることができる。カルビトール系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0058】
また、上記親水性有機溶剤に、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性媒体中での安定性に支障をきたさない範囲で、疎水性有機溶剤を併用可能である。かかる疎水性有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤等を挙げることができる。
【0059】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂は、樹脂酸価が10〜160mgKOH/g程度の範囲内であることが、水分散性及び塗膜性能に優れる点から好ましい。樹脂酸価が20〜100mgKOH/g程度の範囲内であることが、より好ましい。
【0060】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂は、塩基性化合物で樹脂中のカルボキシル基を中和することによって水性媒体中に分散することが可能となる。
【0061】
カルボキシル基の中和に用いられる塩基性化合物としては、アミン類又はアンモニアを使用するのが好ましい。アミン類の代表例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカノールアミン類;モルフォリンなどの環状アミン類などを挙げることができる。カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の中和の程度は、特に限定されるものではないが、当該樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.1〜2.0当量中和の範囲であることが好ましい。
【0062】
上記水性媒体としては、水のみであっても、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来たさない親水性有機溶剤を使用できる。かかる親水性溶剤としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の製造の際に使用できる有機溶剤として挙げた、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤等が好ましい。
【0063】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を、中和して、水性媒体中に分散する方法としては、常法を採用できる。例えば、中和剤である塩基性化合物を含有する水性媒体中に、攪拌下に該アクリル変性エポキシ樹脂を徐々に添加する方法、該アクリル変性エポキシ樹脂を塩基性化合物で中和した後、攪拌下に、この中和物に水性媒体を添加するか又は水性媒体中に添加する方法などを挙げることができる。
【0064】
かくして、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)を得ることができる。
【0065】
無機系着色顔料(B)
本発明耐熱塗料組成物における無機系着色顔料(B)は、金属基材上に着色塗膜を形成して、外観を向上させる目的で使用するものである。金属基材が、常時又は間歇的に高温に曝される場合、形成される塗膜には耐熱性が必要とされ、有機系着色顔料では耐熱性が乏しいため、耐熱性に優れた無機系着色顔料を用いる。
【0066】
無機系着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタンエロー、群青、紺青、カーボンブラック、黒鉛、二酸化マンガン、スピネル系顔料、酸化鉄系顔料、酸化錫系顔料、ジルコン系顔料、これらの二種以上を熱処理して得られる各種の色調の複合酸化物等を挙げることができる。酸化鉄系顔料としては、例えば、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、弁柄等を挙げることができる。複合酸化物としては市販品を使用することができ、市販品として、例えば、大日精化(株)製の「ダイピロサイド」(商品名)等を挙げることができる。また、無機系着色顔料として、光輝性顔料を使用することもできる。無機系光輝性顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、ステンレス鋼フレークなどの金属フレーク;雲母、鱗片状酸化鉄、ガラスフレーク、パール顔料等を挙げることができる。
【0067】
本発明では、上記着色顔料から選択した1種単独で、又は2種以上組み合わせて、使用することができる。
【0068】
黒色顔料の場合、400℃以上の高温に対して優れた耐熱性を有するる点から、黒鉛、二酸化マンガン、焼成複合酸化鉄などが好ましく、特に耐食性、分散性、コスト等が優れる二酸化マンガンがより好ましい。
【0069】
防錆顔料(C)
本発明耐熱塗料組成物における防錆顔料(C)は、金属基材に耐食性を付与するために用いられるものである。
【0070】
