説明

水晶センサ

【目的】容易に対象物質の検出が可能でコストも安価であり、特に作業後に汚染した用具の処理が容易で、しかも廃棄物の量も極めて少なくできる水晶センサを提供すること。
【構成】板状で中央部分に検出すべき対象物質を貯留する凹部を形成した水晶片と、この水晶片の凹部に相対面して形成した励振電極と、この励振電極を水晶片の端部へ導出する導出電極と、上記凹部に形成した検出すべき対象物質と反応する反応物質とを具備した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイオキシン、PCB、伝染病の病原体、環境上のストレッサーおよびマーカー蛋白質等の検知のために使用するバイオ・センサ用水晶発振回路に用いる水晶センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
(発明の背景)
近時、ダイオキシン類をはじめとする環境ホルモン等による環境汚染は深刻な社会問題であり、このような物質を精密、かつ短時間で、安価に検出することのできるセンサが望まれている。
また,SARSに代表される伝染病やC型肝炎等のマーカー蛋白質も精密、かつ短時間で、安価に検出することのできるセンサが望まれている。
【0003】
従来このような対象(以下対象物質という)を検出するためには、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法、ELISA(酵素固定化免疫測定)法が使用されていた。
しかしながら、このような検出方法では熟練の作業者が必要であり、しかも使用する装置は大型で高価であり、長い検出時間がかかる問題があった。
【0004】
このため水晶振動子の電極の質量の変化による、共振周波数の変化を利用することが考えられている。
すなわち、水晶振動子の電極の上に検出すべき対象物質と反応する反応物質を形成する。
そして対象物質が反応物質と反応して質量が変化したことを共振周波数の変化から検出して、上述の対象物質等を検出することが考えられている。
【0005】
このような水晶振動子を使用する検出法では、検出すべき対象物質を含む溶液を小型のビーカや試験管等に入れておく。
そして、電極上に反応物質を形成した水晶振動子を発振回路に接続し、この発振回路の発振周波数を周波数カウンターで測定する。
【0006】
そして水晶振動子を上記溶液に浸して、反応物質を対象物質と反応させる。
水晶振動子を溶液に浸すと、溶液の粘性抵抗によって発振周波数の変化を生じるが、反応物質と対象物質の反応による電極質量の変化は、より大きな発振周波数の変化を生じる。
【0007】
このような水晶振動子の電極部分の質量変化による周波数の変化は、極めて感度が高く、しかも反復再現性も良好である。
したがって精密かつ短時間で検出作業を行え、熟練作業者の必要もなく、検出作業に要するコストも安価である。
【0008】
しかしながら、このようなものでは、検出作業で使用したビーカや試験管、水晶振動子等は作業後に洗浄し、あるいは焼却、廃棄することになる。
さらに検出物質によっては、極めて危険性の高いものもあり、このようなものでは廃棄する場合にも細心の注意を払う必要があり、廃棄物の増大は新たな環境問題になる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、容易に対象物質の検出が可能でコストも安価であり、特に作業後の廃棄が容易で、廃棄物の量も極めて少なくできる水晶センサを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は板状で中央部分に検出すべき対象物質を貯留する凹部を形成した水晶片と、この水晶片の凹部に相対面して形成した励振電極と、この励振電極を水晶片の端部へ導出する導出電極と、上記凹部に形成した検出すべき対象物質と反応する反応物質と、を具備することを特徴とする水晶センサであり、請求項2は請求項1に記載のものにおいて、反応物質は有機物質、無機物質または抗体であることを特徴とする水晶センサである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施態様を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、水晶センサの断面図である。
板状の水晶片1は、略中央部に検出すべき対象物質を貯留する凹部2を有する。 この凹部2は、たとえば研磨、エッチング等によって形成することができ、大きさは0.1ml〜10ml程度である。
【0012】
そして凹部2に相対面して励振電極3を形成している。そして各励振電極3を導出電極4によって水晶片1の端部へ導出している。
この導出電極3は、図示しない発振回路に接続し、この発振回路の発振周波数を図示しない周波数カウンター、ネットワークアナライザーで測定することができるようにしている。
【0013】
そして水晶片1の凹部2に対象物質と反応する反応物質5を形成している。
この反応物質5は、対象物質毎に異なり、それぞれに適した無機、有機物質、および抗体等から選ぶようにしている。
【0014】
このような構成であれば、水晶センサを発振回路に接続して発振周波数f1を測定する。
次に対象物質に応じて反応物質を選択した水晶センサの凹部に、対象物質を含む溶液を滴下する。この時溶液の粘性によって発振周波数はf2まで変化する。
【0015】
そして一定時間を経過すると対象物質と反応物質の反応によって発振周波数はf3まで変化する。
したがって|f3−f2|の値は対象物質の検出量に対応する。
【0016】
なお検出作業後の水晶センサは、そのまま焼却処理することによって安全にかつ廃棄物の量も少なく処理することができ、焼却した水晶センサはガラス質の環境に無害な物質であり、環境に対する負荷も軽減することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明は、水晶センサに対象物質を貯留する凹部を形成しているので、ビーカや試験管を用いる必要もなく、検出作業後の用具の処理を容易に行え、しかも廃棄物の量も軽減でき、かつ廃棄作業も容易に行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施態様の水晶センサの断面図である。
【符号の説明】
1 水晶片
2 凹部
3 励振電極
4 導出電極
5 反応物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状で中央部分に検出すべき対象物質の溶液を貯留する凹部を形成した水晶片と、
この水晶片の凹部に相対面して形成した励振電極と、
この励振電極を水晶片の端部へ導出する導出電極と、
上記凹部に形成した検出すべき対象物質と反応する反応物質と、
を具備することを特徴とする水晶センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、反応物質は有機物質、無機物質または抗体であることを特徴とする水晶センサ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−189255(P2006−189255A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−181944(P2003−181944)
【出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】