防錆顔料としては、クロム、鉛、カドミウムなどの人体、環境に有害な重金属類を含まないものを使用する。具体的には、例えば、酸化亜鉛;リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどのリン酸塩系防錆顔料;亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸ストロンチウムなどの亜リン酸塩系防錆顔料;モリブデン酸塩系防錆顔料;シアナミド亜鉛系防錆顔料;シアナミド亜鉛カルシウム系防錆顔料;トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料;非晶質シリカを主成分とする防錆顔料などを使用することができる。
【0071】
本発明組成物におけるカルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水分散体(A)の安定性、塗膜の耐食性が優れる点から、トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料が好ましく、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等で表面処理されたものがより好ましい。トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、いずれもテイカ社製の商品名で、シリカ及び/又は酸化亜鉛で表面処理されたものである「K-WHITE84」及び「K-WHITE84S」、酸化亜鉛で処理されたものである「K-WHITE105」及び「K-WHITE140W」、酸化マグネシウムで処理されたものである「K-WHITEG105」及び「K-WHITE450H」、酸化カルシウムで処理されたものである「K-WHITECa650」などを挙げることができる。
【0072】
本発明では、上記の防錆顔料から選択した1種又は2種以上の組み合わせを使用することができる。
【0073】
無機系着色顔料(B)及び防錆顔料(C)の配合割合
本発明水性耐熱塗料組成物における無機系着色顔料(B)と防錆顔料(C)の配合割合は、当該組成物の塗装膜厚によって変動するが、これらの両成分を合わせて、基材を完全隠蔽できる量であって、塗膜に十分な耐食性を付与できる量である。
【0074】
本発明組成物の仕上がり性、耐食性等の面から、通常塗装される膜厚は、乾燥膜厚で、10〜50μm程度である。このような塗装膜厚の場合、無機系着色顔料と防錆顔料の合計量は、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、5〜100重量部程度が好ましく、10〜80重量部程度がより好ましい。5重量部未満では、素地隠蔽性、耐食性等が低下する傾向にあり、100重量部を超えると、300℃以上の高温、特に400℃以上の熱負荷がかかった場合、耐食性が低下する傾向がみられる。
【0075】
無機系着色顔料(B)と防錆顔料(C)との比率は、素地隠蔽性については(B)成分による効果が大きく、耐食性については(C)成分による効果が主であることを考慮して、適宜決定される。通常、両者の合計重量に基づいて、無機系着色顔料(B)が20〜80重量%程度で防錆顔料(C)が80〜20重量%程度であるのが好ましい。
【0076】
レゾール型フェノール樹脂(D)
本発明塗料組成物には、更に、レゾール型フェノール樹脂(D)を用いることによって、更に金属基材への付着力を高め、耐食性をより一層向上させることが可能である。レゾール型フェノール樹脂(D)は、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の架橋剤として機能する。
【0077】
レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて得られる、メチロール化フェノール樹脂;このフェノール樹脂のメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化したもの等が包含される。
【0078】
フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール類としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどの2官能性フェノール;フェノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール等の3官能性フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の4官能性フェノール等が挙げられる。これらは1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0079】
フェノール樹脂の製造に用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。これらは1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
【0080】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個の1価アルコールが好ましく、炭素原子数1〜4個の1価アルコールがより好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。中でも特にメタノールが好適である。
【0081】
レゾール型フェノール樹脂(D)は、数平均分子量が200〜2,000程度であり、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数が0.3〜4.0個程度であるのが好ましい。数平均分子量が300〜1,200程度であり、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数が0.5〜3.0個程度であるのがより好ましい。
【0082】
レゾール型フェノール樹脂としては、市販品を使用できる。かかる市販品として、例えば、昭和高分子(株)製の商品名で「ショウノールBKS−377F」、「ショウノールCKS−3865」、「ショウノールCKS−3873F」などを挙げることができる。
【0083】
本発明塗料組成物において、レゾール型フェノール樹脂(D)の配合割合は、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分重量100重量部当たり、0.1〜30重量部程度であるのが好ましく、0.5〜20重量部程度であるのがより好ましい。0.5重量部未満では付着性、耐食性等の向上効果が不十分であり、30重量部を超えて用いると耐衝撃性が低下する場合がある。
【0084】
塗料組成物の調製
本発明塗料組成物は、前記(A)〜(D)の各成分、及び必要に応じてその他の任意成分を、常法により、水又は水と有機溶剤との混合物である水性媒体中に、溶解又は分散させて、固形分濃度を20〜60重量%程度に調節することにより調製することができる。この際、着色顔料(B)及び防錆顔料(C)は、各種分散剤等を用いてペースト状にしてから混合するのが好ましい。水性媒体としては、各成分製造時に用いたものをそのまま用いてもよいし、適宜追加してもよい。
【0085】
本発明塗料の任意成分として、体質顔料及び繊維状顔料を用いることができる。体質顔料としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどをあげることができる。また、繊維状顔料としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウムウィスカー、窒化珪素ウィスカー、ゾノトライトなどを挙げることができる。更に、その他の任意成分として、分散剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、ワキ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤なども用いることができる。
【0086】
また、水性媒体として、水と有機溶剤を併用することにより、塗膜乾燥時の媒体の蒸発による塗膜のフクレを防止できる。水に併用する有機溶剤としては、親水性有機溶剤を用いるのが、好ましい。親水性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコール誘導体;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートなどのプロピレングリコール誘導体;へキシレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコール等を挙げることができる。これらの親水性有機溶剤は1種を、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0087】
水性耐熱塗料組成物の塗装方法
本発明の塗装方法は、金属基材上に、本発明水性耐熱塗料組成物を塗装し、加熱乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成するものである。
【0088】
被塗物である金属基材としては、特に限定されないが、例えば高温に曝される金属製各種部品が挙げられる。具体的には、例えば、エンジンルーム内の各種部品;ディスクローター、ドラムインディスク等のディスクブレーキ用部品;マフラー等の各種金属製自動車部品が挙げられる。また、これらの金属製部品は、鋼鉄、鋳鉄、アルミニウム等の各種金属製である。また、その形状は、各種部品に応じた種々の形状であり、限定されない。
【0089】
上記金属基材表面は、リン酸亜鉛、リン酸鉄等で化成処理をしてもよいが、本発明塗料組成物によれば、化成処理をしていない無処理金属基材に塗装した場合にも十分な耐食性を有する塗膜を形成できるので、化成処理をする必要がない。
【0090】
本発明塗料組成物は、塗装する際に、通常、フォードカップNo.4で測定して、10〜50秒程度の粘度に調整するのが好ましい。金属基材への塗装方法は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬塗装、シャワーコート、ロールコーター、カーテンフロー等の公知の塗装方法をによって塗装することができ、その塗装膜厚は、乾燥膜厚で、10〜50μm程度が好ましく、20〜30μm程度がより好ましい。
【0091】
本発明塗料組成物を金属基材へ塗装後の乾燥条件は、優れた付着性、耐食性等を得るためには、通常、120℃以上、好ましくは140〜200℃程度の温度で乾燥すればよい。これにより、乾燥塗膜又は硬化塗膜が得られる。乾燥時間は、通常、2〜30分間程度が好ましく、3〜30分間程度がより好ましい。
【0092】
乾燥装置としては、上記乾燥条件を達成できる限り限定されない。具体的には、例えば、熱風循環乾燥装置、赤外線照射加熱装置、電磁誘導加熱装置などを使用することができる。
【0093】
上記乾燥装置の内、電磁誘導加熱装置を用いることにより、厚みがあり熱容量が大きい金属基材の場合、例えば板厚が厚いディスクローターなどのディスクブレーキ部品等の場合、塗装後の乾燥時間の大幅な短縮が可能となる。電磁誘導加熱の場合は、被塗物が磁性体であることが必要であるが、金属基材はこの要件を満たしている。
【0094】
図1に、電磁誘導加熱装置の一例の模式図を示す。図1において、1は磁力発生コイル、2はプレート、3は磁力線、4は渦電流、5は金属基材、をそれぞれ示す。この装置によれば、金属基材5を、結晶化ガラス製等のプレート2上に置き、プレート2の下に設置した磁力発生コイル1により磁力線を発生させ、金属基材5に渦電流を発生させることにより、該基材を加熱することができる。
【0095】
例えば、厚さ10mm程度の鋳鉄製平板である基材を、電磁誘導加熱する場合、磁力発生コイルに流す電流を制御することにより、約2〜5分で約170〜220℃程度に昇温することが可能である。従って、本発明の塗料組成物を上記基材に塗装後、電磁誘導加熱することにより、約2〜5分間程度の極めて短時間で塗膜の乾燥を完結させることができる。この乾燥において、本発明塗料組成物が(D)成分を含有する場合には、塗膜が架橋反応を伴って硬化することになる。
【0096】
また、電磁誘導加熱により、予め、金属基材を加熱後、該基材上に本発明塗料組成物を塗装し、余熱により乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成させることもできる。この場合、金属基材を、電磁誘導加熱することにより、例えば、160〜200℃程度に昇温させた後、本発明塗料組成物を塗装することにより、余熱により、約1〜5分間程度の極めて短時間で塗膜の乾燥を完結させることができる。
【0097】
電磁誘導加熱により、金属基材上の塗膜を乾燥した場合、塗膜乾燥後、急冷することにより、塗装物を次の作業のために取り扱うことのできる程度の温度(例えば60℃以下)にまで冷却することにより、作業効率を向上させることができる。
【0098】
急冷する方法としては、例えば、常温乃至10℃程度の水をシャワー又は浸漬する方法、空気、窒素ガス等を吹き付ける方法等の公知の方法を採用できる。工業的には、経済性、装置面、冷却効率などの面から、一般の上水又は工業用水をシャワーする方法が好ましい。
【0099】
水シャワーの放水時間、放水量は、塗装物全体の温度が取扱いに支障のない温度になるまでの時間、放水量であればよい。例えば、塗装物温度を160〜180℃程度で、塗膜を乾燥させつつ放冷後急冷する場合、被塗物全面に放水されるようにシャワーノズルを複数配置し、放水量を調整して、30秒間常温水でシャワーすることにより、60℃以下とすることができ、その後塗装物を取り扱うことができる。
【0100】
かくして、本発明の塗装方法により、金属基材、例えばディスクブレーキ部品上に耐熱性乾燥塗膜が形成された塗装物品が、得られる。
【発明の効果】
【0101】
本発明によれば、以下の顕著な効果が得られる。
【0102】
(1)本発明塗料組成物は、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体を樹脂成分とすることにより、塗膜の乾燥性に優れており、厚みがある熱容量の大きな金属基材に対しても、従来よりも低温且つ短時間で、付着性の良好な塗膜を形成できる。
【0103】
(2)また、本発明塗料組成物は、無機系着色顔料及び防錆顔料を含有していることにより、化成処理をしていない無処理の金属基材に、優れた耐食性と外観を有し、400℃以上の熱にも十分耐える耐熱性塗膜が得られる。
【0104】
(3)本発明塗料組成物は、水性であるため、環境汚染、作業環境の悪化等の問題が解消されている。
【0105】
(4)本発明塗装方法によれば、加熱乾燥工程の低温化及び短時間化により、塗装時の省スペース、省エネルギー、作業効率向上等を容易に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】電磁誘導加熱装置の一例の模式図である。
【図2】実施例5の試験用塗板作成時の時間−基材温度のグラフである。
【図3】実施例7の試験用塗板作成時の時間−基材温度のグラフである。
【符号の説明】
【0107】
1は磁力発生コイル、2はプレート、3は磁力線、4は渦電流、5は金属基材、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、実施例により限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」はいずれも重量基準であり、又塗膜の膜厚は乾燥塗膜に基く。
【0109】
製造例1 ビスフェノール型エポキシ樹脂の製造
還流管、温度計、攪拌機のついた4つ口フラスコに、低分子量ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピコート828EL」)、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量約190、数平均分子量約350)558部、ビスフェノールA329部、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を、仕込み、窒素気流下で160℃にて反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約5時間反応することにより、数平均分子量約11,000、エポキシ当量約8,000のビスフェノールA型エポキシ樹脂(a−1)を得た。
【0110】
製造例2 カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液の製造
還流管、温度計、攪拌機のついた4つ口フラスコに、n−ブタノール882部を仕込み、窒素気流下で100℃に加熱、保持し、メタクリル酸180部、スチレン240部、アクリル酸エチル180部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート18部の混合物を滴下ロートから約3時間を要して滴下し、滴下後さらに同温度にて2時間攪拌を続け、次いで冷却し、固形分濃度約40%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(b−1)を得た。樹脂(b−1)は、樹脂酸価196mgKOH/g、数平均分子量約19,000であった。
【0111】
製造例3 カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体の製造
還流管、温度計、攪拌機のついた4つ口フラスコに、製造例1で得たビスフェノールA型エポキシ樹脂(a−1)80部、製造例2で得た40%カルボキシル基含有アクリル樹脂(b−1)50部(固形分で20部)及びジエチレングリコールモノブチルエーテル33部を仕込み、100℃に加熱して溶解させた後、N、N−ジメチルアミノエタノール5部を加え、同温度にて2時間反応を行い、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。得られた樹脂の樹脂酸価は34mgKOH/gであった。次いで、この樹脂溶液の温度を70℃とし、脱イオン水224部を徐々に加えて水分散を行った。さらに減圧蒸留により、過剰の溶剤を除去して、固形分32%のカルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)を得た。
【0112】
製造例4 カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体の製造
還流管、温度計、攪拌機のついた4つ口フラスコに、製造例1で得たビスフェノールA型エポキシ樹脂(a−1)80部、n−ブタノール28部及びジエチレングリコールモノブチルエーテル33部を仕込み、115℃に加熱して溶解させた後、メタクリル酸6部、スチレン8部、アクリル酸エチル6部及び過酸化ベンゾイル2部の混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下し、さらに同温度で約2時間反応を行った。次いで、105℃まで冷却し、N、N−ジメチルアミノエタノール5部を加え5分間攪拌して、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂溶液を得た。得られた樹脂の樹脂酸価は34mgKOH/gであった。次いで、その後、系の温度を70℃として、脱イオン水224部を徐々に加えて水分散を行った。さらに減圧蒸留により、過剰の溶剤を除去して、固形分32%のカルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−2)を得た。
【0113】
製造例5 レゾール型フェノール樹脂溶液の製造
還流管、温度計、攪拌機のついた4つ口フラスコに、フェノール188部、37%ホルムアルデヒド水溶液324部を、仕込み、50℃に加熱して内容物を均一に溶解した。次に、酢酸亜鉛を添加、混合して系内のPHを5.0に調整した後、90℃に加熱し、5時間反応を行った。次いで50℃に冷却し、32%水酸化カルシウム水分散液をゆっくり添加し、pHを8.5に調整した後、50℃で4時間反応を行った。反応終了後、20%塩酸でpHを4.5に調整した後、キシレン/n-ブタノール/シクロヘキサン=1/2/1(重量比)の混合溶剤で樹脂分の抽出を行い、触媒(酢酸亜鉛)、中和塩(塩化カルシウム)を除去し、次いで減圧下で共沸脱水し、不揮発分60%の淡黄色で透明なレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。得られたレゾール型フェノール樹脂は、数平均分子量が1,100であり、ベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数が1.0個であった。
【0114】
実施例1 水性耐熱塗料組成物の製造
エチレングリコールモノブチルエーテル28.5部と分散剤(商品名「Disperbyk−180」、ビックケミー社製、酸基を持つブロック共重合物のアルキルアンモニウム塩)1.5部の混合液に、電解二酸化マンガン10部、酸化マグネシウムで表面処理されたトリポリリン酸ニ水素アルミニウム系防錆顔料(商品名「K−WHITE 450H」、テイカ(株)製)15部、アルミナ粉末(商品名「AM−21」、住友化学工業(株)製、体質顔料)20部を加えてよく攪拌したものを、サンドミルで粒度が20μm以下になるように分散して、顔料濃度60%の顔料分散ペースト(i)を得た。
【0115】
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)312.5部(固形分100部)に、上記60%顔料分散ペースト(i)75部(固形分45部)を加えた後、よく攪拌して固形分濃度37.4%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0116】
実施例2 水性耐熱塗料組成物の製造
実施例1で得た60%顔料分散ペースト(i)75部(固形分45部)を、製造例4で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−2)312.5部(固形分100部)に加え、よく攪拌して固形分濃度37.4%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0117】
実施例3 水性耐熱塗料組成物の製造
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)296.9部(固形分95部)に製造例5で得た60%レゾール型フェノール樹脂8.33部(固形分5部)を加え、さらに実施例1で得た60%顔料分散ペースト(i)75部(固形分45部)を加え、よく攪拌して固形分濃度38.1%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0118】
実施例4 水性耐熱塗料組成物の製造
エチレングリコールモノブチルエーテル19部と分散剤(商品名「Disperbyk−180」)1部の混合液に、リン酸カルシウム/リン酸マグネシウム系防錆顔料(商品名「LFボウセイCPM」、キクチカラー(株)製)15部及びアルミナ粉末(商品名「AM−21」)15部を加えてよく攪拌したものを、サンドミルで粒度20μm以下になるように分散して、着色顔料を含まない顔料濃度60%の顔料分散ペースト(ii)を得た。
【0119】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル15.4部に、アルミニウム粉末の66%ペースト(商品名「アルペースト50−635」、媒体ミネラルスピリット、東洋アルミニウム(株)製)30.3部を加えてよく攪拌した後、リン酸基含有アクリル樹脂(アルミニウム粉末の不活性化剤、商品名「50%KZX937」、関西ペイント(株)製)10部、ジメチルエタノールアミン0.8部を加えてよく攪拌し、固形分濃度35.4%のアルミニウム粉末分散ペーストを得た。
【0120】
製造例4で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−2)281.3部(固形分90部)に、製造例5で得た60%レゾール型フェノール樹脂溶液16.67部(固形分10部)を加え、上記60%顔料分散ペースト(ii)50部及び上記アルミニウム粉末ペースト84.8部(アルミニウム固形分30部)を加えてよく攪拌し、固形分濃度38.7%のシルバー色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0121】
比較例1 水性耐熱塗料組成物の製造
エチレングリコールモノブチルエーテル17.9部と分散剤(商品名「Disperbyk−180」)1.5部の混合液に、黒鉛10部を加えてよく攪拌したものを、サンドミルで粒度が20μm以下になるように分散して、防錆顔料を含まない顔料濃度約34%の顔料分散ペースト(iii)を得た。
【0122】
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)312.5部に34%顔料分散ペースト(iii)29.4部を加えた後、よく攪拌して固形分濃度約32.7%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0123】
比較例2 水性耐熱塗料組成物の製造
製造例2で得た40%カルボキシル基含有アクリル樹脂(b−1)250部に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部、N、N−ジメチルアミノエタノール30部を加えて溶解し、次いで、脱イオン水200部を徐々に加えて水分散を行った。さらに減圧蒸留により、過剰の溶剤を除去して、固形分35%のアクリル樹脂水分散液を得た。この水分散液288部に、実施例1で得た顔料濃度60%の顔料分散ペースト(i)75部を加えて、よく攪拌し、固形分濃度約40.2%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0124】
比較例3 水性耐熱塗料組成物の製造
シリコーンエマルション(商品名「X−52−1435」、信越化学工業(株)製、固形分濃度52%)192部に、実施例1で得た顔料濃度60%の顔料分散ペースト(i)75部を加え、さらに、エチレングリコールモノブチルエーテル44部、脱イオン水70部を加えて攪拌し、固形分濃度約38%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0125】
試験板の作製
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各水性耐熱塗料組成物をそれぞれ、メチルエチルケトンで脱脂した冷延鋼板(70×150×0.8mm)に、膜厚が20〜25μmになるようにスプレー塗装し、熱風循環乾燥機を用いて、140℃で5分間乾燥させて試験用塗板を得た。尚、比較例3の塗料組成物のみは、150℃で30分間乾燥させた。
【0126】
性能試験
得られた各試験用塗板について、塗面状態、付着性、耐食性及び塗膜硬度の塗膜性能試験を行った。更に、試験板を500℃に設定した電気炉で、基材温度420〜450℃となる温度域で30秒間保持した後、室温まで放冷する耐熱試験を行った後、塗面状態、付着性及び耐食性の塗膜性能試験を行った。塗膜性能試験の試験方法は次の通りである。
【0127】
塗面状態:試験用塗板の塗面を目視観察して、以下の基準で評価した。
【0128】
A:外観上の異常が認められない。B:フクレ、変色又はクラックが塗面の一部に認められる。C:全面にクラックが発生し、塗膜の脱落が認められる。
【0129】
付着性:試験用塗板の塗膜に、カッターナイフで基材に達するようにカットを入れ、大きさ1mm×1mmの碁盤目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、それを急激に剥離した後の碁盤目塗膜の残存数を調べた。この残存数が多いほど塗膜の付着性に優れる。
【0130】
耐食性:試験用塗板に、ソルトスプレー試験(JIS−Z−2371)72時間後の赤錆の発生度合いを以下の基準で評価した。
【0131】
A:赤錆の発生が全く認められない。B:赤錆の発生面積が全体の20%以内である。C:赤錆の発生面積が全体の20%を超え50%未満の範囲である。D:赤錆の発生面積が全体の50%以上である。
【0132】
塗膜硬度:JIS K5600−5−4に規定された鉛筆硬度試験に従って、試験用塗板の塗膜の鉛筆硬度を測定した。
【0133】
塗膜性能試験の試験結果を、表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
実施例5 水性耐熱塗料組成物の製造及び試験用塗板の作成
エチレングリコールモノブチルエーテル23.3部に、電解二酸化マンガン15部及びトリポリリン酸アルミニウム系防錆顔料(商品名「K-WHITE450H」、テイカ(株)製)20部を混合して、サンドミルで粒度が20μm以下になるように分散し、濃度60%の顔料分散ペースト(iv)を作製した。
【0136】
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)296.9部(固形分で95部)及びレゾール型フェノール樹脂(商品名「ショウノールCKS−3865」、昭和高分子(株)製、数平均分子量1,000、ベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数1.0個)を樹脂固形分で5部に対して、顔料分散ペースト(iv)を、電解二酸化マンガンが15部、「K-WHITE450H」が20部になるように配合して、脱イオン水及びエチレングリコールモノブチルエーテルを加えて混合し、固形分濃度が35%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0137】
基材である厚さ10mmの鋳鉄製平板(70×150mm)上に、上記耐熱塗料組成物を、膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、室温で2分間放置後、図1に示すような電磁誘導加熱装置のプレート上にのせて、750Wになるように磁力発生コイルに流す電流を制御して、3分間加熱後、直ちに水冷して試験用塗板を作製した。加熱による基材の最高到達温度は158℃であった。図2は、試験用塗板作成時の時間−基材温度のグラフを示すものである。
【0138】
実施例6 水性耐熱塗料組成物の製造及び試験用塗板の作成
エチレングリコールモノブチルエーテル36.7部に、黒鉛10部、「K-WHITE450H」15部及びアルミナ粉末(商品名「AM−21」、住友化学工業(株)製、体質顔料)30部を混合して、サンドミルで粒度が20μm以下になるように分散し、濃度が60%の顔料分散ペースト(v)を作製した。
【0139】
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)281.3部(固形分で90部)及びレゾール型フェノール樹脂(商品名「ショウノールCKS−3865」、昭和高分子(株)製)を樹脂固形分で10部に対して、顔料分散ペースト(v)を、黒鉛が10部、「K-WHITE450H」が15部になるように配合して、脱イオン水及びエチレングリコールモノブチルエーテルを加えて混合し、固形分濃度が40%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0140】
上記耐熱塗料組成物を用いる以外は実施例5と全く同様にして、試験用塗板を作製した。
【0141】
実施例7 水性耐熱塗料組成物の製造及び試験用塗板の作成
エチレングリコールモノブチルエーテル16.7部に、電解二酸化マンガン10部及び「K-WHITE450H」15部を混合して、サンドミルで粒度が20μm以下になるように分散し、濃度が60%の顔料分散ペースト(vi)を作製した。
【0142】
製造例3で得た32%カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A−1)296.9部(樹脂固形分で95部)及びレゾール型フェノール樹脂(商品名「ショウノールCKS−3865」、昭和高分子(株)製)を樹脂固形分で5部に対して、顔料分散ペースト(vi)を、電解二酸化マンガンが10部、「K-WHITE450H」が15部になるように配合して、脱イオン水及びエチレングリコールモノブチルエーテルを加えて混合し、固形分濃度が35%の黒色水性耐熱塗料組成物を得た。
【0143】
基材である厚さ10mmの鋳鉄製平板(70×150mm)を、図1に示すような電磁誘導加熱装置のプレート上にのせて、1,000Wになるように磁力発生コイルに流す電流を制御して、基材温度が160℃に上昇するまで加熱後、通電を止めて、上記耐熱塗料組成物を、膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、そのまま3分間放冷した。その後、直ちに水シャワーで急冷することにより、試験用塗板を作成した。3分間の放冷時間における保持温度は160〜142℃であった。図3は、試験用塗板作成時の時間−基材温度のグラフを示すものである。
【0144】
実施例8
実施例6で得た固形分濃度が40%の黒色水性耐熱塗料組成物を用いる以外は、実施例7と全く同様にして、試験用塗板を作製した。
【0145】
性能試験
実施例5〜8で得られた各試験用塗板について、前記の試験方法により、塗面状態、付着性、耐食性及び塗膜硬度の塗膜性能試験を行った。更に、試験板を500℃に設定した電気炉で、基材温度420〜450℃となる温度域で30秒間保持した後、室温まで放冷する耐熱試験を行った後、塗面状態、付着性及び耐食性の塗膜性能試験を行った。
【0146】
塗膜性能試験の試験結果を、表2に示す。
【0147】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂を塩基性化合物で中和し、水性媒体中に分散してなる、該樹脂の水性分散体、
(B)無機系着色顔料、及び
(C)防錆顔料を含有することを特徴とする水性耐熱塗料組成物。
【請求項2】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)とをエステル化反応して得られる樹脂である請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項3】
カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させて得られる樹脂である請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項4】
無機系着色顔料(B)が、二酸化マンガンである請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項5】
防錆顔料(C)が、トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料である請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項6】
トリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料が、酸化マグネシウム又は酸化亜鉛で表面処理されたトリポリリン酸二水素アルミニウム系防錆顔料である請求項5に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項7】
無機系着色顔料(B)及び防錆顔料(C)の合計配合割合が、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、5〜100重量部である請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項8】
さらに、レゾール型フェノール樹脂(D)を含有する請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項9】
レゾール型フェノール樹脂(D)が、数平均分子量200〜2,000、かつベンゼン核1核当たりのメチロール基の平均個数0.3〜4.0個のものである請求項8に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項10】
レゾール型フェノール樹脂(D)の配合割合が、カルボキシル基含有アクリル変性エポキシ樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜30重量部である上記項8に記載の水性耐熱塗料組成物。
【請求項11】
金属基材上に、請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物を塗装し、加熱乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成することを特徴とする塗装方法。
【請求項12】
加熱乾燥を、電磁誘導加熱により行う請求項11に記載の塗装方法。
【請求項13】
金属基材が、ディスクブレーキ部品である請求項11に記載の塗装方法。
【請求項14】
電磁誘導加熱により、金属基材を加熱後、該基材上に請求項1に記載の水性耐熱塗料組成物を塗装し、余熱により乾燥して耐熱性乾燥塗膜を形成することを特徴とする塗装方法。
【請求項15】
金属基材が、ディスクブレーキ部品である請求項14に記載の塗装方法。
【請求項16】
請求項11に記載の塗装方法により、金属基材上に耐熱性乾燥塗膜が形成された塗装物品。
【請求項17】
金属基材が、ディスクブレーキ部品である請求項16に記載の塗装物品。
【請求項18】
請求項14に記載の塗装方法により、金属基材上に耐熱性乾燥塗膜が形成された塗装物品。
【請求項19】
金属基材が、ディスクブレーキ部品である請求項18に記載の塗装物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/080515
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510287(P2006−510287)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002875
【国際出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】